2025/3/23 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. GARDEN OF DELIGHTS / LISA LOEB & NINE STORIES
M2. FLOWER GROWN WILD / BRYAN ADAMS
M3. BOTANICAL GARDENS / LORRAINE BOWEN
M4. SPRING SONG / LINDA LEWIS
M5. 存在 / WANIMA
M6. WILDFLOWERS / RELISH
M7. THE GOOD LIFE / TONY BENNETT & FRANCO DE VITA
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/3/16 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、一般財団法人セブン-イレブン記念財団「高尾の森自然学校」の代表「後藤 章(ごとう・あきら)」さんです。
2015年4月に設立され、今年開校10周年を迎える高尾の森自然学校は東京の西、八王子市に広がる里山の森を保全するなど、いろいろな活動に取り組んでいます。
高尾の森自然学校のフィールドは、もともと薪や炭を取る里山の森として使われていましたが、時代の流れで利用されなくなり、暗い森になっていたそうです。
そこで、東京都とセブン-イレブン記念財団の協働事業として、森の手入れを行ない、明るい森に再生。植物や動物の多様性を守りながら、その一方で一般のかたに親しんでもらい、自然について学ぶフィールドにもなっています。

面積は26.5ヘクタール、東京ドームおよそ6個分! 四季折々、いろんな表情を見せてくれる森には散策路があって、子供たちが遊べる遊具やベンチも設置。土日と祝日には原っぱが解放され、昆虫観察などもできるそうです。
森には、管理棟で受付さえすれば、どなたでも自由に入れます。また、事前に予約すれば、スタッフが森の中を案内してくれるそうですよ。
きょうは高尾の森の、動植物の特徴のほか、森と人々をつなぐ体験型のプログラムやボランティア活動のお話などうかがいます。
☆写真協力:高尾の森自然学校


植物300種、野鳥50種
※高尾の森自然学校のフィールドには、どんな樹木が多いんですか?
「里山の森ですので、そこで使っていたコナラやクヌギなどのどんぐりがなるような、そういった木がいちばん多くて、それ以外にもヤマザクラだったりツツジ、そういった樹木たちが多いと思います」

●種類としては何種類くらいあるんですか?
「樹木だけ、というのは数えてはいないんですね。植物全体ですと、毎月調査をしているんですけども、300種類を超える植物が見られます」
●野鳥などの生き物も多いんじゃないですか?
「そうですね。野鳥は冬、樹木が葉っぱを落としている時期がいちばん見ごろなんです。コゲラだったりアオゲラといったキツツキの仲間だったり、メジロやエナガなどの小さな野鳥たち、そういったものがたくさん見られます。確認できているのは約50種類くらいですかね」

●へ〜! 貴重な動植物に出会うこともありますか?
「今お話した鳥の中だと、例えばオオタカだったり、ノスリといったタカの仲間だったり、フクロウは夜だけここにいたり・・・。希少なものでしたら、沢が流れているので、そこでホタルが見られたり・・・あと一昨年、ここでキツネが繁殖して、キツネの親子が見られたり、そういったこともありました」
●自然学校のスタッフとして森の手入れもされるんですか?
「ここはボランティアのかたと一緒に整備をすることが多いんですね。暗い森になった原因の笹を刈ったりとか、増え過ぎてしまった木の一部を間伐したりして、森を明るくするような手入れを基本的にしています」
●木を植えたりとか、そういうことはされるんですか?
「木は基本的には植えていなくて、森を明るくすることによって、ここにもともといる植物、動物たちが増えるように、そしてまた周りから入ってくるようにということを目指しております。
森の手入れをすると本当に見違えるほど明るくなるんですね。1〜2時間くらいのボランティア・サークルの活動だけでも、真っ暗だった森に太陽の光が入ってきたっていうことを感じることができます。
そうすると例えば、明るくなったところに、春になるといろんな草花が花を咲かせたり、明るくなったことを生き物たちが感じて、また戻ってきてくれたということを感じることがよくありますね」

(編集部注:先ほど、高尾の森自然学校のフィールドには、基本的に木は植えないというお話がありましたが、後藤さんによると、全国で「ナラ枯れ」という木の病気が流行っていて、高尾の森も例外ではなく、コナラなどが枯れているそうです。そこで今後、枯れた木は伐採し、森の中にある苗の移植を検討しているとのことでした)
自然を体感! 大人の植物観察会
※高尾の森自然学校では、体験学習ということで、いろんなプログラムを実施されています。具体的にはどんなプログラムがあるのか、教えてください。

「ここではこの森を再生しながら、帰ってくる生き物を観察したりとか、手入れの時に発生した間伐材を利用したクラフト、そういったものを中心としながら地域の自然と、そして地域の文化を学ぶようなプログラムをやっています。
ここでやっているものとしては、例えば昆虫観察会、連続プログラムとしてやっているんですね。春はチョウ、夏はホタルやカブトムシ、秋はバッタ、冬は冬越しする昆虫といった、1年を通じてここにいる昆虫たちを観察して学んでいくプログラムだったり・・・。
野鳥観察のプログラムとしては、夏鳥と冬鳥というのがすごく特徴なんですけれども、その観察にプラスして、野鳥の巣箱を設置して、1年間子育てに使った巣箱と新しい巣箱を取り替えて、使った巣箱の材料を観察しながら、どんな材料を使っているんだろうか・・・。
例えば街に近いところだったら人工物を多く使っていたり、森の奥のほうだったら自然素材を多く使っていたり、そういった違いだったりを鳥の目になって環境を見るようなことを行なっていたり・・・。

また少し変わったものとして、お子さんが学ぶプログラムが多いんですけれども、やはり大人のかたにもたくさん来ていただきたいと思っておりまして、『大人の植物観察会』といった名前で、森を歩きながら季節の植物を観察します。
で、大人のプログラムですので、その植物だけじゃなくて環境、森自体の自然を感じるような、木を触って感じたりとか、流れる沢の水を感じたりとか、森の中に寝っ転がって、森の木々の音、鳥の鳴き声を静かに感じるような、そういった自然を感じながら行なうのが自然観察会、そういったこともやっています。
また、自然が好きな人はたくさんいるんですけども、そうじゃなくて、小さなお子さんだったりとか普段、森に入らないような人たちにも森を、自然を学んでもらったり感じてほしいということで、『森の音楽祭』というプログラムをやっています。これは、例えば中学校さんの吹奏楽部だったり太鼓部だったり、そういった子供たちが森の中で音楽を演奏する、それをみんなで楽しみながら、自然の入口になるような、そういったプログラムもやっています」
森と畑のボランティア活動

※先ほどもお話に出てきましたが、ボランティアを募集されているんですよね?
「ボランティアとして、『森のお手入れボランティア』っていう森の手入れをするようなボランティアさん、そして『畑クラブ』という、ここにある畑の一部を手入れするボランティアさん、あと子供たちの活動で『森のジュニアボランティア』、この3つのボランティア活動をやっているんですね。いずれも一般のかたをホームページ等で募集して行なっています」
●随時募集されているんですか?
「『森のお手入れボランティア』と『畑クラブ』は随時募集です。『森のお手入れボランティア』は月に3回、『畑クラブ』は月に1回(の活動)なんですけど、これは随時募集しておりますので、ホームページからいつでも応募することができます。『森のジュニアボランティア』だけは、1年間通じて学んでもらいたいと思っていますので、3月から4月ぐらいに1年間の募集をして、年間そのメンバーで活動するという形でやっております」
小笠原諸島と高尾の森
※後藤さんが高尾の森自然学校のスタッフとして活動するようになったのは、なにかきっかけのようなものがあったんですか?
「私は大学にいた時に、生き物を守るための研究、『保全生態学』というんですけれども、生き物の生き様、生態を研究しながら、自然を守っていくにはどうしたらいいかということを研究する学問なんですね。
大学で研究しながら、それをたくさんのかたに伝えていかないと守っていけないというふうに感じまして、大学を卒業して大学院を出た後に、高校の教員だったりとか、NPOの職員として仕事したりとかいろいろやっていたんです。そんな時にこの高尾の森自然学校の募集にすごく運命的なものを感じて応募して、それからこちらで活動するようになりました」
●「保全生態学」は、具体的にどんな研究をされていたんですか?
「保全生態学は生き物の生態を研究しながら、絶滅が心配される生き物だったりとか、失われている自然をどう守っていけばいいのかっていうことを研究する学問なんですね。私はその中で、大学の頃は小笠原諸島、そこに生息する絶滅危惧の植物の生態を調べて、その減っている原因を解明しようということを大学院の最初の頃にやっていました。
そこから今度は関東の東京の近辺で、小学校に小さな池『ビオトープ』を造って、そこに来る生き物たちや、周りの環境を知ることができるんじゃないかということで研究しながら、子供たちに周りの環境を伝えていく、そういったことを研究の生業にしておりました」
●高尾の森もやっぱり魅力的なフィールドですよね?
「そうですね。小笠原諸島はすごく固有種が多くて、あそこにしかいない生き物がいるんですけども、高尾の森のような里山も、日本にしかないすごく貴重な環境で、そして人が(森を)使われなくなることによって、失われつつあるというところで共通点があります。そういった意味では高尾の森もすごく魅力的な場所だと思っています」
地域で活かす里山の森

※これからの時期、高尾の森自然学校のフィールドは、いい季節を迎えるんじゃないですか?
「そうですね~。落葉広葉樹は冬は葉っぱを落とすので、春はいちばん明るくて見通しもいい時期なんですね。そうすると太陽の光を浴びて林床(りんしょう)の植物たち、スミレだったり、イチリンソウ、ギンラン、色とりどりの花々が林床を彩っていきます。そして上のほうには、桜だったりとか山桜がすごく多いんですけれども、そういったものが咲いてすごくいい季節になりますね」
●後藤さんが個人的に好きな季節とか時間帯はありますか?
「季節はやっぱり春の時期がいちばん綺麗かなぁと思いますね。で、時間・・・やっぱり朝早い時間だと、本当に鳥たちがすごく喜んで鳴いていますよね。そういったものを聴きながら散策するのがいちばん気持ちいい時間かな~と思います」

●今後、自然学校のスタッフとして、どんなことを伝えていきたいですか?
「里山の森、自然学校は里山の森なんですけれども、ここは地域の人が使うことによって維持されてきた森ですので、やはり今後もこの地域で活かされていく、地域のかたのボランティア活動だったり、地域のかたが学ぶ場として、この自然学校のフィールドを使ってほしいと思います。そういったことをたくさんのかたに伝えていきながら一緒に(高尾の森を)守っていけたらと考えています」けて、備えていくきっかけにしていただけたら嬉しいなと思っています」
INFORMATION

今年10周年を迎える高尾の森自然学校にぜひご注目ください。お話にもあった「大人の植物観察会」や「野鳥観察」「昆虫観察」などなどいろいろな体験型のプログラムを行なっています。また「森のお手入れボランティア」や「畑クラブボランティア」などもありますので、ぜひご参加ください。まずは、これからとてもいい季節を迎える「高尾の森自然学校」のフィールドに遊びに行ってみていかがでしょうか。
開館時間は午前9時30分から午後5時まで。定休日は毎週火曜日です。アクセス方法など、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎高尾の森自然学校:https://www.7midori.org/takao/
2025/3/16 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. HAPPY / PHARRELL WILLIAMS
M2. HERE COMES THE SUN / THE BEATLES
M3. SWEET SEASONS / CAROLE KING
M4. ALL I WANNA DO / SHERYL CROW
M5. Wonder History / ジャンク・フジヤマ
M6. DREAMS / FLEETWOOD MAC
M7. DO I DO / STEVIE WONDER
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/3/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、合同会社「CAMMOC(キャンモック)」の「三沢真実(みさわ・まみ)」さんです。
キャンプ好きな仲良しママがメンバーのCAMMOC、社名はキャンプとハンモックを合体させて、キャンモックなんです。
そんなCAMMOCの活動の中から、三沢さんに、ママ目線の防災とキャンプや、日々の暮らしを豊かにしながら、災害に備えるヒントやアイデアなどうかがいます。
☆写真協力:CAMMOC 三沢真実

持続可能な防災「SDGs防災キャンプ」
※女子キャンプのイベントがきっかけで2011年に発足したCAMMOC。中心メンバーはマミさんのほかに、カナさん、アヤさんのママさんキャンパー3人。みんな、防災士の資格を持っていたり、キャンプ・インストラクターやコーディネーターだったりと、普通のママではないんです。

実は三沢さんは小学生の頃、ガールスカウトの活動を6年間、体験し、テントの設営やロープワークなど、野外で過ごす術を習得。
そんな三沢さんがおっしゃるには、ガールスカウトはどちらかというと訓練に近い活動だったのに対し、大人になって参加した女子キャンプ・イベントは、焚き火やクラフトワークなど、好きなことを思う存分楽しむ大人のキャンプ。その醍醐味を知ってしまった三沢さんは20代後半でキャンプにどハマりしたそうです。
●現在、CAMMOCは、おもにどんな活動をされているんですか?
「はい、CANMOCは”キャンプのある暮らし”をテーマに活動する会社です。私たちはキャンプをすることで人生が生き生きして、暮らしが豊かになるという経験をしてきたので、みんなにもキャンプをして欲しくて、初心者でも参加しやすいイベントを開催したりとか、あとは会社の商品をキャンプで使うご提案をさせてもらったりとか、そういったことをしていたんですけれども、5年くらい前から、突然、キャンプって防災に役立つことに気がついて、それを発信するためにいろんな勉強をしたりして、今はその部分にも力を入れて活動しています」
●CAMMOCでは活動のひとつとして「SDGs防災キャンプ」を提唱されています。キャンプと防災に着目されたのは、どうしてなんですか?
「キャンプと防災に着目したのは2019年ですね。自分の住んでいる地域に巨大台風が来るという予報が出て、スーパーマーケットのものが一気になくなったりとか、ニュースでもSNSでも不安の会話が飛び交ったりしていて、私もなんか対策しなきゃなと思ったんですね。
恥ずかしながら、それまで防災意識が低くて、本当に大した備えがなかったので、今からライフラインが止まるとしたら、何を準備すればいいんだろうって考えた時に、数日間であれば、ほとんど家にあるもので過ごせるということに気がついたんですね。家にあるものっていうのがキャンプ道具だったんです。そこにすごく感動して、それでSDGs防災キャンプという活動を始めることになりました」
●具体的にはどんな活動をされているんですか?
「まず、SDGs防災キャンプなんですけれども、”持続可能な防災”という意味で、キャンプをしていると得ることのできる知恵や備えられる道具で、無理なく楽しく防災できるというような方法です。
普段は使わないことを願って買った防災道具が、期限が切れたら捨てて買い替えることになると負担になっちゃうし、その道具をもしもの時に本当に使えるかどうかもわからないと思うんですが、キャンプ道具であれば、日頃楽しんで使いながら防災できるので無理なく続けられるんですね。
それはただ物を備えるだけじゃなくて、さらにキャンプをしていると自分自身に生きる力が身につくというのが大きな特徴なんです。
例えば、雨が降るとか風が吹くとか自然のサインを感じることで、何かあらかじめできることがあったりとか、少しのものでも工夫して命をつなぐコツが身についたりとか、環境や相手を思いやる心が育ったり、そういう力がもしもの時の対応力にもなっていくんですね。
ひとりひとりが生きる力を身につけることによって、本当に助けが必要な人のところに助けが行き届くということにもつながると思っているので、助け合ってみんなで災害に強くなれる、それが持続可能な防災の力。その持続可能っていう部分にSDGsという思いを込めて、この名前をつけているんです。
キャンプをしていると、防災の力、みんなが助け合う力が身につくよっていう思いと、そのためにちょっとしたコツ、キャンプ道具をどういうふうに備えておいたら、もっともしもの時に活かせるかなとか、そういったことをお伝えする活動をしています」
「フェーズフリー」という考え方

※「防災と暮らし」という視点で言うと、去年、CAMMOC名義で、『ラクして備える ながら防災〜フェーズフリーな暮らし方』という本を出されています。副題にある「フェーズフリー」とはどんな考え方なのか、教えてください。
「フェーズフリーを簡単にいうと、“もしも”と“いつも”のフェーズ、境目をなくして両方のQOLを上げていくというものなんです。いつも使っているもので防災する、それを使うことで暮らしも豊かになるというような物事を日頃から取り入れることが、フェーズフリーの考え方です」
●フェーズフリーの住まいとして、三沢さんの暮らしからいくつか参考になる具体例を教えていただきたいんですけれども、まず、三沢さんはご自宅をご自身でリノベーションされたんですよね?
「はい、そうですね」

●防災士の視点で作り替えたっていう感じなんですか?
「もともとインテリアが好きなので、防災に取り組む前から家は自分の好みにカスタマイズをしていたんですけれども、防災士になってからより一層、違った時点で家の中を整えるようになりました」
●特にこだわったのってどんなところですか?
「毎日が楽になるというところですね! 私、本当に面倒くさがり屋なんですよ。で、片付けも苦手で、出したものをしまうっていうのも(面倒くさい・・・)。
動線を作るのがすごく大事っていうことは聞いているんですけれども、扉がひとつひとつくっついていると、そのワンアクションが面倒くさい! みたいになってしまうので、すぐにしまえるようなところをポイントにしていますね」

●確かに本に玄関の写真も載っていましたけれど、靴箱が取り払ってあってオープンラックにしてありました。それも楽さを追求したということですか?
「そうですね。靴って玄関に散らばっていると、避難動線にとても危険なので、常にしまっておきたいものなんですけれども、帰ってきて疲れている時に靴箱にしまうというワンアクションがやっぱりしんどいんですよね(苦笑)。
で、オープンラック、扉がないシューズクロークって防災としては、結構タブーな感じではあるんですけれども、それでも常にしまえなくて出しっぱなしにしているよりは、しまいやすいような形になっているほうがマシ、ということを私なりに考えまして、しまいやすいオープンラック、そしてせめてオープンラックだけれども、靴がバラバラと落ちてこないようにちょっとバンドで止めるっていうような工夫をしております」
三沢さん流「ラクして備える防災」
※CAMMOC名義で出された本『ラクして備える ながら防災〜フェーズフリーな暮らし方』に載っている写真を見て、リビングにあるサイドテーブルにポータブル電源が収納されているのに驚きました。三沢さんのお宅では緊急時に使うイメージのあるポータブル電源を普段使いしているんですか?

「そうですね。家のコンセントって壁に付いているので、例えば、部屋の真ん中で使おうと思うと、コードが短いと届かないとか、あんまりビヨ〜ンと伸ばしたくないな〜とかあると思うので、緊急でタブレットで動画を見たいとか、息子が友達連れてきてゲームをいっぱいつなぎたいみたいな、そんな時にモバイルバッテリーを持ってきて使うんです。
モバイルバッテリーって見た目が結構いかつかったりして、あんまりリビングに馴染まないので、サイドテーブルの中に(モバイルバッテリーを)隠して、それごと移動することで違和感なく使えるようになっていますね」
●キッチンも一部オープンラックにしてありましたけれども、食器とかって落ちてきませんか?
「食器は基本的には割れ物は、扉が付いているものに入れるようにしているんですけれども、申し上げた通り、しまうのが面倒くさいタイプなので(笑)、オープンラックに出しているものをほぼ使っていて、そこにはキャンプ用の食器とか割れないものを並べていますね」
●そうなんですね。押し入れを改装して棚をつけて、食料品とか水とか日用品などをワゴンや透明なケースなどに入れて保管してある写真も載っていました。保管場所にはどんなこだわりがあるんですか?

「防災備蓄の基本としては“分散備蓄”という考え方があって、物をいろんなところに備蓄しておくことで、1か所、扉が開かなくなってもほかの場所で対応できるようにとか、そういった工夫をされるかたが多くて、私も試してみたんですけれども、私の場合はいろんなところに備蓄しておくと、どこに何を置いていたかを忘れちゃうんですよね・・・。
で、気がついたら賞味期限が切れているので、そういったことになるよりは、自分でわかりやすいような形にしようと思って1か所にまとめて、カレーはカレーとかパスタはパスタみたいにコーナーを作って備える、っていうことを心がけていますね」
●食料品などを消費しながら足していく「ローリングストック」で、三沢さんのコツがあったらぜひ教えていただきたいんですが・・・。
「はい、まず食料品は長期保存のものを買うと、やっぱり忘れちゃったりとかあまり口に合わなかったりとかするので、日頃から食べているっていうのが特徴だと思っているんですね。
自分が食べたいものを備えるのが何よりも続けるコツで、スーパーマーケットに行って美味しそうなレトルト食品を見つけたら、すぐに食べたいなって思うものを買う。そしてそれを手抜きの救世主だと思って、“あ〜、きょうは疲れたな~”みたいな時とか、“雨が降っていて買い物、面倒くさいな~”みたいな時に、“そういえば、あのレトルト食べたかったんだ!”と思って出してきて食べる、みたいなことを月に何回かやっていくと、あっという間にローリングストックになって、スーパーにまた行くたびに美味しそうなものを見つけることを楽しみにする、みたいなのがポイントかなと思います」
(編集部注:ほかにも三沢さんのお住まいでは、寝室には家具がなく、すっきり。その理由は、物が落ちてこない安全な場所を確保しておくためで、「揺れたら、寝室へ」が家族の決まりごとだそうです。さらに寝室の壁にはディスプレイ的にお気に入りのヘルメットや防災バッグなどをかけてあるんです。

また、外出先で被災することもあるので家を出るときに持って出るコンパクトな防災ポーチに加え、愛犬用のポーチも用意されています。防災バッグやポーチの中にどんなものを入れてあるのか、ぜひ本でお確かめください。参考になりますよ)

ラジオは防災の必需品!
※普段、私たちはスマホに依存している生活を送っています。便利なんですけど、バッテリーがなくなったら、電話もネット検索もできなくなりますよね。何か対策はありますか?
「まずは、自分でどれだけ電子機器がなくてもやっていけるのかな~ってちょっと試してみる。そういう状態を知ることが大切だと思うんですね。なので、簡単なことだと家の近所でも少し離れると知らない町並みだったりすることがあると思うので、地図アプリを見ないで歩いてみるとか、そういったことを楽しむ。日々ちょっと電子機器をオフにする時間を作ってみるのがコツかなと思います」
●本で「ラジオは時代を超えた防災の必需品」として紹介してありました。ラジオ・パーソナリティーとしてはすごくうれしかったんですけれども、ラジオはやっぱり持っておいたほうがいいですよね?
「はい、もちろんです! 災害時にはスマホの電波が入らないこともあります。やっぱり情報を取るのは命に関わることなので、それができるようにいくつか、もしもの時を考えて選択肢を持っていることが重要なんですね。そのひとつとしてラジオとても重要だと思います」
●いろんなタイプのラジオがありますけれども、おすすめってありますか?
「ラジオは手巻き充電とか、ソーラー充電とか、ライトがついていたりとか、いろんな機能がついているものもあって、それもひとつ、役に立つものを選ばれるといいかなとは思うんですが、やっぱり何よりシンプルにラジオの機能があるものを持っておくことが大切だと思います。
なので、ポケットサイズのもので、それだけでいつも持ち歩けるものとか、必ずすぐに手に取れる場所に置いておけるようなものを用意するのがおすすめですね」
息子とふたりでキャンプ旅
※ではここで、プライベートなキャンプのお話を。三沢さんは息子さんとふたりで日本一周のキャンプ旅をされたこともあるそうですね?
「はい! そうですね」
●それは息子さんがおいくつの時ですか?
「4歳になったばっかりの頃に始めました」

●え~っ! 日本一周のキャンプ旅って車で移動しながらっていうことですか?
「はい、軽バンに乗っているんですけれども、それの中に板をはって、ちょっとお洒落な感じにカスタムして、車中泊もできるようにしながら、キャンプと組み合わせて旅をしていました」
●すご~い! ママとしてどんな思いで旅に出たんですか?
「う~ん、そうですね・・・私は仕事が大好きなんですね。で、1日中仕事をしていても飽きない、みたいな感じですし、あとシングルマザーということもあって、息子を保育園に預けて仕事を結構バリバリとしていたんですけど、気づけば、息子の顔をあまり見ないうちにどんどん大きくなってしまっているな~みたいなのを3歳の頃に思って・・・。
だんだん自己主張も強くなってくると、それに応え切れてないってことへの罪悪感とか、時が流れることへの寂しさとか、そんな感情がいろいろ出てきちゃいまして、子供と今向き合わないと、いつ向き合うんだろうみたいに、ハッとなって・・・家にいると、どうしても仕事しちゃって子供との時間が作れないので、4歳になった頃に思い切って旅に出てみよう! という感じで始めてみました」
●かなり有意義な旅になったんじゃないですか?
「そうですね。ふたりでずっと一緒に過ごしながら、“きょうはどこに行こうか?”って話し合ったりとか、雨がすごくたくさん降っているから、行こうと思っていた所に行けなくなって、どんなことがしたいかなっていうのを考えて、その場でできることを生み出すみたいなこととか、やっぱり家にいるだけではなかなかできないようなことをふたりで挑戦してきたなと思っています」
●お子さんが6歳のときにはニュージーランドでキャンプ旅もされたということですけれども、ついには海外でキャンプ旅をされたんですね?
「そうですね、はい! ニュージーランドでワーキングホリデーをしていた友達がいたので、彼女を訪ねて一緒にホームステイをしたりとか、半月くらいニュージーランドをキャンプして周りました。
●お子さんの成長を感じたりとかってありました?
「そうですね~。やっぱり子供って適応能力がすごいんだな~っていうのを感じましたね。キャンプ場で同じくらいの歳の子がいるのを見つけて、息子は英語が全然しゃべれないのに、”どうしてもあの子と遊びたいんだ!”って言うので、きっかけだけ(作ってあげて)“よかったら一緒に遊ぼうよ!”って私が声をかけたら、そのあとしばらくず~っとその子と走り回っていて、言葉が通じないのにこんなに楽しめるんだな~っていうのを教えてもらった感じですね」

自分の防災レベルを知る
※普段から、家族とのコミュニケーションや、ご近所付き合いも大事ですよね。息子さんと決めてあるルールがあったりしますか?
「いろいろとあるんですけれども、中でも大切にしているのは、子供が出かける時に必ず笑顔で、“行ってらっしゃい! 行ってきます!”と言い合うことですね。それによってきょう何かあったとしても、もし子供とのその会話が最後になったら、みたいな・・・考えるのも嫌ですけれども、そうやっていつも笑顔でその記憶が続くようにっていう思いを込めて挨拶をしています。そうすることで、喧嘩した朝とかでも毎日、出かけは笑顔で! っていうふうに心を切り替えて、気持ちよく送り出すことができるのでおすすめですね」
●防災のための備えって大事だと思っていても、普段の仕事だったり家事だったりに追われてしまって、どうしても後回しになっちゃうこともあると思うんです。それを自分事として捉えてもらうために、本の巻末に「防災レベルを知ろう」というワークシートが掲載されています。
「安全な空間作りができていますか?」とか「ライフラインが止まったら何日過ごすことができますか?」とか全部で5つの質問が設定してありました。これはやっぱり自分のレベルを知って考えるときっかけになりますよね?
「そうですね。何よりもやっぱり“知る”というところがまずはスタートの第一歩ですね。もし自分の防災レベルが今は全然まだまだ足りないな~と思ったら、それがチャンスで、なんでも一歩自分で、“これならできるかな~”と思うことを進めるということが大切ですね」
●自宅だけでなくて職場とかでも当てはまりますよね?
「そうですね。やっぱり自分が日頃いるところに関しては、もしもの時にどうなるだろうっていうことを常に考えておいていただきたいですね」
●では最後に『ラクして備える ながら防災〜フェーズフリーな暮らし方』という本から、どんなことを感じ取ってくれたら著者としては嬉しいですか?
「防災って怖いものではなくて生きるためにすることなので、自分がどうやって生きていきたいか、生きていくためにはどんなものが必要なんだろうって考えるきっかけになることだと思うんですね。
なので、防災について考えると毎日の暮らしが楽しくなったり豊かになったりするんです。そんなところをこの本をご覧になりながら、自分のワクワクを見つけて、備えていくきっかけにしていただけたら嬉しいなと思っています」
INFORMATION
去年CAMMOC名義で出された本をぜひ読んでください。日々の暮らしを豊かにしながら、結果的にそれが防災につながるヒントとアイデアが満載です。今回は三沢さんの暮らし方をご紹介しましたが、住まいや家族構成が違うほかのメンバー、カナさん、アヤさんの暮らし方も載っています。
ほかにも日常食と防災食のフェーズをなくしたレシピや、普段使っているポリ袋や手ぬぐい、食品用のラップやアルミホイルなどの活用術なども大変参考になりますよ。一家に一冊、おすすめです! 辰巳出版から絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎辰巳出版 :https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/18661/
CAMMOCは、防災とキャンプに役立つ情報発信のほかに、イベントや商品開発のコンサルティングなど、いろんな活動をされています。詳しくはオフィシャルサイトをぜひご覧ください。
◎CAMMOC :https://cammoc.com
2025/3/9 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WE ARE ONE (OLE OLA)/ PITBULL feat. JENNIFER LOPEZ & CLAUDIA
M2. STRONGER (WHAT DOESN’T KILL YOU) / KELLY CLARKSON
M3. FIX YOU / COLDPLAY
M4. RADIO / THE CORRS
M5. RISE UP / ANDRA DAY
M6. LEAN ON ME / BILL WITHERS
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/3/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ネイチャーセラピストの「豊島大輝(とよしま・たいき)」さんです。
豊島さんは、房総半島のほぼ真ん中、君津市の里山にある亀山湖、その湖畔にある亀山温泉ホテルなどの施設で体験できる、リトリートのプロデュースや運営に携わっていて、「リトリートの達人」と呼ばれています。そして、先頃『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』という本を出されています。
きょうはそんな豊島さんに、その本も参考にしながら、亀山湖畔で行なっているレイクリトリートや、日々の暮らしの中でもすぐできる プチリトリートのヒントなどうかがいます。
☆写真協力:亀山温泉リトリート

「リトリート」とは?
※まずは「リトリート」について教えてください。アメリカやヨーロッパでは、新しい旅のスタイルとして流行っているそうですが・・・リトリートとは、どんなことなんでしょうか?
「日本語では”転地療法”とか”転地療養”と訳されているんですね。要は普段、街に住んでいる人であったら、街からしばし離れる、転地をする。そこでありのままの自分や新しい自分を見つける。自己啓発じゃないですけど、自分をリフレッシュして、かつパワーアップするような旅、それが『リトリート』ですね」
●豊島さんはリトリートを「人がヒトに戻る旅」と定義されています。その心は?
「転地をする、いつもいる日常から離れるというのは、私たちがありのままの人になる。私は『漢字の「人」がカタカナの「ヒト」に戻る』っていう表現をしています。これは学術的な定義ではないんですけど、私の自由表現の一環なんですね。漢字の“人”というのは、私だけじゃなくて、みなさんいろんな立場をお持ちで、いろんなことに日々責任を背負って生きていらっしゃる。
もちろん私もそのうちのひとりなんですけど、街の立場、漢字の“人”から自然にリトリートに出ることによって、生態系の一部だったり自然の一部だったり、社会の一部から自然の一部に戻る旅、それが私にとってリトリートで、これからどんどんそれをいろんなかたにお届けしたいなと思っているところです」
●鎧を脱ぎ捨てるみたいな感じですよね?
「そうですね。日常の鎧というのはそう簡単に脱げるものじゃなくて、特に今はスマホとかインターネットの普及で、どこに行っても簡単に連絡がつく。便利になった反面、自分の社会的な姿を手放しにくくなっているっていうのが、実際だと思うんですね。
外出先でも会社からメール一本で指示が入ってとか、家族のかたからもLINEでポン!と連絡が来て“何か買ってきて!”とか、便利な場合もあるんですけど、それが自らを縛ってしまう場合もある。それがやっぱりストレスになってくる。特に責任感が強ければ強いほど、どんどん縛られてがんじがらめになっていくと・・・。
私は自分がセラピストとして活動する中で、そういったかたを延べ何千人も見てきています。そういったかたには、日常からちょっと離れてリフレッシュする時間を取ったほうがいいんじゃないですかってことを提案してきて、20年以上こういったことをやっていると、時系列でどのように変化してきたか、そういうこともわかるわけですね。
“豊島さんにアドバイスをもらってやってみたら、なんとなく流れが変わった気がする“とか、そういったお声もいただいています。なので、”人がヒトに戻る“のが今、常時接続の社会だからこそ、すごく必要なことなんじゃないかなと感じております」
(編集部注:豊島さんがなぜ、セラピストとして活動するようになったのか、そのきっかけといえる体験が子供の頃にあったそうです。
1975年に大阪に生まれた豊島さんは、キャンプや釣りなどアウトドアが大好きなお父さんの影響で子供の頃から自然に親しみます。ところが転勤に伴い、責任が増えたお父さんは多忙を極め、ほとんど休めなくなり、ついには脳梗塞を発症、家庭環境が一変したそうです。
その時、豊島さんは子供心に、人は自然から離れると病気になってしまうと感じ、同じような境遇の人の支えになりたいと、ウェルネスの道を志すことに。そして健康運動指導士やセラピー関連の資格を複数取得。
その後、亀山温泉リトリートのブランドを立ち上げ、ホテルやグランピング施設などで、リトリートのプログラムを実施。そして先頃、そのノウハウやヒントをまとめた本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』を出されています)

1分、目を閉じてリトリート
●本の中に労働者の疲労蓄積を数値化するチェックリストが載っていました。チェックリスト1は最近1ヵ月の自覚症状ということで、イライラするとかよく眠れないとか憂鬱とか、そういった項目が14あって、私もやってみたんですね。
私は6点だったので、疲労蓄積度は低いほうだなぁと思うんですが、この点数が多い人ほどリトリートが必要ってことですよね?
「う~ん、まぁそれも考え方のひとつなんですけど、点数を高めていかないためのリトリートって思っていただければ・・・なので15点になったらリトリートに出る。それは今までの、言ってみれば“疲れたら休む”っていう、ほんとにベーシックな考え方なんですけど、私は『アクティブレスト=積極的休養』、もう少し積極的に体を休めて、疲れきる前にとにかく休む!っていうことが大事なんです。
自分を疲れきるまで追い込まずに、“転ばぬ先の杖”をどんどん突いていくっていうんですかね・・・もっと早い段階でリトリートをやっていく、ライフスタイルに落とし込むまでやっていくことを提唱していますね」
●日本人は勤勉と言われていて、休むことに抵抗があるっていうかた、あと仕事柄とか立場的に休めない、そういったかたも多いと思うんですが、どうしたらいいんでしょうか?
「リトリートに出ていただくっていうお話をしたんですけど、それをハードルが高く感じるかたもいらっしゃると思うんです。やっぱりまとまった休みが取れないとか、あと仕事柄、責任もあってスマホをずっと持っていて、電源は絶対切っちゃいけないとか、みなさんそれぞれのご事情があると思うので、まず身近なところとしては、目を閉じて静かに瞑想する。“マインドフルネス”なんて言ったりもしますけど、私は自然とつながることで自分が整うってことをお話ししているんです。
よくよく考えたら、私たち人間も自然の一部ですから、それを私はカタカナの”ヒト”って表現しているんです。まず目を閉じて深い呼吸をして、自分の中にある静かな自然とつながる。それだったら1分、目を閉じても結構リラックスできます」
●そうですよね~。
「1分も時間を取れないってかたはそうはいないです。気持ちの問題です。“1分時間を取れませんか?”って言ったら、みなさん1分ぐらいは時間って取れるんですね」
●確かに、電車の中でもできますしね。
「そうです! ないないないって思っているから、そういうふうになっちゃっているだけで、あるあるあると思えば1分あるわけですよね。
その中でまず呼吸を整える。あわよくば、ちょっと姿勢を整える。ピーンと立つわけじゃなくて、少し胸を開いて堂々とした姿勢でいる。で、自分の心を整えていく。ヨガとか気功とかそういった瞑想でも当たり前に使われていまして、まぁその3つをちょっと整えていただく。まずは目を閉じて呼吸からだと思いますね。
今3つ言いましたけど、あれこれ言うとややこしくなって、わかりづらくなるので、まず目を閉じて静かに呼吸を意識してみてくださいと・・・1分目を閉じて、目を開けた時には1分前よりはちょっと穏やかな気持ちになっていますから」
レイクリトリート、ヨガに星空に焚き火
※では、ここからは忙しいかたに向けて、具体的なリトリートについてうかがっていきます。自然や環境がテーマのこの番組としては、本の第3章にある「自然とつながることで、ととのうリトリート」についてうかがっていきたいのですが、これはまさに豊島さんがプロデュースされている「亀山温泉リトリート」そのものですよね。
亀山温泉リトリートは、自然体験型リトリートのブランドということなんですが、コンセプトのようなものはありますか?
「これは、漢字の”人”がカタカナの“ヒト”に戻る場所、さっきお話した私の思うリトリートのコンセプトそのままを、施設のコンセプトにもしています」

●具体的にはどんなリトリート体験できるんでしょうか?
「まずベーシックなところでは“レイクリトリート”、亀山湖は湖ですから、湖周辺を自然ガイドの私と一緒にウォーキングします。ところどころに広場があったり、少し中に入ったら森もありますので、そこでヨガをしたり・・・あと私は気功とかそういった知識がもちろんありますので、ヨガだったり気功の呼吸法を行なったりとかして、そこで自然とつながる。つまり自然と一体化していくような感覚、それを得ていただくようなことをやっています」
●へぇ~〜。
「それが亀山湖での日中のプランなんですけど、夜は夜で焚き火をしたり、さらに星空がすごく綺麗な時は山頂まで星空を見に行ったりとかですね。
自然をテーマにはしているんですけど、自分自身の経験もありまして、焚き火でもただじっと焚き火を眺めてもらう・・・あえて“瞑想してください。マインドフルネスをしてください”って言うと、結構ハードルが上がるんですね。 “心を無にしなきゃ!”みたいな・・・。でもマシュマロを棒に刺して焦がさないように、焚き火でひたすら焼きマシュマロを炙る! その瞬間ってもう無になっているんですよね」
(編集部注:亀山温泉リトリートは、初日は参加者のかたに、ある程度タイム・スケジュールを決めて、プログラムを体験していただく方法をとっているそうです。その理由は、いきなり「さあ、好きなことを自由にやってください」と言ってもどうしていいのか戸惑ってしまう。それが返ってストレスになることもあるので、そういう方法をとることにしているそうです)

亀山湖畔、渡り鳥でリトリート!?
※春になると、亀山湖畔は見所がいっぱいあるんじゃないですか?
「桜を結構植えていますので、それが湖に映えて、反射してすごく綺麗になってきます。さらに早咲きの河津桜、あと陽光桜っていうちょっと珍しい早咲きの桜。で、染井吉野と・・・フラワーリレーって言うんですけどね。常に何かが咲いているようにリレーしていくんです。
一般的な観光であれば、それもお勧めしたいんですけど、リトリート的には実は亀山湖には渡り鳥が結構来ていまして、渡り鳥の観察は私のマニア視点が少し入っているんですけど(笑)、すごくいいですよ。
鴨の仲間の珍しい渡り鳥でも4月くらいには戻って行ってしまう。大陸から渡ってきていますので・・・。そういった時に、今年も“渡り鳥がやってきて、また戻って行っちゃったな~“とか、季節の移り変わりを、桜はわかりやすい季節の風情ですけど、さらに深めていくと渡り鳥でも風情を感じます。
実際4月にいつもいるところに渡り鳥がいなくなるとすごく寂しいです 。出勤の時に隣に釣り堀があるんですけど、冬の間棲みついちゃっている渡り鳥がいるので、いなくなるとすごく寂しいですね(笑)。
また逆に季節が巡って秋も深まって、いよいよ冬って時に(渡り鳥が)来てくれると、また今年も来たな!とかって・・・それもまさに自然とつながることのひとつだと思うんですね。何も地球の住人は人間だけじゃありませんから、いろんな動植物が棲んでいますから。
それらがいるってことを、通り過ぎている人みんな(渡り鳥を)見ているんですけど、ただなんか鳥がいるなくらいの感じでみんな通り過ぎていると思うんですね。そこを、無意識なのをちゃんと意識下に置けるのは、リトリートのいいところだと思いますね」

プチリトリート。日常を「新日常」に
※時間や費用のことなどあって、リトリートを宿泊して体験できない、そんなかたに日頃、職場や自宅でできることがあれば、ぜひ教えてください。
「私はそういうのを“プチリトリート”なんて言っているんですけど、それがリトリートの真骨頂です。要は転地をしますと・・・私の知人でも自己啓発系のセミナーが好きで、そういったところに参加するかたがいるんですね。それがいけないってわけじゃないですけど、戻ってくるとリバウンドしている時があるんですよね。現実に戻って来ちゃったみたいな・・・。
それはもったいないなと思って、完全なリトリートは“非日常”じゃなくて、私は“新日常”って表現をしているんですけど、自然とつながることで視野が広くなってくる。同じ日常なんだけれども、心の中でも小さな転地を繰り返すことによって、新しい発見がどんどんできるようになると。
例えば、通勤の(途中に)街路樹や植え込みがあったりしますよね。サツキとかツツジとかよく歩道の脇にありますよね。ああいったところを見ると、ナンテンの実がなっていたりとか、よくよく見るといろいろな植物が混じっている時があるんですね。
ナンテンって思っても植えたわけじゃないし・・・見上げるとヒヨドリ、鳥が飛んでいたりとかして、ヒヨドリがもしかしてナンテンの実を食べてフンをした、みたいな、いろいろと探っていくことができるわけですね。
だから都会の中でも小自然があって、会社と家の同じ往復だけじゃなくて、往復の中でいつもの自分から転地できる、心を転地できることがいっぱいあります。
今は街路樹のことを言いましたけど、例えば電車に乗った時、電車の中を見るとみなさんスマホばっかり、いじりすぎとかと思うんですね。もちろん連絡事項があれば、それはそれでいいんですけど、せっかく電車に乗ったら外を見てみる。外を見るといろんな変化があるわけです。
空だけでも、雲が秋の鱗雲と夏の入道雲では違うわけですね。ガタンゴトンガタンゴトンって川に差しかかると音が変わります。変わったときにその川はなんて(名前の)川だったか、みんな多分わからないと思うんです。川って結構看板が立っていますから、一級河川とか二級河川とかナントカ川とか、それをチェックすることがすごく大事。チェックして次の休みに行ってみる。そうするとどんどんキリがないくらい広がっていくわけですよ。
帰りはひとつ前の駅で降りて歩いて帰ってくるとか、ひとつ前の駅で降りることをタイムロスと思わないことがリトリート。寄り道はマイナスではないプラスなんだっていうことを強く言いたいですね。直線的にまっすぐなことやっているから選択肢がどんどん狭くなっていく。同じ通勤の中でもプチリトリートができる秘訣がたくさんあります」
(編集部注:プチリトリートについては、豊島さんの本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』にヒントがたくさん載っていますので、自分に合ったプチリトリートをぜひ探してみてください)

リトリートはライフスタイル!?
※豊島さんは自然と人の関係について、こんな考えを持っていらっしゃいます。
「自然を学んでいくっていうのは、私にとっては漢字の”人”なんですね。かつての人は自分も自然だから、“自然から学ぶ”自然を学ぶっていう立ち位置じゃなくて、自然と対等な立場。
“自然から学ぶ”っていうとニュアンス的に何のこと? って思ったかたもいらっしゃるかもしれないんですけど、私はそういった意味では、自分も自然だし周りも自然なので、自然とは対等だと思っているんです。
その視点を持って自然に入ると、自然はいろんなメッセージを自分に届けてくれるんです。自分から自然とつながろうと思わなくても、一回つながって自然を意識下に置けば、もう向こうの方から自動的につながってきて、自分を励ましてくれたりとか元気にしてくれたりとか、季節の風情を与えてくれたりとか・・・ちょっと難しかったですか(苦笑)」
●いえいえ~! では改めてになりますが、最後にこの本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』を通して、いちばん伝えたいことはどんなことでしょうか?
「最初、出版社から“ビジネス書としてビジネスコーナーに並びますよ”なんてうかがっていたんです。実際(本屋さんに)見に行ったら健康書のコーナーに置かれていたりとか、本屋さんによって様々だったみたいなんですけど、最初はビジネスコーナーに置かれることを前提で書いていったので、そこで詩集のようにヒント集にしたいなと思ったんです。
というのは、実践ありきってことですね。くどくど、“これがだからこうなって、これがリトリートなんです”って、“おーなるほど!”と思っても、実践しないと意味がないですよね。
本を読んでわかった気になっちゃったと、単に知識を満たすための本になってしまったと、それだとやっぱりもったいないと思っていて、あえてヒント集にして実践ベースにしています。最初から最後まで読む必要はなくて、最初の前書きと後書きさえ読んでいただければ・・・。
パラパラと詩集みたい読んでいただいて、気になるところが多分その時によって違うので、どんどん実践していただいて・・・。
リスナーのみなさんになっていただきたいのは、最初の通りカタカナの“ヒト”になってもらえたらいいですよね。ひとつひとつがつながってくる。つながってきて、リトリートが単に癒しの一環じゃなくて、自分の生き方の豊かさを広げる、ひとつの方法になってくると思うんですよね。もしもしかしたら方法じゃなくて、ライフスタイルそのものじゃないかなぁ~と」
INFORMATION
この本には忙しい日々から離れて、本来の自分に戻れるノウハウが満載です。この番組としては特に第3章の「自然とつながることで、ととのうリトリート」に注目していただければと思います。また、第4章の「1分から始める! 暮らしの中のプチ・リトリート」には通勤途中やオフィス、または家事をしながらでもすぐできるリトリートのヒントがたくさん載っています。ぜひ参考になさってください。
すばる社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎すばる舎:https://www.subarusya.jp/book/b653272.html

私もリトリートを体験したい、もっと知りたいと思ったかたは、亀山湖畔のホテルやグランピング施設などで行なっている豊島さんプロデュースの「亀山温泉リトリート」を体験されてみてはいかがでしょうか。参加方法など詳しくは「亀山温泉リトリート」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎亀山温泉リトリート:https://www.kameyamaonsen.jp/retreats/
2025/3/2 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. MAS QUE NADA / SERGIO MENDES & BRASIL ’66
M2. SWEET CHILD O’ MINE / BANDA DO SUL feat. NATASCHA
M3. EVERY TIME I CLOSE MY EYES / BABYFACE
M4. EVERY BREATH YOU TAKE / BELEZA
M5. maigo / Quw
M6. ETERNAL FLAME / SONIA
M7. YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE / STEVIE WONDER
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/2/23 UP!
◎盛口 満(ゲッチョ先生こと、沖縄大学の教授)
『生き物の「骨」を楽しむ〜骨は歴史と暮らしが詰まった教科書』(2025.2.23)
◎鈴木 純(植物観察家)
『冬の植物観察のすすめ! 可愛くて面白い「冬芽」に注目!』(2025.2.16)
◎江澤孝太朗(「mamano chocolate(ママノチョコレート)」の代表)
『バレンタインデー直前! エクアドル産の希少なアリバカカオ「森と生きるチョコレート」!』(2025.2.9)
◎石田ゆうすけ(旅行作家)
『「食べるために走る」世界一周自転車旅〜幸せは生野菜!?』(2025.2.2)
2025/2/23 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動植物の精密なイラストで知られる ゲッチョ先生こと、沖縄大学の教授「盛口 満(もりぐち・みつる)」さんです。
盛口さんは、1962年生まれ。大学卒業後、埼玉の中学・高校の教諭を経て、2000年に沖縄に移住。現在は沖縄大学の先生としての仕事のかたわら、フリーのライター、イラストレーターとしても活躍。動植物の精密なイラストで知られ、自然や植物、生物などに関する本を数多く出版されています。また、生まれも育ちも千葉県館山ということで「館山ふるさと大使」でもいらっしゃいます。
そんな盛口さんが先頃『ぜんぶ絵でわかる』シリーズの最新版として、『すごい骨の動物図鑑』を出されたということで、3年半ぶりに番組にお迎えすることになりました。きょうは魚や鳥、哺乳類などの骨格を形作る、多様な「骨」についてうかがいます。
☆写真&イラストレーション:盛口 満 協力:エクスナレッジ

骨の教材で寝た子を起こす!?
※「骨」をテーマにした本を出そうと思ったのは、どうしてなんですか?
「ちょっとだけ長くなりますけども(笑)、私、大学で研究していたのは植物だったんですね。ただ植物の研究者になるのには、ちょっと(自分には)合ってないなと思って、大学卒業後は私立の中学高校の教員になりました。
理科の先生になったんですけれども、実際になってみると、中学生、高校生は虫好きだっていう年齢は卒業しているし、花が好きなほど年配にはなってないし、何を見せたら興味を持つのかなっていろいろ試したところ、そのころは青春期なので人に対して興味がある。
でも人は、理科で扱うのはそうそうないので、いちばん近いのは何かなっていったら、哺乳類とかそういう動物だったんですね。でも、哺乳類を教材として扱う時に、飼っておくわけにはいかない。では何だったら身近に考えられるかな? って思って、骨を使って授業したら、ちょっと興味を持ってもらえるかな、って思ったのが骨との付き合いの始まりになります」
●骨を使って授業をするのは、例えばどんな授業になるんですか?
「骨を見せると、骨ってなんか気持ち悪いっていうイメージがあると思うんですけど、逆に生徒たちって普通の授業をしても飽きちゃうし、寝ちゃったりするわけですよね。返って怖いものとか気持ち悪いものとかにビビッとくるので、そういう時に寝た子を起こすネタとしてはとても面白いし、実際に手で持てたりとか、重さを感じたりっていうことも、実感を伴った授業の教材としては面白いのかなと思っています」
●骨を集めるのも大変だと思うんですけど、何種類くらいの骨の標本をお持ちなんですか?
「え~っと、正直いうとわからないです(笑)」
●え~っ!(笑)
「普段使っている教材用の標本ってそんなに多くないんですね。よく使う標本とかわかりやすい標本は限られているので、それが一部です。あと今回、本に描いたりするような画材用の標本っていうのがあります。何かの折に絵を描いて、それで説明しよう、っていう時のための標本っていうのがあります。
これ以外に、いざという時のためにとっておく標本みたいなのがあって、これは組み立ててもいなくて、バラバラであったり、一個しかないけど、とりあえず拾っておこうか、みたいな標本は本当に数がわからないです」
●わからないほどあるってことですね?
「そうですね。いつか整理して処分したりしなきゃいけないんじゃないかと思っているんですけど(笑)」
●どこに保管してあるんですか?
「家には若干あるんですけど、さすがに家には入りきらなくて、今幸い大学にいるので、大学の理科実験室の一部に段ボールに入れて積み上げてあります」
●骨が気になり始めたら、お食事に焼き魚とか出ても、“これ、標本にしたいな!”とか思っちゃうことないですか?
「あ、もちろんあります!(笑) いったい1年間でどれくらい自分たちは、気が付かないけど、骨に会うんだろう? っていうのが気になったことがあって、毎日食事の度に出る骨を、例えば弁当箱に入っていたサケの骨1本でも、きれいに洗って干してっていうのを1年間、貯めたことがあります。
それ以外にも、例えば漁港に行った先の民宿で、この魚、食べたけど、なんだろう? 地元の呼び名しか教えてもらえなかったりするので、本当の(魚の)名前がわかんなかったりします。なので、頭の骨一部を持って帰って調べようかとか、そういうことをやったりしていました」
●1年に結構な(骨の)数が集まったんじゃないですか?
「えっとですね・・・実は意外と集まらないというか、結構骨抜きにされているんですよ、私たち。(魚の)生ハムは骨がないし刺身は骨がないしで、案外骨なしで暮らせちゃうので、その時は頑張って魚を食べて、魚の骨をせっせと取っていました」
魚と人間は共通!?
●ではここからは、「ぜんぶ絵でわかる」シリーズの最新版『すごい骨の動物図鑑』をもとにお話をお伺いしていきます。
この本には骨がある生き物、魚、両生類、爬虫類、鳥そして哺乳類、それぞれの種に分けて骨の絵をもとに解説されています。私たち人間も骨のある生き物で、いわゆる脊椎動物になりますが、この脊椎動物の特徴と言えば、改めて何でしょうか?

「脊椎動物は共通祖先から枝分かれして、いろんな生き物になっているわけなので、そういう意味でいうと、いちばん最初の脊椎動物は魚の仲間なんですね。だから僕らは“陸に上がった魚”っていう・・・そういう分類になりますね。
魚から見ると、変な魚が陸にいるっていうふうに見ているんだと思うんですけど、基本的には魚の体と私たちの体は、共通した作りになっています。骨を見たりしてもそういうことが少しわかったりします」
●現在、地球上にはどれぐらい種類の脊椎動物がいるんですか?
「資料によっても若干違うし、新しく名前が付けられたりすると増えちゃったりするんですけども、6万6千種ぐらいって言われています」
●へぇ~、その中でいちばん多いのはどの生き物なんですか?
「これの約半分、3万3千種が魚なんですね」
●魚と人間が共通っていうのがちょっとピンとこないんですけど、共通点がちゃんとあるんですね?
「はい、例えば僕らにある腕2本が、これは魚でいうと“胸鰭(むなびれ)”なんですね。足はどこかっていうと、お魚の“腹鰭(はらびれ)”がやっぱり一対、ちゃんと2本の鰭が出ているので、これが足になっているわけです。魚の“尾鰭(おびれ)”、泳ぐときに使う部分が、僕らはお尻からすっぽり退化してなくなっていると・・・。
僕らに首があって魚に首がないのは・・・魚は“鰓(えら)”があって、僕らの首の部分に“鰓蓋(えらぶた)”がかぶさっているんですけど、これがぽこっと取れてしまうと、(僕らのような)こういうスリムな首ができるんですね」
●この本に載っている骨の絵は、実際に標本を見ながらスケッチされているんですよね?
「私は実は、絵は本格的に習ったことがないんですね。好きで描いていたり必要に応じて描いているので、あまり応用が利かないんです(笑)。だから実物がないと描けないので、逆にいうと実物があるものだけ描きました」
●細かい作業ですよね~。最初は鉛筆で下書きをしてとか、そういう感じで描くんですか?
「そうです! はいはい」
●手元に標本がない生き物はどうしていたんですか?
「僕のいるところは博物館でもありませんし、骨の研究施設でもないので、ゾウとかサイとかそういうものはないんですね。なので、知り合いのツテをたどって、動物園と博物館にちょっとお邪魔させていただいて、展示してあるものを描かせていただいたこともあるんですけども、場合によっては人がいると描きにくかったりすることもあるので、標本庫に入れさせていただいて、そこでこの絵を描かせてくださいとお願いして描きました」
魚の眼には骨がある!?
※では、本の中からいくつか気になった骨についてうかがっていきます。「メカジキ」のページに「魚の眼には骨がある」と書いてありました。これはどういうことなんですか?

「さっきお話したように、私たちの先祖は魚なんですね。僕らはそれから少し特殊化しています。どんなところが特殊化しているかというと、例えばさっき言ったように尾鰭の部分がなくなったりというのがあるんですけど、実はもともと目ん玉の周りには骨があったわけです。それが哺乳類の場合はなくなっちゃった。逆にいうと鳥とか爬虫類にも、目玉の周りには骨があるんです」
●へぇ~〜、そうなんですね。
「はい、なぜかわからないけれど、私たちの祖先のところで、目ん玉の周りには骨がいらないよね、っていうふうになったんだと思うんです。だからほかの動物たちから見ると、“哺乳類って目の周りに骨がないし、ちょっと変じゃない?”っていうふうに言われているんだと思うんですけどね」
●なるほど~。哺乳類のほうが変な感じになっているんですね(笑)
「そうです」
●続いて「ハリセンボン」というトゲトゲとした魚、あの針のようなものも骨なんですか?

「はい、骨には2タイプあって、ご先祖さまからずっと受け継いでいる、この位置にはこの骨があるべきでしょうっていう場合と、もうひとつはその生き物が新たに作り出す場合があるんですね。
作り出しやすい場所は、皮膚の表面は割と骨を作る力があるので、例えば魚には鱗(うろこ)があるんですけども、この鱗から骨化したものがハリセンボンのトゲになるんです。だからあれは、もともと骨というよりは鱗なんですが、鱗が骨化されてあんなトゲトゲしたものになったよ、ということなんですね」
●その針をバラバラにして全部スケッチされていました。数もすごいですけど、1000本も・・・?
「ないです(笑)! 一度(トゲを)数えてみようかなって思ったのと、誰でもやろうと思えばできるけど、あんまりバカらしくてやらないことって面白いなって思って・・・。ハリセンボンの時はバラバラにして、トゲがどっか1本だけ飛んじゃわないようにするのがすごく大変だったんですけどね。それを1個ずつ並べて描いてっていうのをやったんですけど、360何本だったと思います」
鳥の骨はがらんどう!? ずっしり重いジュゴンの骨!?
●「セマルハコガメ」という亀の甲羅も描かれていましたけれども、亀の甲羅って骨なんですよね?

「はい、漫画でカメの甲羅からカメの中身がスポット抜けたりする絵がよく出ていたりするんですけど(笑)、あれは嘘で、甲羅をはがすと死んじゃいます。内臓だけが(甲羅に)入っているわけじゃではないんですね。
カメの甲羅ってちょっと不思議で、人間でいうとあばら骨が中心になっているんです。あばら骨と背骨が甲羅を形作っている。ところが人間でいうところの、あばら骨や背骨とはちょっと別の位置にある。肩甲骨と腰骨が不思議なことにカメは甲羅の中に入り込んでいるんですね。だから甲羅の中身が肉だけかっていうと、そういうことではなくて骨も一部あるよ、っていうことなんです」
●続いて、鳥の骨についてなんですけれども、やはり空を飛ぶために体を軽くしたほうがいいですよね。ということは、骨自体も細くて軽くなったりしているんですか?
「そうなんです。基本的には鳥の骨の特徴は“中空”、中ががらんどうになっているのが鳥の骨の特徴なんですね。もうひとつ軽くするための工夫があって、それはできるだけ省略するってことです。例えば今までバラバラだったものを1本にくっつけちゃうと、それだけ強度も増すし、材料も減って体が軽くなるっていうことなんですね。だから人間よりも骨の数が減っています」

●へぇ~〜!
「もうひとつは、鳥は翼を動かすので、1個だけ増えているっていうか発達している骨があって、それが胸の真ん中にある“キール”と呼ばれる部分なんです。ここに出っ張りがあって、そこに飛ぶための筋肉がごつっとくっついている。“鳩胸(はとむね)”って言ったりしますけども、胸が出っ張っているんですよね」
●健康食品のCMなどで、骨密度の話もよく出てきますけれども、生き物の中で骨密度が高いのはどの種なんですか?
「これもいろいろあるとは思うんですけども、持ってずっしりする骨っていうのがあって、これがジュゴンの仲間なんです。ジュゴンは海の中の動物なんですね。クジラももちろん海の中の動物なんですけど、クジラは海を泳ぎまわってプランクトンとか魚を食べています。もちろん大きいので骨は重たいんですけど、実は骨自体の密度としてはそこまで重くないんです。
ところが、ジュゴンは何を食べているかっていうと、海底に生えている海草を食べているんです。そうすると沈まなきゃいけないけど、海草を食べると腸の中で発酵するのでガスが出ちゃったりするんですね。それのバランスを取るために骨がすごく重くなっています。ダイバーのかたたちが(潜る際に)腰に鉛のベルトを付けますけれども、骨にその役割を果たさせるっていうことなんですね」

オオアリクイはがっしり!?
※今回、この本を出すにあたって、改めて、美しい骨だな〜とか、整っているな〜と感じた 生き物の骨はありましたか?
「多分それぞれのかたが“この骨、面白いな!”っていうのは、本を見ても違う骨を指しそうな気がするんですね。私は普段見ている、教材に使っている骨は逆にいうと見慣れちゃっているので、多分その感覚は鈍いと思うんですけど、本を書くにあたって初めて見る骨があって、それはちょっとびっくりしました。
オオアリクイっていう、アリさんを食べる、顔がすごく細長い動物なんですけど、アリばっかり食っている動物の骨ってどうなっているんだろう? と思ったら、いちばんびっくりしたのは骨がすごくがっしりしていたことです。顔も歯がなくてアリを舐め獲るので、かなり特殊なんですけど、それだけじゃなくて手足の骨も異常に頑丈で、こんなにしっかりした骨をアリだけ食べて作っているんだっていうのはちょっとびっくりでした」

●確かにそうですね~、驚きですね。骨を観察することで、いろいろ見えてくるものもあったりしますよね?
「はい、そうですね。例えば授業の中で、いちばん身近な動物の、犬と猫の頭の骨をよく見せたりするんですけど、犬と猫も骨にすると想像がつかない。要するに哺乳類は毛皮をかぶっているので、僕らはモフモフの状態が頭の中にある。これを取りさるとなかなかわからなかったりするんですね。
例えば豚の頭の骨を見せても、豚だとなかなかわかんなかったりするんです。なんでかっていうと、豚はやっぱり丸っこくってお鼻にブーブーしたのが付いている。それが豚の頭だというイメージが強いので、骨にしちゃうと豚だとわかんないんですね。で、豚の頭の骨は、実は思っているより細長くて、細長いっていうことは鼻が発達していて匂いを嗅ぐのが敏感な動物なんだな、っていうのがわかったりする、そんなことがあったりします」
骨は教科書!?
※本に載っている骨の絵を見ていると、大小さまざま、形もいろいろで面白いですよね。
「そうですね。同じ部位の骨でも動物の種類によっても違ったりして・・・僕もまだ勉強不足なんですけど、この部分の骨が大きいから、同じ部分でもこいつはこんなふうに動くので、これはどんな仲間っていうのが少しずつわかってくるってことですね」
●何をするためにこの形になったんだろうって、いろいろ想像するのも面白いですよね。では最後にこの本を通していちばん伝えたいことはどんなことでしょうか?
「今回は骨なんですけど、逆にいうと僕の立場ですと骨じゃなくてもいいよ。どんな生き物も歴史と暮らしがあって、生き物は歴史と暮らしが詰まっている教科書みたいなものだから、例えば、今回は骨なんですけども、歯だっていいし、毛皮だっていいのかもしれない。植物だったら葉っぱでもいいのかもしれない。どんなものからもその歴史や暮らしが読み取れるよ! っていうのを伝えたいかなって思っています」
☆この他の盛口 満さんのトークもご覧ください。
INFORMATION
盛口さんの新しい本『ぜんぶ絵でわかる』シリーズの最新版をぜひご覧ください。骨を楽しむための「骨のキホン」から始まり、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、そして哺乳類の骨の、精密なイラストと解説が載っています。ほかにも、アジの干物の美しい食べ方の説明や、骨の標本作りの裏話などのコラムも面白いですよ。ぜひチェックしてください。
エクスナレッジから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2025/2/23 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. BONES / JAMES BLUNT
M2. DRY BONES / GREGORY PORTER & TROY MILLER
M3. BONES / GALANTIS feat. ONE REPUBLIC
M4. LOVE BONES / JOHNNIE TAYLOR
M5. スケッチ / あいみょん
M6. BEAUTY IN THE BONES / JIMMIE ALLEN & ELTON JOHN
M7. HEARTS AND BONES / PAUL SIMON
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」