2022/10/28 UP!
いすみ鉄道は、国鉄木原線の跡を受け継いで1988年(昭和63年)に開業、いすみ市の「大原」駅と大多喜町の「上総中野」駅を結んでいます。今回はいすみ鉄道の、国吉駅で販売されている駅弁、「いすみのたこめし」とその売上を資金にしながら 活動するいすみ鉄道応援団をご紹介します。まずは、こんなかけ声が、国吉駅に響きます。

掛須さん:「弁当弁当〜!車内失礼いたします。決して怪しいものではございません。お弁当、ポップコーンの販売でございます。お弁当はたこめし弁当、地蛸で炊いた炊き込みご飯のお弁当、おかずは、さんが焼・から揚げ・厚焼き卵・おしんこ とはいってます。またこちらポップコーンポップコーンは400円。味は塩とキャラメルの二種類でございます。この売上でボランティア活動の資金にしております。これが売れないとうちへ帰れません。よろしくお願いいたします。」
国吉駅に電車が入ってくるやいなや、掛須さんは元気よく電車の中にとびこんでいきます。昭和の頃電車が停まっている時間内に車内や窓越しに駅弁を買って食べながら車窓の景色を楽しむ風景はよくありましたが、今の電車は窓が開かないものも多く乗車時間も短くなっていますので、こうした「立ち売り」って、かえって新鮮ですよね。

掛須さん:私はいすみ鉄道応援団の応援団長・掛須保之と申します。いすみ鉄道は古い車両も走っていて、全車両窓があくので、昔の弁当売り、昭和のお弁当っていう、それを再現しようと思って始めたんですけども、今は妙な、黄色い列車を横に大きくしたような被り物をかぶって売ってます。これがある意味定着しちゃって、今“いてつくん”というふうに呼ばれてまして、皆さん写真を撮ってくれるんですね。それは不思議だなーと思いますけど、ちょっとうれしくなったりもします。
いすみ鉄道応援団長の掛須保之さんは、国吉駅の近くで「松屋」という旅館を経営していて、このお弁当もそこで作っていらっしゃいます。大変人気のあるこのお弁当、気になる中身について、教えていただきました。

掛須さん:「たこめし弁当」はなるべく地元の食材で地産地消を目指しておりまして、お米に関しては今現在、千葉推奨米の「粒すけ」を使っております。たこはいすみの大原漁港であがった生蛸を刻んで炊いてあります。おかずは、お弁当の定番「厚焼き卵」「からあげ」あと「さんが焼き」「おしんこ」とか色々入ってるんですけど、中の「さんが焼き」というのは地元で揚がった青魚・・ぶりとか鯖とかを使って、簡単に言うと、お魚のハンバーグ的な味噌味の具材が入っております。大きさ的には決して大きくありません。でもご飯はたっぷり入って、列車の中でも食べられるような小ぶりなパッケージのお弁当箱にして販売しております。税込千円です。ダイヤの関係で、2分しかない時とかあるんで、もうそういうときは、もう車内に乗って説明をしながら 売らせていただきます。2分っていうことは、ウルトラマンの戦いよりきついんですよね。(笑)

このいすみのたこめし弁当、平日は10個以上で予約可能、週末については状況によりますので事前に松屋旅館さんの方に電話でお問合せいただきたいそうです。

国吉駅で販売されている駅弁「いすみのたこめし」を販売している掛須さんが団長をつとめる「いすみ鉄道応援団」ボランティア団体だそうなんですが、どんな活動をしていらっしゃるんでしょうか?
掛須さん:最初は20人程度で地元の商店会の方だとか、移住してきたお年寄り、リタイアされた方たちが「時間もあるのでそういうことだったら協力するよ」ということで始めました。いや、まさかここまで続けられるとは思ってませんでしたし、もう何度ももう心折れて挫けることは多々ありましたから。まあでも慣れますね。まず昔からずっと続けていることの一つに、無料レンタサイクル、というシステムがございます。これは2次インフラの少ないいすみ鉄道沿線で駅を降りてみたけれども、どうしたらいいかわからない方々に第二の足として使ってもらいたいということで、レンタサイクルを始めております。これも2009年からずっと続けております。それと、駅の美化活動、あと駅の周辺の美化活動、草刈りをやったり花の種を植えたりというような景観作りですね。

例えば、いすみ鉄道といえば、菜の花の中を走る列車がすぐ思い浮かびます。あの菜の花も、実は応援団の皆さんをはじめとする沿線の皆さんが草刈りをして、秋に種を蒔いて準備されたもの。素晴らしい黄色一色の世界を見られるのは沿線の皆さんのおかげなんですね。
その応援団、現在は100名ほどの団員を擁して、駅の整備や、ホーム脇の休耕田を活用した広場を作って訪れたお客様の憩いの場所を提供する活動もしています。菜の花だけではなく、コスモスの種まきも行っていらして、秋にはその景色を楽しめます。
最後に「いすみ鉄道応援団」のこれからについて、掛須さんに伺いました。

掛須さん:(いすみ鉄道は)一般の運輸としての役割としてはもうほぼほぼ終わっているんだけども残したい。それはある意味、住民のエゴかもしれませんが、じゃあ残し方は何だろう?っていった時に「観光鉄道」で、観光客・・・外からのお客様に楽しんでいただくため特化した鉄道として再生していくというやり方が良いのではないか。そのためには鉄道会社だけではできない。地元が協力して一体となって鉄道を盛り上げていく。口で話すのではなく、きちんと動きとして態度として理解してもらう。それが大切だと思って14年やっております。その中で出てきた楽しいこととして「お弁当」「レンタサイクル」も、外のお客様に対しての発信もそうなんですけれども、地元の人にも「お年寄りでも頑張ってやってるよ。外からボランティアで来ている人だっているんだよ。」ひとえにみんなの鉄道を守りたいんだっていう、そういう「マイレール意識」を持ってもらえるような活動にして行きたいと思います。
応援団のみなさんは、草刈りや種まき、駅の整備などの活動をされているとき列車が通ると、手を止めて列車のお客さんに向けて手を振るようにしているんだそうです。お客さんはあったかい気持ちになりますよね。いすみ鉄道が地元の方を中心とした応援団と力を合わせて、もっともっとたくさんの方に愛される鉄道になりますように!
◆ いすみ鉄道:時刻表など詳しくは公式ホームページ :https://isumirail.co.jp/
◆ いすみ鉄道応援団の公式ホームページ:http://isumi-rail4u.com/