2024/11/1 UP!
今回は千葉の魅力的なプライベートミュージアムをご紹介したいと思います。
プライベートミュージアムとは、個人によって収集された作品が展示されている私設美術館のことで、千葉県内にも以前ご紹介した、写実絵画専門のホキ美術館をはじめたくさんの素敵なプライベートミュージアムがあります。今回は、全国から猫好きの皆さんが集まるという匝瑳市の「松山庭園美術館」をご紹介していきましょう。

八日市場駅から車で10分ほどの小高い丘の上にある瀟洒な美術館です。芸術家・此木三紅大(このき・みくお)さんのアトリエを公開したもので、此木さんの作品をはじめ数々の名画コレクションや茶道具などが展示されています。また、敷地内には四季折々の風景をつくりだす庭園が整備されていて、そのあちこちには石や鉄の彫刻が点在しています。特に紅葉の見頃には、多くのファンが一枚の絵画のようなその景色をもとめて訪れます。ゆったりと流れる時間を楽しめることで人気のミュージアムについて此木三紅大さんの奥様で館長の此木のり子さんにまずはこの土地にいらしたきっかけを伺いました。

此木館長:この美術館はプライベートな美術館ですので、主に此木三紅大が収集しました絵画ですとか、お茶の関係のお茶碗ですとか、そちらの方も興味を持っておりまして収集しておりますので、そちらを皆様にご覧いただくような、そんな美術館でございます。
横浜に住んでおりまして、東京ですとかそちらの方で活動しておりましたけれども、ちょっと住まいの近くは賑やかになってまいりまして、それであの静かなところがないかなと思っているところですね、ちょうど銀座の画廊で展覧会やっておりました時に、たまたま来られたお客様があのご自分のところで、ぜひ制作など活動してもらえないかということでお誘いを受けまして。こちらの方に何のゆかりもない千葉の方に住むことになりました。それが今からもう40年以上前のことですね。

お話を受けて早速今のミュージアムがある場所を視察。小高い山を切り崩してアトリエを建てることから始めたんだそうです。大変だったそうですが、三紅大さんは、静かな環境をとても気に入って絵画、彫刻、ステンドグラスなど、多岐にわたる作品の創作活動をスタートしました。現在も精力的に活動されているのですが、ある時、このアトリエを週末、一般の方に公開することになります。創作の場を求めて都会の喧騒から逃れてきたはずなのになぜでしょうか?そこに此木さんご夫妻の思いがありました。

此木館長:東京あたりでしたら、自分で興味のあるもの、展覧会はいくらでもありましたので選んでいけたんですが、ここは何もないなあと本当に不思議だなと思いまして。それで芸術家として何か地域のために役に立てることは、やはり美術に触れる時間を、場所を、提供することではないかなと思いました。ちょうど近くの小学校もございまして、子供たちが学校帰りに、わあわあという声も聞こえるようなところですので、それでこの子たちに気軽に美術館に入るという、そういう習慣をつけてもらいたい。そんな気持ちで週末だけ開放する美術館を考えました。

作品作りに夢中になりながらも、子供たちや地域の方々に「芸術、アート」を身近に感じられる場所を提供したいという想いから、アトリエを改装して、多くの方が気軽に芸術作品を見ることができる場所として1998年にオープンした「松山庭園美術館」は、主に週末を中心に公開して、現在も基本的には金曜日、土曜日、日曜日が開館日になっています。そんな松山庭園美術館、実は「猫に会える美術館」としても有名なんです。庭に入っていくと、韓国で2年間かけて作った数々の石像がお迎えしてくれるんですが、その陰からかわいい猫ちゃんがヒョコっと顔を出します。

芸術家 此木三紅大さんの作品やコレクションを楽しめるとともに、猫にあえる美術館、「松山庭園美術館」。実は、猫好きにとってはたまらない21年の歴史がある企画展があるんです。その名も「猫ねこ展覧会」。今年度は7月28日に終了してしまいましたが、日本全国から、この展覧会を見るために実に多くの方がここを訪れます。そもそも、プライベートミュージアムでなぜ猫をモチーフとした展覧会を始めることになったのでしょうか?

此木館長:2003年になりました時に、此木が絵の仲間十人ぐらいと猫を描く展覧会をやったらどうかと思いまして。それで始めたのが「猫ねこ展覧会」のあの第一回目でした。猫にはあの結構名作がございますので、画家の人たちも、じゃあその名作にあのちょっと挑戦したいというそういう気持ちも湧いてきまして、好評を博しましたもんですから、次もやりましょうということであの今日まで21回重ねまして。最初十人だったあの出品者の方たちが、お友達もそれからあのご近所の方も、それから全国的に広がりまして、ついに今年は300人も出品者が増えました。はい。点数にして500点集まりましたので、とても展示も大変ですけれども、皆さんととても楽しんでくださって、盛大に開催しているところです。

日本全国から毎年、猫に関する芸術品や絵画が集まるなんて凄いですね。21年前、10人で始まった展覧会は、今年は300名で500点以上。同じ作品は2度展示することはないそうで、毎年新作というのもすごいですよね。 海外からも作品が寄せられるそうですよ。展示室、そしてアトリエなど庭園美術館は、猫の作品だらけになりますし、その作品の周りを本物の猫たちが悠々と歩いているんです。お客さんはリアル猫、作品猫、どちらも気になって、きょろきょろしてしまうんだそうです。(笑)ところで、週末オープンにしたのは、地域にもっと芸術に触れるチャンスを増やしたいと思ったからというお話でしたが、実はその思いが実を結んだことがあったそうなんです。

此木館長:先生に連れられて美術館見学みたいな感じできた子どもたちの中から、本当に美術に興味を持ってくれたんだと思うんですが、中学高校、大学を出て、それで学芸員の資格を取りたいということで、私どものその美術館に、最後の資格を取る最後の実習、教育実習ですか?そういうものをやらせてもらいたいっていうことで、訪ねてきた子供が・・・子供じゃないですね。もうお嬢さんでした。2人ほどいらして、で、それをとっても嬉しいことでした。で、その後、やはりうちであの研修をしまして、ちゃんと資格が取れて学芸員になりましたというお便りを頂戴しました。敷居が高いよなんて思っていらっしゃる方々にも、気軽に一歩入っていただいて、それでぜひ美術に触れていただいて、可愛い猫に会いに来て頂きたいと思います。

近所にあった小学校は現在は閉校してしまいましたが、子供の頃に見た芸術作品の衝撃や体験を大事にしていきたいということで、今でも松山庭園美術館では、子供たちの見学を受け入れています。また地域の芸術作家の方と交流し、その優れた作品も展示されているそうです。11月8日からは「現代アート実験02展」 が開催されます。これから園内の紅葉がとてもきれいになる時期、広いお庭の中に見え隠れするアートや、そして猫たちに会いにおでかけになってみてはいかがでしょうか。
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