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超低山を「縦走」!? 楽しみいろいろ、まちなかトレイルを歩く

2026/6/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山好きなイラストレーター「中村みつを」さんです。

 中村さんは1953年、東京生まれ。山好きが講じて、ヒマラヤをはじめ、ヨーロッパアルプスや南米パタゴニアなどにも遠征。山好きなイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛け、現在は山岳雑誌「岳人」の表紙を担当。また、「山の日アンバサダー」でもいらっしゃいます。

 中村さんには5年前にもご出演いただき、東京の町中にも山がある、想像力をふくらませて楽しもうというお話をしていただいたんですが、そんな中村さんが先頃、新しい本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』を出されたということで、改めて番組にお迎えすることになりました。

 今回は、町中にある超低山を「縦走」するルート設定の面白さのほか、六本木から始まる「大江戸トレイル」や「流山富士」など、まちなか縦走の楽しみ方などうかがいます。

☆写真&イラストレーション:中村みつを
 協力:ぺりかん社

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

高低差50メートル以下

※今回の本の、まちなか縦走のお話をうかがう前に、改めて「超低山」の定義や東京の町中には、どんな山があるのか教えてください。

「改めて言うと、超低山っていうのは名前の通り低山を超えた低さ、いちばん低い山。東京だと高尾山とか、それから房総だと鋸山とかってありますよね。あれがいわゆる低山。それよりもずっと低くくて、町に寄り添った、これ、山かな? というのが超低山なんですよね。

 で、定義はなかったんで僕なりに定義付けをしたのが、標高で言うと100メートル以下。登山口から山頂まで手を伸ばせば届くぐらいの小さな山ですけど、高低差が50メートル以下っていうふうに一応定義は付けているんですけど、標高って言っても大概の人はピンとこないんですよね。実際にそこに立った時は高低差で山の大きさを見ると実感できると思います。

 例えば、ビルを見た時に、ビルの1階から屋上までを見上げた時に、それが高低差なんです。それを山だと見立てれば、よりわかりやすいと思います。それが50メートル以下っていうのが必要で、超低山っていうふうにしています」

●一般に売られている地図に超低山って載っているんですか?

「載っていませんね(笑)。載っていたらこんな苦労はないんですけど、神社の名前とか公園とか、そういう形で出ていますね。

 例えば、公園がいちばん多いですけど、西郷隆盛の名前のついた目黒にある西郷山公園とか、北区の王子にある飛鳥山公園とか。あとは愛宕山だと愛宕神社っていう、愛宕神社という名前がついていますけど、愛宕山っていうふうにはついてないんですよね。

 だからそれを探っていくことになるんです。あとは地名ですね。住所表示の地名、例えば目黒区の東山とか、駅だって代官山とかね 。なんとか山っていうのは地名とかで見ることはできますけどね」

(編集部注:中村さんによると、超低山のタイプは、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山(つきやま)」、江戸時代に「富士信仰」の影響でまちなかにたくさん造られた「富士塚(ふじづか)」、そして中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」などの「天然の山」。

 まとめると「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つになりますが、その3つのタイプに収まらない山として、崖のような場所を「見立ての山」と呼んでいるそうです)

町中の山を「縦走」!?

※先頃出された本が『続・ 東京まちなか超低山てくてく縦走』・・・この本は前作をもとに、今度は町中の山を「縦走する」という、そんなコンセプトで書いた本と言っていいんでしょうか?

中村みつをさん

「そうですね。ひとつひとつの山をこなしたら、もっとスケールアップして、例えば1日のうちの2〜3時間、山に浸りたいなっていうふうにだんだん思ってきたら、この縦走スタイルがあったら面白いなと思って、いろいろ考えたんですね。

 で、そもそも町の中なので、本来の山とは全然違って建物ばっかりですよね。特に首都圏はね。そこに尾根道とか見えるわけじゃないですよね。普通に見る分にはね。

 で、山の地形自体がなかなかつかみにくいと思うんですよね。だけど、普段歩いていると、ここに坂道があるなとか、ここは町の中でもすごく低地で、周りが高台に見えるなとかって、なんとなく視覚的に感じることがあると思うんですよね。

 普段、通勤する時でも学校の行き帰りでもいいんですけど、“この坂やだな、こんなところ登るのやだな”とかって思う人もいるかもしれないし、それが地形なんですよね。

 高いところは尾根筋と呼んで、下の低いところは谷筋になるんですけど、それで東京を例えて言えば、武蔵野台地っていうのが西のほうから東京湾に向かって枝を伸ばすように広がっているんですよ。その間に尾根筋と谷筋があるんですよね。

 例えば、本郷だったら本郷台地っていうのがあって、高台で、その間にまた低いところがあって、そこは窪地ですよね。そういうところは、江戸時代だったら小川が流れているような、そういう地形になるんですけど、それ自体は今も昔も変わってないんですよね。

 変わっているのは、そこに乗っかっているものだけなんです。建物とかそこにバスが走っているとか電車が走っているとか、それだけで地形自体は変わってないですよ。それを地形を読みながら1本の道を作るんですよね。

 で、Aという山をまず最初に頭に入れて、Bという山、Cという山が地図上でこのあたりはこういうものがあるだろうと、ちょっと歴史も調べながら行くと、ここにはこういう人の屋敷があったとか、大概そういうことが多いんですよね。

 で、小説でも映画の世界でもよくあるんですけど、高いところにはお金持ちが住んでいる。低いところには庶民が住んでいる。よくそういう例えがあるんですね。

 時代的に言えば、お殿様は高いところ。例えば今で言えば、実業家とか、それからかつての華族とか、そういうお屋敷は高いところに持っているんですよね。で、下のほうに庶民がいる。そういう形があるんで、高いところが意外と残っているんですよ、今もね。そういう歴史的なものの関係で、それがとてもありがたかったってことで、そこを加えながら1本の道を作っていくんですよね」

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

余計なことをすると、1日楽しくなる!?

※今回の本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』でいちばんこだわったのは、どんなところですか?

「こだわったのは・・・机上登山を最初するんですよね。机の上にいろんな地図を広げたり、いろいろ頭の中で妄想したりして、多分ここはこうだろうとか思いながら、あらかじめルートを作るんですよね。

 実際に行くわけなんですよ。行かないとわかんないんです。頭の中で想像だけだとね。で、行ってみて、それでドキドキするわけですよ。

 本当に面白いかな、楽しいかな、なんかお節介かくようなことになるのかなとか、いろんなこと思いながら、まず最寄りの駅から歩き始めるんですけど、だいたい頭の中で描いてきたルートを辿ると、ピタッと符合することもよくあるんですよ。”間違いなかったな〜”そんなこと思いながら・・・。

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

 基本的には大通りはなるべく避けて、小道を選んで行くんですけど、路地裏が多いんですね。小道もただ無駄に歩いても遠くなるだけなんで、そこは上手に歩くんですけど、そうすると昭和とか、そういう暮らしがまだ残っていたりする場所に触れたりもするんですよね。

 それがまた道中楽しくなるんです。そうやって右左とか自分の気に入った道をとにかく選んで、それで下から上に登っていく。山は基本的に下から上に登るのと同じで、町の中でもそういうふうに考えるわけですよね。

 それできょうは、この〇〇神社って名前がついた〇〇山に登りましょうと言って、登るわけですよね。で、見晴らしもいいなとか言いながら、まずはひとつは登ったぞと・・・次はどういうふうに行こうかと・・・。

 というふうに、縦走というスタイルをいくつか作っていくわけなんです。初めはちょっと大げさかなと思うような、縦走ですからね・・・ただのお散歩だろって言われそうなんですけど(笑)、そこは気持ちが大事なんですよ。なんでも本気で遊ばないと面白くないんですよね」

●山から山へのルートをトレイルと捉えていらっしゃる、その発想も面白いなと思いました。大人の冒険みたいな感じで楽しいですね。

「みなさん、子供心に返ってもらっていいかなと思うんですよね。もう無邪気にね。道を迷うのも久しぶりに楽しいと思いますよ。

 人は普段いかに物を見てないかっていうことに、意外と気づかされるんですよね。普段通っている道とか、それから車窓から見ている風景の中に、いっぱいこういうのがあるんですよね。

 やっぱりみんな忙しいのと、あと目的地に行くのが最大の、その人の行動なんで余計な物を見ない。転ばないように歩くとか、人にぶつからないように歩くとかね。それが都会に暮らす人たちのスタイルだと思うんですよね 。そこを一回パッと切り離して余計なことをすると、こんなふうに見えてくると思います」

●確かに効率よく目的地に向かうには、どうしたらいいかっていうことしか考えてなかった気がします。寄り道したりとか、余計なことをするっていうのは大事ですね。

「それは発見とか感動したりとか、ものすごく頭の中にいろんなものが入ってくるんで1日楽しくなると、僕は思っているんですけど・・・」

ゴージャスな「大江戸トレイル」!?

※ここからは新しい本『続・東京まちなか超低山 てくてく縦走』に載っているコースの中から、いくつかおすすめのコースをお話しいただきたいと思います。

 私が気になったのが「大江戸トレイル」という・・・名前もいいな~と思ったんです。六本木から皇居という、都心のど真ん中、“ザ 東京”という感じがするんですけれども、このあたりに山ってありましたっけ? っていう感じなんですが・・・。

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

「そうなんですよね。これも最初(山を)どうつなげていくかっていうのが、ものすごく知恵を使ったところなんですね。単体(の山)で見ると、確かにポツンポツンとあるっていうのは、もちろん自分の中でもわかっていたし、ただそれを美しく作りたかったんですよね、1本の道をね。東京にいること忘れちゃうくらいに、そういうふうに自分では作りたいなと思ったんですよ。

 大江戸トレイルっていうぐらいなので、すごくゴージャスな名前なんですけど、東京の本当の中枢というか、ど真ん中というか、あらゆるものがここに、国会議事堂も含めて皇居もあれば、それからおしゃれな六本木とかね。

 すべてがこの中にギュッと絞り込まれているところを、間に山を見つけていくって、なんとも豪快だなと思ったんですよね」

(編集部注:中村さんが知恵を絞ったという「大江戸トレイル」、六本木をスタートして、赤坂の氷川神社、日枝神社、そして霞ヶ関を抜けて、ゴールの皇居東御苑を目指すルート、およそ5.5キロのコースになっています。

 いったいどこに山があるのかと、疑問に思ったかもしれませんが・・・あるんです、山が! ぜひ本でお確かめください)

流山に富士山!? 赤城山も!?

※続いて、本に千葉県流山市にある「流山富士と赤城山」というコースが載っていました。このコースはどんな特徴がありますか?

「これは僕もず~っと気になっていて、なかなかちょっと超低山と言えど、県を跨いで行くんで、後になってしまって、ようやくその時に出かけたわけですよね。

 ここに行くひとつの楽しみの理由としては、流鉄流山線っていうローカル線にあるんですけど、流山駅が終点なんですけどね。子供の頃から鉄道好きだったんで、これに乗りたくて、おまけに山も登れたら、こんなに楽しい1日はないだろうというふうに考えて出かけたわけなんですね。

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

 ここには“富士塚”という富士山を模した、言ってみれば小さな富士山ですよね。それと“赤城山”という、どっかで聞いたことのあるような名前だと思うんですけど、群馬県の赤城山、あれと同じ名前の赤城山が、この流山という町の中に存在しているんですよね」

●千葉の流山市にあるんですね。

「そうなんですよ。駅の周辺にあるという、今だいぶ周りが開発されてきて、新しいマンションができていたりするんですけど、この流山駅周辺っていうのは、明治時代の建物もたくさん残っていて、あと新撰組の近藤勇が最期にそこで官軍に捕えられたという、そういう歴史上の話があったりとか・・・。

 それから料理に使う“みりん”ですよね。白みりんの発祥の地とも呼ばれていて、そういうのも実は山と関わりがあったりするとか、そういうすごく掘り下げていくと面白い町なんですよね」

●スタートは、流山駅からっていうことですよね?

「そうです。終点の流山駅でいろんなパンフレットとかも置いてあるんで、ちょっと探してみるといいかもしれないです」

※富士塚の「流山富士」から、流鉄流山線の隣の駅「平和台」方向に歩いていくと「赤城山」があるそうです。その赤城山について、こんなお話をしていただきました。

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

「緑の、何と言ったらいいんでしょうね。塊みたいなものが忽然と現れるんですよね。流山ってまっ平らなんですよ、土地が・・・。なんでこんなところにこんなこんもりとしたものがあるんだろう? って不思議に思うのが普通なんですよね。

 それでいろんな伝承を読むと、群馬県の赤城山が噴火した時に、そこから流れ出た土砂が川の流れに乗って、この町にとまったって言うんですよね。大きな塊がね。それがこの山だって言うんですよ。

 それでそのとまった場所を、流れてきた山なので、“流山”っていう地名につながっているっていう一説があるんですよね」 

●そうなんですか!

「ものすごく、何て言うんでしょう、雄大なおとぎ話みたいな・・・これがまたすごく素敵だと思うんです。(赤城山は)実際に一周することができるんです。独立峰なんで、本当に流れてきたんゃないかと思うくらいです。山頂もすごく静かなんで、いい山です。おすすめです」

楽しみ方はいろいろ

※ヒマラヤやヨーロッパ・アルプスなどを旅されたということですが、標高の高い山の楽しみ方と、超低山の楽しみ方はまったく別物ですよね?

「もう全然一緒にすることもないんですよね。山の好きな人から“そんな低い山のどこが面白いの?“と聞かれたことあるんですよ。それは比較するからわからないんですよね。比べてはいけないんです。

 楽しみをやっぱり比べちゃいけない。これはこういうものなんだと・・・高い山の面白さもあるし、雪山の面白さもあるようにね。岩壁を登る面白さもあって、みんな違うんですよね。
 だからジャンルがそれぞれあって、それに合わせて自分の気持ちをそこに向けるっていうのがいちばん大事です」

●低い山だと、年齢とか体力とか関係なく、誰でも楽しめるレジャーなのかなって思うんですけど・・・。

「そうなんですよね。今、中高年のかたで山に登る人たくさんいますよね。エベレストにも登るぐらいですから。僕も2年前にはカラコルムっていうパキスタンの、ヒマラヤの隣の山なんかも行ったりしたんですけど、別に分ける必要はないんですよね。

中村みつをさん

 高い山にも行く時は行くし、普段こういうところにも足を向ける。たくさんフィールドがあったほうがなんか得な気がするんですよね。いつでも楽しめるという、それで頑張らないっていう意味では、超低山はいちばんいいです。ず~っとお話しながら登れます」

●いいですね。

「だからお友達とか親子でもいいし登れるんですよね。振り返ってみると、江戸時代の人が実はそういうことを、もうすでに楽しんでいたスタイルなんですよね。

 富士塚ももちろんそうだし、山をすべて見立てるっていう考え方が、その当時に生まれているんですね。富士山に見立てるとか、丹沢の大山に見立てるとか、そういうふうにして小さなものを愛でながら楽しむ・・・。

 お弁当を持ってお花見登山するとか、それから紅葉だったら紅葉を見ながら江戸の山を楽しむっていう、当時からみんなやっていたんですよね。それを再現する意味で、ビルがたくさんある中でも、それを忘れさせるような山が今でもありますよ~ってことを伝えられたらいいなと思って書き始めたんですよね」

●では改めてになりますが、最後に超低山のいちばんの魅力を教えてください。

「う~ん・・・たくさんあるんで難しいですよね。やっぱりワクワクする気持ちっていうのが・・・知らない土地に行ったってワクワクしますけど・・・こんな身近に自分たちが暮らしている町の近くに、忘れられていたことに気がついた時の驚きとか発見っていうのは、いくつになっても味わえると思うので、ちょっとそういう意識を変えてみるといいんじゃないかなと思うんですけどね」

写真&イラストレーション:中村みつを 協力:ぺりかん社

INFORMATION

『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』

『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』

 この本を持って、お友達やご家族で、まちなか縦走を楽しんでみてはいかがでしょうか。きょうご紹介したほかにも「本郷トレイル」や「神楽坂凹凸(おうとつ)トレイル」「練馬大泉アルプス」などのほか、横浜・横須賀、埼玉、千葉のコースも掲載されています。

 各コースにはアクセス方法や、参考のコースタイム、そしてアドバイスなども載っていますよ。なにより中村さんの親しみのある絵と文章が魅力的です。

 ぺりかん社から絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎ぺりかん社:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001998

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