2024/5/31 UP!
今回は「世界を支える千葉のテクノロジー」と題して、流山おおたかの森に本社をおく「株式会社アビー」の冷凍保存技術をご紹介したいと思います。
皆さんは食品を冷凍することありますか?まとめ買いした時とか、食材がダブった時とか・・・ありますよね?
でも、モノによっては、元の美味しい状態に「解凍」するのは難しいですよね肉が水っぽくなったり、食味が落ちたり、、、
これを限りなく「なま」に近い状態に戻せる冷凍保管技術を開発した会社をご紹介していきたいと思います。
それは、最先端の冷凍保管技術で国内外に多くの特許を持つ、アビーという会社です。社長の大和田哲男さんにまず会社の歴史について伺いました。

大和田さん:株式会社アビーの大和田と申します。食品の農業、漁業、酪農、畜産、料理。これを長期的に保存ができる技術開発をしています。板金工場の厨房メーカー・・・パンを焼く機械とか或いは冷蔵庫を作ったり、或いは流しを作ったりというそういう形の会社だったんです。私が生クリームの凍結に成功しまして、その技術がフランスの国立の学校に機械が入ったんですそれで、ちょっとメディアにちょっと乗っかったことがありまして、医学の方の共同開発をしたいということを申し込みが5つ6つあったんです。
生クリームは空気も含まれているし、ふわっとしてるから冷凍するのは難しそうですよね。
元々は、厨房設備を作っていらして、注文に応じてさまざまな機械を開発していたところ、生クリームを凍結保存できる技術の開発に辿り着いたということなんですねそこからさらに発展して生まれたのが「CAS」という特殊な技術です。 ちょっと難しいんですが、冷凍する過程で食材の細胞が壊れると、旨味や水分が抜けて風味が落ちてしまう。それをCASを用いて細胞組織を壊さずに凍結できることで、解凍しても凍結前の「生」に近い状態に戻すことができるんだそうです。

食品のために開発された技術でしたが、それに注目したのが医学の分野の方々でした。もしかしたら、臓器の保存やその他の治療、移植の分野などで役に立つかもしれないと、国内、海外から問い合わせがたくさんきたそうです。

当時、メディアの注目も当時集め、盛んに紹介されました。医療関連の大学などからは、このCASという技術を医療分野でどう使えるのかを研究したいから売ってくれというオファーもあったそうです。でも、大和田さん、販売はせず、貸し出すことにしたんだとか。どんな狙いがあったのでしょうか?
大和田さん:会社がおかしくなるぐらいの予算をかけて、六ヶ所の先生たちに機械貸し出した。その結果、一つの条件なんですが「どっかひとついいとこ見つけない限りは返品は認めません」それで貸し出したのは結局良かったと思います。そうすると使える話じゃなくて、「これが少し変化があるね」「ここがちょっと違うね」っていうのが1年2年経っていく間に1~2つ出て。バージョンアップっていうのが出てきました。ですからある意味では、私どもはものすごく恵まれてたのは、先生たちを苦労のどん底に押し込んだ機械メーカーなんです。使えない機械を貸しているわけですから。それが今、私どもの機械の基礎研究をやることによって、患者さんの笑顔というところまでアビーが考えられるようになった。東葛テクノプラザに私どもが縁あって入れて、それに入っていなかったらこの医学の道もなかったし、色んな食の世界の道もそこで。厨房屋さんのオヤジで終わったんだろうなと思います。

「貸出」条件によって、先生たちには「いい所を見つける」ミッションが課された訳なんですね。
お話に出てきた「東葛テクノプラザ」というのは、柏の葉に集まっている大学や病院研究施設と民間が連携してベンチャー企業や新産業創成に取り組む千葉県の産業支援施設で、ここに参加したことでアビーの技術は進化し、医学関連技術の分野にもつながっていきました。それと同時にさまざまなご苦労もあったようです。 瞬間冷凍とCASという技術で、ほぼもとの「なま」の状態に戻すことができる
食品冷凍を可能にしたアビーは、国内で大変注目を集め、漁業関係では採れた魚の保存などで大活躍します。その一方で、ちょっと困ったことが起きます。
大和田さん:出る杭は打たれるっていう言葉を機械の開発でそういうことがあると思わなかったんです。日本全国からお客さんがどんどん訪ねて来られた時「アビーの技術は偽物だ」ってやられた。である大手のメーカーさんが「うちもそういうことがあって、外国出て大きくなった。大和田さんも外国に出なさい」と言われました。私は英語ができませんけど、日本語で世界回って、アフリカから始まってアメリカ、ヨーロッパからずっと回りました。でも回っていくうちに真摯に話ができると信頼されるんですね。使ってもらうと、その成果がちゃんと出ますから。いいものを作ると潰しにかかられる場合もあるよっていう事を伝えておきたいなと感じますね。

↑これらも解凍すると、「生」の状態になるんです!
大和田さんのすごいところは、いろんなところでのスピーチやプレゼンも全部日本語でやってしまうんです。それぞれの国のさまざまな食品や医療の技術とアビーの技術を組み合わせて、食料や医療の問題を解決しようと真摯に向き合うことで支持を受け、今も精力的に世界中を回られているそうです。
さらに、地球温暖化への備えも考えていらっしゃいます。近い将来、建物の中でお米や野菜を作らないといけなくなる時代がくると想定している大和田さんは、「微生物を生きたまま100年保存する技術を研究していかないといけないよ」と研究室で話しているそうです。そして食品の備蓄についても、今は「10年間冷凍保管しても、解凍すれば生と変わらない」位まで技術を高めてきましたが、これを50年まで引き伸ばしたいと思っているそうです。大量に収穫できるときに備蓄することで人類の食糧危機を救えるかもしれませんよね。

最後に大和田さんが描く、次世代の研究者に託したい CASの技術を使った壮大な夢についてお話しいただきました。
大和田さん:宇宙に人間が何千人何万人って移住するとしたら、多分精子と卵子がCASで保存されて、宇宙で地球と変わらない所に着いたとすれば、そこで受精をさせます。それも機械的にできます。こんどは赤ちゃんになり、そして成人になっていく。私はいつも夢見てんですけど、精子と卵子ですから、3000万・・1億の人間でもそんなに大きいロケットいらないわけです。その他に、農業とか漁業とか酪農、畜産の種をどうやって持っていくか。日本から鯨・・まで持っていけるかどうかわかりませんけど、ほかの魚の種を持って行って、向こうで受精させて。そう地球と同じことが農業も漁業も酪農、畜産、全部。人間もそうやって持っていける。それを見てみたいな、それに参加したいなって。僕いつも夢では見るんですけど、どうもそれは次の世代にバトンタッチなんだろうなって。でも、あのありえない話じゃないんです。

CASの技術があれば、人間だけじゃなくて動物や植物も、種子の状態で宇宙へ送り出せるから、「移住の夢」が叶うかも!?なんて、まさに壮大な夢ですね?
世界を驚かせた株式会社アビーの技術。食品からスタートして医療分野、ゆくゆくはさらに発展して、人類や地球の未来にも関わるようになっていくかもしれません。引き継がれ、広がっていく、大和田社長をはじめとする研究チームの技術開発に、これからも注目していきましょう。