2026/3/29 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、漫画家、そしてイラストレーターの「カシワイ」さんです。
線や余白を大切にする、柔らかくフェミニンなタッチの絵が好評のカシワイさんは本や雑誌の表紙、広告のイラストレーションなど、多くのメディアで活躍されています。
そんなカシワイさんは植物が大好きで、有名な植物園のすぐそばにお住まいだそうです。そして先頃『植物園の歩き方』という本を出されました。
きょうはその本に載っている選りすぐりの植物園から、京都府立植物園や高知県立牧野植物園など、植栽もたたずまいも、個性的で圧倒的な植物園の楽しみ方などうかがいます。
☆協力:グラフィックス社

全国9箇所の植物園めぐり
※カシワイさんは子供の頃から植物好きで、スケッチや押し花をして、草花を観察していたそうです。千葉大学を卒業後、京都市に移り住み、いまはマンションの室内やベランダで鉢植えの植物を育て、朝起きてからの水やりが日課だとか。
現在、育てているのはシダ植物の「コウモリラン」や、マダガスカル原産のマメ科の植物「センナ・メリディオナリス」、そして植物園の取材で知ったというシダの一種「リュウビンタイ」など、個性的な観葉植物を育てているそうです。
カシワイさんは生き物も好きで、今回の本には一緒に植物園めぐりをするたぬきのキャラクターも登場します。ほかにも宇宙や海、宝石や岩石などにも、なぜか昔から惹かれていて、自然科学系の本を読んだり、博物館に行くのも好きなんだそうですよ。
●カシワイさんの新しい本が『植物園の歩き方』です。やはり植物園にはよく行くんですか?
「そうですね。今は私は京都に住んでいまして、この本の最初にも取り上げている京都府立植物園は近所なのもあって、年パスを持っていて、よく行きます」
●年パスですか! どれくらいの頻度で行かれるんですか?
「どれくらいだろう・・・週一は行っていると思います(笑)」
●そうなんですね! 『植物園の歩き方』では、全国にたくさんある植物園から9つの植物園を取り上げて紹介されています。この本の企画は出版社から提案があったんですか?
「そうなんです。編集のかたが植物園のガイドというか、コミックエッセイを出しませんかとご提案くださって、この9つの植物園も、全国には魅力的な植物園がたくさんある中で、目玉のお花があるものとか、植物園の取り組みに特色があるものを選んで、全国にまんべんなく散らばるように選んでいただきました。
そこでしか見られないようなお花がある所でしたりとか、絶滅危惧種の植物をなるべく増やす取り組みをしているですとか、そういう特色がある植物園を、今回は特にピックアップしているのかなと思います」
●本に「さまざまな『うつくしい』を求めて」という副題がありますけれども、やはりそういったところもポイントになっているんですか?
「そうですね。ガイド本とは言っても、私自身が植物の専門家ではなくて、同じように一般の目線で、植物好きとして(植物園を)巡って、美しいな、素敵だなって感じたことをこの漫画で表したいと思って、そういうところはポイントにもなっているので、この副題にしていただきました」
●この本を出すために全国9箇所の植物園をまわったんですか?
「そうですね。9箇所全部、実際に取材してまわっています。漫画に取り上げたい植物の見頃に合わせていくので、春とか夏とかはやっぱり植物は見頃が多いので、毎月のように旅に出ていました」
●北は北海道から南は九州、宮崎県までありますけれども、かなり時間も費用もかかりますよね。大変だったんじゃないですか?
「そうですね。やっぱり帰ってきてすぐ、記憶が新しいうちにネームっていう漫画の下書きを書いて・・・で、本番の原稿を書いてってやっているうちに、次の取材が来てっていうのは、結構慌ただしいスケジュールではありました」
●いつどこの植物園に行くのかっていうのは、その植物園の代表的な花の開花に合わせてとか、そういった感じだったんですか?
「そうですね。例えば、スイレンとかハスも取り上げているんですけど、そういったお花はやっぱり午前中に見頃が来るので、朝早起きして行ったりとか結構調べて・・・専門のかたが一緒に調べてくださったんですけど、そのあたりも気をつけながら行ってました」
●絵を描くために取材中は写真を撮られるんですか?
「たくさん撮っていますね。写真をたくさん撮っているんですけど、その花の根元のほうですとか、葉っぱの付き方とかは、写真だけ見直してもわからないことがあったりするので、その場でも簡単にスケッチをしたりしてました」
日本最古の公立植物園
※ではここからは、本に載っている植物園からいくつか選んで、その植物園の魅力をうかがっていきたいと思います。まずは、先ほどもお話がありました京都府立植物園。いちばんの魅力は、どんなところでしょう?
「地下鉄の駅から徒歩2〜3分っていう、すごくアクセスがいい所にあるんですね。この京都市内で 広大な敷地があって、多様な植物が育てられているところが魅力ですね。
春とか秋に楽しめるバラ園ですとか・・・あと100年という歴史があるので、川端康成の『古都』という小説に登場するクスノキの並木とか、すごく好きな場所のひとつですね」

●日本最古の公立植物園ということですよね。「植物たちは力強い美しさを見せてくれる」と本に書かれていましたけれども、やはり力強さというのは感じますか?
「そうですね。やっぱりその植物園に入ると、今まで町中だったことを忘れるような植物の生き生きとした表情とか力強さを感じられると思います」
●ガラスドームのような大きな温室もあるんですよね?
「そうですね。金閣寺とか北山連峰っていう京都の山並みをモチーフにした巨大なガラスドームの温室が見どころのひとつになっています。気候ごとに部屋が分かれていて、様々な植生の植物を見ることができます」
●どんな植物が見られるんですか?
「順番に、熱帯系の植物ですとか、高原に生えているような植物ですとか、ランやアナナスといった仲間の植物ですとかがありますね。あとは最後のほうに昼夜逆転室っていう本来、夜に開花する植物を調整して、日中の開館時間に見られるような部屋があります。そこでは月見草とか月下美人が見られます」
(編集部注:京都府立植物園は2024年に開園100周年を迎えた日本最古の公立植物園で、面積は甲子園球場、約6個分。広大な園内には約1万2000種、日本最大級のガラス温室には4500種の植栽を誇り、年間の来場者は90万人以上という、とても人気のある植物園です)
※続いて、滋賀県にある「草津市立 水生植物公園 みずの森」について教えてください。どんな特徴がありますか?
「琵琶湖のほとりにある植物園なんです。水生植物を中心にすごくたくさんの、スイレンですとかハスですとか、そういったものが育てられています」

●幻想的な感じもしますけれども・・・。
「はい、早起きしてスイレンの開花に合わせて行きました」
●いかがでした?
「朝の光の中で、花が開いている様子を見るとすごく素敵で・・・スイレンとかハスは古代から清純であるとか、時間とか、そういったモチーフにも好んで使われていて、壺とか絵画なんかにも模様として現れているんですよね。
で、その模様だけ見ても、特に今まで感じたことはなかったんですけど、実際、朝の空気の中で見ると、そういう特別な意味を見い出すのもわかるなって、そんな体験でした」
(編集部注:お話にあった「草津市立 水生植物公園 みずの森」は、水生植物の宝庫である琵琶湖のほとりにあって、テーマが「植物と人、水と人のふれあい」。屋外にあるハス池やスイレン池の花の見頃は6月から7月にかけて。毎年7月には「ハス祭り」が開催されます。ほかにも屋外には秋の七草園や、丘の上の花園など、琵琶湖周辺の自然を感じながら、植物を鑑賞できる植物園だそうです)
植物学者「牧野富太郎」ゆかりの植物園
※もう1カ所、「高知県立牧野植物園」をご紹介しましょう。ここは、高知が生んだ「日本の植物分類学の父」といわれる植物学者、牧野富太郎の功績を広く知らせるために作られた植物園なんですよね。この植物園の特徴を教えてください。
「本当に広大な土地を使った植物園になっていまして、五台山(ごだいさん)っていう山の起伏を活かしたような構成になっています。博士由来の植物などが約3000種以上育てられていることと、園内には博士の描いた精巧な植物画や、使っていた道具とかを見られる展示館もあります」

●山の上にあるってことですか?
「そうなんです。バスでひたすら山登りして行った先にあります」
●へ〜〜それもワクワクしますね。
「はい」
●カシワイさんは以前、牧野博士の誕生日4月24日に開催された「標本庫ツアー」に参加されたということですが、これはどんなツアーだったんですか?
「本来入れない本館があって、そこの植物標本庫に入らせていただいて、実際に押し花標本を作る様子を見せていただきました」
●いかがでしたか?
「ちょうど高知県の植生を調べるっていうような、調査で集めた植物の標本を作っていました。その植物の標本はボランティアのかたが総出で集めたものだったそうです。多様な植物を繊細な手つきで、テキパキと(標本を)作られていて、すごく感動しました」
●牧野植物園のサイトで、牧野博士が描いた植物図を見ることができます。特徴を捉えた緻密な絵に驚きました。植物の絵を描くカシワイさんとしては、牧野博士の植物図を見て、どんなことを感じますか?
「植物のその姿をそっくりそのまま正確に写し取りたいっていう(牧野博士の)凄まじい情熱を感じますね。部分拡大図とか断面図とかを駆使して、本来立体である植物の特徴を平面で分かりやすく表す、その図の技術にすごく感動します」
(編集部注:高知県立牧野植物園は約8ヘクタールの敷地に、牧野博士ゆかりの野生植物や園芸植物など、3,000種を超える植物が植えられているそうです。ほかにも牧野富太郎記念館や、国内外の貴重な植物が見られるジャングルのような温室など、見どころがたくさん。また、植物園オリジナルのグッズを販売するショップも見逃せないそうですよ)
行ってみたいのは「キュー 王立植物園」
※この本では植物だけではなく、植物園の建物や歴史などにも触れていて、勉強にもなりますし、想像力がすごく膨らみますよね。その辺も意識して説明を書いたんですか?
「はい、調べていくうちに植物園の成り立ちとかにもそれぞれ歴史があって、人と植物の関わりとか土地の記憶を内包したものだなって感じていて、それが面白かったので、読者のかたにも知っていただきたいなと思って漫画にも入れ込みました」
●各植物園にそれぞれの背景があるのが興味深いですよね?
「本当ですね」
●付録として本のカバーの裏面に、全国おすすめ「植物園MAP」が載っています。全部で27ヵ所掲載されていますが、全部行かれたわけではないですよね?
「行けていないです。編集部のかたが選んでくださったものですので、私も行きたい場所が増えました」

●BAY FMの地元千葉県で気になっている植物園はありますか?
「そうですね・・・千葉の大学に通っていたので、千葉県立中央博物館には行ったことはあるんですけど、生態園には行ってなかったので、行ってみたいなって思いました」
●ちなみに海外の植物園に行かれたことはありますか?
「簡単な植物園みたいなのはタイで行ったことはあるんですけど、いちばん行ってみたいなって思っているのは、イギリスの*『キューガーデン』ですね」
*キュー 王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)
●どうしてそこに行きたいと思われているんですか?
「やっぱり植物園の祖みたいなところと、あと本当に広大なガラスドームに植民地から持って来た植物を集めてっていう、その歴史とかも含めて、勉強したいなと思っていて、行ってみたいです」
植物の知識を深められる場所
※カシワイさん流の植物園の楽しみ方を教えてください。
「植物園は、町に暮らしていく中で、いちばん身近に植物と触れ合える場所だなって感じています。ですので、散歩するだけでも楽しいですし、いつ行っても季節によって、その時々で表情が変わるところも面白いなと思っています」
●場所によっては、森林浴みたいなこともできますよね?
「そうですね。歩いているだけですごく気持ちいいですし、晴れた日はお弁当とか持って行って食べたりするのも楽しいと思います」
●植物園の役割って何でしょうか?
「植物園は、植物の研究とか保存といった学術的な役割に加えて、一般の私たちが生きた植物を見て触れて、植物の知識を深めることができる場所だなって思っています。
植物のことを知ると、それまでただの風景だった街路樹とか道端の草も、“これ、なんだろうな?”って目がいくようになって、知ることっていうのは、植物と私たちのこれからの関係を見つめ直すことにもつながっていくのかなと思っています」
●では最後に、この本から読者のかたが、どんなことを感じ取ってくれたら嬉しいですか?
「私自身この取材を通して、植物とか植物園のことがもっと好きになったので、この本が植物園へ足運んでみようかなっていうきっかけになったら嬉しいなと思っています」
INFORMATION
この本では、9箇所の個性的な素晴らしい植物園が紹介されています。ガイドブックではありますが、カシワイさんが描いた、優しいタッチの絵を見ているだけで、幸せな気持ちになれますよ。
監修を担当された「たんぽぽ工房」を主宰する植物学者「保谷彰彦(ほや・あきひこ)」さんの、素朴な疑問に答えたコラムも興味深く、さらに植物のミニ解説が随所にあって、植物好きの好奇心をくすぐります。巻末には、本に登場する植物全109種類の植物図鑑も掲載!
グラフィック社から絶賛発売中です。ぜひお買い求めください。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎グラフィック社:https://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=63397
カシワイさんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。
2026/3/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山好きで知られるイラストレーターの「鈴木みき」さんです。
東京生まれの鈴木さんは、24歳の時に1年ほど、カナダで暮らし、カナディアン・ロッキーに魅了され、帰国後、同じような景色が見たくて、山登りを始めたそうです。そして、山雑誌の読者モデルや、山小屋などでのアルバイトを経て、イラストレーターに。これまでに登山初心者に向けた本や、防災関連の本を出版されています。
以前、札幌にお住まいだった鈴木さんには、リモートでこの番組にご出演いただき、登山やアウトドアのスキルが災害時に役立つ、というお話をうかがいましたが、数年前に札幌から東京にお戻りになったということで、海浜幕張のベイエフエムのスタジオにお越しいただいて、お話をうかがことになりました。

今回は先頃出された本『改訂版 鈴木みきの休日ふらり山旅計画』をもとにお話をうかがっていきます。
この本は副題に『アルプス特急「あずさ」に乗って、日帰りできる12コース』とあるんですが、きょうはその12のコースの中から、初心者向けに鈴木さんおすすめの山や電車で行くメリット、そして山の注意事項のほか、鈴木さんと行く「山っていい友!」ツアーのお話などうかがいます。
☆写真協力:鈴木みき

「あずさ」、日帰り、温泉、ビール!
※先頃出された本は2017年に出版されて、ロングセラーとなっているガイドブック『鈴木みきの休日ふらり山旅計画』の改訂版ということなんですが・・・今回、改訂版を出すことになったのは、どうしてなんですか?
「その前の本は2017年なので、8年、9年経つと・・・いちばん大きかったのはコロナですよね。コロナ禍の前と後では随分(交通機関の)ダイヤが変わってしまいました。『あずさ』の時刻表というよりも、登山口のバスであるとか、そういうのもガラッと変わってしまったんですよね。
なので、時刻表付きがこの本の特色なので、その時刻を信じて行っちゃうと行けない山が出てきたので、それでは信憑性に欠けて申し訳ないなっていうのがあって、改訂版の話はコロナ禍ぐらいからちょっと出ていた感じです」
●最新情報を盛り込むためという感じだったんですね?
「おもに登山口までのアクセスを見直したという感じですね」
●この本の特徴は、本の副題にある、アルプス特急『あずさ』に乗って日帰りできる12コースにありますよね? やっぱりポイントは『あずさ』ですね?
「そうですね。わかりやすく言うと『あずさ』なのかなと思うんですけど、東京近郊、千葉とかもそうですが、山へ行くってなると、やっぱり中央線沿いの山が行きやすいっていうのと、『あずさ』だと特急なので速いし、日帰りの距離の幅が広がるんですよね。時間を買うではないですけど、忙しいみなさんが休日1日過ごすにあたって特急がいいかな! という感じかもしれないですね」
●日帰りというのもポイントですよね?
「そうですね。これが特急に乗っていなかった日帰りできないんですよね、やっぱり。なので『あずさ』だから日帰りできるのが魅力かな~と思います」
●車じゃなくて電車で行くメリットがあるんですね?
「私自体が車を持っていないっていうのはもちろんあるんですけど、意外と車を持ってないかたも多いかな~と思うのと、あとは運転であるとか、渋滞であるとか、駐車スペースも登山口の場合は小さいことも多いので、そういうのが私は結構ストレスになったり・・・なので、山に集中できるっていうのはひとつあるし、あとは降りてきてからビールが飲めるっていう魅力は大きいんじゃないですかね(笑)」

おすすめは山梨の「菊花山」
●春の陽気になってきましたけれども、山に行くにはいい季節だと思います。初心者に向けて、今回の改訂版からおすすめのコースをいくつか挙げていただきたいなと思うんですけれども、私がちょっと気になったのは長野県の「雨池(あまいけ)」ですね。
「八ヶ岳ですね」
●はい。ガツガツ登らなくても山に行けるっていう、なんかのんびり行けそうで、いいかななんて思ったんですけれども・・・。
「そうですね。八ヶ岳は南北に長くて、これは北側のほうの八ヶ岳になるんですけど、ここにはロープウェイがあるんですね。冬の間はその下がスキー場になっていて、通年で営業しているんです。夏の間は登山者とか山岳の景色を楽しみに行く観光客のかたが乗れるようになっていますね。
なので、これで標高をまず稼いでしまって、雨池はどっちかと言ったら、そこから下っていくようなイメージ、帰りにちょっと登るっていう感じなんですね。
雪が5月ぐらいまではまだ残るので、雨池まで行くのは初心者のかたにはおすすめできないですけど、ロープウェイを降りた目の前がちょっと広場のようになっていたりとか、そこから見る八ヶ岳の景色も十分美しいので、この(本の)計画通りに行ってみて山の内容を変えてみるのは、初心者にもおすすめできるかなと思います」
●ロープウェイってテンションが上がりますよね。
「上がりますよ! こんな景色はなかなか見られないし(笑)、ちょっと飛んでいるみたいな気分にもなるし、このロープウェイに乗ると結構遠くの山まで見えます。南アルプスであるとか天気がよければ、北アルプスのほうまで見えると思うので、それもいいんじゃないかなと・・・」
●ほかに鈴木さんがおすすめのコースはありますか?
「そうですね・・・12コースの中では、今ちょうど3月とか4月とかで雪がなくて登れるってなると、今回改訂版で追加した『菊花山(きっかさん)』っていうところだと、雪の心配はあんまりないんですね。前日に降ったとかそういうことさえなければ、足元は雪ではないところが多くて、初心者のかたでも山頂まで結構、時間も短く行けるんですね。
富士山の眺めがすごく抜群なので、カレンダーの富士山みたいな景色が見えるのが、ここの山の、私がすごく好きなところです。もしその先に(この本の)計画通りに進むのであれば、経験者のかたが一緒のほうがいいと思いますけど、本当に初心者のかただったら、そこ往復だけでもいいと思うんですよね。
菊花山を往復して帰って来るだけでも充分です。富士山の眺めは、逆にそこから先は(富士山が)見えなくなってしまうので、山頂までの往復に変えて行ってみたら行けそうかなと思います」
●山梨県にある「菊花山」?
「そうですね。大月駅からバスにも乗らずに徒歩で登山口まで行けるので、その辺りも多分、初心者のかたは戸惑わない、地図さえあれば登山口まで行けます」
●“駅前登山”って言う感じですね。
「そうですね。20分・・・早い人だったら15分くらいで着くかな・・・道もそんなにわかりづらくはないです」
●(本に)写真も載っていますけど、本当に富士山が絶景ですね。すごいですね!
「それが歩き出して多分15分とか20分ぐらいで、1回富士山が見えてくるんですよね。絶対声が出ますよ! 晴れていたら! なので、絶対晴れている時に行ってください!! 見えなかったらちょっと寂しいと思うので・・・」
●わ~いいですね。縁起いい感じがしますね!
「はい! 新宿から(「あずさ」に乗って)それほど遠くないっていうか、遅い時間から出発ができるので、きょう晴れている! と思って出かけても、大丈夫なぐらい近いです」る仕事は、とても面白いなという認識を持っていました」
最高の休日の出来上がり
※下山後のお楽しみは、やっぱりご飯と温泉ですよね?
「そうですね。やっぱりそれを楽しみで行っているってところは、多くの登山者の人は思っているんじゃないかなと思うんですけど、この12コースに至っては全部が温泉付きというか、温泉のガイドも付いているのもひとつの特徴かな~と思います」
●なにか絶品料理だったり絶景温泉だったり、鈴木さんのおすすめはありますか?
「うーん、この本でいうと結構スケジュールが、みちみちに決められている計画なんですね。“この電車に乗って、この時間に降りて、この電車に乗って、帰って来たらいいんじゃない!”っていうところまでケアしているので、入浴時間が結構短いんですが・・・(笑)、30分1本勝負みたいな時もあるんですよね。
だからミッションみたいなのをこなしていく面白さもあるし、最近は随分、施設も変わっていて、下山してすぐあった温泉がなくなっていたりとかしていたんですね。今回改訂版を作ってみると・・・。
なので、途中下車をしてでも(温泉に)寄るっていうふうに改訂しているので、そのタイム・ミッションみたいのを楽しんでもらえたらな~と思っています。どこの温泉も本当にいいとは思いますけど、やっぱり山を降りて汗かいて、“あ〜やったぁ~”と思いながら浸かる湯は本当に最高なので(笑)」
●いいですね。
「なんか山のことより熱く語っているような気がしますけど(笑)。で、その後に電車だから、ぷはぁ~っと(笑)ビールを飲んで帰ってこられるっていう最高の休日の出来上がりです!」
(編集部注:電車で行くからこそ、温泉のあとにビールを飲めますし、車だとありがちな、帰りの渋滞の心配もない。電車で山へ行くメリット、大いにありますよね)
自分に合った靴を選ぶ
※この春から山登りを始めようと思っているかたに、事前に用意する登山用品を教えてください。
「いろんな基本装備はあるんですけど、今まで何もやってないっていうかたであったら、やっぱり靴は山用のものを買ってもいいのかなと思います」
●どういうタイプの靴がいいですか?
「登山用品屋さんっていうものがあって、登山用品を専門に扱っているところが大きな町に行けば、必ずひとつぐらいはあると思うので、そういうところに行って“軽登山”であるとか、“ハイキング”って書いてあるジャンル、カテゴリーの辺りを店員さんと相談して決められたらいいと思うんですね。
必ず “どこの山に行かれるんですか?”って聞かれるんですよ、靴を選ぶ時。でも初心者のかたって答えられない。なので、この本を見せて“こういうところです!”って言ってもらえれば、じゃあこの程度かなって、向こうはプロなので選んでくれると思うんですよ。
そんなに見た目ほど重くもないし、最近の靴は軽くなっているので、ほかの時、旅行の時とかでも履けたりするので、登山だけではなくいいと思います」

●選ぶポイントみたいなのってありますか?
「足の形はみんな違うから、私がこれがいいですよ! っていうふうには言えないんですけど・・・。最初から欲張らず、ゴツゴツしている重いものは結局、高い山では歩きやすいんですけど、森の中を歩くとかっていうと、ちょっとToo Muchになってしまいますね。
やっぱり軽くて自分が履きやすいなと思うものと、普段、運動してない運動習慣がないかたとかは、やっぱり足首までホールド感があるミッドカットがいいかな・・・。普段走っているとか、そういうかただとローカットとかでも行ける山は多いんですけど、大は小を兼ねるので(笑)、最初の1足はミッドカットでもいいかなと思います」
●確かに春といっても、まだ雪が残っているところってたくさんあると思うんですが、やっぱり足まわりって重要になってきますよね?
「重要ですね。今回(本で紹介している)この12コースは『あずさ』で時間短縮できるから、標高が高いコースが多いんですね。簡単にローブウェイとかでは登れるけど、行った先がちょっと標高が高いってなると、雪がまだまだ残っているので、そういうところをちょっと散策するだけでも、普段の靴だと水が染みてしまったりとか、汚れなんかも気になると思います。そういうところに行くのでも足元はしっかりしていたほうがいいですね」
(編集部注:靴のほかに用意するものとして、よく言われているのがレインウエアとヘッドライトです。どんなものを選べばいいのか・・・特に初心者のかたは登山用品店でスタッフのかたに相談するのがいいかもしれませんね。
山のマナーとしては、自然にも人にも思いやりを持つこと、ではないでしょうか。「撮っていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」なんて言ったりしますが、植物を持ち帰ったり、ゴミのポイ捨てはダメですよね。
また、初心者のひとり登山はやめておきましょうね。最初はガイド付きのツアーに参加するなど、山の経験者と行くことをおすすめします)
事前の準備がなにより大事!
※山登りで、初心者が特に注意することは、どんなことでしょう?
「事前の準備が私はいちばん大事だと思っています。本にもあるんですけど、計画、何時にこの電車に乗って、登山口に何時ぐらいに着いて、山頂に何時ぐらいに着いて、何時ぐらいに降りてくるよ! っていうぐらいの事前の計画をやっぱり頭に入れておかないとペースも崩れるし・・・。
あとはそれに対して30分遅れた、1時間遅れたっていう時に焦らないように準備をしていく。暗くなったら怖いな~と思うので、ヘッドライトを持っていこうとか、おやつをちょっと余分に1食入れていこうとか、やっぱりそこまでの事前の準備で、大体当日の登山で、成功って言ったらあれですけど、安全に降りてこられるかどうかって決まると思うんですよね。
初心者のかたの場合、やっぱり暗くなったりとか天気が悪くなったりとか、それだけでも、ものすごくストレスっていうかプレッシャーになって焦ってしまうんですよね。メンタル的にですね。
なので、そこでちゃんと計画していれば、予備の準備もしておけば、少し強くいられるというか、やっぱり焦りがいちばん道迷いとか、そういうことにも直結していくので、余裕を持った計画を事前にしてほしいなと思います」
●そうですね。低い山でも迷うことってありますよね。
「低い山のほうが迷うんですよね」
●低い山のほうが!?
「山の形をちょっと想像して欲しいんですけど、三角の形しているとすると、上のほうは狭いじゃないですか、範囲が・・・でも下はすごく広くなるじゃないですか。それだけやっぱり面積も広いし、歩けるところが無尽にあるんですよね。
(山の)上のほうだと岩になったりとか、歩けるところが目に見えて、ここしかないな、みたいに思えるんですけど、森の中とかだと逆にあっちにも行けそう、こっちにも行けそうに見えてしまうので・・・」
●確かにそうですね。
「なので、道迷いは低い山のほうが気をつけなきゃいけないですね」
●去年、特にクマの出没がニュースになりましたけれども、クマ対策としては、どんなことがありますか?
「以前のようにはいかないのかな~っていうふうに、私もいろんなことを考えている途中ではあるんですけど、登山者ができることとするなら、鈴を持つとか笛を吹くとか、事前に自分の存在をクマに知ってもらうことは、本当に絶対条件っていうか、最低限やらなきゃいけないことだとは思うんですね。
クマだって餌がないとこにはいなかったりするんですよね。なので、クマの習性を知ることも大事で、夜行性でもないし、どういうことにクマが弱いかとか相手を知ることを始めると、山選びも変わってくると思うんですよね。
クマが怖いんであれば、クマのいなさそうなところに行こうとか。あとは今、そういう事故も多かったので、あらゆる自治体が出没情報とかをホームページなどに載せているので、そういうのも参考にして、最近すごく出ているんだったら行かないほうがいいかなとか、そういうふうにこちらが選んでいかないといけないかなと思います」
「山っていい友!」ツアー

※鈴木みきさんと行く「山っていい友!」ツアーが今年も開催されます。2011年に始まったこのツアーはほぼ毎年、国内外でのツアーが5〜6本、組まれています。鈴木さんが山登りを始めるきっかけとなったのが、カナディアン・ロッキーということもあって、海外の山を見せたいというテーマで始まったそうです。
行き先は、ツアー会社と相談して決めるとのことですが、今年からコロナ禍で中止していた海外ツアーを再開。国内外を含め、5本のツアーを企画しているそうです。ツアー・スケジュールは決まっているんですか?
「年間で(予定を)出していて、これからだと5月の韓国のチェジュ島の漢拏山(ハルラサン)。島にある富士山みたいに一個ポーンと高い山なんですけど、なんと韓国ではいちばん標高が高い、世界遺産でもあるんですね。
整備もすごくされている山なので登山初心者のかたでも、日本の山をいくつか登っていて楽しかったなっていうかたであれば、全然登れる山ではあります。
なので、海外登山デビューみたいな感じで来ていただいてもいいし、趣がやっぱり違うんですよね。海外のやり方ってあるんですよね。韓国は韓国のやり方があって、日本の登山は日本の登山のマナーやルールがあって、それこそ欧米とか全然違うんです。
だからそういう文化の違いもいろんなところを、“百聞は一見に如かず”で見てもらえたらいいなと思います」
●5月の韓国、それ以降はどんなツアーがあるんですか?
「そのあとは8月の終わりに富士山があるんですけど、これは2泊・・・普通の富士山って大体1泊仮眠して、わ~って登って降りてきちゃうのが一般的な富士登山なんですけど、たっぷり2泊して山頂に1泊するんですね。なかなかそういうゆっくりした富士山でのツアーもないので、それが魅力ではあるかなと思います。星とかどんな感じかな~って・・・」
●わぁ~いいですね。
「天気が悪くても面白そうだし(笑)、良くてもすごそうだし、山頂に泊まるっていうのが魅力ですね。
あとは10月に私の思い出の地の、カナダのツアー、ちょっとビッグなツアーです。日数も料金もそれなりにビッグにはなってしまうんですけど、チャレンジングツアーということで、これもどこか山頂に登るわけではないので、雄大な自然の中にポツンと佇むっていうことを、日本で味わえないような規模のところに自分がいるっていうのを、体感して欲しいなと思うようなツアーです」
●鈴木さんと一緒に行けるわけですよね。いろいろなお話とかもしながら行くんですか?
「お話しかしてないですね(笑)。お話ばっかりしています」
●楽しそうですね(笑)。
「そうなんですよね。いろんなツアーがあると思うんですけど、私と一緒に行くツアーは厳しいところはあんまりやらないんですね。っていうのは、やっぱり親睦したりとか、みなさんと交流して・・・(参加者は)女性が多いんですけど、やっぱり女性っておしゃべり好きじゃないですか(笑)。なので、おしゃべりしながら行けるコースばっかりなので、もうずっと喋っています(笑)」
●改めてお聞きします。山登りの魅力って何でしょうか?
「本当によく聞かれるんです (笑)。何かひとつってなかなか言えないんですけど、自分のその時々によって、魅力ってちょっと変わるな~って最近思っていますね。年齢であるとか、今置かれている環境であるとか、立場であるとか、そういうので・・・。
私も30年ぐらい山と関わってきて、それも若い時と今では全然違うんですよね。東京に戻ってきて思う魅力は、やっぱり今の東京の生活と別に、山の世界みたいなのを持っていることの幸せみたいなのを感じています。
同じ時間なんだけど、自分の中では違う自分がどっちにもひとりずついるみたいなところが救いになっていたりとかあるので、これからも年齢的とかいろんなことと兼ね合いで、山と付き合っていけたらなと思いますね」

INFORMATION
この本には、特急「あずさ」やロープウェイなど公共の交通機関で行くおすすめの12コースが掲載されています。東京近郊の、日帰りの山歩きをこの春、この本を参考にチャレンジしてみては、いかがでしょうか。すべてのコースに温泉情報がありますよ。エクスナレッジから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎エクスナレッジ:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767834818
鈴木みきさんと行く「山っていい友!」ツアー、韓国・済州島の「ハルラサン」ツアーは5月22日から、富士山ツアーは8月28日から、カナディアンロッキーのツアーは10月6日からとなっています。詳しくは「アルパインツアー」のサイトを見てください。
◎アルパインツアー:https://www.alpine-tour.com/japan_category/suzuki-miki/
鈴木さんのオフィシャルブログやSNSのリンクは以下。
◎ブログ:https://ameblo.jp/suzukimiki/
◎Facebook:https://www.facebook.com/Mt.mikisuzuki/
◎Instagram:https://www.instagram.com/mt.suzukimiki/
2026/3/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、株式会社「アンドファームユギ」の「長谷裕介(はせ・ゆうすけ)」さんです。
アンドファームユギは、東京都八王子市堀之内地区、旧地名「柚木村(ゆぎむら)」にある農業法人です。設立は2012年、当初の社名はFIO(フィオ)でしたが、2018年に現在の社名アンドファームユギに変更。地域とともに、という意味を込めたそうです。
アンドファームユギがある堀之内地区は、多摩丘陵に整備された日本最大規模といわれる、多摩ニュータウンの開発区域に入っていたそうですが、農業や酪農に従事する人が多くいたことから開発から除外され、昔ながらの農村風景が残っています。

長谷さんは1987年生まれ。東京農業大学卒業。高校生の頃に農業や造園を学び、大学では土木や地域資源、そして養蜂を学んだそうです。
設立当初は裏方として手伝っていたという長谷さんですが、現在はアンドファームユギの中心メンバーとして、養蜂とCSA(地域支援型農業)という新しい事業を担当するプロジェクトマネージャーとして活躍されています。
きょうはそんな長谷さんに、アンドファームユギのミッションのほか、生産している野菜や蜂蜜のこだわり、そして「エシカルファーミング」という取り組みについてもうかがいます。
☆写真協力:アンドファームユギ

有機JAS認証、小規模な養蜂
※アンドファームユギで取り組んでいる農業には、どんなこだわりがありますか?
「農業に関しては、野菜を専門に育てる担当がいますので、彼からこだわりを聞くのがいちばんいいかなと思うんですけども、普段近くで見ている私からすると、ひとつは、みなさんがわかりやすい形なのが、有機JAS認証ですね。有機JAS認証を取った有機野菜を生産しているというところになります。
あとは、弊社が掲げるアンドファームユギのミッションとして、”人も自然も豊かにする”という言葉があります。なので、環境に負荷を与えるのではなく、生き物がいて土があって、そこでお野菜を作るということに重きを置いています」
●どれくらいの種類の野菜を栽培されているんですか?
「お野菜の種類自体は、設立当初はものすごく多くの種類を作っていました。ただ、お野菜には1種類1種類、栽培技術が必要ですので、そういった練度を上げていく、より高品質なお野菜をお届けしていくというところで、現在は数十種類から数種類まで絞り込みをしているところです」

●長谷さんは、おもに養蜂業を担当されているんですよね?
「はい、私は養蜂業の担当になります」
●その養蜂にはどんな特徴があるんですか?
「養蜂業というのは非常に面白い仕事です。ミツバチの巣箱を置けば置くほど、蜂蜜が採れるわけではなくて、地域の自然がミツバチが抱えられる・・・ミツバチが飛んで行って花の蜜を集めてこられる限界というのが、地域の自然の力としてあるので、この辺の地域特性からすると、そう大きくはできないという、小規模な養蜂場であるというのがひとつの特徴です。
もうひとつは、この地域の花から採った蜂蜜に限定しています。全国区の養蜂家さんを見てみると、全国を飛び回って花のある場所に行って、蜂蜜を採るというのが基本的なスタイルなんですけど、私たちはここの・・・ここでは柚木村と呼びましょうか・・・この地域の特徴を活かした蜂蜜を生産しています」

景色そのものの「蜂蜜」!?
※以前ハチミツから、その地域の植生、つまりどんな植物が生えているのかがわかると聞いたことがあります。やはりそうなんですか?
「そうですね。ミツバチが花を巡って蜂蜜を作っていくというプロセスの中で、ミツバチにとって、より近く、より多く、より甘い花の蜜を集める習性があるんですね。
学術的な植生の細かさ、精度って言うんですかね・・・竹が生えてたりとか、草が生えてたりということはわからなくても、おおよそこの辺の地域で生えている植物の花ということはわかります」
●アンドファームユギのある地域の植生は、どんな特徴があるんですか?
「ひとことでいうと農村環境と言いますか、僕なりの言葉で話をすると、春に菜の花が咲いて、菜の花の蜜がいっぱい入ってきて、里山に生えている山桜がその後に咲いて、その桜の蜜が入ってくる。そこで一度収穫をする。
で、アカシアの蜂蜜、ニセアカシアの木であるとか、山に生えている藤の花の蜜が入ってきて、最後にエゴノキという、里山にはよくある木なんですけど、爽やかな香りがする蜂蜜が入ってくると・・・。
こういった植物というのは基本的には田畑があって里山がないと、なかなか集まらない種類かなと思うので、そういった意味では今見ている景色そのものかなというふうに認識しています」

●どんな味がするんですか?
「今の話の中で、花の種類がいくつか出てきたわけなんですけど、おもに3種類に分かれるんですね。
春の菜の花だとか桜が入った蜂蜜は、非常に香り豊かで甘みが強い特徴がありますし、その次に採れるニセアカシア、アカシアの蜂蜜ですので爽やかというか、よく言うとフラットで、淡白な味わいが基本になってくる。
そして最後に採れるエゴノキの蜂蜜はやはり爽やかな香りがして、甘みもほどほどにあり、非常にバランスが取れた蜂蜜だと・・・植物の特徴に沿った味わいがしますね」

●普段、長谷さんがミツバチたちを見ていて、どんなことを感じますか?
「ミツバチは社会性を持つ生き物なんですね。おおよそ何千匹の単位から何万匹の単位で生活をしているので、私たち人間の暮らしの社会構造と非常によく似ているるんですね。なので、人を見ているような感じがしますね」
●へえ〜っ! 長谷さんご自身は、もともと農業とか養蜂に興味があったんですか?
「そうですね。私が高校、大学と農業関係を専攻をしていたというのもありまして、大学時代に畑を造る学科にいました。農業土木という学科なんですけども、そちらのほうで畑を造る勉強をしながら、ミツバチ研究会というサークルに入っていました。
そこではミツバチを育てて、あと養蜂業者さんのところに実際に研修に出向いて、ミツバチから蜂蜜を採る作業をお手伝いしたりだとか、そういったことをしていて、趣味として興味があったというよりも、営みって言うんですかね・・・仕事として食べ物を作る仕事は、とても面白いなという認識を持っていました」

CSA=地域支援型農業
※アンドファームユギでは、2022年から「CSA」という事業に取り組んでいます。長谷さんがおもに担当されているそうですが、CSAとは、具体的にはどんな事業なのか、教えてください。
「CSAというのは“地域支援型農業”と日本語で訳されるものなんですけども、1980年代のアメリカで発祥した仕組みと言われています。
農場で野菜が採れたり採れなかったり、これはお米でも同じですが、農作物の豊作凶作によって生産者が負うリスクを消費者も共有して、かつ食べ物、食料をシェアリングしていこうというのがCSAの定義になります」
●その事業の一環として「エシカルファーミング」という取り組みもされています。これはどんな取り組みなんですか?
「CSAの基本的な仕組みは、非常に理想的な形ではあるんですけれども、リスクを共有するという考え方は、やはり私も含めて日本に住む人間からすると、非常に思うところが多いというのがあります。
そこでCSAのベースの仕組みは変えずに、それにプラスして、共同菜園で野菜を育てたり、あとは農にまつわる関わりを持つとか、そういった副的なコンテンツを重ね合わせることによって、みなさんがCSAという社会意義を感じながらも、暮らしにゆとりが生まれるようなサービスができないかということで開発したのが、このエシカルファーミングです」

年間のプログラム「エシカルファーミング」
※先ほど、長谷さんが担当されている、新しい事業「CSA/地域支援型農業」の一環として行なっているエシカルファーミングについてうかがいました。
ここからは、より具体的に教えていただきたいのでが、エシカルファーミングには、どんなかたたちが参加しているんでしょうか?
「みなさんの特徴は本当にさまざまです。女性が多いですね。人格像としては女性が多くて、いわゆるエコ意識というでしょうか・・・エコロジーという概念はあまり強くはないけど、やはり“自然に負荷をかけないようにしたいよね!”という考え方をお持ちのかたは数多くいらっしゃいます」
●何人ぐらいのかたが参加されているんですか?
「現在は21組の世帯が加入しています」
●これは月1回とか年間の活動なんですよね?
「そうですね。CSAというもの自体がもともと年間で組まれるプログラムです。私たちもそれに倣って1年単位でのお付き合いということになります」
●やっぱり月1回でも八王子にある農地に来て、五感で感じるということは大事ですよね?
「そうですね。市民農園とか様々な都市型農業の形はあるんですけども、やはり農村の環境と言うんですかね・・・空間があって多くの人が集うと、そこに小さなコミュニティが生まれて、そういったところで、視覚であったり聴覚であったり、五感を使って過ごしていくという時間は、非常に意義があることかなと感じています」

●エシカルファーミングは、具体的にどのような活動をされているんですか?
「お野菜とハチミツを年間10回に分けて、まずはお渡しできると・・・この農場に来てお野菜やハチミツを受け取れるというのがひとつと、あとは共同菜園での農作物の栽培ですね。みなさんが持ち寄ったタネを植えて育てることができると・・・。
最後に農にまつわる催しですね。例えば、さつまいもを育てて、最後に焼き芋を作るところまでをみんなでやったり、あとは地域には里山がありますので、自然環境に触れられるような、ちょっとした自然観察なんかも行なうことができます」
(編集部注:4月から始まる年間10回のプログラム「エシカルファーミング」の参加者募集の受付は、3月31日までです。応募方法や参加料金など、詳しくはアンドファームユギのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎アンドファームユギ:https://fio8.com
戻ってこられる場所
※大都会東京の郊外、多摩地域の八王子に農地があって、そこで農業や養蜂を営むというのは、とても意義があるように思います。いかがですか?
「東京で農業を営むことに意義があるというよりかは、僕たちはやっぱりこの仕事に携わって全国津々浦々の同業者のかた、農家さんや養蜂家さんとコミュニケーションを取りながら仕事をしているんですけど、こういった仕事、食べ物を作る仕事をすることは、たとえ沖縄であっても北海道であっても、それは等しく意義があることだと思っています。
ただ私たちがここで農業をやる意義というのは、首都東京と言われている人口が最も多い都道府県、そこの食料を供給することと、みなさんの暮らしに寄り添えるような、自然との接点を持つことができる。そのガイダンスができるという意味では、東京で農業をやること特有の意義があるかと思っています」
●アンドファームユギの事業には、人も自然も豊になるためのヒントがありますね。
「そう言っていただけると大変ありがたく感じています。ただですね・・・この会社は設立して現在に至るまで、成功よりも失敗の方が多い会社でして、“こうしたら上手くいくよ“ということは、おそらくヒントとしてみなさんにお渡しすることはできない。ただ”これをやって失敗したよ“ということであれば、山ほどヒントをお渡しできるかと思います」

●アンドファームユギの活動を通して、どんなこと伝えていきたいですか?
「私たちがやっている事業は、つまるところみなさんの暮らしを支えることになる仕事だと思っています。
農作物をお届けしたりということは、これはどこに行っても伝わることだとは思うんですけど、私たちが特に今やっているエシカルファーミングは、戻ってこられる場所を作るということが、もうひとつ副次的なメッセージとして含まれています。
ここに実家があるわけでもないですし、ここで生まれ育ったわけでもなくても、この農場に戻ってこられる・・・初めて来た人もそんな感覚で過ごしていただけるような、ひとつの“心の安寧”と言いましょうか、そういったところをお伝えできれば、私たちがここでやっている意義、メッセージというのはお届けできるかと思っています」
INFORMATION

アンドファームユギのオフィシャルサイトには、東京とは思えない里山や農地の風景写真のほか、採れたての野菜や、蜂蜜の写真も載っています。オンラインショップから蜂蜜なども購入できますよ。
◎アンドファームユギ・オンラインショップ:https://shop.fio8.com
先ほどもお知らせしましたが、4月から始まる年間10回のプログラム「エシカルファーミング」の参加者募集の受付は、3月31日までです。参加ご希望のかたはお早めに、どうぞ。詳しくはアンドファームユギのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎アンドファームユギ:https://fio8.com
2026/3/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、防災アナウンサー、そして環境省アンバサダーとして活躍されている「奥村奈津美(おくむら・なつみ)」さんです。
奥村さんは2011年3月11日に、当時暮らしていた宮城県仙台市で被災するも、テレビ局のアナウンサーとして、すぐに緊急報道に携わり、災害現場を取材。その経験から、いかに平時の防災が大事かを痛感し、その後、防災士などの資格を取得。現在は「おうち防災」の専門家として活躍されています。
きょうは、そんな奥村さんの本『大切な家族を守る「おうち防災」』をもとに、暮らしの中の防災の知恵や、おうち防災のポイントのほか、サステナブルな生活が防災につながるというお話もうかがいます。
☆写真協力:奥村奈津美

防災活動の原点
※奥村さんは立教大学卒業後、広島や仙台のテレビ局で、アナウンサーとして活動。その後、東京に戻り、フリーランスとして、NHKやTBSなどのワイド番組や報道番組で活躍。
2011年3月11日は、冒頭でも触れましたが、仙台の自宅で被災。台所にいたため、大きな揺れで、冷蔵庫の上に置いていた重さ30キロの電子レンジが飛び、もし当たっていたら、どうなっていたのか・・・死の恐怖を感じたそうです。
奥村さんがおっしゃるには、キャスターとして様々な災害報道に携わってきたけれど、恥ずかしながら、当時は災害の備えをしていなかったとか。
自宅で被災して間もなく、テレビ局に戻ることができた奥村さんは、救急報道に携わり、72時間ノンストップで続けたそうです。
奥村さんは、当時を振り返って、こんなことを痛感したと言います。
「ヘリコプターの映像などから、例えば津波の一波二波が到達しているような光景は、私たちは見えていたんですね。ですが、危険な場所にいる人に(津波の)情報を伝える術がなくて・・・“逃げてほしい”と、どれだけ願っても、“逃げて!”と叫んだとしても、そこにいるかたたちには情報だったりとか、その(避難の)行動を伝えることができなかったんですね。
そこでいちばん感じたのが、災害が起きてからでは手遅れだということです。起きる前のきょうだったらできることはたくさんある。放送でも様々な情報を伝えることができるんですけれども、起きてからでは手遅れなので、起きる前にどうするかということに目を向けて、この15年は過ごしてきました」
命を守る家に住む
※奥村さんはその時の教訓や思いを込めて、『大切な家族を守る「おうち防災」』という本を出されています。防災に関する知恵や情報、そしてヒントが満載で、細かく、わかりやすくまとめてあって、大変参考になります。
この本は2021年に出した本の改訂版で、本のタイトルも新たに去年6月に出版。第1章の「『水害』から家族の命を守る」から、第6章の「家族の未来を守る!『毎日』できること」までありますが、今回は東日本大震災から、もうすぐ15年ということで、第2章の「『地震』から家族の命を守る」と、「おうち防災」のお話をメインにうかがっていきたいと思います。
●本に「最も重要な地震対策は、命を守る家に住むこと」とあります。これについて、ご説明いただけますか?
「地震対策には大事なことがふたつあります。ひとつ目が地震に耐えられる家に住むということ。そしてふたつ目が地域のリスクを知るということなんですね。
どれだけ防災グッズを備えても、家が潰れてしまったら、それを使うこともできません。津波とか土砂災害のエリアは、やはり木造家屋などはそのまま流されてしまうような恐れがありますので、まずは家の耐震基準ですとか、家の中の安全性をみていただく、そして(住んでいる)地域のリスクをハザードマップなどで確認していただくということを大切にしております。
家の中を安全にする前に、まず家が壊れないかどうかということを確認していただきたくて、そのひとつの目安となるのが、いつ建てられた家なのかということなんですね。
日本では家の基準が何度か見直しをされているんですが、1981年6月よりも前に建てられた家は、『旧耐震基準』と言われていまして、大きな地震には耐えられないというのが国のほうからも言われているんですね。ですので、そういった家にいる場合は、家の中に留まるのではなく、揺れを感じたら、すぐに家の外に出ていただきたいですね。
今『耐震診断』を自治体で無料で受けられるような、そういった助成をしているところも多くありますので、まずは診断を受けていただいて、地震の揺れに耐えられる家なのかどうかというのを確認していただく。
耐えられないとなった場合は耐震補強の工事をするとか、あとは引っ越しをして別の家に住む。そこまでは予算がないという場合は、ベッドのところだけでも・・・家の下敷きにならないような耐震ベッドっていうものがあるんですけど・・・空間が残るようなベッドにするですとか。あとは一室だけシェルターのような形の部屋を作るなど、そういう方法があります。
今は2000年6月よりも前に建てられた木造住宅も、大きな地震ですと被害を受けてしまう確率が高いということで、東京都とか神奈川県の一部の自治体などでは、そこも耐震診断を受けていきましょうというふうに変わったんですね。
ですので、まず家が建てられた、“建築確認された日”と正確には申し上げるんですけれども、そこをまず確認していただいて、それによって行動も備えも変わってきます。まずそこが(防災の)スタートかなと思います」
すべての家具・家電は固定する
※続いて、家の中を安全にするポイントを、いくつか教えてください。
「大きな揺れになりますと、固定していないものは倒れたり、飛んできたり、動いたりして大変危険なので、すべての家具・家電は固定することをおすすめしております。もちろん置かないのがいちばん安全ではあるんですが、日本の住宅事情では収納が備え付けだけではなかなか足りないので、家具を置くかたが多くいらっしゃると思います。
まず置き場所なんですけれども、ベッドの上とか布団の上とかそういったところに倒れてくると、寝ている時は無防備なので、逃げたりすることができないですよね。なので、そういった場所には置かない。
あとは避難経路を塞いでしまうと逃げられなくなりますので、ドアですとか倒れてきたらドアが開かなくなるような場所にも(物を)置かないっていうことになります。
どうしても腰よりも高い家具を置かなくてはいけない時は、転倒防止器具を設置するという方法になるんですね。
転倒防止器具と聞くと、突っ張り棒タイプの、天井と家具の上の部分を突っ張るような形で止めるものが、ポピュラーだと思うんですけれども、東京消防庁の実験結果などでもそういった器具単体では、ほとんど効果を発揮できないというような結果もあるので、できればストッパーとセットで使っていただいたりとか、あとL型金具とか、より効果の高い転倒防止器具を設置していただきたいと思います。
冷蔵庫とか電子レンジとかテレビとか、そういった家電も専用の転倒防止器具がいろいろと出ていますので、その家具・家電に合ったものでしっかり固定することをお願いしたいです」
(編集部注:家具を固定するには、段ボールを使って、家具と天井の隙間をふさぐ方法もあるとのことです。詳しくは奥村さんの本に載っていますので、ぜひ参考になさってください)

避難の前にブレーカーを落とす
※家の外に避難することになった場合に、避難する前にやっておくことは、どんなことですか?
「どういう地域に住んでいるかによって変わってくるんですね。例えば、津波とか土砂災害のような一刻を争うような場所に住んでいる場合は、何もしなくて、とにかく安全な場所に走って逃げていただきたいんですね。また、家が倒壊しそうな状況だったりとか、隣の家が燃えているとか、自分の家が燃えているような時は、まず一目散に安全な場所にご移動いただきたいと思います。
そうではなくて、家の中が壊れていなくて、(自分が)動くことができるような状況にあった場合は、まずブレーカーを落としていただく。それからガスの元栓や水道の元栓を締めていただく。また災害時は防犯面も脆弱になりますので、しっかり施錠をしておくというような、そういった対策をして避難していただくことも大事です。
ブレーカーを落とすのは、地震の時に(起きる火災の)半分以上が電気による火災がなんですね。ブレーカーが落ちていないと、電気が復旧した時に何か可燃物が落下していて、火の元になるような家電にスイッチが入ってしまった場合、そこから出火したりですとか、配線がショートしていて、そこから出火したりという恐れがあります。
ですので、ブレーカーを切っていただきたい。留守の時に地震が起きることもありますので、できれば『感震(かんしん)ブレーカー』と言いまして、ブレーカーを自動で切ってくれるものがあるんですね。揺れに応じてブレーカーが“バンッ!”と切れるような、そういった機能の付いたブレーカーだったりとか、後付けできるものもあるので、感震ブレーカーを設置していただければなと思います」
(編集部注:避難所については、地域の自治体が指定している避難所のほかに、企業や寺院などが設置する場合もあるということですので、事前に問い合わせるなどして、確認しておくといいですね)
※本に「福祉避難所」というのが載っていました。これはどんな避難所なんですか?
「これは要配慮のかたがた、例えばご高齢のかたとか障害があるかたとか、あと乳幼児、妊産婦など、そういった要配慮のかたを受け入れる避難所を各自治体で指定するようになっております。
今はいろいろと自治体によって取り組みが変わってくるんですけれども、国のガイドラインではやはりそういった要配慮のかたがたが直接避難できるように、事前に個別避難計画などを作って、取り決めしていきましょうっていう流れにはなっているんですね。
例えば、介護度が何以上の人とか障害の程度によって変わってくる・・・本当に自治体によって取り組みは様々あるかと思うんですけれども、避難所に行って体調が悪くなってから違う場所に移送するとなると本当に命に関わりますし、要配慮のかたを移送するのもすごく大変なんですね。
ですので、最初からそういったケアができる専門的な場所、介護施設だったりとか障害者施設、そういったところに直接避難できるようにしていこうというものですね。
乳幼児に関しては、母子避難所のようなものを設置するということを取り決めしている自治体さんもありますので、ホームページですとか自治体の窓口に、要配慮のかたがご家族にいる場合は聞いてみてもいいかもしれないですね」
在宅避難〜最重要アイテムは「トイレ」
※自宅にとどまれる状況だった場合、「在宅避難」がベストということで、本に「自宅を最強の避難所にするため」のポイントが載っていました。ご説明いただけますか?
「耐震基準を満たした家で、地域のリスクもそれほどなくて、火災などもなくて、そして家の中が安全な空間になっていた場合は、自宅に留まって生活をするというのも立派な避難の選択肢のひとつになります。
ただそういった状況でも、電気や水道、通信などのライフラインは寸断されてしまうんですね。なので、代替アイテムを備えていくという話になります。
いちばん優先順位が、私は高いと思っているのはトイレで、災害時、飲まなくても食べなくてもトイレは行きたくなりますが、そのトイレの水は流せなくなってしまうんですね。
流せなくなる理由としてはいくつかあります。例えば断水していたら水は出ないですし、停電して流せなくなっちゃうようなトイレもあります。それから便器や便座が壊れてしまって使えなくなったりとか、ドアが開かなくなったりとか・・・あとは配管がずれてしまって、そこから水漏れしたり逆流したりとか、様々な理由でトイレが使えなくなります。
そこで災害用トイレというものがあるんですね。袋と凝固剤がセットになったものが売られていまして、それを災害時はトイレに少し備蓄しておいて使っていく。1週間分くらいは備えておいていただきたいなと思うので、トイレに備蓄しきれない分は、どこか収納場所を作って置いておいて欲しいなと思います」
●災害グッズを備えるにあたって優先順位があると、本に書かれていますけれども、やはり最重要アイテムはトイレになってきますかね?
「そうですね。様々な考え方はあるかなと思うんですけれども、多くのアンケートなどでやはり困ったことの上位に登ってくるのがトイレですし、災害関連死を防ぐ・・・災害関連死というのは、被災後の生活で体調などを崩してしまって亡くなるかたが大変多くいらっしゃるんですけれども・・・その災害関連死を防ぐという観点からも、やはりトイレは重要になるんですよね。
トイレを我慢してしまうと、水を飲むのも我慢してしまったりとか、食べるのも我慢してしまったり・・・。またトイレが綺麗な環境じゃなかったりとか、列ができていて、なかなかトイレを使えないみたいな状況だと、便秘になるかたも多かったりですとか、とにかく体調に直結するものでもあるんですね。
ある妊婦さんが能登半島地震で災害用トイレを備えていたんですけれども、十分な量を備蓄していなくて、家族で1個をちょっと節約して使っていたそうなんですね。そうしたらお腹が痛くなってしまって救急搬送されてしまったんです。その妊婦さんが“災害時、こういう衛生に関わるものはケチっちゃダメですね”っておっしゃっていたんです。
きっと防災グッズにあまりお金をかけずに備えたいと思っているかたも多くいらっしゃると思うんですけれども、そういう衛生、命に直結するものに関してはしっかり備えておいていただきたいなと思います。
どうしても凝固剤とかそういうものを買う予算がないという場合も、例えばペットを飼っている場合だったら、ペットのトイレシートを活用するとか、介護用とか育児用のオムツがある場合は、サイズアウトした時に捨てずに取っておくとか・・・多めに備蓄をしておいて、それを大人も災害時にちょっと使わせてもらうとか、そういうふうに対応することもできるので、本当に衛生用品に関してはしっかり備蓄しておいていただきたいなと思います」
防災の基本は「普段」を災害時にも
※赤ちゃんがいるご家庭の場合、例えば、ミルクや離乳食、オムツとか、どんなものを、どれくらいの量を用意しておけば、いいでしょうか?
「国のほうからも乳幼児、要配慮のかた、みなさんなんですけれども、2週間分は各家庭で備蓄しておくようにと言われています。やはりそういった支援物資はなかなか届かないので、在宅避難できる場合は2週間ぐらいは、家にあるもので何とかお子さんのケアができるようにということが大事になります。
災害時、初めてのものに挑戦するのはリスクが高いので、平時と同じことができるようにしてほしいんですね。なので、例えば母乳で育てている場合は、母乳育児を継続することが何よりも大事になってきます。
そういった時にミルクを与えてしまうと、そのミルクにアレルギー反応が出て体調が悪くなってしまうかもしれないですし、母乳が1回ミルクに置き換わることで母乳が出なくなってしまうとか、様々なリスクがあります。
またミルク育児している場合も、普段飲んでいるミルクだったら災害時に与えても問題ないと思うんですけれども、備蓄用に別のミルクを用意していて、初めて飲ませると合わなくて飲めなかったりとか、アレルギー反応だったりとかあると思うんですね。
ですので、普段やっていることを災害時もやれるように、離乳食とかも普段食べているもの、例えば、外出する時に瓶詰めの離乳食とかパウチの離乳食とか活用されることあると思うんですけれども、そういったものも1年とか長期保存できるものがたくさん出ているので、普段のお出かけの時もそういうものを食べるし、災害時もそれを活用していくっていう考え方をしていただけたらなと思います」
●いつも通りのことができるようになればいいんですね。
「そうですね。初めてはそのお子さんにどういう反応が出るかわからない。特に小さいお子さんだと、それは乳幼児だけではなくて、小学生とかそういったお子さんもだと思うんですけれども、普段もあまり食べ慣れていないものとかを出すと、食べなかったりとかってあると思うんですよね。
災害時の非常食も1回も食べたことないものを出すってなると、ちょっと大人でも怖いですよね。どんな味なのかもわからないですし、なのでやっぱり普段食べているもの、普段使っているものを災害時も使えるように備えていくのが防災の基本かなと思います」
「持ち出し袋」と「防災ポーチ」
※非常持ち出し袋の考え方として、これも優先順位があると本に書いてあります。どんな優先順位があるのか、教えていただけますか?
「はい。非常持ち出し袋を使うということは、家にいると危険だっていう状況だと思うんですね。例えば火災ですとか、津波が襲ってきているとか、土砂災害とか、そういった時にパッと持ち出せることが最も大事になります。
ですので、持ち出し袋でいちばん大事なのは、背負って逃げられる重さに留めることですね。どれだけ物入れていても、重くて持ち出せなかったら意味がないですし、玄関とかパッと持ち出せる場所になければ、一刻を争うような時に持って逃げられないと思うんですよね。なので、そこはやっぱりどのくらいの重さにするのかと、あと収納場所が大事になってくるかなと思います。
その上で中身の考え方なんですね。なくては命がつなげないものって人によって違うと思うんですけど、あると思うんですよね。私自身だったらコンタクトなので、眼鏡がないとコンタクトが乾いてしまった時とか困ります。
あとは補聴器を付けているとか、入れ歯があるとか、お薬を飲んでいる、アレルギーがある、それぞれそのかたの特徴によって必要になるものって変わってくると思うんです。そういったものを必ず持ち出せるように用意しておくのが、何よりも大事ですね」
●普段、私も息子とお出かける時は、おむつとかおしり拭きとかを入れたバックを持ち歩いているんですけれども、奥村さんは防災ポーチを推奨されていました。これはどんなポーチなんですか?
「普段のママバックをそういうふうに持ち出すことも、すごくいいと思うんですね。普段のママバックって、そのお子さんに必要なものが全部入っていると思うので、それを持ち出していただくっていうのも大事なんですけど、そうすると自分にとって必要なものって、その中に入ってなかったりしませんかね?」
●確かにそうですね。
「お子さん優先になっちゃって、自分の身を守るためとか、自分がないと困るものが入ってなかったりすると思うので、せめて防災ポーチの中にそれは入れて、持ち出しましょうということをおすすめしています。
非常持ち出し袋の考え方と同じになるんですけれども、やっぱり体の一部になるものですね。お薬だったりとか、私はコンタクトなのでコンタクトの予備だったりとか、そういったものは入れておいていただきたいですね。
あとは、濡れてしまうと低体温症のリスクとかもあるので、『エマージェンシー・シート』っていう、折り畳める銀色のシートがあるんですけれども、そういったものを入れたりですとか、生理用のナプキンとかも普段、必要になるものばかりだと思うんですけれども、そういったものを自分の身を守るために入れておくことをおすすめしています」
「SOSカード」のすすめ
※本に『子供も大人も、ひとり一枚「SOSカード」を作ろう!』というページがありました。このSOSカードとは、どんなカードなんですか?
「災害時に携帯電話は使えなくなってしまうので、そういった時に困らないようにいろんな情報をまず書き出しておくっていうのが大事になります。
特にお子さんと一緒に避難したとしても、途中で離れ離れになってしまったりする時もある、そういった時に、お子さんがこの『SOSカード』を近くの大人のかたとかに見せたら助かる確率が上がるような、そういった情報を書いておいていただきたいんですね。
例えば、ご自身の情報とか、ご家族の携帯電話とか、勤め先の情報とか、避難場所・避難所の情報だったりとか、お子さんがアレルギーとか何か障害があった場合は、どんな特性があるのかっていうことをまとめていただく。
あとは、なかなか家族の特徴を言葉で伝えることって難しいと思うので、写真も一緒に入れておいていただきたいんですね。
東日本大震災の時に写真がなくて困ったというお話は、すごくいろんなかたからおうかがいしていて、それはペットもそうなんですけれども、自分の子供は“身長が120センチで、体重が20キロちょっとで、きょうは紺色のトレーナーを着て出かけました”みたいに言ったとしても、うちの子小学校1年生なんですけど、小学校1年生のお子さんってそういう感じなので、体格も見た目もなかなかその特徴・・・ご主人だったり、奥様の特徴を言葉で伝えるのって難しいと思うんですね。
そこで写真の裏を活用すれば、その写真を見せるだけで、どういう特徴のあるかたなのかは一発で伝わりますし、スマホが使えなくなっても(写真の)裏の情報で連絡を取り合うってことができると思うんですね。
お子さん自分自身に何かあった時に困らないように、少しでも助かる確率を上げるために『SOSカード』を作ることをおすすめしています」
地球に優しい暮らしは「防災」につながる
※本に「地球に優しい持続可能な生活は防災にもつながる」と書いてありました。これについてご説明をお願いします。
「最近は地球温暖化の影響で気候危機と言われていますけれども、昔とはフェーズが変わってしまって、雨の降り方も夏の暑さなどもより厳しくなっています。
そういった中でどれだけ備えても根本的な解決にはつながらない。やはり地球温暖化を止めなくては、夏の暑熱災害もですし、豪雨ですとか、そういった被害もより厳しくなっていくので、地球温暖化対策なども含めて、“地球に優しい暮らしをしていただくとそれが防災にもつながるよ”ということを綴りました。
地球温暖化の影響を受ける最初の世代と私たちは言われていますけれども、一方で地球温暖化を止められる最後の世代とも言われているんですね。なので、私たちがどういう選択をしていくかによって未来が大きく変わる、そういった分岐点に生きていると思います。
自分自身は子供がいるので、やっぱり子供たち・・・大人もおじいちゃんおばあちゃんもそうですけど・・・その先の子供たちも幸せにより良い毎日を送っていけるような地球を残していきたいなと思っています。
“日々の買い物は投票だ!”って言われたりしますよね。例えば電気代・・・どんな電気を買うのかによって未来は変わってきますよね。化石燃料由来の電気を使うのか、それとも再生可能エネルギーなど、CO2を排出しない電気を使うのか・・・によって、未来が変わっていくっていう中で、毎月の電気代どっちに支払うのか・・・。
本当に小さな選択ではあるように思うかもしれないですけれども、日々の何を食べるのか、何を買うのか、そういった選択が子供たちの未来につながっていくので、日々そういったことをちょっと考えて、物を選んでいただけたらなと思います」
●では最後に、奥村さんが防災アナウンサーを志すことになったと言える3.11がもうすぐやってきます。どんな思いがありますか?
「そうですね・・・3月11日、私がこの活動を始める原点となったのが、石巻の日和(ひより)幼稚園で起きた津波被災事件というものになります。
園は高台にあったので、そこに留まっていれば、全員無事だったんですけれども、大津波警報が出される中、なぜか送迎バスが海のほうに向かって走っていってしまって、津波に巻き込まれ、その後、延焼火災で園児5名が焼死してしまうという痛ましい事件がありました。
私はそのご遺族の佐藤美香さんというお母様とずっと交流をさせていただいて、今年も3月にお会いする予定になっているんですけれども、そのお母様のメッセージをみなさんにもお伝えできたらなと思って活動しております。
そのお母様がおっしゃっているのが『知らないことがいちばん怖いことです』ということです。その園の防災マニュアルがどうなっているのか、その地域のリスクがどうなっているのか、今はいろいろと知る術があるんですけれども、知らなければ、なかったことと同じです。
起きてからでは手遅れなので、起きる前のきょうできることに目を向けて、大切なかたを守れるように備えを進めていっていただけたらなと思います」
INFORMATION
この本には、水害や地震から家族の命を守るためにすることや、自宅を最強の避難所にする方法などが最新データや知見をもとに書かれています。ママ目線のアドバイスも多く、また、育児支援の専門家のインタビューなども載っていて、とても参考になります。
あなたのうちの防災を、この本を見ながら、ひとつひとつ検証していま家族のためにできることをやっておきませんか。
◎辰巳出版:https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/21362/
役立つ情報が満載の、奥村さんのオフィシャルサイトもぜひ見てください。奥村さん考案の「地震ロードマップ」と「水害ロードマップ」をダウンロードできますので、ぜひチェックしてください。
◎奥村奈津美オフィシャルサイト:https://natsumiokumura.com
奥村さんのオフィシャルYouTube「妊娠・出産したら見る防災チャンネル」もおすすめです。
◎YouTube「妊娠・出産したら見る防災チャンネル」:
https://www.youtube.com/@natsumiokumura-bousai
2026/3/1 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道大学大学院・獣医学研究院の教授「坪田敏男(つぼた・としお)」さんと、札幌市円山動物園の動物専門員「鳥居佳子(とりい・よしこ)」さんです。
坪田先生はクマの生態研究の第一人者、そして鳥居さんは円山動物園でホッキョクグマの飼育を担当。坪田先生は、北海道大学総合博物館の館長でもいらっしゃいます。
鳥居さんは、坪田先生が在籍する北海道大学大学院・獣医学研究院で博士課程を修了。現在、客員研究員として、ホッキョクグマの人工授精について研究されています。
そんなおふたりが先頃、共著として『クマなく伝えたい ホッキョクグマのすべて』という本を出されました。
きょうは、その本をもとに、改めてホッキョクグマとはどんな生き物なのか、その特徴のほか、国内で取り組んでいる繁殖、そしてホッキョクグマの聖地ともいわれるカナダ・ハドソン湾での現地調査、さらに地球温暖化が及ぼす影響などうかがいます。
☆写真協力:実業之日本社


ホッキョクグマの毛は無色透明!?
※この番組では以前、写真家のかたにホッキョクグマのお話をうかがったことはあるんですが、改めて、ホッキョクグマとはどんな生き物なのか、教えてください。
坪田さん「3年前の4月に初めて野生のホッキョクグマにあったんですけども、まず、第一印象としては真っ白でデカイなという感じでしたね。今までツキノワグマやヒグマの研究をしてきた中で、やっぱり格別にデカい、ものすごく迫力のあるクマだなっていうのが第一印象でしたね」
●ヒグマが進化してホッキョクグマになったっていうことなんですか?
坪田さん「そうですね。クマは全部で8種類いるんですけども、ホッキョクグマは、その中でいちばん新しく進化してきたクマで、ヒグマから枝分かれしたクマということになります」
●ほかのクマとの大きな違いは、肉食にあると言えますか?
坪田さん「そうですね。何と言っても(ホッキョクグマの)いちばんの特徴は肉食ということですね。
クマ類は先ほど言ったように全部で8種いるんですけども、ホッキョクグマを除く7種は、どちらかというと草食に近い雑食のクマとして進化してきたんですね。
もともと食肉類の動物ですので、もちろん肉を食べることはできますし、肉を食べたほうが効率よく消化も吸収もできるはずなんですけれども、なぜか進化の中でクマは草食に近い雑食に進化してきたという動物なんですね。
なので、ホッキョクグマも1回はヒグマとして雑食、特に草食に近い雑食に進化してきたのが、最近になって肉食を取り戻して、クマの中では唯一、肉食を示しているクマということになりますね」
●ホッキョクグマは、全身が白い毛に覆われているように見えますけれども、本に毛は無色透明だと書かれていました。これはどういうことなんですか?
坪田さん「我々の目には白く見えるんですけれども、本来、ホッキョクグマの毛というのは無色透明でグラスファイバーみたいな、そんな毛なんですね。それが光の加減で、日光が当たって反射したり吸収したりする中で、我々の目には白く見えるというところですね。
ただし真っ白ではなくて・・・我々もカナダのハドソン湾で見ましたけれども、周りは氷、大氷原ということで、真っ白なんですけども、ホッキョクグマはちょっと黄色味がかっていましたね。そういう点では本当の真っ白ではないんですけど・・・」
●その毛は生え変わっていくんですか?
坪田さん「毎年生え変わりますね。夏毛と冬毛を変わるがわる交換して、今ならば冬毛になっているというところですね」
※ホッキョクグマは、体形や顔の形もヒグマとは違いますよね?
坪田さん「そうですね。今回も実物を見て確かめましたけども、やっぱり流線型をしているんですね、体全体が。頭の部分も細くシュっとしていると言いますか。
我々、ヒグマであれば、調査中に首輪を付けて、彼らの位置情報を取るんですけども、ホッキョクグマの場合は首輪を付けると、首の部分がいちばん太くて鼻先に向くにしたがって細いものですから、すぽっと抜けてしまうんですね。なので、首輪式のGPSが付けられないということでしたね。そのくらい形が違うということがわかりました」
●ほかのクマと同じように冬眠はするんですよね?
坪田さん「一般的に普通のホッキョクグマは冬眠しないんですね。それは冬から春にかけてアザラシを食べることができるので、特にその時期が彼らにとってはいちばん飽食できる、たくさん食べることができる季節ということで、冬眠している場合ではないんですね」
●なるほど。
坪田さん「ただし、メスだけは子供を産んで育てるために冬眠をするということで、穴の中に入って代謝を下げて、ほかのクマと同じように冬眠状態になっているっていうことがわかっています」
ホッキョクグマの繁殖、人工授精
※鳥居さんは、札幌市円山動物園の動物専門員として、ホッキョクグマを担当されています。現在、何頭のホッキョクグマを飼育しているんですか?
鳥居さん「札幌市円山動物園は今3頭のホッキョクグマを飼育展示しております。1頭がオスの『ライト』という個体で12歳のホッキョクグマです。あと2頭はメスのホッキョクグマになりまして、母親の『ララ』っていう個体とその娘の『リラ』という個体の、合わせて3頭を飼育しています」

●普段見ていて、どんなことを感じますか?
鳥居さん「3頭それぞれに個性があります。本にも取り上げていますけれども、やっぱり1頭1頭、性格が全く違うし、遊具とかに対する反応も違うので、結構日々見ていて飽きない動物だなと思っています」
●ホッキョクグマには、どんな餌を与えているんですか?
鳥居さん「魚が中心なんですけども、今はホッケとかサバといった魚と、あと魚だけだとカロリーを賄えないので、馬の肉とかもあげています」
●1日に与える餌の量は、どれくらいになるんですか?
鳥居さん「今の冬の時期だとかなり食欲も上がってきているので、1日に10キロから12キロぐらいをあげています」
●飼育担当者として、どんなことにいちばん気を遣われていますか?
鳥居さん「まずは、元気であることがいちばんだと思うので、みなさんに元気な姿をお見せできるように、本当に些細なこと、変化、そういったものになるべく気付けるように日々観察しております」
●鳥居さんは、ホッキョクグマの繁殖の研究をされているんですよね?
鳥居さん「はい、そうです」
●具体的にはどういう研究なんです?
鳥居さん「現在はホッキョクグマの精子を凍結保存して、半永久的に保存できる技術を確立しようということで、動物園や水族館にご協力いただいて、オスから精液を採って、どういう条件で保存したらいいのかっていうのを調べています」
●日本の動物園で、人工授精で誕生した例はあるんですか?
鳥居さん「2例、実際に行なってはいるんですけれども、仙台市八木山動物公園でペアのホッキョクグマに対して人工授精を行なって、ずっと何回もチャレンジしてきて、ようやく2頭の双子が育っています。
ただこの人工授精の例は自然繁殖、オスとメスの交尾も含めて、最後のダメ押しで人工授精しているというような形なので、人工授精単独でっていう成功例はまだないです」
●坪田先生は、動物園での繁殖にどんなことを期待されていますか?
坪田さん「これから段々やっぱり野生のホッキョクグマを持ってきて、動物園で飼育することは難しい、今そういう状況になっていますので、動物園の中で繁殖させて、それを日本の動物園へ分散させて飼育していくっていう、そういう方法を取り入れざるを得ないと思います。
やっぱり数が減っていっては困りますので、なんとか人工授精などの繁殖技術も使って繁殖させて、数を増やして欲しいなっていうふうに期待しますね」

(編集部注:現在、日本で何頭のホッキョクグマが飼育されているのか、鳥居さんのお聞きしたら、2月初旬の段階で32頭、ということでした。
新しい本『クマなく伝えたい ホッキョクグマのすべて』には、去年12月に生まれた一頭を除き、全国の動物園・水族館で飼育されている31頭を写真入りで紹介。
解説文は、実際に飼育を担当されているかたが書いていて、普段の観察から感じ取った特徴や性格などに触れた文章にホッキョクグマへの愛情を感じますよ。顔も体型も性格も、みんな違っていて、ほんと個性的で面白いですから、ぜひ読んでください。
ところで、世界にはいったい何頭くらいの、野生のホッキョクグマがいるのか、坪田先生によると、およそ2万から2万5千頭。生息域は北極圏、例えばカナダやアラスカ、ノルウェーやデンマークなどだそうです)
カナダ・ハドソン湾、ヘリコプターで足跡探し
※今回の本のハイライトと言えるのが、先ほどもお話がありましたが、ホッキョクグマが集まる、聖地ともいわれるエリア、カナダ・マニトバ州にあるハドソン湾での生態調査だと思います。
この調査は、ホッキョクグマ研究の第一人者で、坪田先生の長年のご友人である、カナダ・アルバータ大学のアンドリュー・E・デロシェール教授の現地調査に同行するという形で、2023年4月に実現しました。

●ホッキョクグマの調査は、そう簡単には行けませんよね?
坪田さん「そうですね。私もクマの研究をやって50年近くなるので、いろんなクマの研究をやってきましたけれども、ホッキョクグマだけは全く携わることができなくて、一度は行ってみたいなとずっと思っていたんですけども、なかなかチャンスが来なかったですね」
●鳥居さんもハドソン湾の調査に同行されたんですよね?
鳥居さん「はい、そうです。坪田先生のお陰で参加することができました」
●坪田先生からお誘いがあったっていうことですか?
鳥居さん「そうですね。この書籍の計画があったっていうこともあって、“一緒に行かないか!”って誘っていただきました」
●どんなことに期待していました?
鳥居さん「実際に飼育している身として、本当にホッキョクグマっているのかな? っていう、不思議な感覚ですけれども・・・飼ってはいるけれども、本当に野生で同じ姿が見られるのか? っていうのは意外とピンと来てなくて、実際に目で見て確かめたいと思いました」
●坪田先生、現地ではどんな方法で調査されたんですか?
坪田さん「ハドソン湾の近くにあるチャーチルっていう街がベースとなって、我々もそこに滞在していたんですね。そこにヘリコプターが一機到着しまして、なかなか来なくて、やきもきしていたんですけれども、3日目にやっときました。

そのヘリコプターに乗ってハドソン湾に出て行くんですね。そこでアンドリュー先生とか大学院生が新鮮な足跡を見つけたら、それをパイロットに伝えて旋回しながら足跡を追跡していくと・・・。
そうするとそこにホッキョクグマがいるということで、アンドリューがライフルで麻酔薬を投与して、麻酔が掛かったホッキョクグマから、いろんな研究材料を採って、最後にGPS機能の付いたイヤータグ、耳標(じひょう)を付けて調査終了という、そういうのを何回か繰り返してやっていました」
●ヘリコプターから足跡って探せるものなんですか?
坪田さん「我々(調査自体が)初めてでしたので、キツネの足跡かなって思えるような小さい足跡が、実はホッキョクグマの足跡だったんですね。もちろん(氷原に)縦横無尽に足跡はいっぱい付いているんですよね。

その中からほんの、どうでしょうね・・・10分前とか1時間程前に歩いた新鮮な足跡を見つけ出すテクニックは、我々にはちょっとわからない、想像以上の何かがあるんだろうな〜と思いましたね。アンドリューは的確にそれを見つけて、追跡して行くと、間違いなくホッキョクグマがいましたね」
ホッキョクグマのお乳の味
※坪田先生のご友人、カナダ・アルバータ大学のアンドリュー・E・デロシェール教授の調査に同行するという形で、2023年4月に実現したカナダ・ハドソン湾での現地調査について、さらにお話をうかがっていきましょう。
●初めて、野生のホッキョクグマを目の当たりにした時は、どうでしたか?
坪田さん「最初に捕まえたのがオスのデカいホッキョクグマで、おそらく体重500kg以上の大物でしたので、その迫力にまずは圧倒されましたね。これまで捕まえたヒグマとかツキノワグマとは全く違って、真っ白いクマということで、その新鮮味は忘れることがないものだと思いますね」

●鳥居さんはどうでした? 飼育しているホッキョクグマとの違いみたいなものって感じましたか?
鳥居さん「そうですね。その姿形はやはり動物園で飼育しているクマたちとは変わりはないんですけれども、とにかく綺麗でしたね。すごく綺麗だったのが意外だなと思いました」
●カナダ・ハドソン湾での調査で何か印象的な出来事があったら、お聞きしたいんですけれども、坪田先生いかがですか?
坪田さん「そうですね・・・第一印象はなんといってもいちばん強いインパクトを与えてくれましたけども、全部で9頭のハンドリングに立ち会ったので、段々慣れてきたというところはありましたね。
あと印象に残っていることといえば・・・最終日に普通に調査に行っていたんですね。我々としては天気がいい中で、またきょうも何頭か捕まえられるのかなと思っていたんでけども、かなり向こうに雲が立ち込めていたんですよね。
そうするとアンドリューが早々に“きょうは調査はやめて帰ろう”って言い出したんです。それがちょっとびっくりでしたね。それはそれだけヘリコプターにかかる費用がものすごく膨大なもので、よほど天気がよくないと調査はやらないんですね。その決断の潔さっていうところにも、ちょっとびっくりしましたね」
●鳥居さんはいかがですか?
鳥居さん「私はクマの生態調査っていうのが初めてだったんですけども、野生のホッキョクグマで出会った中で、メスのホッキョクグマを調査する機会もありました。
そのメスがたまたま泌乳をしていたメスグマで、みんなでお乳を絞って“味を確かめろ!”っていう話になって(笑)、ホッキョクグマの乳汁を舐めたっていうのは、すごく思い出に残っています」
●味はいかがでした?
鳥居さん「えっと・・・美味しくなかったです(笑)。すごく脂っこくって甘味が全然なくて・・・子グマがすごく小さくて10キロくらいに大きくなるまで、お母さんが1対1で育てていくんですけども、こんなに脂肪たっぷりなミルクで育つんだなっていうのは改めて実感しました」
ホッキョクグマ、絶滅の危機
※今回の本には、ホッキョクグマ研究の第一人者、アンドリュー・E・デロシェール教授への20の質問とその回答が載っています。とても示唆に富んだ内容だと思うんですが、ホッキョクグマが絶滅の危機にあるのは、事実なんでしょうか?
坪田さん「はい、そうですね。かなり危機的な状況にあると思います。今2万頭から2万5000頭がいますけれども、ホッキョクグマの専門家に言わせると、向こう45年とか50年の間に半減するんじゃないかと・・・つまり1万頭ぐらいにまで減るんじゃないかと・・・。
それも今の温暖化がこの状態が続けばというところで、もし温暖化が加速して、さらに悪化するようなことがあれば、もしかしたら2100年にはホッキョクグマは1頭もいなくなるんじゃないかっていう、そういう推測も出ていますので、それぐらい厳しい状況にあるのは間違いないですね」
●ハドソン湾に集まるホッキョクグマも減っているんですか?
坪田さん「具体的な数字は今回聞かなかったんですけども、アンドリューの話を総合すると、やはりハドソン湾のホッキョクグマもかなり温暖化の影響を受けていて、死亡率が高まっていて、繁殖率が下がっている。
特に夏の期間が彼らにとってはいちばん厳しいので、夏の期間がだんだん伸びるということで、餓死するホッキョクグマも出てくるんじゃないかっていうことを言っていました。ハドソン湾もかなり厳しい状況にあると思います」
●鳥居さん、地球温暖化は野生のホッキョクグマの繁殖にも影響はありますよね?
鳥居さん「そうですね。今回調査でも見られたんですけど、海氷の氷が結構分断されていて細かくなっているところもありました。

そうなるとホッキョクグマは海氷を、私たちの地面と同じように使って歩いて、繁殖相手となるオスやメスを見つけていくので、そういうふうに氷が分断されてしまうと、繁殖相手を見つけることがすごく難しくなる、出会いにくくなるっていうことがひとつと・・・。
あとメスが妊娠出産にかけて、体脂肪を増やしていかなきゃいけないんですけれども、海氷が分断されてしまったり薄くなったり、あるいは(海氷が)できるのが遅くなったりしてしまいますと、アザラシを食べられる期間が短くなってしまったり、食べにくくなってしまったりします。
そうなると赤ちゃんにしっかりミルクを与えることができなくなるので、そういった意味で生育率っていうのも低くなってしまいます」
●坪田先生、もしホッキョクグマが絶滅してしまったら、どのようなことが起きると考えられますか?
坪田さん「ホッキョクグマの絶滅は決して我々人類にとっても他人事ではなくて、やっぱりホッキョクグマが生きていられない地球環境は、我々人類も生きていけないような環境と考えるべきで、やっぱりホッキョクグマの今の状況が我々に警鐘を鳴らしているんだと思うんですよね。
それを我々はしっかりと捉えて、ホッキョクグマの保全を進めつつ、我々人類の未来をしっかり考えていく必要があるんだろうなっていうふうに思っています」
※最後におふたかた、それぞれにうかがいます。研究者として、この本を通して、どのようなことを伝えたいですか?
坪田さん「まずはホッキョクグマの魅力をみなさん伝えたい。そんな動物が地球上に生き残って進化の結果、現在生きているんだというところで、非常に面白いユニークな生態を持っていますので、そういうのをまず伝えたいなと思いますね。
その次に、先ほど話があった地球温暖化によって今脅威を受けている。それに対して我々人類が何を考えなくちゃいけないのか、あるいは具体的にどういう行動を取らなくちゃいけないのか、そういうことをみなさんといっしょに考えるきっかけになればいいなと思っています」
●鳥居さんはいかがでしょう?
鳥居さん「おそらくホッキョクグマはとても人気のある動物なので、ホッキョクグマの名前を聞いたことない人ってほんとに少ないと思うんですね。
その中でも漠然としたイメージは持っていても、よくよく考えたら詳しいことは知らないなっていう人は多いかもしれないので、この本を取っていただいて、ホッキョクグマについて少しでも詳しく、お友達とか家族にこういう動物なんだよ! って教えてあげられるようになれたらいいなと思います。
また、動物園や水族館で飼育されているホッキョクグマたちがどういう生活をしているのか、どんな個性のあるホッキョクグマたちが今、日本で活躍しているのかも本書で触れていますので、ぜひ興味を持って動物園や水族館に見に来ていただけたらいいなと思います」

(編集部注:地球温暖化は人ごとではないですよね。坪田先生と鳥居さんが共著として出された本『クマなく伝えたい ホッキョクグマのすべて』の帯に書いてある「ホッキョクグマの未来は、私たちの未来」という言葉に深く共感します。
温暖化を食い止めるために、私たちにできることはなにか、みんなで考えて行動しなくてはいけないのではないでしょうか)
INFORMATION
本書はホッキョクグマの生態に始まり、全国の動物園・水族館で飼育されているホッキョクグマを写真入りで解説。そしてカナダ・ハドソン湾で行なった現地調査の模様など、とても面白く、読みやすい本に仕上がっています。以前、この番組に出てくださったイラストレーター「きのしたちひろ」さんが描いたホッキョクグマの可愛いイラストにもご注目ください。
実業之日本社から絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎実業之日本社:https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-53903-4/
坪田先生が館長を務める北海道大学総合博物館、そして札幌市円山動物園のオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。
◎北海道大学総合博物館:https://www.museum.hokudai.ac.jp
◎札幌市円山動物園:https://www.city.sapporo.jp/zoo/
2026/2/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道・北東部・オホーツクエリアにある遠軽町(えんがるちょう)を拠点に活動する、ギターとフルートの音楽ユニット「ホラネロ」の本田優一郎(ほんだ・ゆういちろう)さんと、谷藤万喜子(たにふじ・まきこ)さんです。
おふたりはご夫婦で、ともに東京学芸大学を卒業後、東京で、ご主人の本田さんはギタリストとして、宇多田ヒカルやアルフィー、大黒摩季ほかの編曲、そしてライヴのメンバーとして活躍。
奥様の谷藤さんは、東京藝術大学大学院を経て、将来を嘱望されるフルート奏者として、首都圏を中心にオーケストラやリサイタルなど、様々なステージで活躍されていました。
きょうはそんなおふたりに、北海道に移り住んだ理由や、独自の音楽「ジオミュージック」、そしてヒグマの骨で作った笛のお話などうかがいます。
☆写真協力:オホーツク音楽工房

遠軽町、黒曜石、四季折々の魅力
※ホラネロは、2012年に遠軽町に移住したタイミングで結成。ユニット名の由来は、東日本大震災のあと、福島県双葉町の避難所でチャリティーコンサートを行なった時に、谷藤さんが大好きな福島の子守唄「ホラねろ ねんねろ」を演奏したのがきっかけ。
実はこの子守唄を、地元福島の人たちも、あまり知らないことがわかり、ならば、多くの人に知ってほしい、そして震災のことも忘れないでほしい、そんな思いがあったそうです。
命名したのは、本田さんと親交があるシンガーソングライターの樋口了一さん。北海道の人気テレビ番組、大泉洋さん出演の「水曜どうでしょう」のエンディング・テーマ「1/6の夢旅人2002」を歌っているかたなんです。
●東京で活動されていたおふたりが、北海道に移住されたのは、どうしてなんですか?
谷藤さん「きっかけは夫の本さんなんですよ。当時子供が5歳と8歳で、まだやんちゃな盛りですけど、“自然の中で伸び伸び子育てしたいね!”ってなって、私の実家がある遠軽町に引っ越したんです。
祖父母が住んでいた家を両親が心よく、“使っていいよ!”って言ってくれたのも背中を押してくれました。今は三世代で行き来も出きて、毎日楽しいです」
●本田さんご自身は東京のご出身ですよね?
本田さん「そうですね、はい」
●都会育ちですと北海道での生活は、がらっと変わって、最初は大変だったんじゃないですか?
本田さん「そうですね。移住したのがちょうど1月2日、お正月だったので、冬の真っ只中でした。
(北海道の)雪景色は見たことがあるんですけれども、実際に(遠軽町の雪に)触ってみると、東京の雪とは全然違ってサラサラと手からこぼれ落ちて、その上を歩いてみると片栗粉を踏みしめたような音が鳴ってすごく新鮮でした。
新しい土地での生活は戸惑うっていうよりも、わくわく感に満ちていました」

●そうだったんですね。現在暮らしていらっしゃる遠軽町は、どんな町なんですか?
谷藤さん「ここは出身の私からお話したいと思います。人口は1万8千人に満たないくらいの小さな町なんですけど、旅の拠点としては結構、面白い町です。
2023年に、白滝という市街地から離れた小さなエリアがあるんですけど、そこから出た黒曜石の石器が日本最古の国宝として話題になったりですとか、あと秋には町民がみんなで手入れして作るコスモスの畑、1千万本咲いているんです」
●すごいですね!
谷藤さん「(コスモスの花を)数えたことはないですけど(笑)、そういうものが見られたり・・・あと、鉄道好きのかたでしたら、動態保存っていう実際に乗れる森林鉄道『雨宮21号』っていうのがあって、それに乗れたりですとか、JRの遠軽駅はスイッチバックでも有名なのでJRの旅もおすすめです」
●この時期は寒さが厳しいんじゃないですか?
「はい、もう流氷が来ています」
●そうですか。遠軽町を訪れるとしたら、いちばんのおすすめの季節はいつになりますか?
谷藤さん「あ~迷いますね・・・本さん、どうですか?」
本田さん「う~ん、北海道はすごく自然がいっぱいあるので、春来たら春の素晴らしい自然がありますし、夏は夏でまたキャンプなんかも楽しめますし、秋は先ほど言っていたコスモスが咲き乱れますし、冬はやっぱりスキーとかスノーボードとか、四季折々楽しめると思います」
●それぞれの良さがありますよね。
本田さん「そうですね」

●本田さんは、自然ガイドとしても活動されているんですよね?
本田さん「そうですね。遠軽町の『白滝ジオパーク』で、先ほど話題に出ていた、ホラネロの曲の題材にもなっている黒曜石、そのジオガイドとして活動しています」
●具体的には、どんなことをやっているんですか?
本田さん「普段は入れない国有林の山に黒曜石の露頭(ろとう)、いわゆる露出している所があるので、そこにバスでお客様をご案内して、黒曜石の成り立ちだったり、遠軽町のいいところをちょっとご紹介して、最後には僕らホラネロの、黒曜石を題材にした曲も聴いていただいたりもしています」
場所と人、出会いから生まれる「ジオミュージック」
※ホラネロのオフィシャルサイトを見ると、音楽のコンセプトとして「ジオミュージック」を掲げていらっしゃいます。この「ジオミュージック」とは、どんな音楽なんですか?
谷藤さん「私たちが自分たちで名付けた音楽のジャンルなんです。自然が豊かな場所に住んでいると見渡すだけで、いろんな魅力が目に飛び込んでくるんですね。暮らしている人も本当に素敵で、そういう場所とか人との出会いを音楽にしているのが『ジオミュージック』です。
ここに住む子供たちにも、自分が暮らしている場所っていいところだな~って感じてもらえたら嬉しいですね。そういった身近な人に喜んでもらえる音楽を届けたいっていう気持ちもあります。
この土地には農家さんですとか漁師さんのように、『命の糧』を作っている人がたくさんいますので、私たちはミュージシャンとして『心の糧』を作れたらいいなって、そういう音楽を『ジオミュージック』って呼んでいます」
●心の糧、素敵ですね!
谷藤さん「ありがとうございます」
●自然からのインスピレーションも大事にして、音楽を作られているっていうことですか?
本田さん「そうですね。自然音を曲にしていると、面白い音とか珍しい音を集めている人っていうふうに思われがちなんですけど、実はそうではないんですね。
インスピレーションは自然からではなく、人との出会いから得ています。各々の土地に根ざした仕事とか文化、いわゆる風土に根差して暮らしている人たちのお話はとっても面白くて、それを音楽を通して発信しています」
●具体的にどんなことに感性を刺激されますか?
本田さん「そうですね・・・今お話ししたようにそれぞれの土地で頑張っている人たちの話を聞くと、やっぱりそれを誰かに伝えたい! って思うんですね。僕らは音楽を創れるので、その音楽を通して、その土地土地のストーリーだったり、その人たちの物語を音楽に乗せるという形を取っています」
●自然だけじゃなく、人との出会いも大切にされているんですね。
本田さん「そうですね。人と出会わないと曲は作れない。なので、そんなにたくさん曲が作れるわけではないんですけれども、今まで出した(アルバム)6枚はすべてに、北海道に移住してからの人との出会いが詰まっています」
ヒグマの骨笛、世界初の試み
※ホラネロのオフィシャルサイトに「音探し遠足」という企画がありました。これはどんな企画なんですか?

谷藤さん「例えば、私がヒグマの骨笛を吹く『ヒグマのうた』っていう曲があるんですけど、曲を作る時に知床ウトロ学校の小学生たちと森に入って、音探し遠足をしたんです。
これは当時の校長先生の提案で授業としてやったんですね。ガイドさんに案内してもらって、クマの巣穴とか木に付いた爪痕なんかを見ながら、クマ追いの“ほいほ~い”っていう声を張り上げながら歩くんですよ。
断崖の上ではオホーツクの波の音を聴いたり、トドが泳ぐのが見えたり、あと草原で大きなオスジカに会ったりもしました。
時期が11月頃だったので、落ち葉を踏むとシャリシャリとした音とか、倒木を木琴みたいに叩く音を集めて、その場で本さんがすかさず録音するんです。木の実がいい音がするので、これもマラカスにしたりもして、そうやって集めた音で森の豊かさを曲にしました」
●先ほどもお話ありましたけど、ヒグマの骨、サイトにその骨笛の写真が載っていました。見た目はオカリナのような感じですよね?

谷藤さん「そうですね。みなさん、よくそうおっしゃいます」
●ヒグマのどの骨というか、どういった状態からオカリナのような形になるんですか?
谷藤さん「私が吹いている笛は、上腕骨の一部になります。切り出して作ったんですけど、尺八奏者の父が短い尺八の構造として作ってくれたんです」
●へぇ~っ! 尺八を私もちょっと趣味で吹くんですけど、穴は5つですね? で、その構造とオカリナの構造が似ているんですか?
谷藤さん「オカリナとは、実際の構造はちょっと違うんですけど、ヒグマの骨笛の場合は尺八より短いので、いちばん下の部分、音が下から抜けていくところがあるじゃないですか。あそこを手で塞いで(音を)出すと、それがオカリナの音により近くなるので、“まるでオカリナを聴いているみたいね”ってよく言われます」
(*ここで谷藤さんにヒグマの骨笛を吹いていただきました)
●わぁ~、すごくいい! 素敵なきれいな音色ですね。
谷藤さん「ありがとうございます」
●最初から、いい音って出たんですか?
谷藤さん「いえいえ! 猛練習しました!(苦笑)」
●(笛の)加工は尺八奏者のお父様がいろいろやってくださったんですか?
谷藤さん「そうですね、はい」
●練習に練習を重ねて、今のような音が出せるようになったという感じなんですね?
谷藤さん「はい。ドレミファソというか、音階を出せるように作ったわけではなくて、とりあえず作ってみようという世界初の試みですので、出来るまで本当に指使いもわからないし、“とりあえず吹いてみよう!”って言って、父とふたりで試行錯誤しました。父から預かって、しばらく私が練習していたら、“ドレミファソ”まで出たんですよ(笑)」
●すごい!
谷藤さん「なので、そのドレミファソでできる曲を作ろうということで、本さんと作り込んでいったのが『ヒグマのうた』です」
(編集部注:ヒグマの骨は、ご縁があった、知床財団の元事務局長で、ヒグマ研究の第一人者「山中正実(やまなか・まさみ)」さんから、ご好意でいただいたそうです。谷藤さんの、世界自然遺産の知床の森の豊かさを、ヒグマの骨を笛にして表現したいという思いに応えて、たまたま山中さんのご自宅にあった骨を1本、いただけることになったそうですよ。

ほかにも「オオイタドリ」という植物の茎をもとに、谷藤さんご自身が作った笛も吹いていただきました。この音色も素敵でした。谷藤さんがおっしゃるには、材料はただで手に入るので、オオイタドリの笛を広めて流行らせたいとのことでした)
「アバリ」〜漁師の伝統・技術
※2024年に発表されたアルバム『ECHOES』には、ヴォーカル入りの曲が2曲収録されています。「アバリ」そして「北のひかり」という曲ですが、これはもともとはインストだったんですよね?
本田さん「そうですね。いわゆる自然音とか漁船の音を取り入れたインスト曲でした」
●インストだったものに、なぜヴォーカルを入れようと思われたんですか?
本田さん「歌にすると間口が広くなって、いろいろなかたに届けやすいのではないかと思って、ヴォーカル入りの曲にしてみました」
●歌っていらっしゃるのは、どなたなんですか?
本田さん「KAZUMIさんというかたで、北海道の江差に住んでいらっしゃるかたなんですけども、江差追分(えさしおいわけ)のチャンピオンです。以前、僕は一緒にツアーでまわったことがありまして、それで知り合って、僕が北海道に移住してきたので、また連絡を取り合うというような仲になりました」
●曲名の「アバリ」というのは、どういった意味なんでしょうか?
谷藤さん「これは私も知らなかったんですけれども、“網の針”と書いて『アバリ』って読むんです。実は私、小さい頃、雄武(おうむ)という町で暮らしていたんですけど、鮭漁が盛んな町で、雄武漁協のみなさんに協力していただいて、定置網の手入れ作業や早朝の漁に同行させてもらいました。
今は消耗品として買って済ませることもできる網なんですけど、雄武漁協では伝統技術を残すためにできるだけ手作業で加工して、あと直したりもしているんですね。
私たちは漁師さんって荒波の中で豪快にっていうイメージがあったんですけど、最初の取材で、黙々とアバリ、針を手に持って動かして糸やロープを編む、すごく繊細な作業風景にびっくりしました。
で、こういった大切な文化を受け継ぐ活動を知ってほしくて、タイトルを『アバリ』にしました」
●この曲はイントロがエンジン音から始まりますけれども、船のエンジンっていうことなんですよね。
谷藤さん「そうです。曲自体、港で船がエンジンをかける、その音から始まって、あと水揚げする時のクレーンの音、鎖の音、そんなものがリズムになっていきます。あと鐘の音が入っているんですけど、“号鐘(ごうしょう)”って聞いたことあります?」
●ごうしょう???
谷藤さん「号鐘、これは一部の漁船には付けなくちゃいけない決まりがあって、その鐘を鳴らすことで漁師さんの命を守るというか、危険を知らせたりする信号のようなものです。
そういった音も入っていたり、あとベース音のように聴こえるのが、実は船のエンジン音という作りです。地域学習では子供たちもこの漁を体験しているって聞いたので、曲の中盤では子供の声も入っていて、なおかつ全体としては結構力強い曲に仕上がっていますね」
たくさんの出会いを求めて
※地域に根ざした音楽づくりに取り組んで、10数年が過ぎたと思います。今後も音楽家としてのスタンスは変わりませんか?
谷藤さん「そうですね。音楽家としてって言えるかは、ちょっとわからないんですけど、地域の魅力は意識して感じようとしないと、案外見えてこないと思うんですね。
なので、やっぱりさっき言ったように日々の暮らしの中の出会いとか、小さな幸せとか風景とか、そういうのを全力で楽しもう! っていうふうに意識しながら暮らしていくことを続けていきたいですね」
●ジオミュージックの新しい展開というのはありそうですか?
谷藤さん「これも毎日の暮らしの中で、わ~っと感動する瞬間があれば、そこでまた新しいジオミュージックが生まれると思うので、たくさんの出会いを求めていきたいなと思います」
●では最後にホラネロの音楽を通して、どんなことを伝えていきたいですか?
谷藤さん「地域ならではの人の営みですとか、自然の豊かさとか、そういう魅力を音で伝えていきたいっていうのが、ホラネロのジオミュージックなんです。
聴いてくれた地元のかたが故郷をもっと好きになってくれたり、ほかの地域のかたが行ってみたいな、暮らしてみたいなって思ってくれたりしたら、すごく嬉しいです」
●本田さんはいかがですか?
本田さん「地域の魅力、自分たちが今住んでいる場所の魅力っていうのは、自分たちがまず楽しんでいかなければ、次の世代には伝わらないと思うので、まず自分たちが楽しんで、そしてそれを子供たちに伝えるというよりは、僕らの姿を見て、自分たちが住んでいるところは、こんなに面白いことがあるんだとか、この人たちはそれを面白いと思っているんだって思ってもらって、それが彼らのアイデンティティを育むきっかけになればと思っています」
INFORMATION

今回は、おもに2024年発表のアルバム『ECHOES』から楽曲をお届けしました。このアルバムには、日本の音楽史に残る坂本九さんの名曲「見上げてごらん夜の星を」と「上を向いて歩こう」のカヴァーが2曲、収録されています。どんなインストに仕上がっているのか、ぜひ聴いてみてください。
ホラネロはこれまでに『ECHOES』を含め、アルバムを6作発表しています。CDはオフィシャルサイトのオンラインショップから購入できますよ。
ライヴ情報としては、4月12日、北海道滝川市の「ホテルスエヒロ」での公演が予定されています。アルバムやライヴ情報など、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ホラネロ:https://www.horanero.com
2026/2/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道・羅臼町(らうすちょう)で、羅臼昆布漁師のご主人と一緒に「加瀬漁業」を営んでいらっしゃる「加瀬里紗(かせ・りさ)」さんです。
加瀬さんは札幌のご出身で、青山学院大学を卒業されたあと、就職されたということなんですが、そんな加瀬さんが、なぜ羅臼で漁業に従事するようになったのか・・・。
きょうはそのあたりのいきさつや、加瀬さんが惚れ込んだ、旨みたっぷりの羅臼昆布の特徴のほか、地元の浜にオープンした一棟貸しの宿、そして知床・羅臼の海への思いなどうかがいます。
☆写真協力:KOBUSTAY合同会社

羅臼町の浜の活気
※加瀬さんが暮らしていらっしゃる羅臼町は、北海道の北東の端にある、世界有数の漁場を誇る人口4300人ほどの町です。長さがおよそ70キロの知床半島を、斜里町(しゃりちょう)と二分し、根室海峡の沖合、26キロほどの距離に北方領土の国後島(くなしりとう)が一望できる、そんなロケーションにあります。
ちなみに、知床半島は2004年に世界自然遺産に認定されています。
羅臼町は漁業の町で、羅臼昆布を始め、エゾバフンウニ、シャケ、スケトウダラ、ホッケなどは羅臼ブランドとして国内外で高く評価されています。
また、野生動物をベースにした観光業も盛んで、マッコウクジラやシャチなどを見るホエールウォッチングや、絶滅危惧種のオオワシやオジロワシも観察できる、貴重なエリアとして注目されています。

●大学を卒業後、就職するも1年ほどで退職されたそうですが、そのあと、どういう経緯で羅臼で漁業を営むことになったのか、教えていただけますか?
「私、生まれも育ちも北海道札幌市で、大学の時に東京に出て、そして初めての就職で大阪に出たんですけど、どんどん北海道から離れていくたびに、故郷の素晴らしさを改めて感じるようになって、いつかは自分の故郷である北海道に戻って、北海道を盛り上げる地域振興の仕事に就きたいなっていうのを、大阪にいた時に特に感じるようになりました。
町づくりとか地域振興の仕事は、どちらかというと民間ではなくて行政がやるんだろうなっていうのを当初思っていて、そんな中、今住んでいる羅臼町の観光協会事務局長の公募があったんですね。その公募を見て、年齢も不問、経験も不問っていう一般公募を見つけて、これがやりたい! と思って、応募したのがここに来たきっかけです」
●当時、おいくつだったんですか?
「当時25歳でした」
●ご主人の加瀬基敏さんとは、その観光協会のお仕事で知り合ったんですか?
「そうなんです。羅臼町は基幹産業が漁業の漁師町なんですが、私の観光協会での仕事が、基幹産業である漁業を軸とした滞在型の観光にシフトしていこうということでした。
そういったミッションの中で、まずは体中でこの見知らぬ土地の漁業を知らないと、滞在型の観光プログラムの開発ができなくて、まずは漁師さんの船に乗せていただいたり、浜を歩いたりして・・・っていった時に、何人か漁師さんのお友達ができました。その中のひとりだったっていうのが出会いのきっかけです」
●やっぱり漁師さんや漁業は、羅臼町の魅力ですよね。
「そうですね。この浜の活気に、自分がいちば感動したので、そういったことをここに来られるかたにも共有したいなっていう、それは20年経った今でも毎日思っているところです」
(編集部注:日本全国、漁師さんの高齢化や後継者不足が問題になっていますが、加瀬さんにそのことをお聞きしたら、羅臼には若い漁師さんも多く、移住してくるかたもいるので、まだまだ活気があるとのことでした)
天日干しの伝統製法、出汁は黄金色
※加瀬さんが惚れ込んだ「羅臼昆布」について教えてください。ほかの昆布にはない特徴はなんでしょうか?
「北海道には約7種類ほどの素晴らしい昆布があります。利尻昆布、日高昆布、真昆布、長昆布などなど、素晴らしい昆布がある中で、羅臼昆布の特徴をあげると、まずひとつが非常に生産工程のプロセスが多いことが挙げられます。
お店とか空港でよく見られる、袋に入ったようなパッケージになるまでに、20を超えるような工程を経て、あの形になっているんですね。なので、工程がほかの昆布よりも非常に多いのが、まず大きな特徴のひとつです。
もうひとつが熟成期間、熟成でうま味を引き出す工程があります。実際に出汁を取ると黄金かかった、ちょっと黄金色の黄色い出汁が取れます。味わいは非常にパンチのある濃い出汁で、それが羅臼昆布の特徴です」

●加瀬漁業では、採れた天然の羅臼昆布を天日干しにする伝統的な製法がこだわりなんですよね?
「はい、そうですね。まだ数軒ほどやっているかと思うんですが・・・130人の漁師の中で天日干しをしている漁師は、おそらく3〜5軒ぐらいに減ってしまっています。
私どもは二代目の漁業者なんですね。先代の夫のご両親が50年前に開業して、昔ながらの製法を守って、10年ほど前に二代目である私たちの経営になったんです。やはり先代の昔ながらの製法は変えてはいけないなっていうのはあって、なるべく昔ながらの製法で、たとえ一軒になっても残していきたいなって思っています」

●出荷できる羅臼昆布になるまでには、どれくらいの日数がかかりますか?
「まず採取する漁期は、7月中旬から8月いっぱいの、だいたい1ヶ月半ほどの短い漁期なんですね。そのあと、お土産屋さんに並んでいるような製品にするには、あと1ヶ月半ほどかかるので、トータルで毎年3ヶ月ほど、思いを込めて大切に昆布を生産しています」
昆布漁、竿と箱眼鏡
※羅臼昆布は浅い海の岩場で育つんですよね?
「そうですね。浅いところでは1メートル、いちばん深いところで10メートルほどの水深で、漁師さんは漁具を使って採集しております」
●いい昆布が育つ条件を教えていただけますか?
「とてもいい質問ですね。この羅臼昆布の美味しさは・・・まずひとつは流氷のお陰ですね。北半球で流氷が到達する最も南の地域がここ羅臼町、根室海峡なんですね。
その流氷が抱くプランクトンが春先に、流氷が溶け出すとともに爆発的に増殖します。そのプランクトンを食べる小魚が集まって、その小魚を食べる魚が集まって、それを食べる鯨類、大型のシャチやクジラなどが集まる、豊かな生態系を育む海なんです。
羅臼昆布にとっても非常にミネラル豊富な、流氷がもたらす栄養分豊富な海域であることが、羅臼昆布の旨みを引き出す環境なんじゃないかと言われております」

●1回の漁では、どれくらいの昆布が採れるんですか?
「そうですね・・・時期にもよるので、いろいろあるんですけれども、だいたい1000枚〜2000枚、1日に水揚げしています」
●どういう方法で採るんですか?
「ひとり乗りの、船外機と呼ばれるモーター付きの小さな船で出漁します。昆布漁師はここに130人ほどおります。

で、130隻の船が一斉に出漁して、先ほど水深が1メートルから10メートルで採れることもお伝えしたんですが、昆布を採る長いスティック状の竿という漁具を使って巻き取って採っていきます。
船の上から水深に合わせた長さの棒状の竿をさして、その竿の先は二股状になっているので、そこにスパゲッティを・・・そんなに簡単じゃないよって、夫によく怒られるんですけど(笑)・・・ぐるぐるとスパゲッティを絡めるように昆布をねじり上げて、船の上にあげるっていう漁法です」

●でも船は波で揺れていますから、揺れる船の上で昆布を採るのは大変な作業ですよね。
「そうなんです。そのほかにもひとつ大事な漁具があって、箱眼鏡と呼ばれる水中の昆布を探す眼鏡があるんですね。それを水面から覗いて・・・底はガラスが貼ってあるんですけれども、等級のいい昆布を探して、狙ったところに竿をさして、ねじり取るわけなんです。
その漁具も、やはり両手で竿を持たないといけないので、中にあるマウスピースを歯で噛んで箱眼鏡を固定して、波にも負けないように歯で食いしばって(昆布を)巻き取っていく、本当に体力のいる仕事かなと思います」

貸し切り宿「KOBUSTAY」、町のために
※加瀬さんは、去年2月に羅臼の浜に1日ひと組限定の素泊まり貸し切り宿「KOBUSTAY(コブステイ)」をオープンされました。
開業した理由をお聞きしたところ、10年前、先代から漁業権を引き継いだ頃は、3人の子供の子育てと家業を覚えるのに必死だったそうですが、少し余裕が出てきた5〜6年前に、時を同じくして、北海道・知床の海が温暖化の影響で海水温が上がり、冷たい海を好む昆布に、根腐れや生育が芳しくないなどの影響が出始めたそうです。
いつまで昆布漁など、海に依存する漁業を続けられるか、日に日に不安と心配が募った加瀬さんは発想を転換。採ってなんぼの漁業ではなく、新たな価値を生み出すために一大決心! ご主人を説得し、昆布倉庫をリノベーション。2階をキッチンやバスを完備した宿泊できる部屋に、1階を漁師の作業場所 兼 ワークショップのスペースに作り替え、「KOBUSTAY」という名前をつけてオープンされました。


開業して1年、当初、加瀬さんは国内から家族連れが多く滞在すると見込んでいたそうですが、蓋を開けてみるとなんと、7割近くが海外からのお客様で、連泊されるかたも多いとのこと。
●貸し切り宿「KOBUSTAY」は目の前が海という最高のロケーションに加え、加瀬さんが羅臼で採れる、いろんな食材を用意するという、心のこもったサービスをされているんですよね?
「素泊まりの宿なんですけれども、やはりここは漁師町なので、その時の旬の魚を切り身にして冷蔵庫に入れて、あとはお米とか卵も、旅先ですから、余って持って帰れないので、人数分の必要最低限のものを入れさせていただいます。
私だったら嬉しいなっていうことを常に思いながら、ゲストに合わせてご準備しています」

●例えば、おすすめのレシピとかってありますか?
「どのゲストにも、羅臼昆布をどうぞご自由に使ってくださいって、ぽんと置いてあるんですね。なので、普段の炊飯でも羅臼昆布をぽんと入れて、一緒に炊飯したりですとか、あとはお味噌汁ひとつでも羅臼昆布を使っていただいたりですとか・・・。
特に難しいことは、漁師飯ですから手を加えずに、魚は今だったらスケトウダラ・・・冬はスケトウダラの鍋に羅臼昆布を入れてもらったり、秋だったら鮭の切り身を入れてみたり、漁師飯は美味しいですから、シンプル・イズ・ザ・ベストで、羅臼昆布を軸に漁師飯を楽しんでもらいたいなと思っています」
●滞在中には、いろんな体験もできるんですよね?
「はい、最近、結構人気なのが、昆布の職人体験とか、昆布漁のレクチャーをしながら、実際の漁具に触れてもらいながらっていうような・・・本当に少人数の極上体験を提供しているんですね。

そのほかに昆布だけじゃなくて、羅臼町の魅力を発信していけるような拠点になりたくて、私が鮮魚市場にガイドとして付いて、毎日水揚げされるいろんな魚を近い距離感で、本物の競りような臨場感ある市場の見学もとても人気なので、食のみならず、町全体のなかなか入れないような領域にも、みなさんお連れしてご案内しています」
●改めてKOBUSTAYを、どんなふうに活用してもらえたら嬉しいですか?
「私も移住者なので、自分の感動がいらっしゃるかたの感動と重なる瞬間は、たまらなく面白いというか・・・なんて言うんですか・・・私の『いいね』をいいねしてもらえると、なんかすごく嬉しいっていう感覚なんですね。
ここのKOBUSTAYは、泊まれても1名から6名までの小さな宿泊施設なんです。来訪者にとってというよりは、地元のかたにとって、こういう宿があったらいいなっていう話をさせていただくとすると、やはり漁業者でも漁業をやりながらでも、こういったゲストハウスはできるので、できるってことを地元のかたにもっともっと広めたくて・・・。
採れなくなったから町を出なきゃならなくなったとかじゃなくて、こういう道もあるんだ、漁師でもこういうことができるんだっていうのを、ひとりでも多くの人と、得た知見をすべて共有したいと思っています。
みんなでやればいいなっていうのは思っているので・・・ただ説得力を増すためにちょっとまだ時間が必要ですけれども・・・そういうひとつの手本っていうか見本になれれば、もっともっと町は活気づくんじゃないかなって思っています」
羅臼の豊かな海に感謝
※羅臼に移住されて、どれくらい経ちましたか?
「ちょうど18年ですね。早いもので・・・」

●羅臼の海、そして自然にはどんな思いがありますか?
「そうですね・・・本当に365日、1日も同じ表情がなくて、猛吹雪の時は出られない日ももちろんあるんです。知床の厳しい環境を毎年感じるんですね。
吹雪で出られない日もあるんですけれども、次の日にはスカ〜ッと青空が広がって、国後島から陽が登って・・・っていうことで、やっぱり1泊では味わえない地域なんですね。
なので、2泊以上の連泊で、いろんな表情の羅臼を感じ取ってもらいたいのと、やはり私たちがこのように漁業をやらせてもらったり、貸し切り宿をさせてもらえてるのは間違いなく、自分たちがすごいんじゃなくって、羅臼の懐の深さがすごいのであって、羅臼の力を少しお借りして・・・。
変わらない景色っていうんですか・・・人口とかどんどん減ってきているんですけれども、知床の野生動物や、変わらない景観、暮らしに生かされているっていうことを忘れずに、この豊かな海の力を借りて開業しているっていう、本当に改めて感謝しているところです」
INFORMATION
加瀬さんは、ぜひ羅臼に来て、昆布洗いを体験するなど、どんなふうに羅臼昆布を生産しているのか、漁師の生活も含めて見てもらい、その上で現地で昆布を購入していただくと、きっと美味しさもひとしおになるでしょうとおっしゃっていましたよ。

加瀬さんが羅臼に開業した貸し切り宿「KOBUSTAY」は、目の前が根室海峡という素晴らしいロケーションにあります。どんな宿なのか、ぜひオフィシャルサイトを見てください。羅臼昆布を始め、加瀬さんおすすめの食材で「漁師飯」を作って、ぜひ味わっていただければと思います。
宿泊のご予約はオフィシャルサイトから、どうぞ。
◎KOBUSTAY:https://kobustay.com
2026/2/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、絶景温泉探検家の「鈴木浩大(すずき・こうだい)」さんです。
もともと旅好きだった鈴木さんは、大学生の頃に北海道を車で一周。その時に温泉にハマり、日本全国の温泉を巡るようになったそうです。ところが2000年頃には、国内に行きたい温泉がなくなってしまったそうですが、折しもインターネットの時代が到来、海外の知られざる温泉に目を向けるようになったということです。
そして、世界の辺境秘境にある秘湯を探しあて、これまでになんと! 51カ国1250カ所の知られざる温泉を巡った、唯一無二の温泉探検家なんです。
「絶景温泉探検家」という肩書きは、2023年に初めて本を出す時に出版社のかたが命名。気に入って、そう名乗るようになったとのこと。
「絶景温泉」というのは、鈴木さんがおっしゃるには、温泉からの「眺め」だけでなく、温泉そのものの形や色彩が素晴らしく、また、ほかでは見られない変わった温泉も含め、広い意味で「絶景温泉」と呼んでいるそうです。
きょうは、そんな鈴木さんの新しい本『日本人が知らない 世界の温泉探検録』をもとに、温泉大国フィジーやマダガスカルの凄すぎる温泉、そして水上飛行機をチャーターしてまで行ったカナダの島の温泉など、温泉探検の数々をご紹介します。
☆写真:鈴木浩大

温泉大国フィジー、人が頼り!?
※鈴木さんの新しい本『日本人が知らない 世界の温泉探検録』には、ヨーロッパを除く各大陸から8つの温泉旅が紹介されています。その中から番組で選んだ温泉旅についてうかがっていきます。
まずは、オセアニア編。南太平洋の島国フィジーは、知られざる温泉大国と書いてあります。たくさん温泉があるんですか?
「はい、南太平洋の国々もそうですし、カリブ海とかエーゲ海の国々もそうなんですけれども、島がいっぱいあるところは火山島であることが多いんですよね。フィジーは何十もの島で温泉が湧いているんですけれども、温泉を目的にフィジーに行く人ってあまりいなくて、リゾートアイランドっていうような所ですから・・・。
私は洋書の古書っていうか、古い洋書をインターネットで検索していることが多いんですね。1960年代に書かれた『フィジーの地熱と温泉』という洋書をたまたま見つけて、面白そうだと思って購入してみたら、フィジーにある温泉が何百も載っているんで、これは行かなきゃならない、というようなことがきっかけですね」
●「知られざる温泉大国」の“知られざる”っていうことは、なかなかインターネットにも情報がないってことですか?
「そうですね。今回この本を出版するにあたって、索引を作ろうと思って、インターネットで調べても2、3の温泉を除くとフィジーの温泉は、ほぼインターネットで情報が見つかりません。英語でも全く見つからないので、未だに知られざるままという感じですね」
●どうやって情報を入手したんですか?
「今申し上げた洋書がきっかけなんですけど、今から60年以上前の本ですから、細かなことは、場所とかはあまり詳しく書いてありません。
海外に行く時には、やっぱり車をどう確保するかっていうのがあるんですよね。自分で運転できる国もありますけど、フィジーの離島は、車で川を渡って行くみたいなところが結構あるみたいなので、車を探しましたけど、旅行会社が小さな島には存在しませんでした。
でも、ある旅行会社に温泉リストを見せたら、“大丈夫、大丈夫、みんな行けるよ!”みたいな返事なんで、 “行ったことはあるんですか?”って聞いたら、“いや、ないところも多い”って言うんですよね。でも“大丈夫だ”って言うんで、一応信じて行きました。
そしたらドライバーのかたが、小さな島なのでどの村にも知り合いがいるって言うんですよね。それで村に着いて、知り合いの家をノックして、“この近くに温泉があるか?”って聞くと、“あっ、あるよ!”って言うんで、だいたいどの村でも温泉があってたどり着けました。

中には、ものすごく広い草っぱらを歩いて、その先の洞窟の中にあるような温泉もあって、とても案内なしには着けないんですけども、すべての村で人づてでたどり着いたみたいな・・・だから今のインターネット時代とはかけ離れたような、人のつながりで、すべての温泉にたどり着けたというような感じです」
(編集部注:海外の温泉を巡る旅は、現地で雇うドライバーやガイドさん次第で旅の成否が決まるそうですが、フィジーのドライバーさんは優秀で、鈴木さんの意を汲んで、次々に温泉を探し出してくれたそうです)
ゴミひとつない、フィジーの温泉
※フィジーでは何ヶ所の温泉を巡ったんですか?
「全体で行ったのは12〜13箇所ですかね。というのは、フィジーってやっぱりまだまだ観光化されてない、ものすごく閉じた村があって・・・村によっては村に入るのに村長への貢ぎ物を持って、入村の儀式をやって入るとか、それには日を選ぶ必要があるみたいなところもあって、とても短い旅で行けない所もあるので、今回は車でなんとか行けそうな所っていうので、12〜13箇所の温泉を回ってきました」
●お目当ての温泉はいかがでしたか?
「よかったですよ。特に森の中に古代遺跡のような石組みの露天風呂があったりして、これを事前の情報なく発見したら、ものすごい遺跡を発見したんじゃないかと思うようなところもありました。

あと驚いたのが、綺麗に使っているんですよね、村の人たちが・・・。やっぱり国によっては、露天の温泉の周りにゴミがものすごく散乱している所も多いんですけれども、フィジーの場合にはどこに行ってもゴミひとつ落ちてなく、地元の人たちが大切に(温泉を)使っているんだな~という感じでした」
●フィジーには、どこにでも温泉があるんですか?
「そうですね。だいたい多くの所にあって、逆に言うと、昔の時代に温泉が湧く場所に人が住み着いて、村ができたっていうような感じですかね。
ですから、地元の人たちは“温泉”って言うだけで、“〇〇温泉”とは呼んでないんですよね。日本でも田舎でバスに乗ると、“小学校前”とか“病院前”なんてバス停があって、それは小学校前って言えば、〇〇小学校って書かなくても、そこしかないみたいな感じになるんですよね。
フィジーの場合も、なんとか温泉って言う名前は、特にないということで、こちらが村の名前を勝手に温泉にしたっていうようなことですね。
あと意外にほかの村の温泉のことは知らない。自分の村の温泉は温度も高いので、料理にも使えるし、暖房にも使えるし、もちろん入浴もできるし、それで十分っていうような感じでしたね」
●フィジーのかたがたにとって温泉は、生活の一部みたいな感覚ですかね?
「そうですね。今回新しい本で書いた8つの国の中には、やっぱりそういう国が多かったですね。『知られざる温泉』っていうのは、ローカルな人々が温泉の周りに住み着いて、温泉とともに暮らしてきたみたいな温泉が多かったです」
マダガスカル「アンパラキー温泉」!
※続いて、アフリカ編です。アフリカ大陸の南東に浮かぶ島国マダガスカル。おそらく日本人には、温泉のイメージはまったくない場所だと思います。現地の旅行会社のかたも知らなかった温泉を、どうやって見つけたんですか?
「これもインターネットで探していて『マダガスカルの温泉地図』っていうフランス語の文献みたいなのがありました。マダガスカルは昔、フランスの植民地でしたので、フランスが統治していた時代に作った地図のようでした。
その出典とか、どういう背景で作られたのがわらないんですけども、マダガスカルの国全体で100以上の温泉に印が付けられています。ただ印が付いているだけで、なんていう村なのかもわからないので、ちゃんとした地図に重ね合わせて、村にマークをプロットして、それで(温泉を)探しに行ったというような感じですね」
●へえ~、たくさんあるものなんですか?
「全体で100を超えているんですけども、中には山道を歩いて行かなきゃいけない所もあるので、今回は短い滞在中に行けそうな、あるルート沿いを探すというふうに決めました」
●マダガスカルの温泉のハイライトと言えるのが、本の帯の写真になっている「アンパラキー温泉」だと思います。写真を見ると、変わった形と色の岩の前に、山吹色のプールのような湯だまりがあるんですけども、これがアンパラキー温泉なんですよね?
「そうです。ぜひ本を手に取って見ていただけたらと思うんですね。この温泉を表紙と最初のページに持ってきたのは、何と言っても迫力がある黄土色の温泉プール、日本でいう濁り湯なんですけれども、温泉の成分と土とかが混ざって、こんな色になっているというような感じです」
●お湯が山吹色なので、まさかこれが温泉だって思わないですよね?

「奥に『噴泉塔(ふんせんとう)』って言うんですけど、温泉を噴き出す塔があって、そこから湧いているお湯がこのプールに流れ込んでいるというような感じです。実際は温泉と言っても温度がちょっと低めなんですけれども、太陽で熱せられているので、お風呂自体はそんなに冷たくはありません」
●この温泉があるのは、どんな場所なんですか?
「マダガスカルの首都は、アンタナナリボっていうんですけども、長いので地元の人たちは“タナ”って省略しているんですね。そのアンタナナリボから車で4時間ぐらいの場所にあります。アンパラキーっていう村の外れにあるんですね。観光ガイドブックなんかには全く載っていませんので、基本的には地元の人たちが利用する温泉という感じです」
●そうなんですね。鈴木さんもこの山吹色の温泉に浸かったんですか?
「もちろんですね。やっぱり行って温泉があれば、どこでも浸かりますから(笑)、浸かりましたけれども、もともとこれは濃い炭酸泉なので、ちょっとシュワシュワした感じがあるんですね。

炭酸泉は、温度が高くなると炭酸が抜けちゃう、コーラを温めれば、炭酸が抜けちゃうのと一緒なんですけど、比較的に温度が低いままなんで、炭酸がシュワシュワする感じを楽しみながら浸かれる温泉でした」
●匂いとかってするんですか?
「この温泉は見た目に比べて、匂いとかはあまりなくて、舐めると塩味がちょっと強いっていう感じでしたね」
●マダガスカルでは温泉という意味の言葉が、集落の名前になっているということですけれども、それだけやっぱり地元のかたにとっては、温泉は身近なものっていうことなんですか?
「そうですね。さっきのフィジーと一緒で、温泉のある所に村ができて、その村の名前を温泉にしたっていうような感じです。
インターネットのマップでも拡大していくと、『ラヌマファナ』っていうんですけど、ラヌマファナっていう地名が山ほどあります。だけども地元の人たちは、さっきのフィジーの温泉と一緒で、ラヌマファナって言えば、ここを差すっていうことになりますから、ふたつ以上温泉がある場合は“何々ラヌマファナ”って名前が付くっていうような感じですかね」
(編集部注:海外の温泉は、状況にもよるそうですが、水着を着用して入ることも多いそうです。私たち日本人からすると、水着で温泉!?と、思うかも知れませんが、鈴木さんがおっしゃるには、慣れると気にならないそうですよ)
バオバブの並木、沈んでいく夕陽
※マダガスカルというと、「バオバブ」という、木を引っこ抜いて、根を上にして立てたような巨木が有名だと思います。鈴木さんは、バオバブの並木も見てきたんですか?
「このバオバブの並木道は、首都のアンタナナリボから車で15時間ぐらいかかるので、その日のうちには着けないぐらいの場所なんですね。道もものすごく悪くて、舗装されていない道が続くんですけれども、それでもやっぱり行った甲斐がありました。
子供の頃、図鑑でこのバオバブの木を見て、いつか行きたいな〜とは思っていたんですけど、私が子供の頃は海外に旅行する人は周りに誰もいなくて、自分がいつか行くなんていう発想がなかったんですね。
大人になって、いつか行ってみたいな〜と思ってはいたんですけども、なかなか温泉抜きで行くのも考えられなかったので、今回はマダガスカルの温泉地図を見つけたのと、アンパラキーの間欠泉の写真を見つけたのと、よし! 三点セットで、行ってみようということになりました」
●幼い頃からの夢だった、本にも書かれていましたよね。
「そうですね。実際着くと、夕焼けまで2時間ぐらいあるって言われたんですね。2時間もここにいるかな~と思ったんですけども、ちょっと角度を変えると全然違う姿が見えますし、やっぱり飽きないんですよね。

あっという間に2時間が経って、夕暮れになると何百人って人たちが集まってきて、バオバブを見上げて、なにか同じ空間を共有しているみたいな雰囲気でしたね。音ひとつない中で沈んでく夕陽がとても素晴らしくて、うちの奥さんはこの写真をスマホの待ち受けにしてくれています(笑)」
水上飛行機で行くカナダの温泉島
※次は北米編です。カナダの西海岸に、その名も「温泉島」、「ホットスプリング・アイランド」という無人島があるんですね。
「カナダの温泉をまとめた本が出ていて、その中で見つけた温泉です。ただやっぱり行き方がとても難しいので、どうしようかと思ったんですけど、ホットスプリング・アイランドっていう名前の島は、世界でもほかに見つけたことがないので、これは絶景温泉探検家を自称する以上、いつか行かなきゃいけないなと思って計画しました」
●どのあたりにあるんですか?
「バンクーバーがカナダの西海岸ではいちばん有名で、日本人にとっても馴染みの深い場所だと思います。ブリティッシュ・コロンビア州の、いちばん南側にバンクーバーがあるんですが、その北の端のほうにある、太平洋に浮かぶ島々ですね。これが『ハイダ・グワイ諸島』っていうんですけれども、そのうちのひとつの島が、この無人島のホットスプリング・アイランドです」

●その温泉島に行くのに水上飛行機をチャーターされたということですが、その行き方しかないっていうことですか?
「ほかにカヌーをやる人なら、カヌーで片道2泊ぐらいかけて漕いでいく、なんていうのもあるらしいんですけども、それができない人には、この水上飛行機が唯一の手段という感じですね」
●実際、温泉島はどんな島でした?
「端から端まで歩いて30〜40分ぐらいの小さな島なんですけれども、温泉が湧いているのは、そのうちの西南方向の一角だけなんですよね。
そこは岩場で水上飛行機が着水できないので、飛行機はその反対側に着水します。そうすると着水してから温泉のある所まで、島の中を30分ほど歩いていくんですね。これが昔のままの原生林みたいな・・・なんて言うんですかね・・・森林浴じゃないですけれども、歩いているだけで気持ちがよくなるような島でした。
先ほどハイダ・グワイ諸島って言いましたけど、ここは昔からハイダ族っていう先住民のかたたちの島で、水上飛行機の会社のかたが、気を利かせて、ハイダ族の女性を案内人として一緒に同行させてくれたので、いろいろ説明をしてくれたり、写真のモデルになってくれたりして助かりました」
●島には温泉は多いんですか?
「本によると源泉は26箇所って書いてあるんですけども、実際に入浴できるような露天風呂、岩場の露天風呂は10箇所ほどありました」
●その写真をご用意いただいているんですけど、海が見える温泉! っていうことですよね。
「そうですね。カナダのその温泉本の中でも、作者が“北米でいちばん美しい露天風呂”と書いているぐらい、まさに絶景のオーシャンビュー温泉でしたね」

●本当にオーシャンビュー温泉っていう感じですね。
「3冊目の新刊の口絵にも載っていますから、ぜひ見てください!」
●この露天風呂の入り心地はいかがでしたか?
「これがまさに適温なんですよね。40度よりちょっとぬるいぐらいなので、日本で入る温泉に比べると、ぬるいと感じるかもしれませんけど、長い時間のんびりと入るには絶好っていうか、体温よりちょっと高いぐらいの温度ですね。
露天風呂によって塩味の濃さが変わったりするので、入り比べるのもちょっと面白いっていう感じでした」
●目の前には海が見えるわけですよね。
「この時も、予約した時に“ちょっとでも天気が悪いと、水上飛行機は飛べない”って言われたんですよね。だからその場合には飛べないってことになるので、“支払いは現地でいいよ”って言われたんですよ。事前支払いは要らないと・・・。
飛べないことが多いんだって言われたんですけど、たまたまこの日は風もなく絶好の天気でした。私はよく“今回も温泉の神様が私を守ってくれた”と言っているんですけど、まさにそんな天気でした」
(編集部注:水上飛行機をチャーターというと、いったいいくらかかるんだろうと思いますよね。鈴木さんにお聞きしたら、現地では移動手段として水上飛行機があるので、複数の会社が運行していて、競合になるので、チャーター代もまちまち。鈴木さんは当時8万円ほどでチャーターしたそうですが、今なら円安なので、倍ぐらいはかかるかも知れないとおっしゃっていました)
源泉掛け流しが当たり前!?
※この本で紹介してあるローカルな温泉は、掘削して温泉を掘り当てたものではないんですよね?
「掘削するっていうのはものすごくお金がかかりますし、またたとえばどこかで湧いている温泉をホテルの浴場まで引っ張ってくるのもお金がかかりますし、温度を保つために、お湯を沸かすっていうのもお金がかかります。
今回の本で紹介したような温泉は、みんなその場で湧いている温泉に、その場で入っているというのが大半ですので、いわゆる“源泉掛け流し”って言葉は、海外のローカル温泉に行ったら当たり前っていうか、そうじゃない温泉はないっていうような感じですね」
●日本では温泉はお風呂、つまり入浴するものと思っていますけれども、海外では利用の仕方がほかにもあったりするんですか?
「そうですね。本の中でも述べているんですけど、マダガスカルのある村なんかは、そこにまさに温泉が湧いているから人々が集まってきて、村になったっていう感じです。
そこは温泉が湧いている場所が3区画ぐらいに別れていて、その湧き出し口の所は料理をしたり、お湯を汲んだり、水を汲むための場所。ちょっと離れた所は体を洗う場所。それでちょっと離れると洗濯する場所っていう感じで、お湯の綺麗さに応じて作業が変わっているという感じですね。
その村は周りの村に比べて、丁度を訪ねた時期が日本でいう5月6月に相当する時期だったんですけど、ほかの村よりも稲の生育がすごく良くて、青々としていたなんていう感じもありますので、あらゆることに温泉が使われているという感じです」
●入浴だけじゃないんですね?
「フィジーでも、ものすごく山奥、さっきお話した川を車で越えていくような村に温泉があったんですけども、そこでその温泉はココナッツを乾燥させるのに使っていたんですね。

ココナッツって中身はミルクとして使うんですけども、殻の内側の部分を乾燥させると肥料になるらしくて、それが産業になっているらしいんですよ。それでその村に行くと温泉の熱で乾燥させているっていう感じなので、とてもエコなシステムなんですよね。
ところがそのフィジーの都会近くにくると、やっぱり油を使ってココナッツを乾燥させているので、ものすごく煙も出ているし、作業している人もつらそうなんですよね。だから便利な場所でそういうつらい作業をするよりも、僻地だけれどもエコな環境でできるっていうのを選んだ人たちが、その村に住み着いているという感じでした」

(編集部注:鈴木さんの本には第2部に「温泉旅の極意」が載っています。これは、温泉でなくても、自分なりのテーマで旅をする時にとても参考になるノウハウが満載なんです。ちょっとだけここでご紹介すると・・・
ネットで探しても情報が得られない場合は現地の人に聞く。それも若い人よりも、地元に長く住んでいる年配のかたがいいそうです。
またネットの場合、翻訳機能を使って、その国の言葉で検索し、お目当ての場所の資料は印刷して持っていく。自分では読めなくても、その国の言葉で書いてある資料を見せると、現地の人は読めるので、目的地に早くたどり着けるなどなど、参考になる旅の極意がたくさん載っていますので、ぜひ鈴木さんの本をチェックしてください)
温泉伝説、調査中!
※鈴木さんは、温泉にまつわる伝説も調査中だそうですね。どんな伝説があるんですか?
「私が最初に温泉の伝説が気になったのは、アルメニアっていう国がコーカサス地方にあるんですが、ある温泉に行ったら、シカのマークがミネラルウォーター(のラベル)に付いていて、町中にもシカがシンボルとして描かれているんですね。

それで(町の人に)聞いてみると、この村の温泉は、傷ついているシカが温泉に浸かっているのを人が見つけて、そのシカの傷が治っていくのを見て、温泉を発見したというようなことで、日本各地にある『鹿の湯』って名乗るような温泉と全く同じ伝説が、これだけ距離の離れたヨーロッパにもあるのか、というので、気になったというのがきっかけです。
それから調べてみると、非常に離れた場所でありながら、日本と全く同じような伝説もあれば、全然異なるような文脈の伝説もあって、伝説について調べ始めると、人々と温泉の関わりの原点を知るみたいな面白さがありました。
というのは、昔の人にとって大地からお湯が湧いているというのは、ものすごく不思議な現象だし、何か神様の力なんじゃないかと思うようなところがあるわけですよね。だからそういう意味で、それを昔の人がどうやって解釈したのかっていうのがとても面白くて、温泉の発見伝説っていうのを調べています」
●温泉は地球からの贈り物かもしれませんね。
「そうですね。さっきの伝説の話でもそうですけれども、昔の人が不思議に思ったのは、まさにそこに人を助けてくれるような話があるわけです。
ニュージーランドの先住民でマオリ族っていうかたがたがいますけども、マオリ族のかたたちは、まさにニュージーランドに湧く温泉の所に住み着いて、文化を発展させたっていうようなことです。今でも高い地熱の場所に、肉とか野菜を埋めて蒸して食べる料理がマオリ族の伝統料理として知られていて、観光客もそれを楽しむことができます。
蒸し料理は日本でもありますし、世界各地にあるので、温泉の地熱を利用しておいしく食べようと考えた人たちは、世界中にいたっていうことなんだと思います」
●今年2026年の温泉旅は、どこに行くか決まっているんですか?
「私は1年中ここに行ってみたい! っていう温泉旅行を妄想しているんですけど、その中でやっぱりヨーロッパに温泉発見伝説に関するちょっと興味深い温泉が多いので今調べています。
1回の旅でいけるのは1週間としたときに、その1週間でどこを回れば効率的に回れるかみたいなのを、パズルのように解いていくんですけど、まさにそういうパズルのような作業をやっている最中です」
●では最後に温泉の神様がいるとしたら、どんなことをお願いしますか?
「やっぱり温泉旅を本で紹介したいって言ったときに、重要なのは天気なんですよね。同じ温泉でも土砂降りだったら全く絵になりません。
さっきお話ししたアンパラキーの間欠泉でも土砂降りだったら、全然映えない写真になってしまいます。そういう意味では晴れている状況で旅行したい。さっきの温泉島もめったにないいい天気だったと言われたように、温泉の神様にいちばんお願いしたいのは、訪ねる温泉で雨が降らないで欲しい! ということだと思います」
INFORMATION
鈴木さんの新しい本をぜひ読んでください。ヨーロッパを除く各大陸から、とびきりの8つの温泉旅が載っています。その名の通り、私たちが知らない辺境秘境の温泉、そしてそこにたどり着くまでの、探検のような旅の逸話が満載ですよ。また、日本と海外の温泉文化に関する興味深いコラムや、旅好きにはとても参考になる温泉旅の極意も必見です。
産業編集センターの「わたしの旅ブックス」シリーズの一冊として絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎産業編集センター:https://book.shc.co.jp/22259
2026/2/1 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、株式会社「やまとわ」の取締役で、森林ディレクターの「奥田悠史(おくだ・ゆうじ)」さんです。
長野県伊那市、通称「伊那谷(いなだに)」に拠点を置く「やまとわ」は、森と暮らしをつなぐような、いろいろ事業を展開している会社で、奥田さんは創業メンバーのおひとりです。
1988年、三重県生まれの奥田さんは子供の頃、長野の山の風景に圧倒され、いつかは長野に住みたいと思い、信州大学に進学。農学部・森林科学科で、年輪の研究を行ない、気候の変化が木の成長に影響を与え、年輪の幅が変わることに着目し、歴史上の出来事との関係性などを調べていたそうです。
「やまとわ」の創業は2016年。創業メンバーは家具職人3人と奥田さんの、合わせて4人。現在は樹木医やクライマー、元林野庁や製材会社のスタッフなどなど多彩な顔ぶれ20数人が集う会社となっています。
きょうはそんな奥田さんに「森をつくる、暮らしをつくる」をテーマにした、多岐にわたる活動や今の仕事につながるバックパッカー世界一周の旅で得た体験のほか、未来の森をデザインする大切さなどうかがいます。
☆写真協力:やまとわ

森を作る暮らし
※なぜ会社をやろうと思ったんですか?
「森の課題と言いますか、日本の森が荒れているみたいなことに大変関心がありました。僕はその時、デザイン事務所をやっていたんですけど、デザイナー(の仕事)だけじゃなくて、森のことに直接触れていきたいなって思っていた時に、そういう思いを持った家具職人の中村さんと出会って、一緒にやっていこうというような感じで会社を立ち上げました」
●「やまとわ」の理念は、どういうものがあるんですか?
「『森をつくる 暮らしをつくる』というのが、僕らの理念なんですね。森と暮らしが離れてしまっている現在において、森が荒れているから手入れをしていこうよっていう話をしても、なかなか響かないと思うんです。
森があるから嬉しい暮らしって、どんな暮らしなんだろうかっていうことを、改めて現代の中で問い直していくのがやりたいことというか、そうしないと森が良くなんないんじゃないかなって思って、森を作る暮らしを探求するようなことを理念にしています」
●具体的には、どんな事業を行なっていらっしゃるんですか?
「すごく多岐に渡っていまして、僕らの会社(の事業)はめちゃくちゃわかりづらいんです。夏は農業をして冬は林業をするっていう農林業のチームから、その地域の山の木を使った物づくりですとか、薪ストーブの販売みたいなこともやっています。
ほかにも森の中で遊んだり学んだりするような企画ですとか、あとは行政のかたや、企業さんと一緒に森のデザインをし直すと言いますか、森がどうやったらよくなるのかなみたいなことを一緒に考えるような伴走事業みたいなこともやっていたりします」
●様々なことをやっていらっしゃるんですね。
「そうなんです。幅広にいろいろやらないと、森のことってわかんないなっていう中で、とりあえず思いつくことをいろいろやっているんですけど(笑)」

「森林ディレクター」とは
※奥田さんが「森林ディレクター」という肩書きで仕事をするようになったのは、「やまとわ」を創業してからですか?
「そうです、そうです」
●自分で考えた肩書きなんですか?
「そうなんですよ。大学は林学と言いますか、森林科学を専攻していたんですけど、森のことが幅広すぎて、自分で何ができるかわかんないっていう状況の中で、一度その情報を伝えるっていうことで、編集者とかデザイナーになったんですね。
そのあとに山に実際に関わるようになってきて・・・で、僕がやってきた編集とかデザインと、森林の管理とか、そういうものを組み合わせたことを仕事にできる、今ならできるかもしれないということで、アートディレクターっていう肩書きもあると思うんですけど、それの森林ヴァージョンみたいな形で、森林ディレクターと自分で名付けて活動しています」
●「やまとわ」が手がける事業のディレクションをするのが、まさに奥田さんの役割っていうことですか?
「そうですね。そんな感じです」
●ディレクションをする時に心掛けていることってありますか?
「やっぱりアート・ディレクターだと、クライアントさんがわかりやすく、企業さんだったりするんですけど、森林ディレクターの場合は、もちろん社会ですとか企業さん、暮らしている人たち、あと森林とか自然そのものもいい状態になるっていう、いろんな目線で関係性を見ながら、企画とか商品開発をしていくことが重要なのかなと思っているので、その辺をすごく大事にしていますね」
バックパッカー世界一周の旅で得た体験
※奥田さんは信州大学在学中に、バックパッカーとして世界一周の旅に出たそうですね。なぜ旅に出ようと思ったんですか?
「世界一周って行きたくないですか? っていう感じが、僕の中にあったんですけど(笑)、行けるなら行きたい、世界を巡るみたいなことがあって・・・で、大学生のうちにぜひ行きたいなっていうことを、入学と同時に決断しまして、世界一周の準備を大学に入ってから始めたみたいな感じなんです。世界中を訪ねて、いろんな景色を見たいっていうのは大きかったですね」
●休学して旅に出られたんですか?
「そうです、そうです」
●何か国、行ったんですか?
「30か国ぐらいです。世界を一周するいろんな人たちがいるので、あまり多くはないんですけど、1年だとそれぐらいなのかなっていう感じです」
●特に印象に残っている場所はありますか?
「ふたつ挙げると、ひとつはスイスのマッターホルンの雪山なんです。山岳文化みたいなものにとても感動して・・・自然を見て涙が出るような体験は、本当にそのスイスの山並みだったんですね。
もうひとつはペルーのクスコです。そちらも山岳地域なんですが(苦笑)、その地域の土を使って家を建てることで風景が作られている。そこでインディヘナのお母さんたちの民族衣装が普段着のように使われていて、文化とかその土地の自然、インディヘナのかたの服も、その土地の草木染めをしてることが多くて、そこにいちばん感動したっていうのが僕の原体験ではすごくあります。
やっぱりそういうものをこの日本でも、地域の資源を活かした感動を作りたいなっていう、体験としてはあります」
自然資本とデザイン
※奥田さんは先頃『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』という本を出されました。短い時間では、とても本全体の内容をご紹介できませんので、奥田さんから、この本の特徴などをお話しいただきたいのですが・・・
やはりタイトルの「自然資本とデザイン」に著者の想いが込められているんですよね?

「そうですね。自然資本っていうのを・・・(タイトルに)“資本”って付いているのでちょっと固く感じるんですけど、どちらかというと生きていくための土台としてあるものが自然資本だと思っています。それをどのようにケアしながら共生、共存していくのかを考えたような内容になっています。
そもそもやっぱり僕が大学時代に森林とか自然っていうものに対して、何か自分がアクションしたいって考えた時に、あまりにも大きすぎる世界っていうか、大きすぎる対象の中で、何をやっていくかわかんないな~みたいなことをすごく感じて・・・ある種の絶望みたいなものを感じたんですけど、それに対してわからない問題をどうやって紐解いていくのかみたいなことも、ひとつのテーマとして考えていました。
小さなアクションでもすごく意味、意義があるんじゃないかってことと、それを紐解いていくためには課題を、力いっぱい引っ張るというよりは、どうやって緩めていくのかみたいなことをデザインの視点から考えているような本になりますね。
いろんなことがあると思うんですけど、どんな状態になっていたらいいのかっていうことを改めて捉え直して、そこに向かうために何をすべきかっていうのを考える枠組みみたいなのが、デザインなのかなと僕は思っております」
●自然資本を活かしながらデザインしていくことで、いちばん心掛けていることってありますか?
「やっぱりその土地の良さとか面白さみたいなことは、自然由来なことがすごく多いと思うんですよね。自然と人の営みの接地面に文化が生まれるみたいなことで、例えば、静岡であればお茶の産地になっていたりとか、そういうような土地が持つ力と、そこで人が何かをやっているってことが合わさった時に、それが価値に変わるという気もするんですけどね。
なので、その場所に何がどんな状態であるのかっていうことと、そこにどんな人たちがいるのかってことが、どちらも大事だと思っているんです。
僕は長野県でやっていますけども、長野の伊那谷であれば、こういう自然資本、自然資源がいっぱいあって、そこにこういう人たちがいるんであれば、こんなつなぎ方・・・こんな状態になったら自然も活かされるし、自分たちの暮らしも豊かになるんじゃないか、みたいなことを考えながらデザインしているような、そんな流れになりますかね」
(編集部注:「やまとわ」が取り組んでいる、森と暮らしをつなぐような事業は、ひとつのモデルケースになるので、森林の事業などで課題に直面している地方自治体や地域のかたなどが、相談や見学にやって来ることも多いそうです。奥田さんがおっしゃるには、失敗も含めて包み隠さず伝え、共有してから、一緒に事業設計をすることもあるそうです)

森にはヴィジョンが必要!?
※自分たちが住んでいる地域の森をどうしていきたいのか、いわゆるヴィジョンが必要だと思いますが、実際はそういうことを考える機会はないんでしょうか?
「僕らはちょこちょこやるんですけど、日本の森においてはヴジョンのある山は、実際ほとんどないです」
●それってすごくもったいないことですよね?
「そうですね。なので(山の)所有者さんに聞いても森林組合さんとか事業者さんに、“この森はどういうヴィジョンで管理をしていきますか”って聞いても、ほとんどないっていうのが現状です。それを作り直していくのも大事なのかなって思っていますね」
●「やまとわ」では「SATOYAMA CONCEPT MAPs」を作っています。これはどういうものなんでしょうか?
「これは普通の山の、例えばマップって考えると、現状どういう山かがマップに載っていると思うんですけど、SATOYAMA CONCEPT MAPsは、その山の15年とか20年後どうなっていてほしいかっていうことを、いろんなリサーチをした上で作っていくものなんですね。
なので、50ヘクタールとか100ヘクタール、面積で言うとわかりづらいんですけど、それなりの規模の山を林業だけじゃなく、いろんな手法を用いて持続していくような山にするにはどうしたらいいんだろうっていうのを問いにしながら、この山のヴィジョンを作って、それをイラストにして関係者のかたがたと共有しながら、“ここにいくためには、こんなふうにステップを踏んでいかないといけませんね“みたいなことを話すためのマップを作るようなサービスとか仕事をしています」
●地域のかたがたが共有できるっていうことなんですね。
「そうですね。所有者さんもそうですし、地域のかたにももちろん共有していくっていうようなことをやっています」
●今後どういう森にしていきたいかっていうのを考える時にすごく参考になりそうですね。
「そうですね。ワクワクしてもらえるといいなと思うんですけど、確かにこうなったらいいよね! みたいなことが、いろんな人と話せると面白いのかと思ったりはしています」
里山は、日本の大きな可能性
※日々、森や樹木に向き合って、どんなことを感じますか?
「やっぱり僕、森はすごく大好きではあるんですけど、その森にいると心地よかったり、気持ちよかったりする山もたくさんある一方で、暗く不安になる山とか怖いなと思うことってたくさんあるんですよね。
そういう率直な感覚はすごく大事なのかなと思っています。この山は不安だな~とか怖いな~みたいなことを思いながら、そこをより良い状態といいますか、心地いい状態とか、いい森にしていくことをしていきたいなって日々考えているんで、いろんな形で森の状態を肌で感じている、そんなところですかね」
●森で働いていって、どんな時にいちばん喜びを感じますか?
「森そのものが変化していくこともすごく嬉しいんですけど、例えば薄暗くなった森に陽の光が入って、そこに下層植生、次の世代の木々が生えてくるみたいな風景はすごく嬉しいですね。
それだけじゃなくて、一緒に携わってくださっている山主さんですとか、関係者のかたがたが喜んでくださるような瞬間もやっぱり僕としては嬉しいですね。
人と森の共存みたいなことを考えると、森が喜んでいるのを人が喜んでいるっていう状態が、簡単に作れるわけじゃないんですけど、作れそうだなとか、そういう風景がちょっと見えるなっていう時がいちばん僕がワクワクするので、やっぱり森も人もすごく大事だなと思います」
●では最後に森林ディレクターとして、未来に向けた日本の森のコンセプト・マップを作るとしたら、どんなデザインになりますか?
「日本は本当に面白いんですよね。生態系も自然も本当に豊かな国なんですけど、僕らがそれをすごく忘れがちになってしまう中で、特にSATOYAMA CONCEPT MAPsっていう名前つけていますけど、里山とか里が日本のすごく大きな可能性だなと思っています。
人と自然の、それこそ共有とか響き合いみたいなことによって生まれている風景とか、そこから生まれた文化や価値みたいなものが、すごくたくさんあるんですけど、今それがすごくなくなってきているなっていう感覚を持っているので、改めて日本の里山っていうものを再提案・再定義しながら、林業の森と里的なものをちゃんと描き直していくことができたらいいなと思っています」
INFORMATION
『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』
奥田さんの新しい本には、奥田さんが「やまとわ」で取り組んでいる、多岐にわたる事業や、その思いが綴られた一冊です。経営やビジネスのヒントにもなると思いますよ。宇宙飛行士・土井隆雄さんとの興味深い対談も掲載。ぜひ読んでください。
築地書館から絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎築地書館:https://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1699-0.html
株式会社「やまとわ」の事業について詳しくは、ぜひオフィシャルサイトを見てください。
◎やまとわ:https://yamatowa.co.jp
2026/1/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第27弾! 今回は、斬新なアイデアで生まれた「紙」と「鉛筆」をクローズアップします。
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、「質の高い教育をみんなに」 「つくる責任 つかう責任」そして「陸の豊かさも守ろう」。
お迎えするのは、廃棄される野菜などを材料に「フードペーパー」を開発した
五十嵐製紙の伝統工芸士「五十嵐匡美(いがらし・まさみ)」さん、
そして「芽が出る鉛筆」を輸入販売している「レトロバンク」の代表取締役「中村真衣子(まいこ)」さんです。
サステナブルで環境教育にもつながる「紙」と「鉛筆」、いったいどんなプロダクツなのか、じっくりご紹介します。
「フードペーパー」の始まりは、夏休みの自由研究!?
☆写真協力:五十嵐製紙

※前半は、廃棄される野菜などを材料に製作した「フードペーパー」をご紹介します。
開発したのは、福井県越前市にある「五十嵐製紙」の伝統工芸士「五十嵐匡美」さんです。1919年、大正8年創業の「五十嵐製紙」は、およそ1500年の歴史がある「越前和紙」の伝統を受け継ぐ工房です。
越前和紙の原料はコウゾ、ミツマタ、ガンピといった木の皮ですが、特徴は、漉(す)けないものはないというほど、多種多様な技法があること。実はこの特徴こそ「フードペーパー」誕生の要因とも言えます。
お話をうかがう五十嵐さんは「五十嵐製紙」の四代目。国家資格である「伝統工芸士」を取得したのは、多くのかたに和紙の素晴らしさを伝えると同時に次の世代を育てるためでもあったそうです。
●まずは「フードペーパー」とはどんな紙なのか、教えてください。
「このフードペーパーは廃棄されるはずのお野菜とか果物を、紙に漉(す)き込んだ和紙なんですけど、これを始めたきっかけが和紙の原材料不足です。
コウゾ、ミツマタ、ガンピっていう木が年々減少してきているので、それをなんとかしたくて、廃棄されるはずのものを、足りない原料の代わりに入れ込んで、フードペーパーという名前で作らせてもらっています」
●どういう経緯でフードペーパーが誕生したんですか?
「実は、うちの息子、次男が夏休みの宿題の自由研究で、小学校4年生から中学校2年生まで、身近な食べ物とか植物から紙を作る研究をしたんです。それを私が整理してブランド化したのがこのフードペーパーです」
●息子さんは自分から進んで、その研究をされていたんですか?
「そうなんですよ。いきなり4年生の夏休みに“自由研究で紙を漉こうと思うから道具を貸して“って言われて・・・。どんな紙ができるかも私はイマイチよくわかってなくて、簡易的な紙漉きの、ちっちゃい道具のセットを渡して、やり方とかを軽く教えたら、うちの子はそのあたりの食べ物とかから紙を作り出して、そのまま研究をしていました(笑)」

●お母さんとしては、家業である紙に目を向けてくれたのは、すごく嬉しかったんじゃないですか?
「それはそうですね。やっぱり全然違うものよりかは、私たちがやっている仕事につながるようなものの、実験をしてきたっていうことでとても嬉しかったです」
●通常の和紙作りとの違いっていうと、どんなところなんですか?
「ほぼ変わりなく、紙漉きの工程も普段の紙の原料の代わりに廃棄されるはずのものを足すっていう感じで、すべてがほぼほぼ同じ工程で(フードペーパーは)作られていきます」
●最初からスムーズにいったんですか?
「そうなんです! それが意外とスムーズにいって・・・でもやっぱりそれは、うちの子の理科研究のノートっていうか、まとめたものがあったから、私はそれを教科書代わりにして(笑)、それを読み込んでフードペーパーを作ったので、スムーズにいきました」

息子には内緒でブランド化!?
※実際に製作する過程で、息子さんといろいろアイデアを出し合ったりしたんですか?
「実は、フードペーパーのブランドを立ち上げる時に、息子には一切お話ししてなかったんです。というのも高校受験の時で、余計な情報を入れないでおこうと思い、販売するまで息子には一切黙って進めていたので、理科研究のノートを教科書代わりにこっそり頑張っていました(笑)」
●そうだったんですね。息子さんにはいつの段階でお伝えしたんですか?
「合格が決まってすぐ伝えました。そしたらびっくりして、“ええぇ~”ってなって・・・でもすごく嬉しそうでした」
●フードペーパーとして完成するまでには、どれくらいの日数がかかったんですか?
「それが実は意外と早くて、発案してから発表するまで3~4ヶ月で、すぐ展示会に出しちゃいました」
●今はおもにどんなものを材料にフードペーパーを作っているんですか?
「今はおもに福井県内から出されるもので、一般的な玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、ごぼう、お茶とかそういったものを使っています」
●材料によってやっぱり風合いの違いとかもあるんですか?
「そうなんですよ。肌触りにしても、全然その食べ物の風合いがそのまま出ているので、じゃがいもでしたら、ふんわりと、まるで蒸かし芋のようにホクホクとした手触り、玉ねぎでしたら、ちょっとシャリッとした風合いになっていきます」

●面白いですね。フードペーパーは和紙ではなくて、新しいジャンルの紙っていう感じですよね?
「そうですね。ある意味、和紙と洋紙の間って言いますか、和紙ともちょっと違う、新たなジャンルの和紙だと自分では思っています」
(編集部注:紙文具ブランド「フードペーパー」のラインナップは、メッセージカード12枚入り540円や、ノート500円などの文具から、サコッシュやフードストッカーのほか、有名デザイナーとのコラボレーションで誕生したトレイやくず入れもあるそうです。サコッシュなどの販売価格については、「五十嵐製紙」のオンラインストアをご覧ください。
https://foodpaper.jp/
ほかには現在、おしゃれなティッシュケースなどを製作中だとか。どんな仕上がりになるのか、楽しみですね)

※「フードペーパー」の今後の展開なんですけど、どんなことがあげられますか?
「いろんなフードロスももちろんなんですけど、最近はフードだけではなく、いろんなジャンルのものが(五十嵐製紙に)集まってまいります。
例えばデニムの、はきつぶしたものであったり、会社の制服、ベストであるとかユニフォーム・・・そういったものは今までは完全に廃棄されていたはずなんですけど、それを弊社で引き取って、粉砕はしてもらっていたんですけど、粉砕したものをその会社の名刺であったり、ショップカードであったり、包装紙であったりっていうものに生まれ変わらせている実績もあります。
最近は、フードペーパーとは言っているんですが、フードだけではなく洋服の繊維であったり、あとはハーブの抽出した絞りかすであったり、お花であったり、いろんな分野の廃棄されるはずのものから紙を作っています」
(編集部注:五十嵐製紙では現在、長男が和紙づくりの修行中。フードペーパーの発案者である次男は大学生活を満喫中だそうですが、大学が休みになると家業を手伝ってくれるそうですよ。
五十嵐さんとしては、息子さんたちに家業を継いで欲しいと思っているそうですがあとは子供たちの気持ち次第かな~とおっしゃっていました)
和紙は生活の一部、もっと身近に

※「越前和紙」の可能性は、まだまだあると思いますか?
「まだまだあると思っています! やれることもたくさんあるし、いろんな場面にもいろんな紙が作れると思うし、やりたいことがまだまだあるので、楽しい展開が待っていると思います」
●和紙作りの伝統工芸士として、一般のかたに伝えたいことって、どんなことですか?
「みなさん多分、和紙って聞くだけで、高級なものとか高いものっていうイメージがあると思うんです。
でも、昔から和紙って生活の一部として使われていたもので、家の中に障子があって、襖紙(ふすまがみ)があって、衝立(ついたて)があって・・・食事の時もお返しがあってとか、いろんな生活の場面で日常的に使われていたのが和紙なんですね。
今も高級っていうよりかは、私は日常使いができる、毎日の生活の中で、すぐそこに和紙があるような生活にしていっていただけたらなと思っています。もっと身近に気軽に気楽に和紙を使ってほしいです」
「芽が出る鉛筆」「木になる鉛筆」
☆写真協力:レトロバンク

※後半は「芽が出る鉛筆」を輸入販売している「レトロバンク」の代表取締役「中村真衣子」さんにご登場いただきます。
レトロバンクはおもにデンマークの文房具を扱っている会社で、代表的な商品は、70年以上の歴史がある「フローティングペン」。観光地などのショップでよく目にする、ペンを傾けると中の絵がゆっくり動く、あのフローティングペンを輸入販売。
現在はその事業を承継し、日本で生産しているメーカーであり、同じくデンマークの「芽が出る鉛筆」の輸入総代理店でもあるんです。

●改めて「芽が出る鉛筆」とはどんな鉛筆なのか、ご説明いただけますか。
「通常は消しゴムが付いているような部分に、緑色のカプセルが付いておりまして、その中にタネと、おがくずが入っています。
この鉛筆をどうやって使うかって言うと・・・普通、鉛筆って書いていくと、どんどん短くなってしまって、最終的には短くて書けないから捨ててしまうことにはなると思うんですね。
それをただ捨てるだけではなくて、このまま鉛筆の緑色の部分を土に植えていただくと植物に生まれ変わる! っていう仕組みを備えている鉛筆なので、捨てるだけではなくて、何か新たな命を誕生させることができる付加価値を備えた鉛筆になっております」
●見た目は本当に鉛筆なんですけれども、鉛筆のお尻の部分を土に挿しておくと、芽が出るっていうことなんですよね?
「そうですね。構造としては、この緑のカプセルのところが植物性のセルロースでできているんですね。で、土に挿していただいてお水をかけると、お薬のカプセルみたいな形で、土の中でカプセルだけ溶けて、中にタネとおがくずが入っているので、それが土の中に放出されて芽が出てくる仕組みになっています」

●どんなタネが仕込まれているんですか?
「いろんな種類があるんですけれども、おもにハーブとお花とお野菜を日本では採用しています。
ホームページ上にも載っているんですけれども、ハーブだとバジルやセイジ、タイム、あとはコリアンダーですとか、そういう身近な家庭で使えるようなハーブがございます。

ほかにはお花がございまして、ヒマワリだったり、カーネーション、デイジー、忘れな草など、楽しんでいただけるお花も入っております。
あとは『木になる鉛筆』っていうのもあります。オウシュウトウヒっていう木があるんですけれども、そのトウヒのタネが入っている鉛筆です。トウヒって木ですから、鉛筆が木材からまた木材に生まれ変わるっていうことになりますね。

ほかにはキュウリ、あとイタリアンパセリとルッコラ、こういう身近なお野菜のものもございます。最近はイチゴも入ってまいりました」
●いろんな種類があるんですね。鉛筆の材料にはどんなこだわりがあるんですか?
「この鉛筆の木材のところは、そのまま無垢な木材を使用しているんですね。木材の認証制度がありまして、木材を適切に管理して育てて、適切な量を伐採して使っていくっていう制度がございまして、そちらで認証された木材を使用しております。
素材についてはいろんな木の種類、リンデンとかホワイトウッドとかバスウッドとか、いろいろあるんですけれども、その時に適切な木材を使用しているので、鉛筆によって色が違ったりとか節が出ていたりとか、そういう味のある木材を使用しています」
(編集部注:「芽が出る鉛筆」はいったい誰が思いついたのか、気になりますよね。
考案したのは、アメリカの名門「マサチューセッツ工科大学」MITの学生さん3人。2012年に、授業の一環として「未来のオフィスに必要な筆記具」としてプラスティックを使っていない鉛筆に注目、ゴミにならず植物に生まれ変わる、植えられる鉛筆を発明したのが始まり。
そのアイデアをデンマークにあるスプラウト社の創業者が気に入り、商品化。現在は80カ国以上で販売されているそうです)
芽が出ると新鮮な感動、子供たちの体験の材料に
※実は中村さんが「芽が出る鉛筆」を知ったのはコロナ禍の時で、デンマークの文房具を扱っていたことから、その存在を知り、早速、取り寄せたそうです。初めて手にした時、こんなことを感じたそうですよ。
「これは一体何だろう? と思いまして、で、どうやら芽が出るらしいと・・・コロナ禍っていうこともあって、おうち時間がすごく長かったじゃないですか。あの時、試しに自宅の庭で子供と一緒に植えてみたんですね。そしたら “おっ、なんか出たぞ!”みたいな感じで(笑)、“鉛筆を使ったら芽が出てきた!”みたいな、新鮮な感動を受けました。

意外とこういうのがおうちにあったら、楽しいかもしれないっていうので、そのあとから植物に触れたりとか育てたりすることも、楽しいかもしれない! って、新たな気づきがあったりもしたんですね(笑)。そういうことで鉛筆を知って、これが日本にあったらいいんじゃないかなってことで輸入を決めました」
●初めて育てたのは、どんなタネだったんですか?
「初めては、いちばん簡単なバジルという種子で、子供うけは全くよくないですけれど(笑)、お母さんうけとか女性うけにはいいハーブで、すごく使いやすくて、やりやすいんですよね。
バジルの(タネの)鉛筆を使ったあとに植えて、大体、芽は1週間ぐらいで出てくるんですよ。ちっちゃく可愛い芽がポンポンって出てきて、それがどんどん育って、1ヵ月ぐらいで15センチぐらいになって、“これは見たことがある葉っぱだぞ!“みたいな感じで育ってくるんですよね(笑)。
それでお料理をしてみたら、”これはバジルだ!“みたいに食べられるものも楽しいんですけれど、ほかにヒマワリがすごく衝撃的だったんです。

ヒマワリは直に地植えにすると、2メートル越えぐらいまで育つんですよ。子供たちもすごく喜ぶお花でタネを収穫ができるので、お花が咲いたあとにどんなふうにタネができていくのか、お花を収穫して“1本の鉛筆から何個タネが取れたね!“みたいな、そういうアプローチもできて、楽しみながらやることができました」
●「芽が出る鉛筆」ってエコロジーとかサステナブルな意識を育てる意味でも、教育の現場で使っていただきたいですよね?
「そうですね。実際、教育の現場でも結構採用されているところがあります。楽しみながらエコを学んだり、自分のことにできる体験の材料として採用されていることが多いです。
エコだけじゃなくて、そのエコの先に植物が育っていく様子とか、そういうところにも注目してもらったり、エコと結びついた実際の体験とリンクして、子供たちにも、表面上だけじゃなくて、自分の体験にして吸収してもらいたいっていう思いが強いんじゃないかなと思います」
(編集部注:「芽が出る鉛筆」のラインナップをいくつかご紹介しておくと1本入りで430円、4本入りで1,560円。色鉛筆1本が入った3本入りのおめでとうセットは1200円、いずれもどのタネがいいか選べますよ。入学のお祝いにいかがでしょうか。
お買い求めは「レトロバンク」のオンラインショップ
https://www.retrobank.co.jp/shop-sproutpencil
またはAmazonでも取り扱っています)

※「芽が出る鉛筆」を手にするかたが、どんなことを感じ取ってくれたら嬉しいですか?
「単純に楽しんでいただきたいっていうのはもちろんなんですけれども、この鉛筆を使っていただくことで、エコとかサステナブルって、何をしていいのかわからないな~っていう、一歩踏み出せないところに、自分でも何かできるんじゃないかなみたいなことで、エコとかサステナブルを少し身近に考えていただいて・・・。
その鉛筆で世界は救うことはできないんですけれども、この鉛筆が何かのきっかけになって、そういう意識とか気持ちの変化につながっていってくれたらいいなと思っています」
INFORMATION
ぜひ「フードペーパー」と「芽が出る鉛筆」にご注目ください。できれば、実際に使っていただければと思います。いずれも子供たちの教育の現場で、環境や自然について考えるきっかけになるアイテムですし、企業や自治体のノベルティとして、キャンペーンやイベントなどでも使える、とてもいいプロダクツだと思います。ぜひぜひご検討ください。
詳しくは「五十嵐製紙」、そして「レトロバンク」のオフィシャルサイトをご覧ください。サイトのショップからご購入できます。
◎「五十嵐製紙」:https://wagamiya.com
◎「五十嵐製紙」オンラインストア:https://wagamiya.com/shop/
◎「レトロバンク」:https://www.retrobank.co.jp
◎「レトロバンク」ウェブショップ:https://www.retrobank.co.jp/shop












