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日々の健康や幸せのために〜信州信濃町「癒しの森」プログラム

2024/7/21 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、長野県上水内郡(かみみのちぐん)信濃町(しなのまち)認定の森林メディカルトレーナー「河西 恒(かさい・ひさし)」さんです。

 町の面積のおよそ7割が森に覆われている信濃町では、森を活かした「癒しの森」という事業を行なっていて、森林メディカルトレーナーの育成にも力を入れています。

 「しなの町Woods-life Community」の事務局も担当されている河西さんは1969年、東京都日野市出身。高校卒業後、将来は森で仕事をしたいと思い、東京環境工科専門学校で自然や生き物について学びます。

 卒業後は、野生のニホンザルの調査や富士山周辺を案内するガイドなどを経て、一般社団法人「C.W.ニコル・アファンの森財団」に勤務。そして、信濃町の「癒しの森」に関わるようになり、現在は町認定の森林メディカルトレーナーとして活躍されています。

 きょうは「癒しの森」や、森の中での体験プログラムが心身にもたらす効果について、活動の中心的な役割を担っている河西さんにお話をうかがいます。

☆写真協力:しなの町Woods-life Community

河西 恒さん

信濃町認定「森林メディカルトレーナー」

※まずは「森林メディカルトレーナー」とは何か、そのあたりのお話から。「信濃町認定」というご紹介になりましたが、これは町の事業として行なっている、ということなんですよね?

写真協力:しなの町Woods-life Community

「はい、そういうことなんです。約20年ぐらい前、2003年からスタートしているんですけれども、森林セラピーを主軸として地域活性の事業に取り組み続けています。 いらっしゃったお客様を森の中へご案内する、いわゆるガイドの役割を『森林メディカルトレーナー』と名付けて信濃町でお迎えをしています」

●信濃町が認定する資格制度があるっていうことですか?

「そうですね。信濃町が主催して養成講座を開き、受講いただいた面々が受講を終えてからもずっと研鑽を続けて、お客様がいらした時にそれを大いに発揮して、一緒に森の中に出かける、そんなふうにしています。

 ただ単に植物を紹介するような自然観察会でもないですし、環境学習ということでもないです。森林メディカルトレーナーというその名前からも想像できるかもしれないんですけれど、メディカルと付いているので、心身の健康のために森に入る意味についても、どういうふうに(お客様を)ご案内をしていくのがいいのか、ということをやったりとか・・・。

 あとは実際にご自身にもお客様の体験もしていただいて、”やっぱり森に入るのは、こんなふうにいいんだな” なんていうことも、実感していただくことも大事な講座のひとつですね」

(編集部注:現在、森林メディカルトレーナーは講座を受講して、認定されているのは140人ほどだそうですが、例年、お客様を森にご案内するのは20〜30人くらいだということです)

写真協力:しなの町Woods-life Community

C.W.ニコルさんの存在

※信濃町が「癒しの森」の事業を始める至った経緯を少し説明しておくと・・・
 1990年代後半から2000年代にかけて、市町村が合併する、いわゆる「平成の大合併」が進む中、もともと「観光」と「農業」の町だった信濃町は、東京農業大学の教授「上原巌(うえはら・いわお)」先生が提唱する「森林療法」に出会い、合併はせずに、町の7割以上を占める豊かな森を活用することで、町の活性化につなげる選択をしたそうです。

 それが「癒しの森」という取り組みにつながるわけですが・・・森には人を癒す力がある、これを活かしていこうとされたのは、信濃町に暮らしていた作家「C.W.ニコル」さんの存在が大きかったようですね?

C.W.ニコルさん

「そうですね。ニコルさんの存在は大きかったと思います。同じタイミングで、ニコルさんと長野県の林務部がどうやらお話をされていたそうなんですよね。

 ニコルさんがおっしゃるには、”欧米の方々は、日常的に森の中を散策しているよ”と。『ウッドパス』っていう小道が森の中に通っていて、気軽に散歩できるようになっているし、日常の周りにもやっぱり散歩している人が多いんだと・・・。日本は欧米よりもこれだけ豊かな森があるのに、”そうやって散歩している人、少ないよね?”って(ニコルさんは)おっしゃるんですよ。

 さらに、特に英国ではお医者さんが処方箋で薬を出すのと同じように、”あなた、こういう状態だったら、もうちょっと森に出かけて歩きなさい”みたいなことを言うんだそうです。

 そういう取り組みを日本でもやろうよと言って、当時、長野県林務部の担当者と話をしていて、林務のかたがたが補助金の事業を形にまとめて発信をしたと・・・。信濃町で当時、そんなことを考えていた住民8人のグループがその情報を見つけて、本来であれば町役場に相談をするんですけれど、それを飛び越して、いきなり県の発信元に”私たちにやらせてくれ!”って直談判をしたそうです。

 なので、ニコルさんの発想がきっかけになって、この癒しの森事業がスタートしているんだよっていうふうに聞いていますね」

●海外では、こういった癒しの森のような事業はあるっていうことなんですか?

「はい、ニコルさんの周りにはあったみたいです。処方するっていうお話もしましたけれど、ちょっと体調を崩したかたが森に出かけることも日常だったし、森の中で勉強をする、小学生が森の中に入って数学の勉強をしたりということもあったりとか、そんな取り組みは日常的にあったそうです。

 ドイツで参考にしたのは『クナイプ療法地』というところなんですが、1万2000人ぐらいの人口の町に保養のかたが、年間50万人以上訪れるんだそうです。ドイツでもそうやって自然環境の豊かなところに出かけることで、自分自身の心と体調を整えましょう、みたいな取り組みがあったようなんですね」

(編集部注:河西さんが「癒しの森」に深く関わるようになったのは、実は河西さんがスタッフとして関わった「C.W.ニコル・アファンの森財団」の「5センス・プロジェクト」の影響があるんです。

 このプロジェクトは、児童養護施設や盲学校に通う子供たちを森にいざない、いろんな体験をすることで、心と体を癒し、心身の健康を取り戻してほしい、そんな目的で行なわれているそうなんですが、ある時、河西さんは信じられない光景を目にします。

 それは全盲の子供が、なんとなく周りの様子がわかるからと、森の中を走ったんだそうです。おそらく、その子が持っているすべての感覚が、森の効果で研ぎ澄まされて、奇跡のようなことにつながったんでしょうね。

 そんなプロジェクトに参加して、心から笑顔になる子供たちの存在が糧となり、それが、河西さんの大きな原動力になっているんです)

閉じていた感覚を開く

写真協力:しなの町Woods-life Community

※ここからは、森林メディカルトレーナーが実際に森の中で、どんなプログラムを行なっているのかを聞いていきましょう。森林浴というのは以前からあったと思いますが、森林メディカルトレーナーが行なうプログラムは、森の中をただ歩くだけじゃないんですよね?

「そうですね。これまた難しいんですけれど、何か特別なことをしているわけでも実はないんです。 なんですけれども、一緒に森に出かけて、まず私たちがご案内をしているのは、例えば木の枝をポキって折った時に、ほわ〜って香ってくるその香りを嗅いでいただいたりとか・・・。あるいは水の音がしませんか? と言って、耳を傾けてもらったりとか・・・五感ですね・・・臭いとか音とか・・・食べられる野草なんかも生えているので、ちょっと味見してみません? ってご紹介したりとか・・・まず森の中で、感覚を使うものにアプローチをしているんです。

 特に都市部に住んでいる、とても忙しいかたは、その感覚が閉じてしまっていると僕らは思っています。実際にそうなんですけれど、(森に)ご案内することでなんか変わってきたみたいなことをおっしゃったりとか、半日ぐるっと森を回ったあとに、自分から鳥の声に気づけるようになったとおっしゃるかたは結構いらっしゃいます。まずは感覚を開いていただくことをやっています」

●具体的にどんな効果が見込めるんですか?

「森の中に出かけることの、ひとつの大きい効果だと思うんですけれど、『フィトンチッド』と言われているんですが、植物、木々、草花は動けないので、虫とか菌にやられないために、自分を守るための忌避剤(きひざい)として、そういう科学物質を製造して放っているんですよね。

写真協力:しなの町Woods-life Community

 それを人間が(森に)出かけて普通に呼吸することで、とても心と体の、ひと言で言えば、バランスが整うなんていう表現をしているんですけれど、ストレスホルモンの値が下がったりであるとか、いい睡眠につながったりであるとか、様々な効果がその香りを普通に呼吸にすることで得られるんですよって言われていますね」

●医学的にも効果が検証されているということですか?

「はい、エビデンスはたくさん出てきています」

●へぇ〜! 「癒しの森」プログラムを行なうエリアには、いくつかコースがあるんですよね?

写真協力:しなの町Woods-life Community

「信濃町では代表的なコースは3つありますね。あまりアップダウンがない池の周りにたくさん道がある『御鹿池(おじかいけ)』っていう池があるんですけれども、そこに出かけるコース。あとは野尻湖があるんですが、その野尻湖をちょっと見下ろせるような森の中を歩く『象の小径コース』というのもあります。

 で、もうひとつ新潟県境に『地震滝(ないのたき)』という日本の滝100選に選ばれているような立派な滝があるんですけれど、そこをゴールに目指す『地震滝コース』っていうその3つがあります。

 その滝コースは1日かけて、お弁当を持って出かけましょう! っていう場所なので、どっぷり1日森の中にいたいっていうかたには地震滝コースをご案内しています」

写真協力:しなの町Woods-life Community

森の中で、ひとりたたずむ時間

※森の中で行なうプログラムについて、もう少しうかがっていきましょう。森に入ったら、ほかにどんなことをやるんですか?

「森に入って、まず感覚を開いていただいたあとに、丁寧に呼吸してみましょうかと言って、胸式呼吸ではなくて腹式の呼吸を丁寧にご案内したりとか 、あとは素足になって”水の中に入りませんか?”と言って、(小川に)入って”きゃー!”って言ってもらったりとか・・・。

写真協力:しなの町Woods-life Community

 あとは感覚が開いて、そうやって体験をしていただいたあと、ひとりで森の中にいても大丈夫だな、安心だなっていうふうにお客様の様子が変わってきたら、ちょっとひとりたたずむ時間も取っていますね。レジャーシートをお渡しして、そうですね、15分とか20分、あるいは長いかただと30分ぐらい森の中でひとりで過ごしていただく時間を取るようにしています」

●リラックスできそうですね〜。

「そうですね。とてもその時間、ひとりたたずむ時間のあとは表情が変わるかたが多いです」

●参加者のみなさんの反応はいかがですか?

「様々なんですけれど、忘れかけていたものをちょっと思い出した気がしたとか、あとはこれ、女性なんですけれど、森の中に半日出かけて戻って、美容室に行ったそうなんですよ。そうしたら(美容師さんに)「どこに行ったんですか?」と言って、髪の毛を美容師さんに触ってもらって、髪がとてもツヤツヤしていたって言うんです。

 ”そんなことを言われたわよ”と言っていただいたお客様がいらっしゃったりとか、いろいろなかたがいるんですけれど、だいたいみなさん表情が柔らかくなって優しくなりますよね。人当たりが優しくなる、表情も言葉も・・・僕はそんな感じがしています」

●まさに河西さんがそんな感じがします。優しさが出ています。溢れ出ています。

「いやぁ〜、ははは、ありがとうございます。おそれいります(笑)」

●河西さん自身も仕事とはいえ、プログラムが終わる頃には変化を感じますか?

「私自身は終わった時は、とにかく何事もなく無事に終えられたなって、ちょっとほっとしている部分が大きいんですけど、必ずトレーナーはお客様を迎えることが決まったら下見をするんです。その下見の時にひとり、あるいは一緒に案内する仲間と下見するんですけど、その時間はとても自分にとっては気持ちいいですよね、リラックスできるなって・・・。

 やっぱりこのコースは、改めてこういうふうに回るのが自分には合っているなって実感して、お客様をお迎えするっていうふうになるんですけれど、私はやっぱりその下見の時間はいいなと思いますね。で、やっぱり眠くなります」

●癒されるんですね〜。

「はい、緩むっていう表現がいいですかね」

企業や団体がもっと活用すべき「癒しの森」

※河西さんが所属する「しなの町Woods-life Community」としては今後、どのようなことに取り組んでいく予定ですか?

「これまでもそうだったんですけれども、おもに企業で頑張っているかたがたをお迎えをして、なんて言うんでしょう・・・ちょっとバランスを崩しているようであれば、ご自身を取り戻していただいて、いつもの調子とあまり変わらない、大丈夫っていうかたは森に来ることで、より生産性が上がったりとか、コミュニケーションが活性化するっていうデータもあるので、企業にお勤めのかた、あるいは団体や組織で動いているかたに、もっと活用いただいて・・・。

 今『健康経営』なんて言われて久しくなりましたし、『ワークエンゲージメント』であるとか『心理的安全性』みたいなキーワードも出てきているので、従業員の心と体の健康プラス、従業員同士の関わりがもっと活性化していって、より組織であるとか企業が元気になるっていうところに貢献できればいいな、そんなことを意図してみなさんにいらしていただければいいなと思っています」

●確かに企業の福利厚生や社員の健康管理などにこの「癒しの森」プログラムを
活用したらすごくいいですよね?

「もうぜひぜひ! そう言っていただけると、とてもありがたいですね」

写真協力:しなの町Woods-life Community

●では最後に、森林メディカルトレーナーとしての夢や目標があれば、ぜひ教えてください。

「一緒に出かけていただいて関わるかたが日常に戻られた時に、森の中で表情が緩んで、いい表情になることはもちろんなんですけれど、そうなった時にその状態で日常に戻って、そのかたの日常がよりよくなる・・・健康っていう面もそうですし、幸せっていうことも言えるのかもしれません。そのかた本人が望んでいる人生が歩めるようなサポートができるといいなと思っています。

 そのために日々勉強することしかないのかなって、ちょっと実は思っていて・・・なかなかバタバタして仕事に追われる日々ではあるんです。森にいてもその事実は変わらないので・・・。でも時々、森のそばにいる人間もちょっと森に出かけて、新しい情報であるとか、学ばなくちゃいけないよなって思うことは少しずつ勉強しつつ、でもお客様と楽しい時間を過ごすっていう・・・すいません、答えになっているかどうかわかんないんですけれど、何かすごく大きな目標があるかっていうことよりも、日々研鑽し続けることが大事だな、なんて今思っています」

(編集部注:信濃町が取り組んでいる「癒しの森」は、日本初の事業で、ほかの市町村からの視察も多いそうです。提携している企業や団体は、現在39ほどあるとのことです)


INFORMATION

写真協力:しなの町Woods-life Community

 「癒しの森」のプログラムに参加してみたいと思ったかたは、「しなの町Woods-life Community」の事務局に、できれば、メールでご連絡くださいとのことです。

 宿泊は「癒しの森の宿」に認定されている宿を選ぶことができるそうです。宿泊プランやガイドツアーの料金など、詳しくは、信州信濃町「癒しの森」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「癒しの森」:http://iyashinomori.main.jp

オンエア・ソング 7月21日(日)

2024/7/21 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. TAKE IT EASY / THE EAGLES
M2. HAPPY EVER AFTER / JULIA FORDHAM
M3. SAIL DOWN THE RIVER / C.W.NICOL
M4. WATERFALLS / TLC
M5. WITH / 幾田りら
M6. YOU’RE BEAUTIFUL / JAMES BLUNT
M7. RELAX, TAKE IT EASY / MIKA

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

オランウータンの命運を握っているのは、私たちです。

2024/7/14 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ネイチャー・フォトグラファー「柏倉陽介(かしわくら・ようすけ)」さんです。

 柏倉さんは1978年、山形生まれ。写真家として、自然風景、野生動物、環境問題など幅広い分野で撮影を続けていらっしゃいます。作品は、アメリカのスミソニアンやロンドンの自然史博物館などで展示。また、「ナショナル・ジオグラフィック」ほかの国際フォトコンテストで入賞するなど、世界的にも注目されています。

 そして先頃、写真集『Back to the Wild〜森を失ったオランウータン』を出されたということで、番組にお迎えすることになりました。

 柏倉さんは、国内では北海道・礼文島に撮影の拠点を置いていらっしゃいます。

 礼文島は、稚内市の西の沖合60キロに位置する最北の離島で、柏倉さんによれば、島には北から南へ1本の道路があり、それが約25キロ、車で30〜40分で走れる、それくらいの大きさの島だそうです。人口は2300人ほど。

 野生の哺乳類は、意外に少なくて、イタチなどがいる程度。ヒグマやキタキツネは生息しておらず、海岸に行くとアザラシや、冬になるとトドがやってくるとのこと。首都圏からのアクセス方法は、羽田から稚内空港、そこからはバスとフェリーになるそうです。

 今回は、礼文島にいる柏倉さんにリモートで島の自然や星空、そしてボルネオ島の「オランウータン・リハビリテーションセンター」のお話などうかがいました。その時の模様をお届けします。

☆写真:柏倉陽介

柏倉陽介さん

礼文島は「花の浮島」

※まずは、礼文島のどのへんに撮影の拠点があるのか、お聞きしました。

「礼文島のいちばん北のスコトン(須古頓)集落という場所にあります。歩いて300メートルぐらい先に“日本最北限の岬”みたいな看板がありまして、そこが有名な『スコトン岬』という場所になっています」

●空き家を改装されたんですよね?

「はい、取材中に偶然そのスコトン集落があるエリアに出会いまして、空き家があるかな? どうかな? ってインターネットで検索してみたら一軒だけありました。それで(借りる人を)募集されていたんですけれども、そこに応募したら偶然選んでいただいたという形ですね」

●そこからは、どんな景色が見えるんですか?

「花畑! 一面の花畑なんです。礼文島って実は高山植物が有名な島で、“花の浮島”とも呼ばれているんですが、ここに高山植物が300種類ぐらい年間咲き誇るんですね。僕が見た光景は『ゴロタ岬』という展望台から風景写真を撮ったんですけれども、その一面の花畑の向こうに半島のような突端があって、その突端にスコトン集落があるという、そういう見事な光景でした」

※柏倉さんの生活の拠点は神奈川だそうですが、なぜ礼文島に撮影の拠点を置くことにしたんですか?

「風景撮影の仕事で偶然(礼文島に)行ったんですね。そこでとにかく一目惚れしてしまったというか・・・。
 風景の中に人が住んでいるっていう世界観というか、世界中いろんな場所に撮影に行くんですけれども、その中には大自然の中にぽつんと一軒家があったりとか、とにかくすごい風景の中にある家がいつも目に入ってきたんですよね。それにすごく近いなと思いまして、そこがポイントですね」

 季節的には6月の上旬から礼文島の固有種が咲き始めて、だいたい8月の上旬までは花の時期が続いていますね。この時期は、礼文島の固有種『レブンウスユキソウ』という花が咲いています。

 「エーデルワイス」の仲間なんですね。これが礼文町の町花に選ばれている花で、実際に白く雪が積もったような白っぽい花なんですけれども、花びらに見えているのが実は葉っぱなんです。花弁はちょっと黄色っぽいんですけど、それを包み込むような、そこから広がっていくような花のようなものに、白い雪が積もっているみたいな見た目ですね。とても美しいので見てもらいたいです」

●街の明かりとかもないから、夜も綺麗なんじゃないですか? 星空が・・・。

「そうですね。とにかく異様なぐらい星が美しいんですよ。やっぱり周りが海に囲まれていることと、それから島の中に街灯も少なくて街明かりもあまりないということで、天の川がすごく立体的に浮かび上がっているような感じで見ることができます」

<コラム:日本列島、その島の数が倍に!?>

 あす7月15日は「海の日」。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国家日本の繁栄を願う日」なんですね。

 海に囲まれている、いわゆる島国日本は多くの島で構成されていて、その数はこれまで「6852」とされてきましたが、36年ぶりに国土地理院が調べ直したところ、
なんと、倍以上の「14,125」の島があったそうです。

 これは、新たに島が発見されたのではなく、航空写真による測量技術が進化したことで、正確に数えられるようになったからだそうです。ここでいう島の条件は、周囲の海岸線の長さが100メートル以上。

 では、都道府県でいうと、島の数が最も多いのはどこでしょうか? 
 答えは長崎県、その数1479。五島列島などがありますから、確かに多いイメージがありますよね。
2位は、長崎県よりも6つ少ない北海道で1473、3位は鹿児島県で1256 ということです。

ボルネオ島のオランウータン・リハビリ施設

『Back to the Wild〜森を失ったオランウータン』

※ここからは、柏倉さんの最新の写真集『Back to the Wild〜森を失ったオランウータン』について、お話をうかがっていきます。この写真集は、おもにボルネオ島にある「セピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター」で撮影した写真で構成されています。

●表紙は水色のタオルを頭から被って、つぶらな瞳で天井を見上げている保護された赤ちゃんオランウータンの写真になっています。なんだか切ない表情というか、寂しそうで不安そうですよね?

「ええ、そうなんです。幼い赤ん坊に近いオランウータンは、ずっと母親の体にしがみついて、一緒に何年も何年も生活していくんですけれども、開発に巻き込まれて母親とはぐれてしまった孤児たちは、しがみつく母親の体を失ってしまったんですね。なので、毎日泊まる場所、檻の中にタオルが敷かれていたりするんですけども、その檻の中のタオルを頭から被って、なんというか・・・寂しさを紛らわしているというか、そういう光景がありましたね」

●この写真からすごく寂しそうな雰囲気が伝わってきました。人間がタオルを被せたわけじゃないってことですよね?

「そうですね。ある日の朝、彼らの寝床のある建物に入って行ったら、やっぱり頭から(タオルを)被っていたりとか、それから体中にタオルを巻きつけていたりとか、そういう光景をよく目にしましたね」

写真:柏倉陽介

●あんなにちっちゃな赤ちゃんオランウータンが、自分でタオルを身にまとっているんですね?

「そうですね。オランウータンは記憶もすごく優れているので、おそらく自分の母親のことを思い出したりとかしているのかなと思うと、胸が苦しくなりますね」

※柏倉さんがこの施設を知ったのはいつ頃で、どんなきっかけがあったんですか?

「もう15年近く前になるんですけれども、環境保全の撮影ツアーがあって、そのツアーに同行して写真を撮るという仕事で行ったんですね。

 『キナバタンガン川』という長大な川がボルネオ島にありまして、そこの川の両岸に野生動物がたくさん出てくるんですよ。で、それを僕は “わ〜、すごいすごい!”と言いながらたくさん写真を撮っていて、その時に同行してくれた環境保全団体の理事長さんが、“どうしてこんなにたくさん動物が現れるかわかりますか?”っていう質問を僕にしてくれました。

 僕はわかんなかったんですけれども、そのなぜかっていうのは、川の両岸にある森の、数十メートルすぐ向こうには人間が開発したアブラヤシ農園がどこまでも広がっていって、動物たちがそこに棲むことができないので、川の両岸に残されたわずかな森の中にどんどん追いやられていることを教えてもらったんですね。

 僕はその追い込まれていた動物を“すごいすごい!”と言いながら撮っていたんですね。それを教えてもらって、これではカメラマンとしても、おかしな方向に進んでしまうし、もっと誰も撮らないようなテーマを見つけて撮影を進めなければいけないなって思ったのがきっかけですね」

熱帯雨林がアブラヤシ農園に!

写真:柏倉陽介

※ボルネオ島というと、熱帯雨林のイメージがあったんですけど、どんどん伐採されている現状があるんですね?

「そうですね。この100年で相当、森林伐採が進んでしまいました。オランウータンは、1960年ぐらいには11万頭ぐらいいたのが、今では3万頭ぐらいまで減ってしまったという状況ですね。ボルネオ島は世界第3位ぐらい広い島なんですけれども、その半分ぐらいの熱帯雨林がなくなってしまったとも言われていますね」

●先ほどのアブラヤシから採れる油はお菓子などの食品から、洗剤とかシャンプーとか口紅とかにも使われているんですよね?

「そうですね。日常の本当に想像もできないところまで深く浸透しているというか、もうこのアブラヤシから採れるパーム油、この植物油なしにはおそらく生活が成り立たないっていうぐらい私たちの生活の身近にありますね」

●私たちの生活に欠かせないものになっているっていうことですよね?

「はい、世界中のパーム油の85%が、実はボルネオ島と隣のスマトラ島かな・・・そこから輸出されているっていう現状があります」

●そうなんですね。柏倉さん自身はアブラヤシ農園に行かれたことはありますか?

「何度かあります」

●どんな印象を受けましたか?

「車で農園の中を走っていても、1時間経っても2時間経っても風景が変わらない感じで、ドローンを飛ばして上から撮影したり、ヘリに乗って上から撮影したりもしているんですけれども、とにかく地平線の果てまで人工的に開発されたアブラヤシ農園が広がっているんですね。50〜60年かけて人間が作った光景とは言っても、大災害に近いような迫力がありましたね」

(編集部注:ボルネオ島は、世界で3番目に大きな島で、その面積は日本の国土のおよそ2倍。インドネシア、マレーシア、ブルネイと、3つの国に分かれています)

木登り、綱渡り、毎日練習!?

※写真集の舞台となっている「セピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター」は、マレーシアのサバ州にあって、設立は1964年。親から引き離されてしまった孤児たちが常時、約70頭、世話をするスタッフは50〜60人ほど。

 センターに収容される孤児たちは、森でさまよっているとか、ペットとして密輸されるところを発見されるなど、通報を受けて、スタッフが現場に急行して保護するとのこと。

●保護されたオランウータンの孤児たちは、いずれは森に返すんですよね?

「そうですね。オランウータンの子供は7〜8年、母親の体にしがみつきながら、どういう果物が食べられるか、木の上でどうやってベッドを作るか、寝床を作るかっていうのを何年もかけて、母親がしているいろいろな仕草を見て覚えていくんですね。

写真:柏倉陽介

 ここのオラウータンは、それができなくて保護されてしまったので、このセンターの中で、だいたい10年ぐらいの時間をかけて、木登りの仕方だったりっていうところから教えて・・・10年ぐらい経って森に戻れると判断された個体に関しては、保護区の森に放されたりしていますね」

●その10年はどんなステップがあるんですか?

「10年のステップ・・・まず初めは保護されてすぐは、健康診断とかいろんな予防注射とかそういうのをして、まずは元気になってもらう・・・。それから人間の母親のような立ち位置にいるスタッフがミルクをあげたりして、ある程度体力を回復させることが始まりで、その後は消防ホースをちょっとねじったようなロープを、木の間に渡して・・・2メートルぐらいですかね。そういう高さのところを孤児たちに渡らせる練習をしますね。

写真:柏倉陽介

 そこから先は、ロープを張ってある場所がどんどん高くなっていくんですけれども、自由に綱渡りができるようになった子は、近くにある木々に自分で登ったりとか、いろいろできるようになります。

 それができたら今度は、センター自体が保護区の森の中にあるので、近くの保護区に実際(オランウータンを)放すんですね。その保護の森の中でしばらく生活できてOKだなってなったら、ようやく森に返されますね」

●オランウータンは、生まれた時から木に登ったりできるのかと思っていたんです。
 でもこの写真集に、毎日毎日練習を、っていうふうに書かれていました。そうやってトレーニングしていたんですね?

「そうですね。僕も初めて見た時はびっくりしまして、生まれながらの能力かなと思っていたんですけれども、やっぱり人間が、“ここをつかむんだよ。ここだよ。次はここだよ”って感じで、手で教えてあげないとわからないんですよね。高いところに登ってしまうと怖くて、体が硬直してしまうような子もいましたね」

写真:柏倉陽介

●そうなんですね。スタッフの方々がいちから教えていくっていう感じなんですね?

「はい、結構途方もないプロセスというか、途方もない作業に思えるんですけど、お話を聞いてみると、10年はあっという間に経って、自分たちが面倒を見てきたオランウータンが無事に外に行ったっていう話も聞いたりしています。

 ただ、無事に外に行ったとしても、今度は外の世界が本番の自然の中なので、いろんな危険があったりして、そこから先は彼らの勝負というか、そういう世界になっています」

●ミルクを与えたりとか食事の世話をしたりとか、そういうのも全部スタッフさんたちがするんですよね?

「そうですね。もう何から何まで、本当に人間の赤ん坊とほとんど一緒のことですね」

写真:柏倉陽介

(編集部注:トレーニングは朝から1日に行ない、中には、高いところを怖がって渡らない個体もいるそうです。トレーニングしないと森には戻れないので、人間がどこまで教えられるかの挑戦でもあると、柏倉さんはおっしゃっていました)

動物にも心がある

※オランウータン・リハビリテーションセンターで撮影をしていて、特に印象に残っている出来事があったら教えてください。

「オランウータンの瞳を撮った時にものすごく綺麗な目をしていて・・・ずっと一緒に生活はしてないんですけど、撮影現場でずっと一緒にいたので、どのオランウータンがどういう性格かっていうのも、見ているとだんだんわかってくるんですよね。

 いたずら好きだったりとか、ひとりを好むオランウータンもいたりとか、親友同士いつも遊んでいるオランウータンがいたりとか、オランウータンとひとことで言っても本当に個性豊かな動物たちですね。

 やっぱり改めてそういう姿を見ていると、動物にも心があるんだっていう当然のことがより実感できたというか・・・。(リハビリ施設には)コロナ禍以降はちょっと行けてないんですけども、今でも思い出すような出来事でしたね」

写真:柏倉陽介

●このリハビリ施設に出会って以来、柏倉さんの写真に対する向き合い方に何か変化はありましたか?

「最初はより綺麗な世界とか、より野性的な瞬間とか、いろんな人がすごいねって言ってくれる写真を撮りがちだったんですけれども、ボルネオに行ってこのセンターの撮影を経験して、その素晴らしい、感動する横にあるストーリーっていうのもすごく大事だなっていうか、それも同じく撮って、人に“こんなことがあったよ”と伝える写真が撮れたら、それはカメラマンとしても、より充実した・・・充実というか、自分の理想的な仕事のあり方って、そっちのほうなのかなっていうのも感じることができましたね」

●では最後に、写真集『Bsck to the Wild〜森を失ったオランウータン』を通して、最も伝えたい思いをぜひお話しください。

「自然っていうのは接しないと、例えば山の中でも森の中でも分け入っていかないと、大切な存在って気づきにくいんですよね。山の中に行って登山道を歩かないと、そこに咲いている貴重な花の存在、存在自体がわからないっていうことがあると思うんですね。

 なので、自分たちの自然、自分の身近にある自然を大切にすることが、大切なものの存在に気付くっていうことにもつながりますし、それがいつかボルネオのほうにも波及していけばみたいな、そんなことを考えています」


INFORMATION

『Back to the Wild〜森を失ったオランウータン』

『Back to the Wild〜森を失ったオランウータン』

 柏倉さんの最新の写真集をぜひご覧ください。ボルネオ島の熱帯雨林がアブラヤシに浸食されている実態や野生動物の現状、そしてリハビリセンターに暮らすオランウータンの孤児たちの姿をとらえたリアルなドキュメンタリーです。水色のタオルを頭から被る赤ちゃんオランウータンの表情が、すべてを物語っているように思えませんか。
 エイアンドエフから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎エイアンドエフ:https://aandfstore.com/products/08730043000000

 写真集の印税はセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンターに寄付されます。寄付の方法ついては現在、検討しているとのこと。

 私たちが日本にいてできることとして、ボルネオ島の無謀な開発に手を貸さないためにも、RSPOという認証マークの製品を買うことがあります。

 このRSPOとは、持続可能なパーム油の生産を目的に設立された国際NPOの認証制度です。適性に栽培されたアブラヤシから採れる油を使っている会社の製品を買うことが大事、ということですね。

 ボルネオ島の現状については認定NPO法人「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」のサイトを見てください。

◎ボルネオ保全トラスト・ジャパン:https://www.bctj.jp

 柏倉さんの作品や活動については、以下のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎柏倉陽介:https://www.yosukekashiwakura.com

オンエア・ソング 7月14日(日)

2024/7/14 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. THE GIRL FROM IPANEMA / FRANK SINATRA & ANTONIO CARLOS JOBIM
M2. STARLIGHT / TAYLOR SWIFT
M3. A SONG FOR MAMA / BOYZ II MEN
M4. A FOREST / NOUVELLE VAGUE
M5. EVERYDAY LIFE / COLDPLAY
M6. CHERISH / KOOL & THE GANG

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

「山は人生を豊かにしてくれるもの」by登山ガイドWaka「大島わかな」

2024/7/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、新潟県南魚沼市を拠点に山岳ガイドとして活躍するWakaこと「大島わかな」さんです。

 大島さんは1995年、静岡県出身。子供の頃、たまに両親に連れられて、近くの山にハイキングに行く程度の山経験だった大島さん、会社勤めをしていた19歳の時に、当時通っていたスポーツジムの富士登山プロジェクトに参加、初めて本格的な山登りを体験します。その時、木が生えていないゴツゴツとした岩場を見て衝撃を受け、山のイメージが一新。標高の高い山にもっと登りたい、と思ったそうです。

 それから毎週のように山に行くほど、のめり込み、いつしか山の仕事がしたいと思うようになったとのこと。でも、一時の気の迷いかもしれないと考え、とりあえず5年間、趣味として山登りをして様子を見ることにしたそうですが、益々、山への思いは強まり、ついには、ご両親に内緒で会社を辞め、山岳ガイドへの道に踏み出します。そして東京にいる頃から、着々と準備に取り組み、ブログで山登りの記録を発信するなど、PRにも力を入れていたそうです。

 そんな大島さんにガイドとしての心得や初心者におすすめの山、そして古民家暮らしのお話などうかがいます。

☆写真協力:大島わかな

大島わかなさん

登山ガイドという資格

※大島さんは、いくつか登山ガイドの資格をお持ちですが、ひとくちに登山ガイドといっても、いろんな資格があるみたいですね?

「登山ガイドは国家資格じゃないので、それぞれ民間の団体がいろいろと・・・その山域に精通した認定資格とかもあるんですね。私が持っているのは2種類あって、日本でいちばん規模の大きい『日本山岳ガイド協会』の資格と、あと花が好きなので、尾瀬ヶ原の、『尾瀬の認定ガイド』っていう資格を持っています」

●どんなお勉強をされたんですか?

「やっぱり動植物とか、歴史とか山に関係するものは全部勉強しましたね。登山ガイドは、自然解説だけじゃなくて、お客さんの安全管理もとっても大事なので、お客さんをいかに安全に怪我させずに案内するかっていう、そういう実践的なことも本で勉強しました」

● 山での講習はあるんですか?

「結構ありますね。私が受けるのは雪山の雪崩講習ですね。もし雪崩にあった時にどうやってお客さんを助けるかとか、そもそも雪崩に合わないためには、どういうことに気をつければいいのかっていうのは専門的すぎて、自分では勉強できないので、やっぱりプロのかたにおうかがいして勉強しました」

●どんな試験を受けるんですか?

「私が受けたものは、筆記試験があって、花の名前ですとか歴史とかの知識を問われますね。あと天気のこととかですね。で、そのあとに実技試験があって、お客さんにどういうふうに解説しながら歩くのかとか、いざとなった時にどうやってお客さんを助けるのかとか、そういうことを実際に山に入って、試験として受けました」

(編集部注:大島さんは、いくつかの山小屋でのアルバイト経験もあります。接客にご飯の用意、掃除、登山道の整備、さらには食材などの荷物を山小屋に運ぶ「歩荷(ぼっか)」もやっていたそうですよ。繁忙期は目の回る忙しさだったようですが、山小屋のオーナーやみんなのために一生懸命がんばったとおっしゃっていました)

東京から新潟へ、夫が勝手に・・・

※大島さんは現在、新潟県南魚沼市にお住まいですが、いつ移住されたんですか?

「去年の3月に東京から引っ越ししました」

●南魚沼を選ばれたのはどうしてですか?

「全く縁もゆかりもないんですけど、今の夫も私も新潟の山がすごく大好きだったので、住むなら新潟に引っ越したいねっていう話をずっとしていたんですね。ちょうどその時に南魚沼市に住んでいる山仲間のかたが、”空き家があるんだけど、どう?”って聞かれて、(そこに)行ったんです。そうしたら、もともと旅館だったお家で、とても巨大な古民家だったので、うちの夫は乗り気だったんですけど、私は掃除が大変だからちょっとここは無理かなって言って、うーんってなっていたんですね。

 で、東京に住んでいて、その時、登山ガイドの仕事もちょっとずつ増えてきたところだったので、今新潟に引っ越したら、その仕事が全部なくなっちゃうのも嫌だなって、ちょっと不安になっていたんですけど、私がガイド(の仕事)で家をあけている時に、うちの夫が勝手に新潟に住民票を移してしまって・・・。

 (夫から)住民票を移しておいたよ〜、感謝してよね〜みたいなことを言われて(笑)、えっ!?ってなって・・・。東京と新潟の2拠点でやっていこうみたいなことを言っていたのに、結局、東京の家賃は高いから解約しようってなって、気づいたら新潟に引っ越しせざるをえなくなっていました(笑)」

●そうだったんですね〜! かなり勢いでっていうところもあったのかもしれませんね。現在暮らしているのはどんなエリアなんですか?

「南魚沼市の市街地からちょっと離れて、周りは畑とかが多い場所で、八海山というギザギザしていて、かっこいい山が近くに見える場所に住んでいます」

●2拠点生活にしようなんて話もあった中で、でもやっぱり新潟に移住して頑張っていこうと決まって、実際に住んでみてどうですか?

「意外といいなってなりましたね(笑)」

写真協力:大島わかな

●どんなところがいいなって思っていますか?

「まずやっぱり田舎なので、みなさん優しくて・・・家が大きいので、近所に気を遣う必要がないって言いますか、東京に住んでいた頃はアパートだったので、騒音とかにすごく気を遣って暮らしていたんですね。新潟は家も広いし、大きい庭も畑もあって、本当にやりたいことをのびのびとできる環境なので、引っ越してよかったかなって思います」

(編集部注:ご主人が勝手に住民票を移したとおっしゃっていましたが、おそらくご主人は大島さんが絶対に気にいるという確信があったんでしょうね。事実、住めば都、いまは古民家暮らしを楽しんでいらっしゃいますよね。
 広い畑もあるということで、ナス、トマト、メロン、カボチャ、ネギ、スナップエンドウ、ホウレンソウなどなど、いろんな野菜を育てているほか、鶏も飼っていて、とっても可愛いとおっしゃっていましたよ)

写真協力:大島わかな

山スキーが大好き

※大島さんのオフィシャル・サイトを見ていたら、ハイキング、ボルダリング、フリークライミング、さらに、縦走、沢登り、そして山スキー、雪山などなど、山のことなら、なんでもやっているように感じました。

 それは登山ガイドとして意識して、そうしているのか、それとも好きでやっているのか、どうなんでしょう?

「両方あるんですけど、やっぱりいちばんは自分が好きだから、行きたいからっていう気持ちで取り組んでいますね。でも登山ガイドとしても必要だなっていうのは思っていて、そう思わせたのはやっぱりお客さんたちですね。

 みなさん、すごく熱心で毎週毎週、山登りに行かれているんですね。もし私が仕事の山しかやっていなかったら、多分お客さんに技術も体力もそのうち抜かされるんじゃないかって思っていて、それがひとつと・・・やっぱりガイドが、岩とか沢登りとか雪の上でも、どこでも安全に歩けないと、いざという時にお客さんを守れないので、お客さんを守るためにも、そういう登山はこれからも頑張っていこうかなっていうのはあります」

●それぞれに技術や装備、そして経験が必要になってきますよね?

「でも全部楽しいので、装備はあんまりお金は気にせず(笑)、ちょっといろいろかかっていますけど・・・」

●大島さんがいちばん好きというか得意とする山のアクティビティは、どんなことなんですか?

「いちばん好きなのは、山スキーっていうアクティビティです。新潟の山って雪が深いので、そのまま歩くと腰とかまで浸かっちゃうんですよね、雪の中に。で、全然山登りができないので、スキーを履いて山に登るんです。そうすると冬でも雪に(体が)沈まないから山登りを楽しめるんですよ。山スキーは雪があればどこでも歩けるので、やっぱり自由なところが好きで、私のいちばん好きなアクティビティです」

写真協力:大島わかな

●植物も詳しいようですけれども、山で見る植物とかお花からどんなこと感じますか?

「やっぱりたくましいなって思います。山ってやっぱり気象条件が厳しいので、とっても植物が育つのには厳しい場所だと思うんですけど、そういうところでもちっちゃく、たくましく咲いているのを見て、私も頑張んなきゃなみたいな気持ちになります」

●気象のことも勉強されたんですよね?

「そうですね。もともと気象は好きなことでもあるので、意外と勉強はしていないんですけどね。今登山者には『ヤマテン』という会員制の天気予報サイトがあって、そこで山に詳しい気象予報士さんが予報文を出してくれているのと、あと高層天気図というちょっと専門的な天気図を見ることができるんです。

 その高層天気図の見方も、ヤマテンですごく丁寧に解説してくれているので、その天気図をまず見て自分なりに天気予報を考えて、そのあとにその気象予報士さんの文章を読んで、答え合わせをするっていうのをやっていたら、結構自分で天気は読めるようになったかなってところはあります」

南魚沼周辺の山々

写真協力:大島わかな

※現在お住まいの南魚沼市は、山がたくさんあると思うんですけど、周辺の山々の特徴を教えてください。

「登山者に人気の、日本アルプスや北アルプスとかは標高が高いんですよ。山脈が天高く隆起しているんですけれども、新潟の山はそこまで標高が高くなくて、広い範囲で小さい山がポコポコいっぱいあるんですね。だからちょっと山に登れば、すぐに町の景色がなくなって、もう山しかない、山深い景色が広がっているんですけど、それが新潟南魚沼周辺の山々の特徴かな・・・」

●私のような初心者におすすめの山はありますか?

「南魚沼市に坂戸山(さかどやま)っていう山がありまして、地元のかたにも愛されていて、大体往復で3時間半ぐらいで登ってこられる山なんですね。4月頃になると“スプリング・エフェメラル”っていう“春の妖精”って呼ばれている、雪解け後にお花がすごくたくさん咲いて、それを見に東京とか遠方の登山者もはるばる来られるんですけど、そこの山がやっぱりお花の時期に行くと素敵だなって思います。おすすめです。」

写真協力:大島わかな

●大島さんに、私だけとか、私と家族だけ山に連れてってくださいとか、そういうプライベートなツアーをお願いするっていうのもできるんですか?

「はい、できます!」

●どんなツアーに今までご案内されたんですか?

「やっぱり新潟の地元の山も多いんですけど、日本アルプスですね・・・南アルプスの光岳(てかりだけ)っていう山があって、4泊5日、5日間で行くんですけれども、そういう山を個人的にお願いされたこともあります」

●女子だけ参加のガイドツアーとか、そういったこともあるんですか?

「1回やったんですけど、今はちょっとやってなくて・・・男性のお客さんに“俺もその山行きたかったよ”って悲しい顔をされたんで(笑)、ちょっと今は可哀想だからやめております」

自分の体力に見合った山に

※安全に山を楽しむためには、どんなことが大事になってきますか?

「いちばんはやっぱり体力かなって思っています。やっぱり自分の体力に見合った山に行かないと、すごく疲れて楽しいものも楽しくなくなってしまうので、体力に見合った山に行くってことと、もし行きたい山があったら頑張って体力作りをするのが大事かなって思っています」

●登山ガイドとして登山客を案内している時に、どんなことに注意を払っていますか?

「いちばんはやっぱりお客さんの体調にすごく気遣っています。意外とお客さんは、体調が悪かったり怪我していても言わないかたがいらっしゃるんですね。
 以前私が失敗したのが(参加者の中の)ひとりのペースがちょっと遅いなって気になっていたんですけれど、(その時は)何も言わずに帰宅後に、“実は足首をひねって痛めていました”ってあとから連絡が来て、すごく反省したことがあります。

 それ以降はやっぱりこまめに後ろを振り返って、お客さんが転んでないかなとか、あと(参加者の方に)言ってくださいって言ってもやっぱり言わないので、表情とか雰囲気とかをよく観察して、体調を悪くしてないかっていうのを見るようにしています」

●大島さんにとって山は仕事場だと思うんですけれども、大島さんにとって山とはなんでしょうか?

「そうですね・・・いろんな意味を込めて、人生を豊かにしてくれるものかなと思います」

(編集部注: 大島さんはプライベートでもご主人と新潟の山へ出かけるそうです。
 それも4泊5日から6泊7日とわりと長めに山に入って、大好きな沢登りや山スキーを楽しむとか。大島さんいわく、山にはリスクもあるけれど、夫といるとなんとかなるし、がんばれるとおっしゃっていました。山という共通の趣味がある、仲むつまじいご夫婦、いいですね)

写真協力:大島わかな

INFORMATION

 大島さんは、新潟の山を始め、富士山、南アルプス、北アルプスなどなど、1泊2日から4泊5日ほどの、いろいろなガイドツアーを企画されています。

 4人から6人くらいまでの少人数のツアーで、3ヶ月から4ヶ月先まで、すぐ定員に達するほど人気なので、大島さんのツアーに参加したいというかたは、早めにご予約されることをおすすめします。

 また、大島さんにプライベートなツアーを頼みたい場合もオフィシャルサイトからお問い合わせくださいとのことです。

◎大島わかな:https://bigislandyamaguide.com

オンエア・ソング 7月7日(日)

2024/7/7 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. River Deep, Mountain High / Celine Dion
M2. Higher Ground / Stevie Wonder
M3. Take Me Home Country Roads / Olivia Newton-John
M4. 晴れたらいいね / DREAMS COME TRUE
M5. はんぶんこ / 小尾渚沙
M6. I See The Great Mountains / Cecile Corbel
M7. Climb Every Mountain / Peggy Wood

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

2024年6月のゲスト一覧

2024/6/30 UP!

◎田中 新(フラの指導者「クムフラ」)
「メンズフラ」〜キラキラしていれば、世界は輝く』(2024.6.30)

◎ひとでちゃん(サイエンス・コミュニケーター/自然科学教育普及団体「地球レーベル」の代表)
なんでこんな形!? 不思議でユニークな海の「ほねなし」たち』(2024.6.23)

◎太田安彦(一般社団法人「マウントフジトレイルクラブ」の代表理事)
シーズン直前!「初めての富士登山」徹底ガイド!』(2024.6.16)

◎『シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第20弾!シモキタ園藝部〜人と蜜蜂が作る緑の循環』(2024.6.9)

◎工藤誠也(弘前大学の研究員/昆虫写真家)
昆虫写真家 工藤誠也〜寝ても覚めてもチョウに夢虫』(2024.6.2)

「メンズフラ」〜キラキラしていれば、世界は輝く

2024/6/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、フラの指導者「クムフラ」の「田中 新(たなか・しん)」さんです。

 最近SNSの動画で話題になっている男性のフラ「メンズフラ」、そのムーヴメントをリードしているのが田中さんなんです。

 田中さんは東京港区三田に本校を構えるフラ教室を主宰、そして先頃『天と地をつなぐ 素晴らしきメンズフラの世界』という本を出されました。

 きょうはメンズフラの魅力のほか、ハワイの人たちにとって、神様に捧げる神事ともいえるフラについて、じっくりお話をうかがいます。

☆撮影:広川智基

撮影:広川智基

フラの祭典「メリーモナーク・フェスティバル」で“絵が見えた”!

※田中さんがなぜフラの指導者になったのか、その経緯をまとめると・・・実はお母さんがフラの先生で、子供の頃から家には当たり前にフラがあったそうです。でも思春期の男の子にとって、当時女性中心のフラを習うには抵抗があり、高校では大好きな野球に没頭。

 そして卒業後、国際弁護士を目指し、フロリダのカレッジに留学。おもに日本とアメリカの文化の違いを学んでいたそうですが、当時の先生から「君が学ぶべきは文化人類学だ」と諭され、先生の紹介でハワイ大学の大学院に移ります。

 そこでハワイの文化をいちから学ぶことになるんですが、その一方で、田中さんを子供の頃から知る有名な男性フラの先生「チンキー・マーホエ」さんから、フラをやりなさいと再三いわれるも、学業が忙しかったこともあり、何かと理由をつけてやらなかったそうです。そんな田中さんがどうしてフラの道に進むことになったのか、気になりますよね。実はこんなきっかけがあったんです。

「2002年かな・・・『メリーモナーク・フェスティバル』にそれこそチンキーさんが出ると・・・。そこのチームから母の教室に通っていた日本人のかたがハワイに留学していて、このチームから出るということなので、いろんなツテから“新も行ってみる?”って話になって、“行ってみますか、せっかくハワイにいるし・・・”ってことで行ったんですよ」

●「メリーモナーク・フェスティバル」はフラの一大フェスで、トップ・レベルのかたがたの大会というイメージがありますけれども、実際どうでしたか?

「トップ・レベルでした!」

●うわぁ~!

「この頃と、今現代のメリーモナークの、ハワイアンたちの向き合い方はだいぶ変わってきてはいるんですけれど、やっぱり自分たちのルーツというものをしっかり大事にして、勝ち負けというよりかは、自分たちが守ってきたフラのリネージ、系譜を代表してみんなで楽しみましょうっていうのが、基本的なメリーモナークのハワイアンたちの向き合い方で、本気なんですよね。

 日本に来るかたがたもいっぱいいらっしゃいますけども、やっぱり日本だとエンターテイメントという要素が大きくなって、ショー的なものというか・・・本当にみなさん真面目にやっているんだけども、やっぱり本気度が違うので、エネルギーの出し方が違ってくる。見ていてなんか違うな~って思っていたんですが、メリーモナークに行った時に、男性のかたがたがみなさん本気で踊っていると、全然違うなと思いましたね」

●どう違ったんですか?

「会場が広いので、人が米粒ぐらい、ペットボトルのキャップぐらいにしか見えないんだけども、ダンサーたちが踊っている上に絵が見えたんですよ、自分勝手な想像ですけど・・・。そのダンサーたちが見ている世界が投影されているみたいな・・・」

●すごく今、鳥肌が立ちました! え~すごいですね~!

「で、僕の知り合いのアンティーというおばちゃんに(メリーモナークに)連れていってもらったんですけど、隣にいるアンティーに“これ、こういう曲なの? こういうことを話しているの? こうなの? これなの?”っていうふうに聞いたんです。そうしたら“新、お前はハワイ語がわかるのか? やっぱりハワイ大学にいるからハワイ語も習うんだろうな“みたいに言われて、“いや、習ったことないし、話すこともできない”って言ったら、“なんで見えるんだ?”って、“だって見えるもん、すげぇ!”って・・・その時にフラってこうなんだ、っていうふうに思いましたね」

(編集部注:メリーモナーク・フェスティバルの、本気のメンズフラに魅了された田中さん、帰国してからすぐにフラに向かったと思いきや、プロの写真家に師事し、ウェディング・フォトなどを撮る写真の仕事に従事。そんな中、お母さんのフラ教室の発表会を撮影することになり、ファイダー越しに見るダンサーの幸せそう表情に魅了されたそうです。

 その後、日本で長年フラを教えてきたクムフラの30周年記念の発表会で男性フラのメンバーとして踊ることになり、そこでフラの素晴らしさに目覚め、ついにはハワイで「フラの神様」といわれるジョージ・ナオぺの一番弟子「エトア・ロペス」先生について、本格的にフラを学んだそうです)

田中 新さん

フラは、あくまで会話

※そもそもフラはハワイ人のかたたちの、神様に捧げる踊りだったり、祈りや、自然とつながる儀式のようなものなんですよね?

「神事なので、基本的には・・・。神様といっても一神教ではなくて、風の神、太陽の神、大地の神、海、植物、木、いろんなところに神が宿っているという、日本の昔からの八百万の神に通ずるような信仰というか会話、彼らにとってフラを捧げるのは神事の信仰行事ではなくて、あくまでも会話なんですよね。

 だから見えないものと会話をしているというか・・・太陽の光が入ってくる、この光の線に対して“ハ~イ”と言ったりとか、あるいは風がふわっと吹いてきた時に“サンキュー・マハロ”と言ったりとか、誰もいないのに風が当たることによって、風に対して“ありがとう”って答えるとか、そのすべてのものを擬人化して“ありがとうね”って、人間が人間同士でボディタッチで、“ありがとうね”ってやるようなことと同じことをやっている会話なんですよね」

●フラには「カヒコ」と「アウアナ」のふたつがあるということですけれども、改めてどう違うのか教えていただけますか?

「どう違うのかと言われると、本質的にはさほど変わらないんですけれど、時代によって変わってきていて・・・『カラカウア』というハワイの最後の国王がハワイアン・ルネッサンスということで、私たちはハワイアンなんだというふうに、一回弾圧されたフラの信仰をもう一度取り戻したという時代から現代までを『アウアナ』と呼んでいて、それ以前のことを『カヒコ』と呼んでいるんですね。

 カヒコは前から受け継いできたものという意味で、アウアナはこれから流れていくものというふうに分けられていて、それ以前はカヒコという名前もなくて『フラ』というものだったりとか『ハア』だったりとか、という言葉で済まされていたんですね」

●カヒコは「古典フラ」、アウアナは「現代フラ」とも言われたりもしていますけれども、曲調も違いますよね?

「曲調は違いますね。実際にカヒコでは『イプヘケ』と言われるヒョウタンを使った楽器、あるいは『パフ』と言われる木をくり抜いた太鼓を中心に踊っています。アウアナに関しては、みなさんよくご存じのウクレレという弦楽器、あるいはギターという弦楽器ベースで行なわれているのが『フラアウアナ』と言われるもの、現代フラと言われるものですね」

(編集部注:田中さんいわく、現代フラは楽器はなんでもありで、そういう意味ではクリエイティヴ。一方、古典フラは厳粛なもので、変えてはいけないしきたりがあるとのこと)

撮影:広川智基

メリーモナークの変遷

※フラの、ひとつひとつの所作には意味がありますが、男性のフラと、女性のフラの所作で、大きな違いのようなものはありますか?

「これ、難しくて、大きな違いは特になくて、力のかけ具合とかスピードとかが変わっていくだけであって、言うてもそんなに変わらず・・・。
 フラにはひとつひとつのモーション、所作に意味があるんだよねっていうこともこの20年間30年間40年間伝わってきていますけど・・・。“手話みたいなものでしょう?”ってことも言われるんですけれど、実はどちらでもなくて・・・。

 我々がこうやって話している時に、“僕はキュンとしてあなたを好きになっちゃいました”っていうジェスチャーなんですよね。それを形として整えるために、“私はあなたを好きになりました、愛しています”っていうことをやっているだけであって、このモーションの意味はこれというよりかは、こういうことを伝えたいからこういうジェスチャーをしているんだっていう考え方があるんじゃないかなと僕が勝手に思っています。自分が心から今こうやっておしゃべりをしている、これと同じことなので・・・」

●なるほど~。ハワイのかたがたって子供の頃からフラを習うものなんですか?

「まちまちだと思います。日本人が昔から空手を習っているの?とか、柔道を習っているの? 日本舞踊を習っているの?って言われるとまちまち。だけども日本のかたがたが幼い頃から日本舞踊を習うという機会があるその幅よりかは、ハワイの人たちにはフラというものが当たり前に存在しています」

●ハワイ人のかたがたは迫害を受けたという悲しい過去もありますけれども、ハワイの伝統とか文化とか歴史は、今の若いかたがたにも受け継がれているっていうことですか?

「特に今のこの10年ぐらいのほうが受け継がれていることもあれば、調べ直して20〜30年前の事実とは違うんだよって言い始めている時代ですね」

●そうなんですね〜。

「これはこうあるべきなんだよっていうことも、実は間違っていたりとか、もっと昔はこういうふうにされていたとか・・・なので1980年代から1990年代のメリーモナーク、それこそさっき話したメリーモナークと、2024年のメリーモナークとはやっぱり形式が違うんですね」

●何がどう違うんですか?

「昔は自分たちが習っている踊り、本気で習っている踊りを披露する場所みたいな・・・もちろん1曲、テーマというか指定曲があって、その指定曲を踊って、全然関係のない曲を踊ったりとかするんです。だから3〜5曲ぐらいを連続で踊っていたりとかするんですね。

 それで競い合っていたんですけれど、今現代はテーマは自分たちで選びます。でもそのテーマがなんなのかっていうことと、それに付随する曲はなんなのかっていうことと、その1曲に対してどういうストーリーがあるのかっていうのをしっかりと固めておかないと点数が上がらないというか・・・自分たちがやりたい曲をそこに詰め込んだところで何も評価されないので・・・っていう違いはあるかなと思いますね。

 なので、今の人たちのほうがハワイ文化に対して真摯に取り組んでいるんじゃないかな・・・もしこれが何か影響を与えるとか、昔のかたがたを嫌な気持ちにさせてしまったら、ごめんなさいね・・・なんだけれども、今現在いろんなツールを使って、インターネットも普及してきた、図書館に行くにも博物館に行くにもインターネットを使ってやれるってなってくると、やっぱり情報の速さが違いますからね。なので、今の人たちのほうがすごく深いところまでお話ができる人たちが増えてきたなっていう感覚はあります」

大事なのは「ありがとう」

※田中さんは2013年に東京港区三田にフラ教室を開校、その名前は「ハーラウ・ケオラクーラナキラ」。

 ハーラウは「教室」、ケオラは「命」、「クー」は立ちのぼる、そして「ラナキラ」は、先ほども少し触れましたが、ハワイでは「フラの神様」とされ、「アンクル・ジョージ」という呼び名で親しまれていた「ジョージ・ナオぺ」のミドルネームの一部を、許可を得て引用。その教室名には、アンクル・ジョージの遺伝子が立ちのぼっていくように、という願いが込められているそうです。

 三田の本校で行なっているメンズフラの教室は現在、年齢別で13歳から40代、40代から60代、60代から80代の3クラス。年齢も職業も多彩な生徒さんが集まり、最年長はなんと、88歳だそうですよ。田中さんがおっしゃるには、生徒さんはみんな「大人の部活」のように楽しんでいるそうです。

撮影:広川智基

 田中さんに教室で、どんなことを大事にして指導されているのか、お聞きしたら、少し間をおいて、こんなふうに答えてくださいました。

「これね、ずっと考えていたんですよ、どんなことを大事にして指導されているのかっていうこと。それは、ありがとう、と思ってくださいってことかもしれないですね。ここに来させてくれて、ありがとうだったりとか、踊れる体が今ここにあって、ありがとうとか、ここに来て踊れるという気持ちを持っていて、帰って、あ〜楽しかったって思える自分の気持ちがあって、それだけでも本当は感謝なので・・・。

 忙しかったらフラに行けないですよね。すごく忙しくてもなんとかこの日は行きたいなって思って、いろいろ工面をしてレッスンに出られますよね。それって時間を作ってくれたのは、もちろん自分なんだけども、いろんな奇跡的なことが重なって、この日は休める、この日は時間を取れる・・・で、取らせてくれた何かがあるわけなので、そこら辺にやっぱり感謝しながらレッスンを受けてもらいたいなと思いますね」

●感謝の気持ち、大事ですね〜。

「レッスンって、僕がお話をします、振り付けをおろします、それを受け取りますということがレッスンではなくて、その場にいることをどれだけ自分の生活の中で感謝できるのかっていうことと、そこで何に気づいたのかっていうことがライフ・レッスンとなるので・・・。

 僕が指導します、あなたこうしなさい、ああしなさい、手は45度で、山が見えるでしょ、山を作りなさいってやっていることはカーナビと一緒で、次は右に行ってください、次は左に行ってください、そこの角に駐車場があります、駐車場に停めて27階まで来てくださいっていうのはナビゲーションじゃないですか、ゴールに到達するわけじゃないですか。それをよしとするのか、何も知らされない状態で、とりあえず自分で探して、ここのスタジオってここにあるんだね、何階だったっけ、あ、27階かって言ったほうがレッスンになるじゃないですか。

 なので、何も教えてくれないわとか、何も伝えてくれないわ、何のレッスンしてるのかしら? っていう、ほかの人が原因で自分にストレスがかかった、じゃなくて、自分が調べないから、そういう状態になるわけなので・・・。自分がこのスタジオってどこにあるんだろう、何階にあるんだろうって調べると、それは自分のためのレッスンになるので、そういうことを僕はしたいなと思っているんですね。

 もちろん振りおろしもしますし、こうして欲しいってことも言いますし・・・でも最終的にはダンサーは自分でその殻を破って、そこから生まれている何かと向き合って会話をしていくということに到達してもらいたいなとは思っています」

撮影:広川智基

思えば、返ってくる

※クムフラとしてレッスンを重ねていく中で、ご自身に何か変化があったりしましたか?

「結局だから、全部自分に返ってきているんだなっていうのがあるので、自分の気を整えないと、ほかの人の気は整えられないかなって思ったりします。もちろん僕が今ものすごく幸せかって言われると、いろいろ思うことはあるけれども、心を豊かにするとか感謝の気持ちを持つとか、自分が感謝の気持ちを持たないと人には伝わらないので・・・例えば、雨が降っている時に雨が降ってうっとうしいな、雨を煩わしいものとして捉えている人たちが多い中で、雨が降ってきて、ありがとうねっていうふうに言えるかどうか・・・」

●素敵な考え方ですね〜。

「我々日本人も雨が降ったら、”恵みの雨”という言葉があるので、本来は感謝していたはずなんだけれども、現代社会になって、それこそテレビで”本日はあいにくの雨ですが・・・”とか、雨をうっとうしいものと思われがちなんだけども、我々は水がないと生きていけないので、ありがとうねって自分から言えないといけないんだなっていうことに気づかされてやっているという感じですね、クムフラとして変化があったといえば・・・」

●改めてになりますが、フラを通して田中さんが伝えていきたいことは、どんなことですか?

「思えば返ってくるっていうことだと思うんです。人を思えばその人から思われることもあるし、自分が本を作りたいって願う、思う、それを自分の現実的なイメージを作り上げていくと現実になったとかするし・・・寂しいなって思った時に実はこうしたいんだなって思うイメージがあったら、どんな形であれ、寂しくない未来がそこにあったりとかする。それに対して、これは僕が思ったことなんだと思って欲しいなと思うので・・・。

 フラを踊る時に見えないものに対して・・・見えないじゃないですか、歌詞の世界なので・・・見えないものに対して何かを思うことによって、その歌詞の世界の中の何か・・・何かっていうとちょっとわからないかもしれないけど、エネルギーとか言われるとわかりやすいかもしれないし、あるいはハワイのかたがただったら『マナ』って言われたらわかるかもしれませんけども・・・何か見えないものが自分の体に宿ってくるので、思えば実現するし、かなうし、いろんなことができるんだよってことはフラを通して伝えていけたらなとは思いますね」

※田中さんに、メンズフラの魅力をお聞きしたら、それは、現在60名ほどいる生徒さんたちが作ってくれている、だから、生徒さんたちに聞いてもらったほうがいいかなと、そうおっしゃっていたんですが、あえていうなら、ということで、こんなふうにお話してくださいました。

「メンズフラの魅力はなんだって言われると、職種も年齢も違う人が集まって部活のように無邪気にはしゃげる場所。男の子が小学生なり中学生なり、仲間たちで一緒に遊んだ、あの記憶を取り戻してくれれば、笑顔が生まれてくるので・・・笑顔が生まれてくれば、その笑顔は感染するし、自分が笑えば人は笑ってくれるので、そのキラキラしたエネルギーというものをみんな伝えてくれたら嬉しいなと思いますね。

 もちろん、キラキラしている女性も魅力的なんだけども、一般人の男性がいつも笑顔でキラキラしていたら、なんとなく嬉しいし、家でお父さんが楽しそうにしていれば、子供たちは輝いてくるし・・・なんか二次的な要素というか、自分たちがキラキラしていれば、世界は輝いていくんだよって思っています」


INFORMATION

『天と地をつなぐ 素晴らしきメンズフラの世界』
田中新著/KADOKAWA刊/定価1870円(10%税込)

天と地をつなぐ 素晴らしきメンズフラの世界

 この本にはフラの用語説明、メンズフラ教室でのレッスンの様子、フラの名曲解説や振り付けのポイントなどが載っていて、メンズフラの魅力を知ることができる一冊です。写真もたくさん掲載されていて、踊っているかたがたの表情がみんな笑顔、見ているだけで幸せな気持ちになりますよ。ぜひチェックしてください。KADOKAWAから絶賛発売中です。詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。

◎KADOKAWA :https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322311000438/

 田中さんが主宰する教室「ハーラウ・ケオラクーラナキラ」は東京港区三田の本校のほかに、鹿児島、広島、鵠沼海岸、そして先頃、千葉にも教室を開いたそうです。男性フラの教室は三田の本校だけで行なっていて、中には福岡や兵庫から通う人もいるそうですよ。メンズフラに興味のあるかた、ぜひオフィシャルサイトを見てください。

◎「ハーラウ・ケオラクーラナキラ」 :http://halaukeolakulanakila.com

オンエア・ソング 6月30日(日)

2024/6/30 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. KU’U HOA / Robi Kahakalau
M2. KUHIHEWA / Chad Takatsugi
M3. Ka Makani Ka’ili Aloha / Nathan Aweau
M4. Pua Olena / Konishiki
M5. Hawai’i Aloha / Na Leo
M6. Kawaipunahele / Keali’i Reichel

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

なんでこんな形!? 不思議でユニークな海の「ほねなし」たち

2024/6/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、つくば市を拠点とする自然科学教育普及団体「地球レーベル」の代表で、おもにヒトデの研究をされているサイエンス・コミュニケーター「ひとでちゃん」です。このニックネームは、あの「さかなクン」を意識して、つけたそうですよ。

 そんなひとでちゃんは1988年、栃木県生まれ。子供の頃から、生き物ならなんでも好きだった少女は、中学生のある日、テレビ番組で「タコクラゲ」というクラゲの存在を知り、衝撃を受けます。

 なんとそのタコクラゲは、光合成をする藻類を体の中に共生させて、日向ぼっこをするだけで生きているクラゲ。当時、いろんなことに窮屈さを感じていたひとでちゃんは、そののんびりとした生き方に感動し、一瞬にして虜になったそうです。

 そして新潟大学理学部を卒業後、東京大学大学院へ進学し、ヒトデの系統分類学に没頭。その後、公益財団法人「水産無脊椎動物研究所」を経て、現在は、ひとでちゃんとして、海の生き物の魅力を伝える活動を行なっていらっしゃいます。そして先頃『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』という本を出されました。
 この「ほねなし」とは無脊椎動物のことです。

 きょうは海にいる無脊椎動物の中から、ヒトデやウミウシ、フジツボやウミホタルなど、不思議で奇妙な生き物のお話などうかがいます。

☆写真協力:ひとでちゃん

ひとでちゃん

なんでこんな形になった!?

※ひとでちゃんによると、ヒトデはウニやナマコと同じグループで、日本には約350種、世界には2000種ほどもいるそうですよ。

ヒトデには潮だまりや海の底にいて、動かずにじーっとしているイメージがあるんですけど、移動しているんですよね?

「してます、してます!(笑)すっごくゆっくりだけど、しています! 」

●どうやって移動しているんですか?

「ヒトデは星みたいな形をしていて、出っ張っている部分が足だと思っている人が多いんですけれど、あれは一応、学問的には“腕”と呼ばれていて、実は足はひっくり返すと裏側にあるんですね。何百とびっしりチューブみたいな足がたくさん並んでいて、それを使ってゆっくり、もにょもにょもにょっと動きます(笑)」

●へ~!(ヒトデは)何を食べているんですか?

「これもヒトデによって、それぞれ違うんです。ヒトデは結構肉食のものが多くて、貝とかカニとかを食べたり・・・。でも草食のものもいるんで、一概には言えないんですね。ヒトデ自体の動きがゆっくりなので、肉食のものでもやっぱりゆっくりなもの、動かないものを食べていることが多いですね」

●例えばどんなものを?

「巻貝とか二枚貝とかサンゴとか海綿動物とか・・・結構なんでも食べます。死んだ魚とかも・・・」

●へ~!

「死んだ魚にすごく群がっていたりします」

●ひとでちゃんは、ヒトデのどんなところにいちばん魅力を感じていらっしゃるんですか?

「私はやっぱり形ですかね(笑)」

●形!?

「なんでこの形になった!? って思って(笑)」

ヒメヒトデ
ヒメヒトデ

●確かに気になります。どうしてなんですか? 人の手みたいな・・・。

「人の手みたいだし、星みたいだし・・・でも実はそれがまだわかっていなくて・・・というか、いくつか説があるけれど、はっきりとはわかってないっていう状態で、こんな生き物はほかにいないんですよね。

 海にはいろいろ変な生き物だらけなんですけれど、ヒトデは同じパーツが5つ並んで星型になっている、こういうのをちょっと専門的にいうと「五放射相称(ごほうしゃそうしょう)」、5個放射状に等しいものがくっついているって言うんですけど、こんな生き物はほかにいなくて(笑)、とても不思議な魅力的な生き物ですね」

●ヒトデがああいう形になったのは、いろんな説があるということですけれども、有力な説というと、どんなものがあるんでしょうか?

「ヒトデは進化の過程で、最初は「懸濁物食(けんだくぶつしょく)」と言って、海で流れてくるものをキャッチして食べる、動かないで手を広げるみたいに、流れに沿って手を広げて、キャッチして食べている生き物がヒトデの祖先というか、最初の頃に出てきた形だったと言われています。

 その時に流れてくるものをキャッチするのに、広げる手の数が5がちょうどよかったんじゃないかっていう、多すぎても手と手が重なってしまって効率が悪いし、少なすぎると全部すり抜けてしまう、そういった時に5というか5の倍数ですかね、その数が手を広げて効率よく食べ物をキャッチするのによかったんじゃないかっていう説が有力です」

「ほねなし」と呼んで親しみやすく

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

※ひとでちゃんは先頃『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』という本を出されています。この本では、無脊椎動物を「ほねなし」と表現されていて、おもに海にいる「ほねなし」の生き物を、姿形、生態、そして繁殖の方法に分けて、わかりやすく解説されています。

 改めてなんですが、無脊椎動物とはどんな生き物なんでしょう? 

「漢字で書くと、“無い” 脊椎の動物って書くんですけれども、脊椎は平たく言うと背骨のこと、背中の骨。私たち人間も背骨がまっすぐ1本通っていて、それでおもに体を支えている生き物なんですけれど、無脊椎なので背骨がない生き物の総称になります。

 ただ無脊椎動物ってちょっと言葉がお堅いというか、漢字にすると、どんどんどんどん漢字ーって、やっぱりとっつきにくい感じがずっとしていて、それをもうちょっとみんなに親しみ持ってもらえないかなと思って、『ほねなし』という言葉を最近よく使っています」

●ほねなし! すごく親近感がわきやすくなりますよね、無脊椎動物よりも!

「うんうん」

●海の生き物でいうと、ほねなしはイカとかタコとかクラゲとかですかね?

「はい、そうですね」

●陸上だとほねなし、無脊椎動物はカタツムリとかミミズとか、そういう生き物ですか?

「そうですよ! 素晴らしいですね! 実は昆虫もです。昆虫は私たち脊椎動物とは真逆、私たちって背骨は体の中にあって、内側から体を支えているので、内骨格とか言うんですけど、昆虫とかは外骨格と言って、外側の固い皮膚の表面を硬くして体を支えている、だから中身は全部柔らかいもの。骨はもちろんないし背骨もないし固いので・・・。ほねなしと言うと、カニとかエビとか昆虫はどうなの?って思われるかたもいるんですけど、立派なほねなしですね」

●無脊椎動物と脊椎動物は、地球上にはどちらのほうが多くいるんですか?

「もう圧倒的に無脊椎動物です!」

(編集部注:ひとでちゃんによると、分類学では、動物を基本的な体のつくりで、約34のグループに分け、人間のような背骨がある脊椎動物はその34のグループの中の、なんと! ひとつでしかなく、残りの33は無脊椎動物、ほねなし。その多くは海にいるんだそうです)

フジツボは貝じゃない!?

※ひとでちゃんの新しい本には、いろんな「ほねなし」の生き物がイラストや写真とともに紹介されています。ダイバーにも人気のあるウミウシも載っていて、ウミウシは、漢字にするとその名の通り、海の牛と書きますが、巻貝の仲間というのはほんとなんですか?

「ほんとです!(笑)」

アオウミウシ
アオウミウシ

●青い体に黄色のラインとか、すごくカラフルなイメージがありますけれども、とにかく目立ちますよね!

「そうですね~」

●カラー・バリエーションはいろいろあるんですか?

「ものすご~くバリエーションがあって、カラフルで綺麗なので、本当にダイバーさんとかにはとても人気ですね」

●天敵っているんですか?

「天敵・・・魚とかいろんなものに狙われはするんですけど、それこそなんでカラフルかって言うと、敵を寄せ付けないため。貝殻がなくなっちゃっているんで身を守りづらいんですね。貝殻がある巻貝はその殻の中に隠れれば、ある程度防御ができるんですけど、殻をなくしちゃったので、その代わりに体の中に毒を溜め込んでいるんです。

 なので、魚が食べてもまずい! つまんだけど、ぺっと吐き出されるみたいなことがよくあるんですよ。カラフルな色で“私は毒ですよ! まずいですよ!”っていうアピールをしているんです」

●なるほど・・・。

「だから逆に目立って、自分を食べないほうがいいよって」

●それで身を守っているわけですね!

「そうなんです!」

クロフジツボ
クロフジツボ

●海岸に行くと岩などに張り付いているフジツボ、貝の仲間だと思っていたんですけど、そうではないんですね?

「はい、そうなんです」

●固い殻で動かないっていうイメージですけど、貝の仲間じゃないということは、なんなんでしょう?

「これは実はエビやカニに近い仲間で、エビやカニってよく動くので、”動かないフジツボが?”って思われがちなんですけれど、固い殻の中にエビを、なんていうのかな・・・背中を下にして寝かせたみたいな生き物が入っていて、入口から足だけを出して餌を捕る、そうやって生きている生き物です」

ウミホタルはなぜ光る!?

※首都圏を走るドライバーさんにはお馴染みの、東京湾アクアラインのパーキングエリア「海ほたる」、その名前になっているウミホタルは、青白く光る生物として知られています。

改めてなぜ光るのか、教えてください。

「実は何のために光るかっていうのは、ちゃんとはわかってないんですね。なんですけど、ウミホタルの場合は、実は体が光るんじゃなくて、光る物質を海水中に噴射するんです。だから陸の蛍みたいに自分の体が光るわけじゃない、光る物質を噴射する、それでその光を目くらましにして敵から逃げているって言われていたり・・・。

 あとは海ホタル同士のコミュニケーションとか求愛行動として使われているとか、いろんな説はあるんですけれど、噴射するってところからも敵から逃げるっていうのが大きいのかなとは思います」

●カクレガニという生き物も紹介されていました。アサリのお味噌汁を食べると、アサリの貝の中にいたりして・・・。

「そうそうそう(笑)」

●カニの赤ちゃんではないって、本に書かれていて、あれっ!? と思って・・・。

「そうなんです! 」

●赤ちゃんではなくて?

「ではなくて、大人のカニです。あれは子供の頃にアサリの中に入って、もうそのまま一生(アサリの貝から)出ずに成長して、アサリに寄生して生きているカニです」

●あの小ささがもうマックスの大きさ?

「そうです! そうです! だからたまに卵を持っているのとかもいます。お腹に卵を抱えているやつとか」

●そうなんですね~。

「でも見つけると嬉しいですよね!」

●ミニミニの赤ちゃんサイズですけどね!

「ミニミニの赤ちゃんサイズ(笑)」

イトマキヒトデ
イトマキヒトデ

●やっぱりひとでちゃんには、ヒトデのことを聞かないといけないかなと思うんですけれども(笑)、ヒトデは目よりも鼻で世界を見ると本に載っていました。鼻で世界を見るっていうのはどういうことなんですか?

「ヒトデに限らないんですけどね。やっぱり陸は空気で満たされていて、視界、目で見る情報がとても大事な世界なんですけど、海は逆に視界はそんなによくない。水で満たされていて、いろんな物質が海水中に混ざっている。なので、そういう物質をキャッチするほうが生きていくのには有利というか、生きやすいっていうことで、そういうのが発達している生き物が多いです」

地球のことならなんでもあり!?

※ひとでちゃんが代表を務める自然科学教育普及団体「地球レーベル」は、地元のつくば市で知り合った、地球科学を大学で勉強されていたご夫婦と、2020年に立ち上げ、地球を丸ごと楽しもうというコンセプトのもと、子供たち向けの自然観察会などを実施されています。

 具体的にはどんな観察会をやっているんですか?

観察会の様子

「その観察会によりけりなんですけれど、私が講師の場合は海に行って海の生き物を観察したりとか・・・。山に行って“石と地衣類”っていう、またちょっと変わった生き物を見たりとか、星の観察会をやったりとか・・・なんでもありなんです。地球のことならなんでもありで、その講師がそれぞれ行きたいとこ、やりたいことをやるっていう(笑)で、みんながそれを手伝う感じの、とても自由な団体です」

●ひとでちゃんが磯の観察会で、参加者のかたに必ず紹介する生き物がいるということですけれども、どんな生き物なんですか?

「ヨロイイソギンチャクっていう生き物なんですけれど、イソギンチャクって形わかりますかね。お花が咲いているみたいな、あの形を想像する人が多いと思うんです。イソギンチャクは“巾着袋”から来ているんですけど、閉じるんですよね、お花の部分が。そうするとただの丸い物体になってしまうんですけど、ヨロイイソギンチャクは、そのお花を閉じた状態の時に体の表面に砂粒をたくさんつけているんです。

 それが、鎧をつけているみたいだから、ヨロイイソギンチャクって言うんですね。砂粒をつけるといいことがいくつかあって、まずは乾燥から身を守れる。ヨロイイソギンチャクって、潮の満ち引きが結構ある、海中に入ったり出たりする場所に棲んでいることが多いので、水の外に出ちゃう時もあるんですね。そういった時は閉じて砂の粒で(体を)守っておけば乾燥しないっていう・・・。

ヨロイイソギンチャク、開いている状態と、閉じている状態
ヨロイイソギンチャク、開いている状態と、閉じている状態

 もうひとつは敵から見つかりづらいっていうのがあって、まさに私たちからも最初は見つからない。知らないと本当にただの砂の塊にしか見えないので、知らない人には見つからない。ただ一回、これがヨロイイソギンチャクだよ!って教えてあげると、もうそこらじゅうにいるんです」

●そんなに多いんですか~。

「たくさんいます! すごくたくさんいます!」

●誰でも見つけられる、コツさえつかめば、という感じですか?

「コツさえつかめば、一回わかればいくらでも見つけられます」

本物を見に行こう!

※生きている本物を見ることは、子供たちにはいいことですよね?

アカエラミノウミウシ
アカエラミノウミウシ

「そうですね。本当にそこをいちばん大事にしていて、もちろん言葉とか本とかで伝えることも無駄ではないんですけれど、やっぱり本物を見てしまったほうが早いし、やっぱりその子にしか受け取れない感覚が必ずあると思っていて、それを大事にしてほしいですね。

 文章とかだとこっちの解釈が一回挟まっちゃうんですよね。そうじゃなくて、実物そのものから自分で感じたものを大事にしてほしいと思っているので、本当もう実物を見せちゃおう! 行こう!っていうのを大事にしています」

●では最後にヒトデの研究者、または自然科学教育普及団体「地球レーベル」の代表として、改めて伝えておきたいことなどありましたら教えてください。

「私たちこの地球っていう素晴らしい星にみんな生まれているので、本当に一歩でもいいので外に出て、ゆっくり自然とか生き物を眺める時間を作ってもらうと、ひとりひとりが日々豊かな生活を送れると思っているので、外に出ていってもらえたら嬉しいなと思います」


INFORMATION

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

 ひとでちゃんの新しい本、おすすめです。海にいる無脊椎動物「ほねなし」の生き物を、姿形、生態、そして繁殖の方法に分けて、イラストや写真とともにわかりやすく解説。ひとでちゃんが、海の生き物を研究するようになった、運命のタコクラゲや、磯の観察会で必ず紹介するというヨロイイソギンチャクも載っていますよ。

 この夏、この本を参考書に子供たちと一緒に海辺で生き物を観察されてみてはいかがでしょうか。山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。

◎山と渓谷社 :https://www.yamakei.co.jp/products/2823064030.html

 「地球レーベル」主催の観察会は、8月11日に「ペルセウス座流星群」を観る会や、8月25日には室内で「海のほねなし動物講座」としてヤドカリの観察などを行なう予定だそうです。また「地球レーベル」では月刊自然観察マガジン「地球らいぶ」を発行しています。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎地球レーベル :https://chikyulabel126014918.wordpress.com/

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