2021/8/20 UP!
東京パラリンピックがもうすぐ始まります。
今回は、千葉県でも盛んな障害者のスポーツのキーマンにお話を伺ってきました。千葉県知的障害者、スポーツ協会理事長の生駒三男さんです。生駒(いこま)三男(みつお)さんは、障がい者スポーツ大会の前身「ゆうあいピック」の立ち上げから長年、知的障がい者スポーツの指導・普及に努められた方で、今まで多くの国内、国際大会で監督・団長などを歴任、パラリンピックの陸上競技の監督も務められてきました。

まずは生駒さんと障がい者スポーツとの出会いについて伺いました。
「私が昭和58年に千葉県富里市にございます「富里福葉園」の指導部長として招かれたときに、そこは就職を目的とする知的障がい者の施設でした。知的障がいを持つお人達は1年以内に就職をしても、リタイアする人たちが50%以上いると言う事を聞きました。そして調査をいたしますと「体力がない」というところに行き着いたわけでございます。そこで「楽しく体力を作る」。その当時の施設というのは、「生活指導」と「作業指導」が主なカリキュラムになっておりました。そこに3本柱として「体力づくり」を加えて目的を達成したいというふうに考えました。」
生駒さんの場合は、知的障がい者の体力育成のためスポーツをというのが始まりだったんですね。
でも、スポーツを教えようと思った時、いろんな壁があることがわかったそうです。
「ソフトボールも千葉県で最初のチームとして完成された施設でございますけれども、ちょうどバザー品で出てきました公認のソフトボールとか、あるいはグローブがありましたので、手にはめて「とってごらん」って言って投げる動作をしたら、石でもぶつけられるんじゃないかというような身構えをする恰好をされました。これは、私が個別が分かっていなかったんだなと思いまして、すぐ和菓子屋さんに飛んでいきましてビニールでくるんだ おまんじゅうを買ってきまして、本当に近い距離で素手で「5回とったら食べていいよ」っていうふうにして投げると綺麗に取れるようになりまして。「あ、取ればいいんだ」と言うことも覚えながら第1歩はそういう簡単なものから、できるものから、知っているものから、というような指導方法をとりましたところ、千葉県で最初のチームが完成を致しました。今では千葉県チームは、全国障がい者スポーツ大会の優勝経験もある日本のトップレベルになっておりますが、できたての頃は(対戦相手を)小学生の、今回は4年生でお願いします。或いは5年生でお願いしますというような形でやるようなチームからスタートでございました。」
私たちも、もし野球のルールを全く知らなかったら、同じことになっているでしょう。生駒さんの最初の頃の努力に敬服いたします。
お饅頭投げるところから始まって、全国制覇まで行くなんて、すごいですよね
その後、スポーツの種目は広がり、多岐にわたっています。
今では陸上競技100メートルを10秒台で走る選手もいるそうですよ。1989年、カナダ・バンクーバーの国際マラソン大会には生駒さん率いるマラソンチームの2人が招待選手として参加し「知的障がい者フルマラソン」で、当時の世界最高記録を樹立し、世界中の障がい者スポーツ関係者に驚きと喜びを与え、大きく報道もされました。(その時の写真が、上記のチーバくんを抱いている生駒さんの写真の後ろのモノクロの写真です)1994年には第1回パラリンピック世界陸上大会にも日本から陸上選手が身体障がい者の方とともに参加。1995年の福島国体では冬のスピードスケートで知的障がいのある選手が県代表選手として一般選手に混ざり選出されました。体力づくりからスタートしておよそ10年で世界レベルすごくないですか?生駒さんが取り組みをはじめてから、知的障害者のスポーツの輪、そして 実力が格段に上がりました。
ここまで、広がってきた障がい者スポーツ。その指導にあたり、生駒さんはいつも心掛けていることがあるそうです。
「知的障がい者のトップアスリートはね、記録で本当にあのプロのように実業団に雇っていただいて、陸上をすればご飯が食べられると言うような人たちも本当にわずかですけども今出てきました。しかし、大多数は、体力をつけて、スポーツを楽しみながら、それが就労にもつながっていく、それから自分が生きる上でも非常に役立ってくる。健康を増進していく。そういったような中で、ほんとに、レクレーション的スポーツを例に挙げれば「パン食い競争をやりますよ」と言えば、千葉県でも寝たきりで無い限りの大半の人が参加してくるんですね。それには徒競走の要素も入りますし、それからまた出ようというような積極性も持ってくる。そうしたことからですね。生きる上でですね、必要なことをたくさんスポーツが与えてくれるって言うことですね。ですから、それぞれに合ったスポーツ・・・ただ1秒速く走ったらどうだ というような競技的なスポーツだけではなくて、人間らしく生活をエンジョイしてゆくような身体づくりをしていこう体力作りをしていこう、精神作りをしていこう、というようなことで役立っていただきたいなという風に思っております。」
スポーツだけでなく、そこからどう生きていくのかということまでをしっかりと見据えているんですね。
スポーツをしていくことで、みんな表情が明るくなっていくそうです。顔も下を向いていたのが、視線が上がって、しっかりと前を見つめていけるようになって、体力だけじゃない いろんな効果があるというのをずっとみてきたという生駒さん。皆が前向きになっていく姿をみて、こっちも元気になれるんですとお話しくださいました。これからもサポートを通じて、多くの人に希望や勇気を与えてもらいたいですね。
お話ありがとうございました。