2026/6/28 UP!
◎ノダカズキ(ネイチャー・ガイド)
『地球に学ぶネイチャー・ガイド「ノダカズキ」〜自然はすごい!』(2026.6.28)
◎小田智之、HINA、いしはま・ゆう(スーパー登山部)
『ネイチャーポップ・バンド「スーパー登山部」〜「山×音楽」の未踏峰を目指せ!』(2026.6.21)
◎河端雄毅(長崎大学大学院・総合生産科学研究科の准教授)
『生き物の「逃避行動」〜なぜ、カニは横に歩くのか!?』(2026.6.14)
◎中村みつを(山好きなイラストレーター)
『超低山を「縦走」!? 楽しみいろいろ、まちなかトレイルを歩く』(2026.6.7)
2026/6/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ネイチャー・ガイドの「ノダカズキ」さんです。
ノダさんは1997年生まれ、佐賀県出身。高校生の頃から、将来は自然の面白さや神秘を伝える仕事をしたいと思っていたそうです。そして愛媛大学農学部に進学。ところがなんと、1年で中退。その後は自然体験を求め、国内外を放浪。その間も自然を伝える仕事を模索し、東京で映像制作に携わったり、パリで香水をつくる修行したり・・・。
そんな中、東京で知り合った人が北海道にコネクションがあり、2020年に北海道白老町に国立アイヌ民族博物館ができるタイミングで移住。アイヌの文化や自然を伝える、地域おこし協力隊の活動を経て、現在はネイチャー・ガイドや自然教育、ワークショップのほか、ポッドキャスト番組などでも活躍されています。
そして先頃『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』という本を出されました。きょうはそんなノダさんに都会生活でも視点を変えるだけで見えてくる自然や、白老町でのガイド・ツアーのお話などうかがいます。
☆写真協力:ノダカズキ

好奇心のおもむくままに
※ノダさんはやはり子供の頃から、自然とか生き物が好きだったんですか?
「そうですね。やっぱり自然のことを大人になってもやっている人は、だいたい家庭でそういう影響があるんですけど、僕の場合もそうで、父がよく魚釣りとかに連れて行ってくれていました。ただ、自然とか植物に本格的にハマったのは、北海道に来てからです」
●そうなんですか。大学は愛媛大学農学部に進学ということなんですけれども、愛媛大学を選ばれたのはどうしてなんですか?
「今は自然の面白さを伝えるということで活動をさせてもらっていますが、高校生の時は漠然と“地球すごい!”みたいな・・・地球って24時間、ずっと回転しているわけじゃないですか。宇宙の中に浮いてというか・・・その単純な事実にず~っと感動、今も感動をする感性を持っているんですが、ず~っと感動していたんですよね。
地球のことをもっと知りたいって思っていて、地球のことを理解するためには地球の表面積は水が7割、陸が3割なので7割の水を勉強したら、地球のことも7割くらいわかるんじゃないかっていうのを高校生の時に思っていました。
農学部の中でもお水を専門的に学べるのが愛媛大学にあるんですけど、そこに進めたらいいなということで愛媛大学に行きました」
●水を研究するために愛媛大学農学部に進学されたのですね?
「そうですね」
●目指した大学に入ったのに1年で中退されたということで、これはどうしてなんですか?
「勉強していく中で、水について知りたかったこともあるんですけど、水について勉強すると今度は土とかが気になりだすんですね。土のサイズによって植物の生え方が変わったりとか・・・。土とかに興味が出てくると、今度は石とかに興味が出てくるんです。
大学で座って1日何時間か勉強するんですけど、それは漠然としたもので、実際に体感して、実際に現地に行ってから学んだほうがいいっていうのが体質にあっていたのもあって、1年で中退して、実際に(フィールドを)まわって自分で体感して、本を読んでディスカッションして、みたいな学びのスタイルをとっていました」
●親御さんは理解してくれましたか?
「そうですね。結構まあ自由な親なんで、大丈夫だと思います(笑)」
●ご理解があったんですね。次から次へと興味がわくというか、気になることが溢れていたという感じだったんですね!
「そうですね。当時は数珠つなぎのように、自然界は虫と花の関係だったりとか、すごくつながっていくので、それをひたすら自分の好奇心のままに追いかけるっていう20代前半でしたね」
●時間と体力はたっぷりある感じですよね、その頃はね(笑)
「いやぁ~そうですよね。ほんとにマジで100%時間ありますからね。なかなかないですからね、そんな時間(笑)」
お寿司屋さんで自然観察!?

※ここからはノダさんの初めての本『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』をもとにお話をうかがっていきます。この本は、都会にも日常にも自然の神秘が溢れている、それを伝えたいという思いで書かれたということで、キーワードが「視点」なんです。
ということで、番組でピックアップした面白い「視点」について解説していただきます。まずは、第1章の「暮らしは自然でできている」の中に「寿司屋は自然観察センター」という見出しのページがありました。これはどういうことですか?
「僕の趣味でお寿司屋さんに行くっていうのがあるんですね。これはただのお寿司屋さんじゃなくて、Google mapで面白い地形を見つけて(その場所にある)お寿司屋さんに行くのが趣味なんですけども、面白いとか入り組んだ地形には、入り組んだ地形にしか生息しない魚がいるんですよね」
●なるほど。
「真珠の養殖をしやすいような海だと、お寿司屋さんで真珠貝が串とかで出てきたりするんですよ。なので、お寿司を楽しむのはもちろん、味を楽しむっていうのもあるんですけど、その地形を解説しながら出してくるのが、その地域特有のお寿司屋さんなんですよねっていうので、お寿司屋さんに行くと実は海のこともわかるし、季節のこともわかるしっていう話を(本に)書かせていただきました」
●お寿司屋さんに行く時に、地形で選んだことはなかったです(笑)
「そうですよね」
●“知らない名前のお魚を頼むといい”とも書かれていましたけれども・・・。
「そうですね。それも例えば、カツオとかマグロとかってみんな知っているんですよ。沖縄の人も北海道の人も・・・。それは彼らが回遊魚だからなんですよね。日本列島の周りをぐるぐるぐるぐる、どこでも捕れる魚は大体みんなが目にしたことがあるので、標準語みたいな感じですよねっていうのは、聞いたことはあるんですけども、あまり移動しない魚もいるんですよね。
そういう移動しない魚、例えば、日本海の一部にしかいない魚は、東京とか北海道までもちろん来なくて、その地域だけで消費されている魚がいるんですよね。例えば、これは本には書いていないんですけども、僕の出身の佐賀県には、世界でいちばん潮の満ち引きが大きい干潟があるんですね、有明海っていう・・・。
なので、ムツゴロウとかワラスボとか、たぶんほかでは聞いたことないような魚が、実は佐賀の市場に並ぶんですね。それは実は有明海の干潟の周辺だけで食べられているような魚なので、知らない名前の魚を頼むと、その地域の伝統とか文化がわかるっていうのを書かせていただいているんですね」
●海藻にも注目したほうがいいんですよね?
「そうですね。これは僕の実体験なんですけど、北海道の網走っていう流氷がやってくるような(場所にある)お寿司屋さんに行ったことがあって、そこでは春の初めに行くと海藻を出してくれるところがあるんです。
なぜ海藻なのかって大将に聞いたら、流氷が溶けると太陽光が入ってくるんですよね。すると海藻が増えるんですよ。そのタイミングで(お店に)行くと、海藻のお通しを出してくれたことがあって・・・。だから流氷が今まさに溶けて春が始まったんだっていうことが、海藻を通してわかるっていう話を(本に)書かせてもらっています」
●そういった話は、お寿司屋さんの大将とか職人さんにいろいろお聞きになるんですか?
「そうですね。僕の中では大将は自然ガイドというか、魚を通して海の神秘とかをいろいろ教えてくれる人なので、なるべくひとりで行くようにして、お客さんが多くない、いちばん早い時間をひとりで予約して行っていますね(笑)」
(編集部注:ノダさんはお寿司にハマっている頃は、毎週土日にお寿司屋さんに行っていたそうで、なんと年収の半分をお寿司につぎ込んでいたとか。ノダさんがおっしゃるには、お寿司屋さんから、海と魚の解説を聞けて、さらにお寿司もついてくる。なので、1万円でも安いと思っていたそうですよ)
コンクリートを食べるカタツムリ!?
※続いて、第2章「街歩きで感じる自然」の中から「コンクリートという森に生きるカタツムリ」という見出しがありました。これの説明をお願いします。
「自然界においてカタツムリっていろんな所にいるんですけども、石灰岩と言われる地形のところにカタツムリって結構いるんですね。例えば、四国カルストのところとか、沖縄もサンゴで出来た島なので、結構カルシウムがいっぱい入っているようなところにカタツムリは多くて、動きも遅いので、その土地で固有化にしていくんですね。
いくんですけれども一方、都会を見てみると、都会というか街を見てみるとコンクリートが日本中に張りめぐらされているじゃないですか。コンクリートは石灰石を原料に使っていて、カルシウムがたくさん入っているんですよね。
カタツムリから見たら栄養の宝庫というか、カルシウムで殻を作らないといけないので、カタツムリから見ると、僕らが大都会だと思っているところって、割と栄養がたくさんある“森”ですよね。
カタツムリにとっては、森よりも栄養がたくさんある場所っていうふうにたぶん写っている場所なんですよねっていうので、こういう表現をさせてもらいました」
●コンクリートは、実はカルシウムの塊なんですね。
「そうですね。いっぱい入っていますね」
●どうやってカルシウムを取り込んでいるんですか?
「これはまだメカニズムとかは明らかになっていないところもあるんですけど、基本的にカタツムリって世界中でいちばん歯が多い生き物なんですよ。顕微鏡とかで見るとわかるんですけど、歯が2万本か3万本とか、そういうギザギザしたやつがいっぱいあるんです。
それで削って食べるんですけれども、カタツムリが通ったあとって、コンクリートに白く線がついていたりするんですね。削って食べたりとかしているみたいですね」
●第3章「家の中にひそむ自然」の中に、“ガラスという透明な革命”というのがあります。ガラスは人工物ですよね?
「そうですね。パソコンの画面はガラスですし・・・」
●自然と関係あるのかなと思っちゃうんですけれども・・・。
「普通、関係ないなって思うんですけど、ガラスも『珪砂(けいしゃ)』っていうか砂から作られているんですね。砂を作ったのは地球の地殻の運動だったりするので、結局ガラスも自然界から来ているよ、という話を書かせてもらっています」
北海道白老町、自然好きは飽きない!?

※ノダさんが暮らす北海道白老町は、どんなところなんですか?
「北海道は広いので、北海道の外の人はなかなか浮かばないと思いますけど、北海道の下側に位置する街で、太平洋に面しています。この街には湖も森もあって、海に面していて、温泉も近くて火山も近くにあるんですよね。川も結構流れていて、自然好きは一生飽きることがないフィールドではあると思います」
●季節的には、いつ頃がいちばんいいんですか?
「そうですね・・・僕がおすすめしているのは、やっぱり5月後半から6月と秋、紅葉の時期10月末ぐらいですね。北海道は平地でも紅葉しますし、その頃はちょうど海から鮭が川を埋めつくすくらいのぼってくるんですよ。
キノコも山に生えて、美しく美味しく感動的なのは秋なので、いちばんいいのは10月末ぐらいってお答えしています」
●白老町のどんなところが、特に気に入っていますか?
「白老ですか・・・国立アイヌ民族博物館があるので、それを学びに世界中から人がやってくるんですよね。アイヌの自然から生活を、身を立てていた民族を学びに、興味がある人が来るので、そういう人たちとの出会いは非常に多いですね。それは非常に面白いですね、日常が・・・」

(編集部注:ノダさんが毎年、秋に行なっているガイドツアーはキノコを採って、ノダさんの友人のカレー職人さんと「天然キノコカレーを作る会」というのをやっているそうです。ほかには、鮭の遡上を観察するツアーも実施しているとのことで、やはり秋がおすすめだそうですよ。
ノダさんのツアーに参加してみたいと思ったかたは、インスタグラムで定期的にツアー情報を発信しているということなので、チェックしてみてください。
https://www.instagram.com/yasou_king_ode/
ノダさんはアラスカも大好きで、氷河を見に行ったり、また、南米では野生化した馬を観察していたこともあるそうです。何事も自分の目で見て体験することを大事にされているんですね)
語らないネイチャー・ガイド!?
※ネイチャー・ガイドとして心がけていることは、どんなことですか?
「僕の師匠がいるのですけど、その師匠もネイチャー・ガイドなんですよね。これは深いんですけど、“どんなネイチャー・ガイドが、いいネイチャー・ガイドですか?“と聞いたら、”語らないネイチャー・ガイドがいちばんいい“って言っていて・・・」
●ええ~っ!
「僕の師匠に、今までいちばんよかったガイドを聞いたら、ほとんど一言もしゃべらなかったネイチャー・ガイド・ツアーがあったらしくて・・・参加者のお客さんたちが自ら気づいて、でも質問してくれたら、もちろんそれには答えるんですけど、“自分たちで発見してもらえるようなツアーのネイチャー・ガイドがいちばん素晴らしいんだ”と言われていて、本当にそうだなと思いました」
●ガイドって語ってくださるイメージがありますけどね・・・。
「そうですよね。でもやはり気づきをみなさんに持って帰ってもらうのが仕事っていう意味では、やっぱり語らないほうがいいっていうのはありますね」
●師匠は、どなたなんですか?
「師匠は、三木昇(みき・のぼる)さんっていう、北海道でたぶんいちばん最初に自然ガイドを生業として始められたかたがいらっしゃるんですね。最近はもうやっていないんですけど、三木昇さんも年に数回イベント的に(ツアーを)やられていて、もう結構なおじいちゃんなんですけど・・・」
●どうやって三木さんと出会ったんですか?
「僕が三木さんのツアーにというか、三木さんの講座に参加したんですよね。3時間くらいのツアーだったんですけど、そのツアーを受けての僕なりのネイチャー・ガイド像とか、(そのツアーで)言われたことを自分でさらに調べて勉強して、それをまとめて、10ページぐらい送ったんですよね、メールで・・・。
あまり教えてくれる人じゃないんですけど、結構厳しい人でもあるので・・・そうしたら意外と赤ペンで添削して、“今度、一緒に山に行こう”とか言ってくれて、それが最初で、そこからいろいろ教えてもらいましたね」

●では最後に、初めての本『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』から、どういったことを感じ取ってくれたら著者としては嬉しいですか?
「自然は遠くに行かなくても、側にあるということに気づいてもらえたら嬉しいですね」
INFORMATION
ノダさんの初めての本をぜひ読んでください。「暮らし」「街歩き」「家の中」「食卓」そして「人間の歴史」と5つの章に「自然」を感じるたくさんの視点が溢れています。探究心のかたまりのようなノダさんの知識がそのまま本になったと言えるかもしれません。知的好奇心をくすぐる一冊、おすすめです。
ディスカヴァー・トゥエンティワンから絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ディスカヴァー・トゥエンティワン:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-3269-6
ノダさんのガイド・ツアー情報については、ノダさんのインスタグラムを見てくださいね。
◎ノダカズキInstagram:https://www.instagram.com/yasou_king_ode/
2026/6/28 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. LITTLE TALKS / OF MONSTERS AND MEN
M2. LOVE LIKE THIS / NATASHA BEDINGFIELD feat. SEAN KINGSTON
M3. THE GOOD LIFE / TONY BENNETT & FRANCO DE VITA
M4. EASY / COMMODORES
M5. 空と風 / wyolica
M6. DOWN IN THE VALLEY / THE HEAD AND THE HEART
M7. ANOTHER DAY IN PARADISE / PHIL COLLINS
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/6/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、スーパー登山部の「小田智之(おだ・ともゆき)」さん、HINAさん、そして「いしはま・ゆう」さんです。
山が好きで音楽を聴くのも好きというかたの間で今、注目されているバンドが6月に待望のファースト・アルバムをリリースした「スーパー登山部」! バンド名らしからぬネーミングですが、一度聴いたら忘れないインパクトがありますよね。
スーパー登山部は2023年に結成された5人組バンドで、愛知を中心に活動していて、なんと! 登山と音楽活動をメンバー全員でやるという前代未聞のバンドなんです。
今週はそんなスーパー登山部のメンバー3人に、なぜバンドとして山に登ることになったのか、そして重い楽器を背負って登った山小屋でのライヴのお話などうかがいます。
☆写真協力:スーパー登山部

初登山の木曽駒ヶ岳で体感した「厳しさと楽しさ」
●今週は、待望のファーストアルバムをリリースされました5人組バンド「スーパー登山部」からキーボードの小田智之さん、ヴォーカルのHINAさん、そしてギターのいしはまゆうさんをお迎えしました。よろしくお願いいたします!
小田さん、HINAさん いしはまさん「よろしくお願いします」
●自然や環境をテーマにしているこの番組なんですけれども、まずバンド名に強く惹かれたんですね。これはメンバーのみなさんで話し合われて、このバンド名になったんですか?
小田さん「そうですね。僕らがバンドを結成してから、どんな名前にしようかって話し合った時に、僕らのLINEグループ名が“スーパーバンド”っていうのと、僕、小田が登山が趣味で、ほかのみんなは(山に)登ったことなかったんですけど、そんな中でふと、ドラムの深谷さんが“スーパー登山部ってどう?”って、掛け合わせた名前をひらめいて、“あっ! いいじゃん!”ってなって決めました」

●登山好きを集めたってわけではなくて、小田さんだけが登山がお好きだったってことですか?
小田さん「はい、そうです!(笑)」
●「スーパー登山部」っていうバンド名が決まってから、“山と音楽”というテーマで登山とバンド活動を始められたっていうことなんですよね?
小田さん「そうですね。だんだんそうになっていったっていう感じです。このバンド名にするんだったら1回は登山しようよ! っていうのを、みんなに聞いた時に”登ってみたい!“って(メンバーが)言ってくれて・・・。でも、もしそれで山、無理かもってなったら、名前だけのバンドになっていたかもしれないですけど、なんか意外といいかも! っていう感じでした。
しかも、自分はもともと鍵盤ハーモニカを背負って登って、山の上で吹いていたんですけど、山で聴く音楽って、すごくいいなって感じたり、そう言ってもらえることも多くて、この活動って僕らにしかできない、すごく面白いものになるんじゃないかなって思って、今このコンセプトで活動しています」

●小田さん以外のメンバーは、登山の経験はまったくなかったんですよね?
HINAさん、いしはまさん「はい、なかったです」
●バンド活動をしたくて参加したのに“、えっ? 登山するの?”って話になりませんでしたか?(笑)
HINAさん「(笑)もしかしたら、そう思っているメンバーもいたのかもしれない。でも“登山をしていこう!”というよりは、“登山をしてみよう!”っていうので、一回(バンドの)名前がきっかけで登山っていう趣味とかアクティヴィティとしてやってみたい!があったんで、みんなで登ってみたんですね。
そこにちっちゃい楽器も持ってったんですよ。初めての登山の時に、山の上で演奏したら聴いてくれるお客さんとか、拍手が生まれたりして、自然と親しみながら音を奏でると楽しいな! みたいなのがあったので、そこから徐々に小田さんに引き寄せられてというか、沼に連れていかれたという(笑)」
●初めての登山でいきなり楽器を持って行かれたんですね?
HINAさん「シェイカーっていう音が出るやつとか、鍵盤ハーモニカだったり・・・」
いしはまさん「ウクレレとかね」
HINAさん「そういうものでやっていたんですけど・・・」
●どちらの山だったんですか?
HINAさん「中央アルプスの木曽駒ケ岳っていう山で、千畳敷カールがある珍しい地形の見られるところなんですけど、山頂まではすごく晴れていて天気がよくて・・・」
いしはまさん「いいスタートだったよね」
HINAさん「初登山としては、素晴らしいロケーションを見られたんですけど、帰りは、おやおや? っていう天気になってきて、雹と雷がダブルできたんですね。
私はその時、必要最低限というか、たぶんちょっと山を舐めてしまっていて、それがその天気を呼び起こしただろうなと思うんですけど・・・レインウエアではなくカッパを着たら、それで滑って転んじゃったりとか・・・雹が降るなんて思わないから、体に痛いとかがあって、山の厳しさと楽しさを両方知って、そこからそんな天気の時は登ることはもうなくなったので・・・」
●そうなんですね。山の厳しさを知っても、やっぱり楽しいが勝ったっていう感じですか?
HINAさん「そうですね。楽しさがずっとありますね」
●いしはまさんも初めての登山だったんですか?
いしはまさん「そうですね。僕も歩くこととか、自然や広い景色に触れることはすごく好きで、たぶん登山も好きだろうなって思っていて、富士山に登ってみたいんだけどっていう相談だけは、小田君にバンドを組む前にはしていたんですね。
でもずっと行けていなくて、いざ登ってみたら、やっぱり思っていたような楽しさもあるし、思っても見なかった登山の楽しさもあって、(登山を)始められてすごくよかったなと・・・」

(編集部注:これまでにバンドとして登った山の数は40後半くらいだそうですよ。一緒にいる時間が長いので、メンバー間の絆も強くなっているとか。
ちなみに小田さんの登山好きはお父さんの影響で、一歩ずつ登れば、いずれは頂きに辿り着く、というお父さんの教えは、登山以外のことでも活きているそうです。山好きが止まらない小田さんは、なんと、バンド結成後に登山学校に通い、座学と実技で、リスク回避や安全講習、ロープワークなどをみっちり学んだそうです)
CDジャケットのアートワークに込めた思い
※今月リリースした待望のファースト・アルバム、タイトルが『スーパー登山部』となっていますが、バンド名をアルバム・タイトルにしたのは、どうしてなんですか?
HINAさん「スーパー登山部のこれまでの道のりをすべて辿って、ひとつのアルバムにしようとなった時に、ここで『スーパー登山部』というアルバム名にするのか、もっと先にするのかというのは、結構悩んだんです。
ほかにいろんなアイデアもあったんですけど、スーパー登山部が始まってから今までの節目で、『スーパー登山部』っていう名前を付けるのは、すごくいいんじゃないかというところで付けた気がしています」

●ジャケットのアートワークも気になりました。メンバー5人が並んで正面を向いて立っているイラストなんですけれども、顔にそれぞれ山のシルエットが埋め込まれているような感じです。どんな意図があるんですか?
いしはまさん「僕、いしはまがそのデザインもやっているんですけど・・・」
●いしはまさんがデザインしているんですね。
「そうなんです。『スーパー登山部』というタイトルにする時に、スーパー登山部の音楽性ってどういうものかというのを考えた時に、インタビューとかでもよく答えていて、“5人が出す音、5人の身体性からなる音楽が、スーパー登山部を成り立たせているんじゃないか”というのがあったので、ひとまず5人が並んだ絵はひとつその表現になるなと思いつつ・・・。
ただ、スーパー登山部って5人全員で編曲をしたりする時があって、そういう時に出てくるアイデアとか、それから完成される音楽って、誰かのすごく強い意志っていうよりは、自然とか広いものからわき上がってくるものをもとに組み上がっている気がしていて・・・。
それこそ僕らは登山をして、インスピレーションを受けているところがあると思っているので、顔の表情よりは、山とか自然の質感のほうが近いかなと思って、主観と客観のバランスを取れるっていう意味で、顔に山をはめました」
●いしはまさんのアイデアだったんですね。
いしはまさん「はい、そうです」
HINAさん「自慢のいしはまです(笑)」
●素敵なアートワークです。顔にハメた山はそれぞれ(メンバーが)お好きな山を選んだっていう感じなんですか?
いしはまさん「いや、スーパー登山部が登ってきた山とか、今までの活動の雰囲気とか、収録されている曲にあるイメージから、なんとなくこういう山かなっていうのを想像しつつ具体的な山も参考にしつつって感じです」
風景や色、音を思い浮かべながら
※スーパー登山部の曲の歌詞には、空や風、森や太陽、道や光など、山の景色から感じるような言葉が散りばめられているように思いました。そこは意識しているんでしょうか?
小田さん「意識したつもりはなかったんですね」
●無意識に!?
いしはまさん「結果として、そうなっているのに近いですね」
小田さん「やっぱり自然に触れる機会も多いし、そういうところに心が動いているんだなっていうことも、僕もこのアルバムを通して気づいたところはありますね」

●スーパー登山部としてのバンド・サウンドに仕上げていく段階で、それぞれどんなことを大事にされていますか? 小田さんはいかがです?
小田さん「僕は風景が浮かぶことを意識していて、楽曲からどんな景色や感情がわき上がってくるんだろうっていうのを、ひとつの楽器とかじゃなくて、トータルで聴いた時の質感とか、あとは各楽器のアプローチとか、そういったものから、どんな景色とかインスピレーションを受けるかっていうのをイメージしながら創っています」
●HINAさんはいかがですか?
HINAさん「そうですね・・・う~ん難しい・・・私はその曲ごとになんとなくの色とか、それこそ景色もそうですけど、自分の経験の中から浮かぶものをたぶん無意識に浮かべて歌うことが多くて・・・それが登山を始めたことによって、自然とか山の景色が増えてきたっていうだけなので、街で自分が感じたことを書いている曲もあります。
ただそれもなんだろう・・・風で草がなびいているところとか、車の音とかがすごく鳴っていたところから、急に静かになった時に聴こえてくる自然の音みたいなのをキャッチして、そういうのを思い浮かべて歌っているんだろうなって思います」
●いしはまさんは?
いしはまさん「たぶんみんな同じなんですけど、風景とか景色とか思い浮かべながらフレーズを入れたり、編曲のアイデアを出したりっていうところが、みんなもあると思うので、ギターも同じくです」
●みんなでイメージやアイデアを出し合って創りあげていくんですね。
小田さん、HINAさん「そうですね」
●フレーズとか音色を決める時にイメージしたのって、どんなことだったりしますか?
小田さん「楽曲によって全然違うんですけど、『風を辿る』っていう曲だと冒頭に鍵盤が入って、次にドラムが入って・・・このドラムのバスドラと、ブラシでシャカシャカやっているスネアのイメージは、個人的には電車をイメージしていたんですね。
印象なんですけど、たぶんガタガタと線路を走る様子とか、(車窓の)景観の流れみたいなのがリンクしているなって思っていて・・・僕、エゴサーチがすごく好きで・・・(笑)」
HINAさん「唐突な!(笑)」
小田さん「エゴサしながら、みんなの(SNSとか)見ているですけど、“『風を辿る』のイントロから電車の風景が・・・“っていうのを書いてくれている人がいて、“あっ! 伝わっている!”って思って、そういう時にすごく嬉しくなります」
高所の白馬山荘ライヴ、酸欠!?

※スーパー登山部は去年、北アルプス白馬岳の標高2832メートルにある白馬山荘を会場に5日間のライヴを行ないました。今年も9月に予定されているんですが・・・きっかけは小田さんがプライベートで登って泊まった時に、置いてあった電子ピアノを弾いたら、その場に居合わせたお客さんと盛り上がり、とても楽しかったそうです。
これをバンドでやれたらいいなと思って、メンバーに相談したところ、白馬岳の難しさを考えず、誰もやったことがないならチャレンジしよう! ということになったそうです。
とはいえ、自分たちで楽器も運ばなくてはならず、背負って登ることに。ザックの重さは、HINAさんは約17キロ、いしはまさんが26キロ、小田さんに至っては30キロもあったそうですよ。おかげで白馬山荘に着くまでに10時間以上もかかったとか。

●そんな大変な思いをしてたどり着いた、白馬山荘でのライヴをいかがでしたか?
HINAさん「気持ちよかったですね」
小田さん「言葉にできないですね。僕らもそうですけれど、お客さんも同じ行程を登山してこないと行けない場所で、みんなが同じ道を歩いて、そこで感じてきたことをライヴの時間で一緒に共有するような、本当に特別な時間が流れて、もう思い出ですね」
●気持ちよかったって、HINAさんおっしゃっていましたけど・・・。
HINAさん「めちゃくちゃ気持ちよかったですね。窓がガラス張りになっているので遠くの山が見えたりとか、雲が下にあるので雲海が見える日もありました。
そういう景色と共にライヴができる機会は今まででもなかったし、この山に登らないと見られない景色っていうのもあったので、そういうのをお客さんと共有できているっていうことがすごく嬉しかったですね」
●いしはまさんはどうでした?
いしはまさん「(標高)2800mの位置でライヴをして、お客さんがライヴを見に来るって、なかなか現実味がないと思うんですけど・・・。確かにお客さんも疲れているし、僕らも疲れているっていうところで、やけに実感できるっていうか、本当に登ってきて、そこでライヴをしているんだなっていうのを体感できて、なかなか非日常な体験でした」

●標高が2800m超えている山小屋でのライヴって、ヴォーカルのHINAさんは声は大丈夫だったんですか?
HINAさん「もう、すごいですね・・・薄いので空気が・・・」
●息苦しいですよね?
HINAさん「はい、一日目がいちばんやっぱりしんどくて、高所順応みたいのをしてないので、(一曲)終わった後に息切れしちゃうみたいなのはあったんですね。
それこそ今年で白馬山荘ライヴが3年目になるので、去年は2年目だったんですけど、最初の年は本当に“なんでこんなに息が吸えないの?”っていうことに混乱して・・・そういう前例とか、ほかの人の話も聞いたことなかったので、 “大丈夫でしょう”って思っていたところもあって、実際行ってみたらすごく苦しかったんですね」
小田さん「酸素缶をずっとプシュプシュしていたよね」
HINAさん「ずっとプシュプシュして、酸素缶で息を吸っていて・・・」
●しかもそれが5日間となると・・・。
HINAさん「そうなんですよ」
●でも、だんだん慣れていくものなんですか?
HINAさん「そうなんですよ(笑)」
いしはまさん「初年度は(ライヴは)1日だけだったね」
HINAさん「そうなんです。初年度は1日だけだったので、あまり変化というのはなく・・・」
小田さん「苦しさを体験して(山から)下りてきたって感じでしたね」
HINAさん「それを踏まえて次の年に5日間やって、5日目とか本当に地上で歌ういつものパフォーマンスができるようになって・・・で、山で5日間ライヴしました、(山から)下りて地上でライヴした時に、ありえないぐらい歌がうまくなったような感じがして・・・」
小田さん「ロングトーンが2秒くらい伸びていたよね(笑)」
●え~っ! 高地トレーニングですね!
HINAさん「本当にアスリートの人って、これか~みたいな(笑)」
●すごい! そういった効果もあるんですね。
HINAさん「ありましたね(笑)」

●今年9月の白馬山荘でのライヴは、どんな感じになりそうでしょうか?
HINAさん「今年は去年、一昨年と比べて、すごくたくさんの人が楽しみにしてくれている体感があって、それこそ山を好きな人だけじゃなくて、本当に音楽からスーパー登山部を知ってくれた人が、山に登ってみたいという理由で、白馬山荘を目指して準備しているっていうのがあったりとか。
なんて言うんですかね・・・その日にどれだけの人が集まって、どんな人が来てくれるんだろうっていうのも楽しみもありますね。
今年は有料開催にさせていただくんですけど、去年のライヴは土曜日にパンパンになっちゃって、300人ぐらいの人がレストランの中にいて・・・(今年は)みんながすごくいい状態で、気持ちのいい状態で聴いてもらうためにも有料開催になっています。
それでもなお長野まで足を運んで、そこから10時間ぐらい登山をして、宿泊でお金もかけて見に来てくれる人が、どれぐらいいるんだろうなっていうのも楽しみだし、それにその人たちに向けて、自分たちもこの1年2年3年で築いてきた音を伝えられるように演奏できたらいいなって思っています」
スーパー登山部、鋸山に行く!
※改めて、山や登山の魅力はなんでしょう?
小田さん「これはですね・・・僕、自分自身もずっと変わっていっているんですけど、山に登っていくと(ほかの登山者と)すれ違う時に挨拶をするんですよ。“こんにちは”っていう、文化として挨拶をするんですけど、最近はその会話が楽しいです(笑)
なので、山に登りながら自然に触れて、ひとりで登るのも好きなんですけど、ひとりになって孤独になって、そういう時にたまたますれ違った人と、“こんにちは”っていう挨拶をするその瞬間が楽しいです。すごくピンポイントな魅力しか今言えなかったんで、HINAちゃんに渡します」
HINAさん「私はずっとデジタル・デトックスができることって言っていたんですけど、それと関係していることで、山にしかいない動物とか植物とか、あとはすごく整備されている道だけじゃなくて、登山道かどうかわからないようなところもあったりとか・・・。
最近はすごく保護されていたりとか、整備されていることが増えたんですけど、そういうものに触れる機会って街を歩いているとあんまりなくて・・・。これは雑草だろうって思うものが、実は大切にされてきたものだったりとかっていうのは、山とか自然ならではだなと思っていますね。
その知識も私はまだないんですけど、ないからこそ、いろいろなところに気を遣って気を付けよう! みたいな気持ちになるし、生きていることって素晴らしいな~みたいな、本当にいちばん最初の感情・・・。
自分の足でここまでたどり着いたんだなっていうこともそうだし、そこに見えている景色が当たり前ではないなっていうこととか、それこそビルだって人が建てているわけだし、人と自然の力で成り立っている世界なんだな~っていうのを感じられるのが、すごく魅力だなと思います」

●いしはまさんはどうですか? 山や登山の魅力・・・。
いしはまさん「僕も(HINAちゃんに)近くて、人と自然、登山道って通ってきた人がやっぱりいっぱいいるから、そこが道になっているとか、整備してくれる人がいるから、そこが登山道として成り立っているとか・・・。
歴史に触れるような感覚もあって、そこを守ってきた人たちの思いみたいなのを、明確に受け取るわけじゃないんですけど、大きな時間に触れられるような気がしています。
最近はそういう魅力があるなと思いながら登ったりもしますし、単純に広い風景、行って見ないと感じられない、五感を使って摂取できるものはやっぱりそこに行かないと得られないので、言葉ではうまく言えませんけど(山に)行くことで伝わる魅力かなとは思います」
●千葉県の山に登ったことはあります?
小田さん「あっ! 実は最近、鋸山に行って来ました!」
HINAさん「行って来ました」
●鋸山はどうでした? メンバーみなさんで?
小田さん「はい、海からスタートして山の頂へ、あそこはすごいですね」
HINAさん「すごいとこですね」
いしはまさん「すごいね。しかも海からスタートしたこともよかったね」
HINAさん「そう!」
小田さん「産業遺産にもなっている切り落ちた岩がほかの山では見られない、まさしくノコギリだなって!」
HINAさん「映画の世界にいるみたいな・・・」
●絶壁もね。あそこ、いいですよね!
いしはまさん「遺跡みたいな、歴史を感じられる場所でした」
ネイチャーポップ・バンド、スーパー登山部の頂きは!?

●では最後に、スーパー登山部というバンドとして、どういう頂きを目指しますか?
小田さん「そうですね・・・まだ見ぬ未踏峰を登頂していきたいですね」
HINAさん「広い意味でね(笑)。登山だけじゃなく、音楽としても」
小田さん「むしろ実在する山は登頂し尽くされてはいるんですけども、やっぱりこの『山×音楽』っていう掛け合わせの僕らの活動、これはいっぱいあるんですよ、未踏峰がたぶん」
いしはまさん「そうだね」
小田さん「僕ら音楽バンドとして、どんどん大きくなっていきたいですし、行きたい山もたくさんあるし、この活動の中でまだ見ぬ挑戦をしていけたらなと思っています」
●HINAさんどうですか?
HINAさん「そうですね・・・今の言ったこともそうですし、スーパー登山部だからといって、山だけが好きってわけじゃない(笑)。私は海も好きだし、川も好きだし、自然というものが好きなのは変わりないので、スーパー登山部って名前を聞いて、(山に)登っていないと好きになっちゃいけないんじゃないかとか、そういうハードルがないバンドを目指していきたい。
なおかつ、入ってみたら登山したくなって、山の上で聴くっていうのがベストだなと思っています。なので、いろいろなアクティヴィティ、そういう意味でも海とかでもライヴをやってみたいし・・・」
小田さん「スキーとか」
HINAさん「そうそうスキーとか、いろんな角度からいろんな人に好きになってもらえるように価値観というか、広くやっていきたいなと思っています」
●いしはまさんはどうですか?
いしはまさん「僕らは今回アルバムの説明とかでも、たまに解説しているんですけど、僕らの音楽のジャンルを“ネイチャーポップ”と表現しています。 それは自然とか有機的なものを感じられる音楽性に対して、名前を付けてみようっていうところから、“ネイチャーポップ”という名前を付けているんですけど、まさに“ネイチャーポップ”と言ったら、スーパー登山部だよねっていう源流として、頂きに立てたらなと思います」

INFORMATION
今月リリースされた待望のファースト・アルバム『スーパー登山部』には新曲含め、全部で14曲収録されています。山の景色や自然を感じるキャッチーでポップな楽曲満載! HINAさんの風のような優しい歌声に惹き込まれます。ぜひ聴いてください。通常盤のほかに、完全生産限定盤も発売。
そして今月はアルバムを携えてライヴツアー中。また、夏フェスにも参加予定です。そして9月1日から3日まで白馬山荘でライヴを行なう予定となっています。
アルバムやライヴ情報について、詳しくはスーパー登山部のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎スーパー登山部:https://superclimbingclub.com
ファンコミュニティ「超山荘」では部員を募集中! ぜひ入部してください。
https://superclimbingclub.com/contents/menu/89007
2026/6/21 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. BREATHE / スーパー登山部
M2. 燕 / スーパー登山部
M3. いつかはね / スーパー登山部
M4. 風を辿る / スーパー登山部
M5. ハイライト / スーパー登山部
M6. 頂き / スーパー登山部
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/6/14 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「逃避行動」の研究者、長崎大学大学院・総合生産科学研究科の准教授「河端雄毅(かわばた・ゆうき)」さんです。
河端さんは1983年、熊本生まれ、福岡育ち。子供の頃から生き物が好きで、通っていた幼稚園の隣りにあった川で、いつもカニを捕まえていたとか。幼稚園に行きたがらない時は、お母さんが「カニを捕まえに行こうね!」と誘っていたそうですよ。
そんな河端さん、中学・高校生の頃には生き物好きだったことは、すっかり忘れていて、研究者になろうなんて、まったく思っていなかったそうです。
ところが大学を選ぶ時に、生き物が好きだったことを思い出し、京都大学農学部に進学。大学院生の時に石垣島で魚の移動パターンなどを研究。当時、研究室の研究者たちが生き生きしていたことに影響を受けて、研究者の道へ。
生き物の逃げる行動「逃避行動」を研究するようになったのは、重要な行動なのに、ほとんど研究されていなかったからだそうですよ。

きょうはそんな河端さんに、カニはいつから横歩きをするようになったのか、逃避行動としての横歩きにはどんなメリットがあるのかなどうかがいます。
☆写真提供:河端雄毅研究室
カニの横歩き、珍しい行動
※河端さんの研究チームが、多くのカニに見られる「横歩き」がおよそ2億年前の共通祖先に由来する可能性が高いことを明らかにされました。そもそもなんですが、カニの横歩きは、生き物としては珍しい行動なんですか?
「めちゃくちゃ珍しい行動だと思います。みなさん、おそらくカニ以外に横歩きする動物って知らないんじゃないですかね」
●確かに想像つかないです!
「ほかに一応、横歩きする生き物として、ヨコバイっていう昆虫が・・・葉っぱの上にいて、敵が近づいたらシュッと横に動いて、葉っぱの裏に隠れるっていう昆虫がいるんですけど、それ以外、私も知らないです。なので、動物界を見渡してもかなり珍しい行動だと思います」
●前歩きするカニもいますよね?
「そうですね。前歩きするカニもいます。それもあって、今回の研究につながりはしたんですけど・・・」
●横歩きするカニと前歩きするカニって、どちらが多いんですか?
「横歩きと前歩きを調べた研究が・・・今回たくさんの種で調べたっていう研究が初めてなので、何割何割とは言えないんですけれども、一般的には横歩きするカニのほうが多いと思います」
●形の違いとかっていうのはあるんですか?
「形は横歩きするカニのほうが横長になっていて、前歩きをするカニのほうが縦長になるという傾向にはあるんですけれども、そのシンプルな形からだけでは、どっちかわからない種も結構いて、かなりオーバーラップする・・・中間的な形でこいつは前歩き、こいつは同じような形だけど横歩き、っていうふうに種によって違ったりします」
●そもそも素朴な疑問なんですけど、なんで横歩きするカニと前歩きするカニがいるんですかね?
「そうですね・・・これは私の今回の研究成果とも関わってくると思うんですけど、前歩きするカニは、祖先からずっともともと前歩きだったんですよ。カニはカニとヤドカリの仲間の共通の祖先がいて、そこはもともと前歩きだと考えられています。
カニっていうのが新たに初めて現れて、そこから進んだあとに横歩きっていうのが現れる・・・これは推定ではあるんですけど、2億年ほど前に現れただろうという推定になっています。
もともと祖先からずっと前歩きだった、一度も横歩きっていう進化を経験せずに前歩きだったっていうカニと、それと一度、横歩きに進化したんだけれども、もう一度先祖帰りというか、何らかの理由で前歩きに戻ったタイプと、この2タイプがいると思います」

横歩きのメリット? 左右に素早く!?
※カニの横歩きには、なにかメリットがあるんでしょうか?
「まだそのメリットっていうのは、実はあまりきちんと解明されてないというところではあるんですが、ひとつ研究者の間で言われているのは、速度が速いというデータがあります。横のほうが歩幅が大きくなって、素早く移動できるんじゃないかっていう、そんなことを言っている研究グループがあります」
●素早く動くのも、それこそ逃避行動ですよね?
「そうですね。さらに右・左に逃げることができるので、普通だと一方向なんですけど、素早く、さらに左右に行けるということで、非常に逃げる上ではメリットが大きいです」
●大きなカニって動きが鈍いように思うんですけれども、やっぱり体が小さいほうが素早く逃げられるということですか?
「意外と絶対的な速度は大きくなるほうが早いんですよね。なので、体重が重くなればなるほど早くなります。歩幅が大きくなるんで、早くなるんですけど、小さいほうがやっぱり小回りが効くんですよね。
車をイメージすると小さい車だと小回りが効くけど、大きい車だと速度が出るんだけど、小回りが効かないっていう、そういうことはあります。 なので、小さいほうが相手をかわすっていう意味では逃げることができると思うんですけど、速度だけで言うと大きいほうが速いです」
●素早く逃げるっていうのは、危険を察知する能力だと思うんですけど、カニってどうやって察知するんですか?
「カニは視覚で感知することもあります。カニにちょっと細かい毛がついているのってわかりますか。そこがセンサーになっていて、水の流れとか振動とか接触とかを感知することができるので・・・もちろん視覚がめちゃくちゃ重要なんですけれども、それだけじゃなくて、そういうセンサーも使っていると思います」
●察知する能力は高いって言えるっていうことですか?
「そうですね。もちろん種にもよるんですけれども、いろんなカニの種がいるので・・・(察知する能力が)高い種が多いと思います」

カニたちの家系図!?
※カニがなぜ横歩きをするようになったのか、その疑問に近づくような研究結果が、河端さんの研究チームが発表された「およそ2億年前の共通祖先に由来する可能性が高い」ということだと思うんですが・・・
「共通祖先」を明らかにする意味というか、そこに研究を絞ったのは、どうしてなんですか?
「私たちの研究グループは、どういうメリットがあるのかを並行して、今も研究を進めているんですけれども、その中でそもそも横歩きの種もいるし、前歩きの種もいるっていう、そういうところから、いったいどこから横歩きが始まったんだろう・・・
例えば、並行して何回も進化が起こっている場合もあるし、一回しか進化が起こってなくて、そこから広がった可能性とかもあるので、そういう研究も非常に面白いなと思って始めたという・・・
それに最近、遺伝子情報がすごく手に入りやすくなっていて、系統樹と言って、いろんなカニたちの家系図のような、そういうものが遺伝情報をもとに作られるようになってきたので、そこから一般の私みたいにそんなに遺伝情報とかに詳しくないそういう人でも、そういう研究ができるようになってきたっていうそんな背景があるわけです」
●この研究を始めたのは、いつ頃なんですか?
「2020年から一応開始はしたんですが、コロナ禍ということもあって、本格的に研究を開始できたのは2021年からになります」
●データもたくさん集めないといけないですよね?
「そうですね。そこはすごく大変だったところで、学生たちがすごく頑張ってくれました」
●どんなふうに集めていくんですか?
「自分たちで(カニを)捕りに行くことも、もちろんあるんですけれども、いっぱいデータを集めることができたのは、まずエビカニ水族館のかたの協力があって、そこに展示されているカニの行動をたくさん撮影させてもらいました」
●いろんな種類のカニっていうことですか?
「そうですね。今回使ったデータは50種なんですけれども、実際にはもうちょっと取っていて、家系図というものがなくて、実際に解析には使えなかった種とかも含めると100種近く集めています」
●ええ〜っ! そうなんですね。研究していたカニの中で横歩きと前歩きっていうのは、どれぐらいの割合だったんですか?
「今回使うことができたデータ50種のカニ、正確には49種のカニと1種のヤドカリなんですけど、その中では35種が横歩き、15種が前歩きに分類されます」
●研究用のカニを集めるだけでも本当に大変ですよね。
「そうですね。水族館にも協力してもらいましたし、さらにひとりの学生が台湾の大学に1年間留学していて、そこは実はすごくありがたいと言いますか・・・長崎大学と台湾の高雄科技大学が協定を結んでいて、1年間、留学がしやすいという状況にあって、さらにそこにカニの分類の専門家の先生がいました。
台湾は熱帯地方なので、カニの種類がすごく豊富なんですよね。そういうありがたい状況もあって、そこでもかなりの数のカニを集めることができました」
●海外の研究者のかたにも協力をお願いしてっていう感じだったんですね。
「そうですね。そのかたも共同研究者として、共著者として論文には入っているんですけど、すごく喜んでくれました」
●どんな方法で研究するんですか?
「すごくシンプルなんですけども、円形の水槽を作って、そこにカニを1匹入れて、そのカニが横に移動するのか、前に移動するのかっていうのをビデオで撮影して数値化してやるという、そんな方法です」

前期ジュラ紀に特別な進化!?
※「2億年前」にたどりつくためには、化石を調べたりしたんですか?
「私は化石は使っていないんですけど、化石データも家系図のようなもの・・・先ほど言ったのを作るには、化石の情報とかも使われていると思います。
私たちが今回やったのが・・・既に遺伝子情報から作ってくれているカニの家系図があるんですね。そこの末端の部分に、これが前だったか横だったかというのを入れてやる。
そうすると、家系図が近いカニ同士の共通祖先は前だったか横だったか。さらにもっと遡ると前だったか横だったかというのを、今生きている生物が前だったか横だったかというのから、過去をどんどんどんどん推定していく、そういうやり方なんです」
●2億年前には、カニはいたっていうことなんですよね
「そうですね。2億年前にカニがいたっていうのは、化石のデータからもわかっています。ただそこも分類的に、やっぱり化石ってどっちの分類になるかというのが非常に難しいらしいですね、2億年前ぐらいの化石だと・・・。実は形態的には前歩きしそうな、先ほど言ったような縦長っぽいカニがたくさん見つかっています」
●2億年前って恐竜の時代ということですか?
「そうですね。前期ジュラ紀という時代で恐竜も出てきますし、カニに関して言うなら、ちょうど浅い海がどんどん(できて)・・・カニは浅い海に棲んでいると思うんですけど、ちょうど大陸が分断される時期で、新しい浅い海がどんどん作られるような時期だったと思います」
●カニにとっては棲みやすい環境だったんですか?
「そうですね。棲みやすいというか、ちょうど(その時期は)ほかの生物があまり入っていないような、そこに侵入できるであろう環境が広がっているような、そんな時代だったと思います」
●そんな時代にカニが横歩きするようになったのは、何かそうせざるを得ないものがあったんですか?
「これは本当に難しいところで、非常に面白いところではあるんですが、どうしてそうなのかっていうのは、わからないとしか言いようがないんですね。
そういう新しい環境が広がった、そういう時はもしかすると、特殊な進化が起きやすかったのかもしれないですね。ただ進化は特別な、生まれてそれにメリットがあったら、すごく広がっていくんですけど、生み出すのは非常に・・・なんていうか、特に前移動から横移動は物凄く体の構造とか変わるわけなんですね。
そんな特殊なものが生まれる、そういう進化は本当になかなかないイベントですし、これがどういう状況で起こるかっていうのを理解するのは、非常に難しい問題です」
●でもそうやって一度横歩きに進化したのに、また前歩きに戻るみたいなカニもいるんですよね?
「そうですね。そこがまた面白いところで、おそらく横歩きにメリットがあるんだろうけども、それが必要なくなったり、前歩きのほうのメリットが高い場合、いろいろな状況に応じて、前歩きと横歩きは変わっていったりするのかなと・・・」

横歩きのメリット、デメリット
※今後もカニの横歩きについての研究は続けていくんですか?
「そうですね。これからもまだ、今やっている最中で、きょうはそこまでお話しできなかった“どんなメリットがあるのか?”っていう、そんな研究もやっています。逆に“どんなデメリットがありそうだ“っていうこともいくつか仮説があるので、そういう研究も進めていきたいと思います」
●現段階で言える範囲で、メリットやデメリットはありますか?
「先ほど言った速度が早いっていうのは、可能性として、ほかの研究者も言っていて、現在私たちもデータをとっている最中ですけど、そういう傾向がありそうだという結果は出ています」
●横歩きのデメリットはあるんですか?
「そうですね・・・横歩きのデメリット、これはちょっとまだお話をできる段階ではないんですけど、例えば、横歩きをする必要がない状況はあると思うんですね。
横歩きが、捕食者をかわすのに速度が早いというメリットがあるとして・・・だけど例えば、群れでいるとか、貝の中に入るカニとか、寄生するカニとか、そういうほかの逃げ方、捕食者を回避する方法をとっているようなグループで、頻繁に前歩きへの先祖帰りっていうのが起こっているので、もしかすると必要がない状況下になったら、前歩きに戻るっていうようなことも考えられるかもしれません」
INFORMATION
河端さんは、これまでの逃避行動の研究で、ほかにも大発見をされています。それはウナギの稚魚の逃避行動。それはほかの魚に捕食され、胃の中にまで取り込まれているのに、なんと! ウナギの稚魚は、胃から出てきて、エラの隙間から逃げ出したそうですよ。

生き物の逃避行動について、もっと知りたいと思ったかたは、ぜひ河端さんの研究室のサイトをご覧ください。
2026/6/14 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. PURE SHORES / ALL SAINTS
M2. WALKING ON A DREAM / EMPIRE OF THE SUN
M3. SUSPICIOUS MINDS / ELVIS PRESLEY
M4. HEARTBEAT / TAHITI 80
M5. 眠り姫(Happy Ending Version) / SEKAI NO OWARI
M6. I’M STILL STANDING / ELTON JOHN
M7. HIDE AND SEEK / IMOGEN HEAP
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/6/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山好きなイラストレーター「中村みつを」さんです。
中村さんは1953年、東京生まれ。山好きが講じて、ヒマラヤをはじめ、ヨーロッパアルプスや南米パタゴニアなどにも遠征。山好きなイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛け、現在は山岳雑誌「岳人」の表紙を担当。また、「山の日アンバサダー」でもいらっしゃいます。
中村さんには5年前にもご出演いただき、東京の町中にも山がある、想像力をふくらませて楽しもうというお話をしていただいたんですが、そんな中村さんが先頃、新しい本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』を出されたということで、改めて番組にお迎えすることになりました。
今回は、町中にある超低山を「縦走」するルート設定の面白さのほか、六本木から始まる「大江戸トレイル」や「流山富士」など、まちなか縦走の楽しみ方などうかがいます。
☆写真&イラストレーション:中村みつを
協力:ぺりかん社

高低差50メートル以下
※今回の本の、まちなか縦走のお話をうかがう前に、改めて「超低山」の定義や東京の町中には、どんな山があるのか教えてください。
「改めて言うと、超低山っていうのは名前の通り低山を超えた低さ、いちばん低い山。東京だと高尾山とか、それから房総だと鋸山とかってありますよね。あれがいわゆる低山。それよりもずっと低くくて、町に寄り添った、これ、山かな? というのが超低山なんですよね。
で、定義はなかったんで僕なりに定義付けをしたのが、標高で言うと100メートル以下。登山口から山頂まで手を伸ばせば届くぐらいの小さな山ですけど、高低差が50メートル以下っていうふうに一応定義は付けているんですけど、標高って言っても大概の人はピンとこないんですよね。実際にそこに立った時は高低差で山の大きさを見ると実感できると思います。
例えば、ビルを見た時に、ビルの1階から屋上までを見上げた時に、それが高低差なんです。それを山だと見立てれば、よりわかりやすいと思います。それが50メートル以下っていうのが必要で、超低山っていうふうにしています」
●一般に売られている地図に超低山って載っているんですか?
「載っていませんね(笑)。載っていたらこんな苦労はないんですけど、神社の名前とか公園とか、そういう形で出ていますね。
例えば、公園がいちばん多いですけど、西郷隆盛の名前のついた目黒にある西郷山公園とか、北区の王子にある飛鳥山公園とか。あとは愛宕山だと愛宕神社っていう、愛宕神社という名前がついていますけど、愛宕山っていうふうにはついてないんですよね。
だからそれを探っていくことになるんです。あとは地名ですね。住所表示の地名、例えば目黒区の東山とか、駅だって代官山とかね 。なんとか山っていうのは地名とかで見ることはできますけどね」
(編集部注:中村さんによると、超低山のタイプは、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山(つきやま)」、江戸時代に「富士信仰」の影響でまちなかにたくさん造られた「富士塚(ふじづか)」、そして中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」などの「天然の山」。
まとめると「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つになりますが、その3つのタイプに収まらない山として、崖のような場所を「見立ての山」と呼んでいるそうです)
町中の山を「縦走」!?
※先頃出された本が『続・ 東京まちなか超低山てくてく縦走』・・・この本は前作をもとに、今度は町中の山を「縦走する」という、そんなコンセプトで書いた本と言っていいんでしょうか?

「そうですね。ひとつひとつの山をこなしたら、もっとスケールアップして、例えば1日のうちの2〜3時間、山に浸りたいなっていうふうにだんだん思ってきたら、この縦走スタイルがあったら面白いなと思って、いろいろ考えたんですね。
で、そもそも町の中なので、本来の山とは全然違って建物ばっかりですよね。特に首都圏はね。そこに尾根道とか見えるわけじゃないですよね。普通に見る分にはね。
で、山の地形自体がなかなかつかみにくいと思うんですよね。だけど、普段歩いていると、ここに坂道があるなとか、ここは町の中でもすごく低地で、周りが高台に見えるなとかって、なんとなく視覚的に感じることがあると思うんですよね。
普段、通勤する時でも学校の行き帰りでもいいんですけど、“この坂やだな、こんなところ登るのやだな”とかって思う人もいるかもしれないし、それが地形なんですよね。
高いところは尾根筋と呼んで、下の低いところは谷筋になるんですけど、それで東京を例えて言えば、武蔵野台地っていうのが西のほうから東京湾に向かって枝を伸ばすように広がっているんですよ。その間に尾根筋と谷筋があるんですよね。
例えば、本郷だったら本郷台地っていうのがあって、高台で、その間にまた低いところがあって、そこは窪地ですよね。そういうところは、江戸時代だったら小川が流れているような、そういう地形になるんですけど、それ自体は今も昔も変わってないんですよね。
変わっているのは、そこに乗っかっているものだけなんです。建物とかそこにバスが走っているとか電車が走っているとか、それだけで地形自体は変わってないですよ。それを地形を読みながら1本の道を作るんですよね。
で、Aという山をまず最初に頭に入れて、Bという山、Cという山が地図上でこのあたりはこういうものがあるだろうと、ちょっと歴史も調べながら行くと、ここにはこういう人の屋敷があったとか、大概そういうことが多いんですよね。
で、小説でも映画の世界でもよくあるんですけど、高いところにはお金持ちが住んでいる。低いところには庶民が住んでいる。よくそういう例えがあるんですね。
時代的に言えば、お殿様は高いところ。例えば今で言えば、実業家とか、それからかつての華族とか、そういうお屋敷は高いところに持っているんですよね。で、下のほうに庶民がいる。そういう形があるんで、高いところが意外と残っているんですよ、今もね。そういう歴史的なものの関係で、それがとてもありがたかったってことで、そこを加えながら1本の道を作っていくんですよね」

余計なことをすると、1日楽しくなる!?
※今回の本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』でいちばんこだわったのは、どんなところですか?
「こだわったのは・・・机上登山を最初するんですよね。机の上にいろんな地図を広げたり、いろいろ頭の中で妄想したりして、多分ここはこうだろうとか思いながら、あらかじめルートを作るんですよね。
実際に行くわけなんですよ。行かないとわかんないんです。頭の中で想像だけだとね。で、行ってみて、それでドキドキするわけですよ。
本当に面白いかな、楽しいかな、なんかお節介かくようなことになるのかなとか、いろんなこと思いながら、まず最寄りの駅から歩き始めるんですけど、だいたい頭の中で描いてきたルートを辿ると、ピタッと符合することもよくあるんですよ。”間違いなかったな〜”そんなこと思いながら・・・。

基本的には大通りはなるべく避けて、小道を選んで行くんですけど、路地裏が多いんですね。小道もただ無駄に歩いても遠くなるだけなんで、そこは上手に歩くんですけど、そうすると昭和とか、そういう暮らしがまだ残っていたりする場所に触れたりもするんですよね。
それがまた道中楽しくなるんです。そうやって右左とか自分の気に入った道をとにかく選んで、それで下から上に登っていく。山は基本的に下から上に登るのと同じで、町の中でもそういうふうに考えるわけですよね。
それできょうは、この〇〇神社って名前がついた〇〇山に登りましょうと言って、登るわけですよね。で、見晴らしもいいなとか言いながら、まずはひとつは登ったぞと・・・次はどういうふうに行こうかと・・・。
というふうに、縦走というスタイルをいくつか作っていくわけなんです。初めはちょっと大げさかなと思うような、縦走ですからね・・・ただのお散歩だろって言われそうなんですけど(笑)、そこは気持ちが大事なんですよ。なんでも本気で遊ばないと面白くないんですよね」
●山から山へのルートをトレイルと捉えていらっしゃる、その発想も面白いなと思いました。大人の冒険みたいな感じで楽しいですね。
「みなさん、子供心に返ってもらっていいかなと思うんですよね。もう無邪気にね。道を迷うのも久しぶりに楽しいと思いますよ。
人は普段いかに物を見てないかっていうことに、意外と気づかされるんですよね。普段通っている道とか、それから車窓から見ている風景の中に、いっぱいこういうのがあるんですよね。
やっぱりみんな忙しいのと、あと目的地に行くのが最大の、その人の行動なんで余計な物を見ない。転ばないように歩くとか、人にぶつからないように歩くとかね。それが都会に暮らす人たちのスタイルだと思うんですよね 。そこを一回パッと切り離して余計なことをすると、こんなふうに見えてくると思います」
●確かに効率よく目的地に向かうには、どうしたらいいかっていうことしか考えてなかった気がします。寄り道したりとか、余計なことをするっていうのは大事ですね。
「それは発見とか感動したりとか、ものすごく頭の中にいろんなものが入ってくるんで1日楽しくなると、僕は思っているんですけど・・・」
ゴージャスな「大江戸トレイル」!?
※ここからは新しい本『続・東京まちなか超低山 てくてく縦走』に載っているコースの中から、いくつかおすすめのコースをお話しいただきたいと思います。
私が気になったのが「大江戸トレイル」という・・・名前もいいな~と思ったんです。六本木から皇居という、都心のど真ん中、“ザ 東京”という感じがするんですけれども、このあたりに山ってありましたっけ? っていう感じなんですが・・・。

「そうなんですよね。これも最初(山を)どうつなげていくかっていうのが、ものすごく知恵を使ったところなんですね。単体(の山)で見ると、確かにポツンポツンとあるっていうのは、もちろん自分の中でもわかっていたし、ただそれを美しく作りたかったんですよね、1本の道をね。東京にいること忘れちゃうくらいに、そういうふうに自分では作りたいなと思ったんですよ。
大江戸トレイルっていうぐらいなので、すごくゴージャスな名前なんですけど、東京の本当の中枢というか、ど真ん中というか、あらゆるものがここに、国会議事堂も含めて皇居もあれば、それからおしゃれな六本木とかね。
すべてがこの中にギュッと絞り込まれているところを、間に山を見つけていくって、なんとも豪快だなと思ったんですよね」
(編集部注:中村さんが知恵を絞ったという「大江戸トレイル」、六本木をスタートして、赤坂の氷川神社、日枝神社、そして霞ヶ関を抜けて、ゴールの皇居東御苑を目指すルート、およそ5.5キロのコースになっています。
いったいどこに山があるのかと、疑問に思ったかもしれませんが・・・あるんです、山が! ぜひ本でお確かめください)
流山に富士山!? 赤城山も!?
※続いて、本に千葉県流山市にある「流山富士と赤城山」というコースが載っていました。このコースはどんな特徴がありますか?
「これは僕もず~っと気になっていて、なかなかちょっと超低山と言えど、県を跨いで行くんで、後になってしまって、ようやくその時に出かけたわけですよね。
ここに行くひとつの楽しみの理由としては、流鉄流山線っていうローカル線にあるんですけど、流山駅が終点なんですけどね。子供の頃から鉄道好きだったんで、これに乗りたくて、おまけに山も登れたら、こんなに楽しい1日はないだろうというふうに考えて出かけたわけなんですね。

ここには“富士塚”という富士山を模した、言ってみれば小さな富士山ですよね。それと“赤城山”という、どっかで聞いたことのあるような名前だと思うんですけど、群馬県の赤城山、あれと同じ名前の赤城山が、この流山という町の中に存在しているんですよね」
●千葉の流山市にあるんですね。
「そうなんですよ。駅の周辺にあるという、今だいぶ周りが開発されてきて、新しいマンションができていたりするんですけど、この流山駅周辺っていうのは、明治時代の建物もたくさん残っていて、あと新撰組の近藤勇が最期にそこで官軍に捕えられたという、そういう歴史上の話があったりとか・・・。
それから料理に使う“みりん”ですよね。白みりんの発祥の地とも呼ばれていて、そういうのも実は山と関わりがあったりするとか、そういうすごく掘り下げていくと面白い町なんですよね」
●スタートは、流山駅からっていうことですよね?
「そうです。終点の流山駅でいろんなパンフレットとかも置いてあるんで、ちょっと探してみるといいかもしれないです」
※富士塚の「流山富士」から、流鉄流山線の隣の駅「平和台」方向に歩いていくと「赤城山」があるそうです。その赤城山について、こんなお話をしていただきました。

「緑の、何と言ったらいいんでしょうね。塊みたいなものが忽然と現れるんですよね。流山ってまっ平らなんですよ、土地が・・・。なんでこんなところにこんなこんもりとしたものがあるんだろう? って不思議に思うのが普通なんですよね。
それでいろんな伝承を読むと、群馬県の赤城山が噴火した時に、そこから流れ出た土砂が川の流れに乗って、この町にとまったって言うんですよね。大きな塊がね。それがこの山だって言うんですよ。
それでそのとまった場所を、流れてきた山なので、“流山”っていう地名につながっているっていう一説があるんですよね」
●そうなんですか!
「ものすごく、何て言うんでしょう、雄大なおとぎ話みたいな・・・これがまたすごく素敵だと思うんです。(赤城山は)実際に一周することができるんです。独立峰なんで、本当に流れてきたんゃないかと思うくらいです。山頂もすごく静かなんで、いい山です。おすすめです」
楽しみ方はいろいろ
※ヒマラヤやヨーロッパ・アルプスなどを旅されたということですが、標高の高い山の楽しみ方と、超低山の楽しみ方はまったく別物ですよね?
「もう全然一緒にすることもないんですよね。山の好きな人から“そんな低い山のどこが面白いの?“と聞かれたことあるんですよ。それは比較するからわからないんですよね。比べてはいけないんです。
楽しみをやっぱり比べちゃいけない。これはこういうものなんだと・・・高い山の面白さもあるし、雪山の面白さもあるようにね。岩壁を登る面白さもあって、みんな違うんですよね。
だからジャンルがそれぞれあって、それに合わせて自分の気持ちをそこに向けるっていうのがいちばん大事です」
●低い山だと、年齢とか体力とか関係なく、誰でも楽しめるレジャーなのかなって思うんですけど・・・。
「そうなんですよね。今、中高年のかたで山に登る人たくさんいますよね。エベレストにも登るぐらいですから。僕も2年前にはカラコルムっていうパキスタンの、ヒマラヤの隣の山なんかも行ったりしたんですけど、別に分ける必要はないんですよね。

高い山にも行く時は行くし、普段こういうところにも足を向ける。たくさんフィールドがあったほうがなんか得な気がするんですよね。いつでも楽しめるという、それで頑張らないっていう意味では、超低山はいちばんいいです。ず~っとお話しながら登れます」
●いいですね。
「だからお友達とか親子でもいいし登れるんですよね。振り返ってみると、江戸時代の人が実はそういうことを、もうすでに楽しんでいたスタイルなんですよね。
富士塚ももちろんそうだし、山をすべて見立てるっていう考え方が、その当時に生まれているんですね。富士山に見立てるとか、丹沢の大山に見立てるとか、そういうふうにして小さなものを愛でながら楽しむ・・・。
お弁当を持ってお花見登山するとか、それから紅葉だったら紅葉を見ながら江戸の山を楽しむっていう、当時からみんなやっていたんですよね。それを再現する意味で、ビルがたくさんある中でも、それを忘れさせるような山が今でもありますよ~ってことを伝えられたらいいなと思って書き始めたんですよね」
●では改めてになりますが、最後に超低山のいちばんの魅力を教えてください。
「う~ん・・・たくさんあるんで難しいですよね。やっぱりワクワクする気持ちっていうのが・・・知らない土地に行ったってワクワクしますけど・・・こんな身近に自分たちが暮らしている町の近くに、忘れられていたことに気がついた時の驚きとか発見っていうのは、いくつになっても味わえると思うので、ちょっとそういう意識を変えてみるといいんじゃないかなと思うんですけどね」

INFORMATION
この本を持って、お友達やご家族で、まちなか縦走を楽しんでみてはいかがでしょうか。きょうご紹介したほかにも「本郷トレイル」や「神楽坂凹凸(おうとつ)トレイル」「練馬大泉アルプス」などのほか、横浜・横須賀、埼玉、千葉のコースも掲載されています。
各コースにはアクセス方法や、参考のコースタイム、そしてアドバイスなども載っていますよ。なにより中村さんの親しみのある絵と文章が魅力的です。
ぺりかん社から絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎ぺりかん社:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001998
2026/6/7 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WALKING ON SUNSHINE / KATRINA AND THE WAVES
M2. GO YOUR OWN WAY / FLEETWOOD MAC
M3. Ain’t No Mountain High Enough / Little Glee Monster
M4. ADVENTURE OF A LIFETIME / COLDPLAY
M5. TAKE A WALK / PASSION PIT
M6. WALK ON / U2
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」








