2026/5/31 UP!
◎坂井 治(絵本作家)・中里郁子(講談社)
『地球温暖化をテーマにした科学絵本『あちちち 地球とだいじなやくそく! ニコとサクの大冒険』をクローズアップ!』(2026.5.31)
◎木谷美咲(文筆家/エッセイスト)
『妖しい食虫植物と、衝撃のウツボカズラ飯に魅せられて』(2026.5.24)
◎鶴橋 梓(「サンシャイン水族館」飼育スタッフ)
『サンシャイン水族館「サンゴプロジェクト」〜サンゴの危機は地球全体の課題』(2026.5.17)
◎梅崎靖志(「風と土の自然学校」の代表)
『「風と土の自然学校」〜自分の手で作る循環する暮らし』(2026.5.10)
◎若山太郎(「ワカヤマファーム」の代表)
『植物資源として見直されている「竹」〜その魅力と不思議を「竹の代弁者」に聞く』(2026.5.3)
2026/5/31 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、絵本作家の「坂井 治(さかい・おさむ)」さんと、講談社の「中里郁子(なかざと・いくこ)」さんです。
先頃、講談社から出版された、地球温暖化をテーマにした科学絵本が話題になっています。本のタイトルは『あちちち 地球とだいじなやくそく! ニコとサクの大冒険』。
ストーリーは、連続ドラマ『ちはやふる-めぐり-』などを手がけた脚本家の「こさか しほ」さんがまとめ、絵はNHKの「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」のアニメーションなどで知られる絵本作家の「坂井 治」さんが担当、監修は神奈川県立生命の星・地球博物館が行なっています。
実はこの絵本は「1.5°Cの約束」気候キャンペーン初の絵本で、2027年に横浜で開催される「GREEN×EXPO」にもつながる企画としてスタートしたそうです。
そんな科学絵本の絵を担当された坂井さん、そして講談社の編集担当、中里さんをお迎えし、絵本に込めた想いや、子供たちの意見を取り入れた斬新な手法、そしてタレントの「石ちゃん」こと「石塚英彦(いしづか・ひでひこ)」さんがナレーションを務めた読み聞かせ動画についてもうかがいます。

子供編集者300人が参加!?
※最初に『あちちち 地球とだいじなやくそく! ニコとサクの大冒険』のストーリーを少しだけ説明しておきましょう。
オープニングのシーンは「空気の学校」で、地球先生がぷんぷん怒っているところから始まります。主人公の「ニコ」は生徒のひとりで、実は二酸化炭素。地球が「あちちち」になっているのは、自分のせいだと悲しくなっちゃうんです。
そして、丸くて小さなゴミとして登場する「サク」も大事なキャラクターで、あとあとゴミじゃないことがわかるんですけど・・・そんな「ニコ」と「サク」がペットボトルの船に乗って、温暖化を止める方法を探すために、北極に行ったり、南米や太平洋の島に行ったりと、地球を大冒険するという、そんなストーリーになっています。

●この絵本は、子供たちが編集者として参加したそうですね。これは、どなたのアイデアだったんですか?
中里さん「これは誰のアイデアというのではなくて・・・そもそも今の地球をテーマにした絵本を作る時に、こういうような絵本を子供たちは読みたいんじゃないかとか、机上の空論ではないですが、大人だけが角突き合わせて、どういうふうに伝えようかという話はしていたんですね。
こさかさんのお話が大まかにまとまって、坂井さんがそれに対して絵を描いてくださった時に、通常の場合は編集者が意見を返して、こういう感想ですとかっていうのを戻すんですけど、それじゃあダメだよねっていう・・・。
子供がちゃんと子供の意見として、“ここがわかりやすい”とか、“ここがわからないとか”、“ここがすごくいいから伸ばすべきっていうのを言うべきだよね”っていう、これはなぜなら子供たちの絵本だからっていうことで・・・。
誰のアイデアっていうよりは、私と一緒に編集している者が、“私たちだけでやっちゃいけないよね”っていう、(子供たちに)協力を仰ぎたいと、いろんな小学校や三郷市こども司書のかたにご相談したら、“ぜひ協力したい!”っていうことで、ご協力いただいたっていう流れになります」

●何人くらいのお子さんたちが参加されたんですか?
中里さん「総勢でいうと300人ちょっと、お会いしたのは300人くらいで、実は会ってないんだけど、PDFで読んでくれたみたいな子供を含めると、もっといるっていう感じです」
●いろんなお子さんたちの意見が反映されているんですね?
中里さん「そうですね。意見をすごく言ってくれて、班の発表とかもしてくれたりして・・・(笑)」
●そうだったんですね。まとめるのが大変だったんじゃないですか?
中里さん「それがですね、まとめるというか・・・今の小学生は、逆に感動してしまうほどで、ものすごく細かく見てくださっていて、意見をまとめる必要があるというよりは、“作家さんがこういうふうに悩んでいるんだけど、あなたたち編集者としたら、どういうアドバイスする?“みたいな感じだと、子供たちの側で意見をまとめてきてくれました」
●すごいですね!
中里さん「はい! 班と班で違う意見が出たら、班同士で意見を言い合って、最後は“やっぱり作家さんがよきように、作家さんはどっちがいいんですか?”とか聞いてくれたりしました」
子供たちが見て、まず楽しいが大事
※坂井さんは、脚本家の「こさかしほ」さんからストーリーがあがってきて、すぐに主人公の「ニコ」や「サク」のイメージは浮かびましたか?

坂井さん「あらすじをいただいて、そこでもいろいろ意見交換させてもらったんですけど、最初にそれこそ中里さん含めて、みんなで話をさせてもらっている時に、大体こんなことかな~っていうのは見えていましたね。細かい修正はもちろんしていったんですけど・・・」
●温暖化が原因とされている、例えば氷河が溶けたりとか海面が上昇したりとか、そんな現状が(絵本には)散りばめられていますけれども、作画する時にどんなことに苦心されましたか?
坂井さん「やっぱりいちばんは・・・結構現実的で、目の前にある大きな問題でもあるし、それぞれ読み手もそうだし、作る側もいろんな視点で、その問題に対して見ていると思うんで、なんていうんですかね・・・(絵が)リアルになり過ぎないことが、まずいちばんかなと思ったんですね。
“ニコ”っていうキャラクターの物語でもあるので、ニコが生きている世界と自分たちが生きている世界が大きく重なる部分があって、そこをファンタジーにもちょっと見える、でも現実でもある・・・子供たちが見ていて、まず楽しいってことが大事だと思うんですけど、そういう世界をどう作ろうかな~でかなり悩みました」

●色使いとかも工夫されているんですよね?
坂井さん「そうですね。色使いに関しても、わかりやすく言っちゃうと、ポップな色使いっていうのを心がけてやったっていうところがありますね」
●中里さんは、坂井さんからあがってきた絵を初めてご覧になった時、どんなふうに思いました?
中里さん「本当に率直に申し上げると、最初に見た時にめちゃめちゃ感動したっていうのがすごくあります。いちばん最初に拝見したのはカバー絵の、旅立つところだったんですけれども、もうなんて言うんでしょう・・・迫力もあるし・・・。
坂井さんの絵は、いちばん素晴らしいのは上質感だと思うんです。それに加えて旅立つ不安とか、かたやサクのほうはワクワクしてしょうがないとか、キャラクターの絵にすでに人格というか感情も乗っかっている・・・(大冒険は)横浜の港から出発しているんですけれども、その街から出発するっていう、日本から大きな冒険が始まるんだっていう、ワクワク感がすごくあって本当に感動しました。
あと、みなさんに見ていただきたいんですけど、坂井さんの絵にはちょっとした工夫があって、今回もニコのメガネに注目して欲しいんですね。ニコのメガネの秘密がわかると子供たち大喜びなんですよ! 自分が発見した!って・・・“クチとメガネをちゃんと見て!“って感じだったりとか・・・。
もうひとつ、それは絵だけではわからないんですけど、作画して受け取りに行った時に、坂井さんが “今回一切、画材を買うのをやめたんですよ”っておっしゃって、“え? どういうことですか?”って聞いたら、“今回はテーマが温暖化でエコでSDGsだから、家にある画材だけでやってみようと思っている“っておっしゃったんです。
それがすごく絵を通じて伝わってくるっていう、豊かだけど贅沢はしてないって言うのは変なんですけど・・・(笑)」

それぞれに果たせる役割がある
※地球温暖化の深刻な問題をわかりやすく子供たちに伝えるのはなかなか難しいと思うんですけど、編集者として、どんなことにこだわったんでしょうか?
中里さん「実は温暖化を超えて、主人公が愛されるかどうかっていうのが、物語である以上いちばん大事なところかなっていうふうに思うところがありました。
実は温暖化でCO2が悪者になっているって、みんなこのチーム『あちちち』は素直に“ちょっとひどくない?”っていう・・・もともとは、東京大学の先生の、地球の科学的ヒストリーみたいな論文を拝読していた時に、CO2がなかったらすべての生命は誕生しないみたいな、人間もそうですけど、炭素Cでできている以上・・・。
あと、大量に原始地球にあったCO2のCっていうのが原材料で、ほぼ植物も人類も、ありとあらゆる生き物もできていて、その過程でCO2が現在の量まですごく減っているんだよ、みたいな論文をみんなで読んだんですね。
それなのにCO2が悪いから温暖化だ! CO2ひどい! みたいに言われていて、これって意外とクラスの縮図に似ていますよねっていう、むしろ子供たちにはそれぞれに役割があるっていうことが伝わると、地球温暖化で僕たちが果たせる役割もあるって思ってもらえるのかもっていうのが、今回のストーリーを作る時のスタート・ラインでした。
だから、ニコちゃんを通じて、“私、ニコちゃんみたいにちょっと自信がないけど、私も何か役割があるのかも”って思ってくれる子がいたら、そこが私たち編集者としては、こだわりのポイントかなっていうのはありましたね」
●確かに。でも科学的な正しさと、物語としての楽しさ、そのバランス取るのが難しそうですよね?
中里さん「そうですね。子供たちと話していてすごくわかったのは、お勉強感がちょっとでも出てくると・・・子供編集者のみんなにも言われたんですけど、子供に言われて、ありがたかったのが“ちょうどいいバランスですね”とか言われて、“大人?”って思ったんですけど、“絵もストーリーもちょうどいいバランスでよくできていますよ!”とか言われました(笑)」
読み聞かせのバリアフリー動画、ナレーションは石ちゃん!
※教育系YouTube公式チャンネル「ボンボンアカデミー」で今回の科学絵本の読み聞かせ動画が公開されていて、ナレーションはタレントの「石ちゃん」こと「石塚英彦」さんが担当されています。この動画の仕掛け人は中里さんですか?

中里さん「いえ、私は仕掛け人とかっていうほどかっこいいものではなくて・・・今回の絵本は、国連の『1.5℃の約束』っていうメディアコンパクト初の絵本っていうことで、そのメッセージもお伝えさせていただいているんですね。
実は絵本って読めない子もいるよねっていう・・・学習障害であったり、視覚障害であったりっていうのがあって・・・。
坂井さんご自身もアニメーション作家さんでいらっしゃるんですけれども・・・。YouTubeで“聞く”っていう形でお話に参加できたりとか、字は読めないんだけど、動画だったら楽しめるっていう人がいるよねっていうところで、割と自然にバリアフリー動画を作りたいっていうことで、今回の動画をYouTubeで公開しようっていう形になりました。
石ちゃんがやってくださったのは、すごくふたつの意味でめちゃめちゃありがたくって・・・ひとつは、石塚さんが引き受けてくださったのは、ご自身が「GREEN×EXPO」の神奈川県の応援大使をやっていらして、まだ世に出ていませんっていう絵本のバリアフリー動画の読み聞かせを、 “そういう意義深いことなら”っていうことで、ものすごく快くお引き受けいただいたんですね。
もうひとつは『モンスターズインク』のサリーの声を石ちゃんがやっていらっしゃるので、『モンスターズインク』のサリーが読み聞かせしてくださっているんだったら、すごく嬉しいって言って、見たい子供たちもたくさんいるんじゃないかっていうことで・・・・。
『ボンボンアカデミー』は今118万人の子供たちの登録者がいるんですけれども、ダブルの意味で誰が仕掛け人というよりは、バリアフリーで子供に伝わったらいいよねっていうところに、多くの人の暖かい心が集まって作らせていただけたっていう感じでした」
絵本を通じて、子供を先生に

※科学絵本『あちちち 地球とだいじなやくそく! ニコとサクの大冒険』を見る子供たちがこんなことを感じ取ってくれたら、いいな〜と思うことはどんなことでしょうか? まずは坂井さん、お願いします。
坂井さん「僕がこの絵本に関わる時の気持ちと一緒なんですけど、答えがない中、わかりづらい問題なんだけど、すごく大きな問題でもあるし、人間の問題でもあるし、地球の問題でもあるし・・・その入り口だったり、きっかけを、これで見つけてもらえればいいな~と思いますね。その入り口が“楽しかった”から、始まるといいな~と思って作らせてもらいました」
●中里さん、いかがですか?
中里さん「どの本もそうかもしれないですけど、この本は特に読む子供の年齢であったり、読む人の性格によって、好き勝手に解釈してくれたら、本当に嬉しいっていうのはありますね。
ある子にとっては勇気が出る、勇気をもらえた、自尊感情が上がる本であってほしいし、ある子にとっては“僕がCO2を止める発明をするぞ!”みたいな理系に向かうきっかけになったりとか、ある子は坂井さんの絵がすごく良いから“私、絵描きさんになりたい!”とかであったりとか、“自由でいいんだよ”って・・・。
だけど、地球は1個しかないんだよ、後戻りはできないんだよっていう、君にもやれることがあるから、やれる形で参加してくれたらいいな~みたいな、自由な絵本であったらいいな~みたいな気がしています」
●絵本を子供たちに与えられるのは、周りの大人達だと思うんですけれども、パパやママ、学校の先生たちに伝えたいことはありますか?
坂井さん「絵本なんでやっぱり一緒に読んで、大人も一緒に考えてもらえればいいし、多分大人にとっても難しい問題なんで、大人にとっても入り口のひとつになるんじゃないかな~っていうのは思います」
●中里さんはいかがですか?
中里さん「私は先ほどお話に出た、子供編集者から学ぶことがすごくいっぱいあって、発見だったんですけど、温暖化のことって今、学校でとても教えられていて、子供のほうがめちゃめちゃ詳しかったりします。
かつ、子供ってダメな大人に教えるのが大好きだなっていう気がしたんですね。坂井さんが言ったように、親子で一緒に読んで、子供を先生にする大チャンスなので、だめパパと、だめママになって子供を先生にしてあげてほしいなって思います。
“温暖化って今こうなっているんだよ”とか、“えっ! そうなの?”とか、“どうやったら止められるの?”って、“やっぱりペットボトルはこうやってリサイクルしなきゃだめだよ!“とか、子供たちって大人に教えるの大好物なんだなって、めちゃめちゃ思ったので、ぜひこの絵本を通じて親子で子供を先生にして、めっちゃ子供に自信をつけさせてあげてもらえたら嬉しいなと思います」
※地球温暖化がもたらす様々な影響は、残念ながら益々深刻になっているように感じます。よりよい地球を子供たちに残すためには、どうしたらいいんでしょうね。坂井さん、どうでしょう?
坂井さん「どうしたらいいんですかね・・・僕もわからなくて・・・。でもこの問題があるってことをまず知ることと、あと絵本の中に書いている通り、みんなそれぞれ何ができるかっていうことを、それぞれ実行していけると・・・。
多分僕がやっているゴミ拾いなんかも、こんなゴミ拾いしたところで温暖化が止まるわけじゃないし、ってのはもちろんわかりながらも、やっぱりやっているので、別に温暖化のためにゴミ拾いしているわけでもないんですけど・・・みんながそういうことにちょっとずつ動くと何かが変わるのかもしれないなと思います」
●中里さん、お願いします。
中里さん「もうほとんど坂井さんがおっしゃってくださったので・・・ただこの本を編集者として作っている過程で、それこそ“国連にもご一緒したいです!”とかっていうふうに、同じ志としてお願いしに行った時に、本当にたくさんのご意見とたくさんの学びをいただきました。
地球のことを考えるって、仲間が増える作業でもあるんだなっていう感じがしたので、ひとりきりでやらなくていいこと・・・スポーツゴミ拾いみたいなのも生まれてきて、ワールドカップが開かれていたりとか・・・ものすごくたくさんの人をつないでいけるし、仲間ができる作業なので・・・。
意外とこの本を作ることで、仲間がこんなにいるなら、いつか止められるのかもって、かなりポジティヴに思いました。だからこの本を通して、まず仲間を作って欲しいなっていうのは、すごく思いました」
INFORMATION
二酸化炭素の「ニコ」と、最初は小さなゴミとして登場する「サク」の温暖化を止める方法を探す大冒険! 子供たちの意見を参考にしたというストーリーはもちろんなんですが、坂井さんの可愛くて親しみやすい絵に夢中になりますよ。ぜひお子さんと一緒に楽しんでください。
講談社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎講談社:https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000416859
タレント「石ちゃん」のナレーションによる、バリアフリーの読み聞かせ動画もぜひ見てくださいね。
https://www.youtube.com/watch?v=yuPh5Fh98q8&t=303s
絵本作家の坂井さんは、暮らしの中から表現が生まれて、それが作品になる、そういう暮らし方をしたいと思い、地域のつながりを通して、畑を借りて野菜を育てたり、近くの川で子供たちと一緒にゴミ拾いをして、そのゴミでキャラクター作りをするなどの活動もされています。ぜひ坂井さんのオフィシャルサイトもご覧ください。
2026/5/31 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. A MILLION DREAMS / ZIV ZAIFMAN, HUGH JACKMAN & MICHELLE WILLIAMS
M2. TRY EVERYTHING / SHAKIRA
M3. LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS / AIMEE MANN
M4. L-O-V-E / NAT KING COLE
M5. 透明 / Novelbright
M6. 君がいないと / 石塚英彦 / 田中祐二
M7. I NEED TO WAKE UP / MELISSA ETHERIDGE
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/5/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、文筆家そしてエッセイストの「木谷美咲(きや・みさき)」さんです。
木谷さんは2005年に、立ち寄った園芸店で「ハエトリソウ」という食虫植物に出会い、一目惚れ! 棘のついた二枚貝のような独特なフォルムに魅了され、それ以来、どっぷりと食虫植物にハマっていらっしゃいます。

そして「ウツボカズラ」を使った料理があることを知り、食虫植物をめぐる食文化にも興味が拡大! しまいには『ウツボカズラ飯紀行〜食虫植物と食文化をめぐる冒険』という本を自費出版するほど、虜になっています。
そんな木谷さんに、ボルネオ島のジャングルに自生するウツボカズラの特徴や、先住民の伝統食「ウツボカズラ飯」についてうかがいます。いったいウツボカズラ飯とはどんな食べ物なのか、その実態に迫ります。
☆写真:木谷美咲

ウツボカズラ、素敵な「ヴィーチ」!?
※もともと植物には関心はなかったという木谷さんは、先ほども触れたように、園芸店でハエトリソウに出会って以来、すっかり植物好きに。野山に自生している植物の写真を撮りに行くほど、のめり込んでいらっしゃいます。
木谷さんが自宅で育てているウツボカズラ、その野生種はおもに東南アジアのタイ、マレーシア、インドネシアのほかに、マダガスカル、セイシェル、オーストラリア、そしてインド、ニューカレドニア、スリランカなどの高温多湿のジャングルに自生。その特徴は、葉の先端が袋状になっていて、そこに消化液を溜め、おびき寄せた虫を落として、消化・吸収しているところにあります。

●ウツボカズラは虫をおびき寄せるために、なにか臭いを出しているんでしょうか?
「ウツボカズラの袋状になったものを『捕虫袋』と呼ぶんですが、その袋全体から蜜を分泌させて、その蜜であったりフェロモンで虫をおびき寄せて捕まえています」
●そもそもどうして植物なのに虫を食べるようになったんでしょうね?
「不思議ですよね。植物であるにも関わらず、虫を捕まえてしまうっていうのは、とても面白い生態だと思うんです。
食虫植物が生える場所が貧しい栄養の土壌で厳しい環境なんですね。その厳しい環境で育つために虫を捕まえて、有機物を補助的に栄養にして育っています」
●世界では何種類ほどのウツボカズラが見つかっているんですか?
「原種でおよそ170種確認されています」
●170種! その中でも木谷さんがお好きなウツボカズラは、何というウツボカズラで、どんな特徴があるんですか?
「ウツボカズラはとても魅力的な植物なので、どの種類っていうのが選びきれないっていう感じなんですけど、特に思い入れの深い種類もあります。
特に好きなのが、自生している場所に見に行った『ヴィーチ』っていう種類で、捕虫袋が顔ぐらい大きいんです。で、入り口の部分をえりって呼ぶんですけど、そのえりの部分がとても広くて、造形がとてもユニークで素敵なヴィーチっていう種類が好きです」

●顔ぐらいの大きさって、実際に見ると迫力ありそうですね!
「はい、非常にありました!」
●それは、どのあたりに自生しているんですか?
「私が行ったところはボルネオ島の“マリアウベイスン”・・・ボルネオ島のマレーシア領はサバ州とサラワク州に分かれているんですけど、その北部のサバ州にマリアンベイスンっていう、すり鉢状になった地域がありまして、その場所に自生していました」
●ウツボカズラが自生しているその場所について、もう少し詳しく教えていただけますか?
「ほかの植物がなかなか育つことができない環境の土壌に育っています。で、ほかの植物が栄養が足りなくて、細いペンシル状になっている木とかが見られるようなところであったり、光も放射状に差し込むようなところであったり・・・で、湿度が高いですね」

●ジメジメしているんですね。
「はい、根元がコケむしているようなところなんですけど、土壌が豊かではなく、酸性土壌の貧しい栄養の場所です」
●よくそういった場所で生き延びられますよね。
「そういうところだからこそ食虫植物は育って、ほかの植物との競合を避けて、ニッチな場所に適用して育っているんですね」
●そういった場所で、どういうふうに育っていくんですか?
「ウツボカズラはツル性の植物ですので、ほかの植物に巻きつくようにして、上に伸びています」
●結構高さがあるっていうことですか?
「そうですね。観察したものでも2メートルぐらい、ほかの木にぐるっと螺旋状に巻きついて、鈴のように袋をぶら下げて育っていましたね」
●へ〜! どんな花が咲くんですか?
「非常にユニークな形の花なんですけど、『集合花』っていう細かい花が軸にいっぱいつく形で咲いています」
(編集部注:ウツボカズラの花は、赤みを帯びた褐色や茶色など地味な色合いで、その香りは・・・生臭いというか、かなり独特な臭いを発するそうです)
衝撃のウツボカズラ飯!
※木谷さんの本『ウツボカズラ飯紀行〜食虫植物と食文化をめぐる冒険』の表紙写真に、袋状のウツボカズラにお米を詰めたようなものがたくさん並んでいます。これが「ウツボカズラ飯」なんですか?

「そうなんです。食虫植物のウツボカズラの捕虫袋を使った料理があるってことで、それがウツボカズラ飯なんです」
●これは東南アジアのローカルフードっていうことですか?
「はい、そうなんです」
●おもにどのあたりの料理なんでしょう?
「ウツボカズラが自生している地域のマレーシア、タイ、フィリピンを中心に作られている、先住民族の伝統料理です」
●木谷さんはこのウツボカズラ飯の存在を知ったあとに、ご自身でも作られたんですよね?
「はい、作りました」
●そもそもどうして作ってみようと思われたんですか?
「まず、このウツボカズラの捕虫袋にご飯を入れるっていうのに、すごく衝撃を受けました。ウツボカズラ飯を知る前に食虫植物を愛好していましたので、ウツボカズラっていうと、どうしても観葉植物のイメージのほうが強かったんです。
鑑賞して楽しむものっていう固定概念が自分の中にあって、それを食材って言いますか、料理の素材として使うっていうのが本当に・・・なんでしょう・・・自分の価値観がガラガラって崩れていくような衝撃を受けて、その次に思ったのが、どんな料理なのか自分で作って味を確かめてみたいって思うようになったんです」
●どうやって作り方を調べたんですか?
「作り方をネットで検索したり、いろんなかたに聞いたりしてみたんですけど、まったくわからなくて・・・それで、わずかな断片のような情報が、例えば英文であったり、現地を取材した記事の断片であったりみたいなものを見つけて、つなぎ合わせて作ってみました」
●味付けとかって、どういう感じなんですか?
「最初は味付けもまったくわからなかったんです。材料だけ書かれていて・・・ウツボカズラの捕虫袋の中にもち米を入れて、ココナッツミルクで味付けしてあるっていうような記事がありました。
で、ココナッツミルクっていうと、お菓子みたいな感じかなって、私は思ったので・・・砂糖やもち米を使ってバナナの葉で蒸す、似たような料理が東南アジアにありますので、それを参考にしてバナナを具にして入れてみたりとか、いろいろ試行錯誤して作ってみました」
●最終的にたどり着いたっていうことなんですね!
「はい! ただいくら作ってもそれが本当に正しいのかっていうのが、まったく確信が持てなかったです」

自作のウツボカズラ飯に罪悪感!?
※ウツボカズラ飯の調理方法は「蒸す」んですか? それとも「茹でる」んですか?
「蒸す方法と茹でる方法が断片的な情報で得られまして・・・でもどっちが正解かわからないので両方やっています」
●ウツボカズラの袋は食べないっていうことですよね? 容器のようにして使うっていうことですよね。
「それも最初わからなかったので、袋を食べてみたりとか、いろいろしてみたんですが、現地の情報がわかるにつれて、捕虫袋は完全に器としてしか使っていないっていうのがわかりました」
●ウツボカズラの袋は、どうやって手に入れたんですか?
「(自分で)栽培しているものです」
●ウツボカズラを調理する時は、どんなお気持ちになりました?
「それがなんかあれなんですよね・・・罪悪感が最初ありました」
●罪悪感ですか? どうしてでしょう?
「なんでしょうね(苦笑)・・・うまく表現しにくい部分なんですけど・・・ウツボカズラは希少な植物ですし、捕虫袋を立派に育てるのもなかなか難しいので、立派な袋がついた時は観賞して、すごく嬉しい気持ちになるんですね。
それをわざわざ、いい状態の時に切ってしまうっていうのが、つらい気持ちになりますし、植物を育てている上で感情移入をしているので、切ってしまってかわいそう・・・みたいな気持ちが芽生えてしまうんですね」
●愛情込めて育ててっていうことですよね。
「ただ不思議ですよね・・・例えば、野菜を育ててうまく育った時に、収穫する時は罪悪感は感じないと思うんですよ」
●確かにそうですね。
「なんですけど、観葉植物ってイメージが自分の中にやっぱり根深いところに根をおろしているみたいで、どうしてもその抵抗がありましたね。これを料理してしまうのかっていう・・・」
●実際ご自身で作られたウツボカズラ飯のお味はいかがでしたか?
「まあ、こういう味なんだ! って思いつつも、本当にこれでいいのかなって、これが正しいレシピなのかなっていう疑いが常にありました」
●もち米ってことは、食感はもちもちしているっていうことですか?
「そう! もちもちしています。ココナッツミルクの風味も効いていて、食べやすく癖もなく自然な味わいですね。特にウツボカズラに特有の癖がある香りとか味はありませんので、本当に器として機能しているというか・・・」
(編集部注:食虫植物の普及活動を行なっている木谷さんは、虫つながりということで、昆虫食の愛好家のかたたちと仲良くなって興味の範囲が広がり、イナゴや蜂の子を具にしたウツボカズラ飯を作ったこともあるそうです。もち米とよく合って美味しかったそうですよ)
本場のウツボカズラ飯、そのお味は?
※実際にウツボカズラ飯の調査に行く機会があったんですよね?
「そうなんです。食虫植物の取材にボルネオ島を訪れまして、可能であれば、ウツボカズラ飯もその現物を見てみたいと思っていたんです」
●実際いかがでしたか? 実物に出会えましたか?
「それが最初に行った時が2010年なんですけど、その時はウツボカズラ飯を見つけることができなかったんです。ただ現地のかたに“あるよ!”っていう話をお聞きすることができて、それはすごく嬉しかったですね。
断片的な情報でしか知り得なかったウツボカズラ飯が、本当にあったんだっていうのがわかりましたので・・・」
●本場のウツボカズラ飯に出会えたのはいつ頃になるんですか?
「それが3年前の2023年になります」

●本場のウツボカズラ飯のお味はいかがでした?
「それが(味付けが)まったく違ったので、自分が今まで作っていたのが違ったんだ! っていうのがわかって、それもまた衝撃でした」
●どんな味だったんですか?
「それが、塩味だったんですね!」
●ええ~〜っ、甘くないってことですか?
「甘くない、かなり・・・しかも塩分が強い味で・・・」
●しょっぱい感じ?
「そうです! ココナッツミルクに塩と、あと現地の醤油に似たソースがあるんですけど、それが使われているような味で・・・おやつの甘いお菓子みたいなのをイメージしていたのが、しっかりとした、なんでしょう・・・主食になるようなご飯でした」
●ええ~っ! 地元のかたがたは召し上がっているものなんですよね?
「そうですね」

●郷土料理というか伝統料理というか・・・。
「はい、そうですね。ビダユ族っていう先住民族のかたがたの間で作られている料理でした」
●地元のかたがたにとっては、自然な発想でっていう感じなんですか?
「郷土料理だと思います」
●袋状のものを器にっていう、その発想が面白いですよね。
「面白いですね。その捕虫袋は普段、消化液を溜めているような袋ですので、水を漏らさないですし、耐久性もバナナの葉みたいにしっかりあるんですね。なので、植物を器に使う文化の中でも、ウツボカズラの捕虫袋は非常に優秀な素材だと思います」
●もち米を入れるってことは、破れたりしないのかなって思っちゃいますけ
ど・・・。
「結構丈夫なんです、繊維質で・・・」
●かなり強度があるんですね?
「そうですね。熱を加えても大丈夫っていうのが本当に素晴らしいですね」

謎だらけ、だからロマン!
※ウツボカズラ飯の調査は、これからも続けるんでしょうか?
「ぜひ続けていきたいですね」
●やはり(調査に行くのは)ボルネオ島になるんですか?
「はい、ボルネオ島です。ただ、タイやフィリピンでもウツボカズラ飯自体は作られているっていう情報を得ていますので、そこの調査もしてみたいです。あとビダユの人たちがウツボカズラ飯を作っているので、ビダユの人たちと一緒に作ってみたいです。もし叶うなら!」
●改めてになりますけれども、ウツボカズラを含めて食虫植物のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
「そうですね・・・食虫植物やウツボカズラ飯の魅力は、謎に満ちているから・・・ウツボカズラ飯もどういう料理なのかまったくわからないところから始めて、徐々に全容が明らかになっていき、ただそれでもわかりきれないところがあります。
食虫植物にしてもそうで、なんでこういう生き方をしているのか、どうしてこういう形なのか、非常に謎に満ちた魅力的な植物だと思います。なので、これらのものの魅力はロマンですね」
INFORMATION

木谷さん初の自費出版本をぜひ読んでください。謎だらけだったウツボカズラ飯を追いかけて17年! わずかな情報をもとに作ったウツボカズラ飯の試行錯誤ぶりや、オリジナル料理のレシピのほか、本場のボルネオ島でついに出会ったウツボカズラ飯の実態など、興味深く面白いエッセイです。口絵のカラー写真も必見です。
お買い求めは木谷さんのオフィシャルサイトから、どうぞ。
https://kiyamisaki.com/
2026/5/24 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. TORN / NATALIE IMBRUGLIA
M2. UNDER PRESSURE / QUEEN & DAVID BOWIE
M3. CLOCKS / COLDPLAY
M4. UNSTOPPABLE / SIA
M5. Stardust / Official髭男dism
M6. JUST THE WAY YOU ARE / BRUNO MARS
M7. I STILL HAVEN’T FOUND WHAT I’M LOOKING FOR / U2
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/5/17 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「サンシャイン水族館」飼育スタッフの「鶴橋 梓(つるはし・あずさ)」さんです。
今週は「サンシャイン水族館」の「サンゴプロジェクト」をクローズアップ! 2006年に沖縄県恩納村(おんなそん)との連携で始まり、今年20周年を迎えたこのプロジェクトは、ふたつの活動が軸になっています。
ひとつが、サンシャイン水族館で育て、殖やしたサンゴを海に還す「サンゴ返還プロジェクト」。そしてもうひとつが、恩納村の海でサンゴを育て、産卵によってサンゴを殖やす「サンゴ礁 再生プロジェクト」です。
今回、番組の取材に応えてくださった飼育スタッフの鶴橋さんは、そんな「サンゴプロジェクト」に初めから携わっているかたです。
もともと生き物好きだった鶴橋さんは子供の頃、連れて行ってもらった水族館でペンギンが大好きに! そして行くたびに、わくわく楽しい水族館で働きたい! と思うようになり、早くも中学生のときには進路を決定。現在の東京海洋大学に進学し、おもに魚の養殖や繁殖を研究。卒業後は狭き門を突破し、めでたくサンシャイン水族館のスタッフに。

現在は魚類チームに所属し、サンゴのほか、海水や淡水の魚、両生類、クラゲやイカなど、幅広い生き物を担当されています。
今回、取材班がまず見学させていただいたのは、最初にお客様を迎える大きな水槽。そこはサンゴ礁を再現してあって、カラフルな小魚と、色とりどりのサンゴを見ていると、南国の海に潜っているような感覚になりました。

そしてその隣には「サンゴプロジェクト」で育てているサンゴの展示水槽が並んでいました。ちなみに、サンシャイン水族館全体では国内外から集めたおよそ30種のサンゴを展示しているそうです。
今回、鶴橋さんにサンゴを水槽で育てる難しさや、恩納村の海に戻したサンゴの現状のほか、神秘的なサンゴの一斉産卵についてもうかがってきました。その時の模様をお届けします。
☆写真協力:サンシャイン水族館

サンゴは植物? 動物?
※まずは、改めてサンゴとはどんな生き物なのか、教えていただきました。
「これはいつも私がお客様にお尋ねするんですけど、サンゴは植物でしょうか? 動物でしょうか? どちらだと思いますか?」
●植物だと思っていたんですけど・・・違うんですよね?
「そうなんです。正解は動物なんですね。結構、植物だって思っているかたも多くて、聞くとだいたい半分半分ぐらいなんですね。
ちなみにその動物の中でも近い仲間をお伝えすると、これもみんな驚くんですけど、実はサンゴは刺胞動物(しほうどうぶつ)というグループに属しています。同じグループに属している生き物は、代表的なものだとイソギンチャクとか・・・イソギンチャクはなんとなく、みんな“おぉ~”となるんですけど・・・クラゲやイソギンチャクと同じグループに属しているんですね。共通点は“刺胞”っていう毒を持っていることです」

●日本ではサンゴは何種類、確認されているんですか?
「サンゴにもいろんな種類があるんですけども、一般的にサンゴ礁を作る造礁性サンゴっていう括りだと、だいたい400種ぐらいって言われています」
●へえ~、世界だと・・・?
「世界もいろんな説があるんですけども、800種以上は確認されているそうですね」
●結構多いですよね?
「そうですね。いっぱいいますね」
●サンゴが分布しているのは、おもにどのあたりなんですか?
「サンゴは地球でいうと、基本は北緯30度から南緯30度の範囲の中で分布しています。これはあくまでもサンゴ礁として形成されるサンゴたちが暮らしているんですね。日本もその北緯30度の中に入るんですけれども、日本の中ではサンゴ単体としてですと、もう少し北のほうでも見られます。
数字で言うとちょっとわかりづらいと思うので、例えば、沖縄諸島などがサンゴ礁が見られるところになるんですけど、サンゴ礁の北限域だと九州の壱岐(いき)、わかりますかね。そのあたりが北限域になります。
サンゴっていう生き物だけで言うと、太平洋側ですと東京湾でも見られますし、日本海側ですと佐渡、そのあたりまで分布しています」
●サンゴが生息するのは暖かい海ですよね?
「そうですね。基本的には高い温度(の海)で暮らしていて、だいたい冷たくても20度とかそれぐらいを好んでいて、熱いのもちょっと苦手なため、28度から30度ぐらいが(水温の)上限値って言われています」
●サンゴが育つための条件みたいなものってあるんですか?
「はい、サンゴが暮らしているところは、とても水が澄んでいて綺麗な海なんですね。ちょっと専門的な言葉で言うと、栄養塩が少ないっていいます。
(栄養塩とは)窒素とかリンとか、そういったものが河川から流れてきたりするんですけれども、サンゴが暮らしているところは比較的(栄養塩が)少ないです。栄養塩を食べて植物プランクトンとかが増えると、海は濁っていくんですね。サンゴが暮らしているところは、そういったプランクトンが非常に少なくて澄んだ海、そのお陰で太陽の光が燦燦と降り注ぐ海になっています」
(編集部注:沖縄本島のほぼ中央部、西海岸にある恩納村には多くの美しいビーチがあって、海岸線に大規模なリゾートホテルが立ち並んでいることでも知られています。
そんな恩納村は2018年に「サンゴの村 宣言」を行ない、「世界一サンゴにやさしい村」を目標に、毎年3月5日の「サンゴの日」には一斉にビーチクリーンを行なうなど、豊かな自然環境を守るための活動に取り組んでいるそうです。恩納村の海で、これまでに記録された造礁サンゴ類は、224種にものぼるそうです)、年間でトータル600〜700人ほど。オンラインの講座の参加者は年間200〜300人くらいだそうです)
サンゴの危機、白化現象
※世界の海のサンゴが危機的な状況に置かれていると、聞いたことがあるというかたは多いと思います。そのあたりについてもお聞きしました。
「最近よくニュースとかで白化現象という言葉を聞くと思うんですけれども、今世界中でサンゴの白化現象が話題になっています。サンゴ礁で有名なグレートバリアリーフでもそうですね。2年くらい前に大規模な白化のニュースが流れていましたね」
●原因はやっぱり温暖化ですか?
「一概にそれだけではないんですね。歴史の中では、私たちの人間活動の影響によってサンゴの数を減らしてしまったりとか、影響を受けているっていうこともあるんですけど、先ほどお話した白化現象に関しては、最近は海水温の上昇が大きな影響としてわかっています」
●サンゴが絶滅しちゃったら、海はどうなっちゃうんですか?
「実はサンゴが暮らしているサンゴ礁は、海全体の面積比率の中では、たったの0.2%しかないんですけど、海で暮らしている生き物の種類としては、25%暮らしているんですね。
サンゴに依存していたりとか、棲み家として利用していたりとかしますので、サンゴがいなくなってしまうことによって、その生き物たちもいなくなってしまう可能性があるんですね。多様性のあるすごく大きな生態系ですので、多くの生き物の存在も危ぶまれるかもしれないってことになります」
白化現象を見て、きれい。これはいかん!

※「サンゴプロジェクト」が先月4月に20周年を迎えました。鶴橋さんは最初からこのプロジェクトに携わってこられたということで、「サンゴプロジェクト」を始めるに至った経緯や目的を教えていただきました。
「私がちょうど入社したタイミングで、このプロジェクトの企画自体が動いていたので、私は本当に“あっ、そういうふうに始まっていたんだ”っていうところからではあったんですけれども・・・その時に当時のプロジェクトを進めていたリーダーが、結構ダイビングが好きなかただったんですね。
(そのリーダーが)ダイビングで一般のお客様と潜っていた時に、目の前に白化したサンゴの大群落があったそうです。その時にダイバーのかたがたが、きれい!とすごく感動されていたというエピソードを聞きました。
当時の先輩は、“これはいかん!と・・・サンゴが苦しんでいる状況なのに、海のことや生き物のことが好きなダイバーでさえも、ちゃんと知らないんだな!“ということを実感して、やっぱり水族館としてこの危機的状況をちゃんと伝えて、サンゴを守るっていうことをみなさんに発信していきたいなっていう思いから、このプロジェクトはスタートしたと聞いています」
●このプロジェクトは沖縄の恩納村と連携するプロジェクトですけれども、沖縄生まれのサンゴを持ってきて育てる、みたいなこともするんですか?
「そうなんです。沖縄県恩納村で育ったサンゴを恩納村からお預かりして、水族館で育てています」
●水槽の水温とか水質とか、いろいろ整えるのも大変だと思うんですけれども、最初からうまくいきましたか?
「いや~そんなことはないんですね(苦笑)。今もなんですけど、日進月歩で、どうやったらサンゴにとっていちばん快適な環境になるかな〜と・・・サンゴの種類によっても好む光の波長帯が違ったりですとか、明るいのを好むタイプだったりとか、あと成長していくにつれても環境を少し変えてあげたりとか、そういったこともあるので、日々サンゴと対話しながら、どんなのがいいかな~っていうので調整しています」
●特に何がいちばん難しかったですか?
「そうですね・・・いちばん最初に苦戦したのがやはり光の調整ですかね」
●それはどのように対応していったのですか?
「サンゴの生命活動を維持していく中で、サンゴの体の中には褐虫藻(かっちゅそう)と言われる植物プランクトンを共生させているんですね。なので、サンゴの体の中に植物的な要素があると考えて欲しいんですけど・・・。
その褐虫藻が太陽の光によって光合成をして、得たエネルギーを使ってサンゴが自分の生命活動だったりとか成長だったりとか、防御免疫だったりとか、そういったものにエネルギーを振り分けていくんですね。
なので、適した光を当ててあげないと適した光合成ができない、適したエネルギーをサンゴが得られないっていうところがあるんですね。自然の中から持ってきたものを人工的な環境で飼う、そこの調整がとても難しかったです」
●沖縄・恩納村の海に戻せるくらいまで成長するのは、どれくらいの日数がかかるんですか?
「サンゴの種類によってもそこはまちまちなんですけれども、私たちがこのプロジェクトで取り扱っているサンゴのほとんどが、ミドリイシ科と言われているグループのサンゴなんですね。
こちらは自然界の中でも成長が早くて、1年間で10センチ以上伸びるようなものもあるんですね。そういったものですと、水族館で返還する用の新たなサンゴを用意してから、早いと半年ぐらいで戻すこともできます」
(編集部注:今回、特別に水族館の裏側、バックヤードにも入れていただいたんですが、サンゴ礁を再現した大きな水槽では、およそ40台以上の照明を使って光を調整。いろんな色を当てるほか、朝と夕方は薄暗く、昼間は明るくするなど、なるべく自然な状態を再現するような工夫をしているとのことでした)

脅威のオニヒトデ
※自然界では、サンゴはどんな方法で繁殖しているのか、教えていただきました。鶴橋さんによると「有性生殖」と「無性生殖」があって、有性生殖は海中に放出された卵が受精して殖える方法。一方、無性生殖は強い波の影響などで折れた枝の一部がほかの岩などにくっ付いて成長、いわゆるクローンを作る方法だそうです。
●続いて、初めて恩納村の海にサンゴを植え付けしたのは、いつ頃かお聞きしました。
「プロジェクトが始まったのが2006年だったと思うんですけれども、植え付けできたのが2008年の7月ですね」

●20年間でどれくらいの数を植え付けることができたんですか?
「卵から育てたものを含めると全部で約130ですね」
●どんな方法で(サンゴを)植え付けするんですか?
「基本的には新しい植え付け用のサンゴを用意するのに、まずは基盤にサンゴを固着させるんですね。その基盤がスティック状になっていまして、しっかりとサンゴが固着されたら、沖縄の海に持って行って岩盤に植え付けをしていくんですね。植え付けする時には岩盤にちょっと穴を開けて、スティックを差し込むというような形で、割と簡単にやれてしまいます」
●鶴橋さんもその現場には行かれたんですか?
「はい、何度も立ち会っていますよ」
●潜ってサンゴを固定するんですね?
「そうです、そうです。そういうことです」
●どんなお気持ちでした? 植え付けを終えて・・・。
「いちばん最初に植え付けをやった時は、なんかちょっとひと安心・・・水族館で飼育もすごく難しかったので、苦労しながらちょっとずつ、それでも成長したものを戻せたっていう安心感と充実感があったんですけど・・・でもそこはプロジェクトの通過点でしかなくて、無事に大きく育ってくれるといいな〜という気持ちで見ていました」

●その後も数回にわたって沖縄・恩納村の海にサンゴを植え付けて、経過を見つつメンテナンスもされてきたということですけれども、驚くような出来事もいろいろあったそうですね?
「そうですね。嬉しい驚きと悲しい驚きといろいろあるんですけれども、まずはちょっと嬉しい驚きから言うと・・・最初はサンゴだけを植え付けているので、そこにはサンゴしかないんですね。
先ほどもサンゴにはいろんな生き物が関連していますよっていう話をしたんですけど、そのサンゴに新たな生き物たちが棲み家として利用してくれていた時・・・それはサンゴが成長して隠れ家として需要を受けていたんだな~とか、その植え付けたサンゴの周りで生き物の数が増えていったりっていうような過程が見えてきたことはすごく嬉しかったですね。
悲しかったことは、やっぱりすべてが成長したりするわけではなくて、途中で死んでしまったりするサンゴもある中で、先ほどもお話に出たんですけど、白化現象も目撃したんですね。サンゴって基本は褐食色をしているんですけど、その白化が起きた時はすべてが真っ白・・・本当に悲鳴をあげているというのは、こういうことなんだなっていうくらい真っ白で、その時は驚きでした。

あとは、サンゴを食べてしまうオニヒトデという生き物もいるんですけど、すごく順調に、10年くらい白化も乗り越えて育って見守っていたサンゴが、ある日オニヒトデによって、一瞬でおそらく2〜3日でほぼ全滅状態になった、そういったこともありました」
●その時はかなりショックだったんじゃないですか?
「そうですね。自然の摂理ではあるんですけれども、ちょっと憎くなりましたよね」
感動! サンゴの一斉産卵
※鶴橋さんは、沖縄・恩納村の海でサンゴの一斉産卵に遭遇されたことがあるそうですよ。その時の状況をお話しいただきました。

「このプロジェクトを始めて、私たちがサンゴの産卵に初めて立ち会えたのが2017年だったんですけど、私もその時に初めて見ました」
●なかなか目撃することって難しいんですよね?
「そうなんですね。いつサンゴが産卵するのか、これぐくらいの時期だよねっていうのは、だいたいわかっているんですけれども、その中のいつ、どの日にっていうのがわからないっていうのと・・・私たちは東京から向かっているので、予定している期間の中で産卵に立ち会えるのかっていうのが非常に難しかったです」
●どんな時に産卵するんですか?
「サンゴによって産卵時間はまちまちなんですけども、基本的には夜に産卵するものが多いです。私たちが目撃したサンゴに関しては、夕暮れぐらいから産卵をするものでしたね」
●一斉にぶわ~っと産卵するんですか? どんな状況なんですか?
「まず産卵するっていうその日、先ほどいつするかわからないって言ったんですけど、一応(産卵の)サインが夕方くらいに現れるんですよね。サンゴは卵と精子を一緒に包んだカプセルを体内で作るんですけども、きょう産卵するよ~って日は、そのカプセルをサンゴの口元あたりにセットするんですね。
なので、私たちが見ていたのは7時半前後ぐらいで産卵するタイプのサンゴだったんですけど、きょう産卵するよ~って日は5時とか6時ぐらいには、もう口元あたりに薄ピンク色のサンゴのカプセルが見えているんですね。
先ほど一斉っておっしゃったんですけど、同じ種類のサンゴがみんなその時にセットしているんですよね。サンゴたちってお魚たちのように泳げないので、やっぱりタイミングを合わせないと、なかなか受精ってできないんですよね。なので、サンゴのメカニズムとして一斉に産卵をするという戦略を取っているそうです」
●実際ご覧になっていかがでした?
「もう感動ですね(笑)。目の前でピンク色の雪が、降ってくるのと逆状態で浮上してくるんですね。すごい数のサンゴの卵が海面に広がっていて、それもいろんなサンゴから一斉に。感動でしたけど、お仕事であったことも忘れずに写真を撮ったりとか、みなさんにお届けできるように動画を撮ったりとか・・・。
その感動ひとしおのあと、これも自然ならではと、すごく感じたんですけど、次にやってきたのは小魚の群れだったんです。小さなイワシの群れがすごい数で押し寄せてきて、卵を食べていきました。
だから自然の中で卵がちゃんと無事に育っていくっていう厳しさも同時に感じましたし、やっぱり魚たちもそういったものを補食して生きていくので、自然の営みも見られましたね。サンゴの産卵を見るツアーとかも結構、沖縄では組まれているので、ぜひみなさんにも見てほしいですね」
●すごく神秘的な瞬間ですよね。水槽で産卵することはないんですか?
「それは今がんばって目指しているところです。まだなかなかそういったところまでたどり着けてはいないんですけれども、水槽で産卵できるようになると海に潜らなくても、みなさんにお見せできたりとかするのかな~と思っています。ゆくゆくはサンシャイン水族館でも(サンゴの)産卵ができたらいいなと思って、日々取り組んでおります」
(編集部注:今回の取材では、バックヤードで育てているサンゴの水槽も見せていただきました。その写真は以下に掲載)

ただただ無事に。親心
※普段、水槽で飼育しているサンゴを見ていて、どんなことを感じるのか、お聞きしました。
「飼育しているサンゴに関しては、もうただただ育ってほしいという気持ちでなんですね。サンゴって表情がないですよね。魚とかって目が動いたりとか、なんかちょっと苦しい時には苦しそうなアクションするんですけど、サンゴって結構ギリギリまでわからなくて・・・なので、どうやったらサンゴをいちばんいい環境で育てられるか、日々考えておりまして、無事に育ってほしいな~っていうところがいちばんの思いですね」
●沖縄・恩納村の海に潜ってサンゴを見ると、また別の見方になります?
「そうですね。私もそうだったんですけど、一緒にプロジェクトをやってくれているメンバーの中でも、自分が新たなサンゴを基盤に固着させて持って行って、植え付けたサンゴが成長していく過程を見ていくと、やっぱり親心みたいなところがありますよね。ただただ成長してくれることが嬉しい、みたいなのもありますね。
イベントを通じてなんですけれども、私たちの活動を紹介する中で、参加してくれたお客様が、“ぜひ(サンゴを植え付けた)実際の海を見たい”みたいなところで、本当に恩納村の海にダイビングしに行ったとか、そういった事例がありましたね」

●では最後に「サンゴプロジェクト」を通して、どういうことを伝えたいですか?
「2024年にも沖縄全体でサンゴの大規模な白化があって、サンゴのピンチの状態は脱しきれておりません。私たちもこの活動を通して、サンゴの回復を目指していきたいと思っているんですけれども、私たちだけじゃなくて、これは地球全体の課題と捉えて、みんなで何ができるか一緒に考えていってほしいなと思っています」
INFORMATION
「サンゴプロジェクト」が20周年を迎えたということで、先月にはサンシャインシティと恩納村が包括連携協定を締結。プロジェクトの活動を基礎に、環境や観光など、幅広い分野でさらに連携を深めていくそうです。
サンシャイン水族館では、売り上げの一部がサンゴの植え付けや保全活動に活用される、オリジナルのアクアリウムタンブラーなども販売。また、20周年を記念して募金箱も設置されています。ぜひご支援ください。

「サンゴプロジェクト」について、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
◎サンゴプロジェクト:https://sunshinecity.jp/file/aquarium/coral_project/
耳寄りな情報として、サンシャインシティで、5月22日から31日まで、沖縄をテーマにしたフェスタが開催されますが、サンシャイン水族館の特別企画として、なんと! バックヤードで飼育しているサンゴを見て学ぶ、期間限定の特別な探検ガイドツアーが行なわれますよ。詳しくは、サンシャイン水族館のオフィシャルサイトを見てください。
◎サンシャイン水族館(イベント情報):
https://sunshinecity.jp/aquarium/event_performance/event/entry-37315.html
◎サンシャイン水族館:https://sunshinecity.jp/aquarium/
2026/5/17 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. BEYOND THE SEA / STEVIE WONDER
M2. SPIRIT OF THE SEA / BLACKMORE’S NIGHT
M3. ホワイトビーチ / HY
M4. I’M ALIVE / CELINE DION
M5. GOLDEN HOUR / JVKE
M6. 島人ぬ宝 / BEGIN
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/5/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、八ヶ岳山麓にある「風と土の自然学校」の代表「梅崎靖志(うめざき・やすし)」さんです。
実は梅崎さんには12年前にもこの番組にご出演いただいたことがあって、当時、拠点があった山梨県都留市に取材でお邪魔して、自然学校のプログラムを少し体験しながらお話をうかがったということなんです。その時の模様は番組ホームページに載っていますので、ぜひご覧ください。
きょうは「風と土の自然学校」で行なっている自給率をアップするための大人向けのワークショップのほか、梅崎さんご家族の自給自足的な暮らしについてもうかがいます。
☆写真協力:風と土の自然学校

我が家の自給率をアップ

※八ヶ岳山麓の、長野県諏訪郡富士見町に拠点がある「風と土の自然学校」は2020年4月に山梨県都留市から、現在の場所に移転。設立当初から「自給自足的な循環する暮らし」を掲げて活動されています。
●そちらのオフィシャルサイトを拝見すると「自然農とパーマカルチャーの暮らしを学ぶ大人の自然学校」と書いてありました。改めて、どんな自然学校なのか、教えてください。
「私たちの自然学校は、テーマが『我が家の自給率をアップする』、自分の手で循環する暮らしを作るということで、いろいろな講座を行なっています」
●いつ頃、どんな目的で設立されたんですか?
「もともとは、2003年に『風と土の自然学校』という名前で活動を始めたんですね。で、僕のバックグラウンドが自然体験を通じた環境教育なんです。学生の頃からそういうことに関わり始めて・・・。
で、自然体験は自然のことを好きになったり、関心を持ったりする時に、すごく大事であるのと同時に、自然体験するだけでは、やっぱり暮らしをどう変えていけばいいのかわからないっていうこともあるので、自然と調和した生き方、暮らし方、これをテーマに伝えるということを自然学校の形でしていきたいと、それがそもそもの始まりなんですね」

●自然学校の運営は、ご家族でされているんですよね?
「はい、そうです。僕たち夫婦でやっているんです。あとはヤギとミツバチと猫がいます。高校生の娘がいるので時々手伝ってくれています」
●「パーマカルチャー」っていうのは、どういったことなんでしょうか。
「パーマカルチャーっていうのは、人間が地球の上で自然とか、ほかの動植物と調和しながら、ずっと生き続けるための暮らしをどういうふうにデザインするのかっていう、考え方とか具体的な方法をまとめたもので、もともとはオーストラリアで生まれたものなんですね」
●具体的にどんなワークショップやセミナーを行なっているんですか?
「やっていることとしては、先ほど少しお話ししましたが、自分の手で循環する暮らしを作るということをテーマにしているんですね。
すごく大事なのが、できるところから少しずつやるっていうことを大切にしています。特に暮らしに必要な物って、例えば、都会の暮らしだとお金で買ってくるものが多いと思うんですけれども、すべて買ってくるのではなくて、できる範囲で楽しみながら、少しずつご自分の手で暮らしを作る・・・。
そのために八ヶ岳で開催しているものだと、循環する暮らしの実践をテーマにした大人向けの年間講座があったり、お母さんと未就学のお子さんが一緒に参加できる母子合宿講座というものがあったり・・・。
あと田んぼでお米づくりを学ぶ田んぼの会があったり、オンラインで循環する暮らしを学ぶ、そういった講座をやったりしています」

(編集部注:自然学校の畑はすぐそばに300坪ほど。お米づくり体験などを行なう田んぼは、歩いて10分くらいのところにあって、面積は450坪ほどだそうです。
ワークショップなどの参加者はほとんどが首都圏からで、年間でトータル600〜700人ほど。オンラインの講座の参加者は年間200〜300人くらいだそうです)
梅崎家は自給自足的な暮らし
※梅崎さんは、もともと自然暮らしを目指していたんですか?
「そうですね。最初の就職先が、茨城県の里山にある環境教育をテーマにした公園みたいなところで、仕事をしていたんですけれども、そこで出会った地元の農家さんがいて、いろいろな公園の管理とかに、お仕事で関わっていただいていたかたなんです。
そのかたが野菜づくりはもちろん、山仕事とか、筍掘りとか、しめ縄づくりとか、本当に何でもできるかたでした。僕は実家が練馬なので、東京暮らし東京育ちの僕からすると本当に田舎の人はすごいなと、自分もできるようになりたいなと思ったのがきっかけだったんですね」
●東京での暮らしと比べると、ガラッと変わりますよね?
「そうですね。田舎に来ると、消費をする部分だけじゃなくて、自分の手で生み出す部分っていうのがすごく多くなるので・・・だからそこが大きな違いだし楽しいところでもあると思います」
●梅崎家は自給自足に近い暮らしをされているんですよね。
「自給自足”的”な暮らしというふうに言っています。例えば、エネルギーも食べ物もすべてのものを自給自足するのは、なかなか大変なことだとは思うんですね。
うちの場合はそれをできる範囲で楽しみながらやる。前回(番組に)出させていただいた時と比べると、じわじわと自分たちでできる範囲を少しずつ広げていることもあるので・・・そんなふうに楽しみながらやるということを大切にしています。
今はお米は自給率100%は超えているんです。野菜については適宜必要なものを購入するというそんな形でやっていますね」
(編集部注:電気は、メインは電力会社の電気を利用し、補助的にソーラーパネルの電気も使うそうです。太陽熱の温水器で温めたお湯は床暖房にも使っているので厳冬期の12月から2月でも快適に過ごせるとか)
※お料理をする際の煮炊きは、どうしているんですか?
「料理をする時の煮炊きも、普段の調理はガスなんですけれども、冬は薪ストーブがあるので、薪ストーブでお湯を沸かしたり煮物をしたり、お味噌を作る時に大豆を煮たり、餅つきする時にお湯を沸かしたりとか・・・。
あとは外で燻製づくりをするとか、講座の時なんかもそうですけれども、野外調理をしたりとかっていうのに薪を使ったりという、そういう形で併用してやっています」
●お風呂は薪で沸かすんですか?
「薪でも沸かすんですけども、これも薪ボイラーがあって、薪ボイラーから台所のお湯とかお風呂のお湯を使うということもあるし・・・ガスと太陽熱温水機があるのでミックスしながら・・・。
温度が低い時とかはガスで加温をしたりとかっていう形で、自然エネルギーと、石油とかガスとかそういった化石燃料、それを組み合わせて、できるだけ自分たちの手で、手に入る身近なエネルギーも活かしながらやるっていう、そういう形でやっています」
自然の営みの邪魔をしない
※食料を自分の手で作れるというのは、安心感にもつながりますよね?
「そうですよね。タネを撒けば(芽が)出てきて、手入れをしてあげることで作物を収穫できる・・・お米もそうですよね。
去年は”令和の米騒動”でお米の価格もすごく上がったりしていましたね。お店の棚にお米がない! みたいなこともよくありましたけども、自分で育てているという意味では、お米をうちは買わないので・・・。なので“高くなったな〜”とか、そういうことは思うんですけれども、やっぱり自分たちでお米を作る、野菜を作るっていうことはすごく安心感になりますね。
田舎に行くと、なかなか喰うのが大変だみたいな、仕事の面で言ったりすることがあるけど、喰うか喰わないかっていう意味では、畑と田んぼを借りることができれば、食べるのには困らない。そういう面もあったりするかなとは思います」
●作物づくりで、何かこだわっていることってありますか?
「こだわりっていうか、大切にしていることとしては、できるだけ自然の営みの邪魔をしないっていうことです。例えば、それは農薬を使わないっていうことであったりとか、化学肥料みたいなものを使わないということは大切にしています。
うちの場合は”自然農”っていう考え方を大切にして畑をやっているので耕さない。草も虫も敵としない。そして肥料やら何かを入れない。化学肥料は特に入れない・・・。あと、そこで出た野菜の残渣がありますよね。例えば、とうもろこしの枯れたものとか、そういうものを外に持ち出さないで、そこで朽ちさせて循環させるっていう・・・。
だからそういう意味では、草には草の役割があるし、虫には虫の役割があるので、そうした自然の営みを邪魔しないように、自然の生態系を豊かにする。そんなことを意識しながらお米、そして野菜を育てることとしています」

自然がぺースメーカー
※梅崎さんは、自然学校のテーマでもある「我が家の自給率をアップする」を梅崎家でも取り組んでいて、お米は100%自給、野菜も自分たちの手で育てていらっしゃいます。自分たちで育てた作物はやはり美味しいですか?
「美味しいですね!(笑)」
●ですよね。喜びのようなものもありますよね。
「そう! よく暮らしの豊かさって何だろうって言った時に、物じゃなくて心の豊かさとか、いろんな言い方があると思うんだけど、やっぱり循環する暮らしをやっていく中で、収穫の喜びもあるし・・・例えば、田植えとか稲刈りをした時に、広い田んぼを全部、田植えをやり切ったとか、全部収穫した。そういった時の達成感があったりします。
ひとつひとつのことに時間がかかる。手間をかける。そのことが自分の中に、そのプロセスがあることによって、自分の暮らしを自分で作る喜びであるとか、満足感がある。
と同時に、工夫をする。いろいろな上手くいかないこともあったり、それをどうしようかなって工夫をする。そういったことの中で暮らしが作られていく。その中に豊かさを感じる。そんなことがすごくあると思うんですよね」
●自然暮らしをスローライフって表現していることもありますよね。でも自然暮らしってスローじゃなくて、日々忙しいと聞いたことがあるんですけど、実際はいかがですか?
「スローライフは忙しいです!(笑)っていうっていうのは、都会の暮らしだと自分の都合で、いろんなことができる部分はあるけど、自然は自然のペースに合わせて、例えば、今タネを蒔けないからとか、今苗が植えられないから、1ヶ月後にやろうと思っても、季節が過ぎていたら間に合わない訳ですよね。
だからそういう意味では自然のペースに合わせていかないといけない。自然は待ってくれないし・・・。
あと梅をたくさん収穫しましたって時に、今ちょっと梅の仕込みができないから再来週やろうとかってできない訳ですよね。これはきょうやらなきゃいけない、明日やらなきゃいけないみたいなものもあるので、そういう意味では自然がペースメーカーになってくれると同時に、季節のいろんな仕事が重なった時には忙しくなる、そんなことかと思います」
●自然が相手だと手間暇がかかりますよね。
「それがいいんですね」
循環する暮らし、じわりじわり
※「風と土の自然学校」を設立されて、23年ほどが経ちました。梅崎さんが思い描いた自然学校になっていますか?
「そうですね。お陰様で毎年講座を開催する中で、参加者さんが仲間みたいになっていって、前回(番組に)出演させていただいたのが12年前ですか? その時と比べると当時思い描いていることが随分形にできたなと、そんなふうに思います」
●これから特に力を入れていきたいことってありますか?
「”循環する暮らし”ってすごく楽しい暮らしなので、ぜひたくさんのかたにお届けしていきたいと思っています。なので、講座もこれまで通りやっていくのと同時に、電子書籍であるとかYouTubeであるとか、そういったもので情報を発信して、みなさんに小さな一歩を踏み出していただけるような、そんなことをお伝えしていくことに力を入れていきたいと思っています」
●梅崎さんは練馬のご出身ということですけれども、特に都会で暮らしているかたに伝えたいことがあれば、お願いします。
「どこに住んでいても、自分の手で作る循環する暮らしは始められるっていうことをよくお話ししているんですね。そういう意味では小さく始めて、じわりじわりと守備範囲を広げていく。これが楽しみながら長く続ける秘訣だと思っています。
『風と土の便り』というメルマガでもお役に立つ情報をお届けしているので、そういうところから情報を得ながら、できることを楽しみながらやっていただけたらなと思います」

INFORMATION
「風と土の自然学校」では、今年もお米作りの一連の作業を体験できる「八ヶ岳めぐる田んぼの会」の活動が始まりました。

この「田んぼの会」は、苗代づくりから収穫まで、肥料も農薬も使わないお米づくりを体験しながら学べる会だそうです。年間パスポートのほかに、単発参加や回数券もあるそうですよ。自分のタイミングで参加してみませんか。
メールマガジン「風と土の便り」に登録すると、いち早く最新の情報をゲットできますよ。
ほかにもマッチを使っての火起こしや野外調理、ロープワークなどのワークショップも開催。オンラインの講座もあるそうですよ。
同自然学校は、山梨県と長野県の県境にあって、中央高速自動車道の小淵沢インターチェンジやJR小淵沢駅から、車で10分前後だそうです。
ワークショップや講座の申し込み方法など、いずれも詳しくは「風と土の自然学校」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「風と土の自然学校」https://lifestyle-model.jp
2026/5/10 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. PEACEFUL EASY FEELING / THE EAGLES
M2. BETTER TOGETHER / JACK JOHNSON
M3. FREE FALLIN / FLAVA TO DA BONE
M4. RIPTIDE / VANCE JOY
M5. 緑の日々 / 小田和正
M6. GOOD RIDDANCE (TIME OF YOUR LIFE) / GREEN DAY
M7. FAST CAR / TRACY CHAPMAN
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/5/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、栃木県宇都宮市の北部で、「若竹の杜 若山農場」を運営する「ワカヤマファーム」の代表「若山太郎」さんです。
親子三代にわたり、宇都宮で農場を営む「ワカヤマファーム」は、関東を代表する筍などの生産、植木用の竹の栽培、そして広大な敷地に竹林があることでも知られています。
手入れの行き届いた緑あふれる美しい竹林は、映画「るろうに剣心」や「キングダム」のロケ地になったり、ほかにも多くのCMやプロモーション・ビデオなどの撮影に使われているそうです。

100年以上の歴史がある若山農場の三代目である若山さんは、東京農業大学に進み造園を専攻するも、ご本人いわく、当初は家業を継ぐ気はなく、卒業後は都市を緑化する仕事をしたいと、造園会社に入社。ビル周りや公園の、設計や施工管理の仕事をしていたそうです。
そんな中、都市に近代的な建物ができて、日本らしさが失われていると感じ、「和」を感じられる、都市空間にマッチするものはないかと、考えをめぐらせていたところ、ふと、家業である竹を思い出し、竹を植栽、つまり植木として取り入れることを提案したところ、これが話題になったそうです。
そこで、お父さんが経営していた会社から竹を買い取り、造園会社の事業として、竹の植栽を始めたそうですが、研究者気質のお父さんがもう会社をやりたくないという話になり、若山さんとしては形にしたものをやめるわけにはいかず、家業を継ぐことにしたのが正直なところだとおっしゃっていました。
ちなみに、東京都内の竹の植栽は9割ほどが「ワカタケファーム」の竹であり、作品だそうですよ。
きょうは、そんな農場を営む若山さんに竹という植物の不思議や、竹の品種改良、そして今が旬の筍のお話など、竹の魅力をたっぷり語っていただきます。
◎写真協力:ワカヤマファーム

孟宗竹の竹林、自然循環型農法
※「若竹の杜 若山農場」のサイトを見ると、まず、手入れの行き届いた美しい竹林の写真が目に飛び込んできますよね〜。
「見渡す限り、そんな竹林が続く空間がありまして、写真では伝えきれないぐらい本物はもっと綺麗なんですよ」
●うわ~、いいですね! この竹は何という種類なんですか?
「これは孟宗竹(もうそうちく)という竹です」
●どんな竹なんですか?
「日本最大の竹で、とても竹らしい竹って言ってもいいんじゃないですかね。みなさんが頭に思い浮かべる竹、竹林の風景はだいたい孟宗竹なんですね。そんな竹の竹林がひたすら続きます」
●やっぱり竹林の中を歩くと気持ちがいいものですか?
「そうですね。写真では伝わらない音ですとか、空気感・・・風が吹くと竹の葉、笹ですね・・・笹葉がサラサラとなる音でしたり、ちょっと湿度を保つんですが、そんなひんやりしたような空気感などは、やっぱりその場を歩いてみないとわからない風景だと思いますね」
●特におすすめは、どの季節の、どの時間帯とかってありますか?
「実は竹って一年中緑なんですよ。なので、一年中おすすめです」
●なるほど!
「ただ実は、筍の時期って春ですけど、その筍が出終わると、すべての葉っぱを入れ替えるんですね。5月の俳句の季語で『竹秋(ちくしゅう)』という言葉があるんですね。全部の葉っぱを一度黄色く黄葉させて、桜吹雪のようにぶわ〜っと舞い散らせて、全部新緑に入れ替わる・・・その5月、6月がやっぱりいちばん綺麗ですね」
●「若竹の杜 若山農場」の敷地は約24ヘクタール、東京ドーム5個分ということですが、大部分が竹林と農場っていうことですか?
「8割が竹林で、その8割の竹林も実は全部、筍を採るための畑、筍畑なんですよ」

●農場で生産している農産物は、どんなものがあるんですか?
「春には筍を採って、実は秋には栗を収穫するんですね。筍と栗という二本柱で農場のほうはやっております」
●農産物の生産でこだわっていることって、どんなことですか?
「代々、祖父の代からず~っとなんですが、自然循環型農法、もしくは草生(そうせい)栽培、草生っていうのは”草を生やす“っていうことですね。要はあまり余計なことをしすぎずに自然の循環に任せて・・・我々は”足るを知る”という言葉をよく使いますけども・・・あまりたくさん採ることを目指すんじゃなくて、自然から分け与えられる程度で満足をする、そんな農業を心がけています」
日本を代表する竹は・・・?
※日本には何種類ほどの竹が自生しているのでしょうか?
「笹ってありますよね。あの笹も実は竹の仲間で、その竹と笹を合わせますと200種類ぐらいが日本にはあるとされています」
●そんなにあるんですね。
「ちなみに世界には2000から4000種類ぐらいあるって言われていますけどね」
●多いですね。分布しているのは主にアジアですか?
「やっぱりそういうイメージがあると思うんですね。みなさん、やっぱり日本や中国を始めとした東アジアに竹が多いと思われていますが、実はそれだけじゃなく、東南アジアにもっとたくさんあって、そしてさらにアフリカ大陸にも竹ってあるんですよ。もっと驚くことに南米コロンビアを中心とした、割と赤道に近い暖かい所にも、実は竹がたくさん生えています」
●若山さんが今まで見た中で、これは珍しいって思った竹はありますか?
「そうですね・・・それこそ世界にはいろんな竹があるんですけど、やっぱりわかりやすいところでいうと・・・色の違う竹とか、形の違う竹ってあるんですよ。みなさんが想像する竹って緑色ですよね。でも実は世の中には金色の竹があったりね。実際は黄色いんですけどね(笑)。黄色いところに緑色の筋が・・・竹には節がありますけど・・・節ごとに互い違いになったり・・・。

それから、もしかしたら色の真っ黒い『黒竹(くろちく)』という竹を聞いたことがあるかたも多いかもしれませんが、その真っ黒い竹でしたり・・・そして形もボコボコとカメの甲羅のように節が膨れる竹でしたり・・・あとはなんでしょうね・・・そろばんの駒みたいに節のところが出っ張るとか・・・そういう形も変わった竹が世の中にたくさんあるんですね。
そんなふうに竹はすごくバラエティに富んでいて、その中でもやっぱり僕がとても好きで、そしてみなさんも見て驚かれるのは、恐らくその金色の竹だと思いますね」
※日本の代表的な竹を教えてください。
「今でこそ多分、竹と言うとみなさん、孟宗竹をイメージするんですね。春に筍として称して食べるのは、ほぼ孟宗竹の筍なんですが、本来昔から日本に生えていた竹は違っていて、真竹(まだけ)という竹があるんですけど、日本を代表する竹はその真竹なんですね。

せっかくなので昔、我々竹材商の大先輩で『竹取の翁(たけとりのおきな)』という者がいましたが、お聞きなったことがあるでしょうか? 大先輩過ぎて、お会いしたことはもちろんないですけどね(笑)。
彼は竹を伐って生計を立てていたんですね。その竹の中から何かが出てくるわけですが、何を発見したんでしたっけ?」
●何を発見したんでしたっけ? あれですか? かぐや姫?
「そう、その通りです! 小さな女の子、身の丈三寸、9センチぐらいの女の子が竹の中から出てくるわけですよね。そしてその女の子はたった3ヶ月で大人になってしまうっていう、まあ要約するとそんな話でしたよね。実はその竹取の翁が伐っていた竹は真竹なんですね。
3ヶ月で育って大人になってしまうのは、実はその竹の成長なんですよ。春、にょきにょきと土の中から出てくる筍は、3ヶ月後には成長し終わって、あの大きな竹になっちゃうんですね。1日にね121センチ、1メートル21センチも伸びたっていうギネス記録を彼らは持っています」
●すごいですね〜!
「それぐらいあっという間に成長するんですね。ちなみに昔はその真竹という竹しか日本にはなかったんですよ、大きい竹が・・・。今僕たちが頭に浮かべる孟宗竹は、実はたかだか350年ぐらい前に中国から日本に献上されてきた竹なんですね。
でもあまりにも筍が美味しいし、材としても太くて厚くて、とても硬く強力でいろんな利用ができたので、それを日本で人が日本中に植え広めて、今では日本を代表する竹になっているんですね」
●成長が早いということは、寿命はどんな感じなんですか?
「とてもいいところにお気づきですね。普通の木は少しずつ、毎年成長しながら何十年も生きますでしょ? 竹はたった3ヶ月で大きくなりますが、10年ぐらいすると1本は枯れちゃうんですよ。当たり前のように緑色の竹林が続くのは、毎年毎年、筍が伸びて竹になって古いものは枯れて入れ替わっているんですね。それで初めてあんなふうにいつまでも緑でいるわけですね」
竹林は大きな田んぼ!?
※竹も植物ですから花を咲かせますよね。でも、私は見たことはないですね〜。
「そうですよね。おそらく見たことがないと思うんですね。実は当然、植物なので花を咲かせるんですが、竹はほかの植物のように毎年は花を咲かせないんですよ。なんと!120年にいっぺんぐらいしか花を咲かせないんです」
●ええ〜っ! 若山さんはご覧になったことはありますか?
「はい、もちろん! 私の父はその竹の開花、花についての研究をしていましてね。なので、我々は日常茶飯事のように竹の開花を見てきました。本来は120年にいっぺんぐらいしか(開花が)起きないので、みなさんはほとんど目にしたことはないと思うんですが、実は同じ種類の竹は120年にいっぺんぐらい、日本中、世界中、どこにあろうが、同じような年に花を咲かせちゃうんですね。
さらに花が咲くと実をつけるんですが、実をつけて枯れちゃうんですよ、全部が・・・。竹はイネ科の植物でして、田んぼにあるお米を作る稲の仲間で、(竹林を)巨大な田んぼだと思っていただくとわかりやすいんです。
普通の稲は毎年秋になると実をつけて冬には枯れちゃいますよね。そんなふうに毎年花を咲かせて実をつけるんですが、竹はそれが120年にいっぺんぐらい、花を咲かせて実をつけて枯れてしまう巨大な田んぼなんですね」
●どんな花でどんな香りがするんですか?
「いいですね。興味がありますよね? ちなみに田んぼにある稲の花って、何かイメージはありますか?」
●はい、ちっちゃ〜い感じの・・・。
「そうですよね。ちっちゃくて、何となくあまりイメージがはっきりないと思うんですが、実はイネ科の植物って花びらがないんですよ。
我々はやっぱり花っていうと花びらをイメージしますよね? 桜もそうですし、チューリップにしても、やっぱりその花びらが綺麗なんですよね。でもイネ科の植物には花びらがなくて、なので、あまり花としてのイメージがないと思うんですけど、夏になると雄しべと雌しべを形成して、それがあるだけなんです。
それが有性生殖をして結実をする、実をつけるわけですよね。なので、どちらかというと田んぼでイメージがあるのは、頭を重た~く垂れた、稲穂がぶら下がっているタネの状態だと思うんですけどね。
実は竹も全く一緒で花びらがなくて、その代わり秋になると、ちょっとたわわに稲穂のように竹の花をつけて、実がたくさんつくんですですね。それが竹の開花、花なんですね。
香りは・・・まあ正直そんなにびっくりするほどの香りはないんですけど、実は数年前に農場で何百本と竹の花が咲いたことがあるんですけどね。その時には我々人間はちょっと香りがするかな〜ぐらいだったんですが、ミツバチが大発生をしてたくさん集まってきましたね。多分彼らにとってはとてもいい香りがしたんでしょうね」
(編集部注:多くの植物は毎年のように花を咲かせ、実をつけ、タネを残しますが、竹は地中にある根、地下茎から自分の分身、いわゆるクローンである筍を出して、世代交代をしていくということなんです。
それでもなぜ120年に一度花を咲かせるのか・・・若山さんがおっしゃるには、氷河期や温暖化など、気候の大きな変化に対応できる、違う性質を持つ種のタネを残すためではないか、ということでした)
竹の品種改良は、地道な作業
※そちらでは、竹の品種改良に取り組んでいらっしゃいますよね。企業秘密かも知れませんが、どんな方法で品種改良するんですか?
「全然、企業秘密じゃなくて、とても地道な作業です」
●どんな作業ですか?
「120年にいっぺんでは、なかなかタネも手に入らないんですが、実は種類によってはたま〜に間違って咲いちゃうやつがいるんですね。そんなものを全国から集めるとタネが手に入るんですよ。そのタネにちょっと薬などで刺激を与えてあげたりすることもあるんですが、どちらかというと、ともかくひたすら数を蒔くんです。
有性生殖していると・・・昔、メンデルの法則とか小学校の時に理科で習った覚えがありますよね。やっぱりちょっとだけ変わったやつらが出る可能性があるんですね。例えば、色が違うとか葉っぱに模様が、”斑(ふ)”と言って白い模様が入るとか、そんなやつをともかく数を蒔いて見つけるんです。
そのひとつをまた取り分けて増やしていって、確実に違うかどうかということを何年、何十年もかけて比較していくんですね。『選別育種(せんべついくしゅ)』っていうんですけど、そんなことをひたすらやり続けるんです」
●すごい作業ですね。
「大変な作業です」
●二代目のお父様が品種改良を始められたんですよね?
「そうですね。父は非常に研究者タイプでしてね。そんなことにとても興味を持ってライフワークとして生涯をかけて、そんなことをやり続けてきました」
(編集部注:なぜお父さんが品種改良に取り組むようになったのか。若山さんがおっしゃるには・・・筍は大きいほうがやわらかくて美味しいのに、小さい筍が料亭などで重宝がられ、高値で取り引きされていたそうです。せっかく大きい筍を苦労して掘り出したのに、値段が下がってしまう。ならば、最初から小さな筍が獲れるようにしたほうがいい、ということで、小さい孟宗竹を作ることにしたとか。
地道な作業で品種改良された孟宗竹は、平均の背丈が4〜5メートルほど。通常の孟宗竹が20メートルを超えるので、4分の1ほどの大きさになったそうです。植栽に使われる主力の竹は「ワカヤマファーム」のオリジナルで「ヒメアケボノ モウソウチク」という名前だそうですよ)

※ビルでもご家庭でも、竹を植えることのメリットといえば、どんなことが挙げられますか?
「もちろん見た目にもとても綺麗ですよね。竹って幹まで緑色ですよね。普通の木って幹は茶色いじゃないですか。そして1本ではなく竹林という群落グループで生えるので、そんな緑葉、緑色としてもとてもたくさん、都市を形成してくれるんですね。
その見た目ももちろんですが、さらにまっすぐじゃないですか。なので、都市のコンクリートやガラスでできているような無機質なもの、それから幾何学的なデザイン、そんなところにどんな植物よりもよく映えるんですね。
あともうひとつは木陰を作ってくれるんですよね。都市って、ヒートアイランド現象って言うんですけど、アスファルトで覆われているので、とても気温が上がりますよね。そんなところに、木は自分の大きさだけで木陰を作りますけど、竹は竹林という群落を作るので、面で日陰にしてくれるんですね。なので、そういう気候を緩和してくれたりもします」
見直されている植物資源「竹」
※日本各地で放置された竹林が問題になっています。竹の事業を行なっている若山さんとしては、どんな思いがありますか?
「竹って人間が植え広めてきたんですね。タネがないので、その場では地下茎という根で、ある程度自分の範囲を広げることができるんですが、川や海があったら渡れないわけですよね。
どうして日本中にこんなにたくさん生えているかっていうと、我々人が利用するためにたくさん植え広げてきたんですね。でも戦後早々、化石燃料由来、石油製品のプラスチック、今ちょうどそれが世界情勢があって、手に入りにくくなって高騰化していますけどね。そんなプラスチックなどが出てくることによって、竹は取って代わられて、使われなくなってしまったんですね。
要は伐っても売れない時代になってしまったわけですよ。もともと人間が使うために植え広げたにも関わらず、売れないとなったら放置されちゃう、ほったらかしにされちゃうんですね。
そうすると、(竹は)どんどん繁殖して増えることができますから、あっという間に大きくなれますから、ほかの木の上に覆いかぶさって枯らしてしまったりとか、人間の生活する田畑や宅地に入り込んできてしまったりとかして、今世の中ではその放置された竹林が拡大して、竹害、公害としてちょっと嫌われる時代になっちゃっているんですね。
悪いのは多分竹じゃないですよね。人の都合で植え広げられ、そして人の都合で利用されなくなっているんですから、悪いのは僕たち人なのかなというふうに思うんですね。
でも今そんな竹が環境の時代になって、化石燃料由来のプラスチックなどを使う量を減らして、二酸化炭素の排出量を減らしていくことが求められる時代になりましたよね。そんな時に竹ほど資源化の早い、あっという間に大きくなって、そして伐っても伐ってもにょきにょき勝手に生えてくる、こんなに持続性のある植物資源って世界を見回してもほかにないんですね。そんなことから今実は、日本だけではなく世界から資源として見直されているんですね。
最近ではそれが紙になったり、竹から繊維を取り出して衣服になったり、その憎っくき、とって代わられたプラスチックの代わりに生分解性プラスチックという形でなり始めたりと、多岐に渡って工業製品として利用され始めているんですね。
そんな竹をもう一度みなさんに知っていただきたい。僕たちはそこ(若山農場)を開放して観光事業としていますが、竹に囲まれて触れて見て知って、竹を好きになってほしい。そんな思いで今『竹の代弁者』として、こんなふうにお話をさせていただいたりもしています」

●長く竹に関わってこられて、改めてどんなところに魅力を感じますか?
「やはり竹の、なんて言うのかな・・・竹林として群落を造った中に入っていくと、本当に俗世と違う独特の空間があるんですね。そんな空間の中に身を任せていく瞬間というのが、とても私は好きでしてね。やっぱりそんな竹林の中にいるというのが、いちばん竹の魅力なんじゃないでしょうかね」
(編集部注:地下茎でどんどん増えてしまう竹なのに、植木としてビル周りや庭に植えても大丈夫なんだろうかと思いますよね。若山さんいわく、都市はコンクリートに囲まれているので、竹の根はその中に収まる。また、住宅の庭などに植える場合は、厚さ1ミリほどのゴムシートで囲むので根は広がらない。なので、とても手軽に植えられるそうですよ)
INFORMATION

「若竹の杜 若山農場」の名産「筍」。今年は、足の踏み場もないくらいの豊作だそうですよ。少し気温が低い北関東なので、筍狩りはGWいっぱいは楽しめるとのこと。

美しい竹林の中で「野宿」もできますよ。風でそよぐ笹の葉の音を聴きながら、空中で寝泊まりできるハンモックテントによる特別なキャンプ体験は、ここでしか味わえないと思います。

夜には竹林がライトアップされるそうです。また、敷地内には、素敵なカフェ&レストラン、ギャラリーもありますよ。
オンラインストアから、筍などの農産物、栗のお菓子、筍の水煮などを購入することもできます。いずれも詳しくは「若竹の杜 若山農場」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎若竹の杜 若山農場:https://www.wakayamafarm.com






