2023/9/29 UP!
素潜り漁師の挑戦「フーテンコーヒー」

暑い夏が終わり、ホットコーヒーがより美味しく感じられるようになりましたね。 千葉県内にもたくさんの素敵なコーヒー屋さんがありますが、今日はちょっと変わった2足の草鞋のコーヒー屋さんをご紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、主に館山市で営業されているフーテンコーヒーという屋台式のお店。ご主人は28歳とお若いんですが、房総半島南端で代々続く素潜り漁の家で育った彼がコーヒー店をやられるまではとっても目まぐるしいんです。店主の海老原直人さんにまずはお店を開くまでのいきさつをお聞きしました。

海老原さん:本当にずっと千葉の、あのマックスコーヒーというのがあるんですけど、あの甘いあれしか知らなかったんですけど。まあ21歳ぐらいですね、ちょっと格好付けてコーヒーブラックでスターバックスで覚え始めちゃった時からだんだん好きになったような感じです。それでコーヒー屋の雰囲気が大好きになってしまって、それでいつしか憧れを抱くようになって。卒業して資金調達のためにもあわびの漁師をやり始め、そこからコーヒー栽培をやりに石垣島に渡って、そこの最中に コロナになって。今、館山に帰って何かやろうっていうタイミングで、軽トラに屋台乗せてフーテンコーヒー始めた段階ですね。

MAXコーヒーからコーヒー人生が始まった海老原さん、お話にちょっと補足しますと、大学に行かれた時は神奈川県の湘南方面に住んでいて、そこで海辺とかシチュエーションがいいカフェにいくのにハマり、コーヒーを勉強に。それもまずは豆からと、石垣島でコーヒー豆の栽培のお手伝いして、東京ではバリスタの専門学校に通ってと準備をしてきていたそうです。最初はなかなか長い時間潜れず苦労したものの、すぐに高級アワビをどんどん水揚げできるようになったそうです。でも目指したのは、コーヒーショップを開くこと。現在は、軽トラックのキッチンカーで営業をされているんですが、このシチュエーションが海老原さんの2足の草鞋を支えているんです。
海老原さん:私がコーヒー屋さん出店しているのが、あの「伊戸だいぼ工房」というちょっと飲食店とダイビングセンターが併設しているような場所なんですけど。ま、そこはもう観光地で、すごい人がいっぱい来る、ところの目の前が私の漁業権設定されてる海で、朝8時ぐらいから10時半11時ぐらいまで潜って、そのままシャワー浴びて、そのまま13時前からコーヒー屋さんを夕暮れまでやるような感じです。まあ切り替えは楽しいですね。頭の中追っつかない時あるんですけど。 あのすべて一応スペシャルティーコーヒーと言ってハイグレードの物を極力使うようにしていまして。で、そのちょっとニッチな話になるんですけど、その精製方法ですね。コーヒー豆の精製方法がいくつかあるんですけど、そのうちの一個のナチュラル製法という果実味だったりとか、コーヒー本来の味が出やすいようなタイプをセレクトするように、いつも心がけてます。で、自分で焙煎機で焙煎して豆を使っているような感じです。資金を調達しながらこだわった美味しいコーヒーを出したい。・・・と海老原さんは綿密な計画をたて、それを濃厚な時間で実施しているんですね。大変な甲斐あって順調に売り上げも伸びているフーテンコーヒー。どんな味か興味ありますよね。
スタジオでこの日に合わせてベストなタイミングで焙煎していただいたコーヒーを楽しみました。



素潜り漁師としてアワビや伊勢海老などをとりながら、コーヒー屋台でこだわりのコーヒーを提供している海老原直人さん。館山でお店を開いているのにはこんな想いがあったんです。

海老原さん:漁業をやっていると言うのもあるんですけど、まあ、だいたい漁師は年が近くても50歳で一番高齢だと80歳とか本当に年が上の人ばっかりなんですけど、まあどこの地方でも言えるんですけど、若者離れが深刻化していく中で、その私が出店しているところはほんと観光客の方が多かったりとか、それを目当てに地元の若者が面白半分で来てくれたりとかする中に漁師さんがいたりすると、そこでコミュニケーションとれたりとか。意外とそれ話してると母校が一緒だったりするような。なんでもないような場所なんですけど、そういうコミュニケーション取れる場所としてやってるような感じですね。どこから来たんですかっていうのを聴くのとか、今日何しに来たんですかっていうのを聞くのをすごいこっちも意識していて。で、横におじいちゃん、おばあちゃんがいたらそれ聞いてるんで、そのおじいちゃん、おばあちゃんも反応してきたりとかするような、なんかそういう仕掛け作ったりするのも、そうです、コーヒー以外に考えてる感じですね。
軽トラックのキッチンカーのカウンター横にアワビの貝殻を置いておいて珈琲を買いに来るお客さんに「これが僕のとったアワビの貝殻です」って見せることで会話を引き出したりもしています。座れるスペースもあるので、そこで地元の方と観光客の方が話し込まれる、なんてことも度々あるそうです。そしてお店の名前「フーテンコーヒー」にはこんな思いがこもっていました。

海老原さん:フーテンコーヒーのフーテンは男はつらいよの寅さんですね。たまたま私の父親が大好きで、でそのいつかずっと心の中に寅さんがずっといるような変な少年だったんですけど、それが大人になってもずっと。寅さん寅さんというふうに考えて。なんかあったら寅さん見るようにして。それでその寅さんの映画の世界観が今の時代すごい必要なんじゃないかなって。無意識に思っていて、もうわたしなんてスマホで育った世代なんで、それいうのと比べても、やっぱ地方ってコミュニケーションがどんどん取れてない場所になってくるなあっていうのがあって。そういう意味でもコーヒー屋さんていうのをやってるんですけど、そことこうフーテンの寅さんがリンクして。 人情味のあるようなコーヒー屋さんを目指したいなという意味で、フーテンという名前をつけたのがあります。

素潜り漁師とスペシャリティコーヒーの2足の草鞋で館山に新たなコミュニティを生み出し、地域のコミュニケーションを広げる海老原さんの「フーテンコーヒー」、普段は館山の伊戸漁港近くで営業することが多いそうですが、四国や九州に出張販売にいくこともあるそうです。訪れる前にフーテンコーヒーのスケジュールを確認してからぜひお出かけください。
https://www.instagram.com/futencoffee_tctp/?hl=ja