2022/4/8 UP!
第92回でご紹介するのは、チャンスがあれば瀬人も訪れていただきたい南房総、千倉にあります海辺のカフェ「サンドカフェ」です。

サンドカフェのマスター込山敏郎さんにいろいろとお話を伺っています。サンドカフェは1994年にオープンした老舗のカフェなんですが、まず最初は、地元出身の込山さんがカフェを開くまでのいきさつをお話しいただきました。

込山さん:3月で28年経ちました。私は千倉の出身で、サーフィンにはまりまして、湘南とかもちろん千葉にも来てて、南房総って海、素敵なんだなと再認識しまして。それで卒業して帰ってきて、役場職員になりました。近くの海岸通りに写真家の浅井慎平さんの別荘が建ちまして、カリフォルニアにあるような板張りのかっこいい別荘だったんですよね。で、写真集持ってサインもらいに行ったりして、浅井さんになんか心酔してしまって。千倉に自分の美術館、「海岸美術館」っていう名前で作るっていう時に、12年勤めた公務員やめてそちらの方に転職しました。

28年前にオープンしたサンドカフェは、ヘミングウェイの「老人と海」がモチーフになっています。それは、浅井慎平さんの美術館で働きながら、浅井さんの感性や言葉に魅了されていった込山さんのこんな想いがありました。

込山さん:「スタンダードなものが大事だ」っていうこととか、「年月の経過が味になるようなものが大事だ」ということとか。「チープだけどプアーじゃないっていうのもいいよね」みたいな。なんか独特のそういう言葉を我々はずいぶん新鮮に聞かしてもらいました。若い時から海とコーヒーのある時間が大好きだったので、どうしても千倉の海の雰囲気をうまく表したような、粗野だけれども、ちょっと味がある、詩情があるような(ものにしたかった)。そういうものとヘミングウェイの「老人と海」というものが、世界観が重なり合って、で「老人と海」をイメージしたカフェにしました。シンプルな文体だけど深いという、シンプル&ディープっていうところにすごく惹かれるものがありました。

浅井慎平さんは千倉の海とそこに差し込む光の独特さ・魅力をよくお話されていたといいます。そこにあるサンドカフェ、20年ぶりに訪れたお客さんも

「この雰囲気、変わってなくてよかった」と安心されていたそうです。もちろん、年月が過ぎれば建物も年期が入ってきますが、変わらないものがあるって大事なんですね。

そして、マスターの込山さんに、サンドカフェで大事にしていることについてもお話しいただきました。

込山さん:人に入れてもらうコーヒーっていうのがよりおいしくなることはなるんですけども、カフェに、空間に流れている空気感とか、ゆっくりした時間感覚、時間軸みたいなものとか、もしかしたら隣に誰か座ってちょっと緊張感を味わうかもしれないし、仲良くなっちゃうかもしれないみたいな。そういうトータルなところでしょうかね。使い勝手のいいカフェを目指してたので、コーヒー以外にも、軽食もあり、スイーツもありということで、手作りで店の雰囲気に合ったメニュー。で、地元でずっと食べられてきたサザエを入れたカレーを店の看板メニューにしております。

込山さん:サザエは茹でてスライスしてキモは裏漉ししてルーに入れて、ちょっと風味をつけております。地元の方、リピーターの方でいつも食べていただくような。大変ありがたい嬉しいことです。
このサザエカレー、大変な人気なんだそうです。コーヒーについては、定番の数種類のコーヒーで変わらない味を提供されているそうです。そしてカフェに流れる空気感や時間も大切にされている。。それが28年経っても、皆に愛され続けている理由なんでしょうね。
さて、南房総、千倉の海岸近くのこの雰囲気が好きで、ご自身も、時間ができたらたまにロングボードで波乗りを楽しむという込山さん、地元をこんなふうに思ってらっしゃいます。
込山さん:小さくて個性的なお店が点在しているってすごい素敵な街だなと思ってて、パラパラと点在する界隈みたいになったらいいリゾートになるんじゃないかなっていうことで、自分のできる中でサンドカフェの隣に「デッキシューズ」っていう海雑貨の店を。あと築90年ぐらいのわたしの実家でお袋が店番してるんですけども、アンティークと器の店「デイズギャラリー」。潮風王国という気軽に入れるカフェテリア「散歩カフェ」を現在営んでおります。南房総はやっぱり三方海に囲まれて、すごく変化に富んだ海岸線。ストレスなく車やバイクや自転車でドライブできます。カフェでちょっと一息入れて。ゆっくり流れる千倉時間をぜひ味わっていただきたいと思います。

お話を伺う間、サンドカフェに訪れたお客さまは、犬のお散歩の途中とか、親子で来て、それぞれ別々の本をゆっくり読まれているとか、マスターとゆっくりとお話しされる方など、それぞれに「ゆっくり流れる千倉時間」を過ごされていたそうです。皆さんも、自分なりの南房総時間、千倉時間を探してみてはいかがでしょうか。
