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シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第13弾!〜コンブは地球を救う! 幸海ヒーローズの挑戦!

2023/7/16 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「海の日」を前に、東京湾でコンブを養殖し、活用している「幸海(さちうみ)ヒーローズ」の共同代表「富本龍徳(とみもと・たつのり)」さんです。

 東京湾でコンブが育つの!? っと疑問に思ったかたもいらっしゃるかも知れませんが、実は立派に育つそうですよ。

 そんなコンブは水中で光合成を行ない、二酸化炭素を吸収。その吸収率は、なんと、杉の木のおよそ5倍の量だそうです。

 富本さんは、私たちが直面している地球温暖化などの環境問題にコンブが大きな役割を果たしてくれると期待しています。

 きょうは、地球を救うかもしれない、コンブの可能性に迫ります。

☆写真協力:幸海ヒーローズ

富本龍徳さん

横浜市金沢区でコンブ養殖

※SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGsです。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。

 今週は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「気候変動に具体的な対策を」、
そして「海の豊かさを守ろう」ということで、東京湾でコンブを養殖し、活用している富本龍徳さんの活動をご紹介します。

 富本さんは2016年にコンブの養殖に取り組み、2年ほど前に「幸海ヒーローズ」として活動を再スタートさせました。「幸海ヒーローズ」の「幸海」は、実は「里海」のミスプリントが発端になっているそうです。

 富本さんは「幸海」という響きに惹かれたのと、「海の幸」という言葉があるように、海は私たちに海産物という恵みを与えてくれる。その一方で「海にとっての幸せとは何だろう」、そんな思いもあって、「幸海ヒーローズ」と名付けたそうです。

●「幸海ヒーローズ」では、具体的にはどんな活動をされているんですか?

「ひとつはコンブ養殖を通して、温暖化対策とか生態系の保全ということで、神奈川県横浜市金沢区の漁師さんと一緒にコンブ養殖をしながら、作ったコンブを水揚げして、利活用するっていうところまでをやっている団体です。

 コンブが海の中にない期間は、たとえば環境教育っていう観点で、小学校中学校に行ってコンブとか海の話をしたり、コンブを取り扱いたいっていうレストランさんがいたら、そこにコンブの説明に行ったりとか、そんな感じですね」

●東京湾でコンブ養殖しようと思っても、そう簡単ではない気がするんですけど・・・。

「そうですね。いろいろ権利関係とか法律関係とか難しいこともあるんですけど、そもそも本当にコンブが東京湾で育つのか、みたいなところは、ずっとドキドキしていたんです。でも意外とすごく豊かに立派なコンブができるんですよね」

●もともとコンブがない場所で、コンブを養殖することに対しては、何かためらいみたいなものはなかったですか?

「もともとコンブの原種は横浜にあるわけではないので、北海道の方たちから、タネを分けていただいて養殖しているんですけど、だんだん年数を重ねていく上で、ほかの環境団体さんから「君たちのやっていること、大丈夫なのか?」とか「いいのか? それで」って厳しく言われた時期もありました。

 やっぱりそういう連絡がくると、葛藤っていうのはあるんです。そもそも水温が上がってくると、コンブ自体も海の中で枯れたり、溶けちゃうっていう表現をしているんですけど、枯れたりもしますし・・・。あとはコンブって赤ちゃんを胞子として出すんですけど、胞子が出る前に(コンブを)水揚げしているので、そこは今のところ問題にはなってないという状況ですね」

●自分たちを信じてやり続けてきたっていう感じなんですね

「そうですね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●養殖しているエリアは、どれぐらいの広さなんですか?

「今やっているのが、僕たち畑とか柵とかって言い方をするんですけど、
今のところ20メートル×20メートルの柵を作って、それが2面分ですね」

●収穫量でいうと、どれぐらいですか?

「コンブの収穫量でいうと、だいたい6トン前後ぐらいが毎年の水揚げになりますね」

(編集部中:海の藻と書く「海藻(かいそう)」の仲間、コンブ。日本で採れるのは10種ほどで、その90%以上が北海道産だそうです。コンブには水溶性食物繊維、ミネラル、そして、うまみ成分のグルタミン酸など、栄養素が豊富に含まれています。さらに、番組の冒頭でもご紹介しましたが、光合成によって、樹木よりもたくさんの二酸化炭素を吸収してくれる特性にも注目が集まっています)

写真協力:幸海ヒーローズ

コンブに強い衝撃!?

※東京都出身の富本さんは食のコンサルティング会社を退職したあと、フリーランスとして、地方の産物を東京で販売する営業支援などを行なっていたそうです。

●そもそもなんですが、コンブとは、どうやって出会ったんですか?

「秋田県の三種町っていう町のイベントに参加した時に、東京で物産展をやった時に、たまたま三種町の隣町で、アワビの陸上養殖っていう技術でアワビを販売されていた会社さんがあって、お昼休みに“きょうの売り上げ、どうです?”みたいなそんな世間話をしていたんですね。

 その時にアワビがコンブとか海藻を食べるってことも知らなくて・・・(コンブは)アワビが食べるだけじゃなくて、環境にもすごくいいんだよっていうことを言われた時に、なんか雷が落ちてきたような強い衝撃があったんですよ。

 で、調べたらコンブって使い方が無限にあって、今自分が遠くの遠くの存在に感じている環境問題に対しても、こんな身近な素材でアプローチできるのかと思ったら、すごくスイッチが入っちゃって、そこからずっとやっていますね」

●具体的にコンブのどんなことがわかったんですか?

「もちろん人間が食べて健康にいい部分もありますし、ミネラルがたっぷりなので、たとえば畜産の牛とか豚とかの飼料にもなったり、肥料として作物にプラスになったりとか・・・。
 ほかには銭湯さんとコンブ湯っていう取り組みをやっているんですけど、肌にも良かったりとか、本当にいろんな汎用性があって、すごく面白い素材だなと日々思っています。」

●コンブはすごい! というのを感じたとしても、それに人生をかけようと思うのはなかなかないと思うんですけど、やってみようって思えたのはどうしてなんですか? 

「やっぱり今お伝えしたように、可能性がすごく無限にあるなっていうところに携われたら、きっといろんな方とコミュニケーションできて、そんなに楽しい仕事はないんじゃないかなと思って・・・」

●でもすごいですね~、コンブをいちからやってみようって思われたわけですね。で、今につながっているということですね。

「そうですね」

(編集部注:「幸海ヒーローズ」では「ぶんこのこんぶ」というブランド名で、商品展開。生のコンブほか、クッキーやアイスクリームなどを作っているそうです)

富本龍徳さん

コリコリ食感、香りと色味が若い!?

●コンブというと北海道の寒い地域の特産品っていうイメージがあるんですけど、横浜市の金沢漁港で養殖されているコンブには、どんな特徴があるんですか?

「いい質問ありがとうございます。実際、横浜のコンブは種類としては真コンブっていう出汁のよく出るブランド・コンブのタネで養殖しているんです。期間的に北海道のコンブと違うのは、北海道は海がずっと冷たいので2年ぐらい養殖できたりもして、10メートルぐらいの巨大な長さになって、厚みも出てくるんです。

 そうすると食物繊維だったりがぎゅっとしてくるので、それは乾燥コンブに適したコンブなんですけど、僕たちがやっているのは11月から12月ぐらいにタネ付けして、水温が上がってくる4月ぐらいには水揚げするので、どちらかというと薄いコンブなんです。

 それでも2〜3ミリの赤ちゃんコンブからスタートしたコンブが、4か月後には4メートルにも育つんですね。たとえば食感でいうと、すごくコリコリした歯ごたえのある食感で、若いコンブなんで香りが強かったり・・・あとは色味がとっても鮮やかなところが特徴になりますね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●自然相手の作業じゃないですか。難しいなって感じることはないですか?

「それがですね、お陰さまでコンブの収穫量は結構安定しています。畑と違って海がコンブ育ててくれるので、草むしりする時間もいらないですし、肥料を与えることもないんですね。なので、ほとんど手がかからないっていう・・・」

●そうなんですね! コンブに人生かけてみようって思われて、初めて収穫した時はどんなお気持ちでした?

「やっぱりすごく嬉しかったですね、純粋に。それでこんなにも巨大な、生で見るのもその時が初めてだったんですけど、すごいフォルムというか、形には圧倒されました」

●どんな感じなんですか? 収穫の時のコンブって見たことがないので・・・。

「そうですよね。僕たちが多分一般的に見ているのは、スーパーに並んでいる緑色のワカメとかだと思うんですけど、まず(コンブの)色は茶色なんですよね。海の中に入っている間っていうか・・・その茶色の物体が目の前に現れた時には、本当になんかクマが目の前に現れたぐらいの衝撃でしたね」

コンブのお風呂!?

写真協力:幸海ヒーローズ

※都内の銭湯で「コンブ湯」というのを展開されているそうですね。これは、湯船にコンブが入っているんですか?

「まさしく、そういうことです。なので見方によっては、おでんの具材になったみたいとか(笑)、出汁の気分になったみたいっていうこともあるんですけど・・・」

●たしかに!(笑)

「いちばん最初にコンブ湯をやったきっかけは、ヨーロッパに行くと、タラソテラピーっていう海水とか海の泥とか海藻とかと人間とで、長いお風呂の歴史があるんですけど、日本でタラソテラピーをやろうと思ったら、多分高級ホテルのエステでとか、すごくお金も高いですよね。

 そういうことをもっともっと身近に感じられることはないかなと思って、スタートしたのがきっかけで、日本には公衆浴場の文化があると思って、それで(銭湯の)門を叩いたのがコンブ湯のきっかけですね」

●お湯加減とかってどういう感じなんですか?

「わかりやすくいうと、たとえば中華料理の、あんかけのチャーハンとか、あんかけのラーメンっていつまでも熱いじゃないですか」

●熱いです!

「それと一緒で、コンブのヌルヌルのとろみというか、ヌルヌル成分がお湯に溶けた時に、あんかけと一緒でお湯が冷めにくいというか、そんなこともあって保温効果があるんじゃないかと思います」

●そうなんですね~、みなさんの評判はどうでした?

「SNSを見ても、みなさん面白いリアクションをしてくださって、本当に出汁になったみたいとか、結構ポジティヴな反応があって、結構、常連さんもできてきたような企画になっています」

写真協力:幸海ヒーローズ

(編集部注:お風呂つながりでいうと、富本さんは繊維会社と一緒にコンブを練り込んだ繊維を開発、なんと「サウナハット」を作っちゃったんです。このサウナハット、吸水性と保湿性に優れているので、サウナ室で髪の毛をしっかり保護してくれるそうですよ)

コンブのバスボム!?

※ほかにも、海外のブランドとのコラボレーションが実現したそうですね?

「みなさんがわかりやすいブランドさんとコラボレーションさせていただいた、いい事例なんじゃないかなと思っているんですけど、イギリスの大手コスメ・ブランドのLUSHさん」

●あの入浴剤とかバスボムとかの? え~、私、使っています!

「使っていますか! 香りもすごくあっていいですよね! LUSHさんの入浴剤に今回コンブの原料を採用していただいています。LUSHさんもサステナブルの素材を探されていらっしゃる中で、僕たちの環境保全だったりっていうところの観点が共鳴したというか、そういったところもあって、今回使っていただいたんじゃないかと思いますね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●そのバスボムもスタジオにも持ってきていただきましたけれども、とってもいい香りですね!

「本当に(お風呂に)入っているだけで、すごく心地良くなります。ここにもコンブが含まれていて、やっぱりお風呂に使っていただくと、ヌルっとしたような感触がありますね」

●とってもカラフルでこれがコンブというのは、全く見た目ではわからないですけれども、原料としてコンブが使われているということなんですね。

「はいそうですね」

コンブは地球を救う

※次のコンブの収穫はいつ頃なんですか?

「次は、また来年の4月に予定しています」

●一般の方が収穫に参加できたりするんですか?

「そうですね。みなさん北海道に行ったりしないと、コンブの収穫の時期も限られていますし、行かないと多分そういう体験とか見ることってできないと思います。それを逆に一般の方に、今海って大変な状況だよとかっていうことも伝えつつ、実際に採れたてのフレッシュなコンブを、しゃぶしゃぶにして一緒に食べたりとか、そういうことをしながら、ちょっと海について考えてみようっていう時間を設けて、一般の方に来てもらえるような、開けた収穫の場になっています」

●いいですね! 富本さんはコンブと出会って人生がガラリと変わりましたけれども、やっぱりコンブで世界は変わりますか?

「そうですね。本当にこのコンブの素晴らしさ、可能性に気づいてくれる人が増えて、一緒にコンブは面白いから何かやろう!っていう方が増えていけば、海の問題も解決していきますし、僕たちにとって健康的にもいいですし、地球がどんどん良くなっていくんじゃないかなと思います」

●コンブは地球を救ってくれますか?

「そうですね! コンブは地球を救うと思います」

富本龍徳さん

☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。


INFORMATION

 富本さんが英国のナチュラル・コスメ・ブランドLUSHと開発したバスボム、一箱に3個入っていて、そのひとつに富本さんたちが養殖したコンブが使われています。商品名は「涼の一服」。販売価格は1,400円です。お買い求めはLUSHのサイトから、どうぞ。

◎LUSH:https://www.lush.com/jp/ja/p/ippuku-ryo-gift

 富本さんの活動については「幸海ヒーローズ」のサイトをご覧ください。

◎幸海ヒーローズ:https://sachiumi.com

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