2023/7/21 UP!
今年はたくさんの花火大会の開催が予定されています。あの夜空に開く大輪の花火、地上にセットされた筒から花火玉を発射して、それが大きく花開くわけですが、その花火玉を作る工場が千葉県にもあるんです。
今日ご紹介するのは君津市の奥の方にある「福山花火工場」さんです。江戸時代後期創業でその打ち上げ花火は千葉県指定伝統的工芸品にも登録されています。こちらは、伝統の中にも新しい風を吹き込みながら花火づくりを続けているんです。
昔から上総地方では、「手製の花火の打ち上げ」が盛んで、その花火作りの名人だった初代が、江戸天保年間に打上花火作りの技を書き残したのをルーツにその歴史が始まったんだそうです。まずは、福山花火工場の現在の社長である小林琢也さんに、ご自身と花火の関わりについて伺いました。小林さんは今年3月高崎で行われた花火コンクールで、40歳以下、若手花火師対象のコンクールで、見事1位に輝いた方なんです。
小林さん:遠くで見た花火大会によって打ち上げられた花火を見て、それに感動をおぼえて興味が湧き、花火を調べ始めて、で調べるうちにどんどん興味が湧いて、高校二年生から調べ始めて実際に行動移したのが高校三年生、18歳の時です。花火会社のリストっていうものをインターネットで見つけて、まあ、それを電話だと全部ダメだったので、もう直接行ってみようと思って調べた場所に何件か行ってみて。で今のその福山花火工場の先代の福山一郎さんが大学に入って夏のアルバイトだったら雇ってあげるよっていうことを言ってくれたので、とりあえず大学を目指して大学に入って、大学四年間バイトさせていただいたという感じです。花火大会のお手伝い、筒を運んだり、玉の準備をしたりとか、まあ打ち上げのお手伝いですね
花火玉は作るのにどのぐらいの時間を必要とするのでしょうか?
小林さん:材料の研究とかも含めちゃうと、かなりの日数になるかなと思います。その研究がどこまでかかるかにもよるので、最短で1ヶ月でまあ4号玉ぐらいだったら作れるかなあと思います。10号玉とかだと三ヶ月間かなぁと思います。 その部品をどうしても作んなきゃいけないので、花火の色になるその星っていうものを作るのに、数週間はやっぱかけないといけないので、それを作って、後は、割り火薬っていう火薬もかけて干さないといけないので、それができてようやく玉こめ。玉を込めたら、今度上から紙を貼っていかなきゃいけないので、それものりをつけてるので、乾かさなきゃいけないんで、貼って乾かし貼って乾かしての繰り返しなので、それも数日かかるような感じですね。
1か月でできる4号玉が大体直径12センチ。CDくらいのサイズの打ち上げ花火が150メートルくらいの高さで直径60メートルに広がります。3か月かかる10号玉が直径30センチ。330メートルの高さで160メートルの大輪を咲かせるんだって。10号玉で重さが8キロ。そう考えると、何千発とか上がる花火大会は、相当前から仕込みが必要です。夏は打ち上げに専念されるようですから、それ以外のシーズンはもしかして、ずっと 玉を作っているのかもしれないですね。
さて、2019年の夏が終わり、翌年の夏に向かって秋から花火の玉の制作をしていた頃、コロナ禍でオリンピックの延期、非常事態宣言となり、花火大会も中止。福山花火工場でも大変な在庫を抱えてしまいましたが、でも、小林さんたちは、 慌てず、こんな風に過ごしていたそうなんです。
小林さん:今年はもう花火、大会はないかもしれないっていう事態に陥ってんでどうすんだってなった時に、福山花火工場は一切休まずずっと研究開発をしてました。雇用調整助成金はうちは使ってないので、使わずにずっと研究ばっかやってました。(今年は)まず木更津がやるって言ってくれて。まあ、去年は分散開催をしてくれたんですけど、まあ今年は通常開催してくれるっていう一報が入って。あとは一宮町さんも今年は通常開催で頑張ってやるっていうことを言ってくれて。あとは館山さんも通常に戻したいっていうことを言ってくれて、結構戻ってきたなあっていう印象はありますね。隅田川がやるって言ってるので、 だいたいできるんじゃないかなと思ってたんですけど。
あの鮮やかな色はどんなものを混ぜればできるのか?どのぐらいの時間輝いているのか?同じ店から同じ原料を仕入れても、少し発色が違うとか、絵や文字を夜空に出すための球の中の火薬の仕込み方であるとか、しっかりとデータを取りながら地道に研究検証を続けていたそうです。コロナ禍が収まって、花火大会が再開されたときに、みんなを あっ!といわせる花火を作りたい、と努力をされていたそうです。
最後に、作り手として、小林さんは花火大会をどんなふうにみてもらいたいと思っているのか、きいてみました。
小林さん:自分もそうだったんですけど、ま当何気なく見てた。花火に感動したっていうのは、理由ってのは本当にどうでもいいのかなと思ってて。やっぱり海外の花火もまあきれいはきれいだったりもするんですけど、日本の方がやっぱ形が綺麗だったり、色が綺麗だったりはするかなとは思ったり言われたりします。花火大会って花火会社だけが頑張ってるわけじゃなくて、主催者っていう方々もすごい一生懸命、今、みんな一生懸命頑張ってるので、その方々のことも考えてもらいながら、花火大会に行ってほしいなあと見てもらいたいなあと思います。
遠くで見た花火に感動して花火工場直談判という行動を起こしてから、もうすぐ20年という小林さん。なんで感動したのかは今でもよくわからない。けれど心が震えた。そんな気持ちが今につながっているとおっしゃいます。今年の夏、夜空に大きな素敵な花火が各地に戻ってきます。花火師さん、花火大会を行う人、様々な人たちの思いが詰まった花火をぜひ楽しんで下さいね。