2021/10/8 UP!
今回は、千葉県中央博物館に行って、バラのお話を聞いてきました。
千葉県の花は「菜の花」ですが、この番組でもいくつか紹介した けれど、佐倉草笛の丘バラ園、京成バラ園、谷津バラ園から個人のバラ園まで、千葉県内にはバラ園がたくさんありますよね?なぜこんなにあるんでしょうか?
バラというと西洋の花というイメージですよね?でも実は古くから日本にもあって、人々に愛され、絵画や工芸品などに描かれてきたんです。そんなバラの様々な魅力を紹介する特別展「バラのすべて」が、明日、10月9日から千葉県立中央博物館で開催されます。

千葉県立中央博物館では、地学や動・植物、歴史・文化、環境などいろんなジャンルの調査や研究を行っているんですが、今回は、バラ研究のスペシャリスト、御巫(ミカナギ)由紀さんにお話を聞いてきました。まずは日本におけるバラの歴史について伺いました。

◆御巫さん:博物館では史料管理研究科という資料の管理をする科に科長としています。で、例えば植物の標本とか、貴重な本植物画などの管理を主に私がになっています。子供の頃からバラが好きでしたけれども、大学院で研究テーマを選ぶときにバラを選び、それ以来ずっと博物館でもバラの研究をしているので、バラ1筋で今まで来た感じがします。日本人としてはあまりバラを生活に利用するということはなかったかもしれないんですが、ただ、中国の文化とともに、庚申薔薇と言われるバラが900年頃・・だいたい900年頃、10世紀の初め頃に日本にもたらされます。その薔薇をやはり中国の文化の香りのする素敵なバラ・素敵な花として捉えて、歌に詠んだり、庭に栽培したりしていたようです。
万葉集にも詠われているそうなので、当時から人気のお花だったんですね。御巫さんのお話によると、この庚申ばらは現代でも見ることができて、1ヶ月おきに花が咲くので、花の咲く回数と、花の命が長いのが特徴のなんだそうです。
__さて、千葉県にバラ園が多い理由についてもお話いただいています。
◆大正時代になって、昭和の初期まで本当にバラが大流行します。そういう時にバラを育てて、でバラを育種したいっていう志で世田谷にバラ園を作った鈴木省三さんっていう人がいるんですが、鈴木さんも戦争に行って帰ってきて、留守を守っていた奥様がバラをなんとかこう隠したようにして維持していたんですけれども、当時日本中のバラはほとんど戦争で失われてしまって。その失われてしまったバラを復興させたいと鈴木省三さんが願って、戦後すぐにバラの展覧会をしました。そのバラの展覧会からバラがだんだんに日本人にまた素晴らしいものとして捉えられて、でだんだんに日本中にバラ園が増え、バラ屋さんが増えて復興してきました。
1950年ぐらいに市川市の式場病院の院長だった式場隆三郎さんが病院にバラ園を作ったんですね。で、精神病の患者さんたちの治療の一環として「バラ療法」っていうのも考えて、バラの世話をすることで心が安らぐ・・・そういうのを患者さんの治療に使っていた。で、またそれとともに市川駅の駅前にバラ園を作ったので、それが市民の方たちにも受けた。そこで病院の中のバラ園も市民に開放してローズカーニバルというものを開いていたので、市川市の人たちがバラに好感をもつ、、そんなことを戦後すぐの時期にしたということもあったと思います。その少し後、京成電鉄が谷津にバラ園を作るときに、戦後、日本のバラの復興を始めた鈴木省三さんを研究所長としてヘッドハンティングし、バラの育種にあたってもらったので、そこで日本のバラの育種が一気に進んだ。「京成バラ園芸」という会社もでき、日本のバラが広まっていく一端となりました。
__バラというと育てるのが難しいというイメージもありますが、実際どうなのでしょうか?
◆普通の草花だったら、花が咲いて枯れてしまいます。そういうものでも、バラだったら一年に4、5回は花を見ることができる。そういう意味では園芸植物としてご自宅で楽しむには優れた植物だと思っています。何しろ種類が多いんですよね。ホームセンターでもバラ園でも、どこかバラの苗を買いに行ってみたら、まあネットでもわかりますけど、色でも花の形でも、あと樹型と言って、木の形でもさまざまな種類があるので、お好みのものをこれほど選べるという植物もあまり他にはないかと思います。バラは香りが重要なんです。どんな香りが好きかというのは人それぞれなので、やはり薔薇園に行ってバラに顔を近づけて香りをかいでみて、これが気に入ったっていうものを買えれば、それが1番いいかもしれないですね。バラに注目してちょっと興味がわいた方には、是非博物館にいらしていただいて、バラのすべてという特別展で、より深くバラの魅力を知って頂ければありがたいです。
___明日10月9日土曜日から開催される千葉県立中央博物館の特別展「バラのすべて」、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。

◆日本でどれだけバラが生活の中にあったか、江戸時代に意外とバラは日本人の生活の中に無いようであったので、どんな風にロシアの人たちがバラを見ていたか、など知っていただく機会になればと思っています。昨年は、どちらのバラ園もコロナで花の時季に閉園してみんな悲しい思いをしてたんですけど、今年は是非ちょっと盛り上がっていただきたいという気持ちもあって、10カ所のバラ園のみなさんに特別展とコラボしていただいて、 スタンプをおいてあります。このうち3カ所のバラ園のスタンプを押して「バラのすべて」特別展にいらしていただいた方に、オールドローズの写真のマグネットを差し上げるという企画もやっています。博物館という制約上、生きた花を見ていただくことはできないんですが、生きたバラを見るチャンスが増えればと思っています。
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貴重なバラに関する図譜(絵や写真などをまとめた本)やバラが描かれた工芸品、絵画などが集結し、まさに「バラのすべて」を知ることができる内容になっているそうです。千葉県立博物館の特別展「バラのすべて~All about Roses~」について詳しくはこちらからどうぞ。秋のバラ園を訪れて、そして古くから愛され続けるバラの魅力の奥深さに触れてみてはいかがでしょうか?
★千葉県立中央博物館 〒260-8682 千葉県千葉市中央区青葉町955-2
電話043-265-3111