2023/7/23 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WILDFLOWERS / TOM PETTY
M2. 花の名 / BUMP OF CHICKEN
M3. 愛の花 / あいみょん
M4. FLOWERS IN THE WINDOW / TRAVIS
M5. ハイビスカス / bird
M6. A FOREST / NOUVELLE VAGUE
M7. FLOWERS / EMOTIONS
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/7/16 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「海の日」を前に、東京湾でコンブを養殖し、活用している「幸海(さちうみ)ヒーローズ」の共同代表「富本龍徳(とみもと・たつのり)」さんです。
東京湾でコンブが育つの!? っと疑問に思ったかたもいらっしゃるかも知れませんが、実は立派に育つそうですよ。
そんなコンブは水中で光合成を行ない、二酸化炭素を吸収。その吸収率は、なんと、杉の木のおよそ5倍の量だそうです。
富本さんは、私たちが直面している地球温暖化などの環境問題にコンブが大きな役割を果たしてくれると期待しています。
きょうは、地球を救うかもしれない、コンブの可能性に迫ります。
☆写真協力:幸海ヒーローズ

横浜市金沢区でコンブ養殖
※SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGsです。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。
今週は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「気候変動に具体的な対策を」、
そして「海の豊かさを守ろう」ということで、東京湾でコンブを養殖し、活用している富本龍徳さんの活動をご紹介します。
富本さんは2016年にコンブの養殖に取り組み、2年ほど前に「幸海ヒーローズ」として活動を再スタートさせました。「幸海ヒーローズ」の「幸海」は、実は「里海」のミスプリントが発端になっているそうです。
富本さんは「幸海」という響きに惹かれたのと、「海の幸」という言葉があるように、海は私たちに海産物という恵みを与えてくれる。その一方で「海にとっての幸せとは何だろう」、そんな思いもあって、「幸海ヒーローズ」と名付けたそうです。
●「幸海ヒーローズ」では、具体的にはどんな活動をされているんですか?
「ひとつはコンブ養殖を通して、温暖化対策とか生態系の保全ということで、神奈川県横浜市金沢区の漁師さんと一緒にコンブ養殖をしながら、作ったコンブを水揚げして、利活用するっていうところまでをやっている団体です。
コンブが海の中にない期間は、たとえば環境教育っていう観点で、小学校中学校に行ってコンブとか海の話をしたり、コンブを取り扱いたいっていうレストランさんがいたら、そこにコンブの説明に行ったりとか、そんな感じですね」
●東京湾でコンブ養殖しようと思っても、そう簡単ではない気がするんですけど・・・。
「そうですね。いろいろ権利関係とか法律関係とか難しいこともあるんですけど、そもそも本当にコンブが東京湾で育つのか、みたいなところは、ずっとドキドキしていたんです。でも意外とすごく豊かに立派なコンブができるんですよね」
●もともとコンブがない場所で、コンブを養殖することに対しては、何かためらいみたいなものはなかったですか?
「もともとコンブの原種は横浜にあるわけではないので、北海道の方たちから、タネを分けていただいて養殖しているんですけど、だんだん年数を重ねていく上で、ほかの環境団体さんから「君たちのやっていること、大丈夫なのか?」とか「いいのか? それで」って厳しく言われた時期もありました。
やっぱりそういう連絡がくると、葛藤っていうのはあるんです。そもそも水温が上がってくると、コンブ自体も海の中で枯れたり、溶けちゃうっていう表現をしているんですけど、枯れたりもしますし・・・。あとはコンブって赤ちゃんを胞子として出すんですけど、胞子が出る前に(コンブを)水揚げしているので、そこは今のところ問題にはなってないという状況ですね」
●自分たちを信じてやり続けてきたっていう感じなんですね
「そうですね」

●養殖しているエリアは、どれぐらいの広さなんですか?
「今やっているのが、僕たち畑とか柵とかって言い方をするんですけど、
今のところ20メートル×20メートルの柵を作って、それが2面分ですね」
●収穫量でいうと、どれぐらいですか?
「コンブの収穫量でいうと、だいたい6トン前後ぐらいが毎年の水揚げになりますね」
(編集部中:海の藻と書く「海藻(かいそう)」の仲間、コンブ。日本で採れるのは10種ほどで、その90%以上が北海道産だそうです。コンブには水溶性食物繊維、ミネラル、そして、うまみ成分のグルタミン酸など、栄養素が豊富に含まれています。さらに、番組の冒頭でもご紹介しましたが、光合成によって、樹木よりもたくさんの二酸化炭素を吸収してくれる特性にも注目が集まっています)

コンブに強い衝撃!?
※東京都出身の富本さんは食のコンサルティング会社を退職したあと、フリーランスとして、地方の産物を東京で販売する営業支援などを行なっていたそうです。
●そもそもなんですが、コンブとは、どうやって出会ったんですか?
「秋田県の三種町っていう町のイベントに参加した時に、東京で物産展をやった時に、たまたま三種町の隣町で、アワビの陸上養殖っていう技術でアワビを販売されていた会社さんがあって、お昼休みに“きょうの売り上げ、どうです?”みたいなそんな世間話をしていたんですね。
その時にアワビがコンブとか海藻を食べるってことも知らなくて・・・(コンブは)アワビが食べるだけじゃなくて、環境にもすごくいいんだよっていうことを言われた時に、なんか雷が落ちてきたような強い衝撃があったんですよ。
で、調べたらコンブって使い方が無限にあって、今自分が遠くの遠くの存在に感じている環境問題に対しても、こんな身近な素材でアプローチできるのかと思ったら、すごくスイッチが入っちゃって、そこからずっとやっていますね」
●具体的にコンブのどんなことがわかったんですか?
「もちろん人間が食べて健康にいい部分もありますし、ミネラルがたっぷりなので、たとえば畜産の牛とか豚とかの飼料にもなったり、肥料として作物にプラスになったりとか・・・。
ほかには銭湯さんとコンブ湯っていう取り組みをやっているんですけど、肌にも良かったりとか、本当にいろんな汎用性があって、すごく面白い素材だなと日々思っています。」
●コンブはすごい! というのを感じたとしても、それに人生をかけようと思うのはなかなかないと思うんですけど、やってみようって思えたのはどうしてなんですか?
「やっぱり今お伝えしたように、可能性がすごく無限にあるなっていうところに携われたら、きっといろんな方とコミュニケーションできて、そんなに楽しい仕事はないんじゃないかなと思って・・・」
●でもすごいですね~、コンブをいちからやってみようって思われたわけですね。で、今につながっているということですね。
「そうですね」
(編集部注:「幸海ヒーローズ」では「ぶんこのこんぶ」というブランド名で、商品展開。生のコンブほか、クッキーやアイスクリームなどを作っているそうです)

コリコリ食感、香りと色味が若い!?
●コンブというと北海道の寒い地域の特産品っていうイメージがあるんですけど、横浜市の金沢漁港で養殖されているコンブには、どんな特徴があるんですか?
「いい質問ありがとうございます。実際、横浜のコンブは種類としては真コンブっていう出汁のよく出るブランド・コンブのタネで養殖しているんです。期間的に北海道のコンブと違うのは、北海道は海がずっと冷たいので2年ぐらい養殖できたりもして、10メートルぐらいの巨大な長さになって、厚みも出てくるんです。
そうすると食物繊維だったりがぎゅっとしてくるので、それは乾燥コンブに適したコンブなんですけど、僕たちがやっているのは11月から12月ぐらいにタネ付けして、水温が上がってくる4月ぐらいには水揚げするので、どちらかというと薄いコンブなんです。
それでも2〜3ミリの赤ちゃんコンブからスタートしたコンブが、4か月後には4メートルにも育つんですね。たとえば食感でいうと、すごくコリコリした歯ごたえのある食感で、若いコンブなんで香りが強かったり・・・あとは色味がとっても鮮やかなところが特徴になりますね」

●自然相手の作業じゃないですか。難しいなって感じることはないですか?
「それがですね、お陰さまでコンブの収穫量は結構安定しています。畑と違って海がコンブ育ててくれるので、草むしりする時間もいらないですし、肥料を与えることもないんですね。なので、ほとんど手がかからないっていう・・・」
●そうなんですね! コンブに人生かけてみようって思われて、初めて収穫した時はどんなお気持ちでした?
「やっぱりすごく嬉しかったですね、純粋に。それでこんなにも巨大な、生で見るのもその時が初めてだったんですけど、すごいフォルムというか、形には圧倒されました」
●どんな感じなんですか? 収穫の時のコンブって見たことがないので・・・。
「そうですよね。僕たちが多分一般的に見ているのは、スーパーに並んでいる緑色のワカメとかだと思うんですけど、まず(コンブの)色は茶色なんですよね。海の中に入っている間っていうか・・・その茶色の物体が目の前に現れた時には、本当になんかクマが目の前に現れたぐらいの衝撃でしたね」
コンブのお風呂!?

※都内の銭湯で「コンブ湯」というのを展開されているそうですね。これは、湯船にコンブが入っているんですか?
「まさしく、そういうことです。なので見方によっては、おでんの具材になったみたいとか(笑)、出汁の気分になったみたいっていうこともあるんですけど・・・」
●たしかに!(笑)
「いちばん最初にコンブ湯をやったきっかけは、ヨーロッパに行くと、タラソテラピーっていう海水とか海の泥とか海藻とかと人間とで、長いお風呂の歴史があるんですけど、日本でタラソテラピーをやろうと思ったら、多分高級ホテルのエステでとか、すごくお金も高いですよね。
そういうことをもっともっと身近に感じられることはないかなと思って、スタートしたのがきっかけで、日本には公衆浴場の文化があると思って、それで(銭湯の)門を叩いたのがコンブ湯のきっかけですね」
●お湯加減とかってどういう感じなんですか?
「わかりやすくいうと、たとえば中華料理の、あんかけのチャーハンとか、あんかけのラーメンっていつまでも熱いじゃないですか」
●熱いです!
「それと一緒で、コンブのヌルヌルのとろみというか、ヌルヌル成分がお湯に溶けた時に、あんかけと一緒でお湯が冷めにくいというか、そんなこともあって保温効果があるんじゃないかと思います」
●そうなんですね~、みなさんの評判はどうでした?
「SNSを見ても、みなさん面白いリアクションをしてくださって、本当に出汁になったみたいとか、結構ポジティヴな反応があって、結構、常連さんもできてきたような企画になっています」

(編集部注:お風呂つながりでいうと、富本さんは繊維会社と一緒にコンブを練り込んだ繊維を開発、なんと「サウナハット」を作っちゃったんです。このサウナハット、吸水性と保湿性に優れているので、サウナ室で髪の毛をしっかり保護してくれるそうですよ)
コンブのバスボム!?
※ほかにも、海外のブランドとのコラボレーションが実現したそうですね?
「みなさんがわかりやすいブランドさんとコラボレーションさせていただいた、いい事例なんじゃないかなと思っているんですけど、イギリスの大手コスメ・ブランドのLUSHさん」
●あの入浴剤とかバスボムとかの? え~、私、使っています!
「使っていますか! 香りもすごくあっていいですよね! LUSHさんの入浴剤に今回コンブの原料を採用していただいています。LUSHさんもサステナブルの素材を探されていらっしゃる中で、僕たちの環境保全だったりっていうところの観点が共鳴したというか、そういったところもあって、今回使っていただいたんじゃないかと思いますね」

●そのバスボムもスタジオにも持ってきていただきましたけれども、とってもいい香りですね!
「本当に(お風呂に)入っているだけで、すごく心地良くなります。ここにもコンブが含まれていて、やっぱりお風呂に使っていただくと、ヌルっとしたような感触がありますね」
●とってもカラフルでこれがコンブというのは、全く見た目ではわからないですけれども、原料としてコンブが使われているということなんですね。
「はいそうですね」
コンブは地球を救う
※次のコンブの収穫はいつ頃なんですか?
「次は、また来年の4月に予定しています」
●一般の方が収穫に参加できたりするんですか?
「そうですね。みなさん北海道に行ったりしないと、コンブの収穫の時期も限られていますし、行かないと多分そういう体験とか見ることってできないと思います。それを逆に一般の方に、今海って大変な状況だよとかっていうことも伝えつつ、実際に採れたてのフレッシュなコンブを、しゃぶしゃぶにして一緒に食べたりとか、そういうことをしながら、ちょっと海について考えてみようっていう時間を設けて、一般の方に来てもらえるような、開けた収穫の場になっています」
●いいですね! 富本さんはコンブと出会って人生がガラリと変わりましたけれども、やっぱりコンブで世界は変わりますか?
「そうですね。本当にこのコンブの素晴らしさ、可能性に気づいてくれる人が増えて、一緒にコンブは面白いから何かやろう!っていう方が増えていけば、海の問題も解決していきますし、僕たちにとって健康的にもいいですし、地球がどんどん良くなっていくんじゃないかなと思います」
●コンブは地球を救ってくれますか?
「そうですね! コンブは地球を救うと思います」

☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。
INFORMATION
富本さんが英国のナチュラル・コスメ・ブランドLUSHと開発したバスボム、一箱に3個入っていて、そのひとつに富本さんたちが養殖したコンブが使われています。商品名は「涼の一服」。販売価格は1,400円です。お買い求めはLUSHのサイトから、どうぞ。
◎LUSH:https://www.lush.com/jp/ja/p/ippuku-ryo-gift
富本さんの活動については「幸海ヒーローズ」のサイトをご覧ください。
◎幸海ヒーローズ:https://sachiumi.com
2023/7/16 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. THE TIDE IS HIGH / BLONDIE
M2. FIELDS OF GOLD / STING
M3. HEY, SOUL SISTER / TRAIN
M4. OCEAN EYES / BILLIE EILISH
M5. 伝えたいことがあるんだ / 小田和正
M6. SOMEONE LIKE YOU / ADELE
M7. ぼくが地球を救う〜Sounds of Spirit〜 / Skoop On Somebody
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/7/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、旅とサーフィンをこよなく愛するシンガーソングライター「東田トモヒロ」さんです。
東田さんは1972年生まれ、熊本市在住。2003年にメジャーデビュー。旅とサーフィン、スノーボーディングをこよなく愛し、自然に寄り添った暮らしや、旅をモチーフにして生まれる曲と、オーガニックなサウンドが多くのファンを魅了しています。
そんな東田さんは、いち早くエネルギーと食べ物の自給自足に取り組んでいるほか、福島県相馬市の保育園にお米や野菜を届ける活動もされています。
そして6月7日にデビュー20周年、通算16作目となるアルバム『Rough Morning』を発表されました。「ラフ・モーニング」というタイトルは、東田さん曰く、英語にはない言葉だそうですが、ある日、ライヴが終わって、海のそばに車を止め、ライヴの余韻や疲れもあって、そのまま寝てしまい、朝を迎えた時に、なんとなく車の中がちらかっていることがあったそうです。
そして曲を作り始めたら、メロディとともに思いついた「ラフ・モーニング」というフレーズを口ずさんだところ、その言葉がしっくりきたので、残すことにしたそうです。
そんな東田さんに熊本での暮らしぶりなどうかがうほか、デビュー20周年を記念するオリジナル・アルバム『Rough Morning』から旅をテーマにした新曲もお届けします。
☆写真協力:東田トモヒロ

曲のアイデアは旅先で
※東田さんは旅をモチーフに曲作りをすることも多いそうですが、今回の20周年記念アルバムに収録されている曲も、旅で出会った景色や人からインスピレーションを得て作ったとか、そんな感じなんですか?
「そうなんですよ。だいたい自分の場合、スタジオとか自宅でギターを持って、さあ曲を作ろうっていうんじゃなくて、ふとアイデアとして思い浮かぶんですね。それがどういう時が多いかっていうと、移動している時が多いんですよ。
車で移動していて、走っている時になんとなくメロディを思いついて、それでボイスレコーダーで、そのアイデアを録っておいて、あとで聴き返す時にピアノの前に座ったり、ギターを持ったりして、あの時思いついたメロディにはどんなコードが合うんだろうとか、そうやって作っていくんですよね。
だからツアーの途中で曲を作って、ひとつのツアーが終わったら、なんか1曲アイデアが残っていて、その結晶がアルバムっていうか・・・今回のアルバムもそうやって作りましたね」
●旅先で見た景色とか出会った人とか、そういったところからインスピレーションを得ていらっしゃるんですね。
「まさにその通りです。 『Traveling』っていう曲は・・・よく覚えているのが四国で信号待ちしている時にメロディを思いついて・・・あ、これいいぞと思って、ちょうど旅の途中だったから『Traveling』っていうテーマで書いてみようと思って、 四国を旅している間に作りましたね、歌詞まで全部。それをよく覚えていますね」
●ヘぇ〜! 四国だったんですね。
「愛媛でどこかの信号待ちしている時に・・・そうそう(笑)」
(*放送ではここで「Traveling」を聴いていただきました)
みんなで田植え、チャリティ米
※東田さんは地元熊本で農家さんから田んぼや畑を借りて、4家族でシェアし、役割分担しながら、お米や作物を育てているそうです。毎年育て方などを勉強し、10年ほど続けているそうですよ。今年も田植えを行なったそうですが、イネの苗は手植えなんですか?

「もう今ほとんど使われなくなったんだけど、手押しの田植え機っていうのがあって、それはもうほとんどの農家の方が使っていないので、余っているんですよね。だから安く譲ってくださったり、あるいはくれたりする場合があるんですけど、それを使っているのと、もうひとつ別の場所は(田植えをする時に)毎年呼びかけるんですよ、ワークショップとして。30人ぐらい集まってくださったりします。
そこはなんでそういうふうにしているかっていうと、手植えでやるんですよね。手で植える体験を子供たちとか、大人もやったことない人たちを募って、総勢30人から40人ぐらいで手で田植えをしています。
で、しかもそこの手で植えた田んぼで収穫したお米は、チャリティ米にして、福島の南相馬の保育園に送っているんですね。南相馬はまだ、飼料米しか作れないということで、給食のお手伝いをできたらなと思って、それも10年続けているんですけど、その手植えのゾーンはチャリティ田んぼにしていますね」
●九州の季節の野菜や果物とかも届けていらっしゃるんですよね?
「それも一環で『チェンジ・ザ・ワールド』っていう活動をやっているんです」
●その保育園の子供たちに、お米や野菜を送ろうと思ったきっかけは、なにかあったんですか?
「そこの保育園は原発の事故のあと、地域のものがほとんど食べられなくなって、僕らは安全な食べ物を食べられているんだけど、それで困っているというか必要とされているところに、なんか手伝いできたらなということで、東日本大震災のあと、1年後からそういう活動を始めたんですよね」
●そうだったんですね。
「そうそう、それを今でもお米という形で、毎年お米を作って送ることを続けています」

自然とつながる安心感
※今年、野菜は何を育てているんですか?
「もうね、野菜は諦めました(笑)」
●あれ!? どうしちゃったんですか?(笑)
「 あのね、野菜はやっぱり、毎日そばにいる人じゃないと無理かも・・・。だから、野菜はやめて果物とお米だけにしました! もう本当にね、大変ですね! 何でもかんでもやろうとすると・・・。やっぱり本業は音楽だから(笑)、無理しないでできることをやらなきゃなと思ったんですよ」
●果物とお米にしたんですね。
「果物とお米だったら、そんなに毎日見ていなくても大丈夫じゃん。オクラとか一回植えて、旅から帰ってくると、もうなんだろ、あれ・・・すっげえ巨大なハサミみたくでかくなって、もう固くて食べられないみたいになっちゃうから・・・」
●そうですね。お世話が大変ですよね(笑)。
「だから果物だったら、この時期! って決まっているじゃないですか。そこだけいれば、美味しく食べられるし、田植えも稲刈りもそんな毎日やるもんじゃないから・・・だから田んぼは意外とミュージシャン向きなんですよ、やったほうがいいと思う、ミュージシャンみんな」

●食べるものを自分で育てるとか、自給自足に近い生活を送るっていうのは、なにか理由があるんですか?
「いや、特に理由はないんですけど、単純に楽しいっていうのと、お米もそれまで長いこと食べてきたけど、どうやって作られているかって実際やってみるまで知らなかったから・・・。で、やってみたら、なかなか言葉では、ロジックでは説明しづらい、安心感っていうか、そういうものが得られるんですよね。
自分が大地とつながって存在しているというか、それはすごくサーフィンと似ていて、海に入る時っていうのは本当に自分の身ひとつで、サーフボードはもちろんあるんですけど、すごくシンプルな形で自然とつながれるじゃないですか。
太陽があって海があって砂浜があって、自分がこの地球というか自然の中に存在しているとすごく実感できるんですよ。田んぼとか、それこそ果樹を置いている山の一部、そういうところにいるだけで、自分がちゃんと自然とつながった存在としてあるっていう、それはすごく安心する要素なんですよね。
自分を肯定できるというか、自分を確認できるし、あと静かに自分に自信が持てるというか、なんかそんな気がするんですよね。だからこれはやっぱり自分のために続けるべきだなというふうに思って、きっかけは些細な、ちょっとやってみたいなくらいのことだったんだけど、サーフィンと似ていて、気づけば自分のライフワークというか、欠かせない活動のひとつになっていますね」
(編集部注:東田さんが育てている果物は、この時期はプラムがたくさん成るそうですが、野鳥にも食べられてしまうので、どっちが先に採るか、鳥と格闘しているそうですよ。またこれからは、ブルーベリーの時期になるので、朝、実を採って食べる新鮮なブルーベリーの味は最高だとおっしゃっていました)
ソーラー発電は音がいい!?
※熊本のご自宅でソーラーによる自家発電を行なっているそうですが、なにかきっかけとかあったんですか?

「そういう暮らしを、オフグリッドっていう暮らしをしている人がいるっていうのは長年知っていたんですね。それこそ完全に自給自足しているというか、僕の友達にもいるんですよね。煮炊きは全部薪でやって、電気は僕と同じようにソーラー発電で蓄電して、電気をバッテリーから取って、それを使って山の水を引いて暮らしている、その人は完全にオフグリッドで阿蘇のほうに暮らしているんですけど、さすがに(僕は)そこまではできないなと思って・・・。
でも自分の暮らしの中で、一部そういうスタイルでやれたらいいかもな、自分にはそのぐらいでいいかもなというか、それで電力の一部を自分で賄おうと思って、そういう暮らしをしている人にアドバイスをしてもらったんです。

それを導入して、今自分が使っているスタジオが、小屋みたいなところがあって、そこにドラムセットとかアンプとかスタジオの機材を全部置いているんですが、そこの電気と、もうひと部屋ぐらいは全部ソーラーで賄っていて、スタジオは完全オフグリッドですね。
なので、今回のアルバムも太陽の光でできた電力で作りましたね。6枚の(ソーラー)パネルがあって、バッテリーはゴルフ場のカートで使っているやつを4台置いていて、1200ワットは発電しているんですよ。十分にレコーディング機材はそれで動くんですよね」
●雨とか曇りの日はどうされているんですか?
「さすがです! そうなんです。だから曇りの日が3日続くと、さすがにバッテリーに負荷がかかっちゃうから、4日目はもう使わないようにしているんだけど、だいたい日本は4日目に晴れるんですよね~、いや〜わかんないけど、多分、多分ね(笑)」

●スタッフから聞いたんですけど、私がパーソナリティーになる前に、この番組にシアターブルックの佐藤タイジさんにご出演いただいた時に・・・
「あー、タイジさん!」
●ソーラー発電の電気で録音すると、音が良くなるっておっしゃっていたみたいなんですけど、それは東田さんもそう感じることはありますか?
「それはわかんないですけど(笑)、あ〜、タイジさん、多分メンタルから入っていると思う(笑)、これは音がいいぞ!って。でも確かに彼が言っていることも一理あって、バッテリーから割とロスがなく、発電した場所から距離がほとんどないから、そこでロスが生まれずっていうのは聞いたことはあります。
だから(音が)ピュアだっていうふうに言っている人がいたのは覚えていますね。あとノイズが少ないとかね。そういう意味では、もしかしたらいいのかもしんないけど、エビデンスが(笑)、佐藤タイジの言っていることのソースとエビデンスがほしい(笑)」
スリランカでサーフ&ライヴ!
※東田さんのナチュラルなライフ・スタイルは、やはり音楽にも現れていると思います。その辺は意識されていますか?
「そこをなるべく意識しないように音楽に落とし込めたらいいなと思っているんですよね。意識しないでも、やっぱ出ちゃうでしょうね、音には。
例えばジャック・ジョンソンとか、彼はそこまで意識せずとも、やっぱハワイの空気感って出ているじゃないですか。きっとノラ・ジョーンズだったらノラ・ジョーンズの暮らしの、ニューヨークなのかもわかんないけど、ちょっと都会的な雰囲気とかね。
だから多分、自分も普段の暮らしとか、旅をしている時に感じていること、見聞きしていることっていうのは、やっぱり知らず知らずのうちに出るっていうのがいいんだろうなと思って・・・音楽と向き合う時はかえって意識しないようにしていますね。そしたらちょうどいい塩梅になるんじゃないかなというか・・・」

●デビュー20周年のアニヴァーサリー・イヤーの最後12月に、インド洋に浮かぶ美しい島、スリランカでライヴを行なうんですよね? なぜまたスリランカだったのですか?
「そうなんですよ。これね、スリランカでライヴをやります! っていうと、そういう名前のカレー屋さんでやるんですか? って言われる時もあるんですけど(笑)、本当にスリランカでやるんですよ!」
●あの、スリランカですよね?
「あのスリランカですね。これ、なんでかって言うと、一度行ったことあるんです、実は。プロモーション・ビデオの撮影で、『LIFE MUSIC』っていう曲の・・・それ今YouTubeにはもう(ビデオは)なくなっちゃっているんですけど、もう一回スリランカを旅する映像を撮りたいなっていうのがあるのと、どこかで(ライヴを)やりたいって思った時に、記念の年だし、そういう記念になるようなところ、例えば、憧れているライヴ会場とか、そういうのもいいなと思ったんだけど、なんかそれってありきたりだなと思って・・・。
やっぱちょっと面白いことやりたいと思って、サーフポイントのすぐそばで(ライヴを)やりたいな~、しかも海外でやったら面白いんじゃないかなっていうのが(笑)、なぜって言われたら、たぶん面白そうだからとしか答えようがないですけど・・・」
●サーフトリップの聖地のひとつであるスリランカには、サーフィンをやりに行くんですか? ライヴをやりに行くんですか?(笑)
「両方ですね! だから日本から行きたいっていう方とは(スリランカに)一緒に行って、サーフィンをやったことない方がもしいらっしゃったら、僕も友達と一緒にサーフレッスンしようかなと思っているし・・・」
●えっ! すごい! 贅沢ですね~。
「ライヴは一回だけなので、あとは全部多分サーフィンしているんで、一緒に波乗りしましょうっていうツアーですね」
●もうサーフィンツアーですね(笑)
「ですね!」
(*ここで「Everything」を聴いていただきました)
☆この他の東田トモヒロさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
東田さんのデビュー20周年を記念するオリジナルアルバム『Rough Morning』にはきょうお届けした「Traveling」と「Everything」を含め、全部で7曲収録されています。ソーラー発電の電力を使って、自宅スタジオでレコーディングした曲はいい意味で力が抜けていて、聴いていると、とてもリラックスできます。旅気分満載のナチュラルなサウンドをぜひお楽しみください。お買い求めは東田さんのオフィシャルサイトから、どうぞ。
また、東田さんは現在、『Rough Morning』リリース・ツアーを行なっていて、7月14日から北海道ツアーに突入します。
そして、アニヴァーサリー・イヤーのファイナルとして12月6日にスリランカでライヴを行なうことが決まっています。
12月5日から4泊6日のツアーが組まれていて、滞在は、ビーチとサーフィンで有名なスリランカの南海岸「ミリッサ」のホテルだそうです。旅行代金など含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎東田トモヒロ・オフィシャルサイト:http://live.higashidatomohiro.jp
2023/7/9 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. OB-LA-DI, OB-LA-DA / THE BEATLES
M2. Traveling / 東田トモヒロ
M3. ROCKIN’ IN THE FREE WORLD / NEIL YOUNG
M4. IT AIN’T OVER TIL IT’S OVER / LENNY KRAVITZ
M5. THE LONG WAY HOME / NORA JONES
M6. キミを見てる / THEATRE BROOK
M7. Everything / 東田トモヒロ
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/7/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、薬膳・発酵料理研究家の「山田奈美(やまだなみ)」さんです。
編集者、そしてライターとして活躍されていた山田さんは「東京薬膳研究所」の「武 凜子(たけ・りんこ)」さんと出会い、薬膳に共感し、武さんからマン・ツー・マンで基本を学びます。その後、北京中医薬大学の日本校で本格的に薬膳を勉強し、資格を取得。そして、おばあちゃんやお母さんから教えてもらった発酵食の知識と、薬膳を組み合わせた、体に優しい季節の食を伝える活動を行なっていて、幅広い世代から支持されています。
また「食べごと研究所」を主宰され、神奈川県葉山町の古民家をアトリエに、和食薬膳教室や発酵教室などを開催されています。
そんな山田さんが先頃、『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』という本を出されました。
きょうは、その本をもとに、薬膳と発酵のふたつの知恵を組み合わせた、手軽で、なにより体にいいお料理や、夏野菜のおすすめレシピなどうかがいます。
☆写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

薬膳のもと、陰陽五行理論
※この本には薬膳と発酵食品を組み合わせたレシピなどが載っています。改めてなんですが、薬膳とはなにか教えていただけますか。
「薬膳というとちょっと難しいイメージがあって、漢方薬の生薬を使ったようなお料理じゃないかっていうイメージがあると思うんですけど、実際は普段使っているような、身近な食材ひとつひとつにも働きがちゃんとあるので・・・全部覚えるのは難しいんですけど、体を温めるとか冷やすとか血の巡りをよくするとか、そういう働きをなんとなく踏まえて、毎日の食べ物で健康を維持するっていうようなものが薬膳になります。
難しいことは何もないですね。体に入ってきて、影響を与えない食べ物はひとつもないので・・・やっぱり自分の体質を知るのが大事になってくるんですけどね。その体質とか季節に合った食べ方をしていくと、本当に病気を防ぐことができると思います」

●薬膳のもとになっている理論があるんですよね?
「そうですね。ちょっと難しいんですけど、陰陽五行理論(いんようごぎょうりろん)というものがあります。陰陽論と五行論が組み合わさったものなんですけれども、古代中国に生まれた哲学のようなものなんです。
陰陽論は、ちょっと聞いたことがあるかもしれないんですね。陰がちょっと冷たいとか暗いとか水とか、下に下がるようなエネルギーとか、そういうものです。陽は明るいとか暖かいとか、太陽のような・・・そういうふたつの相反するエネルギーを、陰と陽とに分けているのが陰陽論ですね。すべての食べ物も、宇宙にあるすべてのものも、この陰と陽に分けているんですね。それが陰陽論になります。
で、五行論。五行は、木火土金水(もくかどこんすい)って言うんですけど、木・火・土・金・水という5つ元素みたいなものを言います。そしてこの“行く”っていう字は、巡るとか循環するっていう意味なので、5つの元素が巡ることによって、あらゆるものが生まれたり、変化していくのが、五行論になります」

陰陽五行理論〜五味・五性
※食物も「五行」に分類されるということですが、本に、五つの味と書く「五味(ごみ)」のことが載っていました。体の中に入ってきたときの働きも含めて、ご説明いただけますか。
「五味というのは酸味・苦味・甘味・辛味、あと塩辛い味の鹹味(かんみ)と言うんですけど、その5つが五味と言います。それぞれ五臓と密接に関係していて、酸味のものは肝臓の働きを補うというか、整えるような働きを持っていて、苦味は心臓、甘みは脾胃(ひい)と言って胃腸ですね。
で、辛味は肺とか大腸の働きにつながっています。鹹味、塩辛い味は腎臓とか膀胱につながっていると言われていますので、それぞれの味を食べることによって五臓を補うことができると考えるのが、五行論の五味ですね」
●つながっているんですね〜。5つの性質と書く「五性(ごせい)」というのも、
山田さんの本に載っていましたね。
「これは食べ物を5つの、温めるとか冷やすとかっていう性質に分けたものなんですね。五性は、熱・温・平・涼・寒と言って、熱性・温性・平性・涼性・寒性・・・平性というのは、温めも冷やしもしない中間の性質です。
涼性はちょっと冷やす、寒性は寒いのでかなり冷やすという性質なんですけど、食べ物によって、冷やすものだったり、温めるものだったりというのがありますので、自分が例えば 冷え性だなと思ったら、できるだけ温めるものを摂っていくと、冷え体質も少しずつ改善されていくことになります」
消化を助ける発酵食品

※薬膳の知恵と、お味噌やお醤油などの発酵調味料を組み合わせることで、どんなメリットや効果が生まれるのでしょうか?
「発酵調味料のメリットとしては、消化がすごく良くなるってことが、まず第一にあげられますね。日本人は、基本的には消化力が弱い人がとても多いんですね、胃腸が弱い人がね。胃はどうしても湿度に弱い、水分に弱いんです。日本は海に囲まれていて、木も多いし、川も多いので、どうしても湿度が高い環境になって、そこに(日本人は)暮らしているので、胃が弱くなりやすいんですね。
大陸の乾燥した所で育っている、中国とかアメリカの人たちと比べると、体温も低いですし、胃の働きがやっぱり弱いので・・・向こうの人たちは本当にガツガツ食べても大丈夫なんですが、日本人は割と胃を壊しやすいんですよね。ちょっと限度を超えるとね。
胃腸が弱いので、それを補ってくれるのが発酵食品になります。発酵食品をちょっとプラスしてあげるだけで、消化を助けてくれるっていう感じになります」
●本当に日本人の体質に合っているんですね。
「そうですね。和食は本当に発酵調味料をいっぱい使うものが多いし、日本はもともと発酵文化なので、やっぱり日本人の胃腸の弱さを補うために、昔から使われてきたんじゃないかなと思いますね」
●そうだったんですね〜。薬膳の働きと発酵調味料を組み合わせる時の、なにかコツみたいなものはありますか?
「できれば、全部じゃなくてもいいんですけど、ちょっと事前に漬け込んでおくとより消化が良くなりますね。お肉類ですね・・・特にタンパク質は消化に時間がかかるものなので、お肉とかお魚もそうですけど、少し10分とか15分でもいいので、塩麹とか味噌に漬けるとかね。そういうのに漬けてから加熱してあげると、より消化は良くなります」
血を巡らす料理〜ナスを皮ごと!?
●山田さんの新しい本『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』に、こんな不調を感じている時は、全身が冷えているから体を温める料理がいいですよとか、疲れやすくて元気がない時は、気を補う料理がおすすめですよという、そんなページがありました。
「不調から見るあなたのタイプは?」というふうに、いろんな設問が載っているので、私もやってみたんです。私は手足が冷えやすいとか、目の下にクマができやすいとか、肩こりがあるということで、血を巡らす料理がいいですよ、と出ていたんですけれども、これからの季節、夏場ですと、どんなお料理がおすすめですか?
「そうですね。血を巡らすのはやっぱり女性にはすごく必要で、血の滞りやすい冷えている人が多いですね。そうすると血の巡りが悪くなりやすいので、そういう人には血を巡らす料理がとてもいいと思います。
あと、温める料理もいいと思いますので、それをミックスしていくといいんです。例えば、夏の血を巡らす(食材)だと、意外かもしれないんですが、ナスはいいですね。血を巡らします。でもちょっと冷やすんですよ」
●冷やすイメージがありますよね。
「ナスはできるだけ皮ごと、皮の紫色のところに一応、血を巡らすような働きとかがありますので、皮ごと食べていただいて、プラス薬味をいっぱい入れてあげるといいですね。だから焼きナスにしたりとか、蒸しナスにしてショウガとかシソとかをたっぷりのっけて、しょうが醤油とかで食べてあげるとか・・・簡単ですがいいと思います」
●早速、ナスを買って帰ります(笑)。夏は外が暑いですけど、電車とかオフィスは寒いじゃないですか。冷房で体調を崩しちゃうこともあると思うんですけど、そういう時はどういうレシピがいいですか?
「やっぱり自律神経がバランスを崩しちゃうことが多いんですよね、寒暖差があると・・・。その時、自律神経は肝臓と考えるんですね、中医学(ちゅういがく)だと。肝が神経を、自律神経を担うので、肝臓にいいのは緑のものとか酸味のものがいいと言われています。
例えば、緑のツルムラサキとか、夏だったらモロヘイヤとか、ゴーヤもいいですよね。そういう緑のものにちょっと酢の物の酸味をプラスしてあげると、自律神経を補う肝の働きを助けることができると思いますので、いいと思います」
和食の基本「さしすせそ」

「納豆と青梗菜、牛肉のオイスター炒め」。
ご主人がご飯をおかわりするほど、美味しくできたそうです。
※私は去年結婚して、毎日、夫のために献立を考えて夕飯を作るようになったんですけど、主婦の知恵として、この発酵調味料さえ使えば大丈夫、というようなコツがあれば、教えていただけますか。
「和食だと『さしすせそ』の基本の調味料がほとんど発酵食品になります。『さ』は昔は砂糖もみりんだったと言われていますので、みりん、酢、醤油、味噌ですよね。その基本の調味料を毎日使って、(みなさん毎日)だいたい使うと思うんですけど、そういうのを使っていれば、基本的には発酵調味料は摂れていると思います。あとそこにプラスして塩麹とか醤油麹とかがあると、より料理の幅が広がるっていう感じがしますね」
●山田さんの本を読んでいて、塩麹がいろんなレシピに使われているなっていう印象を持ったんですけど、やはり麹はいいですか?
「麹は日本の国菌(くにきん)って言われているぐらい日本ならではの菌だと思うので、(日本人の)体にも合っていると思いますね。なので、麹でいろんなものが作れるのでとてもいいと思います」
●具体的に麹を使った料理でいうと、なにかありますか?
「塩麴ですか? 塩麹ね・・・いろいろ使っているので・・・」
●塩麹をどう使うと美味しいよ、とか、おすすめだよ、とかあれば、ぜひ。
「鶏肉とかにちょっと塩麹をつけて、それで煮込んでもいいし、唐揚げとかにしちゃっても、とても柔らかくなって美味しいですね。煮物にするときは醤油麹にしてあげると、醤油系の煮物にはとても合いますので、いいと思いますね」
●やっぱり夏には夏の、秋には秋の、旬の食材をお料理に取り入れるのがいいですよね?
「基本そうですね」
●夏野菜でいうとおすすめは?
「おすすめは、そうですね・・・これから暑くなってくると、あまり使わない人も多いんですけど、冬瓜(とうがん)とかね。薬膳ではとてもいい食材だと考えられていて、(冬瓜は)水を出してくれるんですよね 。
この時期、だんだん湿度が高くなると、体の中に水が溜まりやすいんだけど、水が溜まってくると冷えるし、肩こりになったり頭痛がしたりとか、いろんな不調につながっていくので、とにかく水は綺麗に出してあげるのが大事なので、その時に冬瓜とかトウモロコシとか、そういうのがとてもいいです。

私の新しい本だと、冬瓜のエスニックスープが載っているんですけど、冬瓜も体を冷やすので、ちょっとエスニック風の黒酢とかナンプラーとかショウガとか、そういうものを入れて、温める食材をプラスして、スープにしてあげると、とてもいいと思います」
(編集部注:山田さんはご自宅でお醤油や米麹、納豆やオイスターソース、そしてお味噌などもご自分で作っていらっしゃいます。初心者でも作れる発酵調味料をお聞きしたら、塩麹と醤油麹を勧めてくださいました)
常に幸せを感じながら
※山田さんのお料理は「旬の食材をシンプルに調理」が基本なんですよね?
「そうですね。旬の食材で美味しい野菜だと、本当に何もしなくてもとても美味しいですね。ただ茹でただけとかでも美味しいので、できるだけ手をかけないっていうか、味を濃くしないで素材の味が出るようにすることを心がけています」
●無意識にあれ食べたいなって思う時があったら、それは体がそれを欲しているっていうことですか?
「そういうふうに感じていただけるといいと思います。あまりわからない人も多いんですけど、欲していることを感じられるのはすごくいいことですね。
甘いものを食べたいなっていう時は、けっこう疲れている時だと思うので、それに従って、お砂糖の多いものじゃなくて、穀物とか芋類とか小豆とか、そういう甘みのものを摂っていくといいと思いますね。体の欲しているものを食べるのは、基本的にとてもいいことだと思います」
●体を整えるにはやっぱり体の声を聞いて、必要なものを摂っていくことが大事になりますか?
「そうですね。とても大事だと思います。あとは季節に合うものですね」
●旬のものとか?
「そうですね」

●山田さんは1日の中で、幸せだなって思う時は、どんな時ですか?
「なんかもう、常に幸せっていうかなぁ~(笑)。あまり嫌だなって思う瞬間がないので・・・」
●素晴らしいですね~!
「好きなことをやっているからかも知れないんですけど、基本的に日々毎日、常に幸せを感じられていると思っています(笑)」
INFORMATION
山田さんの新しい本、おすすめです! お話にあった陰陽五行理論について、わかりやすく載っていますよ。そして、普段の食材と発酵食品を組み合わせた手軽で美味しいレシピが、おかず、汁物、ご飯と麺、そして保存食に分けられ、全部で84のレシピが、豊富な写真とともに紹介。どれも美味しいそうで、作りたくなっちゃいますよ。薬膳と発酵の力を知る一冊、ぜひあなたのおうちにも常備してください。ナツメ社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎ナツメ社:https://www.natsume.co.jp/books/18012

山田さんが葉山のアトリエで行なっている「和食薬膳教室」は現在は、4月スタートの年間コースとなっているそうです。空きがあれば、体験で参加することもできるとのこと。ほかの教室のことなども含め、詳しくは「食べごと研究所」のオフィシャルサイトを見てください。
◎食べごと研究所:http://tabegoto.com
2023/7/2 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. BAD DAY / DANIEL POWTER
M2. COUNT ON MY LOVE / LIZ PHAIR
M3. TIME OF MY LIFE / MACY GRAY
M4. EGGPLANT / MICHAEL FRANKS
M5. レシピ / 山下達郎
M6. Soup / 藤原さくら
M7. HAPPY EVER AFTER / JULIA FORDHAM
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/6/25 UP!
◎鈴木晶友(セーリング・チーム「MILAI」のスキッパー)
『地球一周の大冒険「Globe 40」! MILAIの激闘に迫る!』(2023.06.25)
◎清水国明(芸能界きってのアウトドアズマン)
『清水国明さんの定点観測28回目!~「あのねのね」結成50周年全国ツアー』(2023.06.18)
◎中島淳(水生生物の研究者)
『自宅に「湿地帯ビオトープ」を作ろう!~生物多様性につながる水辺づくり』(2023.06.11)
◎泉 賢太郎(千葉大学准教授で古生物学者)
『若き古生物学者、ウンチ化石に挑む!?~地層から読み解く化石の謎』(2023.06.04)
2023/6/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、セーリング・チーム「MILAI」のスキッパー「鈴木晶友(まさとも)」さんです。
稲毛ヨットハーバーのジュニアヨット教室に参加したことがある鈴木さんは、ヨットで地球を一周したい、そんな夢を抱き、なんのツテもなく、単身フランスに渡り、地道な活動を経て、ついにはセーリング・チーム「MILAI」を結成します。
このチームはスキッパーの鈴木さんのほかに、セーリング・パートナーとして「中川絋司(なかがわ・こうじ)」さん、そしてフランス人の女性ふたり「エステル」さんと「アン」さん、イタリア人の「アンドレア」さんの、5人から成る国際チームなんです。

そんなセーリング・チーム「MILAI」が挑戦したのが、初開催となった「Globe 40(グローブ・フォーティー)」。全長12メートルのヨットにふたりで乗って、地球を一周する外洋ヨットレースなんです。
2022年6月にモロッコのタンジェをスタート、途中7箇所の港に寄り、8つのレグ(区間)を、およそ9ヶ月かけて、ゴールのフランス・ロリアンに戻る大冒険です。総距離はおよそ55,000キロと想像を絶します。
今週は、そんな壮大なレースに挑戦し、見事完走を果たしたセーリング・チーム「MILAI」のスキッパー、鈴木晶友さんをお迎えし、「Globe 40」の激闘に迫ります。
☆写真協力:Team MILAI

第1レグはトップ! 第2レグは嵐!?
● 前回のご出演がちょうど1年前の6月ということで、その時はリモートでお話をうかがったんですけれども、今回はこうしてスタジオにお越しいただきました。ありがとうございます!
「初めまして! 今さらになりますが、よろしくお願いします」
●いや〜やっとお会いできました! よろしくお願いいたします。帰国後、いろいろ報告会とかも開催されたそうですけれども、いかがでした?
「思っている以上にみなさんが歓迎してくださって、やっと帰ってきてくれたねって言っていただきました」
●私たちもですよ~。
「ありがとうございます。ベイエフエムのみなさんにも歓迎していただいて、嬉しいです。 本当に自分が帰ってこられたなっていうのを嬉しく思います」

●鈴木さんがチームを組んで挑戦された、地球を一周する外洋ヨットレース「Globe 40」を振り返っていきたいと思うんですけれども、結果としては当初の目標だった完走を見事果たして、総合3位でフィニッシュしました。本当にお疲れ様でした。
「ありがとうございました。思っていた以上に地球は大きかったですね(笑)。でも本当に3位でフィニッシュすることができて、ただただ嬉しいです。
もちろんもっといい成績を狙えたかもしれないんですけれども、私たちは地球一周を達成するということが目標だったので、今回しっかりと、こうやってフィニッシュできて、みなさんにいい報告ができて、本当に嬉しいですね」
●第1レグ、これはモロッコのタンジェからアフリカのカーボベルまでの区間でしたけれども、トップでゴールされたんですよね!
「そうなんですよ」
●これは思い通りのレースでしたか?
「手応えよくて最初からよかったですね。カーボベルまではだいたい貿易風に乗るまでの海域になるので、基本的に追っ手の風で走っていけるんですね。距離も3,000キロなかったかな、2,500キロぐらいだったので、最初の第1レグとしては、慣らし運転ってわけじゃないですけど、無理しないで行こうと思っていたんです。すごくいい走りができたので、本当にいい第1レグを走ることができました」
●幸先のいいスタートでしたね。
「そうですね」
●続いて第2レグは、カーボベルデからモーリシャスまでのレースでした。ここが今回の大会でいちばん期間が長いんですよね?
「そうですね。全体で39日間かけて、アフリカ大陸をぐるっとまわって、モーリシャスまで行きました」
●1ヶ月以上ということですね。
「海の上で1ヶ月以上ですね」
●これはやっぱり難しいコースでもあったんですか?
「8月だったので、まだ南半球は真冬なんですよ。その真冬にアフリカ大陸の下をぐるっとまわるのは、結構大変なコースだったので、すごい嵐もありましたし、あと潮の流れも速くて、すごく難しくて、きついレグでしたね」

●で、この第2レグでトラブルに見舞われたんですよね。
「早速ね(苦笑)」
●何が起こってしまったんですか?
「南アフリカのケープターンをまわる直前に嵐にあいまして、その時に、ヨットの下にぶら下がっている、船のバランスを保つための、2トンの鉛が付いている『キール』っていう重りが、船の揺れでちょっと動き出してしまったので、急遽ケープタウンに入港して確認をすることを決めました」
●その「キール」が機能しないと、どうなるんですか?
「転覆しちゃうんですよ」
●えっ~~〜!
「キールが機能しないで、下手したら落ちてしまうと、もう船はバランスを失って
転覆してしまうので、いちばん大事なパーツなんですね」
●それで、どうやってリカバーしたんですか?
「最初にキールが動き出してしまって、ちょっと危ないなと・・・ただこのまま走ることもできるかもしれないってことだったんですけど、まだ地球一周、先が長いので・・・」
●そうですよね。
「とりあえずここで1回確認をしようということで、一時的に緊急入港して確認をして、応急処置をして、またスタートしたっていう感じですね。2日間ケープタウンにいました」
第6レグで、最大のアクシデント!?
*第2レグでアクシデントに見舞われたMILAIでしたが、レースに復帰後、本来の実力を発揮し、ニュージーランドのオークランドからタヒチのパペーテまでの第4レグと、パペーテからアルゼンチンのウシュアイアまでの第5レグは再びトップでゴールしたんです。

これは、2年かけて、セーリング・パートナーたちとの練習や、船の整備も含めて、いい準備ができていたから、ということなんですが・・・
今回の「Globe 40」で最大の危機がやってくる、ウシュアイアからブラジルのレシフェまでの第6レグです。今年1月にスタートして、アルゼンチン沖でまたもやアクシデントに見舞われてしまうんですよね?
「スタートして4日目にアルゼンチンの沖で、未確認浮遊物体に衝突しました。これは、本当に何にぶつかったかわからないです。 生き物なのか、コンテナなのか、木なのか、わからないですね。
明け方に急に船が(何かと)衝突して、船が止まってしまいました。まずは船の状態を確認しようということで、全部確認をしたらかなりの損傷だったので、一度レースから離脱しようということを決めました」
●ケガとかは、なかったんですか?
「ケガは大丈夫でした。実は私は寝ていたんです。寝ていた時に急な衝撃で起きて、船の中はガラスファイバーが壊れる臭いというか・・・」
●じゃあ、また再び修理をしてっていうことですよね?
「そうです。いちばん近い岸がおよそ1,000キロの距離で、マル・デル・プラタ(*)という港があることがわかったので、4日間かけて、まずはマル・デル・プラタを目指すことにしました。とはいっても、船は結構損傷が激しかったんですね。4日間、船の修理をしながら陸に向かっていましたね」
(*アルゼンチンのブエノスアイレスにある港湾都市)
●壊れた状態で4日間過ごしていたんですね。
「そうなんです」
●不安もありましたよね?
「またもや、キールなんです」
●またですかー!?
「キールがぶつかってしまったので、船から取れて落ちる状態に近くなってしまったんですね。なので、船の中でできる補強をしながら、船のまわりにコンビニとかないから、船にあるものだけを使って修理をしながら岸を目指しました」

●修理をして、またレース続けようっていう決断をされたわけじゃないですか。そう簡単じゃないと思うんですけど・・・。
「まずは入港したマル・デル・プラタに、ヨット・レース用のヨットを修理する設備がなかったんですね。なので、その設備を作るところを探したり、船を乗せる台を作ったり、人を見つけたり・・・で、全部で1か月以上かけて船を直すことになったんです。
自分が知らないところで、本当にここで船を直せるのかなっていう・・・直したあとに、またあと1万2000キロも走んなきゃいけないんですよ。 大丈夫かなっていう決断をするのは難しかったですね」
●もうやめようって思うことはなかったですか? 諦めちゃおうって・・・。
「100回ぐらい思ったかも(笑)」
●そうですよね~。
「やめて、それこそ貨物船に船を乗せて、フランスに帰るっていうことも、本当に何回も考えたんです。でもヨットの成績は置いといて、レースの成績は置いといて、自分たちの目標は世界一周を達成することなので、その可能性を探り続けて、これならしっかり船を直してフランスまで帰れるなっていうのを、自分で確認して修理することを決めました」

●そういう思いが支えになったわけですね。
「あとね、応援してくださる方々がたくさん、本当心配してくださって、エールだけでもなくて、いろいろアドバイスをくれたりとか、ここに聞いたらいいんじゃないかとか・・・やっぱり日本の方々からの、そういったサポートもすごく嬉しかったですね」
(編集部注:鈴木さんたちはおよそ1ヶ月かけて、船を修理したわけですが、当然その間もレースは続いていて、結果、鈴木さんたちは第6レグから第8レグまでは「リタイア扱い」になったんです。
それでも完走し、総合3位になったのは、鈴木さんの説明によると、「Globe 40」は地球を一周するレースなので、設定したコースを通ってゴールのフランス・ロリアンに戻ってくれば、完走扱いになるとのこと。
また、8つのレグのうち、第1レグから第5レグまでの間に3回トップになり、その時点で総合2位だった、つまり貯金があったので、後半3つのレグをリタイアしても、ロリアンに戻ってきたので、総合3位と認められたそうです)
楽しいセーリング、そして喜ぶ顔
※再スタートを切って、ロリアンまでの航海は、気持ち的にはどうでしたか? レースというよりは、外洋の航海を楽しむ感じになったんじゃないですか?
「途中で、それこそちょっとルアーを作って釣りをしてみたりとか・・・もちろんレースじゃないですか。今回はレースではあるけれども、ほかのレース艇はいなくて、無事にフランスに帰ることが大切なので、風がない時はそうやって少し、自分でルアーを作って(海に)流してみたりとか・・・釣れなかったですけどね(笑)」
●でもちょっと(航海を)楽しむ余裕みたいなものもありましたよね?
「初めて! 余裕を持ったセーリングができたっていうのは、本当に初めてでしたね。いつもやっぱりライバル艇と1分1秒を競って、少しでも早く走んなきゃいけないっていうのがあったんですけど、今回は無理せずに、無理しすぎずにフランスに帰ることが第一目的だったので、少し気持ち的な余裕もあって楽しかったですね」
●船の上で出会った、忘れられないシーンはありますか?
「いちばん印象に残っているのは・・・やっぱり生き物が世界一周、地球を一周してく上でたくさんいるんですよ。たとえば、鳥。僕はそんなに鳥に興味はなかったんです、正直に言うと・・・。
でも地球を一周していく中で、鳥の種類、大きさ、色、性格が移動していくごとにどんどん変わっていくんですよ。きょうの鳥はちょっと色が変わったなとか、なんかきょうは種類が変わったなとか・・・それを地球の上を移動しながら、その変化を見てこられたのが、僕の中で、すごくいいもの見たなって思いましたね」
●ある意味忘れられないレースになりましたね。楽しめたレースというか・・・。
「はい、最後の大西洋、フランスまでは、本当に楽しいセーリングでした」

●最終的には当初の予定よりは1カ月遅れになりましたけれども、最終ゴールのフランス・ロリアンに無事に戻ってこられて、その時のお気持ちはどうでした?
「ただただ嬉しかったですよ。僕ら船の上で無線をいつもオンにしているんですね。船同士、走るための、話すための無線をオンにしているんですけれど、フランスに近づいてきて、久しぶりに無線からフランス語が聞こえてきた時に、あっ、帰ってきたんだなっていうのを感じましたね。
やっぱり世界一周していると、その国の言語なんですよね、無線が。なので、久しぶりにフランス語を聞いて、あっ、本当に帰ってきたな、いよいよだなって思いましたし、フィニッシュ・ラインが見えた時に、お迎えの人たちがボートで来てくれて、すごく嬉しかったですね」
●奥様も喜ばれたんじゃないですか?
「ねっ! 本当にみんな喜んでくれて、なんだろう・・・僕以上に自分たち以上に家族だったりとか、あとはレースを応援してくれたフランスの方、日本の方、現地に来てくれた日本の方々がすごく喜んでくれたので、みなさんの喜んでくれる顔を見られて嬉しかったですね」

メンタルをポジティブに
※レース中は、睡眠はパートナーと2時間交代でとって、天候が荒れたら食事もとれないですよね。そんな中、毎日どんなことを考えていたんですか?
「もちろん船のセーリングを、しっかり安全なセーリングをしなきゃいけないので、船を走らせることをまずは考えるんですけども、それプラス、やっぱり(レグの)期間が長いじゃないですか、1ヶ月間かそれ以上・・・。

船の中では、2〜3畳間くらいのスペースにふたりでずっといるので、メンタルをちゃんとキープしようと・・・。お互いの、ふたりの雰囲気もよくしないといけないし、自分自身の気持ちもよくしなきゃいけないので・・・いちばんメンタルをキープしやすいのが、あと何日でゴールできるかなっていうのを、僕はずっと頭の中で計算してましたね」
●カウントダウンということですね。
「たとえば1ヶ月、30日間かかるレグだとしても、3日終われば、これで10分の1、終わったんだなとか。たとえば5日目とかになると、もう6分の1終わったんだなとか、ポジティブにポジティブに考えながら、日々過ごしていましたね」
(編集部注:ちなみに天候が安定しているときは、読書をしたり、映画を見ることもあったそうです。でも、気持ちはどこかオンのままだったとか)
自然のサインを読み取る!?

※ヨットレースは、刻々と変化する気象を読んで、いかに風をつかむかが大事だと思うんですけど、これは経験を積むとわかるようになるんですか?
「最初は、インターネットが海の上でも使えるんですよ。飛行機の機内wi-fiみたいな形でインターネットにつながるので、そこで天気のデータをダウンロードして、1週間2週間先までの自分たちの航海計画は毎日立てるんですね。
ただやっぱり予報なので、海の上で天気がガラッと変わったりするんですね。その時はやっぱり勘かな、経験かな・・・雲を見たりとか、途中、たとえば湿気が多くなってきたなとか、匂いが少し違うなっていうのを・・・」
●匂いまで!?
「体で感じて、それで早めに、セイル(帆)を小さくしたり、大きくしたり、方向転換したり・・・予報が外れた場合は、自分の勘で(船を)走らせるっていう感じですね」
●そういったわずかな自然のサインをすべて感じ取るんですね。
「そこがすごく大切です。それをちゃんと感じないと、船が壊れちゃうかもしれないし、そうしたら自分の力でゴールできないかもしれないので、そこが大切なところですね」
もう1回、地球一周したい!
※今回初めて開催された外洋ヨットレース「Globe 40」に挑戦し、そして完走を果たした今、鈴木さんの中にどんな思いがありまますか?
「本当にありがたいことに、この「Globe40」を通じて、世界一周を体験することができたので、日本全国のヨットをやっている方、何かに挑戦したいなと思っている方に、この体験、経験をお話しさせていただきたいなと思っています。
まずはこの1年、2年かけて、日本全国をまわって、世界一周の体験をいろんな人にお伝えしようと思っています。あとはこの世界一周の体験がすごく楽しかったし、自分自身も挑戦することが好きなので、まだ今は明確には決まってないですけど、次の挑戦を決めて、それに向けて活動したいなとも思っています」
●漠然と、なんとなくはあるんですか、次の目標が?
「ねえ~何かな・・・はっきりとは言えないけど、やっぱりセーリングが好きですし、地球一周もすごく楽しかったので、もう1回、地球一周したいなと!」
●またお話を聞かせてくださいね、その時に!
「ぜひ!」
●では鈴木さんにとって、ヨットとは?
「難しい質問ですね(笑)。ヨットとは・・・まぁ僕そのものかな。自然の力で自分の力で、大陸と大陸の間にある海を横断できる、地球の上を移動できる、それを叶えさせてくれるのがヨットであるし、それに乗れるのが自分であるので、これからもヨットに乗り続けていきたいなと思います」

INFORMATION
セーリング・チーム「MILAI」や「Globe 40」の激闘の模様、そして近況についてはオフィシャルサイト、または「MILAI」のfacebookをご覧ください。
◎「MILAI」HP:https://milai-sailing.com
◎「MILAI」Facebook:https://www.facebook.com/milai.aroundtheworld/
2023/6/25 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. RIDE LIKE THE WIND / CHRISTOPHER CROSS
M2. TROUBLE / COLDPLAY
M3. DON’T STOP BELIEVIN’ / JOURNEY
M4. LA MER / CHARLES TRENET
M5. Ride On Time / 山下達郎
M6. HERE COMES THE SUN / THE BEATLES
M7. ルージュの伝言 / 荒井由実
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」