2025/1/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第23弾!
「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」
そして「住み続けられる まちづくりを」ということで、長野県諏訪市に拠点がある「REBUILDING CENTER JAPAN(リビルディング・センター・ジャパン)」通称「リビセン」のリサイクル事業にフォーカスします。
「リビセン」では、解体される空き家や建物から、古材や古道具を引き取って販売する事業を行なっています。
きょうは「リビセン」の取締役「東野華南子(あずの・かなこ)」さんにリサイクル事業を始めた経緯や事業内容のほか、活動の理念「リビルド・ニュー・カルチャー」に込めた思いなどうかがいます。
☆写真協力:REBUILDING CENTER JAPAN

合言葉は「リビルド・ニュー・カルチャー」
※2016年にオープンした「リビセン」は、一般的なリサイクルショップでは扱わない、例えば、床板や柱、古いタンスなどを扱っているのが特徴です。活動の裏には、捨てられて燃やされてしまうのは「もったいない」、ゴミにせずに再び使う、そんな思いがあるんですね。
創業メンバーは、東野さんご夫妻のほか、全部で5人。現在は総勢18人のスタッフで運営されています。
●もともとは、デザイナーのご主人「東野唯史(あずの・ただふみ)」さんとふたりで「medicala(メヂカラ)」というユニット名を掲げ、全国を転々としながら、空間デザインのお仕事をされていたんですよね?
「はい、そうなんです。もともと夫が空間デザインの仕事をしていて、私は文学部卒業で、建築の文脈だったりとかデザインの文脈を学んできたわけではなかったんですけど、依頼があった土地に夫と一緒に行って、そこに住み込みながら、解体しながらデザインしながら施工して、完成したら次の土地に行くっていう暮らしを2年ぐらいやっていました」

●へぇ〜! で、解体される家屋などの古い材料だったり古道具を引き取って、販売する事業をやっていこうと持ちかけたのは、どちらなんですか?
「2014年に夫とふたりで、その仕事を始めたんですけど、1年ぐらい経ったところで、2015年に(アメリカの)ポートランドに『REBUILDING CENTER』っていうリサイクルショップというか、建築建材がたくさんあるようなお店があるんですけど、そこに行ったんですよね。
そこを見た時に夫が、いま日本にもやっぱり空き家の問題だったりとかゴミの問題だったりがある中で、これが日本にあったら、きっと日本の社会をよくできるじゃないですけど、社会がよくなることに貢献できるんじゃないかって思ったのがきっかけで、それでポートランドのREBUILDING CENTERに連絡をして、やることになったっていうことですね。
ポートランドはもともと、アメリカにはDIYの文化もすごくあって、お家は日本だと30年ぐらい経った建物の価値ってなくなっちゃったりするんですけど、アメリカでは手をかけたら、その分ちゃんと建物の価値が上がっていくっていうような仕組みになっているので、みなさん、自分のお家を楽しみながら直しながら暮らしているかたが多いんですよね。
なので、そういう古材だったりとかドアノブだったりとか洗面台だったりとか、何でもリサイクルする文化というか、買えるようなお店がたくさんあって、そのうちのひとつがREBUILDING CENTERという感じですね」

●「リビセン」の合言葉は「リビルド・ニュー・カルチャー」ということですけども、これらにはどんな思いが込められているんでしょうか。
「私たちが本当にずっと気に入って使っている言葉ではあるんですけど、この中に古材とか古道具っていう言葉が入っていないのがすごくポイントなんです。
もともと日本にあった文化というか、物を直して使うっていうこともそうですし、物を簡単に捨てるんじゃなくて、それを次に何かに活かせないかって考える。そういうふうにもともとあったものをもう一回呼び起こすっていうのもあります。
自分の手で何かを作っていくっていう経験だったりとか、もちろん物づくりだけじゃなくって、私たちがこれから暮らす未来にどんな文化があって欲しいか、どんな仕組みがあって欲しいかっていうところを考えようって、そういう意味も込めて『リビルド・ニュー・カルチャー』、私たちのこれからの暮らしを作っていこうっていう気持ちでやっています」
(編集部注:「リビセン」の拠点を長野県諏訪市にしたのは、空間デザインのお仕事で下諏訪に3ヶ月ほど滞在していたら、華南子さんの体調が良くなり、また知り合いもできたことや、長野には古いものがたくさんあるし、東京や名古屋など、都会へのアクセスも良かったので、住まいを東京から下諏訪に移した結果、諏訪市で事業を始めることになったそうです)
<日本の空き家、過去最多に>
2023年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家はおよそ900万戸あり、過去最多の空き家数に。また、総住宅数に占める割合も13.8%と最高を更新。900万戸の空き家のうち、賃貸や別荘などを除き、取り壊し予定や長期間不在の空き家は、およそ386万戸にのぼるそうです。
空き家は放置しておくと、いずれは朽ち果て、また草木が生い茂り、近隣に影響を及ぼすかもしれませんが、所有者がわからない空き家も多くあるようで、自治体が勝手に取り壊すことはできないそうです。
65歳以上のかたの持ち家率が8割を超えるとされる日本、今後も空き家は、増えていく傾向にあるのかも知れませんね。
引き取り依頼、月に70〜80件!
※「リビセン」は、いわゆるリサイクルショップといっても、古材や古道具を売るだけの場所ではないですよね。カフェがあるんですよね?

「古材屋さんができても行かなくないですか?(笑)多分だいたいの人にとっては関係がない場所になっちゃうというか・・・私も以前だったら行かなかっただろうなって思うんですけど、いろんな人にとって関係のある場所だよとか、来ていい場所だよっていうところをちゃんと示すためにカフェを、オープン当時からずっとやっていますね」
●リビセン自体は大きな建物なんですね。
「そうなんです。1,000平米あって1階に古材売り場とカフェがあって、2階に古道具、3階も古道具だったり建具だったりとかを販売しています。あとは1階には雑貨スペースもあって、建具にハマっていた古いガラスを使ったプロダクトだったりとか、それをもう一回ガラス作家さんに吹き直してもらって、グラスとか器にしたものを販売したりしています」

●販売する古材とか古道具は、どうやって集めているんですか?
「基本的には全部、家主さんとの直接のお取り引きが多いです」
●引き取って欲しいっていう依頼が来るっていうことですか?
「そうです。月に70件から80件もあるんですよ」
●すごいですね!
「基本的には車で1時間圏内のご依頼を引き受けていて、それ以上なら、ちょっと出張料金がかかっちゃうよっていうふうにやっているんですけど、それでも月70件から80件あるってことは、全国でどんなスピードで物が捨てられているんだろうって思っていますね」

●確かにそうですね〜。システムとしては事前に下見したりとかされるんですか?
「例えば、物の量が多そうだなっていう時とかは、現地調査に行くこともありますけど、最近は依頼をもらったら、公式LINEでお問い合わせいただいたりもします。公式LINEにこんなものがありますって写真を撮って送っていただいて、この辺を引き取りますねと連絡して現地に行って、そのままお引き取りすることも多いですね」
●なるほど〜。引き取れるものと引き取れないものがありますよね?
「そうですね。私たちに売る力があれば、それこそ何でも引き取れるんですけど、リビセンに来てくれるお客さんが手に取ってくれるようなものだったりとか、自分たちが使い方を提案できるものだったりとか、これ、かわいいですよねってお客さんと一緒に言えるとか、次の人にちゃんと手渡せるぞって、つなげることができるって、自分たちが思えるものを引き取りさせてもらっていますね」

レスキュー率が高いプロダクト!?
※販売している古道具は、具体的にはどんな道具が多いんですか?
「本当にさまざまなんですけど、多分いちばん身近なところだと古いお皿とかはとっても多いですね。1枚300円ぐらいから売っているんですけど、印判皿っていう昔の小っちゃいお皿だったりとか、漆の器だったりもあります。あとは、諏訪だと結構、養蚕が盛んだった地域なので、そういうお家だと籠がたくさん出てきたりとか、そういうものも多いですね」
●販売前にきちんとメンテナンスされるわけですよね?
「そうです。もう本当にそれが大変です(笑)。やっぱりみなさん、おばあちゃんからお家を引き継いだけど、手つかずの場所みたいなところがあって、真っ暗だったりとか、そういう埃がかぶっているようなところに行ってレスキューしてきます。
クモの巣だったり、繭(まゆ)がついたままのお蚕さんのグッズだったり、そういうのを全部水で洗って乾かして値段をつけて、さらにどこからレスキューしてきたのかわかるように、うちは番号で管理しているので、そういう番号をつけて、ようやく店頭に出せるっていう感じなので、レスキューしてきてから店頭に出すまでに長いと1ヶ月ぐらいかかるものもありますね」

●オリジナルの製品も販売されているんですよね?
「はい、そうですね。オリジナルの製品だと古材のフレームとかが今はすごく人気で販売しているんですけど、これは本当にレスキュー率がすっごく高いプロダクトなんですよ」
●その古い材が素材ってことですよね?
「古材とか古道具だけだと、やっぱり古材をお家に欲しいっていう人ってそんなに多くないというか・・・。古材を素敵だなと思っても、お家でどう使っていいかわかんないっていうかたのために、どうにかして、暮らしの中で古材だったりとか、リサイクルのプロダクトを家に置くきっかけを作れたらいいなと思って・・・。
古材を使って枠を作って、レスキューしてきた建具からガラスを外して掃除して、それをはめてフレームを作っているんです。なので、ほとんど新しく買って何かを作っているっていうことがないプロダクトです。後ろのガラスを止める金具だけ、新しく買っているんですけど、それ以外は全部レスキューしたものなので、とてもレスキュー 率が高くて、気に入っているプロダクトです」
「リビセンみたいなおみせ やるぞスクール」
※「リビセン」では、ほかにも古い材を使った空間デザインやDIYのワークショップなどもやっていますが、番組として特に注目したのが、2023年から始めた「リビセンみたいなおみせ やるぞスクール」。ネーミングにも惹かれたんですけど、こんなスクール、やっていたんですね?
「そうなんです! リビセンが2025年で(オープンから)丸9年になるんですけど、やっていく中で本当に大変だなって思うことがたくさんあるんですね。
でも大変な一方で、さっきも申し上げました通り、月に70件から80件、1時間圏内だけでレスキュー(の依頼が)あるから、みんなが各地でレスキューをやってくれることを応援できるといいんじゃないのかなって思って、私たちがしてきた大変な思いを全部学びにして、みなさんにお伝えするっていうスクールをやっています」
●日程はどれぐらいなんですか?
「2泊3日で、がっつりと夜まで懇親会というか、みなさん、本当にずっと質問し続けてくれるみたいな時間なんですけど・・・」

●例えば、どんなプログラムがあるんですか?
「例えば、最初にうちの夫がリビセンが立ち上がった経緯から、今までどういうふうに進んできたかっていう話もあったり、どういうふうにレスキューして、どういう道具を使って掃除してっていう、具体的なレスキューの方法についてのヒントがあったりとか・・・。
あとはリビセンから徒歩5分圏内にお店がたくさんあったりするんですけど、そういうコミュニティがどういうふうに育まれていったかっていう話だったりとかもしていますね」
●でも、これまでに培ってきたノウハウをさらけ出すってことじゃないですか?
「もう! すべて!(笑)」
●いずれ競合するかもしれないとか、何か怖さとかためらいみたいなものはなかったですか?
「ないんですよね・・・(笑)。それにはいくつか理由があるんですけど、ひとつは自分たちに70件から80件のレスキューがあって、例えば富山からレスキュー依頼があっても、東京からレスキュー依頼があっても、やっぱり私たちが行けない。私たちが行けなかったら、どうせ捨てられてしまう。だったら各地でみんながレスキューしてくれたほうがいいよな! っていう・・・。商圏が被らないっていうのがひとつだったりとか。
あとは、夫がデザイナーとしてのキャリアが始まる時に、大学の先生に“デザイナーはデザインで世界をよくするんだ!”って言われたのがきっかけで、デザイナーになって、今もデザイナーとして働いているんですけど、本当にスクールを通じて古材とか古道具をみんなが奪い合う世界になったら、私たちはあっさりリビセンはやめて、自分たちの力を効率よく社会に還元できる方法をまた考えられたらいいなって思っているので、全然怖くないです(笑)」
(編集部注:「リビセンみたいなおみせ やるぞスクール」の参加者の顔ぶれは、工務店などの建築関係、介護職、農家さん、デザイナー、地域起こし協力隊のかたなど、多彩だそうです。今年のスクールは3月からスタート! 「リビセン」のサイトに日程が掲載されていますので、参加してみたいと思ったかたは、ぜひチェックしてください。https://school.rebuildingcenter.jp)
移住者も暮らしやすい街
※華南子さんは埼玉のご出身ということですが、長野県上諏訪での暮らしはいかがですか?
「私にとっては、本当に最高ですね(笑)」
●この時期は寒いですよね?
「本当に地獄みたいに寒くて・・・(笑)。私、初めてこんな寒いところに住んだので、長野に住んでから地獄って暑いと思っていたけど、寒い場所なのかもなって思うようになるぐらい本当に寒いんです。
でも私の生い立ちというか、10年以上同じ場所に住んだことがないんですよね。なので、長野県の上諏訪が初めて(10年)住んでいるんですけど、本当にここでよかったなって思って暮らしていますね。10年同じ町に暮らすと、こんなふうに町の関わり方というか、町と自分の距離感だったりが変わっていくんだって、すごく楽しませてもらっています」
●具体的にどんなところが最高なんですか?
「たくさんあるんですけど、すごくわかりやすいところで言うと、これは諏訪の魅力っていうわけではないですけど、東京に住んでいたことも長かったので、東京との距離も結構ちょうどいいです。2時間ぐらいで行けるので日帰りでも行けるし、仕事もすごくしやすいっていうのも、物理的に地理的に便利なところだし、温泉が気持ちいい! すごく!
すっごく寒いけど、温泉も豊富な地域なので、温泉があることもありがたいし、車で10分で山があるけど、上諏訪は中央線沿線っていうこともあって、私的には結構都会なんですよね。
歩いてスーパーも行けるし、コーヒースタンドもあって、お花屋さんも古道具屋さんもあるっていう・・・車であっちこっち素敵な場所に行くのもいいんですけど、歩くスピードで歩ける距離感の中で、自分の暮らしが楽しいっていうのは、私にとってはすごく心地がいいですね。
諏訪のすごくいいところは、外から来る人に慣れている人が多いというか、中山道が通っていて、東京から名古屋に抜ける、もともと人が行き交う場所だったので、私たちみたいな移住者も暮らしやすいですね。
空き家が出てもまたそこに入居する人も多かったりとかして、ちょっとずつ改善というか、活用されていく兆しのある町だなって思っています」
生きる心強さを持てる場所
※今までレスキューした古材や古道具で、びっくりするようなものはありましたか?
「びっくりするようなものかぁ・・・いろいろあるんですけど(笑)。私たちが諏訪の出身じゃないっていうところが多分大きいんですけど、養蚕のいろいろな道具が出てきたのはすごくいろんな、いい驚きがありました。
この土地を知るきっかけにもすごくなったし、養蚕って言葉では聞いたことがあったけど、実際にここにこういうふうに葉っぱを敷いて、ここでお蚕さんを飼っていたんだみたいな、そこで本当に暮らしていたこととかが垣間見えたのがすごくその土地の解像度が上がったというか・・・。
この土地で暮らす意味だったりだとか、この土地を楽しむきっかけにもなったのは、その養蚕の現場のレスキューだったので、すごく印象深いレスキューではありますね」
●「REBUILDING CENTER JAPAN」の活動は、今後益々注目されると思うんですけれども、そのあたりはいかがですか?
「え~〜、どうでしょう(笑)。注目!? そうですね・・・」
●益々人手が必要になってきますよね?
「そうですね・・・でも自分たちとしては、そんなに大きな会社になりたいっていうことはないので、今ぐらいの人数で楽しく暮らしていけたらいいなって言ったらあれなんですけど・・・。
その一方で、日本は空き家問題とか高齢化の問題だったりとか、最近は居場所作りみたいな話だったりとか、そういう社会問題ってどこも同じようなことを抱えていると思うので、『みたいなスクール』を通じて、ほかの地域で同じような課題感を持っている人たちとつながることで、もちろんリビセンみたいな事業もサポートしつつ、いろんな地域で起きている社会課題を私たちもインプットしながら、また自分たちの地域にフィードバックしていくっていうことは、どんどんやっていきたいなと思っています」

●リビセンの活動を通じて、どんなことを伝えていきたいですか?
「私たちのメインの事業は、もちろん古道具とか古材が外から見てもいちばんわかりやすいところではあるんですけれど、大もとにあるところで『生きる心強さを持てる根拠になる場所』になれたらいいなっていうのを思っています。例えば、物が壊れたら捨てるっていうだけじゃなくて、自分で直せるって思えるってすごく心強いと思うんですよね。
電化製品とかが多かったりすると、自分で直せるって思えるものって、なかなか少ない世の中ではあるなと思うんですけど、自分にもできるかも! っていう気持ちをひとりひとりが少しでも持てて、その一歩を踏み出せたら、どんどん見える世界が因数分解されていったりとか、社会の解像度が上がっていって、自分がよりよく暮らしていくためにとか、よりよい社会を作っていくために、これだったらできるって考えられるような、原体験じゃないですけど、場所を作っていけたらいいなっていうふうに思っています」
INFORMATION

ぜひ「REBUILDING CENTER JAPAN」の活動にご注目ください。今年の「リビセンみたいなおみせ やるぞスクール」は3月21日から23日、4月25日から27日、5月16日から18日、そして10月にも、11日から13日に開催される予定です。「リビセン」で販売している古材や古道具のほか、所在地など、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「REBUILDING CENTER JAPAN」:https://rebuildingcenter.jp