2024/3/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、麻布大学・獣医学部の教授「塚田英晴(つかだ・ひではる)」さんです。
塚田さんは1968年、岐阜県生まれ。愛知に住んでいた頃に、大学にいったら、野生動物の研究をしたいと思い、大自然なら北海道! という理由で、北海道大学に進学。まずはクマの研究をするサークルに入り、痕跡を探すフィールドワークの面白さに目覚め、その後、長年キツネの研究を行なっている研究室に所属。
そしてキツネの調査に出掛けるということで、先生に連れて行ってもらったフィールドがなんと! 町中だったそうです。そこで、町中であっても公園や樹林帯など、ちょっとしたすき間を見つけて、上手に暮らしている「都市ギツネ」の存在を知り、俄然興味がわき、キツネの研究をすることになったそうです。
北海道大大学大学院時代は、キタキツネと人間社会の関わりなどを研究。キツネの研究は30年以上、博士号はキツネの研究で取得。まさに「キツネ博士」でいらっしゃいます。専門は野生動物学、動物行動学など。そして先頃、『野生動物学者が教える キツネのせかい』という本を出されました。
きょうはそんな塚田さんに、賢いとされるキツネの、あまり知られていない生態や鳴き声、そして優れた能力についてうかがいます。
☆写真協力:塚田英晴

キツネは賢い動物!?
※以前、河川敷に暮らすホンドキツネの写真絵本を出された写真家「渡邉智之(わたなべ・ともゆき)」さんにお話をうかがったことがあって、キツネは私たちが生活しているすぐ近くで暮らしていると、教えていただいたことがありました。
でも、意外と見たことがある人は少ないように思うんですけど、どうしてなんでしょうね?
「基本的には、私たちは昼間に活動しますよね。夜も暗闇の中で活動したりすることもありますけども、基本的にキツネは昼間には出てこなくて、夜になってから活動するので、彼らと出会う機会がなかなかないってことが、ひとつあると思いますね。
あと、キツネは群れてなくて、ほぼ単独で生活しているんですね。一頭で歩き回っているっていうような感じなので、見かけることがあっても一頭しかいなくて、私たちを見ると、さっと逃げたりとか隠れたりすると、意外に気づかないっていうことがあるんじゃないかなっていうふうに思いますね」
●キツネは、昔話や童話に出てきて、人を化かしたり、稲荷神社では神様の遣いだったりとか、ほかにもずる賢いなんていうイメージもありますけど、実際のキツネはどういう動物なんでしょうか?
「基本的に肉食性で、獲物を捕らえて食べることがとても好きな動物なので、獲物を捕まえるためには彼らの裏をかいて、ある意味、騙し打ちをしたりとかしないと捕まえられないっていうところがあると思うんですね。なので例えば、死んだふりをして油断させて、ぱっと飛びついたりとか、そんなところが知恵を感じさせるのかなって思いますね。
あとはハンターに追われたりすると、足跡を犬が追ってきますよね。キツネは追われていることを察して、自分の足跡を追う追手をうまくまくために、『止め足』っていうテクニックを使うんですね。普通に進んでいるように見せるんですけども、ある時、少し離れたところにジャンプして、足跡がついてないように見せかけて、どこに行ったんだろうってわからなくさせる、そんなことをするんですね」
(編集部注:キツネは分類でいうと「イヌ科」に属し、日本に生息しているのは、北海道にいるキタキツネと、本州より南にいるホンドギツネ、そしてギンギツネと呼ばれる、毛色が違うキツネがいるそうですが、種でいうと、いずれもアカギツネだそうです。
ちなみに世界には12種のキツネがいるとされていて、ほぼ全世界に分布しているとのこと。好んで暮らしているフィールドは、開けた環境で草原があって林があるような、いわゆる里山。おもな獲物はネズミや小鳥などの小動物、ほかにもバッタなどの昆虫、ヤマブドウやサルナシなどの果実も食べるそうですよ)
優れた聴覚で獲物をゲット!?

※初歩的な質問なんですけど、キツネの大きさや体重は、どれくらいなんですか?
「鼻先から尻尾の先まで含めるとだいたい1メートルぐらいですね。尻尾だけで30センチ強といったところですかね」
●体重は?
「4〜5キロなんですよ」
●意外と軽いんですね。
「そうですね。ちょっと重めの猫とか、小型の犬ぐらいの大きさですね」
●やっぱり見た目の特徴でいうと、長い尻尾だと思うんですけれども、この長い尻尾には、なにか役割はあるんですか?
「はい、キツネはネズミを捉える時にジャンプをして捕まえたりするんですけど、空中での姿勢をうまく保つためにバランスを取ったりするのに、長い尻尾は役に立っていると考えられています」
●確かに地面とか草むらに顔から突っ込むような動画を見たことあるんですけど、キツネはどうやって、そこに獲物がいるのを察知するんですか?
「ネズミの場合ですと、キツネが好きなネズミは草と土の間にトンネルを掘って生活しているんですね。なので、動き回ったりするとカサカサっていうような、体が草とこすり合うような音がするんですけども、その音をかなり感度の高い耳でキャッチして、どこにいるのかを正確に突き止めるんです。
あと音も、左右の耳の聴こえ具合で、音が遠くからやってくるとか、右からやってくるとか左からやってくるとかだいたいわかります。それをすごく感度を高くやることができて、数メートル先にいるネズミの位置をピンポイントで捉えて、ジャンプをして、2.5メートル先で5センチぐらい誤差で捕らえることができます」
●すごいですね! 確かにキツネの耳は大きいですよね。聴覚が優れているっていうことなんですね。
「そうですね。人間だとだいたい、高い音だと2万ヘルツぐらいまでしか聴こえないんですけど、キツネの場合は4万8千ヘルツぐらいまで聴こえるので、およそ2倍ぐらい高い音が聴こえますね」

(編集部注:塚田さんによれば、キツネの視覚は人間と比べると、青色がよく見えていないなど、色の感度はあまりよくないそうですが、暗闇でもよく見え、獲物の動きを探知できるようになっているとのこと。また、嗅覚は優れていて、私たちとは違う匂いの世界を持っているそうです)
キツネの子育て、オスは子煩悩!?
※キツネは基本的に夜行性ということですが、オスもメスも単独で行動しているんですよね?
「基本的には一頭で動き回るっていう感じなんですね。ただ交尾の時期、1月から2月にかけて繁殖をする、交流する時期なんですけども、その時はオスとメスが連れ立って歩く、2頭でよく一緒に歩いているのを見かけますね」
●発情期、いわゆる「恋の季節」は1年に1回なんですね?
「はい、1回ですね」
●縄張りみたいなものはあるんですよね?
「はい、動き回る範囲が決まっていて、その範囲を特定のファミリー、オスとメス、あと子供で一緒に暮らしていて、隣のファミリーとはあんまり交わらないような形で暮らしています。そういう意味でテリトリーなんですけども、だいたい広さは数ヘクタールから数千ヘクタールぐらいまでと結構幅があるんです」
●かなり広いところもあるんですね。
「そうですね」
●出産はいつ頃なんですか?
「出産はだいたい3月から4月にかけてですかね」
●一回の出産で、どれぐらいの子供を産むんですか?
「3頭から5頭、まあ4〜5頭そんなところですかね。哺乳類では本当にメスだけが子育てをすることも多いんですけれども、イヌ科の仲間はオスもかなり子育てに参加する特徴があって、キツネも例外ではでなくて、オスは非常に子煩悩ですね」
●子ギツネはどれぐらいの間、親ギツネと一緒に暮らすんですか?
「同じ行動圏の中に暮らしているのが6ヶ月ぐらいですかね。4月に生まれて10月ぐらいになると旅立っていくっていうような感じになります」
●先ほどおっしゃっていた縄張りを出なきゃいけないってことですか?
「そうですね」
●(子ギツネが)出ちゃったら、そのオスとメス、お父さんとお母さんだけが残るっていう感じですか?
「そうですね。基本的にはオスとメスが残るんです。中にはおもにメスなんですけども、娘が行った先からまた戻ってきたりとか、そのまま残ったりとかっていうこともあって、そうすると拡大家族みたいになったりしますね」
(編集部注:塚田さんによると、キツネの寿命は、生まれて最初の冬を乗り越えると、6年から7年くらい。特殊な例として、キタキツネで14年、生きた個体もいたそうです)
子ギツネが、鳴き真似にだまされた!?

※キツネは鳴き声をよく出す動物だと本に書いてありました。どんな声を出すんですか?
「よく”コンコン”って言いますね」
●はい、そのイメージがあります。
「あれは、発情期の声なんですね! (鳴き真似)こんな声です」
●へ~〜、ではコンコンとは鳴かないってことですか?
「そうですね。普段は・・・いろいろな声があるんですけども、例えば(ほかの個体に)近づいて甘えたりすると、”ミーミーミー”っていうような声を出します。あとは警戒をしている時、敵が来たぞっていう時は、”フォンフォンフォン(鳴き真似)“と鳴きますね」
●“コンコン”のイメージしかなかったです。いろいろあるんですね。
「はい、この”フォンフォンフォン“は、要するに”ワンワン”にちょっと似ている感じの声ですかね」
●ほかに特徴的な鳴き声はありますか?
「そうですね・・・親が例えば、獲物を巣穴に持ち帰った時、巣穴に隠れている子ギツネを呼び出す時に特徴的な声を出すんですね。喉の奥から”グググググッ”というようなちょっと低い声を出すんですけども、実はその鳴き真似、私、得意です(笑)」
●本にも載っていましたよね!
「そうなんですよ。その鳴き真似をすると、子ギツネが間違えて、ちゃんと巣穴から飛び出してくるんです」
●塚田さんの鳴き声を親ギツネの鳴き声だと思って、子ギツネが出てきたんですね! すご〜い! ちょっと聴かせてください。
「はい、やってみますね。(鳴き真似)こんな声です」
●すごい!
「今すごく喉の奥のほうから出した声なんですけど、これは口に何かをくわえている状態でも出せるんですよ。(鳴き真似)口の先のほうじゃなくて喉の奥のほうで出すので、多分獲物をくわえて帰ってきて、その獲物をくわえている状態でも出せる声なんだと思うんですね。喉の奥のほうから出す“ググっ”という声なんですけども、子ギツネたちがそれを聴くと、(親ギツネが)獲物を持って帰ってきたっていうような感じになるんですかね。それで一斉に巣穴から出てきますよ」

※塚田さんは、どんな方法で野生のキツネの調査をされているんですか?
「昔と今ではだいぶ違うんですけど、昔はどちらかというと、キツネの社会がどんなふうになっているかを調べていたので、キツネの巣穴の前でずっと待っていて、キツネが現れたら、そのあとを追いかけるというような、ちょっと効率の悪いやり方をしていました」
●キツネから警戒されたりとかはしないんですか?
「警戒されますよ。だから、すぐにまかれてしまいます」
●頭がいいんですよね!
「そうなんですよ。だから、まかれないようにずっとずっと根気強くやっていると、(キツネのほうが)またここに来たか! みたいな感じで、それであとをついていけるようになるんです」
●観察中にキツネが見せた行動で、何か印象に残っていることはありますか?
「ずっとつけ回していて、すぐにまかれてしまうんですけども、ある日、私があとをついていくのを許してくれた個体がいて、私がちょっとまかれそうになると待っていてくれて、近づくとまた歩き出して・・・本当に私、この子と友達になれたんじゃないかっていうような気分にもなりましたね。それがとても感動的な思い出としてはありますね」
都市環境を利用する野生動物
※自然環境の変化は、キツネの暮らしにどのような影響を与えていると思われますか?
「私たちはある意味、自分たちが暮らすために森を切り開いて田畑を作って、都市を作っていくようなことによって、(野生動物の)生活場所が脅かされていくんじゃないかっていうようなイメージを受けますよね。どちらかというと、キツネは森林よりも開けた環境が好きなんですね。
私たちがそういった形で森林を切り開いて、開けた環境を作って、農地を作って植物を生やして、そこにネズミとかが増えるような環境を作ると、実はキツネにとって棲みやすい環境を作っているような気がしますね。
自分たちが暮らすために生活を改変していく、環境を変えていくっていうことが、逆にキツネにとって棲みやすい環境を作っているんじゃないかなって思います。
動物なんかいないと思われるような都市の環境でも、最近キツネは入り込んでいて、数を増やしていることが知られています。私たちが作っていく環境、これから都市が地球の中でもいちばん栄えていくような環境と言われていますけども、そういったところでも、したたかに生き残っていけるのが、キツネなんじゃないかなっていうふうに思いますね」
●塚田さんは30年以上キツネを見続けてきて、改めて今どんな思いがありますか?
「やっぱりとてもしたたかで奥深い動物だと思いますね。生き物って多分どんどん変化していくと思うんですけど、(キツネは)そういった変化を非常に短いスパンで見せてくれるような動物なのかなと思っています。そういうところがとても魅力的だし、これからどんなことを見せてくれるのか、楽しみな動物ですね」
INFORMATION
塚田さんの新しい本をぜひ読んでください。童話や映画などに登場するキツネから、野生動物としての生物学的な生態、そして人との関わりなど、キツネに関する幅広い情報を、とてもわかりやすく解説、まさにキツネの教科書的な本だと思います。おすすめですよ。緑書房から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2024/2/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第19弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「飢餓をゼロに」
そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
ゲストは、カブトムシの力で有機廃棄物を資源化し、世界の食糧不足にも貢献することを目指すスタートアップ企業、株式会社「TOMUSHI」の代表取締役CEO「石田陽佑(ようすけ)」さんです。
石田さんは物心ついたときから、ツノが生えたカブトムシが大好きで、双子のお兄さん建佑(けんすけ)さんと夜、近くの森によく、捕まえに行っていたそうです。ところが、なかなか捕れないので、カードゲーム「ムシキング」で知った憧れのヘラクレスオオカブトを、おじいちゃんやおばあちゃんにお金を借りて購入。そして飼育したら繁殖して増えたので、お兄さんと相談して、売ってみようということに。
そこで、またまた祖父母を説得して、起業のための資金を出してもらい、2019年に地元の秋田県大館市で、TOMUSHIをスタート。実は石田さん、以前、東京で別の事業を立ち上げたんですが、大失敗。TOMUSHIは、再起をかけての出発だったんです。
カブトムシを育てて販売する事業は当初、とてもうまくいき、絶好調! そこで、調子にのって、銀行から資金を調達し、たくさんカブトムシを育て、もっと儲けようとしたところ、大量に発生した害虫がカブトムシのエサを食べる事態が発生、大ピンチに。そんなときに、銀行から地元で出る廃棄物をエサの代わりにできないかと提案され、試してみたら、ビジネスモデルが大転換したそうです。
ちなみに社名の「TOMUSHI」を、株式会社の表記を省略し、「株」だけにして読むと「株 トムシ」になります。
きょうはカブトムシが大好きな石田さんが、双子のお兄さんと立ち上げたカブトムシ・ビジネスの可能性に迫ります。
☆写真協力:TOMUSHI

有機廃棄物をカブトムシのエサに
※TOMUSHIのオフィシャルサイトにもいろいろ説明が載っていますが、事業内容を、ひとことでご紹介すると「有機廃棄物を、カブトムシの力を使って、資源化する」ということですよね。有機廃棄物に目をつけて、最初からうまくいったんですか?
「最初は、とにかくエサをなんとかしなければいけないって必死だったですね。なんとなく昔から、カブトムシは腐葉土を食べるとか、腐ったものを食べるとかあったので、それだったら有廃廃棄物を食べるんじゃないのかなという期待をもとに、そこからいろいろ実験を始めたのがきっかけですよね」
●有機廃棄物といってもいろいろあると思うんですけれど、具体的にどんな廃棄物を
どこから集めてくるんですか?
「いちばん最初に紹介されたのは、いくつかあって、木材廃棄物ですね。それから農業残渣(のうぎょうざんさ)、メインなものでいうと、廃菌床(はいきんしょう)と呼ばれるキノコを育て終わったあとの土台になっている部分で、これも廃棄物になってしまっているので使えないかとか・・・。
あとは畜産糞尿、牛の糞とかそういったものが使えないかとか・・・こういうところから始まったんですけど、結果的にほとんどどれも(カブトムシは)食べられるんですね。最初こういうのがきっかけで、有機廃棄物の中でも廃菌床、畜産糞尿、それからの木質系の廃棄物に目をつけて始めましたね」
●たくさん量が必要だと思うんですけど、どうやって集めるんですか?
「これが、我々が想像していたよりも、はるかに事業者側のほうが量をたくさん排出してしまっていて、調達というところでは、そこまで苦労することなくできていましたね」
●それをカブトムシの幼虫が食べられるエサにする技術を開発されたっていうことなんですよね? どういう技術なんですか?
「カブトムシといえどもなんでも食べられるかというと、非常に難しいところがあって、カブトムシにとって毒性があったりとか、食べられない状態のものがあるんですね。我々食べさせる前にエサを一度発酵という過程を通すんです。
発酵というと、キムチとかを想像されるかもしれないですけれども、あれに近くて、大量に微生物が発生して、それによって熱が放出されて微生物が活発になるわけです。その活発になった微生物が、カブトムシの嫌がるものとかを食べてくれることがわかってきているんですね。
それで最終的には、ある程度熟成させた状態のものを与えると、カブトムシの成長がよりよくなるのがわかって、微生物の組み合わせだとか、カブトムシとの微生物の組み合わせを研究してきていますね」
カブトムシを品種改良!?
※TOMUSHIのもうひとつの特徴として、カブトムシを品種改良したそうですが、どんなカブトムシになったんですか?
「当初、カブトムシを品種改良しようとしたのは・・・いちばん最初、有機廃棄物を食べることがわかった時に、これはもしかしたら、 有機廃棄物をカブトムシが食べるということは、これがタンパク源になるんじゃないかと・・・。そうするとゴミがタンパク質になるんだったら、世界中の食料危機を救えるんじゃないかというのがきっかけですね。
そこの食料の部分に対して、カブトムシを品種改良というか生産効率を考えていた時に、一年でワンサイクルしかしないと、どうしても採れる量が少ないというところで、これの成長速度が速くならないかというのが最初のきっかけです。
いろいろ(カブトムシの)サンプリングをして調べていくと、地域によって成長速度が違ったんですね。簡単にいうと、寒い地域のカブトムシほど成長速度が速かったんです。これは冬眠があるから速いんですね。
冬眠がある期間は成長できないので、早く成長してしまってから冬眠をするという習性があって、この習性を利用できないかっていうので、それとゴミを食べることに特化したカブトムシを掛け合わせて品種改良を行なっていったんです。成長速度が速くて、なおかつゴミを食べられるカブトムシが誕生してきたというそういう背景がありますね」
●もともとのカブトムシ、つまり親はどこから持ってきたんですか?
「あ、これは日本各地のカブトムシを採取してきて、その子孫をとって、成長速度がどのぐらいなのかとか、どれだけ差があるのかとか、そういったものを測定してその中から選抜をして、これとこれを掛け合わせようっていうので、掛け合わせて残してきていますね」
●カブトムシ好きですから、そういう作業も楽しそうですね!
「楽しいですね! もうたまらないんですよ! 趣味の延長線みたいなもんですよね、もうこれは!」
●例えば、外国産のカブトムシが逃げ出して、日本のカブトムシと交雑するとか、自然界に影響を与えるというような心配事はないんですか?
「これは、非常によく聞かれる質問なんですね。基本的にこれも意外と知られてないんですけれども、外国産のカブトムシはそもそも日本の屋外で生活ができるかというと、ほとんどの種類は難しいんです。一部生活できる種類もいるんですけれども、そういったものは特定外来生物みたいなものになっていて、飼育することがそもそも禁止されていたりとか、そういうふうになっています。
ヘラクレスオオカブトとか、よく耳にするようなカブトムシは外に出てしまうと、おそらくすぐ鳥に食べられて死んでしまうんですね。万が一生き残ったとしても、冬が来てしまうとその段階で死んでしまいます。
そもそも種類的にいうと、日本のカブトムシと交雑してしまう可能性はないですね、全くないです。 一部の中国のカブトムシとかは可能性があるかもしれないですけれども、ほとんどのカブトムシは、まずそれは可能性としてはないものになります」
収益の3つの柱
※素朴な疑問なんですが、TOMUSHIはどうやって収益をあげているのか・・・カブトムシを販売しているんだろうな〜という想像をつくんですけど、どうなんでしょう?
「我々の収益の柱は大きく3つあるんですね。まずひとつめが単純にプラントとしての販売。カブトムシを育てて、ゴミを処理しながら育てるというゴミ処理機能をセットにしたような形のプラント、これを販売することがまずひとつ」
●廃棄物処理のプラント!?
「そういうことです。それを販売することがまずひとつで、もうひとつが単純にペットとしての販売の売り上げですね。そのプラントから育ってきたカブトムシを我々がすべて買い上げて販売をするんですけれども、ここでの販売の売り上げがもうひとつの大きいところですね。
もうひとつはイベント事業ですね。廃棄物を食べて育ったカブトムシは、結局高くてなかなか子供たちには手が届かないので、子供たちにも触れ合う機会を提供したいということで、夏の1か月間、夏休みに合わせてイベントをやっているんですね。昆虫展みたいなものです。
ただの昆虫展ではなくて学べる昆虫展っていうので、SDGsについてカブトムシを通して触れ合いながら学ぶというような、そういう事業をやっているんです。これもものすごくたくさんのかたがたにご来場をいただいて、売り上げの柱のひとつになっていますね」
●プラントの販売っていうのは、具体的にどういうことなんでしょうか? プラントそのものを提供する? それともノウハウを提供する? どういう感じなんでしょうか?
「はい、ありがとうございます。これはどちらもありますね。 プラントそのものももちろん提供するんですけれども、それだけでは運営できないので、そこのノウハウだとか、まさに入口から出口のところまで、ノウハウをすべて提供しながら運営をしていますね」
●現在全国で何か所ぐらいTOMUSHIが手がけたプラントが稼働しているんですか?
「全国で北は北海道から、南は沖縄まで大体30か所ぐらい、各地にあります」
●どのくらいの量の有機廃棄物を処理できるんですか?
「全体の量でいくと大体2000トン程度の量を年間処理していますね。個別にいうと年間10トンのものから、1か所で数百トン処理をしているような、規模の違いはそのぐらいありますね」
(編集部注)カブトムシを飼育しているかたは特に、いくらで販売しているのか、気になりますよね。石田さんによると、数千円から高いものでは数十万円もする貴重な外国産のカブトムシもいるそうですが、平均すると1万円前後での販売だそうです。詳しくはTOMUSHIの、外国産を多く扱っているECサイト「昆虫専門店ビーラボ」をご覧ください。
☆昆虫専門店ビーラボ: https://kabuto-mushi.com

カブトムシの魅力を世界に発信!
(編集部注)先ほど、カブトムシを品種改良したというお話がありましたが、石田さんによると、品種改良は研究の段階で、日本のカブトムシを中心に一部、外国産も含め、いろいろな種をかけあわせたそうです。
いまプラント販売で、メインで提供しているのは日本産のカブトムシだそうですが、エサにする有機廃棄物によって、使い分けているので、プラントを販売する際は、先に有機廃棄物のサンプルをもらって、どのタイプのカブトムシが適応するか、試験をして提供しているとのことです。
※世界の人口増加により、食糧不足が懸念されるなか、昆虫食に期待する声も高まっていると思うんですけど、カブトムシの場合、成虫よりも幼虫がタンパク源として活用できるような気がするんですけど、どうなんでしょう?
「タンパク質としては、どちらも近しいような数値にはなると思うんですけれども、生産の効率を考えると幼虫のほうがいいと思っていますね。昆虫食というところでいくと、原料として考えるとやっぱり効率を求められてしまうので、成虫まで育てるよりも幼虫で出荷をしたほうが、生産期間というか製造期間が短くなるので、幼虫のほうが効率がいいっていうことがありますね。
あと、昆虫食に関していうと、これはよく笑われてしまうんですけれども、カブトムシは甲殻類にあたるんですね。僕は甲殻類アレルギーがあってカブトムシもアレルギーで食べられないっていう、なんていうんですかね・・・共食いしないように生まれてきたんですかね(笑)」
●(笑)なるほどそうなんですね!
「そうなんですよね~」
●カブトムシをペットとして飼育する、文化みたいなものは海外にもあるんですか?
「海外にもあるにはあるんですけれども、日本ほどメジャーなものではないですね。日本だと男性のかただと、ほとんど一度は(カブトムシを)飼育したことがあると思うんですけれども、このレベルで飼育する国は世界各国見ても、おそらく日本だけだと思いますね」
●今後、有機廃棄物をカブトムシの力で資源化して、世界の食料不足に貢献するために世界に打って出ようみたいな、そういうお気持ちもあるんですか?
「もちろんです。資源を解決したいっていうよりも、より根本にあるのは・・・我々カブトムシ好きとして創業した当初、カブトムシってペットだけでしょ! って言われて、非常に悔しい思いをしてきているんです。それがようやく、原料としての可能性とか医薬品に使えそうだとか、様々なことがわかってきて、カブトムシはツノが生えてかっこいいだけじゃなくて、これだけ世の中に貢献ができるんだと・・・それが日本国内では、いろんなメディアにも出させていただいただいたおかげで、広く伝わってきて、”頑張ってるね”ってよく言っていただけるんですね。
インドの現地に行って、僕がいつも通り、いろいろカブトムシについて魅力を、ここが素晴らしいんですよ! っていうのを伝えたんですけれども、彼らからすると、ほかの虫と変わらないというか、なんかまあ多くいると言ったらゴキブリとか、そういうのとカブトムシは一緒だよねという、そういう扱いなわけですよ。僕もそれを言われた時に、いやいやこれだけすごいし、ツノも生えているんだと! いうのを話すんですけど、”そんなの知らないぞ”って言われてしまうんですね。
なので、僕らとしては全世界に対して、カブトムシはこれだけ環境にも貢献できて、循環型で資源を循環させられる役割があると、これだけでもものすごく魅力があることだし、それにこれだけのツノがついて立派でしょ! っていうのを全世界に広めていきたいという根本の気持ちとしてはまずあるんですね。そのために、より実際に事業として全世界に向けて提供していきたいという思いがありますね」
日本の文化が作ってくれたビジネス・モデル
※国内での新たな展開はありますか?
「国内のところでいくと、やっぱり先端分野ではカブトムシの、それこそ幼虫の粉末にしたものを原料として、例えば水産飼料とか畜産飼料とか、外国からの輸入に頼っている部分を国産のカブトムシが担えないかというところで、実際に研究だったり実証実験というのが今進められていますね」
●このTOMUSHIのビジネス・モデルはもうオンリーワンですよね?
「そうですね。これもあんまり知られてないんですけど、我々がこうやって事業をやれているのは、本当に日本にこの文化があったおかげですね。
我々はほぼすべての、全世界のカブトムシ、クワガタを入手することができて、それで品種改良することができるんですね。これは、ほかの国にはない日本の文化が作ってくれた、本当に日本が誇るべき財産ですよね。これのおかげで日本から我々みたいなカブトムシ・ベンチャーが出ていますけれども、ほかの国でこれができるかっていうと難しいですね」
●大好きなカブトムシをビジネスにした今、どんなお気持ちでいらっしゃいますか?
「もともと僕は、朝起きるのがすごく苦手で目が覚めなかったんですけれども、今の事業をやるようになってからは、やっぱり好きなことなんで、なんていうんでしょう・・・ワクワクして目が覚めるという、これが個人的にいちばん大きな違いですね。
これは本当に一緒に働く仲間も近いと思うんですけれども、ただのビジネスではなくて、自分の好きなことであって、とにかく楽しく仕事ができるっていうのは、僕にとっては天職だと思いますね、これは!」
●すごくカブトムシへの愛が伝わってきました。では最後にカブトムシを見ていて、どんなことを感じますか?
「そうですね~”カブトムシの魅力はなんですか?”って、よく聞かれるんですけれども、分からないんですよ。逆に僕らからすると、生まれて物心ついた頃からずっと好きなので、なぜカブトムシがかっこよくて、なぜ魅力的なのかわからないんですよ。
逆にみんなそう思っているんじゃないの? と思っているんですけど(笑)、非常に表現が難しいですね。とにかく何か謎の魅力があるんですよ、カブトムシっていうのは・・・見ていてもずっと飽きないというか、フィギュアが動いているようなそんな感覚ですよね」
INFORMATION
TOMUSHIの事業にぜひご注目ください。プラントやペットしての販売、そして子供たち向けのイベントのほかに、昆虫専門の情報サイト「ムシペディア」なども運営。ECサイト「昆虫専門店ビーラボ」では、へラクレスオオカブトなど外国産のカブトムシを多く扱っています。事業内容や販売について、詳しくはTOMUSHIのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎TOMUSHI:https://tomushi.com
◎昆虫専門店ビーラボ:https://kabuto-mushi.com
2024/2/18 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然写真家の「丹葉暁弥(たんば・あきや)」さんです。
丹葉さんは北海道・釧路市出身。1998年にカナダ北部で野生のシロクマに遭遇、
それ以来、シロクマの撮影のために、毎年のようにカナダに通うようになったそうです。これまでに、大好きなシロクマの写真集を6冊発表、中でもシロクマが犬を抱っこしている写真が話題になりました。
そして今月2月27日の「*国際ホッキョクグマの日」に新しい写真集『SOON〜氷の橋を目指すシロクマ』を発表されます。
きょうはそんな丹葉さんをお迎えし、撮影のために4年ぶりに訪れたカナダ北部のシロクマの実態や、極寒の中でも生きていけるシロクマの秘密に迫ります。
(*編集部注:ホッキョクグマが置かれている現状を広く伝えるために、カナダを本拠地とする国際的なホッキョクグマの保護団体POLAR BEARS INTERNATION-ALが制定)
☆写真協力:丹葉暁弥

いちばん最初に凍る場所
※丹葉さんの撮影のメイン・フィールドは、カナダ北部のどのあたりなんですか?
「私がシロクマたちに会いに行っているのが、カナダにあるマニトバ州、ちょうどカナダの真ん中にある州なんですけれども、そこの上のほうですね。北極圏までは入らないんですが、かなり北極に近いところにあるチャーチルという小さい町があるんですね。そこがメインの取材場所になっております」
●そこにシロクマたちがたくさん生息しているっていうことですか?
「そうなんですよ。地球上にシロクマは2万5000頭ぐらいいるって言われているんですけれども、そのうち、カナダに生息しているシロクマの数がとても多いんですね。中でもチャーチルの周辺には、だいたい2500頭前後が生息すると言われているんですね」
●どうしてその場所に集まるんでしょうか?
「シロクマの生態についても、ちょっと話すことになるんですけれども、シロクマは、海が凍ると凍った海の上でアザラシが子供を産む、そのアザラシを主食として猟に出かけるんですね。私が通っているマニトバ州のチャーチル周辺は、アメリカ大陸の上のほうにあるハドソン湾という大きな海、その海の南西部になるんですけれども、いちばん最初にその海が凍り始めるところと言われているんですね。
シロクマたちはお腹が空いているので、早く食べに行きたいということで、いちばん最初に凍るところ、つまりアザラシたちが最初に出てくるようなところにたくさん集まるようになったと言われています」
●集まりやすい時期はあるんですか?
「10月の終わりぐらい、10月の最終の週から11月の1週目から2週目と言われています」
●その時期を目掛けて、いつも丹葉さんはチャーチルに行って撮影されているっていうことですか?
「はい、そうなります。その時期になると海が凍り始めるんですね。海が凍ってしまうとシロクマたちは海の彼方に、氷の上に乗ってずっと旅に出てしまうので、出会うことができないんですね。その海が凍る ギリギリのシーズン、それを狙っていくと、たくさんのシロクマたちに会えるわけです」
シロクマが集まる町

※シロクマたちが集まるエリアにあるカナダ北部のチャーチルは、どんな町なんですか?
「これがとてもとても小さい町で、カナダの内陸から道がつながっていないんですね。なので、そこに行くには飛行機で行くか、もしくはカナダを走っている鉄道で行かなくてはいけないんです。一応、カナダの鉄道のいちばん最北端の駅がチャーチルという町になるわけです」
●観光名所とかではなく、自然豊かな場所という感じになっているんでしょうか?
「ところが、この場所は日本では最近、結構有名にはなってきているんです。欧米のみなさんは、30年以上前からこの場所にシロクマたちが集まってくるのを知っていまして、一般のかたがたが野生のシロクマを見に行くツアーというのがあるんですね。
もともとは人間よりも先にシロクマたちが棲んでいたというのが、もちろんあるんですけど、そのチャーチルの町はシロクマたちが、海が凍ると向かっていくと言われる北極、北の方角に町があるんですね。ですから、シロクマたちの通り道ということがあって、シロクマたちがたまに町の中を歩くことがあるんですね」
●人間との軋轢みたいなものはないんですか?
「確かにあります。シロクマたちは約半年間、絶食をしていて、お腹がペコペコなんですね。実は人間たちのお家ですとか、ゴミとかの食べ物の匂いを嗅いで、何か食べ物があると思って町の中に入ってくると・・・。で、そこに人間がいたら、最悪の場合は襲われてしまうということも起こっているんですね」
小さな町チャーチルの変化
※コロナ禍もあって、去年11月に4年ぶりにチャーチルに行かれたそうですね。久しぶりに行って、どうでしたか?
「基本的には人口1000人ぐらいの小さい小さい町なので、大きな変わり方はしないんですけれども、やはりコロナ禍が終わって行ってみると、観光に関してちょっと変化というのが見受けられました」
●例えば、どんな変化があったんですか?
「最近、日本でもいろんなところで耳にすると思うんですが、オーバーツーリズムってありますよね。これがカナダ北方の小さな小さな町にも現れていました。要はシロクマたちに会いに来る、シロクマたちの写真を撮りに来る人たちがとても増えてまして、そのために、そういうカメラマンたちを連れていくツアーみたいな車がたくさん走っているのに驚きました」
●そうなんですね~。地球温暖化の影響を日本でも感じることが多くなってきましたけれども、シロクマを取り巻く環境はいかがですか? 現地で何か変化を感じたりしましたか?
「はい、これは毎年行くたびに感じることなんですけれども、まず最初にはっきり言えることがシロクマの数が、私が最初に言った25年前に比べると確実に少なくなっているということですね。
私はだいたい現地で車を借りて、シロクマたちを撮影しているんですけれども、昔はそんなに苦労して探すことなく、毎日シロクマたちに会うことができていたんですね。最近は探さないと見つからない、探しても出てきてくれないということが非常に多くなってきました。
昨年も、それと同じようにシロクマたちがたくさん出てくるというのが、非常に少なくなっているなって感じました」
(編集部注:動物園や水族館で会えるシロクマは、子供は真っ白で愛くるしくて、大人のシロクマはプールに飛び込んだりと、活発に動いているイメージがあります。丹葉さんいわく、野生のシロクマもいろんな表情を見せてくれるそうですよ。
シロクマの和名は「ホッキョクグマ」、英語名は「ポーラーベア」。体の大きさは、オスで2メートルから2メートル50センチくらい、体重は400キロから500キロくらいで、メスはオスよりも、ひとまわりほど小さいサイズ感です。
繁殖期は3月から6月くらいまでで、その年の11月から翌年1月頃にかけて1頭から4頭の子供を生むとされているそうですが、丹葉さんが目撃するのは平均的に2頭だそうです。
子育てはメスだけで行ない、2年から2年半くらいは子供と一緒に行動するとのこと。そんなメスと子供たちの天敵は、なんと、ほかのオスのシロクマだそうですよ。これも自然界の摂理なのかも知れませんね)

シロクマの毛の秘密
※シロクマはマイナス何十度にもなる気候の中で生きていますが、体になにか秘密があるのでしょうか?
「寒さ対策ということがいちばんだと思うんですね。シロクマたちはいちばん寒い時には、マイナス60度以下のところでも旅をしなくてはいけないわけなんですね。そのためには、やはり我々人間と同じ哺乳類ですから、どうにもならないところがあります。それを体の構造によって補っているんですね。そのひとつが“毛”にあるわけです。
シロクマの毛が白だと、みなさん思われていると思うんですけれども、実はよ~く顕微鏡とかで1本1本を観察すると、毛の色は透明なんですね。透明の上にその細~い毛の中に空洞がありまして、そこに1本1本空気が閉じ込められているんですね。それによって空気が太陽の光によって温められて、保温効果があるということになるんですね。
あとは、毛が二重構造になっています。皮膚に近いところは、だいたい5センチぐらいの長さの細かいふわふわした、ふさふさした短い毛がびっしりと生えているんです。それの上を15センチぐらいのちょっと硬い長い毛が覆っているので、我々人間が防寒下着を着て、ダウンコートを身にまとっているような、そういう構造になっているんですね」

●シロクマは、そうやって寒さ対策を体でやっているからいいですけど、丹葉さんはどんな格好でいつも撮影されているんですか?
「これはですね(笑)、基本的には車の中から写すようにはしています。というのが、まずは自分の身を守ることから始めています。これには理由があるんです。もし人間を傷つけてしまったシロクマがいた場合、人間を傷つけたということで、保護局とかのシロクマを捕獲する施設に入れられてしまったり、そういうことが起こってしまい、最悪な場合は殺されてしまうこともあるんですね 。
自分はシロクマが好きで、野生のシロクマたちに会いに行っているので、シロクマたちが傷つけられる原因が、自分にあったりしたら、本当に本末転倒になってしまいます。ですから、まず自分の体を守るということで、車の中から写すんですね。
ただし、窓を全部開けてエンジンを切って、外気温と同じ環境で、長い時には3時間4時間ぐらい動かないで、じーっとシロクマたちを見ています。外気温がマイナス20度とか30度になることもあるので、とても寒いですね。
なので、防寒下着は必要最低限でございまして、その上にフリースですとか着込んだ上に極地用のダウンジャケットを着て、モコモコになって写しています」
最新の写真集『SOON』に込めた思い
※2月27日が「国際ホッキョクグマの日」ということで、それに合わせて、写真集を出されるそうですね。なんというタイトルなんですか?
「今回の写真集のタイトルは『SOON』というタイトルですね。日本語で言うと『もうすぐ』ですとか、そういうイメージがあるとは思うんですね。サブタイトルには『きっともうすぐ氷の橋があるから大丈夫』というような意味もちょっと込めています」
●どんな思いを込めて、このタイトルにされたんですか?
「やはり我々人間もこれから自然環境ですとか地球環境の悪化によって、住みづらい世の中になっていくと考えているんですね。白クマたちもだんだん地球環境の悪化によって絶滅に瀕し、危機が訪れているわけなんですね。それをシロクマと人間たちを重ね合わせて、希望を捨てないで、のんびりなんとかやっていこうというような思いを込めています」

●では最後に長年、野生のシロクマを撮影されてきて、今どんな思いがありますか。
「毎年毎年、地球環境が非常に悪くなってきている中で、自分も非常にショックを受けているんです。シロクマを守るために動物を守るために地球を守るために、何をしたらいいですか? という質問をよく受けることがあります。それで無理なことを最初にやってもしょうがないと思うので、まずは自分ができることからは始めればいいかなと思っているんですね。
そのひとつが、たとえばトイレに行くときにテレビをバチッと消すとか、隣の部屋に行くときに電気を消すとか、それが一瞬でも5秒でも10秒でもやればプラスになるわけですね。やらなければ、ゼロのままじゃないですか。ですから、そうやって自分のできることからやっていくことによって、野生のシロクマたちがなるべく長生きして、これからも地球で我々と一緒に過ごせるようになればいいなと思っています」
☆この他の丹葉暁弥さんのトークもご覧ください。
INFORMATION
丹葉さんの最新の写真集をぜひチェックしてください。今回の写真集には未発表作や、昨年カナダで撮ってきた新作も掲載されているそうです。発売は2月27日、トゥーヴァージンズから。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎トゥーヴァージンズ :https://www.twovirgins.jp/book/soon/
写真集の発売を記念して、写真展が開催されます。会場は東京タワーギャラリー、会期は2月23日から3月25日まで。ぜひお出かけください。詳しくは、丹葉さんのSNSをご覧ください。
◎Instagram:http://www.instagram.com/akiya.tamba
◎X(旧Twitter):http://twitter.com/AkiyaTamba
◎Facebook:http://www.facebook.com/akiya.tamba
◎Facebookpage:https://www.facebook.com/photographer.tamba
2月27日の「国際ホッキョクグマの日」を記念して、よこはま動物園ズーラシアでは現在「知ろうくまフェスタ!」が開催されています。シロクマが置かれている環境や、私たちができることを紹介したパネル展示ほか、2月24日と25日には、餌を与えながらの特別ガイドや、ワークショップが行なわれます。
ほかにも丹葉暁弥さんと、飼育員のかたによる「知ろうくまトーク」も予定されていますが、このトークイベントは定員いっぱいだそうです。詳しくは、よこはま動物園ズーラシアのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎よこはま動物園ズーラシア:https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/
丹葉さんの最新の写真集『SOON』を抽選で2名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
flintのスペルは「エフ・エル・アイ・エヌ・ティー」
flint@bayfm.co.jp です。
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。
応募の締め切りは2月23日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2024/2/11 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、神奈川県相模原市の北西部、藤野地区の里山にある小さなチョコレート工房「藤野良品店」の「柳田真樹子(やまぎだ・まきこ)」さんです。
藤野良品店は、ご主人がJICAの活動として、タンザニアに雇用を生み出すために現地にドライフルーツ工場を作るプロジェクトに関わったことが始まりでした。
そのタンザニアでカカオ豆の生産者に出会い、持ち帰ったカカオ豆でチョコレートを作ってみようと思い立ったそうです。そこで作り方を調べて、カカオ豆と砂糖だけで手作りしてみたら、フルーティーなチョコが出来上がり、あまりの美味しさに感動! お友達のアドバイスやサポートもあり、2017年にチョコレート工房が立ち上がったそうです。
そんな藤野良品店の柳田さんに手作りチョコレートのことや、移住して暮らしている藤野地区の魅力的なコミュニティーについてうかがいます。
☆写真協力:藤野良品店

希少なタンザニア産のカカオ豆
●藤野良品店で製造・販売されている「里山クラフトチョコレート」を、私もいただきました。板チョコですけど、包装紙を開けると、ふわっとカカオのいい香りが漂い、味わうと爽やかな酸味も効いていて、とっても美味しかったです!
「ありがとうございます。そうなんです。砂糖とカカオ豆しか使っていないので、カカオ豆本来の味がそのまま出てくるんですね。本当にフルーツみたいな感じの味を感じていただけるようなチョコかなと思います」

●改めてなんですけど、この「里山クラフトチョコレート」のいちばんの特徴は、どんなところでしょうか?
「カカオ豆をタンザニアの生産者さんから直接購入して、日本に持ってきて、カカオ豆を焙煎するところから、すべての工程を自分たちでやっているというところかなと思います。で、顔の見える相手、すべて知っているかたから買わせていただいたりとか、相手とつながっている安心安全なチョコレートかなっていうのがひとつですね。
あとは、食べていただいたと思うんですけれども、カカオ豆本来の持っている酸味だったり、香りだったり、フルーティーさをそのまま感じることができる、混じりっけなしのチョコレートかなって思います」
●タンザニアから有機栽培のカカオ豆を輸入されていますが、タンザニアのカカオ豆は有名なんですか?
「実は希少な豆です。カカオ豆の産地で有名なのは、西アフリカにあるガーナとかコートジボワールで、だいたいその2か国で世界の生産量の3分の2ぐらいを占めています。タンザニア産のカカオ豆は、世界の生産量でいうとだいたい 0.1%ぐらいで、すごく少なくて、本当にレアな豆ですね。
カカオ豆っていろんな風味があるんですよ。ナッツみたいな風味だったりするものもあれば、ラズベリーのような風味、それからハーブのような風味だったり、ラムレーズンみたいな風味だったりと、生産地とか種類によって、カカオ豆の味が全然違うのがまたそれも面白いところですね。
私たちが使っているタンザニア産の有機栽培のカカオ豆は、ラズベリーのような風味の豆で、香りもすごくいいですし、味もよくて、油脂分もすごく多いので、カカオバターを追加する必要がない、すごく良質な豆ですね」
タンザニアのベンチャー「ココアカミリ」

※藤野良品店でチョコを製造・販売することになったのは、ご主人が仕事の関係で、タンザニアのカカオ豆の生産者に出会ったことがきっかけだったわけですが、現在、タンザニアのこんな会社からカカオ豆を買い付けているそうです。
「特に私たちが今、輸入させていただいている『ココアカミリ』は、すごく頑張っている会社です。タンザニアのカカオ豆は小規模な農家さんが作っている豆です。チョコレート用のカカオ豆を作るためには、発酵させて乾燥させる設備が必要なんですけど、それを小規模な農家さんが、高い価値のあるチョコレート用のカカオ豆を作って販売するってなかなか難しいんですね。
ココアカミリさんは、2000軒ぐらいある小さなカカオ農家さんから、生のカカオ豆を買ってきて、相場よりも高い値段で買い取って、それを大きな発酵装置の中で発酵させて乾燥させて、選別して輸出する一連のことをやるような会社なんですね。
その会社は、アメリカ人のシムランとブライアンっていうスタンフォード大学を卒業したふたりが立ち上げたベンチャーの会社で、現地でずっとスタッフさんたちと一緒に熱い思いを持ってやっていますね。
カカオ農家さんが自分たちで、いい苗木を入手して育てていくのは難しいので、優良の苗木を農家さんに提供したりとか・・・。
あと児童労働も絶対に認めないっていう方針を定めていて、もし児童労働が一回でも確認されたら、カカオ豆は取引しませんよとか、買取しませんよっていうようなことを決めたりとかしています。すごくしっかりとした会社で、しかも品質の高い、そして社会的な意義も高い会社なので、そこから私たちはカカオ豆を買わせていただいています」
(編集部注:現在、藤野良品店で販売しているチョコは「里山クラフトチョコレート」というネーミングの、いわゆる板チョコで、ラズベリーのような風味のプレーンと、自家製のゆずをトッピングしたチョコ、そして新作の、ローストしたカシューナッツが香るホワイトチョコの3種。

パッケージは、藤野地区に住むご友人のアーティストがタンザニアと藤野をイメージした自然や生き物を描いた1枚の絵になっています。この素敵なパッケージにもぜひご注目ください。お買い求めは以下から、どうぞ!)
☆藤野良品店オンラインショップ :https://fujinoryohin.handcrafted.jp
自然栽培の貴重なパイナップル
※藤野良品店では、ドライフルーツも販売されています。これもタンザニアから輸入しているんですよね?
「はい、そうです。夫が最初に手がけていたタンザニアの会社、そこの応援をしたいっていうのが藤野良品店のひとつの大きなミッションでもあったので、今もそれは続けています」
●フルーツも有機栽培ですよね?
「そうですね。有機栽培の有機認証は結構規定の難しさだったり、コストがかかってしまうので、 その認証は取れていないんですけれども、無農薬で育てられたフルーツを使っています。

種類はマンゴーとバナナ、パイナップルがあるんです。マンゴーは木を丸ごと1本買って、仕入れ担当者がその木に登って、収穫することもあったりするそうです。パイナップルもすごく貴重なパイナップルで、農薬はもちろん使ってないですけど、肥料も使ってない、自然栽培のパイナップルです。多分世の中にこういうパイナップルのドライフルーツは出回ってないんじゃないかなと思うんですけれど・・・。
私たちも家族でタンザニアの現地に行って、パイナップルの農場にも行ったことあるんですね。ドライフルーツの工場から車で片道5時間以上かけて行って、その車を置いて、今度は歩いて1時間。で、土壁の家が数軒並ぶような小さい村を過ぎて、そして小さな川にジャブジャブ入って2本渡って、そんなところにある山の中に農場はあります。
現地の人たちは、手作業でパイナップルをひとつずつ収穫して、かごに詰めて、そのかごを頭に乗せて歩いて、また川を渡って村を過ぎて、車まで運んで、また片道5時間かけて工場まで持っていくっていうことを、日々やっているんだなと思うと、本当にありがたいなと思いながら食べています」

毎日ワクワク! 藤野地区での暮らし
※柳田さんは、旧藤野町(きゅうふじのまち)、現在の相模原市緑区にお住まいですが、実は2015年にご家族で移住されたんです。移住しようと思ったのは、どうしてなんですか?
「もともと川崎市に住んでいたんですね。長女の小学校をどこにしようかなって考えていた時に、点数とかの相対評価するのではなくて、個性を重視した絶対評価をする教育を実践する学校で、自己肯定感とか生きる力を育むことができる学校に通わせられたらいいなって思いまして、そんな学校が日本にないかなと思って、北海道から京都のあたりまでずっと探しておりました。
その時に出会ったのが『シュタイナー教育』という100年以上前からドイツなど欧州を中心に広がっていった、日本でいうとアクティヴ・ラーニングとか探求型学習を実践している『シュタイナー学園』という学校があることに気づきまして、この学校いいなと思ったんですね。
一方、夫は昔から自然豊かな土地で地元の木材や、太陽光エネルギーとか自然エネルギーを活用した住宅に住みたいなっていう思いとか、家庭菜園や薪ストーブのあるような田舎暮らしをしたいなっていうことを希望していました。私の娘の教育と夫の田舎暮らしの両立ができるところ、そして今、夫の職場が都内なんですけれど、そこに通える範囲の場所はどこかなっていったところで、この旧藤野町を選んで移住しました」
●実際、藤野地区に住んでみて、いかがですか?
「すごく楽しい毎日を過ごしていますね。移住する前に想像していた以上の、いろんな楽しいことが起きていて、科学反応も起きていて、毎日いろんな人から刺激をもらいワクワクしっぱなしの楽しい地域ですね。
夫はもちろん楽しんでいまして、薪ストーブを毎日、今は寒い時期なので炊いたりとか、薪を作るための薪割りだったりとか、家庭菜園ももちろん楽しんでいますね。
あと、地域の方たちとつながって『ジビエの会』・・・、ジビエっていうのはこの辺だとイノシシやシカとかがすごく多くて、そういった獣たちが畑を荒らす、そういう課題がある地域でもあるんですけど、その課題を解決しながら、みんなで連携して美味しくジビエをいただこう! みたいな、そういう会が立ち上がっているんですね。そこの会に所属して罠猟(わなりょう)の免許を取ったりとかして、いろんなこと楽しんでいますね」

※実際に藤野地区に住んでみて、どうですか。柳田さんご自身に何か変化はありましたか?
「地域の人たちとつながることができたので、交流がたくさん増えて人脈も広がって、楽しいこともたくさんできるようになって、生活に潤いというか豊かさみたいなものが増えたなっていうのがひとつあるのと、子育てもすごく楽になったなと思います。
地域がすごくつながっているので、子供を育てる時にちょっと誰かいないかなと思った時に、すぐに誰かが子供を預かってくれたりもしますし、天災とかそういった非常事態が起きても、助け合ってなんとかなるだろうなみたいに思ったりとか、そういった精神的な安心感がやっぱり増えたなって思っています」
(編集部注:以前、この番組にご出演いただいた藤野電力の鈴木俊太郎(すずき・しゅんたろう)さん。鈴木さんはミニ太陽光発電システムを作る防災ワークショップなどを行なっているかたなんですが、柳田さんのお宅にある太陽光パネルは鈴木さんに設置してもらったそうです。薪ストーブのメンテナンスもやってもらっているそうで、柳田さん曰く、鈴木さんはなんでもできるすごい人だそうですよ)
子供たちの、より良い未来のために
※柳田さんは「森のイノベーションラボFUJINO(通称:森ラボ)」のスタッフとしても活動、さらにお子さんが通っている「シュタイナー学園」の広報担当でもいらっしゃいます。藤野良品店のお仕事も含め、活動の原動力はなんですか?
「すべての原動力は我が子が生きていく未来が、少しでもいい環境であってほしいという願いから来ていると思います。今の、争いがやまない世界情勢だったり、地球温暖化と海や空気の汚染、それから格差社会とか課題が山積みで、未来は大丈夫かな? って、私もすごく心配しているんですけれども、そういった課題が少しでも改善できるように、何か私にできることはないかということを日々考えて行動しています。
シュタイナー学園で働いているのは、教育はいい未来とか世界を作っていくのにとっても大事、根幹だと思っていて、みんなが自分で考えて正しく行動できるようになれば、世界や地球環境が良くなっていくのではないかなと思っているんですね。 シュタイナー教育はそんな人を育てることができる教育のひとつかなと思っているので、それを広める仕事をしたいと思って広報の仕事をしています 」
●では最後に今後やってみたいこと、または夢をぜひ教えてください。
「子供たちのいい未来につながる活動であれば、なんでもやってみたいなと思っています。 たとえばチョコレート作りのワークショップや、オンラインで現地の人とつながれるような交流会をしたり、タンザニアに行く現地ツアーみたいなのを企画して、多くのかたに世界に目を向けてもらえる機会作りなどができたらいいなと思っています。
あとはやっぱり環境になるべく負荷をかけない物づくりをしていきたいという思いがあるので、ちょっとお金がかかるかもしれないんですけれど、100%自然エネルギーで作るチョコレートも実現できたらいいなと思っています。
藤野に炭作りをしている『炭焼き部』っていう部活があるんですけれども、そこで作られた炭を使って焙煎をしているんですね。その後の工程は電気を使うんですけれども、その電気を使う工程を太陽光発電ですべてまかなえたら、100%自然エネルギーで作るチョコレートが実現できるので、それをやってみたいなと思っています」
INFORMATION
藤野良品店の里山クラフトチョコレートを、ぜひご賞味ください。タンザニアの生産者から直接取り寄せた有機カカオ豆を、藤野地区の木炭を使って焙煎。原料はカカオ豆と有機砂糖だけ。タンザニア産カカオ豆の特徴であるフルーティーな味わいにびっくりすると思います。
地元のアーティストが描いた素敵なパッケージにもご注目ください。ほかにも果実100%のタンザニア無添加ドライフルーツも販売しています。バレンタインデー向けの魅力的なギフトセットもありますよ。

藤野良品店のオンラインショップからお買い求めいただけます。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎藤野良品店 :https://www.fujinoryohinten.com
◎藤野良品店オンラインショップ :https://fujinoryohin.handcrafted.jp
2024/2/4 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然ガイドの「くますけ」さんです。
富士山麓にある自然学校の草分け「ホールアース自然学校」でガイドとしてのスキルを磨いた「くますけ」さんは、現在はフリーの自然ガイドとして活躍されています。そして先頃『エナガの重さはワンコイン〜身近な鳥の魅力発見事典』という本を出されました。
きょうはそんな「くますけ」さんに子供たち向けのガイドツアーで心がけていることや、ビギナー向け! 野鳥観察のノウハウ、そして鳥の面白い生態についてうかがいます。
☆写真&絵:くますけ

運命を変えた本『自然語で話そう』
※本名「くまつしんすけ」さんは、筑波山を眺めながら育った、自然遊びが大好きな少年だったそうです。20代最後の挑戦で、環境コンサルタントから「ホールアース自然学校」に転職し、1年間は研修生として、樹海を歩いたり、洞窟を探検するなど、ガイドの基本を徹底的に学んだそうです。その後、柏崎・夢の森公園での勤務を経て、独立。自然ガイド歴は15年ほど。
●大学生の時に、語学の勉強を理由にカナダに留学したそうですね。留学中の体験で、特に印象に残っていることはありますか?
「それこそ、カナダにスノーボードをしに行ったのに雪が降らなかったんですよ、その年、記録的な暖冬の年で・・・。そこで初めて地球温暖化とか気候変動っていうのを目の当たりにしたっていうか、やっと自分ごとになったみたいな感じがあって・・・。帰ってきてからは、それまではIT系の仕事とかしていたんですけれども、やっぱり環境だと思い始めて、そこから環境コンサルタントの仕事をするようになりましたね」
●環境コンサルタントとして気候変動問題に携わったと、ホームページにも書いてありましたけど、具体的にはどんなことをされていたんですか?
「排出量取引っていうのがあって、発生する二酸化炭素だとか温室効果ガスにお金の価値をつけて取引することで、地球全体でその発生量を抑えていこうっていう仕組みなんですけど、それの(二酸化炭素を)どれほど排出しているかを、日々ずっとパソコンを見ながら計算して、Excelとの闘いみたいなことをずっとやっていました。一日10時間以上、パソコンに向かっていたんじゃないかなと思います」
●そうなんですね。その後、富士山麓の富士宮にある「ホールアース自然学校」に転職されたということなんですよね?
「環境コンサルタント(の仕事)もすごく楽しかったんですね。直接、温室効果ガスを減らしているっていう実感もあったし、面白味があったけど・・・。
でも、環境問題を解決するには3つの方策が必要だと言われていて、ひとつが『法整備』、もうひとつが『技術革新』、そしてもうひとつが『教育』なんですね。環境コンサルの時は法整備と技術革新については、かなりできている実感があって、貢献できているっていう実感もあったんですけど、どうしても教育のところは携われなくて・・・。
でも、この教育がないと法整備とか技術革新も進んでいかないっていう、もどかしさをずっと感じていた時に広瀬敏道(ひろせとしみち)さんの『自然語で話そう』っていう本をうっかり見つけちゃったんですよ」
●その広瀬敏道さんは、ホールアース自然学校の創設者のかたですよね。この番組を長くやっているスタッフも「広瀬さんから番組自体もすごく影響を受けたんだよ」っていう話を聞いたんですが、すごいかたなんですね?
「そうですね。あの時代にそういった自然学校を作り上げたっていうパワーもそうですし、彼自身が紡いでいく言葉もすごく魅力的で、僕もその本を読んで、その日の夜は眠れないぐらい興奮しちゃって、あ〜日本にこんなことをやっている人がいるんだ、と思った記憶があります」
(編集部注:広瀬敏通さんの本『自然語で話そう〜ホールアース自然学校の12カ月』は1999年に小学館から出版)
雨の森の忘れられないシーン
※くますけさんは、幼児向けのガイド・ツアーがお得意ということで、保育園や保育士さんと連携して、近くの森でガイドすることが多いそうですね。特に子供たち向けのガイドで大切にしていることはありますか?

「それぐらいの子供たちなので、物の名前を覚えるとか、そういうところではなくて、もっと五感で触ってみるとか嗅いでみるとか、ちょっと味関係はいろいろ難しいのでやらないですけど、とにかく自分自身の体で感じてもらうことを大切にしていますね。
今はゲームとかがあって、(子どもたちは)詳しいんですよ。虫の名前だとかは詳しいんだけれども、本物を見ていない子はたくさんいるので、実際に本物を見てもらって触ってもらうとか・・・。トンボにしたってバタバタ動く感じとかを感じてもらうことのほうが、名前を知ることよりも、特にこの年齢は大切だと思うので、体験してもらう触ってもらう・・・で、いかに自然に触らせるか、みたいなところに工夫をしていますね」
●みんな、目をキラキラさせているんじゃないですか?
「そうですね。やっぱり(生き物が)好きな子たちは(目を)キラキラさせて楽しむし、怖がる子もたくさんいるから、その怖がっている子をいかにして、触りなさい! とかじゃなくて、自然に触っちゃうみたいな場作りっていうんですか、そういったところに気を付けていますね」
●子供たちの反応で、特に印象に残っていることはありますか?
「印象に残っているのは・・・僕は雨の森が大好きなんですけど、体験会が雨の日に重なるってなかなかなくて、あったとしても台風とかで逆に中止になっちゃう。だから、雨の日にみんなで一緒に森に行くタイミングって、年に一回あるかないかなんですけど・・・。
その時はカッパをかぶって、みんなで森に行って、葉っぱから水が滴ってくるところがあって、その下にカッパを着た子が行くと、シャワーみたいにザバザバザバ〜パタパタって音が出る、そのシャワーを楽しんでいる子の姿が、これだよな〜! とか思って・・・。
なんとも説明はできないんですけど、水が滴っているのを楽しんでいるのが見てわかる。この経験を積むと、彼は大きくなった時に自然のことがきっと好きだろうし、自然がどういうものかはもう体感でわかっているだろうから、これを守らなきゃいけないっていう時に、きっと心の底から大切にしたいっていう気持ちがわいてくるだろうなと思って、あの時の雨の森の、あの子の顔は忘れられないシーンだなと思います」
●やっぱり小さい頃に経験しておくのは、すごく大事ですよね。
「そう思います」
エナガは500円玉!?
※この本『エナガの重さはワンコイン〜身近な鳥の魅力発見事典』を出すにあたって、コンセプトというか、どんなところにポイントをおいて書いたんですか?
「とにかく野鳥の初心者のかた、これから知りたいな、気になっているけど、名前がわかんないなっていう人は、たぶん多いと思うんですね。そういった人たちに、初めから図鑑は結構ハードルが高いかなと思ったので、図鑑の一歩手前になるような、その入り口になるようなものになればいいなと思って作りました」
●このイラストは、全部くますけさんが描かれているんですよね?
「そうなんですよ、はい」
●とってもお上手ですね。
「ありがとうございます」
●絵を描き始めたのは2021年と本に書かれていましたが、最近というか、まだ3年ぐらいなんですね?
「そうなんですよ」
●この絵のクオリティ、すごいです!
「コロナになって家から出られなくなって、あまりにも暇すぎて、絵を描き始めたっていうのが本当の始めのきっかけで・・・」
●どなたかに教えてもらったりとかしたんですか?
「やっぱりコロナ禍なんで・・・誰かに教わるってことはできなかったから、基本はYouTubeですね。イラストの人たちがいるから、その人の(動画を)見たりとか、オンラインで学べるやつがあるんですけど、あれを見たりとかして、絵の基本みたいなのを勉強しましたけど、基本はオンラインで、自分で描いていたっていう感じですね」
●絵を描くようになって、気づいたことはあります?
「いっぱいあります。このエナガもそうですけど、普段から見ているし、よく知っている鳥だと思っていたんですけど、よく見たら、まつ毛があるんですよ、この鳥! 黄色いまつ毛があって、それは絵を描くまで気づかなくって、書き始めて、目はどうなってんのかなと思って、手元にあった写真をアップにしたら、まつ毛がある! って(笑)。それは絵を描かなきゃ気づかなかったところですね」
●じっくり観察するってことですよね! この本のタイトルに「エナガの重さはワンコイン」とありますけれども、鳥の体重について触れている解説もあって、すごく面白いなと思ったんです。そこに何か狙いがあるんですか?
「野鳥は基本的に持つことできない、獲ることは禁止されています。でも生き物だから、必ず重さってあるはずなんですよね。その重さを感じることで、より身近に感じたり、より愛おしく思えたりとかすると思うので、なんとかして感じてもらいたいなと思って・・・。
意外と僕らもフィールドでガイドツアーの時には、例えば、7グラムの鳥がいたら、1円玉を7枚束ねておいて、あの鳥はこれぐらいの重さなんだよ! って言って、渡したりとかするんですけど、1円玉だとちょっと芸がないなと思って、いろんなものに例えたら何になるんだろうっていうのを調べてみたら、エナガは500円玉だし、スズメは単三乾電池だしっていうのがわかってきて、これをきっかけに自分で調べてみたら、そんな例え方ができたんです」

ホオジロ、独身のオスは必死!?
●では、本に掲載されている鳥の中からいくつかピックアップさせていただきたいと思います。まず気になったのが「さえずり方で独身とわかってしまうホオジロ」ということで、これはどういうことですか?
「ホオジロっていうスズメに似た、でもスズメよりちょっと大きめの鳥がいます。結構その辺の公園だとか庭にいたりするんですけれども、独身の子はやっぱり頑張んなきゃいけないんで・・・さえずりって、そもそもラヴソング、お嫁さん探しのために歌っているものなので、必死なんですよね。
で、その必死さのあまりどんどん顔が上向きになっていき、叫ぶような感じでやっているんですけど、お嫁さんをもらった既婚者は余裕なんですかね〜。
さえずりにはふたつ意味があって、お嫁さん探しと、自分の縄張りだよっていうのを周りに伝えるためにやっているんです。既婚者はお嫁さん探しじゃなくて、縄張りだよっていうのを伝えるだけでいいから、結構正面を向いて、ひょろろろろ〜って鳴いているだけみたいな・・・」

●真上は向いていないんですね?
「そこまで向いていないです。如実にわかります」
●アピールしているんだな、独身なんだなっていうのは、真上を向いているかどうかでわかるんですか?
「鳴き方でわかってしまいます」
●面白いですね~。レパートリーも豊富なんですよね?
「そうですね」
●あと、よく食べると黄色が鮮やかになる「キビタキ」ということで、これはどういう鳥なんでしょうか?
「夏に日本にやってくる鳥なんですけど、お腹のところが真っ黄色で、本当に健康な男子は、なんだろう・・・ちょっと高級な卵の黄身はすごく黄色じゃないですか、オレンジがかった黄色・・・。それぐらい黄色い子がいて、やっぱり健康でいいもの食べているとか、自分でいい縄張りを持っていて、そこにたくさん餌があるやつらは黄色が濃くなっていくんです。ちょっと弱くて、そんないい縄張りが確保できなくて、餌も乏しいのは黄色味がくすんでいくんですよね」
●良質な餌が豊富にあるんだろうなっていうのが・・・
「お腹の黄色み具合でわかるんです」

カモはお尻に注目!?
※これから春にかけて、街中や公園などで観察しやすいおすすめの鳥はいますか?
「おすすめは・・・さっき(幕張公園内を)歩いてみたんですけど、この時期であれば、カモ! 特に体も大きいので肉眼でも観察しやすいですね。
すぐそこの池にいたのが、マガモっていう鳥で、冬にしか日本にはいなくて・・・。5月頃に親子連れで並んで、横断歩道を渡っていたりするのは、カルガモと言ってまた別の種類です。マガモは、おすすめはお尻を見てもらうと、くるんとカールした羽根があって、2本、寝ぐせみたいについているんですけど、それをぜひチェックしてもらいたいですね。カモを見たら、ぜひお尻をチェックして、丸まった寝ぐせを見つけてみてください」
●肉眼でも見えますか?
「見えます。特に都会のカモたちは人間慣れしているので見やすいと思います」
●野鳥観察の初心者に向けて、なにか見つけるコツはありますか?
「やっぱり近所とか公園とか、そういったところから始めるのが楽ちんでいいと思いますね」
●双眼鏡は持っていたほうがいいですか?
「はい、双眼鏡があると断然楽しくなりますけど、買おうと思うと結構コストもかかってくるんですね。今はフェスとか行く人も多いから、フェス用と兼用で(笑)鳥用の双眼鏡を買ってもいいかもしれないですけどね」
●見つけた鳥が何の鳥かってわからないじゃないですか。そういうのはどうやって調べたらいいんですか?
「写真が撮れたらGoogleで画像検索とかやると、かなり精度よく教えてくれますね。例えば、ハトとかカモとか、動きの鈍いやつだったら、スマホのカメラで撮れると思うので、撮ってみると名前がわかるかなと思います。
すばしっこいやつら、小っちゃいやつらはなかなか難しいと思うので、特徴を覚えておいて、何色とか羽根の色は黒とかオレンジとか、そういった特徴を覚えておいて、それもGoogle検索ですね。”ちっちゃい鳥 、オレンジ”とかやると、案外画像が出てきて、あっ、これこれこれ! みたいなのが見つかると思います」
●改めてガイドをするときに、いちばん大事にされていることはなんでしょうか?
「僕の場合は研究者ではなくて、自然と親しむ人をどれだけ増やせるかってところに重きを置いています。名前を覚えるとか詳しく調べるっていうよりかは、もっと楽しんで観察していきたいなと思っているんですね。
あと、なんでこの鳥がここにいるんだろうとか、その生き物の暮らしぶりだとか、生き方みたいなところにフォーカスして、こんな素晴らしい生き物が、ご近所にいたんだね、みたいなところで、豊かな自然の中で暮らせて幸せだなみたいに思ってもらえるような人を、ひとりでも増やしていきたいなと思って活動しています」
INFORMATION
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2024/1/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ハーブ研究家、そして日本メディカルハーブ協会のハーバルセラピスト「諏訪晴美(すわ・はるみ)」さんです。
東京・渋谷生まれの諏訪さんは、広告代理店そして出版社に勤務していた頃、多忙を極め、あまり健康的ではない生活を送っていたそうです。そして20年ほど前に食生活にハーブを取り入れるようになって、体調がどんどんよくなっていったそうです。そんなハーブの魅力を伝える仕事がしたいと思い、2007年に独立。その後「ハーブと私」を設立。ハーブ料理のレシピ開発や講座なども開催し、ハーブの魅力を伝えるために幅広い活動をされています。そして先頃『ハーブの癒し』という本を出されました。
きょうはそんな諏訪さんに「ハーブのある暮らし」をテーマに、この時期に飲みたいハーブティーや、ハーブを使ったおすすめレシピ、そして、ベランダでも育つお手軽ハーブのお話などうかがいます。
☆写真協力:ハーブと私

ハーブの力を人間に
※ハーブの勉強はどうやってされたんですか?
「最初は独学で、いろいろ(ハーブを)使っていたんですけど、やっぱりちゃんとした知識を学びたいと思って『日本メディカルハーブ協会』のメディカルハーブ検定っていうのがあって、最初それを勉強して、そこから検定とか資格とかを取っていくようになりました」
●スクールに通ったりとかされたんですか?
「そうですね。私は『生活の木』っていうハーブショップがやっているスクールに行ったんですね。日本メディカルハーブ協会が提携しているスクールのひとつで、面白かったです。なぜハーブが体にいいのか、植物が植物自身のために持っている力を人間が利用させてもらっているっていうことが、勉強していくとだんだんわかって、だからいいんだっていうのが納得できて、すごく面白かったです」
●ひとくちにハーブと言っても、選び方とか使い方に注意しなければいけないことがありますよね。具体的な例で何かございますか? 使い方によっては健康を害したりとか、個人差もありますよね?
「まず植物なので、例えばスギ花粉症の人ってスギ科のアレルギーだったりすると思うんですけど、ハーブも例えばキク科の植物とか、いろいろあるので、そのアレルギーを持っている人はまず控えたほうがいいっていうことと、それから書店で売っているいろんなハーブの辞典を見ると、例えば妊娠中の人は控えたほうがいいもの、授乳中の人が控えたほうがいいものとかが載っています。
それから薬の相互作用、飲み合わせですね。この薬を飲む時にはこのハーブは一緒に飲まないほうがいいですよっていうのが、ハーブの辞典にも書いてあります。見落としてしまう人いるかもしれないんですが、実は医薬品のほうにも必ず明記されているので、そのあたりをちゃんとチェックしていただければと思いますね」
(編集部注:諏訪さんの本『ハーブの癒し』にも、ハーブそれぞれの説明のところに、使用を控えたい人という注意事項などがあったりします。ぜひ参考にしてください)

喉のケアにはマロウブルー
●実は私もハーブに興味があって数年前に「ハーブティー・ソムリエ」っていう資格を取ったんですけど、きょうのテーマ「ハーブのある暮らし」はビギナーのかたがたには、ハーブティーから入るのもいいのかなって思ったんですけど、どうですか?
「いいと思います。ハーブティーはすごく手軽で誰でも作りやすいですし・・・。あとはお料理、ハーブティーのハーブショップに行かれたことがある人は多分ハーブティーが作りやすいかなと思うんですけど、お料理に使うハーブは、実はスーパーに普通に売っているので、お料理のほうが入りやすいかたと多分、両方いらっしゃるかなって思います」
●例えば、寒くて乾燥するこの時期におすすめのハーブティーって何かありますか?
「体が温まるハーブがたくさんあるんですけれども、私が好きなのはローズマリーですね。おうちでハーブを育てたことある人の中では、多分ローズマリーがいちばん多いのかなって思うんですけど、枝を5センチぐらい切って、冬だったら例えば柑橘系のものがたくさんあると思うので、柚子の皮とかレモンの輪切りでもいいですし、ミカンの皮とかを一緒に入れて、熱湯を注ぐだけでも美味しいハーブティーになります」
●想像しただけで、いい香りがしそうですね!
「ちょっと生姜のスライスとかも入れると、さらにポカポカしてきますね」
●温まりそうですね〜。
「温まりますね」

●花粉症のかたにおすすめのハーブティーってありますか? そろそろスギ花粉が気になる季節になってきましたけど・・・。
「花粉症は、もうなってしまった時は、例えばペパーミントみたいにスッとするものだと鼻が楽になるとか・・・。あとエルダーフラワーっていうハーブがあるんですけど、ちょっと症状を緩和するのにおすすめのハーブだったりするので、混ぜて使ってもいいです。
あとは、ハーブを勉強されているかたがよく使われるネトルっていうハーブもあるんですけど、本当はネトルは花粉症が始まる3か月ぐらい前から使うといいんですけどね。ちょっと間に合わないかもしれないんですが、徐々にやって・・・1年中使っていてもいいハーブなので、来年のためにも(笑)」
●予防のためにも。
「そうですね。使えるといいかなと」
●それらのハーブは、すべてハーブのショップで手に入りますか?
「そうですね。ハーブショップであれば、どこでも手に入るハーブです」
●私は声を出す仕事なので喉の状態もすごく気になるんですけど、喉のケアにいいハーブはありますか?
「マロウブルーって聞いたことあります? ウスベニアオイとも呼ばれるマロウブルーは、粘液質を持っていて喉の粘膜の保護になるのでおすすめですね。あまり味があるハーブじゃないので、自分の好きなハーブティーにちょっと混ぜて使ってもいいかなと思います」
●ブレンドするっていうことですね。見た目もすごく綺麗な青ですよね。
「そうですね」
●なるほど! 使い方としてはハーブティーとして、ですね。
「はい、喉のケアの場合はハーブティーがいいですね。水筒で、できればちょっとずつ飲むのがいいかなと・・・」
●持ち歩くっていうのもいいですね。
「あとは、例えばカモミールとか一緒にブレンドすると、ケアにとてもいいかなと思います」
●ブレンドする時、割合はどのようにしたらいいんですか?
「カモミールとマローブルーだったら、1対1とかでもいいかなと思います」
●やってみます。ありがとうございます!
(編集部注:先ほど、諏訪さんからもお話がありましたが、ハーブは体質や薬との飲み合わせによっては、影響が出てきたりすることもありますので、ハーブ辞典などを参考に体調に合わせて、安全に使っていただければと思います)
美味しい香りのローズマリー・チキン
※キッチンに備えておきたいハーブは、どんなものがおすすめですか?
「ローズマリーとそれからタイム。タイムを買うかたは普通のタイムなんですけど、育てるかたはレモンタイムっていう種類があって、それがすごく香りがいいので、育てやすくておすすめです。それからオレガノ、ローリエ、あとはイタリアンパセリ、この5つぐらいがあるといろいろ使い回せるかなって思います」
●どんなお料理にそれぞれ合わせるのがいいですか?
「お肉の下味とかお魚も漬け焼きにしておくのもいいですし、スープ、ハーブで出汁をとって、ブーケガルニって聞いたことがあるかたもいるかもしれないんですが、ハーブを束ねてポトフとかカレーとか作る時に一緒に煮出したりしても美味しいです」

●見た目もお洒落ですしね。いいですよね〜。諏訪さんの新しい本『ハーブの癒し』にはレシピもいろいろと載っていましたけれども、私が気になったのがやはり”食欲をそそるローズマリー”ということで、「美味しい香りのローズマリー・チキン」が写真付きで載っていて、これは絶対美味しいやつだ! って思いました!
「すごく簡単に作れます」
●これはどうやって作るんですか ?
「お肉にいつも通常通り、塩コショウして、ローズマリーだけでもいいですし、あとタイムとか一緒に寝かしてもいいんですけど、そこに例えばニンニクのスライスとか・・・。あとオリーブオイルで全体を馴染ませて、ジップロックとかに入れておいてもいいですね。
バットとかにとっておいて冷蔵庫で寝かして、本当はできたら買ってきてすぐやって、食べる日に取り出して焼くっていうのがいいかなと思います」
●放置しておけばいいって感じですね。楽ちんですよね〜。
「そうなんですよ。前の晩でもいいですし、時間がない時はすぐ焼いちゃっても香りは移るので・・・」
●パーティー・メニューにも使えそうですね。
「いいですよ! 私、バーベキューとかに持っていくの。お肉をつけてそのまま冷凍庫に、ジップロックに入れて冷凍して、凍ったままバーベキューに持っていくんですよ。(着く頃に)いい感じになっています」
●いいですね! ローズマリーがあるとないのでは全然違いますよね。
「そうなんですよね〜。子供たちにも大人気のメニューです」
お粥の出汁にハーブティー!?

※諏訪さんの本『ハーブの癒し』を見ていて、ほかにも特に気になったのが、ハーブティーの出汁で作るお粥なんですけど、ハーブティーを出汁にするんですね?
「これは私が考えた方法なんです。いろんなハーブで出汁を作ることができて、お粥とかお味噌汁とか、あとお茶漬けとかにしてもいいんですね。
この本には、風邪の予防にもなるようなレシピを載せたんですけど、エキナセアっていうメディカルハーブ、(ハーブを)ちょっと勉強したかたなら誰でも知っている、風邪の時に飲むハーブティーです。免疫力を高めたい時に使うハーブなんですけど、私はエキナセアにカレンデュラ、キク科のハーブなんですが、菊の花みたいな黄色い花びらを入れるんですね。抗菌とかにいいと言われているハーブです。
そのふたつを合わせると香りも良くなりますし、そこに鰹節の出汁を一緒にするんですね。これがすごく美味しくて・・・実はエキナセアってちょっと草っぽい香りっていうか味がするので、万人受けするハーブティーじゃないなとは思っています。
私は高校でも週に1回ハーブの授業を行なっているんですけども、熱いハーブティーはそんなに高校生に人気じゃないんですね。エキナセアもそんなに美味しいとは言わないんですが、ここに鰹節を入れて飲んでもらったら、全員美味しいって言ってくれて・・・」
●ハーブティーと鰹節って、なんか合いそうじゃない気がしますが、合うんですね?
「合うもの合わないものはあるんですけど(笑)。子供が風邪を引いた時とか、まだ小学生なんですけど、普通のお粥より食べやすいって言っていて、体にスーって入っていく感じがするんです」
●香りもいいですよね〜。
「そうなんですよね。なので、子供が風邪を引いた時にこのお粥を作ってあげるとすごく喜びますね。あとは消化にいい白いお野菜、カブとか大根とか、胃腸にいいものを一緒に入れて作るレシピになります」
(編集部注:ハーブティーをお粥の出汁にするというのはびっくりしましたが、鰹節を加えたりすると食べやすくなるということで、まさに和と洋のコラボレシピなんですね。
ハーブと聞くと、海外のものというイメージがあると思いますが、考えてみたら、日本人と、薬味や薬草は古くから深い関係があって、食卓を見ても、シソや山椒、柚子などがありますよね。まさに暮らしの中の、日本のハーブですね)
アロマでリラックス。濃度に注意!
※ハーブをアロマとして楽しんでいるかたも多いと思います。おすすめのアロマはありますか?
「アロマってなんなの? っていうかたも多いかなと思うんですね。植物の、ハーブティーにする成分は主に水溶性の成分がなんですけども、ハーブには脂溶性の成分もあって、それをぎゅーっと濃縮したものがアロマオイルとして売られているんですね。アロマオイルは香りの成分だったりとか、あとは虫よけに使われたりしますよね。あれは植物が虫の害に遭いづらくするための、忌避効果が強い成分を使っていたりします。
アロマオイルは気持ちを穏やかにしたり、虫よけだったり抗菌だったりっていうのがありますが、例えば小さなボールに熱湯を入れて、そこにアロマオイルを2〜3滴加えてお部屋に置いておいたりすると、お部屋全体が優しく香ってきてリラックスする時にもいいかなと思います。一般的には、ラベンダーとかがすごく人気かなって思うんですけどね 」
●いいですね。手軽にできますしね。
「そうですね。あとはローズゼラニウムも結構人気かなと思います」
●ローズゼラニウム? バラの香りがしますか?
「バラの香りに似ていますね。私は個人的に好きなのはジャスミンとかイランイラン、ああいうのが結構好きですね」
●どんな香りがしますか?
「なんかちょっと南国の香りなんですけど・・・。私は父がずっとインドネシアに住んでいて、懐かしい香りがするなと思って・・・日本ではなかなか育てられない植物なのでアロマでしか嗅げないんですけど、使ったりしています」
●アロマオイルを購入するときに、何か気をつけることとか、注意点ってありますか?
「ちゃんとしたアロマショップで売っているものであれば、大丈夫だと思うんですけど、時々ちょっと安めの、雑貨屋さんとかで売っているのは、芳香浴には大丈夫かもしれないんですが、肌につけたりとか入浴とかに使うのは、やめたほうがいいかなというのはあります。
あとは使う時の注意点としては濃度ですね。たくさん入れるといい香りがするんじゃないかなと思って、つい多めに入れちゃったりとかっていうのがすごくよくなくて、それぞれの適した濃度って、本だったりとかにいろいろ書いてあると思うんですが、それをしっかり守って使うことがとっても大事です」
ベランダのハーブを摘んでお料理に

※諏訪さんは、ご自宅でハーブを育てているそうですね。何種類くらい育てているんですか?
「あまり数えてないんですけど、20〜30種類は育てているかなと思います」
●すごいですね〜。普通のマンションのベランダとかでも育てられますか?
「渋谷区に住んでいてベランダがメインで育てているので、プランターで・・・」
●プランターで?
「はい、育てています。キッチンが2階にあるので、ちょうどベランダも2階にあって、お料理しながら摘みに行けるのがすごく使いやすくて・・・。(お料理の)途中で摘みに行く・・・だから塩コショウを取る感覚で摘みに行けるっていうのにしたくて、そうしているんですけど、プランターでいろんな種類を育てることができます」
●初心者にも育てやすくて、使いやすいハーブがあれば、教えていただきたいんですけど・・・。
「初心者は一年草のものが割と育てやすいので、イタリアンパセリとか・・・イタリアンパセリは、ごめんなさい二年草ですね。まあでも割と早く育つもの・・・チャービルとかお料理の飾りにも使えるので使いやすいかなと思います。
あと、樹木にはなるんですけど、ローズマリーとか、あと、そうですね・・・タイム、タイムも結構丈夫なので育てやすいかなと思いますね。そうだ! もうひとつおすすめのハーブ、育てやすいのがあって、さっき出てきたローズゼラニウムって緑色の手のひらみたいな葉っぱの形のハーブなんですけど、水やりが本当にいらなくて、これはすごく育てやすくて、いいですよ」
●楽ですね!
「楽です。そうそう!」
●ではこの放送を聞いて、私もハーブのある暮らしを送りたい! と思ったリスナーさんにぜひアドバイスをお願いします。
「はい、『ハーブのある暮らし』って本当に簡単に始められるんですよね。(ハーブを)育てたいって思ったら、最初に5種も6種類も育てないで、まずは ひとつ、ふたつ、3つぐらいでいいと思います。ローズマリーひとつでも使い方がたくさんあるので、それを楽しんでやると、ハーブのある暮らしに自然に入っていけるかなと思います。
あと、お子さんがいるかたとかも、うちの子も一緒にハーブを摘んできて、お風呂に入れたりとかっていうのをやったり、お料理に散らしたりとかして楽しんでるので、そういうのも(お子さんと)一緒にやると楽しいかなって思います」
INFORMATION
諏訪さんの新しい本では、衣食住にまつわるハーブのたくさんの使いかたを紹介。朝昼晩、春夏秋冬、それぞれのシーンにあわせた活用術がわかりやすく載っています。ハーブ選びや使いかたの注意も掲載。また、知って楽しむハーブとアロマ、全54種が繊細で美しい植物画とともに紹介されています。
翔泳社(しょうえいしゃ)の「暮らしの図鑑」シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎翔泳社 :https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798178080
諏訪さんは、代々木上原のサロン「ハーブと私」で「ハーブクッキングレッスン」を3月から7月まで月一回開催する予定です。コース料理のようなメニューを考えているそうですよ。ほかにも植物画の教室などもあります。参加方法など、詳しくはオフィシャルサイトを見てください。
2024/1/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第18弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「住み続けられるまちづくりを」「質の高い教育をみんなに」「貧困をなくそう」そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
今回は業態の異なる、ふたつの会社の取り組みをクローズアップ! 前半はウエブメディアを運営するメディア・カンパニー「ハーチ株式会社」。そして後半は、アップサイクル・ブランドを展開する「ココロインターナショナル株式会社」の、それぞれの事業について、ご担当のかたにお話をうかがいながら、社会や環境に対する思いに迫ります。

まず、お話をうかがうのは、メディア・カンパニー「ハーチ」の「室井梨那(むろい・りな)」さんです。
2015年、創業の「ハーチ」はウエブメディア事業を展開している会社で、スローガンは「パブリッシング・ア・ベター・フューチャー」=「よりよい未来をみんなに届ける」、ということで、サステナビリティ、サーキュラー・エコノミー、教育など幅広い分野でウエブメディアを企画・運営しています。
社名の「ハーチ」は、「ハート」と「アーチ」を組み合わせた造語で、人の心と心をつなぐ 架け橋になりたいという思いが込められているそうです。
☆写真協力:ハーチ株式会社

サステナブルでユニーク!?
●「ハーチ」が運営しているウエブメディアの中から、まずは「IDEAS FOR GOOD」について。これはどんなコンセプトのメディアなんでしょうか?
「コンセプトとしては、社会をもっとよりよくするっていうのが、テーマになっています。例えば、気候変動ですとか海洋プラスチックの問題みたいな、総称して社会課題と呼ばれるようなものを解決するための、ユニークなアイデアを紹介するウエブマガジンになっています」
●拝見させていただいたんですけれども、アートとかファッションとかフード、建築とか、いろんなジャンルに分かれているんですね。具体的にどんな記事があるのか教えていただけますか?
「私たちは、ユニークに解決するアイデアっていうところをすごく大事にしているんですね。例えば、先ほど海洋プラスチックの問題に触れたんですけど、河川の汚れをきれいにしたいってなった時に、ただゴミを拾いましょう、ではなくて、オンラインゲームの仕組みと合わせて、遠隔で河川の汚れを掃除できるロボットをゲーム感覚で操作して、川をきれいにできるシステムとか。
使い捨てのビニール袋が有料になって、マイバッグを持ちましょうねって世界的になっていると思うんですけど、それもあえてお店で配るビニール袋をすごくダサいデザインにして、そうしたらみんな持ちたくないから、自分の家からかっこいい好きなマイバッグを持ってくるようになるんですよねっていう、ちょっとデザインと掛け合わせているとか、そういう形でワクワクだったりとか、楽しいって気持ちになるようなアイデアをいろいろ紹介しています」
●では、続いて「Livhub(リブハブ)」というものもありました。こちらもウエブマガジンですか?
「はい、“サステナブルな旅”をテーマに情報発信していて、“トラベル・ライフスタイル・マガジン”と呼んでいるんです。どうしたら自分の旅が、よりサステナブルになるかとか、あとそもそもサステナブルな旅ってなんだろう、みたいなものを問いかけて一緒に考えていくような、そういうメディアになっています」
●旅情報を発信するウエブマガジンっていうことになるんでしょうか?
「そうですね。大きく言うと旅情報の発信にはなるんですけれど、Livhubの編集部員は旅を通して、人と自然の関係とか、人同士の関係とか、自分と自分自身との関係、そういったいろんなものとの関係が、バラバラになってしまっているものがつなぎ直される、そういう力が旅にはあると信じて、ウエブメディアを運営しているメンバーなので、世界がよりそういう方向に向かっていくために、旅は何ができるかっていう、そういうことを発信しています」
●具体的にはどのような記事があるんですか?
「いちばんわかりやすいところで言うと、例えばホテルで、コンポストを導入しているホテルはこんなところがありますよっていう紹介とか、サステナブルに旅するためにどうしたらCO2をより少なくできるかとか、そういう具体的な方法を説明している記事もあります。
あと文化的なところに触れて、編集部員が世界各地を旅して、感じたこと、触れたことをコラム的にご紹介しているものとか、あとはサステナブルな活動をしている、例えばホテルとか、実際にサステナブル・トラベルを自分で体現しているかたに取材をして、インタビュー記事を載せたりとかもしています」
(編集部注:紹介する情報は、世界各地にいるスタッフが集めて、それを日本語に翻訳して発信しているそうです)
Circular Yokohama〜横浜を循環型に
※続いて、「Circular Yokohama」について教えてください。
「これは“サーキュラー”と“横浜”、ふたつの言葉がついている通りなんです。サーキュラーは日本語で言うと循環ですね。横浜は神奈川県横浜市の横浜で、横浜という町をより循環型にしていくためのプラットフォームになっています」
●室井さんはこの「Circular Yokohama」を担当されていらっしゃるんですよね。どんなプラットフォームなんですか?
「プラットホームっていうと、結構わかりづらいなと思っているんですけど、テーマが『プレイフル・サーキュラリティ、循環を遊ぼう』っていうふうに言っています。サーキュラーとか循環、最近だとサーキュラー・エコノミー、循環経済とかってニュースでよく聞くと思うんですね。
エコノミーって言葉を聞いた時に、みなさん何を思い浮かべますか? って言うと、どうしても固いイメージとかで、自分の生活に結びついている感覚があるかたは少ないと思うんですね。でも、循環とかサーキュラーって、本当はもっと楽しくかっこよく体験できるものなんだよ! っていうのを訴求したくて、このプラットホームを運営しています」

●どんなことに取り組んでいらっしゃるんですか?
「ウエブの会社なので、ウエブメディアは作っていて、先ほどご紹介したようなほかのメディアと同じように、インタビュー記事とか横浜市内のサーキュラーな情報発信ももちろんしているんですけど、会社の中ですごくユニークなのが、Circular Yokohamaは実際に活動拠点を横浜市内に持っているんですね。
なのでウエブ、いわゆるインターネット上の活動だけじゃなくて、実際に市民のかたがたにサーキュラーなものを見ていただいたり、触れていただいたり、そういう展示会をやったりとか、あとはものづくりするイベントを開催したりとか、顔の見える関係性を保って活動しています」
(編集部注:「Circular Yokohama」では「めぐる星天(ほしてん)」というイベントで、新しく英会話カフェが始まったそうです。興味のあるかたはぜひ、ハーチのサイトをご覧ください。https://circular.yokohama/2023/12/11/englishcafe_circularoctober/)
3つのP〜 PEOPLE. PLANET. PROSPERITY
※「ハーチ」はメディア・カンパニーとして大切にしているテーマがあるそうですね。
「私たち3つのPを大事にしています。それが「PEOPLE(ピープル)PLANET(プラネット)PROSPERITY(プロスペリティ)」の3つですね。日本語で言うと、「人・環境・繁栄」の3つを大事にしています」
●具体的にそれぞれ簡潔に教えていただけますか?
「はい、まずPEOPLE、人っていうのは、やっぱり人がつながり合うことで、個人としての幸せ、あとは組織社会全体としての幸せだったり、その幸せがあるから社会全体、地球全体が持続可能性になるよね、持続可能サステナブルだよねっていうところで、まず人を軸にすごく大事にしています。
その上でやっぱりPLANET、つまり環境とかこの地球上っていうもの・・・人間というと、どうしても人間と自然って別のものみたいに考えがちなんですけど、私たち人間もこの自然の循環の一部だよねっていうことです。
私たちが活動するってことは、まさに自然が循環していくってことなので、自分たちが活動することで生態系とか、地球の循環全体をプラスにしていきたいよねっていうような思いで、PLANETがふたつ目に置かれています。
最後にPROSPERITYってちょっと難しいんですけど、繁栄っていう意味で、人が幸せで、それによって地球も持続可能になって、そうすることで人と自然は分断を起こさずに、お互いがつながり合った状態で持続可能に繁栄できる、つながり合って栄えるよね! っていうことで、最後にPROSPERITYを大事にしています」
●番組としては「PLANET」に関して、どんな活動をされているかをお聞きしたいんですけれども、具体的にご説明いただけますか?
「メディアとしては情報発信を通して、今ご紹介したように、自然と人を切り離すんじゃなくて、あくまで人は自然の、生態系の一部だよねっていうところを軸にして情報発信をしているんですね。それによってどうしたらサステナブルになるかっていうのは、私たちのメディア全体としてのテーマにあります。
実際の行動として、私たち、どんなことしているんですか? っていうところに関しては、オフィスで出てしまうゴミを減らすために、コンポストをもちろん置いていますし、あと捨てるゴミも毎回計量しています。どのぐらいゴミが出てしまっているかを、重さを測って、みんなで改善できるところしていくっていうこともしています。
あと仕組みとして、私たちのメディアに訪れてくださったかたの人数、PVプレビューの数なんですけど、その数、人が訪れるごとに1円とカウントして、毎年訪れてくださったかたの人数分×1円を、社会とか環境に対して働きかける活動をしているかたがたに寄付をしたりとか、そういった形で実際に我々も何か行動を起こす、発信するだけじゃなくてっていうことを意識しています」
●そうなんですね! ゴミを計るっていうのもいいですね。
「実際にやってみると、思ったよりゴミが多かったりとか、あと(ゴミを)計るために一回全部、ゴミ箱に入ったものを出して広げたりするんですね。思いのほかプラスチックが多いねとか、逆にあれ? なんでこんなものが捨てられているんだろうってものが出てきたりだとか・・・ただ計るだけと思うんですけど、侮るなかれで、結構いろんな気づきがあります」

後半はアップサイクル ・ブランド「Coco&K.」を展開されている「ココロインターナショナル」の代表「井上伸子」さんにご登場いいただきます。
「Coco&K.」は、井上さんが2006年に立ち上げたブランドで、製造の拠点はフィリピンにあります。原材料は、捨てられたジュースのアルミパッケージで、それをアップサイクルして、カラフルで可愛いバッグやポーチ、財布などに生まれ変わらせています。井上さん曰く「作る人、使う人、そして子供たちに笑顔と幸せを運ぶ」ハッピーなプロジェクトのブランドだそうです。
☆写真協力:ココロインターナショナル

フィリピンで運命の出会い!?
※そもそもなんですが、フィリピンに行ったのは、どうしてなんですか?
「もともとアジアンテイストの雑貨が好きで、アジア版ソニープラザみたいなのをやりたいなっていう夢が漠然とありました。日本の展示会にも行っていたんですが、フィリピンでも面白い展示会があるよっていうことを聞いて行ったのが、運命の始まりでしたね」
●フィリピンのどのあたりに行かれたんですか?
「フィリピンのマニラの市内で展示会はあったんですね。マニラには初めて行ったんですが、マニラに着いた時、すごくショックを受けたんですね。道路を歩きますとボロボロの服だったり、靴を履いていない子供たち、あと物乞いをしている子供たち、そんな子にたくさん出会ったんですね。
私も当時同じぐらいの子供がいたので、ものすごくショックで、フィリピンっていう国のことは少しは想像していたんですけれども、本当に想像をはるかに超えていて、ショックで悲しくなってしまって・・・。
そんな気持ちのまま、翌日、展示会に行って、そこでこのカラフルなバッグと出会って、一目惚れして、話を聞いてみたら、これは廃材を使って作っている、あと女性の雇用、女性のためになるもの、あと子供たちのためになる活動をしている、そんな話を聞いて、すごく感動したんですね。その時にこれだ! これを日本に連れて帰りたい! って思ってしまったんです」

※井上さんがマニラの展示会で一目惚れしたカラフルなバッグは「キルス・ファウンデーション」という地元のNGOが作ったものだったんです。団体名にある「キルス」には、どんな意味があるんですか?
「キルスっていうのは、KILUSって書くんですが、これはフィリピンのタガログ語で、それぞれの頭文字の意味が込められていて、『愛国心・ひとりひとり・目的・発展・ふるさと』というタガログ語の頭文字を取って付けられているんですね。
自分たちの住む街を世界一美しく緑あふれる街にしようっていう、そんな合言葉で生まれたボランティア団体でした。当時は川の汚れで悪臭もひどくて、そんなことで地区長さんが立ち上げたのがこのボランティア団体だったんですね。
川のゴミを拾って街をきれいにしようということを呼びかけて、それと同時にやっぱり子供たちを学校に行かせる必要性があるよっていうことも呼びかけて、それだけじゃなくて、女性の収入になるためにっていうことで、自宅の脇に小さな工場を建てて、リサイクルバッグを作り始めたっていうのがジュースバッグの始まりでしたね」

(編集部注:マニラの展示会で一目惚れした井上さんは、その場で200個注文したそうなんですが、当時「キルス・ファウンデーション」は小さな団体で、連絡方法もファクスしかなく、注文したものが届かないとか、やっときた商品もサイズがバラバラで汚れていたりなど、日本の市場で販売できるような状態ではなかったそうです。
そこで井上さんは、現地の工場に何度も足を運んで、働いている女性たちにメジャーの使い方を教え、何度もやり直してもらって、やっと商品づくりと仕入れを軌道に乗せることができたそうです。
現在は、廃棄されたアルミのジュースパックの回収、洗浄など、生産工程がしっかり組まれているとのことですが、実は商品づくりは全部手作業なんです。工場では50人ほどが働き、自宅で作業する女性たちを含めるとトータルで200人くらいのかたがバッグやポーチなどを作る仕事についているとのこと。
また「キルス・ファウンデーション」の地道な活動が功を奏し、川も街もきれいになり、工場で働く女性の子供たちは学校に通えるようになっているそうです。「キルス・ファウンデーション」は未来のために子供の教育にも熱心に取り組んでいるとのことです)

丁寧に愛を込めて、使う人も幸せに
※井上さんが現地のスタッフのかたがたを見ていて、いちばん感じることはどんなことですか?
「みんな(私が)行くとすごく笑顔で迎えてくれて、お仕事も楽しそうにしていますね。この仕事にみんな誇りを感じているし、今ではもう私が及ばないぐらい上手に作ってくれる、みなさん素晴らしい技術者になっています。
丁寧に大切に愛を込めて作ってくれているのが感じられるので、だからこのバッグは、使う人も幸せにしてくれているなっていうことをすごく感じます。使っている人から、これを使うと本当に元気になれるよとか、明るい気持ちになるって言ってくださるんですよ。みんなにプレゼントしたくなるわって言って、プレゼントされた人がまた大好きになって、どんどんご縁がつながっていく感じが素晴らしいなって感じています」
●日本でもエシカルっていう考え方がどんどん広まってきていると思うんですけれども、今後特に取り組んでいきたいことってありますか?
「そうですね・・・エシカルとかサステナブルとか、難しいことはわからないですけれども、やっぱりこの活動を長く続けていくことがいちばん大切だなと・・・。一時の流行り廃りで終わらせたくないっていうことはずっと思っていて、長く続けることですね。
あと、若いかたの意識がエシカルとか、昔の私たちよりずっとずっと素晴らしくなっているので、逆に教えてもらいたいこともたくさんあります。このアップサイクルのバッグも、もっともっと可能性があると思っていて、若いかたの力を借りてデザインの面でも、デザインを勉強しているかたのアイデアをお借りしたり、もっともっと新しいものが作り出せたらいいなと思っています」
●最後に今いちばん伝えたいことを教えてください。
「今いちばんは、やはりこのCoco&K.のバッグを日本中のみなさんに使ってもらいたい、手に取ってほしいということですね。まずは可愛いと思ってもらって、それから作られている背景や、環境問題、雇用問題、教育問題にも貢献できるかな、なんてことにも目を向けてもらえたら嬉しいですね。
あとは最後に、私自身もこのバッグのおかげでたくさん素晴らしいご縁をいただいてきました。ハーチさん始め多くの人が支えてくださって、そして長く続けてくることができました。このバッグとこれを始めてくれた『キルス・ファウンデーション』のエルサさんと、キルスのメンバーのみんなに感謝の気持ちを伝えたいです」
INFORMATION

メディア・カンパニー「ハーチ」はきょうご紹介した以外にもユニークなメディアを展開しています。ぜひオフィシャルサイトにアクセスして、体感していただければと思います。
◎ハーチ :https://harch.jp

「ココロインターナショナル」のアップサイクル・ブランド「Coco&K.」では、カラフルで可愛いバッグやポーチなどを販売しています。ほんと気分が上がるし、オフィシャルサイトを見ていると、誰かにプレゼントしたくなるようなアイテムがたくさんあります。ぜひご覧ください。商品は、オンライン・ショップで購入できますよ。
◎Coco&K. :https://www.coco-k.jp
◎Coco&K. オンライン・ショップ:https://www.coco-k.jp/onlineshop/
2024/1/14 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、風景写真家の「佐藤 尚(たかし)」さんです。
佐藤さんは1963年、福井県生まれ。1984年、東京写真専門学校を卒業後、山岳写真家・風見武秀(かざみ・たけひで)さんに師事。1990年からフリーランスとして活動。日本全国を車で旅しながら、農村や自然などを撮影し、作品を写真集などで発表する傍ら、地元埼玉県の見沼(みぬま)たんぼで写真ワークショップ「里ほっと」を主宰するなどの活動もされています。
きょうはそんな佐藤さんに、日本全国の里山・里海の魅力や、房総半島のお気に入りスポット、そして人と自然が織りなす風景についてお話をうかがいます。
☆写真:佐藤 尚

自分らしさが出る里の風景写真
※風景写真を撮るために、現在も日本全国、津々浦々を巡っているんですか?
「はい、47都道府県を巡るのを自分のライフスタイルにしているので、一箇所ばっかりに行くというんではなくて、旅をしたら、なるべく多くの都道府県を周れるようにしています。昨年に行ったところは今年は行かないとか、来年は今年行ってないところに行こうとか、そういうふうにリストアップをして47都道府県を周れるようにしています」
●佐藤さんの主な被写体は里山なんですよね。佐藤さんのお写真って、本当に見ていてホッとする感じがするんですけれども、風景写真として里山を撮るようになったのはどうしてなんですか?
「風景写真って、一般的に広い自然風景などを捉えるかたがいたり、観光地に行って目の前にある景色を捉えるかたが多いかと思うんですけれど、私自身はいつの日からか、そっちのほうよりも里のほうに(目が)いくようになりましたね。
その理由というのはふたつあるかと思うんです。ひとつが深い森だったり、険しい山だったり、神秘的な海だったり、そういう大自然よりも・・・なんか大自然って見本みたいなのがあって、そこに行ってそれを撮るみたいになってしまって、やっぱりパターンが似てきちゃうと思うんですよね。
それが里の風景だと(世の中に)出ている写真が少ないというのかな、自分の感覚で探せるっていうのかな、そこが好きで里のほうに行っているのがありますね。
で、もうひとつが、里のほうに行くと人の気配ってあるじゃないですか。人が暮らしていたり、人が漁をしていたり、人が農作業をしていたり、そのかたたちの近くに行って会話ができるのが好きだな〜。

会話は実は得意じゃないんですけれど、田舎の人ってすごく優しくって、会話は難しくないよって教えてくれて、挨拶すると向こうから、おまえさん、どっから来たんだって言われて、埼玉県からだって言うと、自分の息子が娘が甥っ子がとか、昔自分が埼玉で出稼ぎしていたとか、いろんな話が出てくるんですよね。土地の人の話をするのはすごく好きで、それで里のほうに行っているっていうのがありますね」
●やっぱり人の営みを感じられるような風景がいい、ということですよね。
「はい、要するに大自然はどなたでも、もしかして撮れるかもしれない。撮るのは大変だと思うんですけれど、でもそんな中で自分の個性、自分らしさが出るのが里の風景かなと思って里山、里海に向かうようになっています」
●だから佐藤さんの撮る写真には暖かさがあるんですね。
「嬉しいじゃないですか(笑)。ありがとうございます」
(編集部注:佐藤さんは47都道府県を、改良したワンボックスカーに寝泊りしながら巡っていて、一回の撮影旅は長くて1ヶ月くらい、短くても2週間ほどと、時間をかけて、じっくり、ゆっくり移動しながら撮影を続けています)
旅の最初に魚沼、旅から帰る時に魚沼

※これまでの撮影で、特に印象に残っている場所はありますか?
「新潟県の魚沼、魚沼コシヒカリの産地、日本有数の雪国、その魚沼が好きで長く行っているんですね。魚沼になんでそんなに行くかと言ったら、魚沼って風景もいいんですけど、人が暖かいんですよね。それで魚沼に通っているうちにいっぱい友達もできたし、だから魚沼に何かと寄る、旅の最初に魚沼、旅から帰る時には魚沼、寄ってから家に帰ってくるみたいな、そんな雰囲気で終わるのが大好きです」
●どんな出会いがあったんですか?
「やっぱりいろんな人に出会えるっていうのが、魚沼っていいなって思うんですよね。それは出会いだけではなくて、(宿で)お風呂に入っていてもその中で会話を聞くのもなんか楽しいし・・・。
そうそうあとやっぱり魚沼って、どういうところって教えてくれるんですよね。魚沼は雪深いところとか、山菜がおいしいところとか、そういうのをちょっと家に寄ってけって言われてご馳走になって体験したり・・・。または畑で採れたものをくれたりとかって、そういう本当のコミュニケーションをとれるのが、私にとってもすごく財産になっているなって思います」

房総半島のおすすめスポット
※千葉県・房総半島で、よく撮影されているエリアはありますか?
「房総半島、好きですよ! 暮れに千葉県に行きましたよ! どこに行ったかというと九十九里海岸と南房総、結構千葉県って大きいですね、縦長ですよね。あの距離、すごく移動は大変だった感じはしたんですけど・・・」
●千葉県も車中泊で行ったんですね?
「もちろんそうです。九十九里に行ったのは夕陽を撮るためでした。いちばん日が短い年末は、太陽がいちばん南に寄っていくので、太平洋に面している九十九里でも夕陽が撮れるんですね。普通太平洋に面していると、日の出だけと思われがちですが、夕陽も撮れるんですよ。
あと南房総に行くと、夕陽と絡めて富士山が撮れるというイメージを持っているので、房総半島の先端から富士山を、大波が来ているところをいつか撮ってみたいと思っているんだけど、なかなかうまくいきませんが、年末になると九十九里から房総半島を巡る旅を毎年のようにやっていますね」

●季節的には冬がいいですか?
「冬の千葉県の海、最高です!」
●そうなんですね。地形的に高い山がなくて、低い山を歩く低山ハイキングも盛んだったりしますけれども、そういった風景も撮ったりはされますか?
「山歩きはそれほどしないですけれど、内陸のほうに行くと千葉県って田んぼとかもあるし、里の風景がいっぱいあるなっては思っていますね。だから千葉県は海・山・里、本当にすべてが揃っているところだなって感じているので、なにかと来ます。冬の話を先ほどさせていただきましたが、5月の九十九里が超おすすめです!」
●どんなところがおすすめですか?
「ご存知かどうかわかりませんが、砂浜に植物がいっぱい育っているところがあって、その植物でコウボウムギというのがあります。麦みたいな形のちっちゃい植物なんですけど、そのコウボウムギが砂浜いっぱいに群生しているところが5月に見られるんですが、それがまた可愛いんだ! ぜひ見ていただきたい!」

●5月ですね。
「5月です。5月から6月、7月、いつまで咲いているかわかりませんが、私が見たのは4月末だったんで・・・すごくいい景色です! 可愛いですよ」
●5月頃にそこに行けば、いい景色が見られるということですね。
「そうですね。房総半島、九十九里、本当に海岸線の多様な風景があるので、ぜひぜひ地元のかた、いや遠くからでも、みなさん、行っていただけたらなってすごく思っています」

写真を楽しみましょう!
※佐藤さんは、一般のかたに風景写真の撮り方を教える撮影会やオンラインでの教室をやっていらっしゃいます。どんなことにポイントをおいて教えているんですか?
「写真を楽しみましょう! まずそれですね。もちろんみなさん、写真が上手になりたいとかコンテストでトップになりたいとか、また向上意欲があるかたもたくさんいるんですが、その前にカメラを持って散歩して、友達と和気あいあい、会話するのが楽しいぜ! っていうのを伝えたいと思っています」
●撮り方のコツっていうよりは、周りの人たちと喋りましょう、お話ししましょうみたいな感じですか?
「まさにその通り。やっぱり写真は撮って楽しい、プリントして楽しい、発表して楽しい、そして形にして楽しいとかっていろんな楽しみ方があると思うんですね。
最近、エンターテイメントとして人と通じ合えるところもすごく感じるので、そのようなことをやりながら、人たちの集まりを作っていけたら、写真に対しての恩返しではないんですけれども、そんなことをやっていきたいと思っています 」
●ビギナーのかたに最初に教えることは、どんなことになるんですか?
「写真を楽しみましょうとは言っても、何を撮っていいかわからないかたって結構いると思うんですよね。ですので、まず1枚撮ろう、そういうアドバイスだけ送っていますね。
だから何を撮ろうとかってわからなくても、まずカメラを出して撮るという行為をすることから、1枚目が始まるっていうふうに伝えているんですが、そうすると意外に1枚目って、シャッターを切れたりするんですよ。何を撮ろうって気張っちゃうから多分ダメで、まず1枚を撮っちゃえみたいな感じ、それで1枚を撮っていただく。
そしてそのあとは、歩く・動く・観察する! 体を動かすってこと、よく見るってこと。そして被写体の探し方としては色・形・線、これを気にしながら風景などを見ていると意外に、あそこに赤色があって、あそこに線があって、あそこに丸い形があったとか、なんか見えてきたりするので、そういうふうにして楽しく撮ってもらえるようにお話をしていますね」
●いい1枚を撮るには色・形・線が、どういう組み合わせだったらいいんですか?
「なるほど、じゃあお伝えしましょう! 色という部分で言いますと、例えば遠くのほうに赤い花があったとします。その赤い花の隣に赤いトラクターがあったとします。そうしたら、ふたつの赤と赤でまとめるだけで、写真にストーリーというか、赤色がふたつあるなっていうのが、撮った本人もわかっているけれど、それが人に伝わるようになっていくんですよ。
線で見ていった時に、縦の線ばっかりで整えていくと構図がすごく整ったりしますよね。それがごちゃごちゃしていると構図が甘くなるんですが、線ばっかりで整えると面白いし、またそこにイレギュラーな1本だけ違う線が入った時に、協調性っていうのかな、気持ちがそこに入っていくので、線、形もそうです。同じようにそれを色・形・線を混ぜ合わせていって、構図を作っていくと意外とできていきます。
でもこれは量が必要なんですよ。やっぱり数を撮ることが、いちばん成長するために必要なので量が必要だということ、それを伝えていますね。いっぱい撮りましょう、楽しく撮りましょうっていうふうに」
(編集部注:いまはスマートフォンで写真を撮るかたが多いと思いますが、佐藤さんは、できれば、レンズ交換ができるカメラを使うと、表現が変わっていくので、そんなカメラで写真の新しい世界に入ってきてくれたら、嬉しいとおっしゃっていましたよ)

写真展『僕の散歩みち』『nukumori』
※近々写真展を開催されるそうですね。どんな写真展なのか、教えてください。
「はい、東京とさいたま市の2カ所でやります。東京でやるのは青山にあります『ナインギャラリー』というところで、1月16日から21日にかけてやるんですけど、もうすぐです! ぜひみなさまに足を運んでいただけたら、とっても嬉しいです。
この写真展の内容はと言いますと、コロナ禍で私自身が苦しんで、もがいていた、その思いというものを脱ぎ捨てるような感じで発表させていただきたい。
やっぱり私は人が好き、風景が好き、暖かいものを感じ取って、その写真をみなさんにお届けするのがどうやら好きなので、このコロナ禍でやってきたことをしっかりとまとめあげて発表しようと思った写真展になっています。自然風景ばっかり、30点ほど展示します」
●すでに開催中の写真展もあるんですよね?
「そうですね。新年からやっている『僕の散歩みち』というのをカメラ屋さんでやっているんですけど、カメラの光盛堂Ⅱさんなんですが、コロナ禍でやっぱり苦労をしていて、その時に集客というか、店の整理をして人たちが集まれる場所として、ギャラリーを新しく作ったんですね。
そのギャラリーで私がコロナ禍で苦しんで撮っていた、散歩の中で撮っていた写真を今回、青山のナインギャラリーでの『nukumori』写真展に合わせて、同時開催をするっていうリバイバル展示になりますかね。
これは本当に気軽に撮ろう、まず1枚。歩く・動く・観察する、色・形・線の写真を10枚ほど並べております。同時に『里ほっと』の活動も展開しているので、それを楽しんでいただけるんじゃないかなというふうに思います」
INFORMATION
佐藤さんは、地元埼玉県の南部にある緑地「見沼たんぼ」で「里ほっと」という写真ワークショップを定期的に開催されています。ワークショップを始めた理由は、地元に飲み友達が欲しいということで、おしゃべりしている時間が多いとのことですが、みんなで写真を撮り、見沼たんぼにこだわった写真展をそれも、さいたま市で、これまでに3回開催されたそうです。「里ほっと」の活動について詳しくは、佐藤さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
佐藤さんの写真展情報です。

現在、写真展「ぼくの散歩みち」がJR南浦和駅から徒歩4分の「カメラの高盛堂II(コウセイドウ・ツー)」の「つながるギャラリー」で開催中です。会期は今月27日まで。
◎写真展「ぼくの散歩みち」:http://www.satophoto.net/2023/12/12/

写真展「nukumori」があさって16日から21日まで、地下鉄・外苑前駅から徒歩3分の「ナインギャラリー」で開催されます。初日の16日には佐藤さんによるギャラリートークが予定されていますよ。
◎写真展「nukumori」:http://www.satophoto.net/nukumori/
ぜひお出かけください。
ほかにも佐藤さんは撮影会やオンラインサロンなども開催されています。いずれも詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎佐藤 尚オフィシャルサイト:http://www.satophoto.net
2024/1/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスライターで気象予報士、そして、東京大学大学院の特任教授でもいらっしゃる「保坂直紀(ほさか・なおき)」さんです。
保坂さんは、東京大学大学院で海洋物理学を専攻。その後、読売新聞社に入社し、長年、科学報道に携わります。そして1994年、気象予報士の第1回目の試験に合格。これまでに海洋や大気、地球温暖化などに関する本を数多く出版、そして先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。
きょうは、そんな保坂さんに、去年と今年の気候についてうかがうほか、地球規模の大気の循環や、偏西風についてもお話しいただきます。

春と秋がなくなる!?
※保坂さんは先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。そのお話をうかがう前に2024年最初の放送ということで、やはり気になっているのが地球温暖化の影響とされる異常気象が、今年も多く発生するのかどうかなんですけれども、まずは去年の状況を振り返っておきたいと思います。
「去年はとにかく暑い夏でしたよね」
●でしたよね〜。
「いつまでも、いつまでも暑くて、ちょっと昔は、夜の気温が25度以下に下がらない熱帯夜が何日続いたなんていうのが、10年ぐらい前でしょうか、ニュースになったけど、今は当たり前になっちゃっているので、もうニュースにすらならなかったですよね。暑い夏でした」
●本当に暑かったです。2022年11月から2023年10月までの12カ月が観測史上最も暑かったという分析結果を、アメリカの研究機関が発表したんですよね?
「そうですね。アメリカの研究機関もそうですし、あと世界気象機関というところなども、使っている元データが違うので、数字は少し違うんですけれども、いずれも一昨年から去年にかけて、その辺りは過去最高の気温だったということですね。日本の気温も去年の夏の気温、6、7、8月の気温は非常に高かったっていうのを気象庁が発表していますよね」
●夏も暑かったですけれど、先月12月も20度前後まで気温が上がったりっていう日もありましたよね。それはやっぱり地球温暖化の影響なんですか?
「ありましたよね〜。我々、地球温暖化の影響でしょうか? って聞きたくなりますよね。ですがこの問いに科学者が答えられるようになったのは、比較的最近のことで、ここ10年ぐらいのことなんですよね。 それまではそうかもしれないし、そうでもないかもしれませんって曖昧な答えしかできなかったんです。
この本には書いたんですけれども、『イベント・アトリビューション』という新しい手法を使って、きちんと研究されているのは、例えば日本だと2018年の夏も暑かったんですよ。
その2018年の夏は、もしも地球温暖化がなければ、あんなに暑い夏はまず来なかった、確率ゼロだったはずである。でも地球温暖化していると、あのくらいの夏は発生確率が20%・・・20%っていうのは5分の1ぐらいの確率で、ああいう夏が来ることもあるんですね。
去年の暑い夏についてはまだはっきりしませんけれども、そもそもが5回に1回くらいは、5年おきというわけではないですけれども、5回に1回ぐらいの確率で、あのぐらい暑い夏が来る可能性があるということがわかってきています」
●もうそういう現状になっているっていうことなんですね。
「そうですね」
●気象予報士として、保坂さんが2023年の気象を振り返って、最も気になることってどんなことですか?
「やっぱり今お話しましたけれども、暑かった夏ですよね。 昔は暑い夏もあれば、冷夏もあるというふうに、たまたまなのかなと思ったけれども、今お話ししたように2018年の夏は暑かったですし、また去年もものすごく暑かったですよね。
こういうふうに立て続けに来ると、やっぱり地球の気候のシステムが変わってきているんじゃないか・・・昔は地球温暖化っていうと、みなさん気温が高いことだけを考えていたかもしれないけれども、最近日本でも豪雨による災害は、毎年のように日本のどこかで起きていて、やっぱりこれは変だぞ! っていうことを、だんだん強く印象づけられてきたような、去年はそういう1年だったなって思います」
●そうですよね。日本は春夏秋冬、四季があって季節の移ろいを感じていましたけど、去年は秋がなかった感じがします。
「そうですね。一瞬で通り過ぎましたよね。去年の夏はしばらく9月になっても、私たちの住んでいる関東の辺りは暑くて、暑い暑いと思ったら、本当に1週間くらいの間にストンと気温が下がったような印象がありますよね。 地球温暖化が進むと夏の気温も上がるし、それから冬の気温も少し上がっていくだろうと、平均的にはそういうふうに言われています」
●今後益々、春と秋が短くなっていくこともあり得ますか?
「そうですね。去年の夏みたいに暑い夏があって、冬は少し暖かくなるんだけど、これは平均の話で、冬の寒さは上空を流れているジェット気流だとか、その流れ方にもよるので、それによっては相変わらず、ものすごく寒くて大雪が降る冬もあるわけですよね。そういうところで、今度は一気に気温の高い夏にいくと、春は一瞬のうちに過ぎて、夏がやってきて、秋も一瞬のうちに過ぎて、冬になるということは、大いに可能性としてはあるんじゃないかと思います」

豪雨も増える可能性!?
※2024年の予測について、わかる範囲で構わないのですが、今年前半はどうなんでしょう?
「これは本当に気象って難しいんですよね。この先を予測するっていうのがね・・・。ちょっとした条件の変化が、その後に影響してくるという難しさがあるので、これはわからないんですけれども・・・。地球温暖化が進んできているということは確かなので、そうすると豪雨だとか、それから極端な暑さ、季節外れの暑さみたいなのが増えてくるっていう予測はあるんですね。やっぱりその方向で、今年の春あるいは夏がやってくるんじゃないかなと思いますけど・・・」
●今年の夏も異常に暑かったりっていう可能性はありますか?
「可能性はあります。今の地球温暖化の状況だと5分の1の確率で、ああいう夏がやってくるかもしれないですけど、あれほど暑いのはちょっとしんどいので、残り5分の4のほうをお願いしたいという感じはしますよね」
●『線状降水帯』という気象用語をよく聞くようになりましたけれども、今年2024年は発生する確率っていうのも増えそうですか?
「線状降水帯が(一般的に)使われるようになったのは、ごく最近の話で、実はまだ線状降水帯とは何かっていう定義もきちんと決まっていないんですよね。非常に激しい雨が降る地域が帯のように細長く、雨がしばらくの間降り続くものを線状降水帯って言うんですね。
ですから、今一生懸命、気象庁なんかでも、どういう時に線状降水帯が発生するのかを研究していますが、まだはっきりしてないんですね。
ただ注意しなきゃいけないのは、そもそも水蒸気の量が増えているので、ああいう豪雨は基本的に起きやすい状況にあるということ。それからもうひとつ注意しなきゃいけないのは、大雨が降って災害がもたらされるのは、線状降水帯だけではないということですね。
今申し上げたように、帯のように細長い地域に雨が降り続くのを線状降水帯というので、例えば丸っぽい形のスポット上に豪雨が降り続くものは、線状降水帯とは言わないんですが、これも大きな災害を、土砂災害なんかを引き起こすので、そういうところにも注意しなきゃいけないということですね。そもそも大雨が降りやすい状況になっているということです」
(編集部注:保坂さんによると、気温が1度上がると、大気中の水蒸気の量が7%増える。つまり、大気中に雨のもとになる水蒸気がたくさん含まれるので、それがなにかのきっかけで雨になると、これまで以上に大量の雨が降ることになるそうです)
地球は「風の惑星」
※ここからは、保坂さんが先頃出された本『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』からお話をうかがっていきたいと思います。この本は、副題にもあるように「大気の大循環」という視点で気象を解説されています。この「大気の大循環」に目をつけたのは、どうしてなんですか?
「大循環っていうのは、地球を取り巻いている空気、大気は風として、規模の小さいものもあれば、大きいのもある、とにかく動いているわけです。その中で、例えば地球は、赤道の近くは暑くて、南極・北極は寒いですよね。なぜなんだろうと考えた時に、大規模な風の流れによって、そういうような地球上の気候が生まれてくるんですよ。
ですから、私たちに馴染みのある熱帯とか温帯とか、こういうような地球上の気候がどうして生まれてくるんだろうって考えた時に、地球を取り巻いて流れるような大規模な風、それをここでは大循環と言いますけれども、その大循環について説明してみようかなと思って書いたのがこの本です」
●前書きに地球は『風の惑星』であると書かれていました。風が吹くのは、やっぱりこの大気の大循環に関係しているんですよね?
「そうですね。いろいろな理由があって風っていうのは・・・私たち普通、風っていう時には身近な、規模の小さいものを指すことが多いですよね。大循環のようなものも大気の流れですから、風と言えば風なんですけれども、その風とイメージを区別するつもりで大循環っていう言い方をしているんですね。
それにしても地球の上に空気がある限り、小さな規模のものも大きな規模のものも流れる、そういう風が我々の生活に深く関係しているという意味でも、よく地球って『水の惑星』って言われますけれども、もうひとつ『風の惑星』でもあるんだよっていう気が私はします」

偏西風は、大気の循環そのもの
※初歩的な質問なんですが、なぜ大気は流れるのでしょうか?
「これはですね・・・もうひとつ地球上には流れるものがあって、海も『海流』は流れますよね。大気と海の共通点は流れる物体、空気が流れる、水が流れる・・・で、どんなものでもそうですけれども、何かが動く時は何かの力が加わっているんですよね。力が加わって、その大気なり、水の場合は流れて、いろんなところで形を、姿を変えながら流れていくというものですよね。だから何らかの力が加わっているから、大気も流れるわけです」
●何らかの力っていうのは・・・?
「これはざっくり言うと、太陽から来る熱なんですよね。いちばん最初の地球の大気を動かす、おおもとになるものは太陽からの熱です。 例えば、やかんの中に水を入れて、そのままほっとくと水は動かないんですけれども、キャンプに行って焚火を炊いて、上にやかんを乗せるとその中の水が動くんですよね。
下から熱せられて軽くなった水が上に行って、上の水が下のほうに回ってきて・・・こういう熱の伝わり方を対流って言いますけれども、これが現実に、地球でも熱帯のような熱いところでは、これと同じことが起きています」
●天気予報でもよく耳にする『偏西風』がありますけれども、これも大気の循環によるものですよね?
「よるものというか、その大気の循環そのものですよね。今申し上げたように熱帯の辺りでは、そのやかんの中でお湯が沸くような対流が、そういう熱の動き方をするんですけれども、私たちが住んでいる中緯度では、今度は地球の周りをぐるりと、例えば北緯40度なら北緯40度のところを、地球を一周するように西から東に向けて風が吹いていて、これを私たちは普通、偏西風と言うんですね。
ですから、熱帯の辺りではそういう対流のような動き方をして、それで中緯度では偏西風のような帯状に地球を一周するような流れになる、そういう特徴があって、それぞれのところで大気の動きって・・・なんて言うんでしょうね・・・別々のパーツでできているみたいな印象でしょうかね」
●ジェット気流も偏西風ですか?
「そうです。この偏西風は西から東に吹く風という意味ですけれども、その中で特に流れの強い部分をジェット気流と言いますね」
※天気予報でも「偏西風が蛇行したことが原因で〜」という解説を聞くことがあります。どうして蛇行するのでしょうか?
「それは本格的に説明するとなると結構難しくなります。ただ偏西風は、なぜああいうふうに地球をぐるりと一周して吹くかっていうと、詳しく細かい話はしませんけれども、ちょうど赤道側は暖かい空気、私たちが暮らす北半球で言えば、北極のほうは冷たい空気、その境目を流れているから西から東に一周するような流れになるんです。
で、その時に蛇行するわけなんですけれども、蛇行するのは結論から言うと、地球は自転していて、それから球ですよね、球状ですよね。この両方の条件が重なると蛇行が生まれることはわかっているわけで、それがどうしてですかっていうのはちょっと難しいと思います」
●蛇行すると、どうなるんですか?
「偏西風は、南側の暖かい空気と、北側の冷たい空気との境目を流れているので、例えば日本の辺りで、冬に南のほうに蛇行したとしますよね。そうすると北側が日本に近づいてくるわけです、冷たい空気が・・・。
そういう状態がそのまますぐに移動してくれればいいんだけれども、南への蛇行が日本の辺りで居座ったりすると、北側の冷たい空気が日本に近づいてきたのと同じことになるので、非常に冷たい寒い冬が続いたりすることになるわけです。
だから気温に対しては、どこでどのくらい蛇行するのかが非常に大きな影響を与えるわけです」
式よりも言葉で伝える
※保坂さんの新しい本から、大気の循環と偏西風に絞ってお話をうかがいましたが、最後にこの本で伝えたいことをお聞かせください。
「この本はとても気象が好きなかたで、どうしても理屈を知りたいというかたに向けて書いた本なんですよね。だから、このレベルの本だと式を使って説明するのが普通なんですけれども、これは式は使わずに、全部言葉で説明してあるんですよね。
日本の教育を考えると、私の周りの大人でも物理は大っ嫌い! いつも点が悪くて! っていう人がいるんだけれども、そういう人たちに話を聞くと結構物理的なものの考え方が得意な人っていっぱいいるんですよね。
ですから、ちょっと計算間違いしたから、×(ばつ)になってひどい点を取っちゃったみたいな、そういうのは日本特有で、アメリカやヨーロッパの物理の教科書は、言葉でなぜそうなのかっていうのを説明してあるものが多いんです。
ですから、私もそれに倣って、科学は細かいことは専門家に任せておけばいいので、我々としては要するにどういうことなのかを知れば、結構物理は面白いなって再認識してほしいなという思いも、この本の中には込めています」
INFORMATION
この本では「大気の大循環」を構成する偏西風、貿易風、ブロッキング高気圧ほか、大循環に大きな影響を与えている、地球の自転によって起こる力などを解説。気象学の基礎を学べます。特に気象に興味のあるかたにおすすめです。
講談社のブルーバックス・シリーズの一冊として絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎講談社 :https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371643
◎東京大学大学院 保坂直紀:
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/k0001_02740.html
2023/12/31 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本自然保護協会NACS-Jの「道家哲平(どうけ・てっぺい)」さんです。
実は今月12月で、日本で初めて世界遺産が登録されてから30年という節目を迎えました。1993年12月11日に「屋久島」と「白神山地」が世界自然遺産に、「法隆寺地域の仏教建造物」と「姫路城」が世界文化遺産に、それぞれ登録され、日本初の世界遺産が誕生しました。
それまでは、地元の自然や文化財だったものが「世界の宝」となり、一気に知名度が高まりましたが、世界遺産については意外に知らないことも多く、また30年経って、新たな課題も生まれてきているようです。そこで、番組的に今年を締めくくる意味でも世界遺産、とりわけ、世界自然遺産を深掘りしていきます。
世界遺産条約の生みの親でもあり、諮問機関である国際自然保護連合IUCN日本委員会・事務局長の道家さんに、改めて世界自然遺産の成り立ちやその意義、そして未来に残すための課題についてお話しいただきます。
☆写真協力:(公財)日本自然保護協会

「価値」と「完全性」
※世界自然遺産のお話をうかがう前に、世界遺産の成り立ちを振り返っておきましょう。1960年代にエジプトのナイル川流域のダム建設計画が持ち上がり、完成すると「アブ・シンベル神殿」が水没するという問題が起こりました。
そこで立ち上がったのがユネスコで、この歴史的に貴重な遺跡を、人類の遺産として残していこうと、世界各国に協力を呼びかけ、これがきっかけとなり、1972年に世界遺産条約が採択されました。その条約作りで、ユネスコとともに重要な役割を果たしたのが国際自然保護連合IUCNでした。
日本は1992年に世界遺産条約を批准、現在は195カ国が加盟、そのうち168カ国に世界遺産があるとのことです。ちなみに世界遺産には、自然遺産、文化遺産、そして複合遺産の3つのタイプがあります。番組的には世界自然遺産を深掘りしていきます。
●現在、世界では何カ所、自然遺産に登録されていますか?
「世界自然遺産は現在227地域というか、227件、世界各地から登録されています」
●第1号はどこだったんですか?
「第1号は1978年に、どれをひとつとは言えないんですけれども、エクアドルのガラパゴス諸島、アメリカのイエローストーン国立公園をはじめ4つが、第1号という形で登録されました」
●日本は何カ所、登録されていますか?
「現在、世界自然遺産は5カ所になります。順番でいうと『白神山地』と『屋久島』が登録され、その後、北海道の『知床半島』、その次に『小笠原諸島』が登録されました。
そして最新のものとして『奄美大島・徳之島・沖縄東北部および西表島』、ちょっと長いんですけど、これは全部ひとつのパッケージというか、ひとつの形で登録されました」

●世界自然遺産に認定するのは、どの機関なんですか?
「世界遺産条約に定められた『世界遺産委員会』という会合が、毎年開かれています。で、その世界遺産委員会で各国から提案されてきた候補リストを、遺産として相応しい、あるいは相応しくないとか、もう少し課題があるとか、そういったことを協議する形になっています」
●その委員会がその後も(世界自然遺産を)管轄していくっていうことですか?
「そうですね。地域地域を守っていくのは、当然それぞれの国になるんですけれども、ちゃんと守られているかどうかとか、国際社会が何か手助けをしなければいけないんじゃないか、そういった監視というかチェック、それについてはこの世界遺産委員会が会議の中で行なっていくということになっています」
※世界自然遺産の認定には、どんな条件が必要なんでしょうか?
「とてもシンプルに説明すると、大きくは遺産としての価値、それには10個の基準があります。文化遺産は6、自然遺産は4。まず価値があるかどうかというのがひとつの条件になります。
自然遺産でいうと、例えば絶滅危惧種が多いような地域で、ここを守ることで世界の多様性を守れるみたいな、生物多様性の基準であるとか、地球の自然の歴史、例えば古代の恐竜の化石が見つかるとか、地球の歴史が分かる地質地形学的に大事な場所など、自然に関しては4つの基準があります。そういった自然遺産としての価値があるかどうかがひとつ目の基準。
ふたつ目の基準はちょっと難しい言葉ですが、完全性って言うんですけれども、その素晴らしい自然だったり、あるいは文化的な建造物であったり、そういったものを国としてしっかり守っていく体制ができているかどうかですね。
例えば小笠原とか、当初は外来生物という自然保護上の問題があったりするんですけども、そういう課題にしっかり対処できるような組織とか、専門家委員会がありますかとか、守れる体制があるかどうか・・・。
価値と、ちゃんと守れるかどうかの視点、このふたつを大きな基準として認定をするということになっています」

「オンリーワン」かつ「ナンバーワン」
※先ほど、日本で現在、世界自然遺産に登録されているのは屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島、奄美大島や沖縄島北部などの島を含め、全部で5カ所あるというお話がありましたが、島が多く登録されていますよね。これは何か理由があるんでしょうか?
「それを言ったら、日本は島だといういうことで・・・(笑)」
●あ~そうか・・・、そうですね。
「とはいえ、やっぱり島々は開発の手も、いわゆる本土と比べると経済発展のための様々な開発というのは少なかったということもあって、自然が豊かに残されてきました。
その自然をうまく使っている人の文化が、暮らしもあったというところで、豊かな生態系が残されてきた、価値もありながら、守る体制も比較的作りやすいという部分がひとつポイントじゃないかなというふうには思います」
●日本には、こういう場所がありますよ! っていうような候補は、誰が出しているんですか?
「候補は国の中で、環境省とそれから文部科学省ですね。その両者から自然遺産に関しては、どんな地域を推薦することができるだろうか、そんな検討会が確か2003年に行なわれて、そしてその時の委員会で、その時は知床はまだだったんですが、知床と小笠原そして奄美・沖縄の4カ所、これは候補になるんじゃないかという形であがり、それが順次、やっと登録が終わったという状態です」
●毎年候補を出すとかではないってことですか?
「そうですね。世界遺産としての価値を丁寧に説明する、それから守っていける体制があることを丁寧に説明する、いろんな準備を考えると毎年毎年、推薦をするということではありません。世界遺産は比喩で言えば、オンリーワンかつナンバーワンって言うんでしょうか。最も素晴らしく世界にここにしかなく、そして世界基準というか世界標準・最高水準で守られている場所、この両者が必要ということで、候補としては絞られていく形になります」

富士山は世界文化遺産!?
※確か以前、富士山も世界自然遺産の候補にあがったと思いますが、登録されなかったんですよね。自然遺産に登録されなかったのは、なぜなんでしょう?
「2003年の世界遺産候補地検討会議でもあがりましたが、やはりかなり(標高の)高いところまで開発というか道路とか、観光用のいろんなインフラができてしまったっていうこともあり、自然遺産として提案するのにはちょっと厳しいのではないかということでした。
一方で、富士山をも含めた文化的な人々の営みということで、文化遺産としては登録を目指すことになったという形ですね」
●なるほど、自然遺産ではなく文化遺産ということだったんですね。世界自然遺産に登録されるっていうことは、そのエリアの自然を保護していく義務が生じてくるわけですよね?
「そうですね。世界遺産に登録する際には、例えばこの場所は国立公園ですよとか、そういうのはちゃんと国として法律上の網掛けって言うんですか、守る体制を敷かないと登録は目指せませんので、守ることが先で、守った先に登録があるっていうのが正しい順番なんですね。
国としてそのエリアの自然を、日本の宝じゃなくて『世界の宝』として守っていくっていう義務が生じることにはなります」
●登録された後にちゃんと自然が保護されているかどうか、定期的な調査が入ったりするんですか?
「はい、数年に一度評価というのを行なうことがあります。自然遺産に関しては登録の審査書を検討する段階から、国際自然保護連合 IUCNの専門家のチームが、それぞれの生態系ごとに専門家を集めます。そして登録に際して、あるいは登録された後に、守られているかどうかの評価をして、世界遺産委員会に今こんな状態ですよというのをご報告する、そういう仕事を自然遺産に関してIUCNが、文化遺産に関しては、ICOMOS(イコモス)という別の組織が行なっています」
●これまでに世界自然遺産の登録が取り消されたケースはあったんですか?
「残念ながら存在します」
●それは、どんな理由で取り消されてしまったんですか?
「世界遺産の登録が取り消された事例としては、今まで3件あります。ふたつは文化遺産になるんですけれども『ドレスデン・エルベ渓谷』というドイツにある渓谷、それからイギリスにある海商都市『リヴァプール』、自然遺産に関しては、アラビアオリックスという野生動物絶滅危惧種の、その保護区が取り消されることになりました。
アラビアオリックスの保護区は油田開発の事業で、油田のパイプラインを通さなきゃいけないということで、何回かの警告というか、このままでは世界遺産から外さなきゃいけなくなりますよと、いろいろ対話はしたんですけれども、開発事業のほうが優先されて、結果取り消されるということが起こりました」
IUCNの「世界遺産戦略」
※1951年に発足したNACS-Jは、日本の自然保護に関して、非常に重要な役割を果たしてきたNGOで、70年を超える活動の中で、世界遺産条約の批准を後押しするなど、NACS-Jなくして、日本に世界自然遺産は生まれなかったといっても過言ではありません。
道家さんはNACS-Jの活動のほかに、「国際自然保護連合IUCN日本委員会」の事務局長としても活躍されています。具体的には、どんなことをされているんですか?
「私自身は世界遺産条約ではなくて、生物多様性条約という別の国際条約の専門家として15年、国際会議に出続けたりとか・・・。またIUCNは、世界遺産に限らず絶滅の恐れのあるリスト、レッドリストを編纂して自然の危機的な状況をお伝えしたりしています。
で、私はIUCN日本委員会の事務局長として、世界の動きを日本に伝えていく、場合によっては日本の動きを世界に伝えていく、そういう翻訳者みたいな仕事をしています」
●IUCNが2023年9月に『世界遺産戦略』という文書を発表されたということですけれども、この発表した経緯とその内容を分かりやすく説明していただけますか?
「IUCNは世界遺産条約の設立50周年、今年は日本が自然遺産に登録されて30周年なんですけれども、条約そのものとしては昨年50周年を迎えました。IUCNはその50年、半世紀経って、この自然遺産を改めて見直した時に次の50年、自然遺産をどういうふうに私たち人類は守り、つなげていくべきか、そういったことを考えてこの『世界遺産戦略』というものを作りました。
その内容のポイントとしては、今までの世界遺産は比較的国が守る。線を引いて、そこは開発禁止ですよとか、場合によっては立ち入ってはいけませんよとか、そういうことをやってきたわけですけれども、これからの世界遺産はもっともっと共同で守っていく必要がある。
研究者とか地域の自治体の人とか、その地域の周辺で暮らしているかたがたとか、観光に関わる協会のかた、自然保護だけじゃなく、多くの人で共同で守っていく。そのためには何が必要か、どこに力を入れていくべきか、そういったことをひとつ戦略として打ち出しています。
また国際協力もとても大事な方向として打ち出しました。先ほど条約加盟国が195カ国あると・・・ただ世界遺産登録がされているのは168カ国と、ギャップがあるというお話をしました。途上国の中には、やはり専門家がいらっしゃらないとか、国際条約のプロセスに慣れていないとか、大事な自然を持っているにもかかわらず、守る術、守る能力、技術資金がないというところがあります。
世界の力を使って協力、力を合わせて、国を越えた協力・共同、そういったものを進めていくことも 次の50年の柱として大事じゃないか、そういったことを打ち出しました」

「地球の教科書作り」
※1993年に日本で初めて、世界自然遺産が登録されてから30年が経ちました。今後の課題として、どんなことがあげられますか?
「IUCNのかたといろいろと相談をしたことがあります。日本の世界自然遺産の管理の状況ですね。もちろん課題は外来種問題だとかオーヴァーツーリズム、たくさん観光客が来すぎてしまうというのをどううまく管理するかとか、課題はあるものの、比較的管理する体制はできていますねという評価にはなっています。
ただ大きい方向性として気候変動という影響ですね。日本の自然も少しずつ影響を受け始めているので、気候変動がもたらすような自然の危機、その対策がひとつと・・・・。
そして日本は高齢化社会でもありますので、自然を守る人々が今までは比較的ボランティアのかたの活躍によって守られたところもあるんですけれども、ある意味プロフェッショナルとして、高齢化という大変な状況ではありますけれども、自然を守る人材をどう育てていくか、あるいは守っている人に職業として、プロフェッショナルとして、どう守っていくか・・・。
この人の問題と気候変動という大きなふたつの課題は、日本としても常に長い目で見て、対処・対策していかなきゃいけないと思います」
●世界自然遺産は観光資源という側面もあると思うんですけど、私たち自身が観光で世界自然遺産のエリアに行く時に、どんなことを大事にしたらよろしいですか?
「世界遺産条約はある意味、人類や地球の教科書作りをしている条約と言えます。どんな歴史の中で、今のような自然が生まれたか、どんな人の歴史の中で素晴らしいものが生まれたか、ここにしかないもの、そういったものを学ぶということがあります。
ですので、ぜひ観光とか、そういう時であれば、ほかの地域がそうとは言わないんですけど、じっくり観光していただくと学びとか、質の良い観光で・・・その質の良さはもちろんガイドさんの質の良さというのもあるかも知れません。
また自分たちがその地域の中で落としたお金、それが自然保護にそのまま回っていくような、いわゆるエコツーリズムって言ったりしますけど、学びもしつつ、そこの地域でお土産を買うとか、ガイドさんにお金を払うとか、そういった形の経済が自然を守るほうにつながる、そういう良い質の観光を、特に世界自然遺産では体験していただきたいと思います。
1日だけの弾丸ツアーとかそういうことではなくて、ぜひぜひじっくり、宿泊をしたり、美味しいものを食べたり、いろいろしながら(旅や観光を)するという贅沢を、世界一の贅沢をじっくり味わうという思いで、観光していくのが大事なんじゃないかなと思います」
(編集部注:道家さんに今後、日本で自然遺産も含めて、世界遺産の候補になるようなエリアはあるのか、お聞きしたら、個人的には例えば、棚田のような人と自然のかかわりの中で生まれた場所など、もっともっとあるのではないかとおっしゃっていました)
INFORMATION

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◎日本自然保護協会NACS-J :https://www.nacsj.or.jp
国際自然保護連合IUCN日本委員会のサイトもぜひチェックしてくださいね。
◎国際自然保護連合IUCN :https://www.iucn.jp