2020/5/23 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、写真をもとに斬新な作品を創っている新世代アーティスト! 彩色写真画家の「安斉紗織」さんです。

安斉さんは1983年、東京生まれ。子供の頃から絵を描くのが大好きで、女子美術大学に進学。学生時代に、ハワイ、沖縄、ニュージーランドなど島を巡り、撮影を行ない、卒業後に西表島に滞在し、作品づくり。2015年から彩色写真画家として活動を始め、先頃、代表作を集めた彩色写真画集を発表されました。
きょうはそんな安斉さんに、彩色(さいしき)写真とはどんな手法なのか、自然の景観や花などを題材にした作品にどんな想いを込めているのか、などいろいろお話をうかがいます。
☆写真提供:安斉紗織
名嘉睦稔さんが命名!?

※まずは彩色写真とは、どんな手法なのか、教えていただきました。
「ちょっと聞き慣れない言葉だと思うんですけど、モノクロの写真に手彩色で絵の具を塗る手法で制作している作品です。私は見たそのままの色を彩色するだけじゃなくて自分の想いをのせて彩色しています」
●写真なのか絵なのか分からないほど、幻想的だなっていう印象があったんですけれども・・・。
「みなさんそう言ってくださって嬉しいですね。元々この彩色写真画という言葉はオリジナルで、以前こちらの番組にも出演されている木版画家の名嘉睦稔さんを私は大尊敬していて、その方が”これは新しい手法だから何か名前を付けた方がいいんじゃないか”っていうことで、この呼び名を付けてくださいました」
●そうなんですか。このモノクロ写真の現像は安斉さんがされているんですか?
「はい! モノクロ写真の現像も私がしています」
●で、そこに絵の具で色を付けているんですよね?
「そうですね。絵の具はアクリル水彩と透明水彩を使って彩色しています」

●へぇー! そもそもどうしてこのような手法で作品を作ろうと思われたんですか?
「そうですね。先ほどもお話しした木版画家の名嘉睦稔さんの影響をいちばん受けているんですけど、(睦稔さんは)裏手彩色木版画という手法で作品を作られていて、モノクロの木版画に裏から色を付けるというやり方で作品を作っているんですね。そこからインスピレーションを得て自分はこのような形で作っていますね」
●作品自体ってどれくらいの大きさなんですか?
「作品は小さいとハガキサイズからいちばん大きいと2 メートル くらいの大作になります!」
●すごいですね! ひとつの作品を仕上げるのにどれくらい時間ってかかるんですか?
「ひとつの作品というと旅に出る前の準備から、出かけて撮影をして現像してプリントをして彩色するとなると、全部で半年くらいかかりますね 」
自然のパワーを作品に込めて

※モノクロの写真に絵具で色を付ける彩色写真というお話でしたが、作品づくりは、まず何から始めるのでしょうか。
「まずは次に行きたい場所を決めまして、だいたい今まで旅して行ったことがある場所が多いんですけど、何かそこに呼ばれているなーっていうような気がして、それで出かけて撮影をしてから始まりますね」
●被写体は自然の景観ですとか、花とかが多いようなイメージがあったんですけれども・・・。
「やっぱり自然からパワーをいただいて、それを作品に込めていきたいなと思って作っているので、お花とか海とか山が多くなっていますね」
●まず写真撮影をして、現像して、その写真に絵の具で色を付けていくっていうことなんですか?
「はい、そうですね。その時に見た気持ちとか感動した感情とか、いただいた命のパワーを込められたらいいなと思って彩色をしています」
●本当にモノクロ写真に色が付くと命が吹き込まれているような感じになりますよね! すごく感動しました。
「そう言っていただけると嬉しいですね。やっぱり世界にはすごくそういう幸せな美しい世界がいっぱいあるので、そういうものを伝えられたらいいなと思って作っています!」
●作品作りでいちばんこだわっている点ってどんなところですか?
「今と同じような話になるんですけど、見たそのままではなくてその場にいるような、その時のパワーが伝わればいいかなと思って作っています 」
きっかけはフラダンス!?

※安斉さんの作品は自然の景観や花などを題材にしていますが、撮影する場所はどうやって決めているのでしょうか。
「撮影の場所は今まで旅で行ったところが多いんですけれど、やっぱりそこにまた行きたいなーって思える、なんか心の故郷みたいなところが出てくるんですね。そこにまた行って撮影することが多いですね」
●国内だけではないですよね?
「はい、そうですね。元々海外が好きでハワイとかニュージーランドとか、島が多いんですけど」
●ハワイやニュージーランドに行かれたきっかけって何かあったんですか?
「元々20年ぐらい前からフラダンスを習っていて、それからハワイに興味を持って、本場のハワイにフラダンスを習いに行ったのが最初のきっかけですね」
●私もフラダンスをやるので嬉しいです!(笑)。ハワイに習いに行かれたんですね。
「地元の先生から教えていただいて、フラダンス漬けの毎日を送っていました。それからポリネシアの文化にそのまま興味が移っていって、ニュージーランドのマオリ族もハワイと同じような文化を持っているので、マオリ族のお宅にホームステイをさせていただいて日々過ごしていた思い出があります」
●ホームステイもなさっていたんですか!
「はい。そこから島が大好きになりました !」
充分に幸せだと気づく

※安斉さんは西表島で作品作りを行なっていました。どうして西表島だったのでしょうか。
「西表島と言いますと何もなさそうなジャングルのイメージなんですけれど、そちらに私の尊敬する染色家の石垣昭子さんという方が工房を開いていまして、その方の工房にお邪魔をして作品を作るということで、西表島にしばらく住んでいました」
●あ、住んでいらしたんですね?
「はい! しばらくひとり暮らしをしているおばあちゃまのお家に間借りさせていただいて、工房に行きながら作品を作っていました」
●西表島での生活はいかがでした?
「島では本当にもう目の前が海の生活をしていたので、幸せでしたね(笑)。疲れたらちょっと海に行って浸かったりとか、あと虫が遊んでいるとか動いているのを見たりとかしたり、島のお祭りで節祭(しち)という祭りがあるんですけれど、そちらにも参加させていただいたり、すごく楽しい思い出です」
●安斉さんの作品を見た方にどんなことを感じ取ってもらいたいですか?
「作品を見ていただく方にこう思って欲しいっていうのはないんですけど。最近こういう状況なので特に思うのは、やっぱり不安になったり、落ち込んでしまったりとかってあるんですけれど、自然の中に行くと山とか海とか空気とか、自然からたくさん力をいただいて、幸せに満ちている気持ちになるんですね。充分に幸せなんだなっていうことに改めて気づくので、つい忘れてしまうんですけれど、そういうことを自分でも忘れないように作品に込めていきたいなと思って作っていますね」
●作品画集の中にあった桜の作品も今年はお花見が出来なかったので、すごくこの作品を見て癒されました。
「ありがとうございます! これは3年前に青森の弘前で撮影をした桜の作品なんです。青森ってやっぱり冬の間すごく寒くて、外にみなさん出られないんですけれど、桜が咲いた頃になると一気にお外に出られて、青森のみなさんの幸せそうな雰囲気、そういうものを感じながら撮影をしたので、それが伝わるといいなと思っています」
●今後こんな作品を作ってみたいっていうのは何かありますか?
「作品を作れるだけで幸せなんですけど、実はいちばんの夢というのがいつか宇宙に行って、宇宙から地球を眺め、写真を撮って、その時の気持ちを作品に込めたいなと。地球を撮った作品を作りたい! っていうのがいちばんの夢です 」
INFORMATION
安斉紗織さん情報

『安斉紗織 彩色写真画集 2015-2020』
これまでに発表した作品の中から、選りすぐりの54点を掲載したカタログブックともいえる画集をぜひご覧ください。安斉紗織さんの彩色写真画集は、アイランドギャラリーから絶賛発売中です。
●アイランドギャラリーのHP:https://islandgallery.jp