2022/3/11 UP!
今回は銚子で受け継がれる伝統「萬祝式大漁旗」をご紹介します。
大漁旗っていうと、たくさん魚が取れたどー!っていう時に港に水揚げの準備をしてください!という合図のために掲げていた、あの旗のこと。鮮やかな色と絵柄が特徴です。大漁船や鯛、海から昇る太陽など、縁起物が色鮮やかに描かれていますよね。でも昔は、文字だけだったそうなんです。今日はその成り立ちや 魅力をご紹介していきます。

千葉県の風土と歴史の中で生まれた郷土が誇りうる工芸品として、千葉県の伝統的工芸品にも指定されています。その萬祝式大漁旗を作られている、 銚子の額賀屋(ぬかがや)染工場(そめこうじょう)の宮澤雅樹さんにお話を伺いました。
宮澤さん:銚子にあります、額賀屋染工場の宮澤雅樹と申します。船用の大漁旗がメインでして、あとはお祝い用の小さな旗とかをお作りしているのが仕事ですね。私で九代目になりますんで、江戸時代の文化文政年間に創業したと言われてますんで、約200年くらいですね。初っ端は、最初の頃は着物の染めから入ったって聞いてます。で船旗は昭和に入ってからっていうのも聞きましたけどね。これは漁師さんの晴着ですね。お着物ですよね、これは。大漁の時のお祝い品として、船主さんが漁師さんに配ったものですね。で、それを皆さんで羽織って神社にお参りに行くっていう。もう漁師の晴れ着なんで、これ着てるだけで、すごいっていうような勲章的なもんだったんじゃないんですかね。萬祝の柄の方のが先にできたもので、その後に転用したのが、今の銚子の大漁旗ってことですね。

「萬祝」は千葉県房総半島発祥と考えられていて、着物を作るようになったのが1800年ころからといわれています。そのお着物の、縁起の良い図柄が大漁旗に取り入れていったのは昭和に入ってからというお話でしたが、その前はどんな旗だったんでしょう。そして、今、その大漁旗は、使われているのかもお聞きしました。

宮澤さん:文字だけですね。船の名前と「祝大漁」とか、あとはその旗を贈られた方のお名前とか、屋号とか入ってるっていう。本当に文字だけのシンプルな旗だったっていう風に聞いています。今は基本的には柄が入っているのがメインで、文字だけっていうのは本当に少なくて、逆にその文字だけを求める方もいらっしゃいますけどね。船を作った時に、作った関係の方々が船主さんに贈られる旗ですね。例えば、造船所の方であったり、ロープ屋さん、網屋さん、無線屋さんなどが船主さんに贈るお祝いの品ですね。普段は全く使わないので、港に行っても見られないと思うんですけど、あとは見られるとしたら年末年始に港に停泊しているときに、一枚二枚くらい掲げているのを見られるくらいだと思うんですね。ですので、普段の操業時にはほぼ掲げてないと思います。

元々は、港に豊漁を知らせる目印、つまり、通信手段だったわけですが、今は無線もありますし、お祝いの品、縁起物のような要素が強くなっていったんでしょうかね。 萬祝式大漁旗の額賀屋(ぬかがや)染工場(そめこうじょう)9代目である宮澤雅樹さん、昨年、お父様である8代目が亡くなられて、現在、孤軍奮闘されています。
実は、この大漁旗、船以外のニーズもあるようなんです。実は、漁師や船主ではない、個人の方も発注されているんです。船も持っていないのにどんな大漁旗をなぜ発注するんでしょうか?まずは船の旗の大きさから教えてくださいました。

宮澤さん:船旗に関しては、船の大きさによって旗の大きさって決まってくる感じなんですけど、一人用の小舟だと、だいたいたたみ一畳ぐらいの大きさの旗ですね。大きな船になりますと、一番大きくてたたみ8畳くらいの大きさなんですね。あと、お祝い品として個人様がお作りする旗に関しては、たたみ一畳くらいのイメージですね。柄によって、ちょっとお値段が変わってくるんですけど、3万から5万くらいの価格帯ですね。お祝い品の品としてお作りすることも増えてまして、お子さんが生まれた時のお誕生日祝いですとか節句祝い、あと退職祝いですとか、新築された時にお作りする方もいらっしゃいますし、あと結婚式の式場に飾る旗としてお作りする方も結構いらっしゃいますね。一点モノなんでご注文を受けてからお作りするという商品なので、本当に世界で一枚の商品ですね。
会社で、上司の方への昇進祝いとか栄転祝いに、部下の皆さんが作るなんてこともあるそうです。これ、世界に一枚だけの自分だけの大漁旗、 いただけたらハッピーですね。
額賀屋染工場では、萬祝式大漁旗をもっと身近に感じてもらおうとこんなものも作っています。
宮澤さん:昔はよくデパートとかで催し物があったときにうちの染め物に関しても結構呼ばれてたんですね。基本的な商売の形態が誂え品がメインだったので、ご注文いただいてからお作りする商品がメインでしたので、催し物会場で小売りするものがなかった。そこで先代が考えたのが、読書好きだったもので、ブックカバーを作り出したんですね。

で、あとはコースターであるとか、あとはうちわ(団扇)ですね。うちわは房州うちわさんとちょっとお付き合いがありましたんで、うちで染めた生地を送ってうちわにして貼ってもらったものをうちで販売とかもしてるんですけど、そういった小物類も今も継続して、お店とかで販売してるんで、ご好評はいただいておりますけど。やっぱり、この商売、継続して続けなきゃいけないんで、ま、励みにもなりますよね。

JR銚子駅からまっすぐ海に向かってメインストリートを5分位進んだ左側に「額賀屋染工場」さんがあります。お店には、過去に作られた萬祝式大漁旗のたくさんの写真があって、見るだけでも結構華やかな気持ち になります。ぜひ訪れてみてください。