2023/4/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、海洋冒険家の「白石康次郎」さんです。
世界一過酷なヨットレースと言われている「ヴァンデ・グローブ」は、第1回大会は1989年から1990年にかけて行なわれ、その後、4年に一回開催されています。スタートとゴールはフランスのレ・サーブル・ドロンヌという海辺の町。コースは南半球を一周、およそ4万8千キロ! 速いヨットで80日間ほどで走破!
世界一過酷と言われる由縁は、単独・無寄港・無補給! つまり、たったひとりで、どこの港にも寄らず、補給も受けないという条件のもとで実施されるからなんです。
そんなヨットレースの前回大会に参戦し、見事、アジア人として初めて完走したのが、海洋冒険家の白石康次郎さん。白石さんは、これまでにヨットによる世界一周をなんと4回も成し遂げている、日本が世界に誇るトップセーラーなんです。
そんな白石さんが来年、再び「DMG MORIグローバル・ワン」のスキッパーとして「ヴァンデ・グローブ」に挑戦します。ということで、きょうは「白石」さんをお迎えし、再挑戦する熱い思いに迫ります。
☆写真協力:DMG MORI SAILING TEAM

水平線の向こうに
●今週のゲストは海洋冒険家、白石康次郎さんです。初めまして、小尾渚沙と申します。3年ほど前からこの番組「ザ・フリントストーン」を担当しております。よろしくお願いいたします。
最初から私事で恐縮なんですけれども、白石さんはTUBEの前田亘輝さんとも親しいんですよね?
「そうなんですよ。兄貴と呼ばせていただいて、何曲かヨットの歌を作っていただいているんですよ」
●実は私もゆかりがあって、私が生まれた当時、父がレコード会社に勤めていて、担当していたのがTUBEだったんですね。
「あ、そうなんですか!?」
●そうなんです! で、女の子が生まれたら「渚沙」にしようって、前田さんが名付けてくださったんです。
「そうなの! ソニー(ミュージック)の!?」
●そうです、そうです!
「そうでしたか! それで渚沙なんですね。名付け親なんですね(笑)。それは素晴らしいね!」
●男の子だったら、忠犬ハチ公の「忠」に武士の「武」で、「忠武(ちゅうぶ)」だったんです(笑)。
「へぇ〜、女の子でよかったんじゃないんでしょうかね〜(苦笑)」
●(女の子で)よかったです(苦笑)
「今度、前田さんに会った時にちょっと言おうかな」
●ぜひぜひ! 白石さんにこの番組に初めてご出演いただいたのが、1994年の10月だとスタッフから聞いているんですけれども、もう30年近くこの番組にお付き合いいただいているっていうことですよね。
「いや〜、こちらこそ! 最初に世界一周したあとですね。つっぱっている頃だったので、本当にお声がけいただいて、ザ・フリントストーンさんとは、なんていうかな、成功も失敗も共に歩んできましたね」
●嬉しいです。94年に世界一周の最年少記録を樹立されたんですよね。
「そう、最初の世界一周でしたね」
●この世界一周は、レースというわけではないんですよね?
「そうです。僕、世界一周したいっていうのは、子供の頃からの夢で、やるんだったらひとりで、つっぱっている頃なんでね(笑)。世界一周してやろうということで、やったのが最初でしたね。で、2回失敗してね。もう、コテンパンにやられて、3回目でやっと成功してね」
●何度も聞かれていると思うんですけど、そもそもどうしてひとりで、ヨットで世界一周しようって思われたんですか?
「これは好奇心です。好奇心です、はっきり言って。僕、子供の頃、鎌倉で育ったんですよ。海岸に立った時に、みんな海を見て何を思うんだろうなって・・・。
僕は水平線の彼方に思いを馳せて、当時、外国旅行なんかまだまだできない時代で、とにかく好奇心だね! この水平線の向こうには、何があるんだろうっていうのが動機で、飛行機とかいろんな方法あるんだろうけど、僕は船で世界一周したい! というのが夢だったんです」

船が飛ぶ!?
●今年の1月には、来年の「ヴァンデ・グローブ」出場と、その先のチームの目標について発表されたということで、来年も「ヴァンデ・グローブ」に「DMG MORIグローバル・ワン」のスキッパーとして出場されるんですよね。どんなお気持ちですか?
「今回5回目のチャレンジで、チームを立ち上げて2回目になるんですけれども、前回の2020年はセイルを破ってしまって、うまいこと走れなかったので、今回はもうちょっとうまく走りたいかな。船ともコミュニケーションが取れてきたので、もう少し前回よりうまく走れるんではないかと思っていますね」
●前回2020年は、白石さんにとっては初めての新艇で、しかもオーダーメイドだったんですよね?
「そうです、そうです。フォイル艇で、今は船が飛ぶんですよ、半分」
●船が飛ぶ!?
「水中翼船みたいに、風の力で」
●羽があるってことですか?
「そうなんですよ、羽があるんですよ。今の船は特殊で、本当にレース艇ですね。それに初めて乗りました。僕にとっては初めての新艇だったのね。それで出場して完走して、次はそれを改造して、さらにもうちょっと上の順位で回れればなと思っていますね。
さらに2028年はまた新しい船を作ると・・・僕らのチームは長期計画なので、それに向かって一歩一歩前進していきたいと思っていますね」
●すごいですね〜、夢がありますよね。羽が生えている船は具体的にどれぐらいの大きさなんですか?
「船の長さは18メートル60フィート、大きいです。マストの高さが28メートルだから(建物でいうと)7階建てぐらい。一般にみなさんが思うヨットよりも大きいですね。そのヨットをひとりで、世界一周すると非常にスピードも出ます」
●もうすでに、共に荒波を乗り越えてきたわけですよね。
「そうです、そうです」
●もちろん愛着もすごくありますよね?
「そうですね! いい船ですよ「グローバル・ワン」は」

自然に敬意を
白石さんが所属する「DMG MORIセーリング・チーム」はスキッパーが女性を含めて5人、ほかにエンジニアなどのスタッフが10数名、総勢20人ほどの国際的なチームだそうです。
ベースはフランスのロリアンという港町にあり、そのロリアンには、世界中のトップチームが集結しているそうです。白石さんがおっしゃるには、フランスはヨットが盛んでフランスの国技といってもいいそうですよ。
●ヨットや海から学ぶことも多いんじゃないですか?
「多いです。今SDGsで、持続可能なっていうことをやっていますよね。あれ何かって言ったら、やっぱり人間は自然との関わりなくして生きられないんだよね。簡単にいうと海、山、川ってあるでしょ。これは人間が創り出したものじゃないでしょ、海も山も川もね。だからそこにやっぱり敬意を持っていないと、人間はどんどん苦しくなってくるんだよね。
それがちょうど今、変革期で、僕なんかの時代は物がなくて、作ろう作ろうという時代だったんだけど、これからはもっと地球とコミュニケーションを取って、我々は地球の外では生きられないので、もう少し地球と共にという考え方がやっと芽生えてきたんじゃないでしょうかね。江戸時代は、そういうのはあったんですよ」
●江戸時代!?
「そうそう、そのものがSDGsだったから、持続可能なものだったんだけど、そうだな〜、産業革命があって石油が掘り出されて、それからちょっと変わってきたかな。今振り返ってみると、ゴミは多いよねとか、僕なんかの時代そうだったのね、公害時代だから・・・。
でも今やっぱり綺麗のほうがいいよね、多少不便でも。おいしい空気の方がいいよねとか、綺麗な海の方がいいよね、ということで、多分どうでしょうかね・・・みなさんの時代の方が意識は高いんじゃないかな。みなさん今若い人たちは、ファッションもすごくシンプルでしょ」
●そうですね。
「そうそう、ミニマリストみたいに。何も物のない時代で育った人は、物があって幸せになんだよ。で、みなさんみたいに物がある時代に育った人は、別に物があっても驚かないんだよね」
●当たり前だったわけですよね。
「それより大人しく綺麗に生きようっていう、ちょうど今、時代の変わり目、風が変わってきたね。いいことだと思いますよ」
世界一周は日常!?
●「ヴァンデ・グローブ」は、ひとりでどこにも寄らずに長時間レースをしているわけじゃないですか。その間に寂しいなとか、感じたことはないですか?
「僕を見て寂しいと思いますか?」
●まったく思わないです(笑)
「思わないですよね! このまんまですね!」
●でもずっとおひとりなわけじゃないですか、夜も。
「ひとりは面白いよ! あの満天な星を独り占めです、最高だねぇ〜。だから海にたったひとり、地球という最大の星で、地球の最小単位のひとりでいるわけよ。これが素晴らしいわけです」
●ほんとに独り占めですね。
「独り占めでしょ! でね、連絡はなかなかできないので、今、都会でいちばん難しいことができるんだよ。自分と会話、自分との向き合い方が長いね」
●どんなこと考えるんですか?
「何も考えてないです(笑)。早く帰りたいな、ぐらいしか考えたことないんだけど・・・そうそうだから、考えない時間を作るっていうのは、いいね」
●贅沢かもしれませんね。
「今はもう(みなさん)考えすぎ!」
●考えすぎていますね、みんな確かに。
「情報過多、外からの情報が多いんだよね、今の人はひとりでいると。だからみなさんは情報処理が得意なんだよね。携帯電話もなんでもそうでしょ。僕の場合はうちから外へ出す情報発信が多いんですよ。そこがヨットでひとりの魅力かな。寂しいことは何にもないです」
●そうなんですね。でも、聞くところによると、随分昔、レース中に海の上から奥様に何度か電話されたそうですね。
「いやいやいや(電話が)かかってくるのよ!」
●あれぇ〜(笑)
「去年は1回だけかかってきました。僕からかけることほとんどないんだよ。1回なんかね、電話かかってきたわけ。何? って聞いたら”銀行のパスワード教えて”。それから前回の大会は”あんた車検どうすんの?”っていうのが1回かかってきたね。
その前の大会は”引っ越ししたから”って(世界一周の間に)引っ越しされました! そういう電話が大体、世界一周で1回かかってくるんですよ。来年はなんだろうね(笑)」
●面白い〜(笑)。来年「ヴァンデ・グローブ」に挑戦することを知って、奥様はなんとおっしゃっていたんですか?
「え、何も・・・うちら家族、娘もいるんだけど、娘が生まれてからもう3回世界一周しているかな。だから世界一周が日常なんですね」
●わぁ〜かっこいいですね。すごいことですよね。
「お父さんは世界一周して帰ってくる人なので・・・」
●ずっと家にいるのは、もう考えられないっていうことなんですかね。
「はい、だから世界一周して帰ってきても(娘は)携帯電話を見ながら”おかえり!”、それだけですね、以上ですね」
(編集部注:白石さんのご家庭では、ヨットレースの話は出ないそうですよ。きっとそれは奥様の心遣いだと思いますが、白石さんがヨットレースに夢中になれるのは、やはりご家族の存在が大きいのではないでしょうか。今後、できるなら、奥様やお嬢さんにもお話をうかがってみたいですね)
世界一周は「確かめること」
※白石さんは、世界一周を果たしたあとに、何を学びましたか?と、よく聞かれるそうです。そんなとき、白石さんはこう答えるそうです。
「確かめたんですと、これでいいんだと。世界一周は確かめることなんです、学ぶことではないんですね。だから人生はよく学びだっていう人がいるんだけど、僕はちょっと違った考え方で、学びは知らないことを知ることじゃない? 僕は自分は何者であるか、確かめるのが人生ですよ! って言っているんですよ。
(それぞれ)すべてを持っていて、すべてがあるんだよね。それを確かめることで、学ぶことではないんですよ。自分以外にはなれないってことを覚えといて、自分らしくないと苦しいんです」
●人と比べてしまったりとか・・・。
「そう、そうすると孤独を感じるんです。だから海の上でも(僕が)孤独を感じないのは合っているんだよね。合っているんですよ、それでいいんですよ」
●やっぱり夢の力っていうのも大きいですよね?
「大きい大きい。だから苦しいことをやっているわけではないんです。苦しいことをやった先に何があるかっていうと、もっと苦しむんだよ。みんな勘違いしちゃダメよ。苦しさの先に楽があるんじゃないんだよ。楽しさの先に楽があるんだよ。
だから間違って苦しんでいる人はすごく多くて、苦しいでしょ。何を言っているかって、それ違いますよってサインなんだよ、苦しいってことは。違っているのに、さらに頑張って苦しくなっちゃうんだよね」
●白石さんは厳しいレース中も、心身ともに楽しいってことですか?
「そうそう、要するに(ひとりで世界一周は)大変ですよ。たったひとりで眠る時間もないし寒いしね。でもやりがいがあるんだよね。で(自分に)合っているから乗り越えられるんで、これは人に頼まれたわけではないんですよ」
●やりたいと思っているからってことですよね。
「人に頼まれたら、まず乗り越えられないです、苦しくて。たったひとりで海が楽しいと思う人と、孤独って思う人がいるんだよね。これ解釈なの。たったひとりでも人によって違ってくるんだよ。ここがポイントなんだよね。あんまり無理しないで自分らしくあるってことかな」
●26歳で初めて世界一周を果たした白石さんは、今でもヨットや海に対する思いはまったく変わらないですか?
「変わらないですね。まだ幼稚園を卒園してないですよ。何も変わらないですね。おもちゃの大きさだけです、変わったのは。おもちゃがどんどん大きくなっただけで、それだけですね」
●では、最後に来年も世界一過酷なヨットレースと言われる「ヴァンデ・グローブ」に出場する白石さんにとって、最高のレースとはどんなレースでしょうか?
「前回は、結構トラブルが多かったので、なんていうかな・・・気持ちよく走りたいね。気持ちよく走るのが最高のレースじゃないかな。みんな楽しく、思いっきり「ヴァンデ・グローブ」を楽しみたいなと思いますね。次は何が待っているんだろうね。
僕がトラブれば、トラブルほど、まわりが喜ぶんだ、またこれが! 喜ばせたくないね! つまんないって言わせたいの! 僕の夢はまわりに”白石さん、つまんなくなりましたね!”って言わせたいね(笑)」
●またお話を聞かせてください。期待しています!
(編集部注:今後、白石さんは予選会のようなレースに出場しながら、ヨットを調整、来年11月10日スタート予定の「ヴァンデ・グローブ」に備えることになっています。今後の動向に目が離せません)
INFORMATION
白石さんが所属する「DMG MORIセーリング・チーム」ではセーリング・アカデミーを開設、外洋セーリング界で活躍できる人材発掘と育成を目的に若手の登竜門といわれている大西洋横断レース「ミニトランザット2027」への出場・完走を目指す研修生を募集しています。
募集人員は4名、応募の締め切りは4月30日。年齢、性別は問わないとのことですので、ヨットレースにチャレンジしたいというかた、ぜひご応募ください。
◎「DMG MORIセーリング・チーム」HP:
https://en.dmgmori.com/company/dmg-mori-sailing-team-jp
白石さんの最新情報含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎白石康次郎オフィシャルサイト:
https://kojiro.jp
2023/4/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、冒険ライダー、そしてNPO法人「地球元気村」の大村長「風間深志」さんです。
風間さんは1950年生まれ、山梨市出身。1982年に日本人として初めて「パリ・ダカールラリー」に参戦、さらに、バイクによる史上初の北極点と南極点に到達など、前人未到の大冒険に挑戦され、輝かしい記録を残されています。
そんな風間さんが1988年に仲間と設立したのが「地球元気村」で「人と自然が調和している社会」の実現を目指して作られたプロジェクトです。
きょうは、人も地球も元気になる活動の最新情報などうかがいます。

番組タイトルに込めた願い
風間さんにお話をうかがう前に、新年度ということで、改めて番組タイトルについてご説明しておきましょうね。
「フリントストーン」は「火打石」という意味がありますが、実は1960年代に日本のテレビでも放映されたアメリカのアニメーション「原始家族フリントストーン」にもあやかっています。原始時代は人間が自然を壊さず、その恵みをいただきながら、ともに生きていた時代、ということで、今も、そしてこれからも、そうあって欲しい、という願いが込められています。
そんな番組「ザ・フリントストーン」のシンボルが風間深志さんなんです。
それでは風間さんにお話をうかがっていきましょう。
地球元気村の思い
●今週のゲストはこの番組の記念すべき第1回目のゲスト、冒険ライダーそして地球元気村の大村長、風間深志さんです。よろしくお願いいたします。
「はい! よろしくお願いいたします。大村長っていつも言ってくれるんだ、毎年ね。何が大村長かなと思うんだけど、大村長の風間です!(笑)よろしくお願いいたします」
●こちらこそ、お願いいたします。この番組「ザ・フリントストーン 」がこの4月から32年目に入ったんですけれども、風間さんが仲間とともに作ったNPO法人「地球元気村」は今年で35年目になるんですよね?
「はい、もう35年、あっという間ですね」
●あっという間ですか?
「35年前と今は変わんないから面白いね。自然っていうものに対してのテーマ、みんなやっぱり自然が好きだね。
昔は自然を好きになってくれっていうメッセージを、広く訴えていこうってことで始まったけど、今は空前のキャンプブームだよね。なんかもうアウトドアの洋服とか、そういったものを普通に街でも着るのが当たり前になったしさ。そういう意味ではすごく普及したけど、人は自然が常に好きだなっていう感じは、今も昔も変わんないなと思って見ています」
●風間さんには、毎年4月の第1週目にご出演いただいているんですけれども、30年を超える長いお付き合いということで、本当にありがとうございます。
「昔ね、4月1日に、むちゃくちゃホラ話をしたのよ(笑)っていうのが思い出。俺は太平洋でトビウオになるとか言っちゃってさ(笑)。トビウオになってどうするんですか? アメリカまでトビウオで行くのさ!(笑)みたいな、そんな話をよくしたよね(笑)。今は通用しないんだよ、そんな話。いいよ!(きょうも)嘘話でも」
●ダメです、ダメです(笑)
「ダメですか。きょうはちょっとリアリティを持っていくんですね」
●お願いします。改めて地球元気村のテーマを教えてください。
「そういう意味では、昔より今のほうが馴染んだかも知れないね。要するにもともと足もとにある自然と、もうちょっと仲良くしながら、会話をしながら、文明文化を進めていきましょうよっていうメッセージなのね。
(「地球元気村」を設立した)当時1988年、思いっきり工業化とか、思いっきり生産力を高めていくっていう、国とか世界中はそっちの方向に必死になっていた時代で、時はバブルという時だったんだよね。
そんな時にやっぱり足もとをもうちょっと見て、そして人間は自然に触れながら、子供を育てたりとか、やっぱり伝統文化っていうものをもうちょっとちゃんと継承しながら、人間らしくっていうと変だけど、何が人間らしくだよっていう感じになるけどね。やっぱり人間には自然は不可欠だし、自然との調和社会を目指していきましょうっていうわけで・・・。
折に触れて自然との触れ合いで・・・アウトドアのことが最初はちょっと多くて、なんだか俺はアウトドアの伝道師みたいだなって・・・。
別にアウトドアに限ったことはなくて、村祭りにしても郷土芸能にしても、そういった日本の古き良き文化を、みなさんに伝えながらいきたいなと。でも結果、みなさんが好きだったのは、自転車に乗ったり、川で釣りしたりとか、そういうのが好きだから、アウトドアをメニューにしながら、自然と触れ合うきっかけをここまで作ってきました」
(編集部注:「地球元気村」といっても特定の場所があるわけではなく、豊かな自然が残る市町村と連携するなどして、自然体験型のイベントを開催してきたそうです。風間さんは「地球元気村」をひとつの「理想郷」と表現されていました)
地球元気村ファーム「天空のはたけ」
●地球元気村のホームページや会報誌を拝見すると、ここ数年、風間さんは農業に視線を向けていらっしゃるのかなって感じるんですが、どうですか?
「あ、見てくれた? ありがとうございます。まあそうだな・・・地球元気村の真髄は結局(シンボルマークの)地球元気村の焚き火の炎みたいなのがあるでしょ。あれはとりあえず焚き火の炎なんだけど、実は命の炎なんだよと、命のときめきを表していまして、それは元気の証拠でもあるよね。
人間が醸し出す、元気や喜びや幸せは、どっから来てるかって、やっぱり自然から来ていて、足もとの土をいじって、そこに作物を育てて、それを食して、人間は命から命をつないでいくっていう、その循環がうまく、滞りなくスムーズにいくことが健康のひとつの循環ね。
みなさん(お店で)買ってくれば(手に入る)ホウレン草やネギを自分で作って、そしてそれは土から生まれて、土の元気がネギの葉っぱに伝わって、その葉っぱを食べることによって、僕らに元気が伝わってくるっていう循環型ね。そういったことを意識してもらうために農業をやっているんだけどね。
もうちょっと言えば、そこで見てもらいたいのは、命なんですよね。命は、スプーン一杯の土の中にも70何億の微生物がいて、生命なんだよね。その生命そのものが、強い生命力を持っていることが、我々の元気であるっていうことを考えようよということだよね。分かり切っているけど、なかなかこれは忘れちゃうんだよね」
●そうですね。山梨市に地球元気村ファーム「天空のはたけ」というものがありますよね? それはどんな畑なんですか?
「それはね、天空のはたけなんですよ!(笑)」
●あははは〜(笑)。広さはどれくらいあるんですか?
「えっとね、どんぐらいあるかな・・・3000坪ぐらいあるかな。畑が46区画あって、標高が700メートルぐらいの、ちょっと高いところにあるのね。そこから見下ろすと時々、甲府盆地がたなびく雲の下に見えたりとか、正面には富士山がどんと五合目以降、顔を出して、おーい、こんにちは! みたいな感じで挨拶ができるわけ。だからそこを『天空のはたけ』って名付けたんですよ。
みなさんすごく喜んでくれて、そこが嫌だっていう人は誰もいない、大人も子供を喜んで、その大空間の中で、心も体も羽を広げるっていう気分なんだよね」
(編集部注:お話に出てきた「地球元気村」のトレードマークは焚き火の炎で、ロゴも含めて制作されたのは、段ボール・アートで知られるアーティスト、現在は東京芸術大学の学長でいらっしゃる「日比野克彦」さんなんです。どんなマークとロゴなのか、ぜひ「地球元気村」のホームページを見ていただければと思います)
美味しいは農業から

※山梨市にある地球元気村ファーム「天空のはたけ」では、ジャガイモやサツマイモなどを育てているそうです。去年は、オリーブの木も植えたそうですよ。ほかにも村民のみなさんと味噌作りを行なったり、秋には収穫祭を開催し、大地の恵みをわかちあっているということですが・・・天空のはたけで作物を育てたり、収穫したりする作業からどんなことを感じますか?
「畑に来るってことは、土をいじるってことは、命とちょっと触れ合うってことになるんだけど・・・そうだね〜“美味しい”を感じるね! いつも畑に行くとね、昼飯が美味しいんだよね。それに入れ込む大根にしても、人参にしても作るからね。だから特に美味しい。なんだろ・・・農業から始まんのかな、美味しいは! 本当に汗をかいて、美味しくて、作業をして、語りをして、大人も子供も跳ね回ると、この世の楽園ですね!」
Jomonさんがやってきた!
※「地球元気村」では、縄文大工「雨宮国広(あめみや・くにひろ)」さんのプロジェクトを応援されています。以前、この番組にも出てくださった雨宮さんは、縄文時代の人たちがそうであったように、石斧(いしおの)だけで木を倒し、加工する特別な大工さんなんです。
そんな雨宮さんが進めているのが「Jomonさんがやってきた!」というプロジェクトなんですが、どんなプロジェクトなのか教えてください。
「あのね、もう元気村と同じね。縄文時代は1万数千年続いたんだよね。それだけ長く続いたのは、平和で安定した時代だったんだろうと。その人たちのライフスタイルが何かっていうと、自然と密接につながって、自然の摂理とか原理原則みたいなところから、はみ出していないライフスタイルをやってきたから、長く続いたわけ、無理がないからね。
人間は物を作るから、そういう時に手に持ったものは、鉄のアックスじゃなくて石の刃に枝をつけて、それで木を倒したりね。言ってみれば、石斧(いしおの)の文化だね。それを通じて人間本来の、縄文時代にやっていた人間の生き方、それから生き方による考え方、方向性をもう1回考えてみましょうよっていうメッセージなんだよね。
雨宮さんが何をやっているかっていうと・・・例えば、鉄斧(てつおの)は石斧よりか9倍とか10倍の威力を持ったわけだ。つまり作業が早くはかどるわけ。その分、手返しっていうか、早い分、人間はそれに追いつくために無理をするんだよね。
人間には人間のサイクルがあるよね。つまり人間にはひとつの一定した心拍があり、生きてくための呼吸は1分間に何回しているとか・・・それを早い機械を使うと、例えばチェーンソーを使うと(石斧の)200倍とか伐っちゃうわけ。それに合わせようとするから、せせこましくなるわけだね。
作業効率とか、きょう中にこれを作ろうってなってくると、本来の人間の動きから飛び出したことになって、それでいいのかってことをやっぱり雨宮さんはすごく感じているんですよ。
彼は今、日本縦断をやっているんですね。丸木舟を、北海道から沖縄まで、毎週どっかの都道府県に持って行って、子供たちと一緒に(石斧で)コンコンやって深く掘り下げているんですよ。僕も今まで3回ぐらい行ったけどね。コンコンやっていくと、なんかいいんですよね」
全国ネットワーク「テラなび」
※「地球元気村」の会報誌に全国ネットワーク「テラなび」の記事が載っていました。この「テラなび」はどんなネットワークなんですか?
「テラは地球、なびはナビゲーション、地球をナビゲートしていこうっていう、そのためにはどういう考え方で、どういう見地が必要なのかを、みんなで考えようっていうひとつの委員会なんですよ。
それを今まで地球元気村をやった全国の市町村の元首長さんとか、自然学校を専門にやっている学校の校長先生とか、あるいは大学のそういうことを専門に研究している人とか、そういう人たちに集まってもらって委員会を作ったんですよ。そこからもう1回出直そうかっていうための、準備のためのシンクタンクも去年作りまして、真剣にやっていこうと思っています。
ずっと考えているんですよ、実はここ10年ぐらい、次の一手はなんだろうと・・・以前キャンプはむちゃくちゃ流行ったし、今も流行っているからね。今度、次の一手はなんだろうなって考えていますね。
しかし、SDGsって言葉がむちゃくちゃ流行っているよね。それでなんか答えが出ましたかってこと・・・。それはひとつの一環で、取り組みのひとつですっていうことであって・・・いずれにしても物作りだったり、会社のひとつの事業やひとつの指針だったりするよね。その言葉を使うことによって、みんなそれで気が済んでいる部分もあるけど、実際に生活を少し変えていくってことは、やっぱり容易なことじゃないよね。
そこも含めて、変えていけるようなインパクトを与えられたらいいなっていうふうに、地球元気村はもう30何年考えているからさ。パイオニアとして見本を見せるような活動とか、メッセージが発信できればいいなって思っています」
●最後に、今後、風間さんとしては、どんなことに挑戦していきたいと考えていらっしゃいますか?
「そうですね・・・僕もいい歳になったんですけど、歳を忘れながら、地球元気村を本当にブレイクさせていきたいなと思っています。 次の世代につなげていくような、何か伝えて手渡してくような、何かを手にしたいなと思っています。
一方、僕個人とすれば、何年も前から言っていますけど、ダカール・ラリー、これに出るために、今、国際ライセンスを取っていますね。去年は国内Bを取ったんだけど、今年は国際ライセンスを、4輪ですよ、今取っています。
2026年あたりに行ってみようかなと思っていますけどね。そうしたら何歳だっていうと、やばいんですけどね(笑)。そんなことを忘れて、いろんなことをやるのがいいんですよね。歳を考えているうちは、まだダメだね」
●また、来年お話をうかがえるのを楽しみにしています。
「まあ、生きていたら(笑)お会いしたいと思います」
●ありがとうございました!
「はい、どうも、ありがとうございました!」

INFORMATION
「地球元気村」
お話に出てきた山梨市の「天空のはたけ」では5月中旬くらいにサツマイモの植え付けや、梅の畑で小梅の収穫を行なう予定です。また、「地球元気村」では、山梨県山中湖村の村営山中湖キャンプ場を運営しています。時々鹿が出てくるような森の中のキャンプ場だそうですよ。どなたでもご利用になれます。
そして「地球元気村」では随時村民を募集中です。プレミアム村民は会費が年間10,000円、村民になると年4回、会報誌「地球元気村」が届くほか、イベントの参加費が割引になるなどの特典がありますよ。
詳しくは「地球元気村」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎https://chikyugenkimura.jp
縄文大工の「雨宮国広」さんのプロジェクト「Jomonさんがやってきた!」もぜひ応援してくださいね。
◎https://jomonsan.com
2023/3/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、NPO法人「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」の代表理事「岡村泰斗(おかむら・たいと)」さんです。
「リーブ・ノー・トレース」とは、直訳すると「足跡を残さない」となりますが、この言葉には、アウトドアで遊ぶときにフィールドである環境に与える影響を最小限にして楽しみましょう、そういう意味が込められているそうです。
きょうはそんな考え方を広め、指導者を育てる活動をされている岡村さんに登山やキャンプなどの野外活動で、自然に与えるインパクトを最小限にするための7つの原則などうかがいます。

「リーブ・ノー・トレース」7つの原則
●まずは、リーブ・ノー・トレースについて教えてください。
「リーブ・ノー・トレースというのは、アウトドア・レクリエーションによるインパクトを最小限にして、環境へのダメージをなるべく少なくして、アウトドアを楽しみましょうというアウトドアのテクニックですね」
●「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」は、まだ新しい団体なんですよね?
「そうなんですよ。日本では2021年にNPO法人として立ち上がったんですが、このリーブ・ノー・トレースって考え方自体は、北米で発展し、1970年代ぐらいからあります」
●以前から自然愛好家のかたの間には「撮っていいのは写真だけ。残していいのは足跡だけ」という合言葉があるんだよって、番組スタッフから聞いたことがあったんですけれども、このリーブ・ノー・トレースの考え方は似ているんですか?
「まったくその通りだと思います。日本には『立つ鳥、跡を濁さず』であるとかそんな言葉もありますよね。
単に何も残さないっていうだけではなくて、自然を変える原因になるようなものを持ち込まないであるとか、自然を楽しんでいる時にも自然をなるべく変えないようにしようであるとか、そんなことも含んだ考え方ですね」
●ミニマムインパクト、つまり最小限に、ということなんですね。
「そうですね。ただやっぱりどうしても、インパクトがあるのかないのか、これいいの? 悪いの? って聞かれてしまうんですけれども、我々が自然の中に入ると必ずインパクトを残しますので、そのインパクトをみなさんの持っている経験値、みなさんの持っているアウトドア技術で、最小限にしましょうという考え方です。
経験が少ない人や、技術が少ない人って、当然高い人よりもインパクトを残すかもしれないんですけれども、その人が悪いっていうのではなくて、自分のできる範囲で一生懸命ミニマムにしましょうっていう考え方ですね」
●リーブ・ノー・トレースには7つの原則があるとオフィシャルサイトに載っていました。まずはどんな原則があるのか説明していただけますか?
「はい、まず7つの原則を紹介しますと、原則1は『事前の計画と準備』ということです。原則2というのが『影響の少ない場所での活動』、これはキャンプサイトとかトレイルの問題ですね。
原則3が『ゴミの適切な処理』、原則4が『見たものはそのままに』ということ、原則5が『最小限の焚き火の影響』、焚き火をやってはいけませんではなくて、最小限にしようってことなんですね。
原則6が『野生動物の尊重』、原則7が『ほかのビジターへの配慮』ということで、環境に関することなんですけれども、ほかのビジターさんへの配慮というのも7つのうちのひとつに含まれているというということですね」
(編集部注:アメリカ発祥の「リーブ・ノー・トレース」は国際的な団体で、支部はカナダやニュージーランドなどにもあって、世界90か国ほどで、アウトドアでの行動基準になっているそうです)

原則4『見たものはそのままに』
●特に詳しく教えていただきたいのが、原則4の『見たものはそのままに』なんですが・・・。
「先ほどの『撮っていいのは写真だけ』と非常に似ているんですね。どうでしょう・・・聴いているリスナーのみなさんも、自然が豊かな観光地に行って、何かお土産に、例えば貝殻を拾って帰るとか、せっかく登った山の頂上の石を持って帰るとか、時にはビーチの砂を持って帰るとか、そんなことをされたかたもおそらくいるんじゃないかなと思うんです。
たったひとりが、例えば貝殻や石を持って帰ることは、生態学であるとか、地形上にはほとんどインパクトはないんですけれども、それが有名な観光地ですと毎年何十万人っていうかたが来て、何年間も積み重なると、貝殻がひとつもなくなってしまったり、山頂の地形が変わってしまったりします。
南西諸島のほうのお土産で、星の形をしているような砂があるかと思うんですが、時にお土産さんで売ったりしてしますよね。ああいった砂ですら、なくなってしまうことが起こりうるんですよね。
たったひとりだから大丈夫だろう・・・確かにひとりだと大丈夫なんですけれども、それが何万人も何年も積み重なると大きなインパクトになってしまう・・・こういうのを英語で『アキュムレート・エフェクト』って言いまして、日本語だと『累積効果』と我々は訳しているんですが・・・ですので、たったひとりでも小さなものを持ち帰るのもやめましょうね、というようなことが原則4に含まれますね」
●花を摘むとかもそうですよね。
「そうですね。花はさすがに生きているものなので、例えば花の調査をするとか、観察とか、そういった目的があれば、リーブ・ノー・トレースは別にダメですよとは言ってないんですね。あとは非常に希少種であるとか、再生の難しい自然環境もあります。持ち帰ってしまうのは、できる限り最小限にしましょうっていうのが原則4ですね」
●持ち帰るのではなく、写真を撮ったり、スケッチしたりっていうことですね。
「そうですね。その通りです」
原則5『最小限の焚き火の影響』
※続いて、原則5の『最小限の焚き火の影響』について詳しくうかがいたいのですが、焚き火の大きさも必要最小限にしましょう、ということですか?
「もちろん必要以上に大きくすることはないと思います、薪も無駄に使うことになりますが、今とても心配しているのは焚き火台の問題です。
かつては直火と言って、地面の上で焚き火をして、それで何が悪いの? って言われていたんですけど、地表が黒焦げになることによって、次に来る人があまり見たくない光景になってしまったりとか、石でかまどを作って、その石が焦げてしまうと、ずっと黒い焦げは残りますよね」
●そうですね。
「それに比べると、焚き火台を使うとインパクトは、はるかに少なくなったんですけれども、焚き火台自体が金属ですので、焚き火台の上で焚き火をしたとはいえ、地表にはかなりの熱が伝わるんです。それによって結構、日本全国のキャンプ場の芝生が焦げてしまったりとか・・・。
そうすると、キャンプ場は芝生を一回はいで、つけ直さないといけないので、焚き火台を使ったから大丈夫ではなくて、焚き火台をどう使えばいいのかまで考えていただけると、よりいいのかなと考えます」
●リーブ・ノー・トレースの焚き火のテクニックは、焚き火の跡を残さないとホームページにも載っていましたね。
「そうですね。実際、登山に行く人やクライミングをやる人は、山の中に焚き火台を持って行くのはあまり現実的ではないんですよね。我々は荷物を最小限にして持って行きますので、大きな金属性のものを持って行くことは、基本的にはあまりしないです。
焚火台はオートキャンパーのかたたちの文化なんですね。登山をやるかたが、焚き火台がない時にどうしたらいいのかが、リーブ・ノー・トレースのテクニックですね」
●薪も落ちている枝を使いましょうということですよね。
「そうですね。おそらく多くのキャンパーのかたが、あえて枝を折って薪にすることは少ないと思うんですよね。生木と言って、折った枝ですと火が起こせませんので・・・」
●立っている木は生き物の生息地ですよね。
「落ちた枝、落枝(らくし)って言うんですけれども、落ちた枝も考えようによっては生き物の生息地でもありますね。それが土壌に返って、森がそこから生まれるわけですので・・・」
野外教育をするための大前提
岡村さんは、子供の頃から大学までサッカーに打ち込んでいたそうですが、群馬県で生まれ育ったことや、お父さんの影響もあって登山やキャンプなど、アウトドア活動にも熱中。中学生のときには、ひとりで谷川岳や尾瀬ヶ原に行くような少年だったそうですよ。
そして大学の卒論のゼミで、アウトドア活動が子供の教育や人づくりに効果があることを恩師から教わり、それからは、研究という視点でアウトドアをとらえてきたそうです。
岡村さんは「リーブ・ノー・トレース」という考え方に、いつ頃出会ったんですか?
「文献としてはリーブ・ノー・トレースって言葉は当時からありましたので、頭では理解していたんです。よくある自然保護のアイデアというか標語いうか、その程度にしか理解していなかったんですが、実際これぞリーブ・ノー・トレースと理解したのが2003年でした。
私は、2003年は大学で教鞭をとっておりまして、大学教員だったんです。当時勤めていた大学の、自分のゼミの学生とアメリカの大学の学生が合わせて10数人、インテグレーションコースって言うんですけど、統合コースをアメリカのグランドティットン国立公園で実施しました。
2週間ぐらいずっと山を歩く中で、10日間ぐらい連続で山の中にいるというコースに学生を連れて行ったんです。その時にアメリカの指導者から初めてリーブ・ノー・トレースという考え方と、それをどう人に伝えるかというテクニックを学んだのがきっかけですね」
●その時はどう感じましたか?
「単なる自然保護のテクニックなんですけれども、重要なのはそれをテクニックとして伝えるんじゃなくて、どう人に分かりやすく、しかも楽しく、腑に落ちるように伝えるかっていうティーチングのテクニックが目から鱗でしたね。
単にいいことを伝えるだけでも、なかなか人には伝わらないですし、やはりどう伝えるかが非常に重要だなと、改めて気づいたコースでしたね」
●「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」では野外教育の指導者を育てる活動もされているんですよね?
「あっ、なるほどですね・・・リーブ・ノー・トレース=野外教育っていうわけではなくて、リーブ・ノー・トレースはあくまで野外教育をするための前提だと思います。
野外教育は当然インドアではなくて、アウトドアに人を連れて行きますので、アウトドアに人を連れて行った時、そこにインパクトを与えてしまったら、野外教育という手法が持続不可能になっちゃうんですよね。ですので、野外教育をするための、我々が理解しておかなければいけない大前提のひとつかなと思います」
「気付くこと」から始めよう
※「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」にはアウェアネス、トレーナー、そしてマスターエデュケーターという3つのコースがありますが、どんな内容なんですか?
「リーブ・ノー・トレースを普及させるための教育体系ですね。アウェアネス・ワークショップは・・・アウェアネスって気付きですよね。ですからリーブ・ノー・トレースを初めて知るかたのためのワークショップ、参加体験型学習です。
どういうふうに展開されているかと言いますと、トレーナーもしくはエディケーターという資格を持っているかたが、例えば自分の自然学校に来た子供たちに教えたりとか、時にはアウトドアガイドをやられているかたが自分のガイディングの中で、ゲストに必要に応じて伝えたりであるとか・・・ワークショップはいろんな伝え方のパターンがありますね。
リーブ・ノー・トレースの団体メンバーさんが今どんどん日本全国に増えています。例えばホームページにリーブ・ノー・トレースのロゴが付いていたりとか、リーブ・ノー・トレースを導入しています、っていうキャンプ場やガイドさんにつくことによって、アウェアネスワークの一端に触れることができますので、それでいいなと思ったら、人に伝えたいなと思ったら、トレーナーコースを検討されるのがいいかなと思います」
●そうですね。いいですね。では最後に岡村さんが大自然から学んだことを教えてください。
「なかなか難しい質問なんですけれども、人ができることはそんなに大きくないので、自然には逆らわないと言いますか・・・いま一生懸命リーブ・ノー・トレースの普及にあたっているんです。我々が当然アクションプランを立てるんですが、その通りにはなかなかいかなかったり、こちらが期待していたものとは違う方向にいくようなことも、いくらでも普段の世の中というか社会の中で起こるので、そういう時に流れに逆らわないというか、何か問題が起こっても受け入れるというか、あまり抗(あらが)わないというのが、自然のスタイルなのかなと思います」
INFORMATION
お話に出てきた「7つの原則」については、ぜひオフィシャルサイトでご確認ください。
「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」で行なっている教育体系はアウェアネス、トレーナー、そしてマスターエデュケーターと3段階に分かれていますが、まずは、どなたでも気軽に体験できるアウェアネス・ワークショップというプログラムに参加されるのがいいかもしれません。
「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」では活動を支援してくださるサポーターやメンバーを募集しています。いずれも詳しくは、オフィシャルサイトをご覧ください。
◎「リーブ・ノー・トレース・ジャパン」HP:https://lntj.jp
2023/3/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「恐竜博2023」を監修された国立科学博物館の副館長「真鍋真(まなべ・まこと)」さんです。
真鍋さんは1959年、東京生まれ。横浜国立大学卒業後、アメリカや英国の名門大学に留学し、博士号を取得。現在は国立科学博物館・副館長と、群馬県立自然史博物館・特別館長を兼務。おもな研究テーマは、恐竜など中生代の化石から読み解く爬虫類、そして鳥類の進化となっています。
きょうは「恐竜博2023」の見所はもちろん、恐竜界の人気者ともいえる、ティラノサウルスの秘密や、真鍋さんたちが発掘し、大注目されている新種の恐竜についてもうかがいます。

ティラノサウルスも10代が成長期!?
現在、恐竜博士として大人気の真鍋さんですが、実は子供の頃から恐竜が好きだったわけではなく、大学生になったときに、地質調査をする学問を専攻すれば、世界中に旅行に行けると思い、古生物学や地質学を研究することにしたそうです。そしてその後、化石の発掘などにより、どんどん恐竜の研究にのめりこんでいったそうですよ。
そんな真鍋さんの新しい本が『きみも恐竜博士だ! 真鍋先生の恐竜教室』。この本はコロナ禍のなか、子供たちに向けて行なったオンライン授業がもとになっていますが、大人が読んでも面白い、恐竜の入門書的な本なんです。
では、この本をもとに、恐竜に関する素朴な疑問についてお聞きしていきたいと思います。

ティラノサウルスは、大きくて強いというイメージがありますが、体が大きいと維持していくのが大変で、それは寿命にも影響しますよね。ティラノサウルスの寿命は、どれくらいだったと推定できますか?
「ティラノサウルスは有名だし、恐竜の中でいちばん研究されているって言ってもいいんじゃないかなと思うんです。年齢に関しては、戸籍があるわけではないので、本当は年齢とか簡単には分からないんですけど、足の骨とか太い骨を切ってみると、例えば、大きな木の切り株を見た時に木の年輪、あれを数えると樹齢が何年って分かったりする、あれと似たような方法で、骨の断面を切ると木の幹みたいに見えて、そこに成長の跡が線として残っている場合があるんですね。
それを数えると、ティラノサウルスはだいたい寿命が28歳から30歳・・・20歳ぐらいでほぼ成長して、あとの8年から10年っていうのは、その年輪と年輪の幅がすごく狭いので、ほとんど成長しなかったようです。
だいたい20歳くらいで大人になったんじゃないかって言われていて、僕ら人でも12歳から14歳とかティーンエイジャーの頃って、グングン成長するじゃないですか。ティラノサウルスも成長期があって、年輪と年輪の幅が12歳から16歳ぐらいが広いんですよ。
人間と似てるって言うとちょっと語弊があるかもしれないですけど、10歳代にすごい成長期があったので、あんなに大きくなれて、そしてだいたい30歳ぐらいの寿命だったんじゃないですかって言われています」
(編集部注: ティラノサウルスの全長は13メートルくらいで、体重は7トンくらいだったと推定されているそうです。そんな大きな体を維持するために1日60キロから70キロの肉を食べていたのではないかということです)

爬虫類と恐竜、どこが違う!?
※続いても素朴な疑問です。爬虫類と恐竜の違いはどんなところなんでしょうか?
「爬虫類にはワニがいたりカメがいたりするんですけれども、みんな基本的に四足歩行なんですね。恐竜には二足歩行と四足歩行、両方いるんです。
で、爬虫類は地面を這って歩いていた生物だったんですけど、なぜか急に立ち上がって、足をガニ股じゃなくて、まっすぐ伸ばして歩くようになったんです。そうするとコンパスが長くなる、足の一歩一歩が長くなる、速く走れるようになりました。
恐竜も爬虫類のひとつなんですけれども、ほかのトカゲとかワニとかカメとかゆっくりしか歩けない、走れないのに対して、恐竜は速く走れるようになったので、すごく繁栄したって言われているんですね」
●そうなんですか。ところで恐竜は変温動物だったんですか?
「もともとは爬虫類なので、変温だったはずなんですけど、恐竜の子孫が実は鳥類なんです。だから今のニワトリとかハトとかカラスとかペンギンとか、みんな恐竜の子孫なんですね。
恐竜の進化の中で変温動物から恒温動物に、つまり体温が一定である・・・そうすると例えば、ほかの爬虫類が朝とか夜になると気温が下がっちゃって、体温も一緒に下がっちゃって、それであまり活発に動けなくなって、おとなしくしているイメージがあるじゃないですか。
それに対して恐竜は恒温動物になって、足のコンパスが長くなって、より活動的になっていって、それで朝でも晩でも活発に動けるようになったので、あれだけ繁栄したんじゃないかと言われています。
大きな分類では爬虫類なんですけど、恐竜の中から鳥類、鳥が進化してきたので、爬虫類と鳥類を結ぶミッシングリンクみたいな、そんな存在になっています」
新種の肉食恐竜を発見!
※真鍋さんたちの発掘隊が化石を発見した新種の恐竜がいるんですよね?
「アルゼンチンで発掘された『マイプ』という名前の肉食恐竜です」

●どんな特徴がある恐竜なんですか?
「ティラノサウルスは体が大きくて13メートルぐらいで、恐竜時代の最後の6600万年とか7000万年前ぐらいになってくると、北アメリカやアジアでは食物連鎖の頂点にティラノサウルスの仲間の肉食恐竜がいたんですね。そういう手の小さい恐竜が歩き回っていた情景がよく復元されるんです。
今回、南アメリカで調査して見つかったマイプっていう恐竜は、メガラプトルの仲間なんですけど、南半球の大きな肉食恐竜たちは手が短くなっていなかったんですよ。
“メガ”が大きい、“ラプトル”って略奪者とか泥棒って意味なんですけど、手のところに大きな鉤爪(かぎづめ)が付いているグループなんですね。だから北半球ではティラノサウルスみたいに、手が短くなって小さくなるような進化があったのに対して、南半球では手は小さくならなくて、大きな鉤爪を付けているような、そんな恐竜が繁栄していたみたいだってことが分かってきたんですよね」
●へ〜〜! 場所によって違うんですね。ところで、発掘した時はどんなお気持ちでしたか?
「発掘している段階って、地層の中に骨とか歯が埋まっている状態じゃないですか。それを研究室まで持って帰って、クリーニングって言うんですけど、砂とか泥、岩石を削っていって、それで骨とか歯を綺麗に取り出して、こんな形しているんだね、こんな大きさしているんだね、こんな特徴があるんだねってことに気が付いていくんですね。
発掘している時には肉食恐竜の化石が見つかったと、みんな喜んでいたんですけど、それが新種かどうかは実際に研究していって、この特徴はメガラプトル類の、手が小さくなっていない大きな肉食恐竜だろうなっていうのは分かっていたんです。
メガラプトルってほかにいたりするので、そのメガラプトルとどこが違うんだろうみたいなことを研究室で比べながら、これはすごく重要な違いだから、新種って言えるんじゃないかなっていうことで、こういう特徴に基づいて、私たちは新種だと思いますって論文を発表したんですね」
(編集部注: 新種として発表した肉食恐竜「マイプ」は全長が9メートルくらいだと推定しているそうです。ちなみに正式な名前は「マイプ・マクロソラックス」。「マイプ」とはパタゴニア地方の伝説に出てくる「風の死神」という意味。そして「マクロ」は「大きな」、「ソラックス」は「胴体」だそうですよ)
自然が化石を発掘!?
※マイプを発掘したパタゴニアもそうだと思うんですが、化石のありそうな場所は、環境的には厳しいところですよね?
「そうですね。いろんな場所があるんですけど、みなさんの恐竜化石の発掘現場のイメージだと、モンゴルのゴビ砂漠だったり、アメリカの西部だったり、今回のアルゼンチン・パタゴニア地方も山の上なんですけど、もうほとんど木がない草がないような荒涼とした場所なんですね。
そういう場所がなぜいいかって言うと、日本の山みたいなところに行くと、木があって草があったりするじゃないですか。そうすると毎年、雨が降ったり、雪が降ったり、風が吹いたりするんだけど、そういう植物が地層、地面を守ってくれているんですよね。
だけど、植物がないと風が吹いたり、雨が降ったり、雪が降ったりすると、地層の表面がどんどん削れていくんですね。そうすると自然が発掘してくれているようなものなんですよ。
定期的に通っている発掘現場に行くと、例えば昨年の夏、発掘をやめて帰ってくるじゃないですか。で、同じ場所に今年行ったとします。そうすると、その1年の間に雨とか風とか、雪と氷が表面をちょっとずつ削ってくれるので、同じ場所に行っても新しい化石が顔を出しているのが分かるんですよ。そうやって自然も化石の発掘を手伝ってくれるので、ああいう荒涼とした場所が見つかりやすい、見つけやすいってことだと思うんですね」
未来の恐竜博士に
※恐竜博士になりたいと思っている子供たちや学生さんに向けて、伝えたいことがあれば、ぜひお願いします。
「いろいろ知りたいこととか、分かりたいことが山ほどあって、それで研究者になって、自分で解明したいな、解き明かしたいなっていうことだと思うんですよね。自分が好きなことを、知りたいことを、面白いと思うことがあるのは、すごくいいことなんです。
自分が謎に思っていることを、図鑑で調べたり、本を読んだり、研究者に聞いても分かんないことは、たくさんあったりすると思うんですけど、答えが分かりにくかったり、自分の求めている答えと違うなっていうことだったら、きっとそれは大人も世の中の研究者も、今は分かっていないことなのかもしれないんですよね。
その時にそれにがっかりせずに、自分がそれを解決してやろうみたいに、頑張らなくてもいいんですけれども、きっとまだまだたくさん分からないことがあって、これからどんどん世界中で研究が進んでいく・・・恐竜の研究をやっていると、やっぱり恐竜に国境がなかったように、学問の世界にも国境がないので、世界中の人たちと一緒にやっていって、ライバルがいたり、気の合わない人も山ほどいるんですけれども、気の合う人もたくさんいます。
そういう人たちと一緒に発掘をしたり研究したりして、恐竜の謎をひとつでも多く解き明かしていくことができるので、知りたいことがあったら、どんどん調べて、いろんな人と話をして、さらに勉強していくみたいなことって、きっとずっとワクワクすることにつながって、自分の世界も広がっていくので、ぜひ続けてほしいなと思いますね。
それから化石だけじゃなく、今生きている動物植物・・・だから動物園とか水族館とか植物園とか、博物館のあとにはそんなところにも足を伸ばして、自分の見方、それから関心のある世界を広げていってくれると、きっと恐竜のことが益々面白くなるんじゃないかなと思います」
(編集部注: 世界では新しい恐竜の発見、発表が相次いでいるそうですよ)
「恐竜博2023」の見所!
※現在、上野の国立科学博物館で「恐竜博2023」が開催されています。監修された真鍋さんに見所を教えていただきました。
「国立科学博物館では恐竜博とかそういう形で、何年かに一回、大きな展覧会をやっているんですけど、今回は2019年以来4年ぶりの展覧会です。
ポスターとかチラシとかインターネットでは、トゲトゲっていう、鎧竜(よろいりゅう)アンキロサウルスとか、体を鎧で守ったそういう恐竜のグループがいるんです。草食恐竜ですけどね。その子たちのすごくいい化石が見つかって、それがアメリカで見つかった『ズール』っていう名前の鎧竜なんですけど、その全身の実物骨格が来ています。

ゴルゴサウルス(右)の全身復元骨格
それから、みんなが大好きなティラノサウルス・レックスの実物化石が来日していたり、先ほどちょっとご紹介した、私たちが2020年3月にアルゼンチンで発掘してきた『マイプ』っていう新種の肉食恐竜の化石、これは実物の化石を特別にアルゼンチンから持ってきて展示しているんですけど、まだ組み立てていないんですね。だから恐竜の姿にはなってないんですけれども、その実物化石も展示されます。実はマイプはアルゼンチンでも公開されていないので、世界初公開なんです。ぜひ会いに来ていただきたいと思っています」
INFORMATION
この本には、真鍋さんたちが発見した新種の肉食恐竜「マイプ」のイラストや発掘現場の写真もあって、興味深いです。恐竜に関する専門的なことがわかりやすく載っているので大人が読んでも面白いですよ。恐竜研究の入門書的な一冊、ぜひ読んでください。
岩波書店から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎岩波書店HP:https://www.iwanami.co.jp/book/b616719.html
現在、上野の国立科学博物館で開催されている「恐竜博2023」は6月18日まで。ぜひお出かけください。詳しくはオフィシャルサイトを見てくださいね。
◎「恐竜博2023」HP:https://dino2023.exhibit.jp
2023/3/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、バックパッカーそして紀行家の「シェルパ斉藤」さんです。
斉藤さんは、アウトドア雑誌「BE-PAL」でお馴染みの人気ライターであり、人力移動の旅の本を数多く出版されている作家でもいらっしゃいます。
この番組とは30年来のお付き合いで、事あるごとにご出演いただいています。そして、きょうの放送が1600回目ということで、何かのご縁を感じます。
そんな斉藤さんが先頃『あのとき僕は〜シェルパ斉藤の青春記』という本を出されました。今回は「旅と音楽、そして原点」というテーマのもと、斉藤さんの甘酸っぱくも切ない青春時代の思い出に迫ります。
☆写真協力:シェルパ斉藤

原点は山村の通学路
●今週のゲストはバックパッカー、そして紀行家のシェルパ斉藤さんです。以前はオンラインでのご出演でしたので、やっとリアルにお会いできました。よろしくお願いします!
「よろしくお願いします! こんな顔をしています。やっぱり嬉しいですね、会えると・・・」
●そうですね〜、嬉しいです! 今回は先頃出された本『あのとき僕は〜シェルパ斉藤の青春記』をもとにいろいろお話をおうかがいしていきますが、番組のほうで勝手にテーマを決めさせていただきました。
そのテーマとは「旅と音楽、そして原点」ということで、旅は広く解釈して人生という意味もありますし、斉藤さんの場合は節目節目で、音楽もすごく重要な要素になっていますよね。
「なんか結果的ね。なんとなく音楽があると、あの時はああだったなっていうのをたまに思い出しますね。たまたまラジオで(懐かしい曲が)かかると、ああっそうだったっていう・・・そういうのを(本の)ところどころに書いていますからね」
●そうですね。
そして原点は、そのものずばり斉藤さんを物語るいろいろな原点に迫っていきたいと思っております。まずは斉藤さんの原点、生まれ故郷についてなんですけれども、故郷は長野県松本市ですよね?
「松本と言っても、生まれたところはすごく山奥なんですよ。名前はあえてこの本にも書いていないんですけど、今は合併して松本市になっているんです。
すごく山奥の村で、中学になる時に松本市内に引っ越すんですが、その時やっぱり初めは、ああ清々したみたいな感じにちょっと思ったりとかして(笑)・・・松本で暮らしているとだんだん・・・今はすごくいい町だなと当然思っていますしね。それは自分が山に登ったり、旅する中でよく出来た文化もあるし、いい町だなと思うんですけど、盆地なんですよ、松本って。
要するに周りを全部、北アルプスとかに囲まれていて、それもなんかだんだん、ここで終わりたくないっていう・・・こんなとこって言ったらひどいけど(笑)、当時はまだ高校生で、ここで終わったら本当に井の中の蛙みたいな感じで、やっぱりちゃんと広い大海を知らなければと・・・ですから、東京志向がすごく強かったですね」
●そうだったんですね〜。
「でも思えば、そこから東京に出てきて、日本は狭いなって思って、結局そこからまた世界に飛び出しちゃったわけだから、そう考えると原点って意味では、山村の狭いところに生まれ育ったから、今こうやって、いろんなところに行くようになったっていうのはあるかもしれないですね」
●本にも、山村の通学路が僕の原点とも書かれていましたけれども・・・。
「歩く旅はそうかもしれないですね」
●歩くノウハウを自然に得ていたという記述もありましたね。
「まあでも子供って誰でも歩けばそうなるでしょっていう・・・(笑)。今バックパッカーとしていろんな所を旅して、たまにトークショーとか講座とかやってほしいと言われて、山の歩き方を教えてほしいって真面目な方から聞かれても、普通のちゃんと歩ける方だったら、山も歩けるでしょ、としか言いようがないですよね。
要するにそれは子供の頃に通っていた通学路が、今のように集団登校とかも何もなくて、安全な道は一応あったんですけど、子供たちは出来るだけ近道にしたいっていうことで、本当に山道があったんです。そこを一気に行けば、早く学校に着くし、やっぱり楽しかったんですよね。みんなバラバラ歩いて・・・そうしたら歩き方なんて絶対身につくし・・・で、冬になると当然凍っちゃうし 、雪になっちゃうし、そういうところの歩き方が本当に原点になるのかな・・・そんなのが(笑)」

愛聴盤は、吉田拓郎 『元気です。』
●山村で暮らしていた小学生時代に、初めて買ったレコードが吉田拓郎の『元気です。』と本に書いてありましたね。
「ちょうど拓郎さんが出始めた頃で、デビューしてだんだん『結婚しようよ』って曲が大ヒットして、やっぱり憧れはありますね、多分」
●でも小学生で、吉田拓郎のレコードって結構ませていませんか? 大人びてるイメージがあります。
「それはね、うちの兄貴のせいです! ふたつ上の兄貴がいるんですけど、兄貴がやっぱり拓郎とか好きで、当時ね。田舎の山の中ですけど、東京のラジオ局も夜になると(電波が)入るんですよ。で、当時、吉田拓郎はずっと深夜のラジオ番組をやっていて、それをうちの兄貴は夢中になって聴いていたんですよ。
それでお小遣いとかお年玉とか貯まってきて、自分もレコードが欲しいなって思った時に、兄貴が”松本に行くから、政喜(まさき:斉藤さんの本名)、お前にもレコードを買ってやるぞ。俺が買ってきてあげるから、拓郎にしろ”って言われて(笑)。向こうがこれにしろ、みたいな感じではありましたけど、ただ憧れありましたよね、拓郎かっこいいなって・・・。
かっこいいなっていうのは、テレビに出ないっていうのがね。テレビに出なくてラジオだけでっていうのがかっこいいって思ったんですよね。それで最初に買ったのが、というか買ってきてもらったんですけどね・・・一応、僕のお小遣いで買ったのが小学5年生の時の、吉田拓郎の『元気です。』っていうアルバムです」
●特に好きな曲とか、よく聴いていた曲はありますか?
「好きもあるんですけど、よく聴いていたのは絶対に1曲目ですね。CDじゃないからレコードですからね。普通、アルバムのレコードをかけると言ったら、まず1曲目の同じところに針を落とす・・・(笑)、だからアルバム1曲目がいちばん聴いていたはずですね。
要するに途中に針を落とすってなかなか難しいから、だから最初にかけるのはもう1曲目の『春だったね』って曲がいちばん印象に残っていますね。中学くらいまでいちばん聴いた曲は何かって言われたら、『春だったね』だと思いますね」
初めての野宿は、彼女とのデートだった!?
●原点で言うと、キャンプの原点は高校3年生の時の野宿だったことが新しい本『あのとき僕は〜シェルパ斉藤の青春記』で判明しました。地元の川のほとりで野宿されたようですけれども、これはどうして、そうなったのか説明していただけますか?
「なんか取調室みたいな感じになっていますけど・・・(笑)、好きな子がいたんですよ」
●はい、ナツコさんっていう方ですよね。
「仮にナツコですよ(笑)、ナツコって本には出てきますけど。好きな子がいて、高3になった時に初めて告白したんですね。その子は、実は中学から一緒だったんですよ。なので今さらそんなこと、みたいな雰囲気になったんですけど、友達からみたいな感じで、はっきりしないまま、会って放課後、一緒に帰るようになったりしたんですね。
当時の共通一次試験、今はセンター試験と名前は変わりましたけど、僕は共通一次の1期生なんですよ。僕が高3の時にその制度になって、それまでずーっと高校の文化祭は秋に開かれていたのが、夏休みってすごく重要だから、進学のために受験勉強をしなきゃいけないから、(文化祭の開催が)7月に前倒ししたんです。7月に文化祭をやると・・・。
で、僕は生徒会に絡んでいて、文化祭を盛り上げるためにいろいろやろうってなって、文化祭のテーマが「破天荒」だったんです。今までやったことがないことをやるとかっていうので、一生懸命、燃えていたもんですから、自分も何かやろうと考えて思いついたのが、河原で野宿する、で、朝を迎える・・・。
で、なぜその河原を選んだかって言うと、仮のナツコっていう女性の家の近くに川が流れていたんですよ。で、夜にデートしたいと思って、河原で(笑)、それで当時は携帯電話も何もないから、文化祭中に彼女に今夜、女鳥羽川(めとばがわ)、松本に行くといちばんの繁華街を流れている川です。
松本城とか近くにあったりする、本当に繁華街を流れている、ちっちゃな川で、そこにベンチがあったりするんです。僕はそのベンチに朝までいるから、夜会おうって約束をして、それで一応野宿するとか言いつつ、ずっとベンチでいたんですよね」
●ずっとナツコさんを待っていたわけですね。
「携帯電話とかないから本人からも連絡が来なくて・・・で、(夜中の)12時をまわっても来なかったから・・・」
●ずっとベンチで待っていたんですね。
「まあ寝床ですからね(笑)。それで全然来ないからダメかなと思ったら、12時もまわって1時に近かったかな・・・息を切らせて彼女が来て・・・言うには両親が寝静まってからバレないようにこっそり(家を)出てきて・・・息切らしているのもやっぱり怖かったからって一生懸命駆けてくるんですよ・・・なんか自分で喋っていて小っ恥ずかしいね(笑)」
●いや〜キュンとしますね!
「で、ずっとふたりでベンチに座って流れる川を眺めつつ・・・本当にバンカラですから、松田聖子の『赤いスイートピー』じゃないけど、半年経っても手も握らないようなバンカラな子だったから僕はずっと・・・でもやっぱり愛おしくて・・・。
結局彼女は(午前)2時か3時くらいに帰っていって・・・(家まで)送ろうかって言ったけど、大丈夫、帰れるからって・・・。で、そのまま僕はベンチで朝を迎えるんですけど、もうドキドキだし、興奮しちゃって、寝れなくて寝れなくて・・・。気がついたら朝になっていて、結局一睡もしてない野宿・・・それがかれこれ、あちこち旅をしてテントを張ったり、多分1000回以上テントに泊まっているはずだし、野宿もしているはずですけど、第一回っていうのはそれですね」
(編集部中:実はナツコさんとの微妙な関係は大人になっても続いていたそうなんですが、その恋模様についてはぜひ本を読んで確かめてください。益々、胸がキュンとしますよ)

人生の転機となった一通の手紙
※斉藤さんがアウトドア雑誌「BE-PAL」のライターになるきっかけは実は、編集部に宛てた一通の手紙にあったんです。
詳しくは本に載っているので、ここではかいつまみますが、大学生の時に、ひょうなことからゴムボートで中国の大河「揚子江(ようすこう)」を旅することになった斉藤さんは、愛読していた「BE-PAL」に記事を書かせてほしいと、思いの丈を綴った手紙を出したんです。するとなんと! 当時の編集長から数日後、直筆の手紙が、それも速達で届き、直接会って話がしたいと書かれていたそうです。
斉藤さんの手紙には、プロの編集者を魅了する力があったということなんですね。それがきっかけとなり、斉藤さんは編集部に出入りするようになったんですが・・・。
●「BE-PAL」で最初に書いた連載の記事はどんな記事だったんですか? 揚子江の記事は書いたんですか?
「揚子江(の記事)は普通に(本名の)斉藤政喜という名前で書かせてもらって、食べるためってのもあるんですけど、要するに『BE-PAL』の記事を作りたかったんですね。ライターとして今回はこんな特集をやるからっていうので・・・だけど、やったことがないし、しかも文章の勉強なんかまったくしてないし、だから最初はアシスタントですよね。いろいろなものを集めたりとか、ファッションの撮影があったらついて行って、カメラマンが(カメラを)構える横で、レフ板を一生懸命(被写体に)あてたりとかいろいろしながら・・・。
で、わかったんですけど、要は給料はもらえないんだってことに気づいて・・・なってから気づくお前もお前だって言われたんですけど、やった結果でしかギャラって払われないんですよ。フリーってみんなそうですけど・・・だからページを何ページやったらページあたりいくらってギャラが払われるから、自分で仕事を取らなければ、何も収入がないという状況でして、ある意味、本当に平等なんですよね。
そこには学歴も関係ないし、年齢も関係ないし、みんな一律なんですよ。(仕事を)やったらやった分だけ、そのギャラが出ると・・・それで仕事をだんだん覚えてきて・・・今思えば本当に恵まれていたのは、編集長自らが、お前この世界に来いって言ったもんだから、とにかく毎日来いって言われたんですよ。
編集部にも毎日行くと一緒に食事とかご馳走になって、夜は酒を飲みながら食事して・・・で、その時にいろんな話を聞いたりとか、それが刺激になるし、そういうことしているうちに、だんだんと文章も少しずつ書けるようになって・・・だから最初はライターをやっていましたね、ずっと。
だけどある時にやっぱりフリーのライター・・・まあなんでもかんでもフリーランスはそうですけど、仕事が来ると嬉しいから、いろいろ引き受けちゃうと結局休みもないし、俺、旅に行きたくって、自由になれると思って、フリーになったのにぜんぜんフリーな状態じゃないじゃんって思ったんですよね。
それで一回仕事を引き受けないで、生意気なんですけど(笑)、海外に行ったんですよ。当時マウンテンバイクが流行り始めたから、それでとことん(旅をしようかと)パキスタンと中国の国境にクンジュラブ峠って峠があって、それが(標高)4〜5000メートルなんですけど、そこまで行こうと思って行ったんですね。
ずっと旅をして何ヶ月も旅をして、旅の最後はどうしようかなって考えた時に、道の終わりまで行ってみたい、道の終わりってどこよっていったら、この先はもう行けないよっていうのを考えた場合に世界最高峰のエベレスト、そこにベースキャンプがあるんですね。(標高が)5500メートルくらいですけどね。その先はもう登山の領域だし、当然登山料とか必要になってくるけど、そこまではトレッキングの領域なんですよ。じゃあそこまで自転車で行こうと思って、自転車をずっと押していったりとかしていたんですよね。
そういった旅を終えて帰ってきたら、ちょうど『BE-PAL』が100号記念かなんかで、東京から大阪まで東海自然歩道っていう道があるから、そこを歩かないか? 歩いて連載しないか? って言われたんですよ。
それで、斉藤政喜って名前じゃつまんないから、お前はネパール帰りだし、シェルパ族のシェルパでいいだろう、”シェルパ斉藤”にしろって言われたんですよね。シェルパって、クーンブ地方って言うんですけど、あの辺に住んでいる山岳民族で高地に強いから登山のガイド的な代名詞になっていますよね。考えたら読者を歩く旅に導くって意味ではシェルパでもいいかなと思って、それを受け入れて、かれこれデビューして33年から34年になるのか・・・ずっと(『BE-PAL』)で書いていますけどね」
●シェルパ斉藤としての原点はそこだったわけですね〜。
「そこですね」

これからが僕の本番!?
※現在も野営の道具を持って歩く旅を続けている斉藤さんは今、旅に対してこんな思いを持っています。
「旅はまだまだこれからだなと、僕は実は思っていて・・・」
●まだまだこれから!?
「まだまだこれからっていうか、実は2年前にコロナの影響もあったんですけど、その時に僕60歳、還暦を迎えたんですよね。その時にふと思ったのは、今まで40年間くらい旅をずっとしてきたんだけど、これってこれから旅をするための養成期間だったんだなと思ったんですよ。いろんな旅をしてきたけど、60歳を過ぎて、旅をするための養成学校だったんだって思えると、これからが僕の本番だぞって思えたんですよ。
本当に長い40年もかかる学校をようやく卒業したんだ! いろんなことをやってきたけど、あれはみんな学ぶためにやってきたんだ! だからこれからはそれを実践していく場なんだって思ったら、なんかすごく未来が開けた気がして、あっ!これからが本番じゃないかって」
●その本番はどんな展開になりそうですか?
「今までいろいろやってきたことの繰り返しも当然あるでしょうし、それからこの年になるとまた発想が変わってくるので、正直言ってしまうと当然、体力も落ちているからだけど、それはよりゆっくりといろいろなものを見るために、お前の体力を落としているんだぞって考えたら、いろんなものが見えてくるんじゃないかなと思いますしね。だから来年どんなことに興味を持つかわからないけど、興味を持つものをやってこうかと・・・」

●この本を読んで、本当に人生には無限の可能性があるっていうのをすごく感じることができました。
「あっ! それは僕もちょっとそういうのは頭に置いて書きました。 この本を読んでいる同世代の方も、当然読めば、あ〜懐かしいねって思いもあるんだけど・・・僕、実は18歳の時に家業が潰れちゃって、自立して自活して、もう自分で生きていくしかないっていう道で、ある意味道を切り開いてきて、自分でお金を稼いで大学に行ったりとかしたんですけど、ただ何をすべきかずっと見えなくて・・・さっき話したけど、たまたま一通の手紙によって切り開けたんですよね。
それは若者にやっぱり伝えたいな、何があるかわかんないから、本当に可能性っていくらでもあるんだよ! ってことを、勇気を与えたいな、偉そうに言うと・・・。だから、今の歳になって昔の話を書けたので、それは若者に対するメッセージとして受け取ってもらえればなと思っていますけどね」
●では最後に音楽好きの斉藤さんが、あの時の僕に捧げる曲を1曲あげるとしたら、どんな曲でしょうか?
「昔聴いていたんですけど、20歳の時に結構音楽を聴いていて、東京に出てきて、よくレコードを買っていたんですよ。レコードも輸入盤のレコードばっかりをずっと買っていたんですけど、やっぱり自分を鼓舞する曲(を聴いていましたね)。
もうほんとうに辛いし、ひとり暮らしだし、仕送りもないしって時に、自分を鼓舞する曲をよく聴いていて、特に印象に残っているのが、ボブ・シーガー・アンド・ザ・シルヴァーバレッドバンドの『アゲインスト・ザ・ウインド』っていう曲があって・・・その曲がすごく好きで・・・。
その『アゲインスト・ザ・ウインド』の後半のところに、『アイム・オールド・ナウ・バット・スティル・ランニング・アゲインスト・ザ・ウインド』「俺はもう若くないけど、それでも俺は風に向かって走っているんだ」っていう歌詞があって、当時もそれ聴いていて、わっ! と思ったんだけど、今この歳になって聴くと、本当にそれをもう一回言いたくなるな。
だからあの時の僕に言いたいとしたら、本当にもう今「アイム・オールド・ナウ・バット・スティル・ランニング」、正しく言うなら「バット・スティル・ウォーキング」ですかね。「ウォーキング・アゲインスト・ザ・ウインド」、風に向かって僕はずっとまだ歩いているぞ! っていうのはやっぱり言いたいですね!」

INFORMATION
この本には、斉藤さんの少年時代からフリーのライターになるまでの出来事が綴られています。見開き2ページでひとつの話題が完結しますし、なにより斉藤さんの文章は親しみやすので、すいすい読めますよ。ドラマチックな青春映画のような本、ぜひ読んでください。しなのき書房から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎しなのき書房HP:http://shinanoki.net/?pid=172662166
斉藤さんのオフィシャルサイトもぜひ見てください。
◎シェルパ斉藤さんオフィシャルサイト:https://team-sherpa.wixsite.com/sherpa
2023/3/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターで防災士の「鈴木みき」さんです。
鈴木さんは東京都生まれ。24歳の頃に1年間、過ごしたカナダ生活をきっかけに山に目覚め、山雑誌の読者モデルや、山小屋などのアルバイトを経て、イラストレーターに。そして、登山初心者に向けた本を多数出版、登山ツアーの企画もされています。その後、東京から山梨県北杜市に移り、現在は札幌を拠点に活動中。
2018年に北海道胆振(いぶり)東部地震で被災、その際、山登りやアウトドアで培ったスキルを活かし、在宅で避難生活を送り、その経験から防災士の資格を取得されています。
そんな鈴木さんが先頃、おうちで防災をテーマにした本『キャンプ気分ではじめるおうち防災チャレンジBOOK』を出されたということで、再び番組にお迎えすることになりました。
きょうは、日頃から取り組むおうちで防災のヒントやアドバイスをいただきます。
☆写真&イラスト協力:鈴木みき、エクスナレッジ

鈴木式おうち防災チャレンジ

●新しい本には「2日間でできる鈴木式おうち防災チャレンジ」ということで、ヒントやアドバイスが本当にたくさん載っています。
いくつか具体的にご紹介していきたいんですが、冷蔵庫のお掃除という項目もありましたよね。冷蔵庫の中身をすべて出して、賞味期限をチェックしながら食材を入れ戻しましょうということで、日頃から生鮮食品を買い溜めないとか、消費期限を守るということも立派な防災なんですね。
「そうですね。日常で節約するっていうか、実は生活の中でのちょっとしたことでも防災になっているっていうことなんですね。保存食とかも消費期限が切れてないかをチェックするチャレンジもあるんです。それをチェックすることで、あるから買わないでおこうっていうことになりますよね。
あとは食品の期限が切れる前に食べなきゃいけないなって思って、消費するっていうこともあるので、食品ロスも減らせたりするのもいいかなっていうか、それが実は防災になっているっていう気づきになればいいなと思っています」
●あとポリ袋で炊飯という項目もありましたね。
「これは停電で炊飯器が使えなくなった時に、湯煎でお米が炊けるっていうものなんですけど、これ一度やってみてほしいんです! 本当に簡単だし!」
●ざっくり言うと、どんなやり方をすればいいでしょうか?
「耐熱のポリ袋、ビニール袋みたいな耐熱仕様のものを使っていただきたいんですけど、そこに直に白米を入れて、お水を入れて、それを湯煎(ゆせん)して炊くっていうものなんですね。簡単なんです。言われた通りやってもらえれば、ほとんど失敗なくちゃんと美味しく炊けるので、これ覚えておくといいと思うんです」
●すごいですよね。温かいご飯がポリ袋で炊けるんですね!
「意外でしょ。ビニール袋に入れて!? 湯煎で・・・!? っていうのを、私も信じられなかったんですけど、やってみたらすごく簡単でした。
もちろんガスが止まっていたりとかする時のために、カセットコンロも用意しておいてほしいんですね。例えばガスでやるとなると、お鍋で炊飯することがまず浮かぶと思うんですけれど、それだとやり慣れてないと、失敗することもすごく多いと思うんですよね。ポリ袋炊飯は多分誰がやっても、美味しく炊けると思います(笑)」
●これ覚えておくといいですね!
「アウトドアでも本当に役に立つと思うので、(防災とアウトドア)両方ですよね」

寝室と避難場所、チェック!
●寝室の模様替えという項目もありました。自分に倒れてこなくても、倒れたら出口を塞いでしまう家具がないか確認しようということで、そこはちょっと盲点でした。自分に被さらなければ、いいやとしか考えてなかったので反省しました。
「小尾さん家の寝室がどうなっているか、ちょっと見てみたいですけど(笑)」
●出口にも気を付けなきゃいけないんですね?
「そうなんです。地震を想定してのチャレンジではあるんですけど、寝ている時の突然の地震、これまでもみなさん何度も経験があると思うんですけど、意外と寝ぼけていますよね? 揺れてもとっさに何かできるってことはなかなかないので、倒れてくるものがあったり、出口を塞ぐものがないか、一度ベッドに寝転がって目を開けて見てほしいんですよね」
●そうですね〜。あと避難場所までお散歩しようということで、ひとつの避難場所に対して、複数の経路があるといいですよと書かれていましたが、これは確かに大事なことですね。
「最短の道が安全だとは限らないんですよね。例えば、いろんな災害があって、地震だったら洪水だったらとか、いろんなバージョンがあると思うんですけど、それが起こった時に、この経路が果たして安全なのかどうかを、そういう視点で散歩すると、普段の散歩もちょっと違ってくると思います」
●ゲーム感覚というか楽しみながら体験するというのがいいですね!
「防災とか避難訓練ってなっちゃうと、なんかちょっと構えちゃう、やらなくなっちゃうってこともあるし、なんか面白くなさそうじゃないですか(笑)。なので、ゲーム性みたいなものがあると、楽しんでやってもらえるのかなと思って、チャレンジ式っていう感じで本を作ってみたんですよね」
●やっぱり体験しておくと、何が必要で何がいらないかっていうのも確認できますね。
「確かにそうですね。やってみないと分からないことはたくさんあって、だから毎年、避難訓練みたいなものはあると思うんですけど、なかなか自分ごとにはなりづらいですよね。
本当の災害とか避難生活は、誰でもぶっつけ本番でできるほど、甘くはないと思うんですね。ご自宅でできるんであれば、身近なものでやるので自分ごとにしやすいし・・・なので、この本にあるチャレンジを通して、楽しく在宅避難の類似体験みたいな感じでやってもらえたらいいかなと思います」

水、携帯トイレ、モバイルバッテリー
※防災グッズでこれは特に用意しておいたほうがいいと思うものがあれば、教えてください。
「自分の避難した時の経験からも強く伝えたいですし、あとは多くの避難経験者も言っていることなんですけど、水と携帯トイレですね。私がすごく(備えておきたいと)思ったのはモバイルバッテリー。この3つは意外と意識してないと、その量を備えていないものだなと思いました」
●具体的にはどれくらいの量を準備しておけば、よろしいですか?
「水に関しては、1日ひとり3リットルが防災のセオリーとしてよく言われることなんですね。ご家族がいれば、結構大量にはなるんですけど、自分の家にどれだけ必要なのかっていうマイ備蓄量みたいなものも、このチャレンジの中で見つけられると思うので、参考にしてほしいなと思います。だいたい1日3リットルとすると、3日分くらいは最低でも用意しておくといいと思います」
●モバイルバッテリーや携帯トイレは、大体どれくらいになりますか?
「モバイルバッテリーは多分みなさん、スマホとか使っていらっしゃるから持っていると思うんですが、1回分の充電っていうよりはもうちょっと大容量のもの、4〜5回できるぐらいの大きなもの、ご家族がいる家だとポータブルバッテリーと言って、スマホの充電以外にも電気をつけたりとか、ちょっとした家電が使えるようなものも今は買いやすくなっていると思うので・・・。最低限スマホの充電ができるバッテリーを、ひとり1個は必ず持っておくといいですね。
携帯トイレについては、その人が1日何度用を足すかとか、そういうことにも関係してくるんですけど、ひとり1日3つあれば十分だと思います。ひとり暮らしであれば、ひとつの携帯トイレに何回か用を足すこともできたりするので・・・。ちなみに私はですけど、被災後にこれは携帯トイレを備えとかなきゃ! って思って、手作り用いうか個々に揃えて50セット備えてます。
業務用のものを買ったから50セットっていう感じにはなってしまったんですけど、多い分にはお互い様なので、災害時にご近所にも配れるし、いいかな思って、ちょっと多めに備えていますね」
(編集部注:在宅避難の大前提として、災害の規模にもよると思いますが、自宅で安全に過ごせるか、備えはあるかなどの状況が許せばということです。そして、定期的に情報を得ること、孤立しないようにすること。そして特にひとり暮らしのかたは、近所に助けを求めることが大事だそうです。
それから、自分が住んでいる街のハザードマップや防災マップを日頃から確認しておくこと。私もネットで調べたら、すぐ出てきました。ハザードマップには、避難所や給水所など、知りたいことが書いてあります)

自分のことは自分で
※ここまでは「おうちで防災」というテーマで、在宅避難のお話をうかがってきましたが、在宅での避難が難しい場合も当然あると思います。避難所に行くときに最低限、持っていったほうがいいものはなんでしょう?
「いろいろあれば、安心だったり便利でもあるんですけど、最低限って言われたら自分の命、それだけを持って行ってもらえればいいと思います。
それ以外ということで言えば、私もそうだったんですけど、避難所に行けば誰かがなんとかしてくれるって、勘違いしている人が結構多いのかなと思うんですね。災害の規模や自治体にもよるんですけど、被災したことがないとか避難したことがない方が想像しているような、誰かがなんとかしてくれるまでは、時間がかかることが多いんですね。
それまでは自分でいろいろ備蓄品を使って、自分でやらなきゃいけないとか、そういうことのほうがほとんどなので、備蓄品があるにしても自分で1泊2日ぐらいなんとかできる用意を持って行くと、食べ物とか、安心じゃないかなって思います。飲料水であるとか、さっき言ったモバイルバッテリーの容量であるとか・・・あとは季節にもよりますけど、寒い季節であれば、防寒着であるとか・・・。
最低限の備蓄品は避難所にあると思ってもらっても構わないんですけど、それが全員に行き渡るかはわからないですね。
なので、自分が持っていれば自分で持って行って、余ったものは誰かに使ってもらうこともできるので、そのくらいの準備をしておいたほうがいいですね。体育館などで寝ることが多いと思うので、そういうのを想定して、考えてもらえればいいのかなと思います」
●そんな避難所から自宅に戻れることになった時に注意することはありますか?
「これはまず被災状況の確認と言われています。建物に何か異常がないかとか、インフラも急に使わずに確認のステップみたいなものもあるんですね。もし何か異常があった場合は必ず写真や動画に収める、これがあとで保険などを請求する際の罹災(りさい)証明を取る時に必要になってくるので、必ず触らずに、最初その状況を収めておくのが大事になってくるみたいですね」
平時に防災チャレンジ!

※山好きでアウトドア経験も豊富な鈴木さんが、2018年に札幌で大きな地震に見舞われ、実際に被災されていちばん役にたったアウトドアのスキルはなんですか?
「いちばんは危険に対する心構えですね。もうひとつあげてもよければ、電力とかインフラがない環境で過ごす経験かなと思います。そこにある危険を想定して備えて出かけるのがアウトドアの基本ですからね」
●防災力を日頃から上げるために、何かやっておくことってありますか?
「それはもうアウトドアに行ってもらうことですね! 体も動かすし、避難行動や避難生活に必要な体力や気力も養えて、一石二鳥というか、それも防災につながっていると思います」
●そうですね。やっぱり普段から家族とか友人たちと、もしもの時の話をするのも大事ですよね。あと体験しておくことも。
「はい、そう思います。平時でしか練習はできないんですよね。避難訓練もそうですけど、災害が起きてからでは本番になってしまうので、ぜひ平時に、この本にある17個のチャレンジを読むだけじゃなくて、実際にご家族やご友人と楽しくやってもらえたら嬉しいです」

☆この他の鈴木みきさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
鈴木さんの新しい本をぜひ読んでください。おうちでキャンプの予行演習をしながら、楽しく気軽に防災力をあげられます。チェックリストも載っていて、役立ちますよ。一家に一冊、ぜひ! エクスナレッジから絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎エクスナレッジ:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767830865
鈴木さんの近況についてはオフィシャルブログ「鈴木みきの とりあえず裏日記」を見てください。
◎鈴木みきさんオフィシャルブログ:https://ameblo.jp/suzukimiki/
2023/2/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自転車の旅人「坂本 達(さかもと・たつ)」さんです。
坂本さんは1968年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、ミキハウスに入社。95年から99年にかけて、4年3ヶ月かけて、自転車で世界一周、43カ国、55,000キロを走破。その後、出版した本の印税で、お世話になったギニアの村に診療所を建てたり、井戸を掘ったりと恩返し、そして国内で社会貢献活動にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。
世界一周の旅については以前、この番組で詳しくお話をうかがったことがありますので、ぜひ番組ホームページのアーカイヴをご覧いただけたらと思います。
坂本さんは現在、会社員のかたわら、親子5人、自転車による「坂本家・世界6大陸大冒険」にチャレンジ中です。きょうはそんな大冒険から、四国のお遍路、そしてスペインの巡礼路の旅についてうかがいます。
☆写真協力:坂本達

四国のお遍路800キロ!
2015年に8年計画でスタートした坂本家「世界6大陸大冒険」は、およそ1ヶ月、長い時には3ヶ月ほどかけて、自転車で旅をするスタイルで、第1ステージのニュージーランド編に始まり、スペイン、ポルトガルほかのヨーロッパ編、続いてカナダ・アラスカの北米大陸編、そしてネパール、ブータンほかのアジア編などを経て、2022年の第8ステージまで終えています。
お子さんは男の子が3人。長男の健太郎くんが小学6年生で12歳、次男の康次郎くんが4年生で10歳、そして三男の大和(やまと)くんが3歳。上のふたりは、だんだん手がかからなくなり、だいぶ楽になってきたそうです。
※それではお話をかがっていきます。
「世界6大陸大冒険」のサイトを見たら、第8ステージまで完了していました。第7ステージは四国に行ったんですよね?

「そうなんです。この年もコロナで海外が全然無理だったので、このタイミングで日本の文化とか日本の土地をまわるのもいいなと思いました。距離的にも文化的にも四国を一周すると約1000キロ、四国は自転車のルートを整備していたりと、お遍路の文化があるので、このタイミングでちょうどいいんじゃないかなと思って、それで四国を選んだんです」
●2021年ですよね?
「はい、2021年ですね。夏休みです」
●期間はどれくらいだったんですか?
「1ヶ月ちょっとです。徳島からスタートして、高知をまわって愛媛、香川でぐるっと一周っていう感じですね」
●自転車で走った距離はどれくらいですか?
「だいたい800キロぐらいだったかなと思います。実はその夏は台風とか雨とかが四国のほうに来ていて、全く走れない日があったりとか、ビーチに行こうと思っても荒れていたり、楽しみにしていた四万十川も濁っていたりと、ずっ〜と走れない日が続いていました。
実は大和がまだ1歳半だったので、妻が大和を車に乗せて、サポートカーっていう形でまわったんですね。
僕と長男と次男は自転車で走って、朝、別々に出発して、途中何ヶ所かで合流してお昼を食べたりして、目的地を大体決めていましたね。ずっと一緒に走ると車のほうもストレスなので、途中途中で会って・・・大和もチャイルドシートでぎゃん泣きしたりしていたので(苦笑)、お兄ちゃんたちがあやしてくれたりとかしながら、時には車に乗って移動したりしていました。本当は1000キロぐらい走れるかなと思ったんですけども、800キロぐらいだったと思います」

●四国のお遍路にはお接待の文化があると思うんですけれど、やはりお世話になったんですか?
「なりました。コロナっていうこともあって、お遍路さんも少なくて・・・例年、特に外国人が多いそうなんですけど、2021年はぜんぜんっていう声をよく聞きましたね。
その分、お遍路宿に泊まっても、私たちしかいないということもあったりで、子供たちが泊まる料金をただにしてもらったりとか、草引きをお手伝いしたら、もう1泊してっていいよとか、ご飯を特別に出してもらったり、おにぎりを持たせてもらったり・・・そういった文化に触れることはすごく多かったです」
再びスペインへ、巡礼路の旅
※続いて、第8ステージについて。2022年7月から8月にかけて、再び、スペインに行っていたみたいですね?
「そうなんです。実は7年前にも同じ道を走っていたので、2回目になったんですけれども、やっぱり小さい子の安全面、交通事故に合わないようにって考えると、どうしても車が通らない道というのを選んで、なかなか海外では少なかったですね。
あと前回、子供たちが巡礼者や現地の人にとても励ましてもらって、走ることができた一体感みたいな・・・世界中の巡礼者が集まってきて、最後は家族みたいになって一緒にゴールするっていう1〜2ヶ月の、そういうルートをまたやりたいと思って、それでスペインの巡礼路に行ったんです」

●どれくらいの走行距離だったんですか?
「旅の期間がちょうど1ヶ月と限られていまして、1ヶ月の間に自転車を(日本から)運んで組み立てて、最後にバラして日本に送るところまでだったので、実質走行したのは3週間ぐらいかな・・・距離にして大体500キロぐらいです。巡礼路自体は1000キロ以上あったりするんですけども、私たちはピレネー山脈を超えた平原が広がるところ、そこの町からだと、だいたい500キロという感じでしたね」
●家族5人で?
「はい、そうです」
●大和くんは、当時は2歳くらい・・・?
「そうですね。2歳半です」
●奥様は不安も大きかったんじゃないですか?
「今回は私の後ろに大和を乗せる感じだったので、妻は自転車の荷物だけで、それほど不安はなかったかな・・・あっ! 暑かったですよね? 日本も。去年は熱波がヨーロッパにも来ていたので、それは大変でしたね」
(編集部注:ちなみに今回のスペインの旅では、自転車4台や装備、ウエアなど、荷物の総重量は130〜140キロほどになったということで、特に海外に行く場合は、大変だろうなと思ったんですが、坂本さん曰く、いろんな意味で覚悟はいるけれど、準備さえしっかりしていけば、海外でも助けてくれるかたはいるので大丈夫ですよと、経験豊富な坂本さんらしいお話がありました)
子供たちの成長
※スペインの旅は、先ほど熱波だったというお話がありましたが、旅の後半に奥様が体調を崩してしまうというアクシデントがあったそうです。そんな状況の中、健太郎くんと康次郎くんがお母さんの自転車を押したり、荷物を持つなど、いろいろ気遣っていたそうですよ。子供たちの成長を感じた旅でもあったんじゃないですか?

「そうですね。特に健太郎は、小学6年生っていうこともあって、体力がついてきましたね。康次郎が初めて自分で荷物を積んだので、その分、妻の荷物が少なくなったんですが、それでも上り坂(標高が)1300メーターぐらいの峠が2つぐらいありますので、健太郎がもっと荷物を持ってあげるって言って、まだまだ軽いから、まだまだ大丈夫とか言って・・・一回、健太郎の荷物を持ったら、むちゃくちゃ重たくて、えっ! こんなに重たいのを持っているの! みたいな・・・そんなふうに何も言わないのにやってくれたりとか・・・。
荷物も、毎日移動しますから、パッキングしたりとか、着いたらすぐに荷物を部屋に運び込んで、今まではこれやって、あれやってっていうのを、もう言わなくても全部自分たちで段取りをやってくれるようになりました。
空港についても自転車の大きい箱を載せたカートを押してくれたりとか、私たち夫婦がやっていたのを子供たちがだいぶ手伝ってくれるようになったので、その辺はすごく成長して本当に助かりました」
●どんどんたくましくなっていきますね! すごいですね!
「はい、ありがたいですね」
●家族5人で、しかも自転車で旅をされていると、いろんな方々から声をかけられたんじゃないですか?
「スペインは本当にいろんな人が当たり前に声をかけてきてくれて、子供たちはもうべらべら喋られるのが嫌だっていうぐらい声をかけられるみたいです。
一回、スーパーに買い物に行った時に、妻が子供たちとメロンを見ていたらしいんですね。そうしたら、おばちゃんがいたので(妻が)”ちょっとメロン高いわね”って話しかけたら、”子供を連れて自転車で冒険していたら、お金もかかって大変でしょう”って言って、子供たちに1ユーロずつ、お小遣いをあげてくれたりとか・・・。
あとは公園に行っても、子供たちに声をかけてきてくれたりとか、巡礼者同士もお互い励まし合って、特に小さい子がいるので、“チャンピオン、チャンピオン”って、”お前はチャンピオンだ、すごいな”って声かけてくれたりするので、むしろひとりにしてもらえないというぐらいな感じで(笑)、本当にスペインは暖かかったし、すごく励まされましたね」

坂本家の旅はまだまだ続く!?
※2015年に8年計画で始まった世界6大陸大冒険は、予定では今年で最終となるはずでしたよね?
「はずだったんですね。さすがに子供も6年生になったら、自分の時間、夏休みとか友達とも遊びに行きたいかなとも思っていたんですけれども、三男の大和が生まれて、年の離れた子がいることで、一緒に冒険にチャレンジしたいって言ってくれているんですね。今年の夏は、どうしようかっていうのも毎日のように話したりしています。
友達とは学校のあととか週末に遊びながら、冒険は冒険でもうしばらく続けようっていう感じで、父としては嬉しい限りですけどね(笑)」
●子供たちの意思を尊重して、続けるだけ続けていこうという感じですね?
「そうですね、はい。でもだんだん子供たちに体力がついていく一方で、私は体力の維持が大変なので・・・(笑)」
●そうですよね(笑)
「ほかにも時間を手に入れるのが私としてはいちばん難しいところ、大変なところですけど、それに向けていろんなことを調整するようにしています」
●それでもやっぱり旅を続けようって思われるのは、どうしてですか?
「なんでしょうね・・・まず私が純粋にやりたいっていうのもありますし、妻が自転車でなければ、出会えない人たちとの出会いが宝になって・・・例えば四国と北海道は妻が妊娠中だったり、大和がちっちゃくて、サポートカーだったんですけど、(妻が)やっぱり出会いがすごく少なかったと、車に乗っていると出会いが半分ぐらいになってしまうと言っていたんですね。
やっぱり旅先で出会った人たちとの出会いって、その後もずっと続いていて、普段の生活では出会えない人たちの出会いとか経験とか、そういうものが何事にも変え難いので、子供たちにとってもすごくいい経験になりますね。
ある意味、教育っていうには違うかもしれないんですけど、異文化を肌で感じて、予定通りにいかないこの自転車のプロセスを、どうやったら解決できるかっていう、答えのないことを家族で話し合いながら進める、そういうプロセスが私は好きですね。
子供たちもだんだん年を追うごとに自分で決められる、意思決定して距離とか泊まる場所とかを決められるようになったので、それを楽しく感じられる、それもあると思います」

旅以外の異文化交流
※坂本家のように家族で自転車旅をしてみたいと思った方にぜひアドバイスをお願いします。
「家族と自転車旅ですか・・・そうですね・・・(家族で自転車旅をしているかたは)いないことはなくて、海外のかたはそれこそ1年とか2年、子供を連れて走っていて、旅先で会うと、”あれ? 子供たちは学校どうしているの?”って聞いたら、オンラインでやってるとかホームスクーリングをやっているんだとか・・・。
現実的な仕事とか学校っていうのはあると思うんですけど、これしなきゃいけないというのも現実にはあるとは思うんですけど、本当にやりたいことが家族での自転車の旅だとしたら、それを中心に仕事もそれに向けて変えて、学校もそれに向けて変えたりとか、そのままで難しかったら、環境を大きく変えてしまうというのが、いちばん難しいんですけど、でもいちばん続けやすいとは思いますね。
ただそうは言ってもなかなか難しいとは思うんですね。コロナもあけてくると思いますし、海外からのサイクリストも日本に来始めていて、家のほうにも泊めてもらえないかっていう連絡が来たりしているので、そういう人たちを日本でおもてなししながら、一緒に家族同士、自転車で旅をしたりとか、家にホームステイして泊まってもらったりとか・・・。
自転車旅だけではないと思うんですけど、海外の人との交流って・・・自分たちが海外に行かなくても、週末だけ子供たちに”ちょっと部屋を貸してくれる?”って言って、海外からのお客さんに泊まってもらったり・・・。
子供たちに、トイレとかシャワーとかタオルとか、使い方を教えてあげないと(海外からの)お兄ちゃんたちが生活できないからって言うと、なんとか案内しながらコミュニケーションを取ってくれたりするんですね。
自転車に限らず、海外の人と交流したりすることは、だいぶできるようになると思うので、今までと違った環境とかホームステイとか、そういうのもいいんじゃないかなって思いますね」
INFORMATION

「坂本家・世界6大陸大冒険」の旅の模様は、オフィシャルサイトに写真とともに詳しく載っています。子供たちの頑張りや成長がよくわかりますよ。ぜひご覧ください。詳しくは、坂本達さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎http://www.mikihouse.co.jp/tatsu
坂本さんは、世界一周の旅の経験を子供達に伝える活動もされています。そのひとつがベネッセのオンライン対話型ライヴレッスン「未来キャンパス」、3月後半から4月に開催予定とのことです。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
2023/2/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本初のテントサウナ専門ブランド「サウナキャンプ」の代表「大西 洋(おおにし・ひろし)」さんです。
大西さんは、テントサウナを日本のカルチャーにするために日々奮闘中。世界初とされている3層式のテントサウナなど、関連商品を海外から輸入しているほか、ご自身でもテントサウナ専用のアパレルやギアを開発されています。
そんな大西さんが先頃『All About TENT SAUNA〜テントサウナのすべてがわかる本』を出されました。日本初のテントサウナの専門書といえる本で、基礎知識やノウハウなどが満載。テントサウナを楽しんでいる写真もたくさん載っていて体験したい! そんな気分にさせてくれます。

きょうは自然との一体感が味わえるというテントサウナの醍醐味やノウハウなどうかがいます。
☆写真協力:SaunaCamp.

自由さとモバイル性!?
※いきなりなんですが、テントサウナの魅力って何ですか?
「いくつかの側面があるんですけど、ひとつはプライベート・サウナだっていうことですね。世界最小単位のプライベート・サウナって僕らは言っているんです。日本でサウナっていうと、街の中にあるいわゆる公共スペースなので、自分たちが好きなように振る舞うことってなかなかできないんですよね。
でも本場のフィンランドとかそういった国々だと、基本的に(サウナが)ご自宅にあったりとかするので、好きなタイミングでサウナストーンにアロマ水をかけるロウリュ、あれを自分のタイミングで楽しめたりとか、家族や友達と一緒に入って、おしゃべりを楽しんだりとか、そういうことが自由にできる場所が日本にはなかなかなかったですよね。やっぱり(サウナを)買おうと思うと高いんですよね、ご自宅に作ろうと思うと・・・。
だけど、テントサウナだったら気軽に買えて、収納もちょっとした物置に置いておけるぐらいで、使う時だけ広げて、男女で一緒に入れる、夫婦で一緒に入れる、恋人と入れる、友達と入れるので、自分のタイミングでロウリュも楽しめる、この自由さが魅力のひとつですね」
●テントサウナ は、やっぱり自然の中で体験できるのがまた魅力なんですよね?
「ふたつ目の魅力がやっぱりモバイル性なんですね。どこにでも持って行けて、どこにでも建てられる、小さいものだと2メートル四方ぐらいのスペースがあれば、そこがサウナになるんで、世界が違って見えるんですよ。
このラジオの収録スタジオの中にも、物理的にはサウナが作れると思うと、綺麗な湖のほとりに建ててみようとか、綺麗な川の横でやってみようとか、そういうふうに世界が違って見えてくるんですね」
●なるほど。確かにすぐ冷たい水に入れるっていうことで、川とか湖とか海の近くがいいっていうことなんですね。
「いわゆるサウナは、サウナだけじゃなくて、サウナ、水風呂、外気浴のこの3つがセットなので、やっぱり体を冷やす水風呂となる場所が必要なんですけど、自然の中で楽しむとなると、川、湖、海みたいなところでやると、熱々に体を温めたあと、すぐに綺麗な湖に飛び込むみたいなことができるので、これがやっぱり本場の楽しみ方なんですね。
今まで日本でそういうことを楽しめる場所は、ほとんどなかったので、テントサウナさえあれば、海外の本場のサウナが気軽に体験できるっていうことなんですね」
●確かに川とか湖とか海の近くがいいっていうことは、カヤックやラフティング、サーフィン・・・そういった水遊びのアクティビティとも相性がいいっていうことなんですよね?
「そうですね。僕も実際、釣りとサウナを一緒に楽しんでいたりするんですけど、キャンプ場に行ってテントサウナを建てて、一旦釣りを楽しんで、その間にサウナを温めておくんです。で、ひとしきり終わって、ご飯とか食べたあとにサウナに入って、夜は焚き火を楽しんで、みたいなことができたりしますね」
●贅沢な1日になりますね!
「そうですね」
(編集部注:サウナは、2000年ほど前にフィンランドで始まったとされています。白夜の国フィンランドで、冬の厳しい寒さや労働の疲れを癒すために、生活の知恵として生み出され、現在はおよそ550万人の人口に対して、300万個ほどのサウナがあり、フィンランドでは家を建てる時、サウナを中心に設計すると言われています。フィンランドの人たちは、友人や知り合いを食事に招く時、サウナへも招待するそうです。
先ほど、釣りとの相性がいいというお話がありましたが、サーフィンも相性抜群で、寒い時のサーフィン大会にテントサウナが一台あるだけで、体を温められるとサーファーには大人気だそうです。
ちなみにテントサウナの起源は、紀元前5世紀頃までさかのぼるそうですが、現在のようなスタイルは、フィンランドや北方の軍隊が戦時中に利用していた簡易型のサウナがもとになっているそうです。
大西さんによれば、日本でテントサウナが初めて紹介されたのは、2008年頃で、その後、2016年から2017年にかけて、徐々に話題になり始めたということで、まだまだ新しいカルチャーと言えそうです)
富士山を見ながら、非日常!?

※大西さんはいつ頃、テントサウナを知ったんですか?
「僕が初めてテントサウナを買ったのは、2016年です。その頃、本当にサウナから湖に入りたいっていう夢があったんですけど、それが叶う場所が日本になくて、それでインターネットでいろいろ調べていたら、テントサウナというものがあるというのを知りました。
もともとキャンプをずっとやっていたので、なんとか自分ならこれを使いこなせるんじゃないかと思って、フィンランドから輸入したのがいちばん最初ですね」
●実際、テントサウナをやってみてどうでした?
「なんかちょっと笑っちゃうというか、非日常がすごすぎて・・・いつも行っている、富士山の目の前にキャンプ場があるんですね。本栖湖っていう綺麗な湖があって、そこの前でいつものようにテントを建てるんですけど、その中がサウナになるなんて考えたこともなかったんですね。
いつも見ている風景がサウナの中からの風景に変わって、サウナの中から富士山と本栖湖を見て、さらにそこに入るっていう経験がちょっと自分の想像の外にありすぎて、笑いが・・・(笑)、もちろん感動と、とんでもない気持ちよさがあったんですけど、ちょっと笑っちゃいましたね、すごすぎて」
●そこからどハマりして、ついにはテントサウナの専門ブランド、サウナキャンプを作られたんですよね?
「そうですね。日本にテントサウナって文化がそもそも全くなかったので、必要な道具もないし、必要な知識もない、どこで楽しんだらいい、どうやって楽しんだらいい、どんなものが必要、みたいなことが全く情報として整理されてなかったんですね。
僕らも初めて買ったテントサウナは、全部フィンランド語で書かれていたので、何が何だか分からないまま読んでやっていて、結構苦労することも多かったんですよね。なので、日本にテントサウナの文化を根付かせるための活動が必要だなと思って、それで立ち上げたのがサウナキャンプっていうブランドですね」
●そうだったんですね。去年には一般社団法人「アウトドアサウナ協会」も設立されたそうですけれども、この設立の動機とか目的は何なんでしょうか?
「テントサウナ自体が、ありがたいことに人気が出てきて、キャンプ場に行ってもよく見るようになってきたんです。そうなると問題が出てきて、テントサウナってキャンパーの目線から見ると、結構高度なことをやっているんですよね。テントの中で火を扱うってことなので、当然危険が伴うんです。
もしキャンパーだったら、ある程度経験を積んでから、多分トライする内容なんですけど、テントサウナを楽しむ方々って基本的にはサウナが好きでやっている方々で、アウトドアの知識が全然なかったりとか、危ないことを想像できなかったりとかするんですね。これは結構問題だなと思っていて、安全対策を発信することが必要と考えたのがまずひとつですね。
もうひとつがマナー問題です。これもやっぱり同じなんですけど、アウトドアを楽しんでいると、例えば釣りをやっている人の横で、水風呂だっていって(川に)ボチャンって飛び込んだら、当然魚は逃げるじゃないですか。そういうことって想像すればわかるんですけど、視野が狭くなっちゃっていると、なかなか気づけなかったりするんですね。要はそこにいる場をみんなでシェアしようっていう感覚ですね。
焚き火をする人もいれば、釣りをする人もいて、サウナを楽しむ人もいるっていう、みんなでマナーを、気をつけていかないと、テントサウナを禁止しようとかなっちゃうじゃないですか。
なので、安全もマナーも自分たちが楽しめる場所を守るために必要だなと思っていて、これは社会的意義があるなと思ったので、一般社団法人にしてしっかり安全啓蒙をやっていこうっていうのが設立のきっかけですね」
テントサウナの基本セット

※実際にテントサウナをやるときに必要な道具を教えてください。基本セットには、どんなものがありますか?
「まず、テントサウナがテントとストーブとサウナストーン、この3つで構成されているんですね。それ以外に必要なものとしては、中で使うベンチ、それからバケツ、柄杓(ひしゃく)、アロマオイル、あと細かいですけど、耐熱グローブだったり、ペグとハンマーですね。そういったキャンプに必要なものが(テントサウナにも)必要になってくるんですけど、逆に言うとそれぐらいですね」
●テントはテントでも、キャンプ用のテントとはまた違うんですよね?
「普通のキャンプ用のテントには、煙突を付ける穴が開いていないので、専用品じゃないものは、テントサウナとしての使用は基本的に推奨していません。
(専用のテントサウナ には)吸気口が備わっていたりですとか、特殊な気口があるんですね。サウナをやるために、安全に楽しむための気口が備わっていないものに、DIYとかでやっちゃうと事故につながりやすいので、基本的には販売されているテントサウナを使うのがおすすめですね」
●テントサウナ用のテントにもいろんな形があるんですよね?
「そうですね。ワンポールと言ってポール1本とサブポールで構成されているものから、巨大なドーム状のものとか、大きいものだと20〜30人が入れるものもありますね。一般的なのはドーム状で4〜5人が入れるぐらいのものが、いちばん使いやすいので、一般的にはそれを使うんですけどね。
大きいテントを使うとリスキングとか、アウフグースって言われている、白樺の枝葉で体を叩いたり、タオルで風を送ったりとか、そういったアウトドアサウナならではのアクティビティも楽しめるようになるので、そういうのもやりたいって人はちょっと大きめのテントを買ったりするのがいいのかなと思いますね」

※続いて、道具が揃ったところで、次はどこでやるか、なんですけど、テントサウナを楽しめる場所を探すには、どうすればいいですか?
「基本的には4つ条件があります。ひとつがテントを建てていい場所、それから火を使っていい場所、テントサウナが禁止されていない場所、あと水遊びがOKな場所、この4つが条件になるんですね。
これを満たしていれば、変な話、怒られないというか、怒られる理由がないなと思って、僕らもやっているんですけど、キャンプ場の方針、基本的にはキャンプ場が多いかなと思うんですね。そういったところで楽しむのがいいのかなと思いますね。
地方だとお庭に(テントサウナを)建てて、毎日入っているみたいな方もいらっしゃるんで、そういうのは羨ましいなと思います」
●憧れますね〜。キャンプ場に普通のテントでキャンプしてる人もいれば、すぐその隣でテントサウナをしてる人もいるっていう、そういう状況なんですか?
「そうですね。テントサウナがやりやすいキャンプ場に行くと、必ず3〜4組いたりしますね」
●そうなんですね〜。流行ってますね〜!
「そうですね。僕が使い終わったウィスクっていう白樺の枝葉を束ねたやつとか(テントサウナを)終えて、きょう帰るなと思ったら、やっている人たちに”これよかったら使ってください”みたいな感じで、お譲りしたりとかもしてますね」
●テントサウナを楽しむためのコツっていうのはありますか? 温度とか湿度とかの調整がすごく難しそうだなって思うんですけど・・・。
「そうですね。そこは難しくもあり、楽しいところでもあるんで、やっぱり使う薪の割り方ですね。火力調整は基本的に薪でやるので、最初は細目の薪に火をつけて、だんだん温度が上がってきたら、太めの薪を入れてキープして、ちょっと温度が下がってきたなと思ったら、また細目の薪を入れるみたいなことで細かく調整ができるんです。
それをやっていると焚き火がうまくなるんですね、火の扱いを覚えるようになるので。そこはちょっと難しいんですけど、楽しみのポイントではありますね。
あとは、季節によっても結構(水風呂の)入り方が変わるんで、例えば冬だと水風呂に10秒ぐらい入ったらもう限界が来るんですね。なので、さっと入って外気浴を長く楽しむようにするとか・・・。
逆に夏だとずっと泳ぐぐらいな感じで長〜く水風呂楽しんで、体が芯まで冷えたらサウナに帰るとか、そういう細かい調整をするのも楽しいですね」

「ととのう」の語源
※テントサウナで、これは絶対やってはいけないという注意事項を教えてください。
「まずはテントサウナの中で寝るのが、いちばんダメですね」
●そうなんですね。
「宿泊は僕らは禁止していて、なぜかというと、やっぱり一酸化炭素中毒の危険性が上がっちゃうんですね。これは本当にみんなでやめていこうって、僕らは言っていて、絶対NG!
あとは強風ですね。風速5メートルを超える日だと、普通のテントでも結構倒壊したり吹っ飛んじゃったりするので、そういう時にもし裸同然で、中にストーブがある状態で、風でテントが倒れたら、これは火傷とか火事にどうしてもなるので、風が強い日はやめましょうって、僕らは声を大にして言っているところですね」
●命に関わってきますよね。
「そうですね。そのふたつだけは、やめましょうっていう感じですね」
●ちなみに「ととのう」っていう語源はなんですか?
「これは諸説あるんですけど、いちばん正式には”濡れ頭巾(ずきん)ちゃん”っていう、僕らもよく一緒にサウナに入るんですけど、レジェンド・サウナーの方がいらっしゃって、その方が言い出したのがきっかけなんですね。
サウナ、水風呂、外気浴を繰り返していると、なんとも言えない気持ちよさになるんですね。これ、なんだろう、今まである言葉ではなかなか当てはまるものがないなっていう中で、大喜利みたいにいろいろ言っていたらしいんですけど、その中で”ととのう”っていうキーワードが出てきて、あ、これかも!ってなったのが広まっていったんですね」
●そうなんですね〜!
「で、”ととのう”も漢字で書かれている場合もあるんですよ。整理整頓の”整”で、これで整うっていう場合もあるんですけど、これちょっと僕ら的にはそうじゃないよねと・・・」
●えっ、違うんですか?
「はい、調律の”調 ”、調べですね。あれも“ととのう”って読むので、さっきからチューニングとか調整みたいなことを言っていると思うんですけど、そういう要素もあるんで、ひらがなで”ととのう”って書くのがいちばんしっくりくるなと・・・。”心と体をととのえる”、マイナスをプラスにするというよりは、全部一旦ゼロに戻すみたいなイメージですね。フラットな状態に戻す・・・。
サウナ、水風呂、外気浴をくり返した後に気持ちよくなると、心身ともにぼーっとした状態になるというか、いろんな悩みごととか、もうどうでもいっか、みたいな状態になったり、悩んでいたこととか忘れちゃったりとかして、フラットな状態に戻るんですね。これが”ととのう”っていう状態の意味というか・・・」
(編集部注:大西さんは2019年に、サカナクションの「山口一郎」さん率いるカルチャー・プログラム「NF」と、音楽とサウナの融合体験をテーマにコラボ・イベントを開催。プールサイドにテントサウナを設営し、参加者に体験してもらったそうです。参加者からは五感が研ぎ澄まされ、感受性が豊かになったと大好評だったということで、今年もコラボする予定だそうです)
テントサウナの体験施設
※テントサウナの基本セットを揃えて始めるのは、ちょっとハードルが高い気もするんですけど、テントサウナを体験できるような施設はあったりしますか?
「結構あるんですよ。グランピングがブームになっているので、そういった施設に最近(テントサウナを)導入していただくことが増えていますね。千葉だと例えばマザー牧場さんがやられている”THE FARM”というグランピング施設があるんですけど、そこはテントサウナが常設してあるので、泊まりに行ったお客さんだったら誰でも手ぶらで、テントサウナを楽しむことができますね」
●グランピング施設内にテントサウナがあるんですね〜!
「そうですね。結構、最近多いですね」
●水風呂はどうするんですか?
「川とか湖があれば、もちろんそれを使うパターンもあるんですけど、ドラム缶風呂の水風呂版みたいなものがあって・・・」
●それも楽しいですね!
「そうですね。ドラム缶風呂というかドラム缶に水が入っているだけなんですけど(笑)」
●ドラム缶に入ることもなかなかないですよね。
「そうですね。あとはプールを用意されているところもあるんで、家庭用のプールで水風呂代わりにすることもありますね」
●では最後に、テントサウナの伝道師・大西さんにお聞きします。大西さんにとってテントサウナとは?
「テントサウナは、僕は自然と人間の距離を縮めてくれる道具なのかなと思っていますね。僕は今37歳なんですけど、テントサウナがなかったら、こんなに川に入っていたかなってやっぱり思うんですよね。子供の頃は入っていたかもしれないんですけど・・・。

露天風呂とかって、みなさん日本人は好きじゃないですか。でもあれってちょっと自然と一線を引いて、愛でるみたいな感覚だと思うんですよ。でも、テントサウナってある種、自然の中に飛び込んでいく、よりダイレクトに自然と一体化したいっていう行為だと思うんで、そういうふうに自然と、より近くなれる道具なのかなと思いますね」
●ありがとうございます。
INFORMATION
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テントサウナをやってみたいと思ったら、ぜひこの本を読んでください。基礎知識やノウハウなどが満載。タイトル通り、テントサウナの全部が分かります。写真がたくさん載っているので分かりやすいし、すぐにでもテントサウナを体験したくなりますよ。日本初のテントサウナの専門書、おすすめです。
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎山と渓谷社HP:https://www.yamakei.co.jp/products/2822150370.html
テントサウナ専門ブランド「サウナ・キャンプ」、そして一般社団法人「アウトドアサウナ協会」のサイトも見てくださいね。
◎「サウナ・キャンプ」HP:https://saunacamp.net
◎「アウトドアサウナ協会」HP: https://outdoor-sauna-association.jp
『All About TENT SAUNA〜テントサウナのすべてがわかる本』を、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。応募はメールでお願いします。
件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは2月24日(金)。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2023/2/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アザラシの音声コミュニケーションを研究されている「水口大輔(みずぐち・だいすけ)」さんです。
水口さんは、石川県出身。動物の音声を使ったコミュニケーションに興味を持ち、様々な動物を研究。2016年に京都大学大学院を修了。その後、北海道区水産研究所でトドの研究、そして韓国の研究所で、歌う鳥の研究を経て、現在はPST株式会社で、ヒトの声を研究されています。
そんな水口さんが先頃『アザラシ語入門〜水中のふしぎな音に耳を澄ませて』
という本を出されました。この本にはアザラシの研究やその調査方法、そして水口さんの奮闘ぶりが記されています。
アザラシの音声と聞くと、なんとなく陸上で発している声と思うかも知れませんが、実は水中で聴こえる鳴き声のような音なんです。いったいどんな音なんでしょうか。きょうはアザラシ語ともいえる音に迫っていきたいと思います。
☆写真協力:水口大輔

水中で音を出すための器官!?
※本を読んで驚いたのが、アザラシが鳴き声のような音でコミュニケーションをとる動物だということ。海洋生物だと、クジラやシャチなどが知られていますが、アザラシもそうなんですか?
「そうですね。意外と知られていないんですけど、アザラシもそうですし、海の動物は音を使ってコミュニケーションをとるやつが多いです。
というのも、音の伝わる速さ、空気中に比べて水の中は3倍から4倍ぐらい早く音が伝わって、とても伝達の効率がいいということで、アザラシもそうですし、あとはジュゴンとかマナティみたいな哺乳類も音を使ってコミュニケーションをとっています」
●アザラシの音声の研究については、今回初めて知ったんですけれども、以前からある研究分野なんですか?
「音声の研究を広く見ると海外では昔からよくやっていました。ただまあ、基本的には野外で水中マイクを垂らして音を録るだけなので、どんな音が録れているかはわかっているんですけど、誰が鳴いているか、どんなふうに鳴いているかが観察できていないので、結局は謎が多いままですね。
それで私は直接、目でアザラシを見ることができる水族館で音声の研究を始めることにしました」

●水口さんがアザラシを研究するようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
「実は私、最初からアザラシの研究をしていたわけではなくて、もともとダニの研究をしていたんです」
●ダニ!? へぇ〜!
「ネズミとかモグラとかコウモリに付いているダニの研究をしていたんですけど、その時にお世話になっていた哺乳類の研究者の先生が、アザラシの研究もされていて、解剖でアザラシの体をさばいて、どんな仕組みかを調べている方でした。
その方に今回のテーマの、クラカケアザラシの体の中のことを聞いたんですね。空気嚢(くうきのう)っていうアザラシがおそらく音を出す時に使っているであろう器官の話を聞いて、そんな面白い体の仕組みがあるんだと思って、じゃあ実際どんな音を出しているんだろうとか、そもそも誰が鳴いているんだろう、みたいなことを調べたくなって、ダニからアザラシに変えて研究しました」
●そうだったんですね〜。素朴な疑問なんですけど、アザラシはどうやって音を出すんですか?
「実はまだはっきりわかっていないんです。声帯はもちろんあって、空気中では声帯で声を出すんですけど、水の中で果たしてアザラシが何を使って音を出しているかって、実はわかってないんですよね。
さっき言ったように空気嚢っていう、体の中に空気の袋があるクラカケアザラシだったり、アゴヒゲアザラシも肺の近くというか、首の部分がぷくっと風船みたいにふくれるんですね。おそらく水の中で音を出すために特殊な体の仕組みがあって、それを使って音を出していると思われているんですが、誰もちゃんと調べていないんです」
●研究がまだまだこれからっていうことですね。
「そうですね」
アザラシは耳たぶで見分ける!?
※アザラシの音声に関する研究についてお話をうかがう前に、改めてアザラシとはどんな生き物なのか、教えていただきたいのですが、世界には何種類ほどいるんですか?
「世界で18種類か19種類いると言われています」
●日本では何種類くらいですか?
「日本で見られるのは5種類ですね」
●どんなアザラシなんですか?
「今回、本にも登場するワモンアザラシ、アゴヒゲアザラシ、クラカケアザラシの3種類に加えて、水族館でもおなじみのゴマフアザラシと、ゼニガタアザラシの全部で5種類ですね」

●それぞれどんな特徴があるんですか?
「そうですね・・・5種類の中でゼニガタアザラシだけは北海道に定住している種類になります。あとの4種類については、流氷が来る時期に合わせて、北のほうから南に下ってくるような種類ですね」
●群れで生活する生き物なんですか? それとも単独なんですか?
「どちらかというと基本的には単独性の強い動物ですね。集団で移動する種類もいるにはいるんですけど、例えば協力して餌をとるみたいな、そういう群れでの行動はしないと言われています」
●その餌となるのは魚ですか?
「これも結構いろいろで、もちろん魚も含まれますし、あとは頭足類(とうそくるい)といってタコとか、あとはちっちゃい生き物でオキアミとかですね。小さいものも獲って食べている種類もいます」
●似たような海洋生物と言えば、アシカとかオットセイがいますが、それらと違ってアザラシの大きな特徴は、どんなところですか?
「アザラシはアザラシ科っていう分類になって、アシカとオットセイについてはアシカ科という別のグループになっています」
●なんか似ていますけどね?
「みんな鰭足類(ひれあしるい)、鰭脚類(ききゃくるい)という言い方をします。同じグループの中にはいるんですけど、その中で別れています。
アザラシについては、いちばん見た目のわかりやすい特徴は耳たぶですね。アザラシの場合は耳たぶがない、その見た目でアシカとアザラシの区別がつきます」
●耳たぶがないけど、耳はあるんですよね?
「耳は、穴だけ空いているって感じになるんです。アザラシのほうが水の中での生活に、より適用していますので、体が丸くなっていて、あまり陸上で動くのは得意じゃないですね。なので、水族館で芋虫みたいに動いているやつはアザラシです」
●確かにそのイメージはありますね(笑)
アザラシの不思議な音声
※水口さんの本はおもにワモンアザラシ、クラカケアザラシ、そしてアゴヒゲアザラシ、この3種類の研究について書かれています。

調査方法としては、船に乗って知床半島沖で野生のアザラシの調査もされていますが、多くは北海道「おたる水族館」で飼育されているアザラシに密着して得られた成果が記されています。
アザラシの鳴き声は、水中マイクで録音するわけですが、好奇心旺盛なアザラシがマイクをかじったりするので、防御するために塩ビのパイプでマイクを覆ったりと、いろいろ工夫してやっと録音できるようになったそうです。
とはいえ、いつアザラシが鳴くかわからず、最初は極寒の中、四六時中、飼育されている水槽に密着。その甲斐あって、夜から朝方によく鳴く、繁殖期にオスからメスにアピールするために鳴く、そしてオス同士の縄張り争いで鳴くことがわかってきたそうですよ。
そして今回、根気強い調査で水口さんが録音することに成功したワモンアザラシ、クラカケアザラシ、そしてアゴヒゲアザラシの、貴重な鳴き声のデータをお持ちいただきました。ひとつのデータは数秒ほどなので、何回か繰り返しています。

まずは、ワモンアザラシです。
(※放送ではここで、ワモンアザラシの鳴き声をオンエア)
●これがワモンアザラシ?
「はい、そうなんです」
●これはどんな状況で、どこで録られたんですか?
「これは水族館で録った音なんですけど、メスの若い個体(アザラシ)が、ちょっと大人のオスにちょっかいを出した時に攻撃されまして、その時に逃げながら、やめてくれっていう感じで出している音ですね」
●なんでやめてくれってわかるんですか?
「噛まれたりとか追っかけられたりしている時に、後ろにのけぞってというか、逃げている時にしか出さない音なんですね」
●音を出しているのはメスなんですね?
「はい、でもこれは性別は関係なくて、オスでも出している音ですし、また野外でも北極の海でも全く同じ音声が録られています」
●へぇ〜〜、ワモンアザラシはどんな特徴があるんですか?
「アザラシの中ではかなり小型の種類になります。北極のほうの海にいるんですけど、産室といって分厚い氷の中で捕食者から隠れて子育てをするというか、とにかく分厚い氷のエリアに棲むアザラシなんです。
呼吸をするための穴、哺乳類なのでちゃんと陸上で息をしなきゃいけないんですけど、そういう呼吸穴の数がすごく少ないんで、その呼吸穴の周りにアザラシが集まると、呼吸穴を巡って攻防があるというか戦わなきゃいけないと・・・自分が息をするための場所を守らないといけないので、ほかの種類と比べると、私の個人的な印象としては喧嘩っ早いと・・・」
●面白い!
「そういうことで、さっき聴いてもらったような、逃げる時に出る音声がすごくたくさん録音できます」
●そうなんですね。アザラシの中でもちょっと喧嘩っ早いのがワモンアザラシ! 覚えておきます。
「もしかしたらアザラシのファンの方からすると、いやっ! そんなことはない! って言われるかも知れませんが、愛らしい見た目のアザラシです」

※続いて、クラカケアザラシを聴いてみました。
(※放送ではここで、クラカケアザラシの鳴き声をオンエア)
●ええっ! これもアザラシですか?
「これ、クラカケアザラシの音声ですね」
●テレビとか映画の効果音みたいな感じですけど、これはどういう状況だったんですか?
「クラカケアザラシがいちばん観察されていない種類で、本当にどういう時に鳴いているのかって全くわからない種類なんですよね。
水族館でも2年間ぐらいクラカケアザラシの音を録り続けていたんですが、結局一回も鳴かなくて・・・だから今、聴いていただいた音声は知床で録った音なので、どういう時に鳴いているかはわからず、音だけが繁殖期に聴こえたことになります」
※続いて、同じクラカケアザラシなんですが、前半と後半では微妙に音が違います。
(※放送ではここで、前半にクラカケアザラシの鳴き声・ベーリング海編。後半にクラカケアザラシの鳴き声・知床編をオンエア)
「2種類聴いていただいたんですけど、前半がベーリング海っていう北のほうの海で録ったクラカケアザラシの音ですね。後半が先ほども聴いていただいた知床の音なんですけど、明らかに2種類の音が違っているんですよね。
同じクラカケアザラシなんですけど、地域によって音が違う、方言みたいなものがあるということがわかりました」
●アザラシの世界にも方言があるんですね! オス、メスで鳴き方が違うとかはあるんですか?
「それが知りたいんですけど、まだ鳴いている姿を誰も一度も見たことがないので、オスが鳴いているのかメスが鳴いているかもわからないんですね」
オスとメスがデュエット!?

※続いては、アゴヒゲアザラシの音声データを聴いてみました。
(※放送ではここでアゴヒゲアザラシの鳴き声をオンエア)
●これ、アザラシですか?
「さっきと全然違うんですけど、これは北極海で録ったアゴヒゲアザラシの音になります」
●なんか花火のような音でもありますし、お化けが出てくるような、怪談の話で使われる効果音のような気もしますし、いろんな音に聴こえますね。
「これ、すごく長くて1分以上続くような音になります」
●アゴヒゲアザラシは、ワモンアザラシとは全然違う鳴き声というか、ピロピロピロ〜という音ですけど、これはどんな状況で録った音なんですか?
「これは北極海で録った音です。先ほども言った通り、観察が難しいので、実際どんな時に鳴いているかはわかってないんですよね。おそらくオスが鳴いていて、自分の縄張りを保持するため、示すためとか、メスへアピールするために使っているのかなと思われるんですが、野生ではなかなかそれがわからないですね」
●水中でこういう鳴き声を出しているんですよね?
「はい、そうですね」
●こういう音が聴こえるんですね?
「はい、マイクを垂らすと、そこかしこでこういう音が聴こえます」
●アゴヒゲアザラシの生態とか習性には、どういった特徴があるんですか?
「アゴヒアザラシに関しては、これも個人的な印象ですが、ものすごくおっとりしているというか、繁殖期以外は複数頭、水族館にいたりしても、全然お互い干渉しないというか、のんびりマイペースなんですね。
それが繁殖の時期になると急に一変しまして、オスは一生懸命一日中鳴いて、メスも決まった時期だけなんですけど、オスの歌に、オスの音に対して、返事をするような感じで鳴き返すような行動も見られています」
●オスとメスで鳴き方が違うとかは特にないんですか?
「オスだけに特有な音とか、メスだけに特有な音っていうのもあります」
●アゴヒゲアザラシは、オスとメスでデュエットすることがわかったそうですね。
「そうなんです。その音声があります」
●じゃあ、ここでちょっと聴いてみましょう。
「オスとメスが同時に鳴いている音です」
(※放送ではここで、アゴヒゲアザラシのオスとメスのデュエットをオンエア)
●あ〜〜!
「これが今2頭同時に(鳴いています)」
●綺麗にハモってますね! これは意気投合してハモろうぜみたいな、デュエットしようぜ、みたいな感じなんですか?
「そうですね〜そうかなと思うんですけど、なかなかそこはアザラシに聞いてみないとわからないところではあるんですが・・・(笑)、こんな感じで鳴いています」
●すごい! お互いわかってやっているんですよね?
「そうですね。わかっているっていうのはなかなか難しいんですけど、少なくともタイミングを合わせて、あまり無駄に被らないというか・・・基本的には交互にオス、メスと順番に鳴いて、時々息をぴったり合わせてオスとメスが同時に鳴く、そういうようなことをやっています」
水族館で鳴き声を聴くには!?
※アザラシの音声を研究されてきて、今どんなことを感じていらっしゃいますか?
「いちばんはやっぱり未だによくわからんな〜というのが、正直なところなんですけれども(笑)、音のヴァリエーションがとっても面白いですし、今誰が鳴いているか、いつ鳴いているか、どんなふうに鳴いているかが、水族館でようやくわかってきたところなんですね。
ここからまだまだやりたいことがたくさんあるので、新しくいろんなことがわかっていけばいいなと、やりたいことがもっとたくさんあるなという印象です」
●具体的にどんなことを今後、解き明かしていきたいですか?
「先ほどもおっしゃっていただいたように、繁殖期に相手を探すための音っていうのが通説なんですけど、それだと説明がつかないことが結構あってですね。実は野生で録られている音は繁殖期だけではなくて、全然繁殖期に関係ない時期にもアザラシがたくさん鳴いていることが最近わかってきています。

そうすると結局、果たしてなんで単独で、別に群れで生活するわけでもないのに繁殖にも関係ない時期に鳴くのか、繁殖期じゃない時の音の役割みたいなことがすごく気になるところかなと思います」
●へぇ〜〜不思議ですね、確かに。ぜひ解き明かしてください!
「はい!」
●アザラシが飼育されている水族館はすごく多いと思うんですけれども、今後水族館を訪れるかたに、アザラシのこんなところに注目するといいよ! というアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。
「はい、注目よりも何よりも、まずアザラシはほとんど基本的にはゴロゴロしているという・・・(笑)」
●そのイメージあります!
「寝ているイメージがあるかなと思うんですよね。確かにそうで、かなりの時間、寝ているんですけど、意外とじっと待っていると、水の中に入っていろんな面白い行動を見せてくれることがあります。
なので、まず第一に待つことですね(笑)。じっくりと待っていただくと、アザラシの面白い行動が見られるんじゃないかなと思います」
●音声は発してくれないですよね?
「種類によっては一年中出している音もありますので、ねばっていると聴けるかもしれないです」
●ねばることが大事!
「はい(笑)」
●ありがとうございました。
(編集部注:アザラシに会いたくなったな〜というかた、首都圏では、鴨川シーワルドがおすすめですと、水口さんはおっしゃっていました。現在はワモンアザラシ、ゴマフアザラシ、アゴヒゲアザラシ、そしてゼニガタアザラシの4種を飼育しているので、ねばっていれば、水中で発する音を聴けるかもしれませんね)
INFORMATION
アザラシの研究成果やその調査方法など、興味深い話が満載です。なにより水族館に通い詰めて「アザラシ語」の解明に挑んだ水口さんの奮闘ぶりに研究者魂を感じました。面白いです! QRコードからアザラシの声を聴くことができますよ。ぜひチェックしてください。
京都大学学術出版会から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎京都大学学術出版会HP:
https://www.kyoto-up.or.jp/books/9784814004393.html
2023/2/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第11弾!バレンタインデーを前に環境や人にも配慮したチョコレートをクローズアップ!
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」そして「人や国の不平等をなくそう」ということで、フェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」の活動をご紹介したいと思います。
先日、ピープルツリーの自由が丘店にお邪魔して、広報・啓発担当の「鈴木啓美(すずき・ひろみ)」さんにおすすめのオーガニック・チョコや、フェアトレードの取り組みなど、いろいろお話をうかがってきました。

「ピープルツリー」に込めた思い
ピープルツリーは、1991年に発足したNGO「グローバル・ヴィレッジ」を母体に、フェアトレード専門ブランドとして、誕生。ものづくりに関して「森を壊さない」「水を汚さない」「空気を汚さない」「人と命を守る」「無駄にしない」という5つの環境ポリシーを掲げ、活動。フェアトレード・アイテムのお買い物を提案しています。
そんなピープルツリーの広報・啓発担当の鈴木さんは、もともとはピープルツリーの商品が大好きな、いちファンだったそうですが、もっとみんなに知って欲しい、そんな熱い思いが募り、スタッフとして働くようになったそうです。

※まずは、ピープルツリー というネーミングにどんな思いが込められているのか、お話しいただきました。
「そのままズバリなんですけど、ピープルは人、ツリーは木。でもそれだけじゃなくて、地球環境とか動物とか、生きとし生けるものという括りで考えていただけたら、人も地球もみんなが幸せに暮らせるように、そんな思いを込めて作られたブランドです」
●改めて「フェアトレード」とは、どういうことなのか説明していただいてもよろしいですか?
「フェアなトレード、直訳すると公正な貿易とか、公平な取引と訳すことができるんですけれども、簡単に説明する時は、人と地球に優しい取り組みです、とお伝えしています。
今、フェアなトレードでないことがありますので、どうやったら関わる人たちがみんな幸せになれるのかを考えて活動しているんですね。なので、貧困問題と環境問題を、ビジネスの仕組みによって解決したいという取り組みが、フェアトレードだと考えています。
例えば問題は、たくさんの解決策があったほうが早く解決するので、解決方法、手段はいっぱいあっていいと思うんですよね。だからビジネスじゃなくて、例えば寄付とかボランティアとか、そういうことで解決したいっていう取り組みがあってもいいし、あったほうがいい。フェアトレードは物を作って販売するビジネスの中で、貧困問題と環境問題を解決したい取り組みになっています」
●フェアトレードで大事にしていることだったり、実践していることはありますか?
「やはり人を大切にすることですね。環境も大事なんですけれども、働く人たちがちゃんと生活ができて、幸せに希望を持って生きていけることがすごく大事ですので、フェアであること、公平であること、公正であることが、人と人との関係性も作って物作りをしていくこと、そのためにも自然がないと続けることができませんから環境も大事にしていく・・・」
●まさにピープルツリーですね!
「そうですね!」

手仕事で作られたこだわりの商品
※続いて、自由が丘店で販売している商品について。現在、どんなファッションや雑貨のアイテムを扱っているのか、教えていただきました。
「今この寒い冬のシーズンですので、イチオシは手編みのニットですね。あとはオーガニック・コットンの肌に心地いいウエアですとか、雑貨もザルもあったりカゴもあったりしますし、可愛い動物のモチーフのアイテムがあったりとか、バッグとかアクセサリーとかいろいろあります」
●楽しいですね。いろんな商品があって・・・。主にどこから輸入された商品が多いんですか?
「今ピープルツリーでは18カ国145の団体と、いろいろやり取りをしながら物作りをしています」
●18カ国、例えばどんな国がありますか?
「主にお洋服だとインド、バングラデシュで作っていただいていて、あと編み物だとネパールですね」
●こだわりはやはり自然素材?
「そうですね。環境を大切にするっていうところで自然の素材を、なるべくオーガニックの素材を、としているんですけれども、大事なのはやっぱり入手しやすこともあると思うんですよね。
流通するのにいろいろ負担がかかるわけですから、入手しづらいと生産が滞ってしまうので、現地で手に入りやすくて、あとは例えば成長が早いとか、環境への負荷がかからないとか、そういう要素も入れて、その土地土地で手に入りやすい天然素材を使っています」

●一点一点、手で作られているんですよね?
「そうなんです。手仕事をやはり大事にしています」
●判子のようなもので押して作ったウエアもありましたけれども・・・。
「はい、ブロックプリントという手法なんですね。柄を作り出すのに判子でポンポン押すように模様を作っていくんですけど、あれも1色につき、ひとつの判が必要なので、多色刷りする時にはその木の判がいくつも必要になる、本当に手間がかかっていますね」
●すごいですね〜! あとスカーフも手で描かれているんですよね?
「そうなんです。職人さんがアーティストのように筆運びをしてくださって、素敵な絵を描いてくださっていますね」
●味がありますよね〜! 唯一無二ですよね。
「そうですね。手仕事の場合、途上国で物を作っていただいているんですね。フェアトレードでは途上国に住んでいる経済的に立場の弱い方が、ちゃんと自立して生活できるように、仕事の機会を提供することも大事にしています。そういう方々が住んでいる地域は、例えば電気が通ってないとか社会的なインフラが整ってないケースがあるんですよね。
そんな中ですぐに仕事になる、手を生かすことが大事。手編みだったりとか手刺繍だったりとか、そういうことなんですね。だから大規模な設備投資をしなくても大きな工場を作らなくても、すぐ現金収入が得られる仕事を作り出すためにも、手仕事を大事にしています」
●手仕事だからこそ、ファストファッションとは違った味わいみたいなものがありますよね。
「そう言っていただけると本当に嬉しいです。やっぱり作って、物として販売している以上、素敵だなと思っていただかないと手に取っていただけないので、そこはやっぱり欲しくなる魅力的なものを作る、そこもとても大事、それがピープルツリーの役目でもありますね」
大人気! ピープルツリーのチョコレート
※もうすぐ「バレンタインデー」ということで、ピープルツリーで販売しているフェアトレード・チョコレートをご紹介したいと思います。
いつ頃からチョコレートの販売を始めたのか、お聞きしました。
「(販売を始めたのが)1994年から1995年にかけてなので、もう30年近くもなります」
●そうだったんですか! きっと見たことあるっていう方も多いと思うんですけれども、何種類くらい販売されているんですか?
「業務用のチョコチャンクも含めて、今25種類販売をしております」

●見た目もパッケージも可愛くて、食べ比べしたいな〜なんて思うんですけれども、それぞれどんな特徴があるのか教えてください。
「わかりました。オーガニックでフェアトレードの素材を使っているのは、もちろん全部共通する特徴になっています。そして美味しさの秘密はココアバターですね。口に入れるとすぐとろけるココアバターを贅沢に使っているので、とてもなめらかな口どけを楽しんでいただけます。
それぞれにフレーバーがあって、フレーバーによって黒糖と砂糖を使い分けたりしているので、味わいを楽しんでいただけます。作っているのはスイスなんですけれども、ミルクチョコレートとか、すごいクオリティなんですね。
材料は世界中からやってきていて、黒糖はフィリピン、砂糖はパラグアイ、カカオはボリビアやペルーといったところからやってきます」
●さまざまな国から材料を集めているわけですね。どんな味があるんですか?
「定番のミルク、これは本当に30年前のスタートからあります。ミルクベースのチョコレートでもオレンジ・フレーバーだったり、ヘーゼルナッツやレーズン&カシューがあったりとか・・・あとはカラメル・クリスプ、キャラメルじゃなくて、わざわざカラメル、カリカリしているんですよ。その食感も楽しんでいただけます。
ミルクを使わないビター・ベースのものもありますし、あとはレモンピールが入っていたりですとか、アーモンドが入っていたり、ザクロのゼリーが入っている甘酸っぱいのもありますよ。ビターは58%カカオのものと、75%のハイカカオのものもあります。珍しいところでは牛乳は使ってないんですけれども、ヘーゼルナッツのミルクを使った植物性のミルク・ベースのチョコレートもありますよ」
●見た目も可愛いからギフトにもピッタリですよね。
「ありがとうございます。フェアトレードのチョコレートだと知らなくても、可愛いって手に取っていただけたり、可愛いから友達にあげるっていうふうにして広まっていくので、ピープルツリーの名刺代わりのチョコレートだと思っております」
チョコレート試食レポ!

●ではなにか試食させていただいてもよろしいでしょうか?
「ぜひ! 何か気になるフレーバーはおありですか?」
●なんだろう・・・おすすめをいただいてもいいですか。ビターだとハイカカオが気になりました。
「ぜひ食べていただこうと思うんですけれども、普通(カカオ)75っていうと、かなりハイカカオなので、苦いぞって思われると思うんです」
●そんなイメージがありますけど・・・。
「ピープルツリーのカカオは、その中ではマイルドな味わいになっているので、ぜひ食べていただきたいです」
●板チョコのような感じなんですね、長方形で・・・では、いただきます。
「いかがですか?」
●苦みはあるんですけど、でも苦すぎないっていうか、ちゃんとまろやかで美味しい〜!
「嬉しいです!」
●これ、ハイカカオですよね! もっとすごく、うわっ、苦い! っていう感じなのかと思っていました。
「マイルドに作られております」
●ビターじゃないものもいただいてみてもいいですか?
「定番のミルクを」
●牛さん(のイラスト)がパッケージにありますね。それぞれイラストが描かれていて本当にパッケージが可愛いですね。
「何が入っているのか、中のフレーバーがわかるようなイラストを描いていただいています」
●ではミルクですね。
「ダントツのいちばん人気です」
●そうなんですね(チョコレートを割る音があって)
「お〜〜、いい音です(笑)」
●いただきます。う〜ん、甘い! ほっとする味ですね。
「まさにそのほっとするっていうのが、人気の秘密だと思うんです。 いっぱいフレーバーがあって、中身にナッツだったりとかレーズンだったり、いろいろ入っているものもあって、つい私もいっぱい入っているほうがお得感があるわって、そっちばっかり選んでしまった時期もあるんですけど、やっぱり王道のミルクに戻ってくる・・・黒糖のコク! 美味しいですよね」
●甘いです!
「甘いんだけど、余韻はあるんだけれども、嫌な甘さじゃないですよね」
●そうなんです。すっきりしていて・・・。
「これを食べて、コーヒーを飲んでほっとするのが、私はこの寒い冬の待ち遠しい時間ですね(笑)」
●本当に癒されます〜。

(編集部注:鈴木さんによると、72時間練り上げるスイスの伝統技法により、 ココアバターやカカオなど、チョコの材料が均質に混ざり合うので滑らかさを味わえるし、香りもよくなるとのことでした。
そしてもうひとつ「ホワイトアーモンド」というホワイトチョコも試食させていただきました。鈴木さんからは、ココアバターの品質がストレートに出てくるので、ホワイトチョコはまずなめて、ココアバターが溶ける感触を味わってから食べるといいですよ、というアドバイスをいただきましたよ)
「カカオ・ポイント」農家支援
※ピープルツリーでは「カカオ・ポイント」というプロジェクトを進めています。どんなプロジェクトなのか、ご説明いただきました。
「もともとスタートしたのは、ボリビアでカカオの木の病気が蔓延したことが理由なんです。病気なので、ほかのカカオにうつっちゃうんですよ。だから伐採して焼却処分しなきゃいけなくなっちゃうんですね。そうすると1割とか2割しか育たなくなって、カカオの収穫がどんどん減ってしまったっていうことが、2012年ぐらいに起きました。
それで産地をサポートするために始めたのがカカオ・ポイント、板チョコ1枚につき1ポイントにして、10ポイント集めてピープルツリーに送っていただいたら、1本苗木を産地に送るプロジェクトとしてスタートしました。
で、何年も続けて、今は やっと落ち着いたかなと・・その時に植えたカカオの木がすくすくと育っているので、今度は違うプロジェクトにしようということで、今はコスタリカのカカオ農家を支援するような取り組みにしています。
ピープルツリーのチョコレートは、すべてオーガニックな素材を使っているんですけれども、 オーガニックにするには様々な条件があるんですよね。 今まで普通の作り方をしていたのを、ちゃんとオーガニックの作り方にしようって切り替えることがやっぱり必要になってくるので、どうやったらちゃんとオーガニックで育てられるのかとか、そういうこと学びながら(カカオの木を)育ててもらうので、その支援をするようにしています」
(編集部注:ピープルツリーのチョコの購入は、ピープルツリーの通販サイトをご利用くださいとのことです。ちなみに千葉県内でも扱っているお店はありますので、いずれも詳しくは、ピープルツリーのオフィシャルサイトを見て、チェックしていただければと思います)
エシカルウエディング!?

●ほかにもピープルツリーでは、エシカルウエディングも提案されています。お店に白いドレスが飾られていて、私も新婚なので気になったんですけれども・・・。
「気になりますよね」
●これはどんなことなんですか? エシカルウエディングというのは?
「はい、結婚式はやっぱり人生の中でも最大級に幸せなことだと思うんですよね。だから幸せのお裾分けではないんですけれども、作ってくれた人も幸せなアイテムを使ってほしいなと思います。
式の会場に来てくださった方も、結婚されるおふたりの幸せももちろんのこと、それに関わる人たちを広げてみると、ウエディング・ドレスであったりとか、いろんな小物とか、そういうものを作ってくれた人がちゃんと幸せになれる、そんなアイテムを使っていただきたいなっていうのが、エシカルウエディングですね」
●ドレスだけじゃなくて、引き出物とか・・・。
「はい、カードとか手すき紙の、味のあるカードがありますので、そういうのを使っていただいたりとか・・・。あとは例えば食材として、ピープルツリーのココアパウダーとかコーヒーとかチョコレートとかを使っていただいて、それを式の時に出してくださるカップルの方もいたりとか・・・。最後にプチギフトを出口でお渡ししたりしますよね。そういうのにチョコレートを使っていただいたりしています」
●いいですね〜!
フェアトレードは1枚のチョコレートから
※では最後に、環境や経済、人権など幅広い分野にかかわるフェアトレードに関して、私たちはどんなことを心がければいいのか、お話しいただきました。
「まずはそういうことを知ったら、なにかアクションに起こしてほしいと思っています。 例えば今回のフェアトレード・チョコレートも、フェアトレードを知ったらまず食べてみる、フェアトレードのチョコってどんななんだろう、誰が作ってくれたんだろう、どんなふうに作られたんだろう、そういうことに思いを馳せるところからスタートしていただけたら嬉しいなと思います。
社会的な課題は続けていくのがしんどくなっちゃうというか、自分ひとり何ができるんだろうとか、自分ひとりが頑張っても意味がないんじゃないか、みたいな無力感を感じることがもしかしたらあるかもしれないんですけれども、やっぱりひとりひとりの力ってすごいものがあると思うので、続けるっていうのも大事ですよね。
そのためには自分自身も楽しいっていうことがすごく大事だと思うので、美味しいとか可愛いとかおしゃれとか、そういうところから始まって、生活の中に取り入れていただけたらいいかなって思っています。
●フェアトレードの商品は、お値段的にちょっと高いんじゃないかって思う方もいらっしゃると思うんですけれども、そんな方にはどんなお声がけをされますか?
「そうですね。高いというのが何と比べて高いのかって言った時に、安すぎるものと比べて高いと思っていないかってことをまずお伝えしたいなって思います。
安く売ることができる背景に、例えば作っている人たちが生活できないような搾取をされているんじゃないかとか、安全面とか健康面とかでの配慮がされてないんじゃないかっていう、そういう可能性もあるわけですよね。だからどうしてこの値段で成り立つんだろうって、ちょっと疑問を持っていただきたいなっていうふうにも思います。
いきなりすべてをフェアトレードのものにっていうのはなかなか無理だし、すべてのアイテムを賄えているわけではないので、それだと息が詰まっちゃうと思うんですね。ぜひご自身の関心のあるところからスタートしていただくのがいいのかなと。
1枚、本当に味わえるチョコレートを食べてみる、そうなると物との付き合い方が変わってくると・・・自分の生活も、チョコレートの枚数は減ったかもしれないけど、豊かさは増すかもしれないですよね。そういうふうにして工夫するといいのかなって思います」

INFORMATION
ピープルツリーは、発展途上国の生産者=パートナーのスキルアップや資金、さらには現地の学校運営など様々な支援をしている「世界フェアトレード連盟」に加入しています。
フェアトレードの商品かどうかを見極めるポイントとしては「世界フェアトレード連盟」の認証マークがあるか、ないかがお買い物をするときのひとつの目安になるとのことです。ほかにも、認証マークがなくても、フェアトレードの商品が販売されているケースもありますので、鈴木さんのアドバイスとしては、確かめる意味でもお店の人に、どこでだれが作った商品かを尋ね、そのストーリーを知ると、大事にしたい気持ちが生まれてくるのでは、ということでした。
ピープルツリーでは、フェアトレードをひとりでも多くのかたに広めるために、「フェアトレードの学校」というプログラムを実施しています。今月2月は26日の開校予定です。
ピープルツリーで販売されているオーガニックチョコはチョコレートのほんとうの美味しさを味わえますし、パッケージが可愛いので、プレゼントにぴったり! おすすめですよ。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ピープルツリーHP:https://www.peopletree.co.jp/