2023/11/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、YouTubeの動画配信で話題! 週末縄文人の「縄(じょう)」さんと、「文(もん)」さんです。
「縄」さんは1991年、秋田生まれ。大学時代はワンダーフォーゲル部で活動、多くの時間を山で過ごし、趣味は釣りと料理。
「文」さんは1992年、東京生まれ。幼少期は、アメリカのニュージャージー州やアラスカ州で暮らしていたそうです。
そんなおふたりは3年ほど前から、平日はサラリーマンとしてお仕事をされ、週末だけに縄文活動を開始。自然の中にあるものだけ、つまり現代の道具を一切使わずに縄文生活にチャレンジされています。
当初は山梨県の森で始めたそうですが、現在は長野県の敷地面積およそ2000坪、標高1000メートルにある山あいの森を借りて、活動されています。サラリーマンですから、活動着はワイシャツとスーツなんですよ。
ちなみに、週末縄文活動のことは、会社や仕事関係には基本内緒。YouTubeの動画にも顔出しはしていないんです。
そんなおふたりが出された本が『週末の縄文人』、これも話題になっています。
きょうは週末縄文人のおふたりに、本気で取り組んでいる活動の中から試行錯誤の末、気力体力を振り絞り、ついにやり遂げた火起こしと、竪穴住居づくり、そして縄文活動から見えてきた先人たちの知恵や暮らしに思いを馳せます。
☆写真提供:横井明彦、協力:(株)産業編集センター 出版部

週末は縄文人!
●まずは、そもそもどうして週末に縄文人としての活動を始めたのか、それをお聞きしたいんですけれども、縄さん、教えていただけますか?
縄さん「もともとは僕が、文明が崩壊したあとに生活に必要なものを、自分たちで自然から生み出すことができるのか、みたいなことをやりたくて・・・変な話なんですけど、鉄を自分たちで作るとか、石鹸を作るとか、生活に必要なものを自然から作りたいっていう、活動と動画を撮りたいなと思っていたんですね。
でも、それをやる場所がなくて、相方に相談したところ、相方のお父様の土地が山にあるって言ってくれて、それで相方から一緒にやろうと言ってくれました。
僕は現代にも通じているテクノロジー、鉄とか薬とか石鹸とか、そういう今のインフラというか生活を支えるテクノロジーに興味があったんですけど、相方はどっちかっていうと、もっとプリミティヴなというか、原始人とか縄文人とかのテクノロジーに興味があって、どうせやるんだったら原始時代から始めたいって言っていたんですね。
それでゼロから文明を始めて、ステップアップしていく活動にしようっていうので、自然にあるものだけを使って、ゼロから文明を築くっていう取り組みで、今は技術的には縄文時代にいる、そんな活動をやっています」
●なるほど〜。文さんは縄さんから、こういうことやってみたいんだって言われた時は、どんなふうに思われました?
文さん「また何か面白いことを言ってるな〜と(笑)、もともと仲のいい会社の同期だったので・・・。僕はそういうことは全然思いつかなかったんですね。
でも、今ちょっと縄が話してくれたみたいに、僕はもともと、もっとプリミティヴな、プリミティヴだけじゃないんですけど、自分と全然違う暮らしをしている文明の人とか文化の人にすごく関心があったんですね。
彼らがどういうふうに世界を見ているかとか、そういうことに関心があったので、やるんだったら自分のルーツでもあるし、全然自分とは違う世界をきっと見ていたであろう、縄文とか石器時代の人から始める、かつ道具そのものを使わずに進めたいっていうのは、僕はすごく思っていたことだったんですね。
ナイフとかそういう道具を使うというのは、たぶん縄のほうの最初のプランにはあったと思うんですけど、そこは道具はなしでやりたいなっていうのは、僕のどっちかというと強い思いでした。そこから見えてくるものがあるんじゃないかなっていう感じですかね」
(編集部注:おふたりは縄文時代にだけ、こだわっているのではなく、ゼロから文明を築き、ゆくゆくは江戸時代、できれば、現代にまで文明を進めたいという夢を持っていらっしゃいます)

火起こし~神々しい美しさ
●週末縄文人がまず取り組んだのが、「火起こし」ということですけれども、現代の道具を使わずに火起こしするのは、縄さん、大変だったんじゃないですか?
縄さん「そうですね。本当に一回の週末で、3日間ぐらいで火をつけられるだろうとか思っていたんですけど、最初は煙すら出なくて、めちゃくちゃ大変でした。
手をこすり合わせる『キリモミ式』っていう火起こしがいちばんオーソドックスだったので、それをやってみたんですけど、(棒が)まっすぐじゃなくて、どんどん回していると、穴から飛んでいくんですよね。まずはまっすぐな棒がないみたいなところからわからなくて、毎週毎週通って一個ずつできないことを潰していって、全然できないまま続いて、3ヶ月後ぐらいにようやく(火が)ついたっていう・・・」
●それはキリモミ式で、最終的に火がついたんですね。
縄さん「そうですね、つけられましたね。でも最初はふたりがかりですね。今はひとりでもできるようになりましたけど、ふたりで疲れたら交代して、みたいなやり方で、できるようになりましたね」
●おふたりでの共同作業ということで、YouTubeの動画でも「いける、いける〜!」って励ましあっていましたよね。
縄さん「あれ、マジで大事なんですよね。たまに人前でやるとすごく笑われるんですけど、本当に違うよね! あれ、やるとやらないでは・・・」
文さん「全然違う、全然違う」
縄さん「マジで最後のひと踏ん張りで、本当に(火が)つくかつかないか決まるので、もうこれで決めるぞ! もうないぞ! いけー!みたいにいうと、本当につくんですよ」
文さん「筋トレのたぶん、限界までいった時に、もうひと踏ん張り、最後いけー! みたいな感じだと思う・・・限界を超えるのには必要なんですよね」
●やっぱりひとりじゃなくて、ふたりでやるっていうのに意味があるんですね。
文さん「そう思います。意味があるし、ひとりだと文明は作っていけないと思います」

※手にマメをつくり、痛い思いをしながらも、ついに火が起きたときはどんなお気持ちでしたか? 文さん、いかがですか?
文さん「最初にたぶん動画でもそういうふうに言っているんですけど、『美しい』という、それがまず来ました。今まで当然、火というものは見たことはあったんですけど、今まで見てきた火とは全然違って、本当に・・・何だろう・・・マッチとかライターとかそういうのがあれば、火がつくって当たり前にわかると思うんですけど・・・。
でも、自然の中で火の気が何もない森の中で、何もないところから、ブワッてあの明るくて熱いエネルギーの塊みたいなのが生まれた時はもうびっくりして、神々しいと言いますか、そういうものも、はらんだ美しさみたいなものを感じました」
●それこそ途中でマッチを使っちゃえとか、ライターを使っちゃえとかは思わなかったですか?
文さん「それをやっちゃうと、僕たちのやりたかったことには近づけないというか、ただ火起こし風動画を作るだけだったら、別にズルしてマッチでやっちゃってとかってできると思うんですけど、僕らの目的はそこにあるんじゃなくて、本当にそれができるようになるとか、本当に自然のものだけで、何かをやるプロセスで見えることとか、感じることを体験したいっていうことにあるので、それは全然一度も考えてないです」
笹地獄!? 竪穴住居づくり
※おふたりは火起こしのほかにも、石斧づくりや、紐(ひも)をよったり、土器を作ったりと、これも試行錯誤しながら挑戦。そして、ついに取り組んだのが「竪穴住居」づくり。
どんな竪穴住居を作ったのかというと・・・穴の直径がおよそ2メートル、深さが40〜50センチ、床面積は、3〜4人がぎりぎり寝られるテントほどの広さ。本物に比べると小ぶりな作りになっているそうです。構造は、石斧で切った木の枝を、柱や梁などにして、およそ30本の木を組み、その上に屋根材として大量のクマザサをふいた住居なんです。

竪穴住居づくりで、いちばん大変だった作業はなんでしょうか? 文さん、お願いします。
文さん「これはたぶんふたりとも同じなんですけど、笹で屋根をふく作業です」
●どう大変だったんですか?
文さん「まずその全工程にかかったのが30日、そのうちの半分がこの屋根作りだったんですよ。骨格作りは本当に2週間くらいでできちゃって、骨格ができるともうなんかできた気持ちになるので・・・」
縄さん「できた気持ちで半分打ち上げしていましたね。もう終わりだみたいな、あと4日で終わりだとか言って・・・」
文さん「骨組みの前でふたりで肩を組んで写真を撮って、終わった感が出ていたよね(笑)。なんだけど、地獄はそこからだったみたいな・・・。
結局そこから、笹の束を15本から20本ぐらいをひとつにまとめて、屋根に下から順番に結びつけていって、それでどんどん上に向かって屋根をふいていくんですけど、その作業がさらに今までかかってきた作業と同じぐらいかかりましたね。本当は3〜4日とかで、もしかしたら終わるかなとか、僕はうっすら思っていたんですけど、全然進まないんですよ」

縄さん「だいたい1日のスケジュールを言うと、朝7時ぐらいから昼過ぎまで5時間から6時間ひたすら中腰でクマザサ、クマザサは背が低いんで、ひたすら中腰で笹を折り続けるっていう作業、それをご飯を食ってから日が暮れるまで。
それを結ぶツルも、地味にそのツルもあるんですけど、笹を結ぶツルを集める作業もそのあとに数時間やって、日が暮れるまでひたすら結ぶ作業。結ぶのもすぐできるかと思いきや、その束を1回束ねて結んで、3本に1本ぐらい(切れて)。
とにかくめっちゃ丈夫な屋根を作るってなったんで、めちゃくちゃ締めていたんですけど、ツルって意外に切れるんですよ。プツって切れて、ああ!ってなって、また別のツルを探してみたいな、そういうのをうだうだやっているっていうのが朝から晩まで、それが15日間っていう感じですね」
文さん「笹を折る作業、笹を収穫する時に手でパキパキ折っていくんですけど、笹って節みたいなのがあるから、そこをパキって折るとまあ簡単に取れるんですよ。でも簡単に取れるとはいえ、それを2万本分やっていると、手がどんどんひび割れて、血が出てきてマメになってカチカチになって・・・。
本当に最後、指先とかもありえないぐらい硬くなって、スマホに反応しなくなったんですよ。スマホをタップしてもカンカンカンってなって、現代生活にだいぶ支障も出ていました」
竪穴住居に、神々しい一筋の光
※苦労の末についに完成した竪穴住居を見て、どんな思いがこみ上げてきましたか。縄さん、どうですか?
縄さん「僕はあんなに綺麗なものを自分の人生で作ったことがなかったんで、子供の頃、図工は3とかだったし、あんなに手間をかけて、あんなに美しいものを自分たちだけで、しかも道具を使わないで自然のものだけで作った、みたいな達成感があって、すごく嬉しかったですね。あとやっぱり昔の人もこんな家を建てていたんだみたいな・・・。

僕は縦穴住居の中から見える外の景色がすごく好きなんですね。笹をふいた四角い入り口から外の原っぱが見えるんですけど、ちょっと角度を変えると僕らが普段焚き火をしている焚き火台が見えて・・・ここから(見える)景色って全部100%自然にあるものだけで作っていて、縦穴住居で、あ〜これ!って、縄文時代の人も見ていた景色だな、これっ! 誰がなんと言おうと、そうだ! みたいな・・・なんかそういう気分になれたんですよね。
また、竪穴住居の中ってめっちゃ暗くて、そこにマジで一筋の光みたいな感じで、入り口から光が差してくるんですよ。それもちょっと言葉にしづらいんですけど、めちゃめちゃ神々しくて、ずっと見続けていて・・・本当にあんなに豊かな感動は人生で今まで味わったことないなっていう経験でしたね」

●文さんはいかがですか?
文さん「僕も衣食住の『住』を自分で作れたっていうのは、すごくありえないこと。普段暮らしていて、衣と食はなんとか作れたとしても、家を自分たちだけで建てたっていうことの感動と、やっぱり僕もその中の雰囲気、半地下にあってすごく暗くて、入り口の部分からわずかな光が入ってきて、最初(中に)入ると真っ暗で何も見えないんですけど、徐々に徐々に目が慣れて中が見えてきて、目の前に座っている相方の顔がぼんやりと見えてくるんですよ。
なんだろう・・・中に入ると、遊びに来た人みんなが言うんですけど、なんか話しちゃうねみたいな、初めて会った人とかでも、なんか深い話ができちゃうねとか、安心感があるよね、みたいなこと言うんですよ。
それってあの家の持つ、ほの明るい暗さとか、みんなで結局、円になって真ん中にある火を見ながら語るあの感じとか、あの家の機能、人を近づけるあの家の機能っていうのも、今の家にはない凄さだなっていうふうに、作って住んでみて初めて思いました」
自然の見方、文明のありがたみ
※週末縄文人の活動を始めてから、それぞれにどんな変化がありましたか? 縄さん、お願いします。
縄さん「僕はもともと自然がすごく好きで、大学時代も山登りや渓流釣りが好きだったんですね。でも僕は町育ちだったので、自然って休みにレジャーで行くもので、レジャーで行く自然ってちょっと物寂しい気もしていて、自然を味わい尽くしてない気がしていたんです。そうすると、田舎で森に住んでいる人とかそういう人にすごく憧れがあって、それで自然のこういう取り組みをしたいなっていうのがあったんですね。
この活動をしていると、昔は自然の、ただの雑木林みたいに思っていたものが全部宝物に見えると言いますか、石ひとつとってみても、これは『打製石斧(だせいせきふ)』に使えるとか、『磨性石斧(ませいせきふ)』に使えるとか、鋭いから火起こしの穴あけに使えるとか・・・。
粘土を見ても、あっ!これは土器に使えるなとか、木を見ているとこれは樹皮が編み物に使えるかもとか、この植物は繊維になるから紐になるかもとか、なんか自然の見方が本当に豊かになったっていう・・・自分の変化がすごく憧れていた自然の見方に近づいている気がして、本当にこういう人間になりたかったなっていうものになれている気がして、すごくこの活動をやっていて良かったなと思っていますね」
●文さんはこの週末縄文人の活動から、平日現代人の生活ってどう見えていますか?
文さん「今まで僕はどっちかというと、文明に対して批判的というか、社会人になるまでスマホも持っていなかったりとか、文明に対して反発していたんですよ。環境にも悪いしみたいな、そんなの使っていたら人間の能力が落ちるとか、そういう感じがあったんですけど、この活動を始めて文明ってすごいな!って、本当に逆に思うようになりました。
文明ってたぶん人がよりよく安心して安全に、より便利に楽しく幸せに暮らせるようにもともとあるものなんですよね。
それは僕らが実際、石斧を使って、それまで石を手に持ってガンガン切んなきゃいけなかったのが、それだと肘とか手がものすごく痛くなるし、あの太い木は切れないし、そこで石斧っていうものが発明されて、自分たちの体も痛めつけることなく、太い木もより早く切れるようになって、そこでもっとがっちりした広い家に住めるようになるとか・・・。
そういう文明がひとつひとつ進んでいくことで、自分たちの暮らしがよくなっていって、そこには少しでも自分たちの暮らしをよくしたいっていう思いがあるからこそ、文明は進んできたんですよね。
今は自分たちはその延長線にいるわけで、ここまで文明が進んできたってことは、それだけそこに、よりよく生きたいっていう人の思いがあったんだなっていうことに気づけたというか・・・。
目の前にあるマグカップひとつとっても、水がこれだけ溜められるってすごいなとか、当たり前すぎて気づけない部分にちょっと気づけるようになったっていうのはあります」

縄文人に聞きたい!?
※最後に、突拍子もない質問なんですけど・・・もし、縄文時代の人たちに会えるとしたら、どんなことを聞いてみたいですか?
縄さん「今は、縄文時代レベルの土器を作ろうとしているので、粘土をどこで寝かしていましたかとか、あとはあの『火焔型土器(かえんがたどき)』っていうめちゃくちゃ意匠を凝らした、うにゃうにゃしている土器があるんですけど、まずあれをどうやって作っているんですか? あれ、上が重すぎて、作っているうちに潰れてきちゃうんです。普通に僕らがやっているやり方でやると・・・。これ、どうやって乾かしてんだろうなっていうのが、近々の悩みでまず聞きたい。そうですね・・・土器を作っているところを見たいっすね」
●文さん、いかがでしょう?
文さん「ちょうど今やっているのが粘土なんで、さっき縄が言っていた、そもそも粘土をどう寝かせていたかっていう・・・今の人はビニールにくるんで寝かせられるんですけど、昔の人はそんなものはないので、どういうふうに寝かせていたのかは、めちゃくちゃ知りたいのと、あと最近挑戦しているけど、失敗続きなのが釣りなんですよ。
縄文時代に鹿角の針って実際使っていて、それが出土していて博物館に行くと見られるんですけど、いわゆるJの形をした針だったり、両端が尖ったまっすぐの棒の形をした釣り針だったり、いろんな釣り針の種類があるんですね。僕らもいろんな種類を作って、実際試しているんですけど、まったく! 釣れなくて、縄文人の釣りに同行したいです。どうやって、あれで釣っているの!? めちゃくちゃ見たい」
縄さん「確かに釣り、見てみたいな〜、めちゃくちゃ見たいわ〜。化け物みたいにデカくて、アホみたいに簡単に釣れるんじゃないかっていう・・・言い訳みたいな話はするんですけど、魚が違うんじゃないかと・・・」
文さん「そもそも魚が違ったんだろう、みたいな負け惜しみはあるんだけどね(笑)」
縄さん「いっつも負け惜しみ、かれこれ4か月釣れないから・・・」
文さん「それ、めちゃくちゃ気になってます!」
縄さん「気になるな〜」

INFORMATION
縄文活動をまとめた本をぜひ読んでください。おふたりの本気度がよくわかります。火起こしに始まり、石斧、紐、土器、そして竪穴住居づくりまで、試行錯誤の末に成し遂げたサバイバル・エッセイ! 面白いです。火の起こし方や石斧の作り方なども掲載。スーツ姿で活動する様子もカラー写真とともに紹介されています。縄文人の活動をやってみたいかたは、相談にのってくれるそうです。連絡先は本に掲載されていますよ。
産業編集センターから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎産業編集センター:https://www.shc.co.jp/book/19045
週末縄文人のオフィシャルサイトでは動画も見ることができます。
◎週末縄文人:https://wkend-jomonjin.com
2023/11/12 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. (MEET) THE FLINTSTONES / B-52’S
M2. ONCE YOU GET STARTED / CHAKA KHAN
M3. TO FEEL THE FIRE / STEVIE WONDER
M4. Life is Beautiful / 平井 大
M5. 縄文人に相談だ / TATEANAS
M6. CHANGE IN MIND, CHANGE OF HEART / CAROLE KING
M7. 狩りから稲作へ feat.足軽先生・東インド貿易会社マン / レキシ
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/11/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第15弾! お話をうかがうのは、水産資源を守り、環境に配慮した持続可能な漁業の普及活動を行なう、一般社団法人「MSCジャパン」の広報担当シニア・マネージャー「鈴木夕子(すずき・ゆうこ)」さんです。
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「海の豊かさを守ろう」ということでサステナブル ・シーフードにフォーカス! 「MSCジャパン」が取り組んでいる持続可能な漁業のための認証制度やMSC「海のエコラベル」についてうかがいます。
☆写真協力:MSCジャパン

魚の獲りすぎで35,000人もの人たちが失業!?
※まずは「MSC」について教えてください。いつ、どんな目的で設立された団体なんですか?
「MSCは持続可能な漁業を普及する活動を行なっている国際的な非営利団体です。本部はロンドンにあって、1997年に設立されました。MSCが出来たきっかけは、1990年代初頭にカナダのグランドバンクというところで、マダラの漁業が崩壊してしまったということがあるんですね。
どういうことかと言いますと、それまで獲れるだけ獲っていったマダラ漁業なんですけれども、獲りすぎてしまって、全く獲れなくなってしまったということが起きたんですね。それでマダラの漁業が崩壊したことによって、漁業者さんもそうですし、そのマダラを加工して缶詰にしたりとか、そういった加工業者も潰れてしまって、35,000人の漁業者や工場で働く人たちが失業したということが起きました。
そこで魚の獲りすぎが環境や生態系だけではなくて、人の生活にもすごく影響を与えるということが浮き彫りになって、このままではいけないということで、持続可能な漁業に関する認証制度が必要だということになり、MSCの構想が練られ、1997年に設立したということです」
●鈴木さんが所属されている「MSCジャパン」はいつ開設されたんですか?
「それから10年たって2007年に設立されました。当初はまだ持続可能な漁業とかサステナブルといった言葉は、ほとんど聞かれていない時でしたので、日本事務所が設立されて、漁業者さんや企業さんに説明に行ったりしても、なかなか理解していただくことが難しくて、うちは必要ないですっていうような感じだったっていうのは、設立当初からいたメンバーに聞いております。
ただ、最近は魚が獲れなくなったとか、そういった水産資源の危機感が広がっていることですとか、あとは2015年に国連でSDGsが採択されたことですとか、リオデジャネイロ・オリンピックなどで認証の水産物が調達されて、それが東京オリンピックにも続いたりとか、そういったことがあって、設立から10年ぐらい経ってから急速に理解や認証水産物の商品が広がってきたということがあります」
(編集部注:「MSC」は現在、ヨーロッパや南北アメリカ、アジアを含め、世界20カ国に支部があるそうです。毎週のようにオンライン・ミーティングを行ない、世界の水産資源の状況や、漁業に関する最新情報を共有しているそうですよ)

3つの原則と、25の業績評価指標
※ここからは「MSC漁業認証」について、詳しくうかがっていきたいのですが、どんな認証制度なのか、具体的に教えていただけますか。
「MSC漁業認証というのは、持続可能な漁業に与えられる認証なんですね。審査は3つの原則に基づきます。それを漁業者さんが満たす必要があります。
原則のひとつ目が、自然の持続可能性に関するもの。例えば、その漁業者さんが漁獲の対象とする魚種の資源が十分な量があるのかどうか、持続可能なレベルにあるのかどうかというところがチェックされます。その資源が持続可能なレベルにないとなると、もうそこでダメということですね。
ふたつ目が、漁業が生態系に与える影響について。その漁業が対象としている魚以外の魚介類ですとか、あとはウミガメやウミドリとか、ほかの生き物、絶滅危惧種などが間違って網にかかるということがあるんですね。それを最小限に抑えているか。例えば、その網にかかるほかの生き物が多ければ多いほど、生態系に影響があるので、そういった影響を最小限に抑えられているかというところの確認が行なわれます。
3つ目が、漁業の管理システム。ここでチェックされるのが生産資源が豊富にあるか、原則1の生態系への影響ですね。そういった原則を満たすことができるように、きちんと国際ルールや国内法が整備されていて、それが守られているかどうか、この3つの原則のもとで審査されます。
この3つの原則の下に25の業績評価指標というのがあって、その項目に照らし合わせて審査されます。各項目で60点を下回るのがひとつでもあると認証されないということです。
また60点から80点未満の指標についてはOKではあるんですけれども、期限を定めて80点以上になるまで改善するといった条件がついての認証ということになります。なので、かなり厳しい審査が行なわれるということですね」
●たくさんの審査がありますけれども、その審査はどなたがされるんですか?
「審査はMSCがするのではなくて、独立した第三者の審査機関が行ないます。私たちの仕事というのは、その認証制度の規格を設定するんですね。その規格を作った団体が審査まですると、透明性とか公平性が保てないので、第三者がその規格に基づいて、その漁業がきちんと(基準を)満たしているかを審査するということになります」

「近海かつお一本釣り漁業国際認証取得準備協議会」
MSC漁業認証のメリット
※漁業者は、その認証を取得することによって、どんなメリットがありますか?
「まず、サステナブルであるという付加価値をつけることで、ほかの水産物と差別化することもできますし、イメージを向上することができるということですね。あとは新しい市場とか販路の拡大ということもあります。特にMSC認証というのは海外で広がっているので、輸出を考えている漁業者さんにとってはすごく大きいですね。
特に欧米の消費者は、サステナブルな魚でないと買いたくないというかたも多くいらっしゃるので、そういう意味で既存の市場プラス新たな市場を開拓できるということ。
あとは持続可能な漁業を行なうことによって、長期的には漁獲量が増加するということで、自分たちの漁業も持続可能になるというところですね。次世代にも漁業を受け継いでもらえるような、そういったメリットがあります」
●認定されると、認証マークをつけることができるんですよね?
「そうですね。その(認証を受けた)漁業で獲られた水産物がサステナブル(シーフード)として消費者に届くまでに、ラベルを貼るので、消費者が認証を受けた漁業で獲られた水産物ということが分かるようになっています」
●海のエコラベル、ですね。
「はい、MSC『海のエコラベル』という名前です」
●このMSC漁業認証という制度を漁業関係者に広めて理解してもらうためには、大変なパワーがいると思うんですけれども、いかがですか?
「MSC漁業認証の取得は、漁業者さんの自発的な意思によるものなんですね。自分たちがちょっと挑戦してみようかなというふうに興味を持った漁業者さんから問い合わせをいただいて、そこでいろいろ説明をすることになります。
MSC漁業認証の審査がすごく厳しくて、審査項目も多岐に渡るということを、まず知っていただきます。その中でも例えば、漁業者さんが漁獲している以外の生き物とか、その周りの環境までが審査項目に入ったりするので、初めのうちは、なぜそこまで審査の対象になるのかという疑問を持たれることがよくあるんですね。そういった漁業者さんの通常の漁業の中では、あまり馴染みのない部分は丁寧に話すようにしています。
ただ、漁業認証を取得しようと考えている漁業者さんは魚がなくなってしまう、減ってしまうと、漁業そのものが成り立たなくなるという危機感をすでにお持ちです。次世代に水産資源を残したいという使命感も持っていらっしゃるので、こういった話をするとご納得いただいています」
(編集部注:MSC漁業認証を取得した漁業は現在、日本では18件、世界では539件あるそうです。最近では、SDGsの気運の高まりや、水産資源の減少傾向などもあり、MSC漁業認証の取得を目指す漁業関係者からの問い合わせが増えているとのこと。
この認証は、取得すれば、それで終わりではなく、5年ごとに更新の審査が行なわれ、改善の条件が付けられるので、認証を維持すればするほど、持続可能な漁業の質が高まっていく、そんな制度になっているそうです)

MSC漁業認証の質を守る、もうひとつの認証制度
※ここまでお話をうかがってきて、MSC漁業認証については、ある程度、理解できたんですが・・・ふと、素朴な疑問が浮かんできました。認証を取得した漁業の水産物と、そうじゃない水産物が混ざったりすることはないんですか?
「それはないですね。というのは、MSC認証にはふたつの認証があって、そのふたつの認証からなっているんですね。先ほどお話ししたMSC漁業認証と、あとMSC CoC(シー・オー・シー)認証というふたつがあります。この『CoC』っていうのは、英語ですと“Chain of Custody(チェイン・オブ・カストディー)”と言いまして、日本語にすると管理の連鎖、鎖という意味があります。
せっかく漁業者さんが漁業認証を取得しても、その魚が消費者の手元に届くまでに認証ではない水産物が混じってしまったら、全く意味がなくなってしまうので、漁業者さんが水揚げしたあとに卸売業者さんから水産物のパッケージを行なう最終の包装業者までの、サプライチェーン全体に対する認証がCoC認証というものになっています。
そのふたつがセットになって初めてラベルが付けられるということは、その漁業者さんが獲った、認証を取得した水産物が確実に自分たちのところに届いているんだなということの証明になります」
●なるほど。認証水産物が仲介業者とか加工業者にいっても、そこでも認証水産物ではないものと混ざるっていうことはないわけですね?
「そうですね。混ざるということはないです。入荷して加工・保管などすべての段階において認証の商品であるということが、識別できるような管理が求められたりとか、あとは製造ラインを分けるなどしても確実に分別することが求められています」
●漁業者から小売店までの流通ルートの中で、この認証に対する理解と認識がすごく大事になってくると思うんですけれども、その辺りはどうやって広めているんですか?
「MSCとしても、MSC認証制度の重要性を業界のかたがたに発信しているんですけれども、最近では魚が減ってきていることの危機意識ですとか、持続可能な水産資源を管理するという重要性がすごく高まってきているので、水産業界ではこうした取り組みを行なうということが、当たり前という風潮にはなってきているというのを感じています」

MSC「海のエコラベル」、500品目以上!
※私たちが、持続可能な漁業を応援するためにはMSC「海のエコラベル」がついた水産物を積極的に買うことだと思うんですけど、どこで販売していますか?
「よく聞かれる質問で、なかなか見たことがないと言われることがあるんですけれども、実は結構身近なところで手に入ります。
イオングループですとか、生協/コープ、セブン&アイグループ、ライフ、あとはマクドナルドとか、私たちにとって身近なスーパーとかレストランに置いてあったりします。あとはスーパーの店頭だけではなくて、航空会社の機内食とかホテルのレストラン、大学の学食などでもMSC『海のエコラベル』を表示したメニューが提供されています。
どういったものにMSCラベルが貼られているかと言いますと、魚の切り身とかそういった鮮魚だけではなくて、水産加工品、ちくわやカニカマ、からし明太子とか。あとは白身魚のフライなどの冷凍食品ですとか、缶詰めなどもあります。最近新しいところでは猫の餌、猫缶にもMSCラベルが付くようになりました」

●かなり身近にあるわけですね!
「そうなんです。ただ見たことがないという声も大きいのは、やはり日本ですとスーパーの種類がすごくいっぱいあるので、近所のスーパーでは扱ってなかったということもあるかと思います」
●意識してちゃんと見てみます!
「はい、ありがとうございます。意識しないと全然目に入ってこないんですけど、一度意識すると実は結構あるなっていうことに気付くかと思います 」
●では改めて、リスナーのみなさんに伝えたいことを教えてください。
「実はMSC『海のエコラベル』が付いている商品というのは、日本で500品目以上あって、たくさんの種類がいろいろなところで売られています。サステナブルな商品っていうと、ちょっと値段も高いんじゃないの? と思われるかもしれないんですけれども、実はそんなことはなくて、通常の商品とほとんど(値段は)変わらないですね。
なので、商品を選ぶ時にラベルが付いたものを選ぶようにすると、持続可能な漁業を目指す漁業者さんが増えていって、海の環境を守ることにもつながりますので、ぜひ見かけたら選ぶようにしてください。
また、近所のスーパーでもし売ってない場合は(お店のかたに)扱ったりしていますか? というふうに聞いていただくことも、スーパーのかたたちはお客様の声を聞くようにしていますので、それもすごく大きな力になると思いますので、ぜひよろしくお願いします」

INFORMATION

「MSCジャパン」では消費者に、MSC認証制度とMSC「海のエコラベル」をもっと広く知ってもらうために、年3回キャンペーンを行なっているそうです。先月は、この番組のホームページでもご紹介しましたが、「サステナブルシーフード・ウィーク」というキャンペーンが展開されていました。来年1月には「サステナブルなお魚レシピ」を公開するそうです。
ちなみにMSCアンバサダーは、海洋生物好きで知られているココリコの田中直樹さんですよ。MSC認証とMSC「海のエコラベル」、そして活動について詳しくはMSCジャパンのサイトをご覧ください。
◎MSCジャパン:https://www.msc.org/jp
2023/11/5 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. FISH! / JEFFREY FOSKETT
M2. THE SEA / CORINNE BAILEY RAE
M3. BY THE SEA / SUEDE
M4. SPIRIT OF THE SEA / BLACKMORE’S NIGHT
M5. 魚 / スピッツ
M6. TO THE SEA / JACK JOHNSON
M7. BEYOND THE SEA / CELTIC WOMAN
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/10/29 UP!
◎深澤 遊(東北大学大学院の准教授)
『「枯木こそ山のにぎわい」〜枯木が育む生き物と森林生態系』(2023.10.29)
◎新宅広二(動物行動学者)
『あなたのお悩みに「動物」を処方!?心がちょっと軽くなる“動物行動学的”読むお薬』(2023.10.22)
◎笠原里恵(信州大学の助教)
『この秋、可愛くてワイルドな「カワセミ」を観察しよう~水辺のある公園や小さな河川にきっといる!?』(2023.10.15)
◎奥野克巳(立教大学・異文化コミュニケーション学部の教授/人類学者)
『「人類学」入門~ボルネオ島の狩猟民プナンから「人間」が見えてくる!?』(2023.10.08)
◎森 昭彦(サイエンス・ジャーナリスト/ガーデナー)
『「雑草」を知れば知るほど、「人生」は豊かになる!?』(2023.10.01)
2023/10/29 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東北大学大学院の准教授「深澤 遊(ふかさわ・ゆう)」さんです。
深澤さんは1979年、山梨県生まれ。信州大学 農学部卒業、京都大学大学院 農学研究科修了。そして、研究職から、森林組合やトトロのふるさと財団の職員を経て、現在は東北大学大学院の準教授として活躍されています。
子供の頃の深澤さんはコケが大好きな少年で、小学校3年生の夏休みの自由研究が「リアルコケ図鑑」。その後、やはり小学生の頃に、国立科学博物館の子供向け講座でアメーバの仲間「変形菌」に出会い、その時もらった飼育セットで変形菌を育てたり、自分で見つけた変形菌をスケッチしたりと、夢中になっていたそうです。
現在、深澤さんは、森林の生態に関する研究をされていて、特に枯木が生き物や環境に対してどんな役割を果たしているのかを調査・研究されています。そして先頃『枯木ワンダーランド』という本を出されました。
きょうはそんな深澤さんに枯木を舞台に繰り広げられる、生き物たちの驚くべき営みや、枯木が人間にもたらす恩恵のお話などうかがいます。
☆写真協力:深澤 遊

枯木のスペシャリスト
※まずは、深澤さんのご専門を教えてください。
「森林の生態学を研究しています。生態学っていうのは生物がどのように暮らしているかとか、環境やほかの生物と、どのような関係性を持って暮らしているのかを調べる学問分野です。
その中で森林生態学は森にどのような生物がいて、それらによって森がどのように成り立っているのかを調べています。僕はその中でも特に木が枯れたあとの枯木ですとか、そこに棲んでいる菌類など、微生物の生態に注目して研究しています」
●具体的には、どんな研究をされているんですか?
「具体的には、森の枯木の中にどんな種類の菌類がいて、それによって枯木がどのように分解されていくかを調べています。最初は同じ枯木でも分解に関わる菌類の種類によって、全く違うように腐朽していくんですよ。それが森林の炭素貯留量に影響する可能性ですとか、森林の生物多様性に影響する可能性のようなものを探っています」
●どんな菌類なんですか?
「枯木に生えているシイタケとか、そういったキノコを想像していただければいいと思うんです。キノコは、要は花みたいなもので、枯木の表面に菌が花を咲かせたような状態なんですよね。
その菌の本体は枯木の中の菌糸。カビと同じような形で枯木の中にいて、それが本体なわけですね。その本体の菌糸が、枯木を分解して栄養にして生活しているんですけども、枯木の中でどういう菌がいて、どういうふうに菌が枯木を分解しているのかっていうようなことを研究しています。
枯木の中を削ってみると、枯木の断面に黒い線が見えるんですよね。その黒い線は枯木の中にいる菌類のコロニーの境界線なんです。それを見ると本当にモザイク模様みたいになっていて、枯木の中でいろんな菌類のコロニーがあって、それが空間の獲得競争をして、陣地争いみたいな状態になっているんですね。そういうのを見ると面白いですね」

(編集部注:深澤さんは大学の2年生まで山岳部で活動、大学院生の時にはアメリカのカリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園に行き、クライミングを楽しんだこともあるとか。研究者になって調査のためにひとりで山に出かけることもあるので、やはり、安全を確保する山の経験は活きているそうです)
生き物で賑わう枯木!?

※ここからは深澤さんが先頃出された本『枯木ワンダーランド』から、番組で気になったワードや項目についてお話をうかがっていきます。
前書きに「枯木も山のにぎわい」ではなくて「枯木こそ山のにぎわい」と表現されています。枯れてしまった木が「にぎわう」とは、どういうことなのか、教えてください。
「これは枯木に棲んでいる生き物が、非常に多様だっていうことですね。森に虫を探しに行って何も見つけられなかったら、多分枯木をひっくり返せば、大抵何かいますし、例えば、クワガタが好きな人だったら、枯木の中にクワガタの幼虫が棲んでいることをよく知っていると思います。
それだけではなくて、腐った倒木の上にはよく苔や木の芽生えも生えていますし、目を近づけてみるといろいろなキノコが生えていたり、小さい虫が歩き回っていたり、何かを食べていたりします。

さらに、先ほど言いましたようにノコギリで切って中を覗いてみると、菌類のコロニーの境界線が見えたりしますので、それらを見ているだけでも面白いんですよ。さらに培地の上に培養してどんな菌類なのか調べたりですとか、枯木の成分の分析をして、どんな物質が残っているかを調べると、枯木の中の生き物の営みがわかってきて、さらに面白いです。
そういうことが見えてくると、枯木は多種多様な生き物の営みでにぎわっているということがよくわかると思います」
●枯木ってものすごく情報量があるんですね?
「そうですね」
●2015年からは森の中にあるご自宅の庭で、枯れたコナラをそのままにしておいたり、伐採した同じくコナラなどの丸太を庭に放置してあるということですけれども、お庭が研究のためのフィールドになっているっていうことですか?
「はい、そうです。庭はやっぱりいちばん近いフィールドなので、大事にしています。生態学で新しい発見をするのに、やっぱりどれだけ生き物を観察できるかっていうのが肝になることが多いんですね。遠くのフィールドと違って、庭はいつでも観察できるので、誰も知らない発見ができるかもしれません」

●今、特に注目していることはあります?
「実際、本にも書いたんですけれども、ある冬の朝、リスが庭にやってきて枯木の樹皮を剥いて、その下の菌を食べることを初めて発見したんですよ。さらにその樹皮の下に菌が生えていて、その菌に独特な昆虫がやってくることも庭の調査からわかりました」
●ものすごく近いフィールドでいいですね、研究しがいがあって!
「そうです。自分の(部屋の)椅子の上から全部見えるので・・・」
お菓子の家に棲む!?
※枯木は、分解するまでには長い時間がかかると思いますが、年ごとに、季節ごとに、枯木を利用する生き物も変化していくってことですか?
「そうですね。やっぱり分解していくので時間に伴って、分解していく時の成分だとか、いろいろなものが変化していくので、そこに棲んでいる生き物もだんだん移り変わっていきます」
●どういう生き物が、どうやって変化していくのかを教えていただけますか?
「はい、いちばん重要になるのはやっぱり水分で、木が生きている時は、ある程度水分を含んでいて、これによって菌類の侵入を防いでいるっていう側面があるんですけれども、木が枯れると一旦乾燥していきます。この乾燥によって菌類が成長して、木を分解できるようになるんですね。
最初は、木が生きていた時から内部に潜んでいた菌類がいて、”内生菌”っていうんですけれども、これが成長を開始します。 ただこの菌はあまり木材の分解力はなくて、糖分なんかを食べて生きているんですよ。この糖分がなくなるとすぐにいなくなっちゃうんです。
そのあとに木材を分解できるような種類の菌類が胞子とかで定着してきて、枯木を分解していくと、だんだん木材がボロボロになっていきますよね。そうすると水が染み込みやすくなって、含水率がだんだん上がってきます。
そうなると表面にだんだん苔が生えてきたりだとか、乾燥した木材が好きなカミキリムシやゾウムシの幼虫から、湿った材木が好きなクワガタムシの幼虫に、内部の昆虫種も移り変わってきたりします。この頃になると、倒木の表面に木の芽生えが生えてきたりして、次の世代の森が倒木の上で育っていくわけです」

●生き物たちは枯木から、どんな恩恵を受けているんですか?
「枯木に棲んでいる生き物にとって多くの場合、枯木は住処であると同時に食べ物でもあります。イメージとしてはお菓子の家に棲んでいるようなものなのかもしれません」
●枯木って本当にただの燃料みたいなイメージもありましたけれども、そうではないわけですね。枯木には、いろんな生き物に必要な養分があるっていうことですか?
「そうですね。枯木は重さの半分程度が炭素でできています。炭素はすべての生き物が体を作る上でいちばん重要な物質で、あらゆる生き物はどこかから炭素をもらってくる必要があるわけですね。
植物は光合成によって空気中の二酸化炭素から炭素をもらってきていて、ほかの生き物は植物を食べることで、あるいはほかの動物を食べることで炭素を得ています。枯木を食べる生き物は、枯木から炭素を得ているっていうわけです」
枯木は燃料!? バイオマス発電の是非
※本の第2部に「枯木が世界を救う」という見出しがついていて、その中に「枯木が消える」というチャプターがあります。これは森から、枯木が消えてしまうってことですか?
「はい、そういうことです」
●これは日本の話ですか?
「日本では現在まだ、それほど消えていないと思います。ただ心配なのは、枯木などのバイオマスを燃やして発電するバイオマス発電が、とても推奨され始めていることです。
木材は確かに木が成長すれば(発電は)できるので、再生可能エネルギーなんですけれども、燃焼で失われるスピードに対して、木が成長するスピードはあまりにも遅いので、とてもではないですが、現在の人口が必要としているエネルギー量をバイオマス発電で賄って回していくことができるとは思えません。
なので、バイオマス発電が広く行なわれるようになったら、山から枯木はあっという間になくなってしまうんじゃないかと思います」
●あっという間になくなってしまったら、生物多様性がそれこそ損なわれてしまうと思うんですけれども、ほかにはどんな影響が考えられますか?
「やっぱり枯木が燃料として使われると、枯木の中に保存されていた炭素が二酸化炭素として大気中に放出されますので、温暖化が進行するんじゃないかと思います。バイオマスを発電に使うと、化石燃料を使った場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性もあるそうです」

●改めてなんですけど、木は光合成を行なう過程で、地球温暖化の主な原因になっている二酸化炭素を吸収してくれているんですよね。で、木はその二酸化炭素を自分の中に溜めているということですよね?
「はい、そうですね。それで体を作っているので」
●その木が枯れてしまったら、その二酸化炭素は・・・?
「分解されたり燃やされたりすると、二酸化炭素として放出されるってことになります」
(編集部注:枯木をバイオマス発電などに広く利用するようになると、森から枯木がなくなってしまうというお話がありましたが、深澤さんは森の中にある枯木を、単なる燃料として見ることに警鐘を鳴らしています。詳しくはぜひ、深澤さんの本『枯木ワンダーランド』をチェックしてください)
枯木の下もワンダーランド
※枯木を観察していて、どんなときにいちばんワクワクしますか?
「やっぱりまだ見たことのない生き物を見つけた時ですかね。初めて見る変形菌とか、キノコ、苔、虫、ナメクジ、カタツムリ、ヘビ、サンショウウオとか、いろいろな生き物を枯木で観察できますので・・・。あとは、ものすごい巨木の枯木を見た時とかは、目の前に保存されている時間の長さにくらくらしたりします」
●都市公園には枯木がそのままにしてあったりとか、丸太が放置されているっていうことはなかなかないと思うんですけれど、もし見かける機会があったら、どんなところを見ると面白いですか?
「もし許されるのであれば、樹皮を少し剥がしてみたりですとか、樹皮の裏側にいろいろな生き物が隠れていたりしますし・・・・。あと丸太、枯木を転がして、その下に隠れている生き物を探してみると面白いと思います。
実際、僕も枯木を調査しながら、いろいろな国で枯木の下を見てみるってことをやっているんですけれども、国とか場所によって、本当に枯木の下に潜んでいる生き物が全然違っていて面白いですよね。
日本だとミミズがいたり、シロアリとかアリがいたり、時々ヘビがいたりとかすることが多いです。アメリカの東海岸では、枯木の下にサンショウウオがいっぱいいたりだとか、ヨーロッパではナメクジが大量にいたりしましたね」
●国によって全然違うんですね! では最後に、今後の研究で明らかにしたいことを教えてください。
「研究テーマは、マクロなものからミクロなものまで、いろいろあるんですけれども、マクロなテーマとしては、枯木を分解する菌類や、その分解機能が世界的に見て、どのような分布をしているのかを明らかにしたいと考えています。これは地球の環境が変わると、菌類の種や枯木の分解がどのように変わるかといった予測にもつながると思います。
ミクロなテーマとしては、個々の菌類が環境に応答しているとしたら、その生理的なメカニズムですとか、これはちょっと違う話になってしまうんですけれども、菌類の菌糸が持つ機能と知能とか、そういったものについて明らかにしていきたいと思っています」

INFORMATION
『枯木ワンダーランド~枯死木がつなぐ虫・菌・動物と森林生態系』
深澤さんの本をぜひ読んでください。枯木が分解の過程で、いかに生物多様性に貢献しているのか、まさに「枯木こそ、山の賑わい」というのがよくわかりますよ。そして、森から枯木をなくすことで、どんな影響が出てくるのか、さらに枯木が地球環境の保全に役立っている仕組みなど、興味深い内容になっています。深澤さんが描いた精密なスケッチも必見! 築地書館から絶賛発売中です。
詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎築地書館:http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1653-2.html
深澤さんのサイトもぜひ見てください。
2023/10/29 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. NORWEGIAN WOOD / THE BEATLES
M2. TREES / TWENTY ONE PILOTS
M3. FIELDS OF GOLD / STING
M4. AMAZING GRACE / SARAH BRIGHTMAN
M5. エイリアンズ / キリンジ
M6. A HARD RAIN’S A-GONNA FALL / BOB DYLAN
M7. I STILL HAVEN’T FOUND WHAT I’M LOOKING FOR / U2
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/10/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動物行動学者の「新宅広二(しんたく・こうじ)」さんです。
新宅さんは1968年生まれ。上智大学大学院、京都大学霊長類研究所を経て、上野動物園、多摩動物公園に勤務。その後、国内外のフィールドワークを含め、400種以上の野生動物の生態や飼育方法を修得。専門は動物行動学と教育工学。
そんなキャリアを活かし、国内外のネイチャー・ドキュメンタリーや科学番組、そしてきょう解説していただく動物フィギュア「アニア」などの監修も担当。さらに国内外の動物園や水族館、博物館のプロデュース、また、大学や専門学校で教鞭をとるほか、これまでに『しくじり動物大集合』や『危険生物最恐図鑑』など、生き物に関するユニークな本を数多く出されています。
そんな新宅さんの新しい本が『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』。
この本は、私たち人間が抱えているお悩みに対して、「ところで、動物たちはどうしているんだろう」という観点から、読者から寄せられたお悩みに、動物を処方するという設定で動物の生態や行動を紹介。くすっと笑えて、少し心が軽くなる、読むお薬になっているんです。
そこできょうは、私たち人間が抱えているお悩みを、動物行動学の視点で分析していただくほか、新宅さんが監修されている動物フィギュア「アニア」についても解説していただきます。
応募方法はこちら!

寝相のお悩みにパンダ!?
●この本は7つのチャプターに分かれています。まずは、チャプター1「小さな悩み」から「寝相が悪いんですけど・・・」という33歳の女性のお悩みに、ジャイアントパンダが処方されています。 これはどういうことなんでしょうか?
「私の中でいちばん寝相の悪い動物は何かなって考えた時に、ジャイアントパンダだったんですね。 私は上野動物園にもいましたので、やっぱりあの寝相や寝姿がヴァリエーションが多くて、非常に面白いんですよね」
●どんな寝方をするんですか?
「普通の動物にとっては、お腹は骨がない部分で、いちばん急所なんですよね。寝るっていうことは、いちばん無用心になっちゃうので、お腹をさらすっていうことはないんですよね。いちばん大事な部分を下にして、丸くなって寝るのが大体の動物ですけど、パンダは文字通り、大の字になってグーグー寝ますから」
●お腹、全開!
「もうお腹を全開にしちゃって寝ますからね~。寝姿の悩みはパンダに聞いてもらったほうが・・・(笑)、パンダがなんと言っても、寝姿の最高の進化を遂げた動物なんですよね」
●すごいですね! 安全性は大丈夫なんですか?
「これは、実は生態とも関係しているんですね。パンダは(標高)4000メートル以上に棲む、すごく高山の動物なんですよね。だから天敵がいないので、用心する気持ちが、長い進化の過程でなくなっちゃったんです。なので、動物園で飼うようになっても不用心な姿で寝るようになっているんですよ。野生の緊張感の高い生態で暮らしているような動物たちは、なかなかお腹丸出しで寝るってことはないです」
●続きまして、チャプター2「容姿性格の悩み」から「ダイエットに失敗しました」という24歳の女性からのお悩みにクマが処方されていますけれども・・・。
「ダイエットとリバウンドの最強の動物と言えば、クマですね」
●痩せたり太ったりっていうことですか。
「動物の中でいちばんその差が大きいですよね。よくご存じかと思います。例年秋口に、冬眠に入る前なんかにクマのトラブルの問題が報じられますよね。あれは食い貯めをしとかなきゃいけないので、どんぐりとかいろんなものを食べ漁って、1日5000キロカロリーっていうとんでもないカロリーモンスターですから、それを取っていくんです。
一方、半年間1日5000キロカロリーも食べるような食生活をしたかと思うと、それ以降、半年間の冬眠では1滴も飲まず食わずの減量期間で、冬眠明けの春には激痩せして出てくるんですよね」
●え~〜、なんだか人間としては体に悪そうって思っちゃいますけど・・・。
「もうすごいですよね〜。ですから、その生理のメカニズムがまだ完全に解明しきれていなくて、医学的にも非常に注目されているんですよね。冬眠がどういうメカニズムになっているのかっていうのは、まだまだ謎が多くて面白いんですよね」
●そんなに体重が変化していても、健康状態は別に悪化したりっていうのはないんですよね?
「そうですね。飲まず食わずというだけじゃなくて、おしっこ、うんちもしないっていうところが面白いとこなんですよね。毒で体に貯めておくといけないものをエネルギーに変える能力が、実はクマにはあるんですよね」
●え~! すごいですね~!

仕事のお悩みにミツバチ!?
●では、チャプター3「仕事の悩み」から25歳の女性、「仕事が楽しくなくて」というお悩みに処方箋がミツバチ。で、次のページに37歳の男性からの「働かないとダメですか?」という悩みに対して、ミツバチのオスを処方されています。これはどうしてミツバチなんですか?
「ミツバチは面白いんですよね。無脊椎動物、どういう点を見るかにもよるんですけど、脊椎動物でかなり社会性が複雑になって頂点を極めているのは、ひとつは人間もあるかと思うんですけれども、その対極って言うんでしょうかね。無脊椎動物で非常に複雑な社会に進化させているものがミツバチなんですよね」
●ミツバチ!?
「特に分業で、仕事が割り当てられていて、それがいろいろ選べるって言いますかね」
●例えば、どんな分業がありますか?
「例えばですけど、ミツバチの働きバチ、“ワーカー”って言われているのは、みんな実はメスなんです。まだ羽化したばっかりの時は、いろんな経験を積んでいないので下手くそなんですよね。だからまず、お掃除係から訓練して・・・」
●へ~〜! 下積みみたいですね。
「下積み期間があって、そこでいろいろ学んでいくと、今度は育児、卵とか幼虫の世話をする仕事に昇格して、経験を積んでいくと、門番と言って、巣のところで見張りをしたりするんです。例えば、クマとかいろんな天敵が蜜を盗みに来たりして、そういうのから守るガードマン役をやったりするんですね。
だんだん配属を変えていきながら出勤して、OJT(*)みたいにやってですね。いちばん究極に難しいのは、餌を採ってくること。それまでは内勤の仕事なんですよね。これが外勤バチって言われるんですけど、外に出て花の蜜を探して採ってくる作業は、かなりの経験が必要で、仲間にそれを伝えなきゃいけないんですよね。
何キロも先の餌源(えさげん)がどっちにあって、それがどんな食べ物なのかっていうのを伝えて、みんなで採りに行くんですけど、いちばんベテランになると、そういうのができるようになってくるので、きっとそういう仕事の中で楽しみを選べるかもしれないですね(笑)」
(*On the Job Trainingの略 )
●なるほど! 確かにそうですね。ところでミツバチのオスっていうのは?
「一方で、面白いんですけど、オスがほとんどいないんです。ちょこっとはいるんですね。何千匹、何万匹いる中で、数匹いたりするんですけど、それの役割がよくわかっていないんですね。もちろん卵を産ませるっていう仕事はあるんですけど、それ以外は巣の中でうろちょろしているんです。別に餌を採りに行くわけでもなく、お掃除するわけでもなく、育児を助けるわけでもなく・・・」
●メスがこんなに忙しく働いているのに!
「(メスが)命がけでやっていても、(オスは)何にもしてなくて、ぼーっとしていて、うろうろしているだけで、時々蜜なんかをちょっとつまみ食いなんかしてっていうように、働かないバチなんですよね、オスっていうのはね。
だからすごく両極端で、でもそれが進化的に淘汰されてもいい、そういうものができるだけ存在しないような形にも進化的にできたでしょうが、なんとなくそういうものも生きていける余裕を残してくれている面白さっていうのが(ミツバチの)進化の中にありますよね」
●では、働かないとダメですか? っていうこの37歳男性のお悩みには・・・。
「まあ、ミツバチをお手本にしたらいいかもよ! っていうところですね(笑)」
ビーバーはマイホームパパ!?
●続いてチャプター4「家庭の悩み」から「マイホームを持つのが夢」という38歳男性からの悩みですね。悩みというか願望なんですけれども、処方箋がビーバーとなっています。これはどういうことでしょう?
「このマイホームパパを代表したような動物がビーバーなんですね。ビーバーはネズミの仲間で水辺、水性に適応して進化した動物なんです。木を切って川をせき止めてダムのようなものを作るのは、割とみなさんイメージとしてあるかと思うんですけど、(川の)真ん中のところに木を集めて巣を作るんですよね。
天敵の泳げない猫科の動物なんかは水を嫌ったりするので、水の中に行けないんです。生き残るために機能的な巣を作っているんですけども、実はそれだけじゃなくて、このビーバーのお父さんはメンテナンスもすごくこまめにやるんですね。自分で作ったお家が大好きで、枝の角度とかそういうのを、ちょっと気にいらないと直したりとか・・・」
●DIYみたい!
「DIY! ひとりでね! 子供とか呆れているかのように、またやっているよ! っていう感じで、お父さんがすごく一生懸命、家のメンテナンスを欠かせないんですよね。
私は動物園にいた時にビーバーに実験したことあるんですね。ダムが決壊したりした時に補修をするのもビーバーのお父さんの仕事なんです。すっ飛んで行って泳いで、枝とかをあてがって補修をするんですね。
水の流れる音を、おトイレのジャ〜って流す音を録音して、飼育しているビーバーに聴かせたら、ビーバーがものすごいダッシュで飛んできて、“どこですか? 壊れてるの! どこ?”って感じで、直す気満々で。それぐらい、なんて言うんでしょう、子供を守る以前に、マイホームのメンテナンスに命をかけているぐらいの面白い動物ですよね」
動く動物フィギュア「アニア」
※新宅さんは、タカラトミーの動物フィギュア「アニア」の監修もされています。この「アニア」、陸や海の動物をはじめ、鳥、昆虫、恐竜など、幅広いジャンルの生き物、およそ100種類ほどが販売されていて、子供はもちろん、大人にも大人気なんです。

●きょうはスタジオにたくさん持ってきていただきました。ありがとうございます。ゴリラとかキリンとか、サイとかパンダとか、いろいろな動物がいますけれども、よくできていますね~!
「このアニアは、動物フィギュアとしてもちょうど10周年になって、だいぶラインナップも揃ってきたんです」
●すごい! 質感もしっかりしているというか、合皮のような感じで・・・。
「そうですね。普通の動物フィギュア、いま世界中で割と大ブームになっているので、いろんな精工なものがありますけど、その多くが飾って楽しむようなものがほとんどなんですね。アニア はやっぱり玩具メーカーのものなので、遊んでもらうためのものっていうことで、いろいろ動く部分があります」
●首とか足が動いたり・・・これはハヤブサですね。羽も動くんですね!
「ぜひハヤブサを作って欲しいなと思って、開発チームの人にお願いして、特に400キロ出せる、飛ぶ時の姿を再現したくて・・・ハヤブサは最高速が出る時は、身体を畳んで弾丸のような形になって、“ストゥープ”っていう飛び方になるんですけど、それで400キロ出すんですよね」
●かっこいいですねー!
「かっこいいですよね!」
●リビングにオブジェとして飾っておきたくなるぐらい大人も楽しめますね!
「そうですね!(アニア)は子供向けとして作っているんですけど、割とそういうちょっと映える感じで遊びでやっているかた、多いみたいです」
●かっこいいです! ゴリラの親子も凛々しくて、かっこいい~。
「そうなんですよね。ゴリラは猿の中では(子育てに)唯一お父さんがいるんですよね。ハーレム型の社会構造なので、そういうメッセージを遊びながら(学べるように)・・・ほかの動物はお父さんがあまり存在しないんですよね。だからこのゴリラに関してはお父さんがけっこう赤ちゃんや子供を、ちょっとあやしたりなんかすることもあるので、そういうので遊んだらいいんじゃないかなと思って選んでいますね」
●特に人気のあるフィギュアって、どれになるんですか?
「そうですね・・・いろんなギミックが盛り込まれて、最近出ているのだと、カメレオンで舌が伸びるような・・・」
●ビヨ〜ンって伸びるんですね~、すごーい! 面白い!
「あと、アルマジロが丸くなるとかね」
●まん丸に! コロンコロンになるんですね!
「ただそれで遊ぶだけじゃなくて、ごっこ遊びみたいに、いろんな物語を作ったりとかしてやると、すごく楽しいものになるので、そういう遊びかたをしてくれたらいいなっていうのを想定して、動く部分だとか動物の種類を選んだりとか、そういうのを考えていますね」
●制作する時に心がけていることってありますか?
「私の専門が動物行動学なので、(アニアは)飾り用のフィギュアではなくて、ここの部分を使って遊んでほしいな! っていうのを盛り込みたいので、その動物の特徴的なところに稼働部分をつけたりとかしていますね」
●やはりリアリティーは大事にされているってことですね?
「そうですね。それで遊んでもらうっていうかな、動かしてみて、いろんな気付きとか発見とかもありますので・・・」
(編集部注:「アニア」の監修を担当されている新宅さんによれば、ひとつの動物の制作期間はだいたい1年ほど。中には構想から完成まで2〜3年かかるものもあるそうです。また、古生物に関しては、研究資料などで調べても、体の色まではわからないので、こんな色にしてみませんかという大胆な提案もされるとか。
ちなみにカバは、お風呂でも遊べるように浮くようになっているそうですよ。動物の生態をもとに、子供たちが遊べるように工夫されているんですね)

人間だけの特性「笑い」
※新宅さんは、これまで数多くの動物を調査・研究されてきました。そんななか、今回の新しい本もそうだと思うんですが、「人間」という動物を探究しているようにも感じます。そのあたりは、いかがですか?
「なんて言うんでしょう・・・一瞬忘れがちですけれども、ついつい自分とか、人間っていうものが動物であることをうっかり忘れちゃうというか・・・我々は違うって考えがちなんですけど、共通点とか違いっていうのを、動物を調べることで、見えてくるものもたくさんあるので、そういうところはいちばん興味ある部分ですね」
●先日、人類学者のかたに「人類学とは人間とは何かを問う学問だ」っていうふうに教えていただいたんですけれども、動物行動学的に見て人間っていうのはどういうものなんでしょうか?
「難しい質問ですけれども、どこが逆に人間が動物っぽい部分なのか、そして動物っぽくない部分ってなんなのかっていうのは、すごく整理していきたいなと思っています。そんな中で例えば、突出して面白いのは、いくつかあるんですけど、ひとつは、“笑い”・・・動物って笑えないんですよね。
笑うっていう表現はやっぱり人間の、動物の行動としてはかなり特殊なもので、面白いユニークなものですよね。笑いっていうのは面白いから笑うっていうだけではないですよね。
その場を取り繕ったりだとか、相手をリラックスさせるとか、一緒に笑うとか、敵意がないこと示すとか、いろんな要素をそこに組み込んで、言葉を使わずに、つまり人間の中でも言語を使わないで、敵意がないことを伝えたりとか、そういうことができるユニークなツールになっていますよね」
●確かにそうですね~。ということは、まさに人が人にしてあげられる処方箋といえば、笑いになるんですかね。
「そうですね。やっぱりそこも面白いんですけれども、人は、赤ちゃんで生まれてまだ歩けない、寝返りも打てないようなレベルで、最初に笑うんですよね」
●笑っていますね、確かに!
「“新生児微笑”って言って笑うんですよね。あれは別に赤ちゃん、おかしくて笑っているわけじゃないんですね。 おそらくそういうものが人間にとっていかに大事か、順番としても最初にそれをやらなきゃいけない、練習しなきゃいけないっていう順番が、歩くよりも先にそれをやる、何かそこに鍵があるような気がしているんですよね」
●ほかの動物にはない、人間ならではの特性ですね。面白い!
「いろんなこじれたこととか、ストレスとかそういうのも、笑いっていうのは自分に対しても向けられるので、悩みを笑い飛ばすとかね。そういうふうにできると少し(気持ちが)軽くなったりすることもありますよね」
●そうですね!
「笑いを上手に使いこなせるようになると、悩みとか、あと人との関係、ギクシャクしたり喧嘩してしまったものも、笑いとか冗談で、一転して仲良くなったりってことはありますからね。すごく大事にしたい行動ですよね」
☆この他の新宅広二さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』
新宅さんの新しい本、おすすめですよ! 人間のお悩みに対して、動物を処方する形式をとりながら、生き物の生態や行動をわかりやすく解説しています。ひとつの項目が見開き2ページで完結しているので、とても読みやすいです。イラストは以前番組に出てくださった「きのしたちひろ」さんです。ぜひイラストもチェックしてください。
エムディエヌコーポレーションから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎エムディエヌコーポレーションHP:https://books.mdn.co.jp/books/3222103055/
新宅さんの近況についてはぜひfacebookを見てください。
◎新宅広二さんfacebook:https://www.facebook.com/koji.shintaku.7/
新宅さんの本『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』と、タカラトミーの動物フィギュア「アニア」の「サバンナの人気動物セット」を合わせて、3名のかたにプレゼントいたします。

件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
flintのスペルは「エフ・エル・アイ・エヌ・ティー」
flint@bayfm.co.jp です。
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。
応募の締め切りは10月27日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2023/10/22 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. ANIMALS / MAROON5
M2. ぼくはくま / 宇多田ヒカル
M3. UN HOMME ET UNE FEMME / CLÉMENTINE
M4. MY HOMETOWN / BRUCE SPRINGSTEEN
M5. 楓 / スピッツ
M6. I LOVE YOU / DEBELAH MORGAN
M7. SMILE / ELVIS COSTELLO
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2023/10/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、信州大学の助教「笠原里恵(かさはら・さとえ)」さんです。
笠原さんは1976年、長野県生まれ。子供の頃は、里で当たり前に見られる鳥よりもリスやネズミなどの小動物が好きだったそうです。
そして、大学進学後に、自然を観察するサークルに入部、1年生の時に、先輩から鳥を見に行かないかと誘われたことが転機となり、野鳥研究の道に進むことになったそうです。
現在は、信州大学理学部附属・湖沼高地(こしょうこうち)教育研究センター・諏訪臨湖(すわりんこ)実験所の助教。専門は鳥類生態学や保全生態学など。
具体的には、水辺の自然環境が多様性に富んでいる千曲川の中流域をメイン・フィールドに、野鳥たちが川のどんな場所に暮らし、どこに巣を作り、何を食べて生活しているのかなどを研究されています。

そんな笠原さんが先頃『知って楽しい カワセミの暮らし』という本を出されました。きょうは野鳥好きの心を捉えて離さないカワセミの、意外に知られていない生態や、変化する河川環境を利用する鳥のお話などうかがいます。
☆写真協力:笠原里恵
カワセミの色は構造色!?
※カワセミは、特にバードウォッチャーにはとても人気がありますよね。カワセミの特徴といったら、まずは、コバルトブルーに見える羽の色だと思うんですが、どうしてあんなに綺麗に見えるんでしょうか?
「日本で見られる鳥は600種と少しって言われているんですけれども、みなさんが身近な鳥を思い浮かべると、やっぱりカラスの仲間だったり・・・。もちろんスズメもよく見ると複雑な色をして綺麗なんですが、全体としては茶色であったり、派手な色をした鳥って少ないと思うんですよね。そういう中にあって確かにカワセミは非常に目立つ色、綺麗な翡翠色をしていると思いますよね」
●光の加減によって、また色の見え方が違いますよね。
「どうして見る角度によって変わるのかは、色の見え方、私たちの色の認識の仕方に関係しているんですけれども、私たちは通常、色素で色を見ています。
光の三原色が赤・青・緑だっていう話は聞いたことがあると思うんですけども、その光の波長が太陽とか室内光の明かりに含まれていて、それらの波長が何かに当たるとします・・・リンゴに当たる、葉っぱに当たる、そうするとリンゴとか葉っぱとかが持つ色素がその波長の一部を吸収して、吸収されなかった波長の光が我々の目に届いて、色として認識されることになります。
けれども、実はカワセミの羽の色は、そういういわゆる色素とは違っていて、その光の構造を説明する上でよく挙げられるのがシャボン玉になります。石鹸水で作ったシャボン玉って、透明なのに光に輝いてキラキラ虹色に光りますよね。
それは実は色素によるものではなくて、シャボン玉の薄い膜内の、光の屈折によって生じた光の波長同士の干渉なんですね。それによって特定の光成分が強まって発色しています。
こういうのを『構造色』って言うんですけれども、カワセミの羽の色も構造色の一種です。カワセミの場合は、シャボン玉のように薄い膜というわけではなくて、その羽毛の内部に、網目状のスポンジのような微細な構造があって、その並び方から青色の光が強められるようになっているんだそうです」

●カワセミの色以外の、ほかの特徴も教えていただけますか?
「色もとても美しいんですが、やはりその形ですよね、全身の形・・・。頭がちょっと大きくて、くちばしが非常に長い。くちばしの長さがだいたい3.6センチあって、頭よりもくちばしのほうが長いんですね。それに対してずんぐりした体と非常に短い足をしています。
足の形も、ほかの鳥と違っていて、足の指・・・みなさん、なかなか鳥の指先って見る機会がないと思うんですけれども、普通の鳥と少し違っています。これは彼らが巣を作る場所に関係しているんですけれども、指の一部がちょっとくっついて、シャベルのような形になっているのも大きな特徴だと思います」
(編集部注:カワセミの羽の色や形については、笠原さんの本に、山科鳥類研究所の研究員、森本 元(もりもと・げん)さんの解説が「豆知識」として載っていますよ。
ちなみにオスとメスの見分け方で、いちばん分かりやすいのが「くちばし」。オスが上も下も黒なのに対し、メスは下のくちばしがオレンジ色になっています」

水辺に特化した能力
※カワセミが水辺を好んで暮らしているのは、どうしてなんですか?
「現状、彼らが水辺で暮らしているのは、やっぱり魚を獲って・・・彼らの主食は魚なんですけれども、魚を獲りやすく、また彼らは子育ての時に土の崖に巣穴を掘って、中に卵を産むんですね。そういった食べ物についてもそうだし、巣を作って子育てをする場所についても、やっぱり水辺に特化している種類と言えますね」
●魚を獲るとおっしゃっていましたけれども、水中にダイブして獲物をゲットして、水面に戻って羽ばたくんですよね。それってすごい能力ですよね。
「そうですね。特にカワセミは、水辺に張り出した枝先から水の中の魚を狙って一瞬で飛び込みます。で、飛び込んで水の中に入っている時は、目が『瞬膜』っていう膜で覆われていて、目を保護しているんですね。
彼らは水の中で泳ぐとかではなくて、水の中に飛び込んだ勢いで魚のところまで到達して、あっという間に咥えて、すぐに戻ります。水面に上がった時にはもう羽ばたいていて、枝に戻って獲った魚を食べるわけですけれども、そういうことができる種類は、やはりあまり多くないと思いますね」
(編集部注:カワセミの求愛行動はよく知られていますが、そこに至るまで、オスとメスはどう過ごしているか・・・笠原さんによると、冬の間はそれぞれのなわばりで過ごし、春先になるとオスがメスのなわばりに進入、当然メスはオスを追い出しにかかり、追いかけ合うそうです。
そんなことを繰り返していくうちに、オスがメスに小魚をプレゼントし、メスが受け取って飲み込んでくれたらカップル成立! オスはメスが飲み込みやすいように、小魚の頭を向けて渡すそうですよ)

※カップルになったら、次は巣作りだと思うんですけど、カワセミはどんな巣を作るんですか?
「彼らは露出した崖、川の近くのあまり草木が生えていない、ちょっとだけオーバーハングって言って、下よりも上の方が水面に向かってせり出すような、そういったオーバーハングした崖を好みます。
その崖に・・・彼らの足はちょっと特殊で、短い足ですけれども、その足とくちばしで横穴を掘って、おおよそ50センチから80センチと言われていますけれども、彼らの体がだいたい17センチですから、自分の体の3倍とか4倍とか、そういった長さの穴を掘って、いちばん最後に『産座』と呼ばれる場所、卵を産んで温める場所ですけれども、少し大きめの空間を作ってそこに卵を産みます」
●その穴を掘る作業って大変な作業ですよね。オスとメス、共同で作業するんですか?
「こちらについても、つがいによってけっこう違うと言われていますが、やっぱり基本的にはオスが巣を作る場所をメスに示して、メスが気に入ったらオスが掘り始めます。オスが掘っていって、その間 手伝うメスもいれば、オスが掘っているのをただ見ているだけのメスもいます。オスはなかなか偉くて、巣穴を掘っている間にもたびたび魚を持ってきて、ちゃんとメスにプレゼントするんですね。
確実なのは、ある程度巣穴ができて、最後に卵を産む産室(産座)ができますが、その産室ができる頃になると、メスも積極的に参加して・・・卵を産んで温める作業はオスもメスもするんですけれども、メスにとっては特別なことだと思いますので、やっぱりとっておきというか、お気に入りの産室にするように、自分で掘って整えているんじゃないかなと思います」
●1回にどれぐらいの卵を産むんですか?
「これは私の調査をしている千曲川の例ですけれども、おおよそ7つくらい卵を産みます。多ければ8つっていうこともあるし、少なければ5つっていうこともあります」
●育つまでどれぐらいの日数がかかるんですか?
「だいたい卵を産み始めて、産んでから雛(ひな)が孵化するまでがおおよそ20日間前後と言われています。カワセミの雛は孵った時に全然羽毛が生えていません。もちろんくちばしも非常に短いんですけれども、翼がある程度生えて、外の世界に飛び出して飛べるようになるまでが、だいたい24日間というふうに言われています。ですので、卵を産んでから育つまでを考えると1ヶ月以上、ずっと巣穴の中にいることになりますね」
カワセミの仲間、ヤマセミとアカショウビン
※日本で見られるカワセミの仲間には、おもにどんな種がいますか?
「私たちがよく見かける、日本で子育てをしているカワセミの仲間は『ヤマセミ』っていう非常に体が大きい、みなさんが公園で見かけるドバトくらいの大きさのカワセミの仲間がいるのと、それからその姿から火の鳥なんていうふうに呼ばれる『アカショウビン』という、くちばしから姿が全体的に真っ赤なものがいます。その3種がメインだと思います。日本でこれまで確認されているカワセミの仲間は8種ですね」

●カワセミとヤマセミは、暮らしているエリアは違うんですよね?
「そうですね。みなさん、カワセミっていう鳥は名前を聞くと、あの青いちっちゃいやつだなっていうふうに思い浮かぶと思うんですけど、ヤマセミと聞いて思い浮かぶかたって少ないと思うんです。
ヤマセミは鹿の模様、鹿の子で“かのこ”っていうふうに呼ばれたりもするんですけれども、全体的に体が白いんですね。そこに黒が鹿の子模様のように入った美しい姿をしています。
そんなヤマセミをどうして見る機会が少ないのかと言いますと、ヤマセミのほうが一般的に上流域に、カワセミのほうが下流域に棲むというふうに言われています。上流域でも、けっこうヤマセミは渓流なんかが好きですので、あまりみなさんが普段生活しているような範囲では(ヤマセミの)姿を見ることはないからですかね」
●日本には8種類とおっしゃっていましたけれども、海外には何種類いるんですか?
「これがまた海外はけっこうたくさんいます。国際鳥類学会が出している『世界の鳥のリスト』っていうのがあるんですね。そこから(引用)すると、2022年の時点ですけれども、世界のカワセミの仲間は116種記載されています」
●そんなにいるんですね!
「はい。最も多いのがアカショウビンの仲間で、72種記載されていて、カワセミの仲間はおよそ35種、先ほどお話したカワセミと似ているけど、棲んでいる場所が違うヤマセミについてはけっこう少なくて、9種が記載されているような状況です」

川は人間だけのものではない
※笠原さんはカワセミを含めた、水辺の鳥たちや河川の環境を長年、調査・研究されてきて、こんなことを感じているそうです。
「川と鳥の関係ですごいなと思ったのは、これまでは多くの増水は8月とか9月の台風で起きているものが多かったんですね。8月9月っていうと、多くの鳥は繁殖を終えています。子供も育って、ある程度飛べるようになっていてという時期ですので、そういう時期に増水が起きても、そんなに次世代に命をつなぐという点では影響が小さいですね。
その一方で、そういう水の流れで木や草が流されて、できあがる環境に生息しているような種類にとっては、台風による増水が翌年の生息地の維持につながるわけですね。
なんですけれども、近年、今年もそうでしたけど、6月とか、明らかに鳥の繁殖の真っ只中に豪雨が降って、水が溢れたり、家が流されてしまうような大きなことがありました。そういった気候の変化がこれまでは、鳥たちの繁殖の間には増水がなく(繁殖が)終わってから増水があって、翌年の生息地が作られるみたいに、うまく回っていたメカニズムが壊れてきているというように非常に危惧しています。
もうひとつは、やっぱり最近は人の生活に影響を与える水害が毎年のように起こって、胸が痛いんですけれども、そういったことが頻繁に起こることによって、川、もしくは川の管理、そういったものがより治水に、自然との調和っていうよりは、人の命を守りましょうっていうほうに急速に傾いていると思います。
それは当然、当たり前のことだと思います。やっぱり人の命を第一に治水は行なわれるものですので、それはそれでいいんですけれども、その一方で鳥だけではなくて、川で生活しているいろんな生き物への配慮が、やっぱり置いてきぼりになってしまう・・・ここは非常に難しいです。
人の命より鳥の命のが大切ですか? って言われると、やっぱり答えにくいところは非常にあるんですけれども、やはり自然ですね・・・我々が生きていく中で、川からいろんな、水をもらって水田を作ったりとかして、我々は生活しています。川はもちろん人間のものだけではなくて、そこで生きている生き物がいるわけですから、治水がどんどん進められていく一方で、それでもやっぱり、川がもともと持っている変動性に依存した生き物がいるんだよっていう部分は、忘れてはいけないのではないかなと思っています」

(編集部注:笠原さんの調査・研究のメインフィールド千曲川は、笠原さんいわく、生き物にも人々の生活にも配慮した治水の方法がとられているそうです。上流に大きなダムがほとんどないこともあって、自然の力に任せた河川環境の維持につながっているとのこと。詳しくは、笠原さんの本の第7章「生き物に配慮した川づくり」をご参照いただければと思います)
可愛らしい、ワイルド、したたか
※この時期でも、カワセミを見ることはできますか?
「はい、今も見ることはできますね。多分これから冬に向かっていきますと、今まで子育てをするために川の近くだったりとか、巣がある場所の周辺にいたカワセミも、子育てがだんだん終わってきます。
それから今年生まれた若いカワセミが、親元にいつまでもいられるわけではありませんから、独り立ちをした子供が別の住処を探して移動したりとかしていて、みなさんの近くの公園とか、それから小さな河川でも見られる時期になっていると思います」

●笠原さんが思うカワセミのいちばんの魅力はなんでしょうか?
「私自身がカワセミに感じているところとしては、カワセミのその愛らしい姿がけっこう人気はあると思うんですけども、その愛らしい姿に対して、割とワイルドな採食方法、飛び込んで魚を捕えて、その魚を捕らえたあと、枝に戻って叩きつけるんですね。叩きつけて食べるという、そういった野性味溢れる部分もあって、そういう可愛らしい姿と、行動のギャップみたいなところですね。
それからもうひとつ、これは2005年に起きた増水のあとなんですけれども、水が引いたあとに、私が調査していて、カワセミが通らないような河畔林を歩いていたんです。河畔林って言ったら木が茂っているわけですね。そこに増水のあとの大きな水たまりができていて、そこでカワセミを見る機会があったんですね。
なんでこんな森の中にカワセミがいるんだろうと思ったら、増水のあとでしたので、その河畔林の中の水たまりに取り残された魚がいっぱいいました。カワセミはそれを目ざとく見つけて、普段は使わないような場所だと思うんですけれども、そこに素早く現れて魚を獲っているっていう姿だったんですね。環境の変動が激しい中で、増水のあとですら、その増水で残った魚を捕るというしたたかな部分、そういったところに非常に魅力を感じています」
INFORMATION
国内外のカワセミを中心に、ヤマセミやアカショウビンなどの基礎知識ほか、調査・研究から分かってきた意外な生態、そして水辺に暮らす鳥たちと川との関係や、これからの川づくりなど、興味深い解説が満載です。カワセミの生態をとらえたカラー写真は必見ですよ。
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笠原里恵さんのオフィシャルサイトもぜひ見てください。










