2025/4/11 UP!

明後日4月13日は“喫茶店の日”なんですが、最近みなさんは喫茶店、ご利用になっていますか?
自宅でも車の中でもフードコートでも、コーヒーはどこでも楽しむことができますが、ぐっと落ち着いた雰囲気のお店でいただくコーヒーというのもいいですよね。都心から近く、多くの人が暮らし、商業施設や企業が集積するベイエリア。たくさんの人が行き交うこのエリアには、長く愛され続けているレトロな喫茶店がたくさんあるんです。その中の一つ、あの作家の村上春樹さんもよく訪れたというフレンチスタイルの喫茶店を紹介します。

今回、ご紹介する「café螢明舎」は、いつ行っても変わらない落ち着いた雰囲気が人気の喫茶店です。先代のオーナー、下田壮一郎さんが1982年に谷津で創業し、数年後に京成八幡駅とJR・都営新宿線、本八幡駅の間に八幡店を開きました。残念ながら荘一郎さんは2年半前に亡くなられましたが、この2店舗は奥様の下田理絵子さん、次男の励次朗さんに先代の想いと共に引き継がれ、現在もたくさんのファンが訪れています。今回は理絵子さんに、まずはお店の成り立ちからお聴きしました。

下田さん:習志野の谷津と、本八幡に2店舗ございます。元々は先代の社長が、絵かきをしておりまして、絵かきだけでは当然食べていけないということで、谷津に喫茶店を開きました。それが1982年です。都内でジャズ喫茶を開かれていた村上さんのところにお邪魔して、私も喫茶店を開きたいんだ。絵を書いてるんだっていう話をしたのが、どうも村上さんの心に残っていたようで、その後訪ねてきてくださいまして、親交がある程度あったようです。飼ってた猫のことも書いてくださったりしたみたいです。その後(絵描きとして)絵筆を折ったわけなんですけど、主人にとってはそのお店の全てがその作品だったんだと思います。家具ですとか灯り、音楽、空間全てが、、を、提供したい。というふうに思ってたと思います。

コーヒー、そしてお店の雰囲気自体が前オーナーの「作品」だった。なんかすごい深い言葉ですね。
その、前オーナーの作品ともいえるお店では、コーヒーの淹れ方や、フードメニューにもこだわりがあります。どんなこだわりなのかきいてみました。

下田さん:開店当初から、いわゆるフレンチスタイルでネルの布を使ってコーヒーを抽出するんですけれどもコクがあって香り高く、深い味と言うんですかね、そういうのを目指して、それは変わらないです。食事はサンドイッチとキッシュがございまして、ケーキ類ですと9種類あります。谷津の方に厨房がございましてそちらで作ってるんですが、基本的には全て手作り・・パン以外は全部手作りです。中でも卵ですとかそういうバターとか材料に関しても厳選されたものを選んで作っております。キッシュはバター、粉から捏ねて伸ばして焼いてホワイトソースを作って、それをチーズを入れて、ちょっと濃厚な感じに仕上げてます。いや大変ですね、もうとにかく手間だけはかかってます。

スタジオでケーキをいただきました。

ちなみに、café螢明舎 のフレンチスタイルの条件は
- フレンチローストのオールド・ビーンズ(エイジング・ビーンズ) を使う
- ネルのハンドドリップとデキャンタを使う
- デミタスサイズの磁器のコーヒーカップを使う
- インテリアはフランスの田舎風 だそうです
フランネルという布を使ったドリップは一杯抽出するのに5分以上かかりますがこうして淹れたオールドビーンズのコーヒ-は、ポリフェノールが豊富に含まれていて、ワインと同じようにいったん落ち着かせることで、味や香りに深みが増していくのだそうです。抽出後30分〜3時間ぐらいの間に味のピークが訪れるように淹れられたコーヒーは、デキャンターにうつされ、オーダーが入ると60~65度ぐらいに温められて提供されます。

レトロという言葉では表現し尽くせない、独特の雰囲気のあるcafé螢明舎。谷津と本八幡にお店がありますが、そのどちらもが、時代に流されず、その世界観を保って多くのファンに愛されています。どんな想いが受け継がれているのでしょうか
下田さん:まずお客様が・・今年で43年目になるんです。谷津の方なんですけど43年目になるんですけど・・・「30年ぶりに来たけど全然変わってない」とか、そうやっておっしゃるのでその辺は何とか主人の思いを引き継げてるのかなとは思っております。一番はやっぱりお客様とスタッフ同士もそうなんですけど、その距離感、それを保つっていうことがそういう空間を維持することになるんじゃないかなと思います。よく来てくださるお客様と、初めて来たお客様に対して我々スタッフが同じように接することができる。初めて来たお客様がちょっといわゆる常連さんと仲良くしてるような場面があると引いてしまう。そういう場面をなくす、そういう何か変な気遣いをしてはもらいたくないなっていうのはあります。

お店の方と、お客さんとの距離感、気遣いをさせたくない。大事ですね。
その時の天気や湿度、気温によって微調整するコーヒーの淹れ方も、先代から変わらない。いつ行っても同じスタンス、同じ雰囲気、同じ味。これが安心感につながっているんですね。そしてお店の雰囲気やインテリアも統一されています。元アトリエの谷津店は、京成谷津駅からすぐのところ。時間の経過とともに味わいを増すというブナ材やアフリカ原産のブビンガ材と素材にも拘って、前オーナー自身がデザインした建物。家具も注文制作した物なんです。ビルのテナントである八幡店の方は、自慢の7mのカウンターを大型クレーンで搬入し、テーブルは鹿児島にある障害者自立支援施設で造った漆塗り。これも前オーナーのデザインを元にしているそうです。
ますます行ってその雰囲気の中で時間を過ごしたくなりますね。
最後に、奥様の理絵子さんが荘一郎さんから引継ぎ、そして 次男の励次郎さんへ引き継いでいたいと思っている大切な想いをうかがいました。

下田さん:正直主人はそのワンマンというか厳しい。とにかく守れという感じだったんですけど。私が天国に行けるかどうかわかりませんけど、あちらで会ったときに「よく頑張ったな」って言われるように私は頑張りたいと思いますが。今息子が手伝ってくれてるんですけれども、いい空間だなっていうふうに思えるんだったらそれは守り継いでいるという感じがします。いつでもそう自分で良い空間作れてるかなっていうのを意識して。コーヒーを落とすこともそうですし、そのケーキ一つにしてもそうですけど、私達にとっては一杯出すコーヒーは何千杯何万杯のうちの一つかもしれませんけどお客様にとってはそれが最初の一杯かもしれないですし、それに何か気持ちを込めて受け取ってるかもしれないので、そこを考えていつもお客様に対してもお店に対しても接してもらいたいと思います。

谷津や本八幡のお店、これからもそういう場所であり続けてほしいですね。
私もフレンチスタイルに包まれて、変わらないものの良さを感じながらの至福のひととき、過ごしてみたくなりませんか?café螢明舎のホームページとSNSのリンクはこちらです。営業時間などの情報もこちらでご確認ください。おでかけください。

https://www.instagram.com/cafekeimeisha