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「この本を片手に、宇宙の冒険に旅立とう!」 by 野口聡一

2026/4/26 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、元JAXAの宇宙飛行士
「野口聡一(のぐち・そういち)」さんです。

 野口さんは1965年、神奈川県生まれ。1996年にJAXAの宇宙飛行士に選ばれ、厳しいトレーニングを経て、2005年にNASAのスペースシャトルで初の宇宙飛行。その後、2009年にソユーズ、2020年にスペースXのクルードラゴンに搭乗し、合わせて3回の宇宙飛行に成功!

 そして世界初の3種類の方法で地球に帰還した宇宙飛行士として、ギネス世界記録に認定されています。また、船外活動を4回経験。国際宇宙ステーションISSの滞在日数は通算335日となっています。

 2022年に宇宙航空研究開発機構JAXAを退職された野口さんは現在、会社の代表、大学の特任教授、財団の理事、そしていろんなメディアへの出演など、多方面で活躍されています。

 実は野口さんには、2006年にこの番組にご出演いただいたという、そんなご縁もあって、今回20年ぶりのご出演がかないました。

 きょうは野口さんが先頃出された本『宇宙でラーメンは食べられるか〜宇宙暮らしのロマンと現実』を参考に、宇宙を目指すかたに向けて、国際宇宙ステーションISSで培った「宇宙ライフの心得」のほか、「地球」や「月」への特別な思いなどうかがいます。

☆写真協力:野口聡一、幻冬舎

野口聡一さん

宇宙ライフを安全かつ楽しむための心得

※野口さんが先頃出された本『宇宙でラーメンは食べられるか 〜宇宙暮らしのロマンと現実』は、宇宙に行って生活するためのガイドブックと言ってもいいのでしょうか?

「そうですね。最近は宇宙のいろいろな本があるんですけれども、実際に自分が行くことになったら、どういう準備をすればいいんだろう。それくらい当事者意識を持って、宇宙を見ていただきたいと・・・。

 自分が急に行くことになる。あるいはお子さんが来週から修学旅行で宇宙ステーションなんだけど、何すればいいの? っていう、そういう時に読んでいただきたい本です」

●いいですね! 本の冒頭に、国際宇宙ステーションISSでの宇宙ライフを安全かつ存分に楽しむために必要な心得「宇宙ライフハック十ヶ条」があります。この十ヶ条は私たちの日常に当てはまることもありますよね?

「そうですね。そんなに崇高な思いで書いたわけじゃなく・・・今回、幻冬舎さんにお世話になって出しているんですけど・・・最初に幻冬舎さんと、宇宙の生活のことを書きたいよねって話をした時に、初めて宇宙ステーションに足を踏み入れた・・・無重力なんで足じゃないんですけど、手が先に行くんですけど(苦笑)、その辺の話は置いといて・・・まず言いたいことって何かなと思って、十ヶ条にまとめたのがスタートです。

 なんとなく面白かったんで、初めに載せたんですけど、それがキャンプ生活であれ、海外生活であれ、違う環境に行った時に、経験者がこういうことに気をつけたほうがいいよという話っていっぱいあると思うんですよ。それの宇宙版っていうことですね」

『宇宙でラーメンは食べられるか 〜宇宙暮らしのロマンと現実』

(編集部注:本の冒頭にある十ヶ条にどんな項目があるのかというと・・・例えば「ないものを嘆くのではなく、あるもので満足せよ」とか「すべての資源は有限である」。ほかにも「生活環境の整備に全力を尽くせ」とか「あわてるな、明日はまたくる」など、私たちの日常に当てはまることも多いので、本を読んで、参考にされてみてはいかがでしょうか)

宇宙の個室、無重力では1畳が六畳!?

※私たちが経験できないもののひとつに「無重力」があります。野口さんが初めてISSで生活された時は、慣れるまでに時間がかかりましたか?

「おっしゃる通り、地上で経験ができない最大のものが重力がないということで、私自身も初めて宇宙に行くまでは、この地上で似たような経験はいろいろできるんですけど、本当に無重力の状態が続くというのは、宇宙に行った時に初めて経験しました。

 慣れるまでに時間はかかりますよ。よく言われるのは『3日・3週・3ヶ月』なんて言い方するんですけど、まず3日ぐらいは無重力で気持ち悪いとかね。いわゆる宇宙酔いみたいな話も含めて、体が強烈に重力がない状況を拒否すると・・・。

 要は全部浮いているってことは、血も体の中で浮いているし、胃袋も浮いているしっていうことで、結局わかりやすく言うと、逆立ちした時に頭に血が登る感覚ありますよね。あれがずっと続いていると・・・それは気持ち悪いよねっていうところで・・・。

 ただ3日ぐらい経つと、そういう気持ち悪さはなくなって、でもいわゆる食欲とか睡眠サイクルまでなんとなく戻ってくるのが3週間ぐらいで、そういうことも含めて、ずっと住んでいた気分になれるのが3ヶ月っていうような、そういう感じなんですよね。

 よく聞かれるのは夜、寝むれるんですか? みたいな質問・・・寝むれます! 思いっきり寝むれます! (重力があるところでは)柔らかい枕がいいとか、マットレスの高さを調整したりするじゃないですか。あれって結局寝ている8時間の間にそのマットに当たっている面が痛くなって、それで寝返りうったりするわけじゃないですか。

 そういうのは全く必要ないです! 常に浮いているので・・・。そういう意味で、3週間くらいして無重力に体が慣れると、睡眠自体はすごく快適ですね」

写真協力:野口聡一、幻冬舎

●体が浮く感覚って表現すると、どんな感じなんですか?

「先ほど最初に、無重力に慣れるかどうかっていうので、すべてのものが浮いていると・・・胃袋も浮いているような、血も浮いているみたいな話で、それがまず体の中の変化ですけど・・・。

 空間の使い方、部屋の中の使い方・・・(重力がある地球では)普段は自分の足がついている面が床なわけですよね。で、物は床の上に置く。収納家具みたいなやつは別として、物は全部床に置くと・・・で、床をちょっと上げた感じでテーブルみたいな、平面がある。

 つまり当たり前ですけど、重力で下に全部行くわけだから、落ち着くところに全部のものを置くわけじゃないですか。天井に何か置くってあり得ないですよね。あるいは横の壁も、置けないことはないけど、いわゆるフックみたいなのに掛けないといけない。

 でも宇宙に行くと、上下左右と前後を合わせて6面・・・(ラジオの)スタジオ・ブースにいるとわかるけど、サイコロの中に住んでいるようなわけですよ。

 上下左右、前、後ろ、その6面全部を使えるので、通常考えるよりは広いっていうのはそういうことなんです。宇宙の個室はまさに1畳ぐらいで、1畳だけど、上下左右、前後を使うと6畳に近い感覚になるので個室としては十分だよと、そういう話です」

宇宙から戻ってくると、シャワーが不思議!?

※無重力ということはISS内では、どんなに重いものを持っても、重さは感じないんですか?

「それは半分正しくて半分間違いです。どんなものでも浮いているので、そういう意味では動かしやすいんですけど、動かしにくさはあるんですよね。

 どういうことかと言うと、空のダンボールとすごく重たい段ボールがあるとして、宇宙ならどちらも持ち上げられるんですけど、持ち上げて振り回す時に、ぴっと止めようと思うと、重たい段ボールだとやっぱり動いていた勢いっていうのはあるので、モワ〜ンと振り回されちゃう感じがあるんですね。

 なので、浮いているという意味ではその重さは感じないんですけど、それを動かそうとすると、やっぱり重たいものは重いなというそういう感じはありますね」

●宇宙から帰還されて重力のある生活に戻ると、どんな気持ちになりますか?

「もちろん私も生まれてから、初めて宇宙に行くまでは地上に住んでいるわけで、それが当たり前なんですけど、ただ戻ってくるとすべてのものが一方向に進んでいくっていうのが非常に不思議な感じがします。

 いちばんわかりやすいのはシャワーですね。上から水を出して、水は重力に引っ張られて、下の排水溝から出ていく。当たり前のことですけど、これは宇宙ではあり得ないんですね。

 出た水は四方八方に飛び散るもので、行ったお水は二度と同じところには戻らない。だから宇宙では水漏れが怖いんですけど、すべての水がスーッと下に降りて、しかも全部、足元にある穴に吸い込まれるのは、ちょっと昔の映画で、『マトリックス』っていう映画がありますけど、あの世界に来ている感じがします」

野口さん流、共同生活の心得

※国際宇宙ステーションISSでは、限られたスペースでの共同生活になりますよね。多国籍のクルーと仲良くやっていくうえで、野口さんが心がけていたことはありますか?

写真協力:野口聡一、幻冬舎

「通常7名のところを交代の時は13名あるいは14名っていう人数になるんですけど、それは何人であっても同じで、宇宙では仲良くしなきゃいけない。ただ、逆説的なんですけど、みんながいい人ではないっていうか・・・。

 『だって人間だもん』っていうのを実は(本の冒頭にあるライフハック)十ヶ条の中でも書いているんですけども、何年にも及ぶトレーニングに耐えてきた宇宙飛行士だって、心身の波や不調っていうのは必ずあるので、それはそんなに抑える必要はないと・・・。

 もちろん大勢の人が一緒にいる場合には、それぞれ譲り合って、他者に対する敬意の念も含めた譲り合いは大事だし、多様性を凝縮したような社会になるので、国別、それから性別、バックグラウンドは全部違う人が集まる中で、みんなが気持ちよく暮らせるようにはどうすればいいのか、そういう気配りはすごく大事になります。

 すごく大事になりますけど、自分が持っている好不調の波とかそういうのは決して否定するものではない。そういうのを持ちつつ、互いに譲り合って受け入れあって生活するというのが、真実かなと思いますね」

船外では、自分が天体になる!?

※野口さんは3回の宇宙飛行で、船外活動を4回経験されています。船外から見る地球は、ISSの中から見る地球とは違うものなんですか?

写真協力:野口聡一、幻冬舎

「宇宙船の中からはもちろんガラス越し・・・ガラスと言っても(船内の)空気と、宇宙の低温から守んないといけないので、すごくガッチリとしたガラスなんですけど・・・そのガラスから見ていると、景色が美しいという感じですね。

 それはそれで綺麗なんですけど、宇宙空間に出ると真空の宇宙、冷たい宇宙の中に自分が入っていっているっていうことも含めて、地球が自分と同じ天体というか、逆に言うと自分が地球と同じ天体となって、宇宙を漂っているような気持ちになります。

 見え方も当然違うので、手を伸ばすと地球のゴツゴツ感が、山脈の山のゴツゴツ感とか、雲のフワフワ感っていうのが、本当に手で触れるんじゃないかと思うくらいリアルに感じられるんですね」

●ええ~っ! すごいですね! ISSに滞在している時って、宇宙から見下ろすような感じで青い地球をご覧になっていたと思うんですけど、地球に戻ってきて空を見ると、どんな感覚になるんですか?

「宇宙は重力ないので上下がないんですけど、おっしゃる通り見下ろす感じで青い地球を見ていて、雲が地表にくっついているような感じで、雲の存在がよく見えるんですよ。

 雲があってそれ越しに下が見えると・・・そういう感じでずっと見ているんですけど、地球に戻ってすぐに、逆に空を見た時に、これまでは地表を覆うように見えていた雲が上に見えると・・・。

 つまり感じとしては、スキューバダイビングとかされるとわかると思うんですけど、下から見ると水面がすごく綺麗じゃないですか。だから、今僕たちは空気の海の底にいて、水面が雲になるんだなっていうふうに感じましたね。

 だから雲を境に上と下で、地面はある意味、大気圏っていう空気の層のいちばん下なので、それより下には海があるわけですけども・・・だから“空気の海”の下に我々は住んでいて、そこから上を見上げている・・・水面に当たるのが雲であるという感覚になりました」

月のクレーターで温泉!?

※野口さんは、20年前にこの番組にご出演いただいた時に、「きっとまた月面に人が立つ日がやってくると思うので、そのときにそのメンバーになれたらいいなと思います」と語っていらっしゃいました。

 その予想通り、月に人類を送るNASA主導のアルテミス計画が進んでいます。どんな思いで見ていらっしゃいますか?

「そうですね・・・ちょうど20年経って、その時代がようやくやってきたと・・・半世紀ぶりにNASAが人類を月の周回軌道に送ったということで、本当に素晴らしい活躍だなと素直に思います。私がその頃思っていたよりも、ちょっと時間がかかっていますけどね(苦笑)。

 私は現役を引退していますけれども、日本人が月面に立つ日も近いと思いますし、逆に今、有人宇宙計画には民間の宇宙船も増えてきているので、政府機関のプロの宇宙飛行士じゃなくても月面に行けると・・・。

 だから私の今の目標は卒寿90歳になったら、月に行って温泉に入って地球を見たいなと思っていますけどね」

●素敵な夢ですね! 月に行けたら、やはり温泉ですか?

「温泉ですね! 月に水があるっていうのが最新の研究結果で、もちろん科学実験のための水分のことを言っているんですけど、日本人は水があれば、温泉でしょ! どう考えても! それを温めて月のクレーターに温泉をドボドボと惜しげもなく入れて、ちゃんと空が見えるようにドームを作って、月見で一杯、あっ違った、地球見で一杯っていう感じですね」

写真協力:野口聡一、幻冬舎

地球、こんなに美しい天体はほかにはない!

※本の冒頭にある「宇宙ライフハック十ヶ条」の第十条に「宇宙は楽園である」と書かれています。そこにはどんな思いがあるんですか?

「これは本を読んでいただくと、『ライフハック十ヶ条』自体はいかに宇宙が大変か、ISSは別にホテルじゃありませんと、あくまで合宿所みたいなもので、ここにはメイドはいません、掃除をしてくれる人もいませんみたいな、すべて自分たちでやんなきゃいけませんと・・。

 (宇宙に行くと)地上にあるものがどんどんなくなると・・・蛇口をひねれば、水が出るとか、ちょっと食べたければ、すぐレストランがあるみたいな、そういうのが全くない世界なんで、極めて不便であると・・・。

 そういう前提の上で、これもない、あれもない、これはできないみたいに人生を捉えてしまうとそれは辛いと・・・そういう環境だからこそ、宇宙は楽園である! と思いなさいと・・・いろいろ不便は数えきれないけれど、何と言っても目の前に美しい地球があるじゃない! そこから来たという思いだけで十分でしょう!と・・・いうのが私の意図ですね」

●宇宙が楽園だったら、地球は何ですか?

「地球はまさに、この美しい地球・・・私が少なくとも見回す限りですけど、宇宙に3回行って、船外活動を4回やった私が思うのは、こんなに美しい天体は、ほかにはない。地球以外にはあり得ない。そこに住んでいるあなたたちは、幸せに感じないでどうするの! ということですね。この環境を大事にしていきましょうということです」

●では最後に、宇宙を目指すかたにアドバイスをお願いします。

「私は今回、幻冬舎さんから『宇宙でラーメンを食べられるか』ってことで、本を出させていただきましたけども、思っているより、宇宙は近づいてきていると・・・行くのが大変だよね~とか、なんか難しそうって思われるかたが多いとは思いますけれども、知らないうちに宇宙のほうが、みなさんの日常に近づいてきているんじゃないかなと・・・。

 思っているよりも早く、“急に宇宙に行くことになったよ!”と、みなさん自身がそうなるか、あるいはみなさんの子供たちが思うかは別として、急に宇宙に行かなきゃいけないんだけど、何をしたらいいの? って思った時にぜひこの本を手に取って・・・。

 もう少し真面目に言うと、今の地球で思っている常識が覆される世界は意外に近くにあるので、宇宙という、そういうところでも恐れずに冒険して欲しいなと、こういう本を片手に冒険に旅立ってほしいな~と思います」

写真協力:野口聡一、幻冬舎

INFORMATION

『宇宙でラーメンは食べられるか 〜宇宙暮らしのロマンと現実』

『宇宙でラーメンは食べられるか 〜宇宙暮らしのロマンと現実』

 野口さんの新しい本には、宇宙に行くための準備から、ISS内での過ごし方や個室の利用法、宇宙飛行士の下着やユニフォーム、宇宙食やトイレ、体を清潔にする方法などなど、経験豊富な野口さんだからこその実践的なアドバイスが満載! 宇宙に行くために参考になる冒険手帳です。とても読みやすいのでおすすめですよ。

 ところで、宇宙でラーメンが食べられたのか、ぜひ本でお確かめください。
 幻冬舎新書の一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎幻冬舎:https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/12741

 野口さんのSNS、そして20年前にこの番組に出演された時のインタビューも番組HPに載っていますので、ぜひチェックしてください。

◎野口聡一さんSNS:https://x.com/Astro_Soichi

◎2006年4月16日、野口さん出演回 :http://www.flintstone.co.jp/20060416.html

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