2025/1/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、縄文大工の「雨宮国広(あめみや・くにひろ)」さんです。
雨宮さんは1969年、山梨県生まれ。20歳のときに丸太の皮を剥くアルバイトをきっかけにチェーンソーを使いこなすログビルダーに憧れ、その後、伝統的な木造建築を学ぶために弟子入りし、大工修行。
そして石の斧(おの)「石斧(せきふ)」に出会い、人生が一変。現代の文明社会に疑問を感じ、自然とともに暮らしていた縄文時代の人々の知恵や技術に傾倒していきます。普段は山梨のご自宅にある縄文小屋で暮らしていて、髭や髪を伸ばした、そのルックスも含め、まさに現代の縄文人なんです。
そして2016年からおよそ3年かけて行なわれた、国立科学博物館の人類進化学者「海部陽介」さん率いる一大プロジェクト「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」に全面協力、石の斧だけで丸木舟を作る中心人物として活躍されました。
そんな雨宮さんがいま全力で取り組んでいるのが「JOMONさんがやってきた!」というプロジェクト。これは、日本全国の子供たちと一緒に丸木舟を作り、その舟で日本各地の海を巡るというプロジェクトなんです。
3年前にご出演いただいたときには、すでにこのプロジェクトは始まっていましたが、今年、新たなステージに突入するということで、改めてプロジェクトの全容や今後の展開に迫りたいと思います。
☆写真協力:JOMONさんがやってきた!

樹齢280年の杉の命をいただく
※2021年にプロジェクトの第一章、そのパート1として「杉の命をいただく」という取り組みがありました。これは丸木舟にするための木を伐る活動ですよね?
「そうです。丸木舟を作るためには巨大な杉の木が必要なので、その杉さんの命をいただくというのが、いちばん最初のスタートですね」
●その巨大な木は、どこにあったんですか?
「愛知県 北設楽郡 東栄町、奥三河と言われている地域ですね。愛知県でも名古屋とか街のほうではなくて、山の山の奥で長野県との県境ですね」
●樹齢とか大きさは、どのくらいだったんですか?
「めちゃくちゃ大きかったですよ! 樹齢が280年、樹高、木の高さが46メートル、木全体の重さが多分30トンくらいあったでしょうね」
●ええ〜っ! そんな巨大な杉の木を石斧で伐っていくってことですよね?
「そうなんです。子供たちと一緒に石斧を使って、杉の命をいただくということでした」
●杉と対話しながらっていうことですよね?
「そうですね。もう否応なしに対話が絶対生まれるんですよね。長い期間、向き合いますから」
●樹齢280年の木が倒れたときってどんな思いがありました?
「もう感無量ですし、とにかくありがとうございましたっていう気持ち。それともうひとつは、命をいただいた以上、その杉さんとの約束を果たすことが頭をよぎるというか、絶対にそれはやらなきゃいけないことだなっていうのは、常にありましたね」
●子供たちにも参加してもらって、という作業でしたけれども、どれくらいの日数がかかりましたか?
「19日間です。これは体験教室を3回行なったんですよ。最初の体験教室をやって、次の週、また次の週と3週に渡ってやったので、(木を)寝かせる期間を調整しながらやったんですね。だから伐採だけをやって木を寝かせるには、本当はもっと早くできるんですけども、体験教室をやりながらゆっくりやったので、19日間かかりました」
丸木舟の進水式で奇跡が!?
※2022年には「JOMONさんがやってきた!」の第一章・パート2として「47都道府県・丸木舟作りツアー」がスタートしました。伐った大きな杉の木をトラックに積んで、全国を回ったんですよね。各地で参加した子供たちの様子はどうでしたか?

「もう本当に感動しかないですね。どの県がよかったとか、よく聞かれるんですけれども、本当にどこの県も素晴らしい子供たち、そしてひとりも諦めた子供がいない。これは自分で石斧を作るというところからやるので、そこで諦める子がひとりもいないんですよ。
土曜日に石斧を作って、日曜日にその石斧で削る。それを全国リレーするわけですけれども、それは本当にびっくりすることだったですね」
●石斧を作って、その石斧を使って木をくり抜く作業で、延べ何人くらい参加されたんですか?
「全国ツアーの丸木舟作りは、親御さん含めて1600名くらいですね」
●おお〜そうなんですね! 子供たちもなかなかできる体験じゃないから、目を輝かせていたんじゃないですか?
「そうですね(笑)。子供もそうなんですけど、大人もやったことがある人はひとりもいないんですよ。だから本当に親子で目を輝かせながらやっていましたね。
実際に来てくれた子供たちの年齢層は、ほぼほぼ10歳・・・10歳くらい、もしくは10歳以下の子供です。最年少は4歳くらいで、参加して、自分で石斧を作るっていうね。だから本当に保育園児とか(小学校)1年生から4年生までの子供が主体になって作ったんです。それがまたすごいなと思いますね。高学年とか中学生とかじゃなくてね、はい」

●で、2023年10月には第一章が完了して、丸木舟が完成しました! 舟に名前をつけたんですよね?
「はい、命名ですね。進水式でね」
●なんというお名前になったんですか?
「みんなの舟だから、『ミンナ』という名前です」
●へ〜! カタカナでミンナ、いいですね!
「はい、ありがとうございます」
●丸木舟「ミンナ」の大きさは、どれくらいになるんですか?
「ミンナの大きさは全長が約10メートル、沖縄で完成した時の重さは1.7トンありました」
●実際に水に浮かべて、試乗されたりもしたんですよね?
「ミンナが完成したあとに沖縄で・・・そのミンナを山梨まで一度持ってこなきゃならなかったので、その帰りの道中、トラックに乗せて、山口、静岡、そして山梨の西湖で試乗会を2カ月間やりましたね」
●実際に水に浮いたときは感動だったんじゃないですか?
「そうですね。奇跡が起こったなと思いましたね。なぜかというと、丸木舟は丸太の状態でくり抜いて作るので、左右をバランスよく作るとか、平らにふなべりが真っ直ぐ浮かぶとか、バランスよく作るのはめちゃくちゃ難しいんですよ。一回浮かべただけでは絶対できないっていう、そういう舟作りなんですけども、なんとそれが沖縄の進水式で、一回浮かべただけで完璧に浮かんでしまったと!」
●すご〜い!
「すごいですよ! 本当にすごいです! 手直しは全くなかったですね」

杉さんとの約束を守る
※2023年11月から「JOMONさんがやってきた!」の活動は第二章に入り、「キラキラ星プロジェクト」が始まりました。これはどんな活動なんですか?
「第一章は丸木舟を作るっていう活動でしたよね。第二章は杉の木、丸木舟になった杉の木との約束を果たすためのプロジェクトです」
●具体的にはどんなことをするのですか?
「その約束というのは、杉さんが生きていた時に、私たちが命をいただく時に、杉さんが私たちにこう言ってきたんですよ。“俺の命をお前たちにあげる代わりに、お前たちがそんなに舟を作りたいなら、命をあげよう“と、”その代わりにひとつだけ約束してほしい“と言ってきたんですよ。それが“この地球上のすべての生き物たちを幸せにすることだ! わかったか~!”って言ってきたんです。
それで私たち参加した人たちも“わかりました! 杉さん! 約束を必ず果たします”って言って、石斧の斧を(杉の幹に)入れて木の命をいただいたんですね。そして全国ツアー、1600人の参加者も“杉さんとの約束を守ります!”と言って、みんなが幸せになる舟を作ったんです。これが第一章だったんですよ。
今度はその舟で世界航海をして、すべての生き物を幸せにする航海を、実際にみんなでしていこうというのが第二章なんですね」
●杉さんが言ってきたっていうのは、どういうことなんですか?
「実際に杉の木は人間の言葉は喋らないですからね。私も聴きたかったですけど(笑)・・・私たち人間は、いろんな生き物の声を聴く力はあると思います。いわゆる相手を思いやる、相手の立場になって物を考えるっていうことですね。 もしあなたが、君が杉の木だったらどんな気持ちになるかと・・・」
●なるほど~。
「と言いますと(杉さんは)280年も生きてきて、いろんな生き物たちの家になって、そして私たちにいちばん大切な、生命にいちばん必要な、おいしい水、おいしい空気を毎日作ってきてくれたんですよ。その役目を断ち切られるわけですね。そしたら“俺の命をお前にあげるけども、お前たちは俺以上のことをしてくれ“と、そういうふうに言ってきた。命のやり取りは本来そういうことなんですね。
いろんな生き物の命を私たちはいただいて生きています。その生き物たちの命をいただいたら、より良い地球にしていかなきゃいけないですね。これはもう本当、生命原理で当たり前のことなんですけどね。それを杉さんがこう言ってきたというふうに言っていますけども」

地球をキラキラ星にしよう!
※雨宮さんが取り組んでいるプロジェクト「JOMONさんがやってきた!」の活動は2023年11月から第二章に入り、「キラキラ星プロジェクト」が始まりました。プロジェクト名にある「キラキラ星」には、どんな思いが込められているんですか?
「これは夜、星を見た時に“きれいだな~”って思うでしょ!? みんなこれ、全人類が思うことだと思うんですよ。“あの星、なんか汚ねえ星だな~”なんて思う人はひとりもいないと思う。キラキラする星をね。でも、私たちが住んでいるこの星、地球は今めちゃくちゃ汚いんですよ。その地球を汚しているのは私たちなんですね。その星をキラキラ星にしようよっていうプロジェクトなんです」
●素敵な名前ですね~。全国の海を丸木舟「ミンナ」で巡りながら、海岸のゴミ拾いもされるってことですよね?
「そうですね。この地球を汚しているものは、私たちが毎日出す、暮らしから出るゴミなんですね。想像してみてください。もし全人類がゴミを出さない暮らしをしたら、どうなると思いますか? ゴミが出ないんですよ、暮らしから。それは原始人たちが、縄文人たちがやってきたことなんですね。そういう地球は本当に輝いていたと思います。
ここでひとつ、ゴミというのは一般家庭から出るゴミだけではなくて・・・そもそもゴミという概念は、手に負えない危険なものですよね。そういう意味で考えると戦争の道具とか、核兵器とか、あらゆる毒薬とか、もうすべてがゴミなんですよ。そういうものを作り出さない世の中にしていく、それを目指していますね。
海岸のゴミを拾っても、ただ場所が移動するか、燃やせば気体になるか、形は変わってもなんら地球に害を及ぼさないものには変化しないんですよ。ずっとゴミであり続ける。だからこそ、もうこれ以上ゴミを作らない世界を作っていこう、全人類の暮らしを作っていこうということを、みんなにアピールしながら航海していくということですね。それが大切なところです」
●現在は準備期間っていうことですよね?
「そうですね。2023年の11月から2024年の10月まで、日本一周航海練習ということをしまして、山口県の佐合島(さごうじま)というところで航海の練習をしていました。おかげさまで航海のクルー、ずっと一緒にいつも漕いでくれる常駐クルーが私を含めて3人誕生しました」
●おお~~!
「そして、日替わりクルーという、『ミンナ』を作った子供たちとか、作ってない子供たちもみんなで一緒に漕いでいこうっていうのが、このプロジェクトなんですね。今回、体験教室に参加してくれた子供や大人たちも入れて、60名以上の日替わりクルーも誕生しました」
●この「キラキラ星プロジェクト」が本格的に始まるのは、いつ頃からなんでしょうか?
「今年2025年の4月から航海がスタートします」
(編集部注:今年4月から始まる日本一周の航海は、まず、瀬戸内海を2年かけて巡り、その後、九州編、日本海編、北海道編、さらには太平洋編、南西諸島編と続く予定。毎年、寒い時期は避けて、4月から10月に航海することを繰り返し、7年ほどで日本一周を終える構想になっています)

ドキュメンタリー映画『みんなのふね』
※そんな雨宮さんのプロジェクト「JOMONさんがやってきた!」は、実は第一章の活動が映像として記録され、ドキュメンタリー映画として、ついに完成。タイトルは『みんなのふね〜Jomon-san has come』。監督は、雨宮さんが全面協力した「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の撮影クルーだった「にしやま・ゆうき」さんというかたなんです。
この映画は、雨宮さんのほうから「にしやま」さんにアプローチし、これからやる活動を映画にしてほしいと頼んだそうですね。映画にしたいと思ったのは、どうしてなんですか?
「『JOMONさんがやってきた!』というプロジェクトを言葉で言っても、なんじゃそれ!? っていう、わけのわかんないプロジェクトなんですけども、それをより知っていただくために、いちばん大切な、杉の木の命をいただいて、全国の子どもたちと舟を作ったというところを、それに参加したわずかな人しか見てないわけですよ。
そこがいちばん大切な部分で、舟ができちゃったら、みんなそのことを見ようともしないし、なかなか見られない。そこを映像を通して全国の人たち、そして全世界の人たちに知ってもらいたい! そういう思いで、これは絶対に映像に残さなきゃと思って、私の知り合いにもテレビ局の人とかいましたけども、みんな断られて、最後の最後に頭に浮かんできたのが、にしやま監督だったんです」
●へぇ~! 完成版はご覧になりました?
「はい! 昨年の12月7、8日と、先行上映会やりまして・・・」
●どんなお気持ちになりましたか?
「いやもう、ありがとうございますって、これしかないですね! 素晴らしい映画です。本当に自分で言うのもなんですけども・・・」
●英語の字幕が入っているんですよね?
「そうです。このプロジェクトは、全世界の人でやっていかないと絶対に達成できないので、英語(の字幕)も入って、全世界の人に発信していきたいですね」
●『JOMONさんがやってきた!』は現状、どんな構想になっていますか?
「今のところ、今年の4月から航海が始まって、7年間かけて日本を一周できたら、その後は世界一周です!」
●おお~!
「これを5年かけてやります。で、日本を出発して5年後に戻ってこられたら、次はアメリカ大陸に向かって、今度は各大陸の沿岸のゴミを拾う航海をずっとしていきますね。これはおそらく300年ぐらいかかるんじゃないですかね」
●うわ~、じゃあ、後継者が必要ですね?
「そうですね。全国にタネを撒いてきましたし、おかげさまで日替わりクルーの練習にも、子どもたちが参加してくれていますし、常に私も“次は頼むぞ!”っていうことを言いながら一緒にやっていますよ」
●改めてになりますが『JOMONさんがやってきた!』の活動を通して、いちばん伝えたいことを教えてください。
「いちばん伝えたいこと・・・これはみなさん、全人類がこの地球船というかけがえのない、ひとつの船に今乗って暮らしているわけですよ。みんなで同じ方向を向いて、キラキラ星に向かって漕いでいかなければ、絶対に達成できないプロジェクトなんですね。
必ずひとりひとりにできることがあって、その小さな行動が絶対に大きな成果を生んで、ゴールすることができるので諦めないで、みんなの心をひとつにして、毎日漕いでいく、毎日楽しく仲よく暮らしていくっていうことを心がけて、漕いでいってほしいなと思います。この『地球船』をね」
●今だからこそ私たちは、縄文時代の暮らしとか考え方に習う必要がありますよね?
「そうですね。科学万能の、この社会が本当にいいんだ! ではなくて、やはり世界の状況が今こういう結果になっているわけですから、一度見直して、本当にこの文明社会がいいのかをしっかり考え直してほしいですね」
INFORMATION
雨宮さんが全身全霊で取り組んでいるプロジェクト「JOMONさんがやってきた!」では、活動資金を寄付という形でも募っています。ぜひサポートをお願いします。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎JOMONさんがやってきた!:https://jomonsan.com
ドキュメンタリー映画『みんなのふね〜Jomon-san has come』は順次、全国で公開予定。3月8日には雨宮さんの地元、山梨県甲州市にある勝沼市民会館で上映されることになっています。この映画は自主上映も可能だということで、上映会のスケジュールも含め、詳しくはオフィシャルサイトを見てください。
◎『みんなのふね』:https://tinymousenet.wixsite.com/everyonesboat