2021/10/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第5弾! 今回は「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」=「持続可能な開発目標」の17のゴール中から、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」ということで「生物多様性」について考えていきたいと思います。
ゲストは、いま大人気のいきものコレクションアプリ「バイオーム」の開発責任者「藤木庄五郎(ふじき・しょうごろう)」さんです。
藤木さんは1988年生まれ、大阪府出身。京都大学大学院を経て、2017年5月に大学院の仲間と株式会社バイオームを創業し、CEOに就任されています。在学中にボルネオ島で長期にわたり、キャンプ生活をしながら、熱帯雨林の、特に樹木を調べ、その調査結果をもとに、人工衛星の画像解析などをもちい、多様性を可視化する技術を開発されています。
人工知能AIが生き物の名前を判定してくれる「バイオーム」は、生き物好きなユーザーだけでなく、企業や自治体も注目しています。
きょうは藤木さんに「バイオーム」が持つ機能と、その可能性、そして制作の原点となったボルネオ島での体験についてうかがいます。
☆写真協力:株式会社バイオーム

ワクワクを伝えたい!
※それではまず、藤木さんに「バイオーム」の基礎知識として、どんなアプリなのか、お話しいただきました。
「生き物の名前を判定できるっていうのは、面白い機能かなと思うんですけど、生き物の写真を撮って、それをAIが判定してくれて、どんな生き物なのか名前が分かる機能があるんです。それだけじゃなくって、見つけて写真を撮った生き物をどんどん図鑑に登録していく、コレクションしていくことができるっていうような、そういうアプリになっています。
その際にどんどん投稿してもらうと、レベルが上がったりとか、ポイントが貰えてバッチが貰えるとか、ゲーム感覚で生き物を楽しみながら見つける、そういう体験を生み出したいっていう思いで作っています」
●確かに、私も使わせていただいたんですけれども、次のレベルまで何ポイントとか出ると、どんどん投稿したくなるような・・・ワクワクしますね!
「そうですね。そのワクワクを伝えたいなと。生き物好きな人って、こういうアプリがなくてもワクワクしながら、生き物を探して見つけることをやっているんですけど、それをみんなにも伝えていきたいなっていうことを考えています」
●ほかの人が投稿した写真も見ることができますよね。
「そうですね。みんなで共有していって、生物多様性、生き物の豊かさの情報をみんなで集めていこうっていうのが裏コンセプトになっています。そういう形でみんなの情報が、地図上や図鑑で見られたり、色んな形で見られるように工夫しています」
●綺麗なお花とか綺麗な蝶々とか、この生き物はこういう名前なんだ!とか、ほかの人の投稿を見て学ぶこともできるっていうのは面白いなと感じました。
「僕も(バイオームを)使っていると、何だこれ!? みたいなものが、いっぱい投稿されていてめちゃくちゃ面白いですね(笑)」

●ユーザーのかたがたが投稿した写真などのデータが、将来的には膨大な生物のデータベースになっていくっていうことなんですか?
「はい、おっしゃる通りです。このアプリでは写真を登録する時に位置情報を使ってまして、どこにどんな生き物がいるのかっていう基礎的な生物の情報を、どんどんみんなで集めていくっていうところで、そういうデータベースを作るのがひとつの目的になっています」
●いまユーザー数ってどのくらいいらっしゃるんですか?
「 ユーザー数でいうと、いま32万人ぐらいのかたが使ってくださっています」
●ということは、どんどんデータベースも増えていきますよね。
「そうですね。人数がとにかくいっぱいいるので、もう既に(バイオームを)リリースしてから2年ちょっとくらいですけど、200万個体ぐらいの登録はされている状況です」
●本当にゲーム的要素もたくさんあって、すごく楽しみながらできるなって感じるんですけれども、やはりゲーム的要素を取り入れようというのは心掛けているところなんですか?
「生物多様性のデータベースを作るぞって言って、それに賛同してくれてやってくれるかたって、もちろんいっぱいいると思うんですけど、そうじゃなくって、別にそこは興味ないけど楽しいからやるんだって言ってくれるような、そういう参加の仕方っていうのもあるんじゃないかなと思っています。楽しいからやってくれるようなアプリを目指すためにも、ゲーム要素、ゲーミフィケーションみたいなものが必要なんじゃないかっていうことは考えて作りました」
※バイオームの制作にあたっては、当初は創業メンバーだけで生物の情報を独学で打ち込んでいたそうですが、自分たちだけでは限界があると思い、大学の先生や研究機関に協力してもらい、作っていったそうです。

原点はボルネオ島!?
※藤木さんは京都大学在学中に、およそ2年半にわたって東南アジアのボルネオ島で植物の調査を行ない、それが「バイオーム」の開発につながったということなんですが、いったいなぜ、ボルネオ島だったのでしょうか。
「僕自身、元々そういう生態系とか生物多様性を保全していくことにめちゃくちゃ興味がありました。というか“やらなきゃヤバイな”っていう思いがありましたので、そういうことができる研究室で、そういう研究をしたいなっていう思いで大学に入ったんです。
その中で色々調べていくと、生物多様性がまだ残っていて、それがすごく急速に失われている場所が、ボルネオ島がトップ級に、世界でも有数の環境破壊の最前線みたいな場所だということを聞いて、是非とも行ってみたいということで、志願して行かせてもらった経緯があります」

●具体的に現地ではどんな研究調査をされていたんですか?
「すごく過酷な調査ではあったんですけど、リュックを背負ってキャンプをしながら毎日歩き続けて、熱帯雨林のジャングルの中の特に樹木ですね。木を1本1本調べて、どんな木が生えているのかを調査して、転々と色んな場所に移動することをずっと繰り返していました」
●過酷ですね!
「そうですね(笑)。すごく大変でしたね」
●アウトドアスキルも問われそうな感じですね。でも1本1本、樹木を調べるのはすごく時間もかかるようなことなんじゃないですか? 地道かつ過酷というイメージですけれども。
「はい、おっしゃる通りだと思います(笑)。ものすごく時間もかかりますし、なので2年半、向こうにいたんですね。本当に過酷で大変なので、現地のかたを雇って手伝ってもらってやっていたんです。最初は10人ぐらい雇って行くんですけど、過酷過ぎてみんな途中で逃げ出しちゃって、最後は半分以下になって、4人くらいで作業をやったりして大変でした(笑)」
●そんな過酷な日々の中で何が楽しみでした?
「どうですかね・・・あんまり楽しめていなかったんですけど、現地のかたの入れてくれるコーヒーがめちゃくちゃ楽しみでしたね。毎朝入れてくれるんですけど、あれだけが楽しみで(笑)」

●そんな過酷な中、大変な思いをしながら取った調査データは、どんな研究成果に結びつくんですか?
「僕の場合は樹木を通して、その森林の生物多様性を数字で評価することをテーマで研究しておりました。現地で集めた現場データみたいなものと、衛星から撮影された広い面積の森林画像データを組み合わせて、点で集めたデータをすごく広いエリアに面的に評価し直すことで、例えば、東京都1個分ぐらいの非常に広いエリアの森林の状態を、一斉に一気に調査というか観測する技術を開発して、生物多様性の状況をかなり広いエリアで知ることができるようになったっていうような、そういう成果を出すことができました」
スマホを生物の観測拠点に
※ボルネオ島での調査で生物多様性について、一定の成果を出すことができた藤木さんなんですが、そのまま研究者の道に進まず、アプリを作る会社を起業したのは、どうしてなんでしょうか。
「色んな理由があるんですけど、ひとつは生物多様性を守るっていうことをやろうと思った時に、どうやったら守れるのかなって、すごくずっと考えていたんですけど、やっぱり突き詰めていくと結局、経済の問題、お金の問題がやっぱり原因っていうかドライバーになっているんじゃないかなっていうことを感じるようになって、生物を守るっていうことは経済と切り離せないなっていう、そういう感触を強く持ちました。
こういう研究活動ももちろん大事なんですけど、そうじゃなくって、ちゃんと会社として経済の中で生物多様性を保全するっていう活動をしないと、この問題って解決に向かっていかないんじゃないかっていうことを考えるようになったんです。なので、研究をやめて、会社としてこの活動を継続していこうと決めたという経緯があります」
●確かに昔からエコロジーとエコノミーはどちらかを優先すれば、どちらかがダメになるって言われてきましたよね。でも藤木さんがやろうとしている生物多様性の保全と経済活動の両立っていうのは上手くいくものなんですか?
「上手くいかないと、どうにもならないのが環境問題だと思うので、なんとか達成したいなって思ってずっとやっています。最近は社会の流れもだいぶよくなってきたなっていうのを感じていまして、企業さんは環境保全に力を入れることが、最近は普通になってきたので、だいぶ状況はよくなってきたなという風には感じています」
●藤木さんが起業するにあたって、どうしてアプリだったんですか?
「僕自身ボルネオ島で、ずっと現場で自分の足を使って調査していたんですけど、自分だけで集められる現地のデータって本当に限りがあって、限界があるなっていうのを2年半続けて分かったっていうのがあります。なので、上手く現地のデータを収集していく、観測していく仕組みを作らないといけないなっていうことを考えるようになったんです。
その時に世界各地にちゃんと散らばっていて、使える電子媒体が絶対いるなっていうことを考えるようになったんですけど、それを考えている時に、ボルネオ島のジャングルの奥地の、現地住民のかたがたって、みんなスマホは持っているんですよね。
テレビもないし冷蔵庫もないし、電化製品とかほとんどないんですけど、スマホだけは持っていて、それをみんな楽しみながらSNSとかやって使っているんです。それを見て、スマホがさっき言っていた世界中に散らばっている電子媒体として、めちゃくちゃ有用なんじゃないかなっていうことを考えるようになりました。
このスマホを通して生物を観察する、スマホを生物の観測拠点にすることができるんじゃないかなっていうことを現地で考えるようになりまして、スマホを使うことで、アプリを作って、そこからデータを登録してもらえるような仕組みを作れば、世界中の生物のデータを集められるんじゃないかなと考えるようになったっていうのが、元々のきっかけになります」
アプリというよりプラットフォーム
※実はアプリ「バイオーム」は無料で利用できるんです。ではいったい、株式会社バイオームとして、会社を維持するためにどうやって収益をあげているんでしょうか。
「うちのアプリはおっしゃる通り完全に無料で、課金もなくて広告もつかないというなんか不思議なアプリなんです。アプリの中で色んなイベントを開催したりとかしていて、うちのアプリでは“クエスト”と呼んだりしているんですけど、ユーザーさんにミッションを出します。例えば、外来生物の”ヌートリア”っていうねずみの仲間がいるんですけど、ヌートリアを探してみよう、みたいなミッションを出して、ユーザーさんがそれに参加して、ヌートリアのデータが集まるみたいな仕組みを作っています。

その仕組みを色んな企業さんとか省庁さんとか、自治体さんみたいな行政さんに、実際に使っていただき、そこで費用をいただくっていう構図を作っています。なので、企業とか行政というところから費用をいただいて、運営できているのがこのアプリの特徴になりますね」
●どういった企業に、そういうデータを使ってもらうというか、必要になっていくのですか?
「本当に色々ありますね。例えば教育のことをされているような企業さんは、教育のためのイベントをしたいので、アプリを使いたいという話があったりしました。
ちょっと変わったところでいうと、鉄道会社さんが自分たちの管理している鉄道の沿線の、駅周辺の生物の状態を知って、この駅は生き物が豊かですごくいい場所だ、みたいなことをちゃんと知っておきたいという話があって、鉄道会社さんからご依頼を受けて、生物の観測イベントをやったりっていうような、色んなパターンがありますね」
●膨大なデータベースってそういうところにも役に立つんですね。
「そうですね。企業さんが何らかの保全の取り組みをしていくにあたって、使っていただけるようにっていうのはかなり意識していますね」
●本当に、アプリというよりプラットフォームという感じですよね。
「おっしゃる通り、そこを目指しています。市民のかたも使えるし、企業のかたも参加できて、行政のかたも入れる、そういうプラットフォームになって、“産・官・学・民”みんなで連携して、生物のデータを集めて保全していこうっていうのが目標になっています」

●先日まで行なわれていた環境省とのコラボ「気候変動いきもの大調査」、これもすごく反響があったんじゃないですか?
「そうですね。ものすごく反響がございまして、参加者も1万人以上、既に参加してもらっていますし、データもすごくいっぱい集まっています。先月まで”夏編”というのをやっていたんですけど、その前の年には”冬編”を実はやっていたんです。
そこで集まったデータは既に解析も済んでいて、温暖化の影響を受けて、色んな生物が北に移動しているっていうことが、その結果からだいぶ分かってきました。かなり意義のあるデータが集まって、いい結果が出ているというのが、いいというのは微妙かもしれないですけど、温暖化の影響が生物に表れているという結果が、明確に出てきているという状況になっています」
海外版バイオーム
※生物の多様性を守るためには、地球規模での展開が必要だと思うんですけど、「バイオーム」の海外版は考えていないんですか?
「海外に関しては、もうアプリを作り始めた時から、海外に行くぞー! ということで考えています。なので、開発を少しずつですけど進めているという状況で、近いうちに”バイオーム世界編”みたいな形で、世界で使えるようなアプリにしていきたいなと思っています」
●それこそ、世界中のデータが集まったらすごいことになりますね!
「そうですね。特にやっぱり僕が行っていたボルネオ島みたいな、そういう環境破壊の最前線みたいな場所で、ちゃんとデータを集める仕組みを作らないといけないと思うので、熱帯とか、そういうところを中心にデータを集められると、ものすごく役に立つデータになるだろうなと思っています」

●具体的に、世界のデータをこういう風に使いたいっていうのはあるんですか?
「そうですね。さっき出たような熱帯林の破壊の現状みたいなことですね。そこが実際どれくらい生物がいなくなっているのか、研究者の間でもよくわかっていない状況なので、そこをまずははっきりデータとして出していけるというような状態を作りたいなと思っています。
あとは結局、熱帯林とか自然環境を破壊しているのが、その国の現地の人じゃなくて、先進国の大企業だったりすることって多いと思うので、そういう企業さんに、ちゃんとそういうデータを開示するように、(こちら側から)データを出していくみたいなことをして、ちゃんと産業の中で、そういうデータが活用されるような仕組みに繋げていきたいなと思っています」
●今後100年で地球に生息する生物の半分が絶滅するとも言われていますけれども、改めてバイオームというアプリで、どんなことを伝えていきたいですか?
「伝えたいというか、狙い自体は大きくふたつあると思っています。ひとつは、ユーザーのかた、使っていただいているかたに、生き物が豊かだっていうことはとっても楽しくて、自分の人生を豊かにしてくれるようなものだっていうことを肌で感じてほしいなと。そのためにアプリを使って、自分の周りにどんな生き物がいて、その生き物たちがどんなに面白いのかっていうことを、アプリを通して知ってほしいっていうのがひとつになります。
もうひとつは、このアプリを通してユーザーさんが登録してくれた生物のデータを使って、すごく大量のビッグデータになると思うんですけど、そのデータを企業さん行政さん、あるいは市民団体さんとか大学さんみたいなところに、ちゃんと保全活動に使っていただけるように、データをどんどん提供していくことに繋げていくという、そのふたつを達成していきたいなと思っています」
INFORMATION

藤木さんたちが開発した「バイオーム」は生き物の写真を撮って投稿するだけ。
でもすぐになんという生き物か答えを教えるのではなく、ユーザーに考えさせるのがいいですね。そして投稿した生き物が珍しいとポイントが多くもらえるため、ゲーム感覚でどんどん投稿したくなりますよ。
また、生き物に関するコラムもよく考えられています。
このコラムは「まねて学ぶ」をコンセプトに作られ、生き物に興味をもってもらい、保全につながるアクションにつなげるのが狙いだそうです。
随所に工夫がちりばめられた優れたアプリ「バイオーム」をぜひ試してみてください。
詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎株式会社バイオーム :https://biome.co.jp/
◎いきものコレクションアプリ「バイオーム」:https://biome.co.jp/app-biome/
2021/9/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第4弾! 四国の小さな町が行なっている、ごみを大幅に減らす野心的な取り組みをご紹介します。
今回の舞台は、徳島県の山間(やまあい)にある上勝町(かみかつちょう)。全国に先駆け、2003年に町から出るごみをゼロにする「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表。現在はなんと、ごみと資源の分別は45品目! リサイクル率はおよそ80%を達成していて、国内外から注目されています。
お話をうかがうのは、去年5月に上勝町にオープンした複合型公共施設「ゼロ・ウェイストセンターWHY」を運営する会社の責任者「大塚桃奈(ももな)」さん。去年大学を卒業したばかりの期待のホープなんです。「大塚」さんの肩書はCEO、でも「最高経営責任者」ではなく、CEOの「E」は環境的という意味の「エンヴァイロメンタル」で「最高環境責任者」なんです。
さて、SDGsとは「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」の略。「持続可能な開発目標」ということで、17のゴールが設定されています。今回はゴール11の「住み続けられる まちづくりを」、そしてゴール12の「つくる責任 つかう責任」について考えていきたいと思います。
徳島県上勝町のごみをゼロにする野心的な取り組みをご紹介する前に、今回お話をうかがう「大塚桃奈」さんのプロフィールに触れておきましょう。
「大塚」さんは1997年生まれ、湘南育ち。子供の頃からファッション・デザイナーに憧れ、高校生の時にファッションの勉強のためにロンドンに留学。自分が学んだことをどうやって社会に活かすかを考えている時に、ある映画を見て、愕然とします。
その映画とはファスト・ファッションの裏側を捉えたドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト』。劣悪な環境で働かぜるえない発展途上国の人々、環境汚染、そして大量に廃棄されるウエアの現状を知って、社会や環境に目を向けるようになったそうです。
そんな大塚さんが働く「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」はいったいどんな施設なんでしょうか。このあと、じっくりお話をうかがいます。
☆写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

ごみを見つめ直す
※まずは大塚さんに、上勝町の出会いについてお話しいただきました。
「大学生の時になるんですけれども、映画(『ザ・トゥルー・コスト』)を観て、服を取り巻くそういった社会問題に、どうやって自分なりに向き合っていこうか考えている中で、安い服が日本に入ってくることによって、日本の繊維産業が衰退していることが分かってきました。
繊維工場は地方に多くて、少子高齢化と結びついているということも、ひとつの要因としてある中で、ローカルの中でのものづくりとか、そこから派生して服だけではなくて、暮らしであったり、それを取り巻くコミュニティっていうところに興味を持ち始めたんです。
その時にたまたまこの上勝町に『RISE & WIN』というブルワリーが大学生の時にオープンしたんですけど、その建築に携わっている中村拓志さんがたまたま知り合いだったことをきっかけに、上勝町という町が徳島県にある、そして日本で初めて”ゼロ・ウェイスト”を宣言した町だということを知って、これは自分の目で見てみたいなということで、大学2年生の冬休みに初めて訪れたことがいちばん最初のきっかけでした」
●実際に大学生の時に上勝町に見学に行かれて、どんなことを感じましたか?
「いちばん最初に感じたのは、すごく緑で山の中にある町。私は徳島市内にある空港からバスを3つ乗り継いで上勝町までひとりで行ったんですけれども、半日かかってようやく上勝町に着いたという感じでした。山の中の道をくねくね辿っていって、やっと着いた町っていうのが最初の印象だったんです。
小さな町の中で、町のかたが共に支え合って暮らしているっていうことも感じましたね。農家民宿にその時は泊まって、色々町の中を案内してくださって、畑であったり町に住む人であったり、山犬嶽(やまいぬだけ)という苔がすごく綺麗な山があるんですけれども、そこに連れて行ってくださったりとか、すごく温かいおもてなしをしてくださったのを今でも覚えています。

上勝の町内に唯一あるごみステーションを見学させていただいて、すごくきっちりとごみを資源ごとに分けていることを目の当たりにした時に、自分が何気なくポイポイと捨てていたごみが、実は見えない部分に隠されているというか、見えなくても暮らしていたんだっていうことを改めて知ることになって、ごみを見つめ直すことが自分の生活を見つめ直すことにも繋がってくるんだっていうことを実感した経験でした」
※大塚さんは国際基督教大学・在学中に交換留学でスウェーデンの大学へ。滞在した「ベクショー」という町はヨーロッパいち環境に配慮したクリーンな町だそうで、たくさんのインスピレーションをもらったそうです。
実は大塚さん、スウェーデンに行く前に上勝町でインターンとして活動、また、スウェーデン留学中に、上勝町のスタッフに頼まれ、サーキュラー・エコノミーに取り組んでいるアムステルダム、ベルリン、ブリュッセルなどの視察をコーディネイト、一緒に見てまわり、とても貴重な経験になったそうですよ。
「?」の形の複合施設
※上勝町のスタッフに誘われて、大学卒業後、すぐにセンターで働くようになった大塚さんは、いまはもちろん上勝町で暮らしていらっしゃいます。山間(やまあい)の町、上勝町は人口が1500人ほどで、65歳以上のかたが半数を超えているそうですが、最近は20代のかたや海外からの移住者が徐々にふえているそうですよ。

それでは「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」とは、どんな施設なのか、うかがっていきましょう。
●大塚さんが責任者を務める「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」。オフィシャルサイトを見させていただいたんですけど、施設を上から撮っている写真が載っていました。上空から見ると「?」の形になっているんですね? すごい!
「はい、そうなんです(笑)。何故ごみを捨てるのか、という根本に迫るような問いを通じて、みんなと、何気なく捨てているごみから社会をよくするヒントを探っていきたいというような思いが込められています」

●具体的にどんな施設なのか教えていただけますか?
「上勝町ゼロ・ウェイストセンターは複合型の公共施設になっておりまして、?の上の丸い部分が上勝町の住民が利用する、町唯一のごみステーションになっています。そこから続けて、くるくるショップという町の中古品が集まってくるリユースショップと交流ホール。ここはイベントが開催できたりとか、キッチンも付いていて、レンタル貸しも行なっているスペースで、セミナーとかワークショップが行なわれる場所。常時は解放していて誰でも自由に憩うことができます。
で、コインランドリーと、あとラボラトリーというスペースはレンタルオフィスになっておりまして、上勝町をひとつの拠点として一緒にゼロ・ウェイストを考えてくださる企業様であったり、研究機関とか、リモートワークの場所として、ホテルと一緒にご利用いただけるようになっています。?の最後、丸い部分が体験宿泊施設ということで、HOTEL WHYという小さな宿になっています」
●この建物自体も廃材で作られているんですよね?
「そうなんですよ。例えばですね、この建物全体に色んな建具が使われていて、大小形も異なる建具は町の人から集めた540枚もの建具になんです。ごみって不要なものと思われがちですけれども、廃材とか地域の中で使われなくなった材料をまた建物に、デザインという命を吹き込んで使用しています。
ほかにもこの建物、木造建築なんですが、上勝町は元々林業で栄えていた町なので、地産地消ということもあって、上勝の杉の木材を活用しています。それもゼロ・ウェイストの考えに寄り添うような形で、建築家のチーム、NAP建築設計事務所がここも携わっているんですけれども、なるべく地域のものに価値をつけていこうということで活用されています。
なんと今年の春には日本建築学会賞を受賞しておりまして、この取り組みが少しずつ周りの方にも伝わっているんだなっていうのを実感しています」

ごみの行く末を日常から意識
※現在、上勝町では45分別をして、ごみゼロに取り組んでいますが、そこに至った背景として、大塚さんの説明によると、まず、ごみを「再生できるか、できないか」の視点で分けたそうです。
上勝町は小さな町なので、ごみ処理にコストをかけられない。一度、焼却炉を導入したそうですが、ダイオキシンに関する法律が施行され、たった2年で使えなくなったといいます。そこでごみを資源として分けて、生まれ変わらせるために、1997年に9つの分別からスタート、その後、徐々に増えて、現在の45分別になったそうですよ。 リユースにも積極的に取り組み、センター内ある「くるくるショップ」では住民のかたが持ち寄った衣類や食器類などを、自由に持ち帰ってもらったり。また、生ゴミは各家庭にコンポストを設置して、おうちで循環させています。

さて、気になる45分別、どれだけ細かいのか、大塚さんに説明していただきました。
「例えばですね、紙って燃えるごみとして回収されていると思うんですけれども、古紙とかは別にして、お菓子のパッケージとかトイレットペーパーの芯とか、燃えるごみとして回収されてしまいがちですが、それを上勝では9種類に分けています。この理由としては、紙ってきちんと分けたら再生紙になったりダンボールになったり、資源としてとっても価値があるものなので、それをお金をかけて焼却して消してしまうんではなくて、また分けて資源にしようと。
分けるとどんなメリットがあるかというと、資源になるだけではなくて、価値があるので、リサイクル業者さんがお金を払ってくれるんですね。1キロ数円でそれぞれ買い取ってくれるっていうこともあって、金銭的なメリットと環境的なメリットがあるということから9種類に分別しています。
例えば、紙パックが内側が白のものと銀のもので分かれていたりとか、あとは雑誌、雑紙、新聞、チラシ、ダンボール、シュレッダー屑、硬い紙芯、紙カップというように細かく分かれています」
●実際に大塚さんは上勝町に移住されて、45分別やるようになって、体験してみていかがでした?
「最初は戸惑うことも多くあったんですけれども、ゲーム感覚みたいな・・・このごみステーションの特徴として、それぞれがどこに行って何に生まれ変わるのか、そして1キロ当たりいくらの処理コストがかかっているのかということが記載されているので、捨てるのではなくて資源としてどこに行くのかっていうことを、日常の中から意識できるようなデザインがあるんだなという実感があります。
一方では、コツコツと分別することも大事ですけれども、やはり日々自分が使っているものをどう長く使えるようにするかとか、自分が作る側にどう携わって一緒に変えていけるのかを改めてじっくり考える機会をいただいているなと思っています」
●町全体でやるっていうことに意味がありますよね。
「そうですね。上勝町唯一のごみステーションなので、町の中にはごみ収集所もなければ、ごみ収集車も走っていないんですね。なので、町の人がみんなここに集まってくるっていうのは、コミュニティのホットスポットにもなっているなと思います」
ごみの分別を体験するホテル
※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」にはホテルもあるということでしたが、どんなホテルなんですか?

「このホテルは”ゼロ・ウェイストアクション”をコンセプトにしたホテルになっていて、いわゆる一般的なホテルとはちょっとイメージが変わってきます。そもそもごみ集積所、ごみステーションと併設しているっていうところからユニークではあるんですけれども、チェックインの際には、例えば施設の中をご案内してスタディーツアーという形で、上勝のゼロ・ウェイストの歴史であったり取り組みを、ひとりひとりのご宿泊のお客様にご案内をさせていただいていたりします。
使い捨てアメニティをお部屋には一切置いていないので、よくある歯ブラシとかカミソリとかそういったものは置かずに、ご自身が普段使っているものを持ってきてもらうっていうところからスタートしています。ただ手を洗う石鹸と、あとお部屋でお飲みいただけるコーヒーやお茶はチェックインの時に量り分けでお渡しするっていうような、ちょっとずつコミュニケーションをとりながら考えるヒントをちりばめています。
そのスタディーツアー終わったあとに、チェックアウトまでに必要な分をコーヒー1杯からお豆を挽いて瓶に入れてお渡しします。お部屋には湯沸かし器とコーヒードリッパー、ステンレスフィルターのものを置いてあるので、ご自身で入れてお飲みいただくっていうスローな時間と、あと上勝は水源地でもあるので、この施設全体は山水が流れているんですね。なので、タップウォーターもそのまま美味しくお飲みいただけるので、そういったところも感じていただきながら、そのようなスタイルでやっています」
●宿泊することで色んな気付きがありそうですね。
「さらには、チェックアウトの時にごみの分別体験っていうのも行なっています。客室にごみバスケットが2つ設置されているんですけれども、そこで滞在中に出たレシートとか、色んなごみをまずは6分別に分けていただいて、翌日には町のかたも利用している中で一緒にごみステーションに行って、45個にまた分けるというような、ちょっと変わったホテルです(笑)」

ポジティヴな感情をみんなで!
※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」がオープンして、1年半が過ぎました。いまはどんなことを感じていますか?
「そうですね、。少しずつこのゼロ・ウェイストセンターWHYを通じて仲間が増えてきていますし、これからどんどん増やしていきたいなとも思っています。例えばホテルはどなたでもご利用いただけるんですけれども、この施設の中にあるラボラトリーではレンタルオフィスとして今、年間契約という形で企業のかたがたにご利用いただけるようなプランを用意しております。
上勝町は2003年に日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言して、2020年までにこの町から出る焼却埋め立てごみをゼロにしようという目標がある中で、住民のかたがコツコツと分別に取り組んできたりとか、量り売りを地域の商店が取り入れたりしてきたんですけれども、やはり日々使っているプロダクトが複合素材から出来ていて、分別が難しくて再生ができないようなデザインになってしまっているんですね。
どんどん過疎が進んでいる中では、この小さな町だけではもうゼロ・ウェイストの取り組み、そもそも暮らしの持続性が問われている中で、上勝町と関わりながら一緒にこの町のありかたをサステナブルにしていかなければならないっていうフェーズに入ってきています。 そんな中、例えばゴム製品である靴が焼却になっているっていう課題がある中で、靴のメーカーさんと一緒にディスカッションを重ねるようになったりとか、少しずつではあるんですけれども、仲間を増やしていきたいなと思っていて、可能性を感じています」

●改めて「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」の責任者として、どんなことを大塚さんは発信していきたいですか?
「ごみって聞いた時に、多分多くのかたは臭いとか汚いとかで、すごく見えないところに追いやってしまいがちだなと思っています。でもこのゼロ・ウェイストセンターはまずそもそも臭いがしないんですね。生ごみを集めていないということと、汚れているものを洗って乾かしてから町のかたが持ってきていて、すごく清潔になっています。
そういった中から、このセンターはごみと言われているものを角度を変えて、所々で活用しているんですけれども、この上勝町からすごくワクワクとするようなポジティヴな感情を一緒に作ることによって、みんなが見えていなかったごみに一緒に向き合いながら楽しく解決していけるようなカルチャーであったり、プラットフォームを作っていきたいなと思っています」
INFORMATION
上勝町はごみにしない! 資源にするということで45分別! リサイクル率はおよそ80%を達成。全国平均で20%ほどと言われているので驚異的な数字です。人口が1500人ほどの小さな町だからできることかもしれませんが、やればできるんですね。人の気持ち次第だと思いますね。また、ファッションの勉強もされていた「大塚」さんは、できる範囲内で衣服の「心のあるものづくり」にも携わっていきたいとおっしゃっていました
ぜひ「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」、そして大塚さんの活動にご注目ください。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY:https://why-kamikatsu.jp/
2021/9/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本財団(にっぽんざいだん)」の常務理事「海野光行(うんの・みつゆき)」さんです。
海野さんは藤枝市出身、1990年に日本財団に入り、海洋関係の事業を担当。そして2016年に美しく豊かな海を次の世代につないでいくために「海と日本プロジェクト」を創設。そこには子供たちや若い人たちに、もっと海に親しんでほしいという熱い思いがあるんです。現在は1万をこえる団体が協力する一大プロジェクトになっているそうです。そして、その功績により、先日、令和3年「海の日」海事関係功労者大臣表彰を受賞されています。
きょうはそんな海野さんに海洋ごみの現状や、減らすために取り組んでいる大きなプロジェクトのお話などうかがいます。
☆写真&ロゴ協力:日本財団

ペットボトル450年! 漁網600年!
※それでは海野さんにお話をうかがっていきましょう。この番組でも海洋ごみの問題は以前にも取り上げ、その厳しい現状をお伝えしてきましたが、世界の海には大量のごみが漂っているんですよね?
「はい、色んな調査、各国でなされているものはあるんですけれども、やっぱりプラスチック類が最も高い割合を占めているということが分かっています。世界では毎年少なくとも800万トンのプラスチックごみが海に流れ出ていると推計されています。東京スカイツリーの重さが約4万トンなので大体200本分、こういったものが出ているということなんです。日本からも毎年2万トン〜6万トンが流出していると言われています」
●膨大な量ですよね。北太平洋には太平洋ごみベルトと呼ばれる一帯もあるっていう風に聞いているんですけれども、これはどんなエリアなんですか?
「アメリカのカリフォルニア州からハワイ沖にかけての北太平洋上の海域なんですけれども、ここの大きな潮の流れに乗ってプラスチックごみが集まってくる。プラスチックごみだけではないんですけど、いわゆる海洋ごみが集まってくる海域があります。これが帯のように見えるようなことから太平洋ごみベルトという風に言われているところなんですね。
面積は大体160万平方キロメートルを超えると言われていまして、日本の面積の約4倍以上の大きさになってきます。ここに漂っているプラスチックのごみの総重量で言いますと、大体7万9000トンという数値も言われているところでありますね」
●色んな場所から漂って来ちゃうっていうことなんですか?
「そうですね。アジア諸国ですとか、北アメリカから流れ出てきたものがあると言われていますけれども、当然のことながら、この日本からのものも含まれていると言われています」
●以前、海洋研究開発機構 JAMSTECのかたに、深い海の底にプラスチックごみが沈んで分解されることなく、そのまま残っているんだっていうお話もうかがったんですね。さらに行方不明のプラスチックごみがまだまだ大量にあるんだっていうお話もうかがったんですけれども、このままですと世界の海がごみで埋まっちゃうんじゃないかっていう危惧もありますよね?
「まずプラスチックのごみが海に出ると、どういう風になるかっていうことがあるんですけれども、いずれにしても人工的に作られたプラスチックっていうのは、基本的には自然界で完全に分解されるということはありません。ですので長い年月、海を漂うことになります。例えば最近、有料化になったものとしてはレジ袋、これ海に流れ出ると何年ぐらい漂うと思います?」
●どうなんでしょう・・・かなりずっといそうな気もしますよね。
「ものにもよるんですが大体20年。その他にも私たちがよく使うペットボトル、これ450年ぐらいなんです。さらには、プラスチックごみの中の4割くらいを占めている、いわゆる漁具、漁網ですね、これに至っては600年って言われているんですね。そういったものが、形はある程度保ったまま浮遊していると・・・。
ですから、今私たちがごみを捨てて海に流れ出てしまうと、私たちの子供の世代、孫の世代、ひ孫、玄孫(やしゃご)、その先なんだろう、来孫(らいそん)とか、その世代まで影響を及ぼしてしまうという問題があるということなんですね。
現在、世界の海に流出している海洋ごみの量は、大体1億5000万トンという風に言われているんですけれども、このまま何もしなければ、2050年に重量ベースでいくと、魚よりもプラスチックごみの量のほうが多くなると発表している機関、あるいは学者さんもいるんです」
●そんな未来、いやです!
「一体どうなっちゃうんだろう!? って思いますね」
プラスチックに囲まれた生活
●海洋ごみの問題を解決するためには、家庭から出るごみを減らすために生活を見直すことも大事かなと思うんですけれども、なるべく家庭にプラスチックを持ち込まないようにしたいなと思っても、スーパーとかコンビニに並ぶ商品って、ほとんどプラスチックの容器とか袋に入っていると感じるんですが、どうしたらいいんでしょうか?
「どうしたらいいんでしょうね(笑)。自分も同じような疑問を持って一度試したことがあって。それは何かというと、朝起きてから寝るまでプラスチックに触れないで、自分は生活できるのかどうか、これやってみたんですね」
●どうでした?
「大失敗しましたね。朝起きる時、目覚ましを鳴らします。目覚ましが鳴って押した瞬間にその目覚まし時計がプラスチックで・・・」
●ああ〜!(笑)
「もう何もならない、そこでもうゲームは終わってしまうというところがあります。そういったところからすると、プラスチックに触れないで、今、現代人が生活できるかっていうと、これはほぼ無理なんだろうなと思いますね」
●(プラスチックは)至る所にありますよね。
「フランスのルモンド紙に載っていた写真を見たんですけど、愕然としたんですね。その家の中からプラスチック製品を全部出してみようと、庭に全部出していたんですよ。そしてその写真を見たら、家の中はもうほとんど何も残っていなかった。プールサイドに家財道具が全部並んでいたというぐらいなんですね。
そういったところからも、今の私たちの社会にとってプラスチックは欠かせないものになっているのかなと。今収録している部屋の中にも、どれだけプラスチックがあるかっていうようなことにもなってきますよね(笑)。
ただ、よく誤解されるところがあるんですけれども、たとえプラスチックをたくさん使っても、きちんと分別をするとか処理さえすれば、海洋ごみになることはないんですね。逆に、たとえプラスチックの使用を減らす、もしくは生産を減らしていったとしても、ポイ捨てしたり、あるいは我々がずさんな管理をしてしまえば、それは海洋ごみになってしまう可能性があるということなんです。
プラスチックが生活にこれだけ浸透しているのは、やっぱり便利で安くできるからというところだと思います。今のコロナ禍においては感染対策においても、改めて使い捨てのプラスチックの価値が見直されているというところも聞いていますので、プラスチック並に便利で、たとえ海に流れても分解されるような代替の素材が開発されるまで、まだまだ時間がかかりますので、それまではプラスチックの使用を中止するのは現実的ではないと思います。
プラスチック=悪と決め付けるのではなくて、例えばリサイクルをして再利用していく。そういったものをしっかりとシステムとして作り上げるとか、あるいは再利用できないものは、例えば日本でいうと燃やしてエネルギーにしていく。これはCO2の問題なんかもあるので、各国では問題になるんですけれども、こういった活用方法を賢く考えて使うということを、私たちは生活の中でも考える、もしくは政府の中、研究者の中でも考えていく必要はあるのかなと思っています」
※補足:ポイ捨てや、うっかりで出てしまったペットボトルやレジ袋など、ごみとなってしまったプラスチックは、河川や水路を通って海に流れ出しています。そんなプラスチックごみは海洋生物や海鳥などに影響を与えていることは以前番組でもお伝えしました。
また、5ミリ以下のマイクロプラスチックや、肉眼では見えないナノサイズのプラスチックが魚などから見つかっていますが、人体への影響については、まだはっきりしたことはわかっていないそうです。
たくさんの企業の技術を結集

※日本財団では海洋ごみの削減に向けた取り組みを行なっています。去年立ち上げた連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」ではどんな活動をされているのか海野さんにお聞きしたら、まず、素敵なバッグを見せてくださいました。
「これが何からできているかってご存知ですか? 見た目で分かりますか?」
●見た目では全く、素敵な水色の、あと皮と、おしゃれなバッグです。
「何からできているかというと、実はこれ、魚を捕る網で出来ています。リサイクルなんですね。リサイクル商品としてはものすごくいい形で仕上がっていると思うんですね。海洋プラスチックの中でも重量ベースで最も多いのがいわゆる漁具、その中でもやっぱり悪さをするのは漁網って言われているんです。
これをたくさんの企業のお力をお借りして実現したのが、ひとつのものとして、これなんですね。実はこの取り組みの前に、日本最大の消費者団体であります生活協同組合のCO・OP(コープ)ってご存知ですよね? 彼らと一緒に消費者のプラスチックごみに対する声っていうものちょっと調べてみました。そうしたところですね、興味深い実態が浮き彫りになってきました。
挙げるとですね、3つほどあるんですけれども、ひとつは、消費者は企業が提供する選択肢が乏しいことに不満を持っている、これがまずひとつ。それともうひとつは、企業による新しい選択肢の提供を待っている。もっとたくさん(選択肢が)出てきたら私たち消費者は買いますよと思っているんですね。
さらに、環境に配慮した商品がたくさん出てくれば、それは一定のコスト負担、付加価値が付いたものがあれば、コストを負担してもそれを許容できますと、要は買いますよということを生活者の皆さんは思っているんですね。
この調査結果からも、何が言えるかというと、企業の協力、企業の貢献というのは、これはやっぱり欠かせないということを改めて感じたところです。もちろん一筋縄じゃいかないところもあるんですけれど、例えばプラスチック製品の商品企画から流通、製造、消費、処分、あるいはまたこれを再利用していくと、こういった一連の過程の中で色んな企業さんが関わってきます。ですので、ひとつの企業や業種で取り組むだけでは、限界が出てくるんですね。
なので、日本財団では石油化学ですとか、あるいは日用品、食料品、包装材のメーカーさん、小売さん、リサイクル企業さん、色んな企業のかたがたを集めて、本気度のある、ちゃんとした製品を作ろうじゃないかということで集まったのが、”アライアンス・フォー・ザ・ブルー ”というもので、2020年7月に立ち上げて、今、大体34社になっています。
自分たちが足りないもの、もしくは自分たちはこんないい技術を持っているっていうものを出し合って、ひとつのいい製品を作ろうと出来たのが、この漁網のバッグということです」
●リュックもトートバッグもショルダーバッグも、本当に生地もしっかりしていますし、見た目もお洒落ですね。
「そうなんです」
※補足:日本財団が立ち上げた連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」にはセブン&アイ・フォールディングスや大日本印刷、三菱ケミカルなど、いろいろな業種の企業が34社参加しているとのことでした。
そして、漁網をリサイクルしたバッグは10月1日から「豊岡カバン」のオフィシャルショップやオンラインで販売される予定だそうです。ぜひネットでチェックしてください。
ごみは人の心から出てくる
※日本財団の取り組みとして、きのうから「秋の海ごみゼロウィーク」がスタートしました。海野さん、これはどんな活動なんですか?
「日本財団と環境省で共同開催しているものでございまして、全国一斉の清掃キャンペーンになります、要はゴミ拾いキャンペーンですね。で、この春の海ごみゼロウィークというものがあって、こちらは5月30日、ごみゼロの日から6月8日まで。6月8日っていうのは国連で定められた世界海洋デーなんです。
この期間を“春の海ごみゼロウィーク”ということで、一斉ゴミ拾いをやってもらったら、コロナ禍でもありますのでなかなか難しいということで、今回は秋にもこれを設置しようということで、9月の第3土曜日、これはワールドクリーンアップデーにもかかるんですけれども、この前後を踏まえて、1週間は“秋の海ごみゼロウィーク”と名付けて今、実施をしているところであります」
●これ、今からでも参加はできるんですか?
「もちろん参加できます。“海ごみゼロウィーク2021”のホームページがありますので、こちらの応募フォームから申し込んでいただければ、ごみ袋を無償で提供をさせていただきますので、ぜひ参加していただければと思っています」
●日本財団のご協力をいただいて、bayfmでは”LOVE OUR BAY! 海ごみゼロ!プロジェクト”を進めております。私も近所のごみ拾いをして、写真を撮ったりしているんですけれども、色々な企業や自治体などが連携していけば、どんどん大きな力になっていきますよね」
「おっしゃる通りだと思います。海ごみと聞くとあたかも誰かが海に行って、そこでごみを捨てているような感じに捉えられるかもしれませんが、先ほど申し上げた通り、もともとは陸から出たものなんですね。
海洋ごみは川から来ます。川のごみはどこから来るかというと町から来ます。町のごみはどこから出てくるかというと、やっぱりこれは人の心から出てくるというところはあると思います。海洋ごみ問題というのは全ての人に関わる問題ではあると思っています。
そういった意味ではプラスチックを製造販売している企業、そして処理関係の権限を持っている自治体さん、各地のNPO団体、スポーツ団体、あるいはマスメディアのかたがた、あらゆるステークホルダーと連携しながら、国民ひとりひとりがこれ以上ごみを海に出さないんだという強い意志を持って連帯していく、こういう気運作りというかムーブメント、こういったものを作っていければと思っています。解決のカギを握るのはやっぱり人の心だと思いますので」
※補足:2019年の「海ごみゼロウィーク」では全国1500カ所でおよそ40万人のかたが参加する一大イベントになったそうです。新型コロナの影響で、今年は開催規模は小さくなってしまっているそうですが、感染が落ち着いている地域で対策を万全にして実施しているところもあるとのことです。開催は9月26日まで。詳しくは「日本財団」のホームページでご確認ください。
◎日本財団「海ごみゼロウィーク2021」:https://uminohi.jp/umigomi/zeroweek/
「瀬戸内オーシャンズX」!

※それでは最後に、今後取り組んでいきたいこと、そして目標について海野さんにお話いただきました。
「”海と日本プロジェクト”、これは前からやっていたんですけど、この一部に”チェンジ・フォー・ザ・ブルー”という海洋ごみ対策のプロジェクトを2018年の11月から開始をいたしました。
チェンジ・フォー・ザ・ブルーのザ・ブルーというのは、青は海を象徴する色なので、海の豊かさを守るという意味。それとチェンジというのは、海にごみを出さない社会に変えていこうという理念のもと、チェンジ・フォー・ザ・ブルーって名付けたんですけれども、こういった中で産学官民が連携したオールジャパンの取り組みとして、海洋ごみの問題を解決するモデル事例を、とにかくたくさん作っていきたいという思いで今進めているというところではあります。
もちろん何をするにしても調査結果、いわゆる科学的なエビデンス・データっていうのは必要です。ですので、これを踏まえた上で何をすることが効果的なのかということを考えながら今、対策というか事業を進めているところであります。
チェンジ・フォー・ザ・ブルーを開始しまして、自治体とも連携してモデル作りを進めていくような中で色んな課題も見えてきました。そもそも海に流れ出たごみというのは県や市町村を越えて移動してしまうんですね。ごみに県境はないし、海も県境や市境はありませんので、そうなってくると誰がどのように回収するのか、あるいは役割分担や回収の責任の所在というのは結構曖昧になってくるんですね。
そうなると各地域で海洋ごみ対策というのが、地域の人たち、あるいは個人、個々の人の取り組みに任せられてというのがあるんですね。なので、ある意味放置されている状態であったというところはありました。
そこで、単一の自治体の枠を超えて、広域のエリアで海洋ごみ対策、これのモデルを構築しなければいけないのではないかということで、2020年の12月だったんですけれども、ターゲットは瀬戸内海、美しい海ですよね、美しい海にもごみってあるんですよね。このごみをなんとかゼロにしてきたいということで、新しいプロジェクトを開始しました。
それが”瀬戸内オーシャンズX”。何でXかというと、今回参加してくださっている自治体というのは香川県、愛媛県、岡山県、広島県、これは瀬戸内を巻き込んでいる自治体になっていますけれども、(地図で見ると)X型に連携をするというところで、このプロジェクトを進めました。
なんで瀬戸内海かというと、瀬戸内海ってやっぱり外海からごみが流れ込む確率は少ないんですね。そういった意味では我々、閉鎖性海域と言っているんです。瀬戸内にあるごみは逆に言い換えると、ほぼ自分たちの出したごみなんです。なので、ここで対策をすると何が起こるか可視化しやすいんですね。
要は対策をして、県民の皆さんがしっかりと取り組んでさえくれれば、瀬戸内のごみは限りなくゼロに近づくということが分かってきました。ですので、今、環境省さんが法律を変えるような形で進めているんですけれども、それと相まって私たちもこういうプロジェクトを進めていく中で、瀬戸内のごみをゼロにするということで、ごみを通じてちゃんと海のことを考えてもらう意図も踏まえて、この瀬戸内オーシャンズXを始めました。
大体5年間でゴミの流入を70%減らす。これは川のゴミを遮断すれば、ある程度できます。それと同時に回収ですね、海洋ごみの回収を10%増やす。これをすることによって理論上、ごみはゼロに近づいていくと。5年間でなんとかこの取り組みを成功に導きたいなと思っています。
当然のことながら調査研究をしながら、企業の皆さん、地域連携をやりながら、あとは教育と、市民の皆さんに対しての行動ですね。こういったことをしながら政策形成、自治体の皆さんに対して、私たちもごみに対するシンクタンクを持っているものですから、こういった政策形成の部分もサポートしながら、この4つの柱を掲げ、先駆的な様々な取り組みを進めていきたいなと思っておます。上手くいけば、この成功事例が海外にも持っていけるのかなと、日本発、瀬戸内発のモデルとして出ていけばいいなという風に思っています」
INFORMATION
日本財団が進めている海洋ごみ対策のプロジェクト「チェンジ・フォー・ザ・ブルー」そして連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」に今後も番組として注目していきます。
海野さんが創設した「海と日本プロジェクト」は海洋ごみの削減だけでなく、子供たちや大人たちにも海に関心を持ってもらうための様々な取り組みを行なっています。詳しくはぜひ日本財団のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎日本財団 HP:https://uminohi.jp/
ベイエフエムでは日本財団の協力のもと、「LOVE OUR BAY! 海ごみゼロ!プロジェクト」を進めています。参加方法は簡単! ゴミを拾って、それを写真に撮って送るだけ。ぜひ一緒にチーバくんごみゼロMAPを完成させましょう。詳しくはベイエフエムのサイトを見てくださいね。
◎bayfm HP:https://www.bayfm.co.jp/info/umigomi0/
2021/9/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ゴミ清掃のお仕事もされているお笑いコンビ「マシンガンズ」の「滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)」さんです。
滝沢さんは清掃員の体験などをSNSで発信、また、ゴミに関する本も出され、ゴミ清掃芸人として大注目されています。去年10月には「環境省サステナビリティ広報大使」に就任されているんです。そんな滝沢さんをお迎えして、ゴミにまつわる、眼から鱗のお話満載でお送りします。
☆イラスト:本田しずまる

ゴミには人間性が出る!?
●きょうはゴミに関するお話を色々と聞かせてください。よろしくお願いいたします!
「よろしくお願いいたします〜!」
●滝沢さんの新しい本については後ほどお話をうかがいますが、その前に滝沢さんがSNSや本で発信されて話題になった言葉について、いくつかうかがっていきたいなと思います。
「はい、なんでも聞いてください」
●まずは「地域の品格はゴミ集積所で分かる」というお言葉ありましたけれども、これはどういうことですか?
「逆を言えば、一般的に治安のあまりよくないと言われる場所ってあるじゃないですか、 そういうところって必ず、集積所を見ると汚かったりとかするんですよね。だから言ってみたら汚くなっている状態でも誰も何も気にしないということで、それが何を意味しているかって言ったら、やっぱり近所の目がないっていうことなんですよね。だから綺麗なところっていうのはやっぱり目が行き届いているわけですね」
●引っ越しする時に治安がいいところに住みたいなと思ったら、ゴミ集積所を見に行けばいいかもしれないですね。
「見るといいと思いますし、あとは例えば不動産屋さんとかに、ちょっと集積所を見せてもらっていいですかとお願いして、見たほうがいいですね」
●なるほど!
「なんかそのアパートとかマンションにどういう人が住んでいるのかっていうのがやっぱり分かりますね。ゴミの出し方が汚いだけでは多分ないんですよ。ゴミの出し方も悪いし、例えば夜中に騒音を出すとか、やっぱり繋がっているんですよね、生活で。その人間性みたいなところを表しているのがゴミっていうことだったりするんですよね」
●本にもゴミは伝染するっていうことで、適当なゴミを見るとこのくらいの分別でいいのかなということで、悪い人の真似をしてしまうっていうのが人間であるっていう風に書かれていましたけれど。
「そうなんです。自分に置き換えると分かりますけど、例えばペットボトルのラベルを剥がしてペットボトルの日に出そうと思ったら、みんなラベルを剥がしていなかったら、剥がさなくっていいんだ! ってやっぱり思いますよね」
●確かに思っちゃいます。
「来週から剥がさなくていいや、そのまま出そうってなるんで、やっぱり自分の出したゴミって意外と人に影響を与えているんですよね。だから僕、ゴミ回収に色んな場所に行くじゃないですか。そうすると綺麗なところは本当に綺麗なんだけど、汚いところはどんどん汚くなっていくんですよね」
●そういうものなんですね。続いて「ゴミは生活の縮図で人格をも表現する」というお言葉、これもまさにそういうことですよね。
「そういうことですよね。やっぱりゴミって結局、嘘をつかないんですよね。人間って結構意外と色んな嘘とかついていたりするんですけど、ゴミ自体は嘘つくことがなかったりするので、意外とその人自身を表しているのかな〜なんて思ったりしますね。
例えば、色んなお金持ちの地域みたいな、高級住宅街みたいなところがあるじゃないですか。そういうところと一般的な住宅街っていうのは、出るゴミが違ったりとかするんですね」
●お金持ちのかたほどゴミのことを考えていらっしゃるっていうことですか?
「あ、小尾さんは勘がいいですね! お金持ちなんじゃないですか!?(笑)」
●いやいや、全然です!(笑)。でもどういうことですか? お金持ちのかたほどっていうのは・・・。
「買っている商品はもちろん違うみたいなこともあったりするんですけど、意外とね、一般的な住宅街のほうがゴミの量が多かったりするんですよ。一見、逆のようなイメージないですか? お金持ちの人がいっぱい買って、バンバン捨てているみたいなイメージですけど、実際は逆で、お金持ちのかたのほうがゴミがすごく少ないんですよ。極端に少ない。
でも一般的な住宅街のほうが結構ゴミが多いのは、意外と中身をバッと、見ようと思ってみるわけではないですよ、見てみると100円ショップのものとかで、そんなにまだ使っていないようなグラスみたいなものとかね、そういうものが結構出ていたりするんですよね。
あとはファストファッション的なこと、そんなに袖を通していない綺麗な洋服でも、結構、年末年始や引越しシーズンになると意外とバンバン捨てて、洋服の束が4袋とか5袋とか・・・出すかたが結構いるんですよ。やっぱりそういうのって普段の生活で適当に買っちゃう、でも100円だから捨てちゃおうみたいなのが、結構表れているのが一般的な住宅街のゴミだったりするんですね」
●へ〜〜、面白いですね! ゴミって(地域性が)出るんですね!
「そうなんですよ。逆に言えばお金持ちの地域のかたとかは、皮肉じゃないですけど、自分の好きなものをちゃんと買っているから、そんなに捨てることもあんまりなかったりするんですよね。そこに量の違いが出てくるのかなと思いましたね」

ゴミ清掃車1台で1日10〜12トン!
※滝沢さんがゴミ清掃のお仕事は始めたのは、36歳のとき。奥様から、妊娠したのでまとまったお金が必要よ、といわれ、友人の紹介でゴミ清掃のお仕事をやることになったそうです。お笑いだけで食べていきたいと思っていた滝沢さんは、最初は気が進まなかったそうですが、その後は本気で取り組むようになり、今年で丸9年に続けているんです。
滝沢さんはゴミ清掃員になった当初、とても驚いたことがあったそうです。いったいどんなことに驚いたんですか?
「こんなにゴミ出ているんだ! って、まず思いましたね。みなさん、自分のゴミしか見ていないじゃないですか。でもゴミ清掃員って当たり前なんですけど、みんなのゴミを回収するんですよ。例えばパッカー車って分かります? ゴミ清掃車。あれって最大2トンぐらい(のゴミを)回収するんですよね。小尾さんはあれをパンパンにしたら1日の仕事は終わりっていうイメージないですか?」
●あります、あります!
「あれね、実は1日6回やるんですよ。6台分」
●ええっ!?
「ゴミがパンパンになったらゴミ清掃工場に持って行って捨てて、またその続きからやるんですよ。それを1日6回。だからつまり1日10トンから12トンくらいのゴミを回収しているんですね。1台でですよ」
●すごいですね。そこまでくると想像がつかない量ですね。
「それがもう何十台とその自治体で(パッカー車が)出るじゃないですか。えっ! うちの自治体だけでこんなにゴミが出ているの!? って本当に思うんですよ。清掃工場とか見たことあります?」
●はい! あります!
「ゴミを溜めるところ見た?」
●溜めるところ?
「清掃車がゴミをバーって出して、大きな穴みたいのがあって、うちの自治体だと横30メートル、深さ20メートルくらいあるんだけど、それがね、年末年始になるとパンパンになるくらいすごい量のゴミになるんですよ。これを見ていると、本当にゴミで日本は埋まらないのかなって、当たり前のように思うようになるんですね。これが衝撃だったんですよ」
●ゴミが多い多いと言われていても、実際にそこまで!っていう感覚がないですよね、普通に生活をしていると。
「目の前からなくなると、もうゴミって消えてなくなっちゃったものだと思いません?」
●はい、思っています。
「意外とゴミってなくなることはなかったりするんですよね」
●(ゴミ清掃会社の)非常勤とはいえ、今でもゴミ清掃のお仕事を続けているのは、何か思いがあるってことですか? やりがいとか。
「やりがいがありますね。ありますし、もうゴミ清掃をやっているのが好きの領域に入ってきましたね! 本当はお笑いをやりたいからゴミ清掃なんかやりたくねーよなんて、思いながらやっていると意外とね、逆に辛いんですよね。
だから3年目くらいの時に、ゴミ清掃自体のことを好きになろうって思って仕事に取り組むと、色々やっぱり見えてきて面白かったんですよ。それこそ金持ちのゴミと一般的なゴミの違いをよく見て、焦点を当てると全然違うんだなとか思ったりして、面白い発見がいっぱいあったんですよね。やっぱり日々発見があるので今は楽しいですね」
※滝沢さんからこんなお話もありました。ゴミの袋を結ばずに出しているかたもいるので、ゴミを出すときはしっかり、出来れば二重に結んで出していただけるととても助かるとおっしゃっていました。
また、嬉しかったお話としては、竹串を空になったティッシュの箱に入れてくるんで、ゴミ袋から飛び出さないようにしてくださったかたもいたそうです。「プロの主婦」だと感じたそうですよ。ゴミ清掃員のかたがケガをしないようにという思いやりですよね。
ゴミか資源か、重要ポイント
※いまはゴミの分別は当たり前のことですが、分ける時に、これは燃える? 燃えない? どっちなんだろうと迷うことも多いですよね。地域によってルールが違うこともありますが、何かわかりやすい基準はあるんでしょうか?
「小尾さんはゴミって何種類あると思いますか?」
●燃える、燃えない、あと缶とかビンとか、そういったことですか? 粗大ゴミとか?
「6種類?」
●10未満!(笑)
「10未満(笑)、正解は2つです!」
●2つ!?
「実はゴミっていうのは燃えるゴミと燃えないゴミしかないんです。ビンとか缶とかペットボトルとか古紙とか、これはじゃあなんだ? ゴミじゃないのか? って言ったら実はゴミじゃないんですね。これは”資源”なんですよ。みなさん多分、資源って言っているはずなんですよ。中には資源ゴミって言っている人もいるんですね。僕らの世界で資源ゴミって言うと怒られるんですよ。何でかって言ったら、資源であってゴミじゃないだろって言われるんですね。
つまりゴミと資源の2種類なんです。だからゴミって何種類?って言ったら7〜8種類って大体答える人が多いんですけど、それは資源”ゴミ”として扱っているわけなんですね。なので、まずゴミというのは燃えるゴミと燃えないゴミ。例えば、燃えるゴミの中にまだまだ資源として活躍できるものがあるかどうかっていうのを考えるのが大切かなと思いますね。
結構みなさんが何気なく捨てているんですけれど、紙っていうのがありますね。燃えるゴミの中に結構、雑紙というものを捨てていらっしゃるんですよ。例えば小尾さんだったら台本の紙だとか、あとはメモ用紙だとか、あとティッシュの箱なんかもそうだったりするんですけど、こういうのって意外と可燃ゴミでみなさん捨てているんですよ。これを抜き取ると3分の1ぐらいゴミが減ったりするんですね」
●へぇ〜! 紙だけでも!?
「紙と、あとプラスチック! 容器包装プラスチックっていうのがあるんですけど、本当に可燃ゴミの中に大きな割合であるのがこの2つなんですよ。紙とプラスチック、これを抜くと3分の1くらいゴミが減るんで、これも可燃ゴミとして出す、資源として出す、って人の気持ち次第でどっちに出すかって変えられるじゃないですか。
可燃ゴミってさっきも言いましたけれど、清掃工場に持っていくんですね。これはもう燃やすしかないんですよ。燃やすと次は灰になるんですね。こうなったらただのゴミなんですよ。資源に回すとなると雑紙、これ古紙の日に、新聞とか雑誌とか段ボールの日に出すんですけど、雑紙として出せば、また紙として生まれ変わるんですよ」
●そうですね〜。
「灰になるか紙になるかで、やっぱり行き先が全然変わってくるんですね。だから基本的には、ゴミの中からまだまだ使える資源はないのかなって探すのが、いちばんいいかなと思いますね。
不燃ゴミも同じです。意外とビンや缶を不燃ゴミで捨てている人が結構いるんです。缶は缶で出したら資源として生まれ変わるということなんで、是非ここは結構、重要ポイントなんで、ゴミと資源ということをまずしっかり認識して、昔から混ぜればゴミ、分ければ資源みたいなことを言いますけれど、そこらへんは今すぐ明日にでも地球のためにできることだと思いますね」
※滝沢さんによると、清掃工場で燃やされたゴミは灰が残るので、その灰と、砕いた燃えないゴミは、最終処分場に運んで埋めるそうですが、東京都の場合はあと50年ほどでいっぱいになるとか。最終処分場の寿命は全国平均でいうと、あと20年くらいではないかということでした。ごみを減らさないと日本はゴミで埋まってしまうかも!?
市川市・24時間営業の生ゴミボックス

●滝沢さんが先ごろ出された新しい本『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』を私も読ませていただきました。自治体の野心的な取り組みがたくさん紹介されていて、この町ではこういう工夫をしているんだっていうアイデアが豊富に載っていて、すごく勉強にもなりましたし、読んでいてすごく面白かったです。
「ありがとうございます。もう100点の答えですね!」
●ありがとうございます(笑)。その中からいくつか気になった取り組みについてうかがっていきたいなと思います。まずは千葉県市川市の事例を紹介しているページで、24時間営業の生ゴミボックスという見出しがありましたけれど、これはどういう取り組みなんでしょうか?
「これは本当にそのまんま、市川市は24時間生ゴミを捨てに行けるボックスみたいなものがあるんですね」
●まだ試作品ということですけど・・・。
「もちろん成功して全国に広がってほしいなと思うんですよね。これね・・・色々分別とかしていたりするじゃないですか。可燃ゴミの中から紙を抜き取ったり、プラスチックを抜き取ったりすると、3分の1くらいは減るんですよ。で、残りの3分の2で結構、大きな割合を占めているのが生ゴミなんですよ。
生ゴミはやっぱりゴミ清掃員にとっても意外と大敵で、生ゴミをぎゅっと絞るとかしないで、そのまま捨てるかたもいらっしゃいますね。各家庭の生ゴミの、絞っていない汁があるでしょ。あれって清掃車で圧縮しながら回収しているから、各家庭の生ゴミのあの匂いの汁がぎゅっと出てくるわけなんですよ。あれがかかるともう1日中臭いですし、町で回収しながら小学生とかに”臭えーよ!”みたいなことを言われるんですけど、あれが原因なんですよ。
なので、みんな本当に各家庭で絞ってほしいんですけれど、その生ゴミ自体がなくなれば意外とそんなに、可燃ゴミって臭くならないんですよね。他に臭いになる原因ってあんまりなくて、例えばオムツみたいなものは臭いの原因になったりするんですけれど、それ以外ってあんまり臭うってことはなかったりするんですよ。
しかも生ゴミって濡れているでしょ。焼却炉の敵なんですよね。水に濡れているから燃えにくいんですよ。燃えにくいってことはそこにエネルギーを足さなきゃいけないので、二酸化炭素とかもやっぱりより多く出るし、あとはこのエネルギーっていうのがみんなの税金なんですよ」
●そうですね・・・。
「なので、みんながぎゅっと生ゴミを絞れば、税金も節約できるんですよね」
●この市川市の(生ゴミボックス)は、いつ生ゴミを出しに行ってもいいってことですか?
「24時間いつ出してもいいし、だからみんなの生ゴミがなくなるんです。税金自体も安くなりますし、また、生ゴミをエネルギーに変えるらしいんですね。だからいいことしかないんですよ。本当にさっきも言いましたけれども、混ぜれば全部ゴミになるんですけど、こういう風に分別したら何かに利用できるんですよね」
●すごいですね〜!
「いい取り組みでしょ! これは全国に広がってほしいんですよ」

●続いて、新潟県南魚沼市の取り組みで、特産品のお米が指定ゴミ袋に! これはどんな取り組みなんですか?
「考えてみればゴミ袋って、世界で唯一ゴミになるために生まれてきているものなんですよね」
●そうですよね。ゴミ袋もゴミになっちゃうんですよね。
「ゴミになるんですよ。燃やすものなんですよ。なのでただ単純に新しく生み出すんじゃなくて、例えば魚沼はお米がとれるところであって、全部が売り物になるかって言ったらそうでもないお米もあったりするんですよ。(粒が)欠けているお米だとかそういうものを利用して袋を作っているわけなんですね。普通に作るよりも燃やした時に、言ってみたら二酸化炭素が新しく袋を作るよりも出ないっていうことなので、これもとてもサステナブルな取り組みですよね」
●ゴミとなったゴミ袋は袋だけで年間で28万トンと本に書かれていてびっくりしました!
「まとめるとそのくらいになるんですよね。だから塵も積もれば山となるって本当なんですよ。こういうところにも配慮するっていうのは素晴らしいですよね」
●その袋も当たり前のように燃やされていくわけですよね。
「自治体は横の繋がりってそんなになかったりすると思うんですよね。なのでこの本で、意外と隣の自治体はこんなことやっているんだっていう、みんな見て、お互いがお互いにいいところをパクるべきだと思うんですよね」
※新宿区の区役所には「入れ歯」の回収ボックスがあって、滝沢さんもそれを見つけたときは驚いたそうですよ。私たちが知らないだけで、こんなものまで! っていうものを回収しているかもしれませんので、お住まいの自治体のホームページなどをチェックされてみてはいかがでしょうか。
また、滝沢さんは「洋服はレンタルの時代だ!」と提案されていて、ご自分でも実践されています。衣類が増えなくて、自宅にスペースがあるのは気持ちいいとおっしゃっていましたよ。いまは洋服のレンタルサービスがいろいろありますので、これも調べてみるのもいいかも知れません。

4つ目のR=リスペクト
※ゴミを減らすために3R「リデュース、リユース、リサイクル」が大事だと言われますが、滝沢さんは4Rを提案されていますよね?
「僕は4R、4つ目のRを提案したいのは、”リスペクト”ということなんですね。リスペクトって尊敬するとか敬意を払うって意味じゃないですか。これってその気持ちがあれば、意外とゴミ問題って大概、解決するんじゃないのかななんて思ったりするんですね。
僕なんかゴミを回収していて、洋服とかも適当に買って適当にばーって捨てている姿を見ていると、やっぱりものを作った人もいたりするわけじゃないですか。それを作った、携わった人ってこういう風に新品のうちに捨てられているのを見たら、やっぱり心痛むと思うんですよね。
ゴミを回収していると、本当にまだまだ食べられる物もバンバン捨てられているんですよ。メロン丸ごと3つだとか、高級ゼリーのセットだとか、お歳暮やお中元シーズンにすごく捨てられるんですね。
それってなんかもう、人の顔があんまり見えていないから、能率を最優先しちゃうから、別にいらなきゃ捨てちゃおうっていうことなんですけど、例えば自分の子供が作ったものだったら、ちゃんと食べるじゃないですか。
顔の見えない社会って意外とそういう風にバンバン捨てられたりとかして、そこにやっぱり敬意を払う、リスペクトするという気持ちが欠けているような気がするんですよね。
僕はこのリスペクトという気持ちがみんなにちょっとずつあれば、意外とゴミ問題は解決するかななんて思ったりしますね」
●4つ目のR、リスペクト、大事ですね!
「ゴミを回収する人がどういう風に思うのかなっていうのを考えることも、リスペクトだと思うんですよね」
●そうですね。ゴミの出し方を変えますよね。
「そう、そこがやっぱり、僕がゴミ清掃員を9年間やっていて、日本人に欠けていることかなって思いますね」
●もうひとつ、「ラストロング」という言葉もお好きっていう風にうかがっていますけれども・・・。
「そうなんですよ。ラストロングっていう言葉はアメリカの、言ってみたらひとつの思想みたいなことなんですけれども、直訳すると長持ちだとか、持ちがいいみたいなことなんですけれど、それの真意っていうのは愛しているものならば命なくなるまで使うっていう思想なんですね。やっぱり最後まで使い切るっていうことが大事だなと思いますね。
意外とだから、日本でいうと、もったいないが近いんですけれど、もったいないって捨てる時にまだまだ使えるじゃないかっていう気持ちだったりとかするんですね。ただこのラストロングっていうのは、買う時にちゃんと愛せるかなとか、愛しているものであれば、買ったあとに命なくなるまで使えるかなっていう気持ちが、ラストロングっていう精神だと多分思うんですけれど。
そうなるとやっぱりものを買う時に、これはちゃんと使い切れるかなって考えたりする、買う時に捨てる時のことを考えるみたいなことで、これを本当に愛せなければ買わない、これが意外とリユースに繋がったりするんですよね。だからとても大切な言葉だなと思います。日本でも流行ったほうがいいなと思いますね」
●番組を聞いてくださっているリスナーのみなさんに、改めていちばん伝えたいことってなんでしょうか?
「やっぱり僕がやりたいのは『使えるゴミの日』があったらいいな、なんて思ったりするんですよね。バンバンみんな使えるものを捨てたりするんですけど、もう一度なんか、リユースじゃないんですけれども、フリマアプリで売れるかなだとか、誰か貰ってくれないかなとかって、やっぱり考えたりすることって、それだけでもゴミが減ることになると思うんですよね。あとは買う時にこれは本当に最後まで使えるかっていうことを、みなさんに考えていただけると嬉しいなと思いますね」
INFORMATION
『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』
この本にはゴミ問題に対して斬新で野心的な取り組みをしている自治体が紹介されています。ゴミの収集や削減にかける各自治体の熱意を感じる一冊です。ぜひ読んでください。滝沢さんが言うように、各自治体がいいところはどんどん真似するようになればいいですね。主婦の友社から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。
◎主婦の友社HP:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b587092.html
滝沢さんのTwitterやYouTubeもぜひ見てくださいね。ゴミを減らすためのヒントがあると思いますよ。
◎滝沢さんYouTube:https://www.youtube.com/channel/UCyIxk4FS9xziPrnbxGQabEw
◎滝沢さんTwitter:https://twitter.com/takizawa0914
滝沢秀一さんの新しい本『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』をサイン入りで、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。メールでご応募ください。件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
flint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは9月17日(金)。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2021/9/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「じゅえき太郎」さんです。
じゅえきさんは1988年、東京生まれ。子供の頃から絵をかく仕事を志し、会社員を経て、現在はフリーのイラストレーター、画家、漫画家として、おもに昆虫をモチーフにした作品を発表。2016年には、草むらと昆虫をえがいた5メートルの大作で「第19回 岡本太郎 現代芸術賞」に入選。ちなみに「岡本太郎」さんはじゅえきさん憧れの芸術家でペンネームにある「太郎」は「岡本太郎」さんから来ているんです。
2019年には『すごい虫ずかん』で絵本作家としてもデビュー。また、この夏に出版された最新刊『もしもカメと話せたら』ではイラストを担当されています。
そんなじゅえきさんはTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」やYouTubeの動画でも注目されています。SNSの総フォロワー数はおよそ30万人だそうですよ。YouTubeには「君の名は。」のパロディで「セミの名は。」、そして大ヒット曲「香水」のパロディ「Gの香水」のアニメ動画を公開していて、絵はもちろんなんですが、歌や動画制作もじゅえきさんがやっているんです。
☆写真&イラスト協力:じゅえき太郎


パロディ「セミの名は。」!
※パロディの発想はどこからくるんですか?
「『香水』は瑛人さんの歌なんであれなんですけど(笑)、”夜中に〜”って最初に言うじゃないですか、”いきなりさ〜”って言ったところで、夜中にいきなりってゴキブリだよなと思って、そのまま全部作った感じですね。そういうワンフレーズだけを勝手にどんどん広げていくスタイルでやっていますね」
●「君の名は。」も「セミの名は。」で、ミンミンミンって面白かったです(笑)
「やっぱり『セミの名は』も『君の名は』から来ていますね。キミの名はを、セに変えただけでセミになるってなって、セミも結構外で恋愛していると思うと似てるなっていう感じがしませんか」
●面白いだけじゃなくて、ちゃんと生き物の生態を知ることができて、本当に学びにもなるというか。
「そうですね。学んでくだされば嬉しいですね。なんか笑っていたら分かっていたみたいな感じがいちばんベストですかね」
●まさにそうですよね。オリジナルソングもありますよね?
「『タマムシのうた』がありますね(笑)」
●あれも全部、演奏もじゅえきさん?
「一応そうですね。タマムシをたまたま見つけるっていうダジャレから思いついた歌ですね」
●歌とかギターは独学で学ばれていたんですか?
「そうですね。歌は小学校の時に合唱団に入っていたんですけど、その効果はあったのか、多分あったと信じております!」
●お上手です〜。本当に聴き入っちゃうくらい・・・。でもどうやって創り上げていくんですか?
「最初はさっきみたいに一言で、『夜に駆ける』のパロディで、『鳴く虫の夜に駆ける』とかもやったんですけど、あれも”騒がしい〜”っていう歌詞があって、騒がしいって言ったらクツワムシだなと思ったんです。そこから逆にずっと騒がしい虫を考えて、それに合わせて、最初に歌詞と歌を考えて、最後にアニメーションをどんどん付けていくっていう感じですかね」
※YouTubeで公開されているパロディ「セミの名は。」、そして「Gの香水」、ほんとによくできています。特に歌詞に注目ですよ。オリジナル・ソングのアニメ動画「タマムシのうた」もありますので、ぜひYouTubeをチェックしてみてくださいね。
夏休み、虫取り放題!
※じゅえきさんは、子供の頃から昆虫が好きだったんですか?
「そうですね。みんなそうかもしれないんですけど、やっぱり幼稚園の頃、ダンゴムシから入って、小学校1年生からもっとグンとハマっていったって感じですかね」
●何かきっかけはあったんですか?
「きっかけは小学校1年生の夏休みに、虫捕りをしていたんですけど、全然捕まらなくて。そうしたら現地の少年にたまたま会って、本当に絵本みたいな話なんですけど、水生昆虫っていう、タガメとかそういう虫がいるっていうことをまず教えてくれて。
一緒に虫捕りをしていたら、でっかいタガメがいっぱい捕れて、それがずっと楽しすぎて、もう毎年夏休みが楽しみな人生を送っていて、それが現在までまだ続いているっていう感じですかね」
●どこで虫捕りをされていたんですか?
「岩手県で虫捕りをしていました」
●どうして岩手で?
「母の実家が岩手で、おばあちゃん家の外がものすごい田んぼとかがあったんで、虫捕り放題の場所でした」
●今も昆虫を飼ったりとかはされているってことですか?
「もうたくさん飼っています」
●え! どれぐらい、何を飼ってらっしゃるんですか?
「クワガタ、カブトムシはいますし、タガメとかコオイムシ、水生昆虫もちょこちょこいたり、あとカエルがいて」
●へ〜! じゅえきさんは本当に昆虫と共に生きているっていう感じですね。
「そうですね。夜行性の虫が多いので、ヘラクレス(オオカブト)とか夜お腹が減ると部屋の中で飛びだすので、すごくガタガタっていって目が覚めたりしますね」

●そうなんですね〜! じゅえきさんが昆虫とか生き物のイラストを描くようになったのはいつ頃からなんですか?
「小学1年生の自由研究はカブトムシで、2年生はクワガタになって、カエルやって、カブトムシ、クワガタ、カエルみたいな連続だったのと、何を描くかって言われたら、虫以外あんまり想像つかなかったっていう感じですかね」
●虫を捕るだけじゃなくて、絵に描くっていうのもお好きだったっていうことなんですね?
「そうですね。これは僕の持論になっちゃうんですけど、ライオンとかを描いたらアフリカの人に勝てないんじゃないかっていう気持ちがちょっとあるんですよね。やっぱり日本を代表する日本の生き物で、日本人としてちょっと勝負したいってところがありまして。そうするとやっぱりカブトムシとかクワガタは日本にいる、側にいる虫なので、すごくやっぱり好きなんですよね」
顔が決め手!? リアル過ぎずに
※じゅえきさんの作品は、昆虫や生き物の特徴や生態を知ってないと、上手に描けないことも多いと思いますが、生態などは研究されているんですか?
「研究っていうか昔から部屋で飼っていたり、自分で虫を探したり、しょっちゅう家の周りとかでも虫探しはしている日常なんですね。勉強はそこまで得意じゃないんですけど、そうやって経験からなんとか得てきたもの、例えば(オンブ)バッタは下がメスだとか、意外とみんなデカいほうがオスっていう風に思っていたりすると思うんですけど、それをちゃんと勘違いせずに、リボンを下のほうに付けてメスだっていうことにしたり、色々キャラクター設定も変えています」
●擬人化した漫画チックというか、ゆるい作風っていうイメージがあるんですけれども、そういう風に擬人化してみようとか思われたのは何か理由があったんですか?
「それはもう小学校の時からずっと考えていて、なんか動物の擬人化は結構見るんですけど、昆虫の擬人化は図鑑とか見ていても、いいやつがいないっていうか・・・例えばミッキーとミニーがいるなら、カブトムシにもそういうキャラクターがいてもいいんじゃないかなって、小学校の時からずっと考えていたんですけど」
●へ〜〜!
「昆虫って顔がみんな違うんです。目の位置がすごく離れていたり、カブトムシだったらすごく近かったりするんですよ。しかも大体、うつ伏せ気味になっているので、どうしようかなーって悩み続けて、20代半ばで顔をはめ込もうって思いついたのが、今描いているゆるふわの顔で、顔は全員ここだっていう風に決めちゃったんですよね」

●じゅえきさんが昆虫の絵を描くときに何か心掛けていることとかってありますか?
「昆虫の絵を描くときに心掛けていることは、顔をはめ込んでいる以上、他の部分をある程度しっかり何の虫かって分かるように描こうっていうことと、あとやっぱり虫が苦手な方にも見てもらえるようにということで、あんまりリアル過ぎずに・・・結構(昆虫の)裏面が苦手って方が多いと思うんで」
●分かります!
「あ、そうなんですね(笑)。なんかそこはシンプルめに描こうかなと思ったりしていますね。あんまり毛とかを描くとね、皆、うわーっていう感じですよね。だからそういうのは省いて、徐々に慣れていってもらえたらなと思っていますね」
※じゅえきさんは昆虫を観察したりするために季節によって、いろいろなフィールドに行くそうですが、よく行くのが山梨で、とあるペンションでは夜に明かりをつけて虫をおびき寄せる「ライト・トラップ」を貸してくださるそうです。ここは虫好きには有名だとおっしゃっていましたよ。
シジミの顔、どうしよう〜
●じゅえきさんは先ごろ発売された本『もしもカメと話せたら』でイラストを担当されています。この本の設定が、浦島太郎の”竜宮城”ならぬ、優遇される”優遇城”で、カメに拾われてお城にやってきた人間の次郎くんが、水辺の生き物たちから周りとうまく生きるコツを学んでいくという内容です。

本にはカメやカエル、メダカやザリガニなど、水辺の生き物14種類の生態などが会話形式で面白おかしく紹介されています。特に私が気に入ったのがトンボの幼虫ヤゴで、嫌な環境バンバン避けようっていうことなんですよね(笑)。メスは秋に卵を産むけれど、卵のまま冬を越すんですよね。本にも、わざわざキンキンに冷えた環境に生まれる必要なくない? って書かれていて笑っちゃったんですけれども。
「無理する必要ないっていうことを教えてくれる虫なのかもしれないですね」
●都合のいい環境を選んで生まれてくるっていうことなんですか。
「素晴らしいことだと思います(笑)。そうじゃない虫ももちろんいると思うんですけれど、やっぱりそういう虫もいて、人間もあんまり無理しすぎないほうがいいっていうことを多分、文を書いたペズルさんは思っているんじゃないですかね」
●面白かったです〜。夏にヤゴからトンボになって、しばらくしたら山のほうへ行くっていうことで、これも暑いから涼しいところへ逃げるんだ、みたいな感じで書かれていました。
「僕らは冷房がありますけど、彼らにはないので、その辺は工夫して生きているんだなーっていう感じですよね」
●この本では、じゅえきさんのイラストがその面白さを倍増していると思うんですけれども、昆虫ではないので作画するにあたり難しかったこととかもあったんじゃないですか?
「シジミのキャラクターが出てくるんですけど、シジミってキャラクター化したことなくて、外側の貝の部分に目を付けるか、守られている中の部分に目を付けるかってなって。貝の部分に付けるとちょっとカエルっぽくなるのと、あとは貝の外壁の部分には目がないだろうと。なので内側の隙間に顔を全部(入れました)」

●確かに隙間からなんかほっこりした表情で笑ったりっていう・・・
「シジミは今まで描いたことが本当になかったんで、(最初は)結構シジミか〜とは思いましたね」
●この本『もしもカメと話せたら』を手にする方々に、ここを見て欲しい! っていうポイントってありますか?
「さっきもあったように、生き物の生態なんですけど、それを人間の考え方に置き換えているので、色んな考え方があるんですよ。さっきのヤゴとは逆にシジミは耐える型だったり、自分に合った生き物を見つけて共感してもらって、ちょっとストレスとかが減れば、いいんじゃないかな、嬉しいなと思いますね」
自分しか描けない昆虫の絵
※ところで、地球にいる全生物の6割が昆虫といわれています。ということは、地球は昆虫の星といってもいいかも知れませんね。
「そうなんです。それで例えば虫が苦手とか、嫌いっていう方はしょうがないですけど、でも地球の6割嫌いって思うと結構大変だなって思うんですよね」
●6割ってすごいですよね。
「すごいですね。もっといるかもしれないですよね」
●昆虫好きのじゅえきさんにとっては、どんなことを思われますか?
「まあたくさんいるな〜って思うのと(笑)、これからも新発見というか新種はバンバン出ると思うんです。やっぱりさっき言ったように苦手な人は辛いなと思うところもあって、それを例えば、僕のゆるふわの絵や漫画がちょっとでも好きとか触れるとか、それぐらいになったら、すごくなんか人の人生を変えられる、だって6割ですからね。外に行けばアリはいますし蝶々は飛んでいますから、好きになってくれた方が日常は華やかになるんじゃないかなと思いますけどね」
●これからじゅえきさんが描いてみたいっていう昆虫はいますか?
「描きたい昆虫はもう勝手にというか、毎日のように自分で描いているんですけど、今後描き方を考えたいっていう風に思っていて。リアルに描くだけじゃなくて、昔の江戸時代の絵師の人とかは、写真を見て描いていないじゃないですか。そういう絵を見ていると、なんか自分の思った空想の昆虫と合体していて、蝶々の柄とか正確じゃないんですけど、すごくいい感じなんですよ、自分の視点が入っていて。なので僕も写真に頼りすぎずに、自分がかっこいいなと思う、例えばカブトムシの角をちょっと大きくしてみるとか、そういう自分の考えを入れた昆虫を描いてそれを見てもらいたい、離れ過ぎずの昆虫なんですけどね」
●リアル過ぎないというか、ちょっとアレンジした昆虫ということなんですね。
「リアルは写真にお任せして、自分しか描けない昆虫っていうのをやりたいなと思っていますね」
●楽しみです! 改めて昆虫のイラストを通して、どんなことを皆さんに伝えていきたいですか?
「やっぱり虫はものすごく身近なので、キャーッて毎日なっていたら辛いだろうなと思うんで(笑)、怖くない虫は怖くないってちゃんと分かりつつ、だって圧倒的に人間のほうが強いですからね。スズメバチとかは別としても、こっちのほうが巨人みたいなものなので、そんなにビビらず仲良くしてもらえたらいいんじゃないかなと思います」
INFORMATION
『もしもカメと話せたら』
じゅえきさんがイラストを担当された新刊。カメやカエル、メダカなど水辺の生き物14種の生態などが、会話形式で面白可笑しく紹介。生き物たちから「周りとうまく生きるコツ」を学べますよ。じゅえきさんのイラストが面白さを倍増! ぜひ読んでみてください。
プレジデント社から絶賛発売中です。
◎プレジデント社HP:https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002420.html
じゅえき太郎さんのTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」、そしてYouTubeのアニメ動画もぜひ見てください。
◎ゆるふわ昆虫図鑑:https://twitter.com/64zukan
◎YouTubeのアニメ動画:https://www.youtube.com/channel/UCx352t4iA2OUvXCOM0p_lEw
2021/8/29 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アウトドアライフ・アドバイザーの「寒川 一(さんがわ・はじめ)」さんです。
寒川さんは1963年生まれ、香川県出身。アウトドアでのガイドや、災害時に役立つスキルを教える活動のほか、アウトドア・メーカーのアドバイザー、そして三浦半島の静かな浜で焚き火をしながら、ゆっくり過ごす「焚火カフェ」を主催するなど、幅広い分野で活躍されています。
そんな寒川さんが監修された本『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術 〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』がこの春に出版されました。この“新時代”というのがまさにコロナ禍の今だと思います。きょうは9月1日の「防災の日」を前に、寒川さんに防災力を身につけるための術や、実践的な具体例などうかがいます。
☆写真協力:寒川 一

新しい避難スタイル
●それでは早速、寒川さんにお話をうかがっていきましょう。この本の序章で「新しい避難スタイル」を提案されていますが、まずはそのあたりから、ご説明いただけますか。
「コロナ禍も、もう2年を迎えてしまいました。非常に厳しい状況が今も続いているんですけれども、この数ヶ月の間も大雨が降ったりとか、あと猛暑もひとつの災害と言えるんじゃないかなと思うんですよね。
そういう中で例えば、避難っていう指示が出た時に、今の状況を重ねてみると、共同で何かをする、もしくは共有するっていうのが非常に難しい時代になったのかなと思います。独立されたもののほうが好ましいかなというところで、キャンプというものを私は考えているわけですね」
●避難スタイルとしては、避難所に行ってもそこでキャンプするようにテントを張るっていうことですか?
「まあ、これはシチュエーションが色々考えられると思うんですね。例えば冬場で、非常に寒い中で、体育館の中っていうのは、今まで過去の映像なんかでもご覧になられた方がたくさんいらっしゃると思うんですよ。プライバシーがないっていうのと、あと寒いっていうことを、何か改善する方法としてテントを張るっていうことは、ひとつ大きな方法かなと思うんですね。
共同で皆さんが集まっているところで、キャンプをそこで展開するっていうのは、モラル的に難しいとか、そこを管理されている方の問題もあると思うんですよね。その辺がある程度クリアできてという条件の上で、キャンプをするっていうこと自体は非常に、先ほどの話じゃないですけれど、独立された形にできるっていうところが非常に有効かなという風には思います」
●この本には車で避難ということも書かれていましたけれども。
「そうですね。僕自身も車っていうのは、これも状況によりますけれども、非常に有効なシェルターだと思っているんですね。ひとつは、場合によったら家屋より非常に駆体がしっかりしている。エンジンがかけられれば、例えば空調、夏はエアコンが効いたり冬は暖房が出たり。あと最近ナビゲーションを備えている車が多いと思うんですけれども、そこから色々な情報を得ることも可能です。で、鍵がかけられたりとか、まあ何が何でも車がいいというわけではなくて、場合によっては車もシェルターとして考えておくっていうことはいいことかなと思いますね」

まずは水の備蓄、そしてローリングストック
※避難所に行かないという選択肢もありますか?
「そうですね。これも先ほどの件と同じでケースバイケースの判断が必要になると思うんですけれども、まずはやっぱり自宅が安全であるっていう大前提が必要ですよね。例えば家屋の倒壊の恐れがないですとか、あと環境的に、周りに大きな川があるとか、裏にすぐ隣接した山があるような状況じゃなくて、家が安全であるという状態であれば、かえって動くより自宅で待機する形は十分にありかなと思います」
●そうなると備えも本当に大切になってくると思うんですけれど、食料を含めた備蓄品というのはどのくらい備えておけばいいんですか?
「これもね、分量を例えば、このくらいですという風に言えれば、すごく簡単なんですけれども、これもやっぱりご家族の構成であったり、年齢であったりで用意するものも随分変わってくるとは思うんです。
実際、僕らがいちばん重要だなと思っているのはやっぱり水なんですよね。仮にライフライン、水道が止まってしまった際に、やはり通常アウトドアとかサバイバルの世界で言われているのが、水は3日以内に、飲料水を確保するというか飲まなければ、人間がやっぱり(健全な状態を)保っていられなくなるということを考えると、水の備蓄にまずは重点を置くべきかなと思います。
あとは食べ物自体は、その法則で言えば、しっかりお水さえ飲んでいれば、人は3週間から30日、生命を落とすことはないと言われているんですね。そのためにはしっかり体温を保つとか、ほかの条件もある程度必要になるんですけれども、食料品がまず第一にあるということではないということですよね。
お家の中に食べ物がまるっきりないっていう方も、なかなかいらっしゃらないとは思うんですけれども、ある程度、普段から缶詰であったりとかパスタみたいな保存食を備蓄しておく。賞味期限があるものもありますので、そういうのをなるべく賞味期限前に消費をして、またそこに買い足しておく。
これ”ローリングストック”って言うんですけれども、常に一定量の備蓄、食料の在庫が家にあって、期限が切れる前にそれを食べてしまうってことですよね。で、また買っておくと。それを繰り返していれば、ある日突然、災害が来ても一定量の食品がお家にあるということになるわけですよね」
*補足:お話に出てきたサバイバルの法則、これはアウトドア界では「サバイバルの3の法則」と呼ばれていて、いずれも「3」という数字に関連しています。
まず、体温は適切に維持できなければ、3時間しか生きられないそうで、季節に応じた防寒の備えが必要。続いて、水分を摂取できなければ、3日程度しか生存できない。つまり水が最も欠かせない備蓄品。そして最後は、食べるものがなければ、30日ほどしか生きられないそうです。「サバイバルの3の法則」を参考に備えるのもいいかも知れません。
優れものの浄水器
※避難せざる得ない時の、非常用の持ち出し品でキャンプをやっている人ならば、最低限どんなものを持ち出せばいいですか?
「今キャンプの人口が非常に増えていますけれども、持っているものって結構バラバラかなという気もするんですね(笑)。そんな中でも共通しているだろうと思えるものが、ヘッドライト。今、手もとに用意しましたけれども、頭に付けるライトですよね」
●あ、はいはい! 両手が空きますよね?
「そうですね。向く方向が照らされるっていう非常に合理性も高いですし、おっしゃる通りで手が空くっていうのは何よりもの恩恵だと思います。これは家族で1個ではなくて、ひとり1個、個人装備に当たるものなので、キャンプやっている人だったら大抵持っているんじゃないのかなと思いますね。まず、何はなくてもヘッドライトはお持ちいただきたいなと思います。あと、浄水器を今見せていますけれども・・・」
●えー!? そんなに小さな浄水器があるんですか?
「そうですね。これ、アウトドアの専門店で販売されています。これに例えば、ペットボトルを簡単にジョイントできるんで、汚れた水を入れたペットボトルを付けていただいて、ちょっと手で押してやれば、先端から浄水されたお水、そのまま飲めるお水が出ます。
このサイズで38万リットルの浄水力がある、38万リットルってちょっと想像できないと思いますけれども、1日10リットルぐらい浄水したとして100年以上もつっていう、言ってしまえば、一生使えるぐらいの能力を持っているものが、本当にこんな小っちゃなサイズで、数千円で手に入るんですね。こういうものがあるかないかで、さっきのお水をどれだけストックするかが変わってくるんですよね」
●確かにそうですね!
「お風呂の汲み置きなんかされるお家も結構ありますよね。いざという時のために。そのお風呂のお水をそのまま飲んでしまうと、当然そこの中には菌が入っているわけで、大腸菌とか見えない菌がたくさんあると思うんですけれども、お風呂の貯め置きの水だったら、これ一発でそのまま飲むことが可能です。
そういうようなアウトドアの用品で、割とコンパクトですぐ持ち出せるようなものを僕は非常持ち出し品として、枕より少し小っちゃいサイズの、手で簡単にさげられる防水のバックなんですけれども、この中に非常時のすぐ持ち出せるものは常に入れてあります。先ほどの浄水器だったり、ヘッドライトがこういう中に入っているって感じですね。


災害はどこで遭うか分からないっていうことがありますので、例えば自分の長くいる場所、自宅はもちろんのこと、会社であったり、出先でも長時間いるような場所に、ある程度のものは備えておきたいなと考えますね。
防災袋って、皆さんそれぞれそれなりには何かご用意されていると思うんですけれど、それをちゃんと手に入れられるかどうかは、すごく重要なことですよね。いくらお家の中に素晴らしいものがあっても、すごく離れた場所で災害に遭われたっていうこともありますので、僕は今の非常持ち出し用品と、あと一時避難用品、二次避難用品っていう三段階に分けて、ものは持つようにしているんですね」
*補足:寒川さんは非常用持ち出し品のほかに、一次持ち出し品として、1週間程度、外で過ごせるようにキャンプ道具を一通り、大きなザックに入れて用意。また、二次持ち出し品は1ヶ月程度の避難を想定して、日用品などもそろえ、大きなコンテナに保管して持ち出させるように準備されているそうです。どんなものを用意するのかは、寒川さん監修の本『新時代の防災術』をご覧ください。
自分なりの持ち出し品をデザイン
※寒川さんは、本の中で自分なりの持ち出し品をデザインしようと提案されています。そろえる時のポイントはありますか?
「僕の場合はやっぱりさっきの非常持ち出し袋の中に最低限のもの、どちらかというと生きるための道具に加えて、あとパーソナル品って言うんですかね、僕個人の必要な大切な物っていうのはやっぱり入れてあります。それは具体的に何かというと、ひとつはメガネが僕、重要なんですよね。もし災害時に何らかでメガネを失ってしまうと、場合によったらちょっと命取りな場面も、見えないっていうことで、そういう可能性もあるなと思って、スペアのメガネをまずは入れています。
それ以外にも例えば家族の写真ですね。家族の写真をなぜ入れてるかっていうと、東日本大震災の時にすごく大勢の方が、もう家財道具はなくなってもしょうがないけど、家族の写真だけは取り返したいんだっていう方が圧倒的に多かったんですよね。やっぱりそういう心情に絶対なるんだろうなと思って、まあ家族の受けもいいんでね、それ入れておくとね(笑)。
あとすぐに使えるような現金ですとか、保険証やパスポートのコピーとか控えみたいなものも中に入れて、そういう個人を表すものとか、個人的なものを非常時の持ち出し品の中に入れていますね」
●なるほど。今の時代、感染症対策もしなきゃいけないですよね。マスクだったり除菌スプレーだったりっていうものも必要ですね。
「そうですね。もちろんマスクも入っています」
“備える”より“備わる”
※この番組では以前にも寒川さんにご出演いただいて、アウトドアの道具がいざという時に役立つ、そんなお話をしていただきましたが、キャンプ用の道具を揃えただけでは、だめなんですよね?
「実際、道具を揃えるっていうこと自体は、まずはそこから始まるとは思うんですけれども、この今の時代は、ものを備えているっていうのはある意味当たり前で、どちらかというと、その備えた道具をどういう風に活用ができるかとか、使う技術ですね。それが”備える”という言い方をするんであれば、”備わる”という言い方に変えたいなと。
英語が分かりやすいんですよ。”Prepare (プリペア)”っていうのは、ものを用意するっていうことですよね。備わるっていうのは、僕らは”Install(インストール)”っていう言葉を使うんですけれど、自分の中にそういうものを使う能力をちゃんとインストールしないと、結局いくらいい道具とか、たくさんのものを備えていても、使いこなせないっていう可能性が出てくるということ。それぐらい今は現実的になってきたということですよね」
●この本にもキャンプは日常でできる避難訓練と表現されていますけれども、やはりキャンプをしていると知らず知らずうちに防災力は身に付いてくるものですか?
「キャンプ自体がライフラインの少ない場所で、衣食住を組み立てるって言えばいいんですかね。言い換えればキャンプなわけですけど、ライフラインの少ない場所で衣食住を組み立てるのは、本当に災害時そのものだと思うんですよ。なので知らず知らずというよりかは、もう本当にやることなすことが全て生きるに繋がっているという、災害防災に役立つというより、もうひとつ奥側なのかもしれないですね。人が生きていくっていう上で必要なことをしっかり身に付けるっていうことかなと思っています」
●小さい頃からキャンプの経験をしておくっていうのは、すごく大事なことかもしれませんね。
「そうですね。知識だけではなくセンスが身に付くっていうんですかね。生きた何か知恵みたいな形がやっぱり小さな子供の頃からやっていれば、頭に入っていくというよりか、体に染み込むんじゃないのかなと思いますけどね」

人そのものがライフラインになれる
※寒川さんは鎌倉で「スタディトレッキング」というワークショップを開催されていますが、どんなことをやっているんですか?
「スタディトレッキングは実際学びながら歩くっていう、ちょっと造語というか、そういうタイトルなんですけれども、鎌倉の近隣の山を、実際山歩きをしながら、その途中で燃料になるようなものを見つける、それとあと湧き水も探します。結構ほかの町でも応用の利くことではあるんですね。実際、自分で自然の中から集めた燃料と水を使って自分で火を起こして、それで自分でランチを作る、そういうツアーをやっています。もう4年ぐらいやっていますかね」
●どんな道具を持っていけばいいんですか?
「それは全部こちらでお貸し出しするんですが、先ほどの浄水器とか、あと拾った燃料でお湯が沸かせるヤカンがあるんですね。ちょっと特殊な形をしているんですけれども、ガスとか使わなくて、調達した燃料で沸かせるヤカンと、あと火が起こせるナイフ、それらをお貸しします。これ、どなたでも時間さえかければ(できます)。今までできなかったって人はいないですね」
●参加者の皆さん、どんな反応されていますか?
「やっぱり防災っていうものに対しての意識も変わると。いわゆる何を持っておくべきかっていう意識自体が変わるとおっしゃる方が多いですね。あと百聞は一体験にしかずというか、やっぱり体験しておくことがすごく大切なことだっていう風に皆さんおっしゃいますね」


●防災という観点から、キャンプの初心者の方にアドバイスするとしたら何かございますか?
「そうですね。せっかくキャンプを始めたということであれば、きょうお話ししたような、テントに泊まって美味しいご飯を食べてっていうのも、もちろんキャンプの楽しみ方だと思うんですけれども、自分の力で例えば、燃料を探してみるとか、浄水をしてみる、火起こしができるみたいな、これ逆に言えば、お家の中だとなかなか体験できないことなんですよね。
それを是非キャンプで、自分の力で生きる何か方法をしっかりと身に付けていただきたいなと思いますし、その分やっぱり自然を楽しんでいただきたいというか、自然から色んなものが得られるんだっていうことを知っていただきたいですね」
●改めてこの本『新時代の防災術』の読者の方に、いちばん伝えたいことは何ですか?
「きょう色々お話ししましたけれども、実際アウトドアを楽しむ、道具を使いこなすっていう話もしましたが、何より僕が今回の本でいちばんお伝えしたかったのは、技術と道具をさらに人の心がそれをうまく使いこなすんだよというマインドの部分ですね。
今、アウトドア人口って非常に増えていますから、そのアウトドアをやる人たちがそういうそのマインド、マインドっていうのはもっと分かりやすくいうと、災害時には人助けをしようっていうことですね。自分が持っている道具とか技術をちゃんと自分自身にもちろん使って、自分自身プラス人に使えるっていう、自助と共助っていう言葉になるんですかね。それが個人ができるっていうことです、アウトドアであれば。
それを多くの人が実際に実行できるようになったら、人間がライフラインになれるんじゃないのかなっていうことですね。ライフラインは外側からあるものですけれども、アウトドアをうまく活用すれば、人そのものがライフラインになれると僕は信じています。是非そういう方向に皆さん来ていただきたいなと思いますね」
INFORMATION
『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術
〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』
寒川さんが監修されたこの本にはきょうご紹介できなかったお話で、例えば、避難を強いられた時に、温かいものを食べるとモチベーションにつながるとか、極力、水を使わずにジッパー付きの保存用ビニール袋でご飯を炊く方法など、緊急時に役立つアイデアやヒントが満載です。寒川さんが使っている非常用の持ち出し品なども写真入りで解説。どんなものを備えればいいのか、明確に見えてくると思います。もしものときの心強い味方になる一冊! ぜひ参考になさってください。学研プラスから絶賛発売中です。
また『焚き火の作法』という新刊が9月末に同じく学研プラスから発売予定です。
詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎学研プラスHP:https://hon.gakken.jp/book/2380158500
寒川さんのイベントや最新情報についてはFacebookをチェックしてください。
◎寒川 一さんfacebook:https://www.facebook.com/hajime.sangawa
2021/8/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、フリーエディターそしてライターの「棚沢永子(たなざわ・えいこ)」さんです。
東京都府中市在住の棚沢さんは、詩の雑誌の編集業を経て、現在はフリーランスのエディター、そしてライター、さらに福岡にある出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」の東京スタッフとしても活動されています。
そんな棚沢さんが2017年に出された本『東京の森のカフェ』が好評で、新たなお店を追加するなどリニューアルを重ね、ロングセラーとなっています。
きょうは棚沢さんと、東京の森カフェめぐり。知る人ぞ知る素敵なカフェをご紹介します。
☆写真協力:棚沢永子

意外と緑が多い東京
●ご自身でどんな点がロングセラーにつながったと思いますか?
「こんなにたくさんの方に手に取っていただけるなんて思ってもみなかったので、自分がいちばんビックリしております。東京の人がいかに緑を求めているかっていうのを逆にこの本で知ったという感じでした。
表紙を緑でいっぱいにしようよとか、写真も大きめに入れたいねとか、章立てなんかも工夫したりとか、色々工夫はしましたけど、本はひとりで作るものではないので、編集者さんとかデザイナーの方、あと書店さん、掲載店の方とか読者の方もね、みんなで一緒に作って一緒に応援していただいた、それがやっぱりロングセラーにつながったんだなという風には思っています」

●東京の郊外、例えば奥多摩あたりですと、森に囲まれたカフェがあるっていうのはイメージできたんですけれども、この本を読んでいたら、都心にも森を感じるカフェっていうのがあるんですね!
「そうですね。東京って意外と緑が多くて、高層ビルとかごちゃっとした街並みのイメージが強いですけど、公園なんかもたくさん整備されていると思うんですよね。
東京に森とか自然を作ろうっていう風に意識的にそういうことをしてらっしゃる方たちも多分たくさんいて、例えば大手町の駅を出たところに突然のように森が出現したりとかね。東京駅の隣の”KITTE”っていうビルも屋上庭園みたいなものを作ったりとか、あるいは目黒の高速のジャンクションの上に天空庭園なんて作ったりなんかして、森が出来上がったりとか、そういう風に意識的に作っている人たちもいると思うんですね。デパートの屋上なんかでも割と最近では木をたくさん植えたりとか、緑をたくさん入れているような動きもあると思います」
●南麻布とか表参道とかにもこんなに緑豊かなお店があったんだ! っていう風に驚きました。この本に掲載するかどうかの基準っていうのはどうやって決めているんですか?
「基準っていうか自分にとって居心地がいい場所、気持ちのいいところ、面白いなと思えたところを入れるようにしました。ただ綺麗とか、お洒落とかだけじゃなくて、自分は面白好きなのかなって、やってみて思いましたけど(笑)、評判がよくても行ってみて、ピンと来なければ入れなかったかな。なんとなく緊張するなとか、静かにしてなくちゃいけないとか、椅子が硬くて腰が痛いとかね、ちょっと高いなとか、そういうところは外しました」
それぞれのストーリー
※本に掲載されているカフェは、どのお店にもストーリーを感じるんですが、その辺は意識して取材されたんですか?
「そうですね。結局取材を申し込んでお話を聞いているうちに、やっぱり皆さんすごく物語を持っているじゃないですか。それは聞いていくうちに分かってきたことなんですけどね、それを書きたくなった。逆にただのカフェ案内じゃなくて、そういうものを書きたくなって、ちょっと本の方針が見えたかなっていう、自分の中でもちょっとね、だんだん変わっていったというか、そんな感じで作ることになりました」

●単にカフェの紹介をされているだけではなく、温かみがすごく感じられました!
「店主の方、皆さん、すごくいい方が多くて、本当に何でも喋ってくださってね」
●お話を聞く中で、特に印象に残っているストーリーってございますか?
「はい、お客様で転勤になっちゃって、20年ぐらい(店に行くのに)間があいちゃった人がいるんですって。それでその人が昔、マンデリンをいつも頼んでいたので、扉が開いて顔を見た途端にパッてそれを思い出して、“きょうもマンデリンでよろしいですか?”って。本当にすごく久しぶりなのにそれが出来るってすごいですよね。やっぱり流石、お店をやっている方ってすごいなって、それを聞いた時に思ったんですけど、そうしたらそのお客様がね、”覚えていてくれたんですか!”って言って、そういうエピソードなんかもありました」
●そうですか・・・中には歴史を感じるような場所もありますよね?
「そうですね。すごく素敵な築350年の庄屋屋敷を移築してきたりとか、東京の西のほうってお蚕さんの産業が盛んでしたから、そのお蚕さんの製糸工場の女工さんたちの宿泊の施設を、そのまま和カフェに持ってきたところもあったりしました。
町田に白洲次郎記念館ってあるんですけど、そこにカフェが併設されていまして、白洲次郎さんっていうのは戦後処理で憲法作りに関わったりとか、当時日本でいちばんかっこいい男って言われた人らしいんですけど、そういうところを取材したりもしました」

本当は内緒よ
※森を感じるカフェは郊外になればなるほど、行くのに不便だったりすると思うんですが、それでもお客さんで賑わうのはどうしてなんでしょうね?
「不思議ですよね。私も不思議だと思いました。ただ、もちろんそれぞれ工夫もしてらっしゃると思うし、特色を出すような努力もされていると思うんですけれど、今SNSの時代ですから、発信力とか、そういうことも駆使して皆さんやってらっしゃるかなっていうのは思います。
でもやっぱり、カフェのポテンシャルっていうんですかね、魅力がないと続いていかないだろうなって。本当に行けば行くほど、リピーターの人が多いっていうのは感じましたね。ずっと何度も、毎回来る度に寄ってくれるみたいな人が多いみたいです」
●特に棚沢さんがおすすめのカフェをあげるとしたらどちらになりますか?
「どこも大好きなのでね、なかなかちょっと絞りきれない(笑)。日野に“クレア ホーム&ガーデン”っていうカフェがありまして、ちょっと広いお庭で、建物をご主人が自分で、チューダー調のイギリスのお屋敷みたいな建物を建てちゃったりとか、エキゾチックな東洋の雑貨がいっぱい置いてあったりとか、そういう雑貨なんかもすごいんですけど、ママさんのお人柄が地球規模の肝っ玉母さんって言うんですかね(笑)。
本当に考え方がとても素敵で、盲導犬リタイアの子を引き取って、その看板犬にしたりとか、あるいはWWOOF(ウーフ)と言って、外国から日本に旅行に来られる方に、無償で泊まらせてあげて、代わりにお店の手伝いとかね、パンを焼いたりとか農作業を一緒にしたり、そういうことをやってもらったりとかね。本当に小さい虫から動物も外国の人もみんな一緒に地球号に乗っている、みんな一緒だよって、そういう考え方はすごく素敵なのね。そういうところもありましたね。

あと“コンブリオ”っていう青梅の奥のほうにある喫茶店なんですけど、本当にお客さんファーストのこだわりの店で、最初マスコミNGだったんですね。すごく素敵で、CMとかドラマ(の撮影)とかでオファーがいっぱい来るんですけど、ひとつも今まで受けてこなかった。
私が申し込んだ時も最初ダメって、受けませんって言われたんですけれども、話をしているうちに受けてくださったんです。本当にお客さんのことを大事にしていて、夢のような調度品があって、なんか日常と切り離されたような場所ですね。本当は内緒です(笑)」

看板メニューは“おかかピラフ”!
※棚沢さんはご自身でもカフェをされていると聞いたんですが、そうなんですか?
「これも本当にたまたまなんですけどね、叔母のカフェ(*)をその(本の)中にひとつに入れたんですよ。多摩川が近くてね、そのカフェ自体は街中にあるんですけど、ちょっと歩くとすごく気持ちのいい自然がたくさんあるようなカフェなんですよ。
そこを去年、ちょっと体の具合があまりよくないので、そろそろリタイヤしようかっていう話が出ました。それで子供がいないので、私たちに相談が来まして、廃業の手伝いをしているうちに、あまりにやっぱり雰囲気がいいし、常連さんがたくさん付いているし、もったいないねって話になって、じゃあ思い切ってやっちゃおうかって言って、この4月の末から引き継いで、カフェの仕事もちょっとやるようになりました(笑)」
●実際に棚沢さんがコーヒーを入れたりとかもされるんですか?
「やりますよ。どっちかっていうと夫のほうがコーヒー担当で、私が料理担当なんですけど、お客さんがみえると、この本を持って来てくださったりなんかして、とても嬉しいですね。自分の本を見て来てくださるってね」
●看板メニューは何ですか?
「“おかかピラフ”という、醤油ベースのピラフに鰹節を乗せるんです。そうすると鰹節がふよふよ〜っと幸せな感じで湯気で踊るんです。それが割と評判がいいかな(笑)。それは元店主の直伝なんですけどね。評判がよかったので教えてもらってやるようになりました」
●ちゃんと引き継がれているわけですね。
「そうですね。本当に常連さんが多い店なので、その常連さんたちにも居心地がいいように、また、新しい人たちも楽しんでいただけるように、音楽と本と料理とコーヒーという、そういうお店を今頑張って作ってやっております」

(*)棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」は、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩3分ほどのところにありますよ。営業日など含め、詳しくはケトルドラムのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ケトルドラム:https://kettledrum2021.wixsite.com/cafe
小さな旅の本
※今はテレワークということで、ご自宅で仕事をされているかたも多いと思います。リフレッシュのために散歩をされているかたもいらっしゃると思いますが、ご自宅の近くで、森を感じるカフェを探してみるのもいいと思うんです。棚沢さん、どうでしょうね?
「意外と近くにもあると思うし、カフェじゃなくても、なんか雑貨屋さんとかでもいいし、ちょっと扉を開けてみる。初めてのところって扉を開けるのに勇気がいるじゃないですか。でもちょっと気になればね、いい機会だからちょっと開けてみるといいんじゃないですかね」
●改めて、この『東京の森のカフェ』を読まれた方にどんなことを感じてほしいですか?
「この本はどちらかというと、カフェ案内というより、小さな旅の本だという風に私自身は思っています。東京はカフェにしても、何にしても、とてもバラエティに富んで面白い街ですね。
なかなか今、遠出するような旅はできないですけれど、だからこそ身近な自然にちょっと目を凝らしながらね、いろんな場所を訪ねて、色んな人とちょっと話をしたりしてね、自分の好きな場所を見つけていただければいいなと。この本が手がかりにちょっとでもなれば嬉しいなと思っています 」

INFORMATION
『東京の森のカフェ』
緑がいっぱいの表紙を見ているだけで癒されますよ。掲載されているカフェは36軒、それぞれにストーリーを感じるカフェばかりです。写真も素敵で、実際にお店の雰囲気や、コーヒーなどの名物メニューを確かめたくなります。棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」も掲載。この本を持って、カフェめぐりをするのもいいかも知れませんね。書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
2021/8/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、お笑いタレントの「じゅんいちダビッドソン」さんです。
2015年に、サッカー選手「本田圭佑」さんのネタで「R-1ぐらんぷり」優勝! その後もテレビやラジオ、イベントなど、様々な分野で活躍されています。最近では、どハマりしている趣味のキャンプが高じて、YouTubeにキャンプ動画を配信。なかなかうまくならず、失敗ばかりすることから“へたキャン”と呼ばれるようになり、これが大好評! チャンネルの登録者は15万人を超えているんです。また、先頃『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されました。
きょうはそんな「じゅんいちダビッドソン」さんに、じゅんいちさん流のキャンプの楽しみ方や、芸人仲間と行くちょっと変なキャンプのお話などうかがいます。
☆写真協力:主婦の友社

へたでも楽しいキャンプ
●今週のゲストは、今やキャンプ芸人として大人気のじゅんいちダビッドソンさんです。 きょうはよろしくお願いいたします。
「お願いします。この間も喋っていたんですけど、キャンプ芸人って言われるけど、キャンプ芸人ってなんやねん!?(笑)」
●(笑)でも、本当に空前のキャンプ・ブームですよね?
「そうですね。割とこの2年ぐらい前から、コロナもあってなかなか居酒屋さんとか行けないから、じゃあキャンプ場なら大丈夫だろうということで、結構始めた方が多いんじゃないですかね」
●芸能界でもやっぱりキャンプ好きな方は多いんじゃないですか?
「多いし、乗っかって増えていると言うか・・・僕もちょっとブームになる直前ぐらいから始めたんですけど、ヒロシさんとか、バイキングの西村君とかに誘われて始めて。焚火会というソロキャンプ好き芸人軍団でやっているんですけど、そうじゃない人も結構ちょこちょこ最近増えていますね」

●多いですよね。そんな中、じゅんいちダビッドソンさんは先頃、新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されましたけれども、私も読ませていただきました。
「どうでした? 読んでみて」
●失敗談も多く載っていて、”あ、完璧じゃなくてもいいんだ!”っていう風に思えて、これなら私もできそうかも、やってみたいっていう風に思えました。すごく楽しく読めました!
「本を出す時なんとなく、芸人なんで、ルールとして嘘をつかんとこうと思って。だからキャンプのルーティーン編みたいなページがあるんですけど、一応嘘つきたくないから、本やからルーティンを載せているけど、“普段は毎回違いますよ”とか、ちゃんとコメントで入れてるんですよ」
●ありましたね、注釈が(笑)
「やっぱりよく言われるのが、へたキャンとかも誰かが言い出したことなんですけど・・・なんならうちの嫁に言われだしたんかな?」
●へたキャンは上手、下手の下手ですよね?
「そう、なんかね、失敗多いんですよ。うっかりなんか忘れたりとか、うっかりテントが風で飛んでいったりとか、そういうのが多くて、YouTubeでそういうのをディレクターが面白がって流していたら、それをテレビ番組が取り上げて、嫁がそれを見て、“あなた、すごいね”と、“へたキャンっていう新しいジャンルを築いたね”みたいなこと言われて。
それを僕がTwitterでこんなん言われたって書いたら、周りが“へたキャン、へたキャン”言い出して、なんか僕が出すコンテンツ、全部へたが付くんですよね。これも『へたキャン入門』でしょ? 1年前に出た本も『へたキャンご飯』でしょ? レギュラー番組も『下手なキャンプでごめんなさい』って言って、こっち望んでないんですけど、周りが勝手にへたありきでコンテンツを作るんで(笑)」
●失敗するキャンプだからこそ楽しいっていうことですか?
「いやいや! 失敗しないほうが楽しいですよ! ただ、失敗しても、例えばキャンプ行きましたと、こんな料理、カレーライス作ってみたいと、作りました。ちょっとまずかった、でもそれもいい思い出になりますよって、それもキャンプ。
家でまずかったら、ただまずいだけやけど、キャンプで焚き火して、みんなで作ったカレーがまずかったら、なんやねん! っていう思い出になるし、もちろん美味しいほうがいいんですけど、例え失敗しても怪我とかするような失敗じゃなければ、楽しめるっていう・・・」
●それも含めての思い出になりますよね。
「と、僕は思いますけどね」
●そもそもキャンプに目覚めたっていうのは、昔からってわけではないってことですか?
「でも小っちゃい頃、好きで、たまに父親に連れて行ってもらったりとかしていたんですよ。大人になってからは、どっちかというと魚釣りが趣味で、休みの日は釣りばっかり行ってたんですけど、ある時さっきも言いましたけど、ヒロシさんとバイキングの西村君に誘われて、キャンプに1回行って一瞬でハマって、そこからどっぷりですね」
●すぐに自分でグッズ買ってみようとか!?
「いや、もうなんなら、その日のキャンプ中にAmazonでテントを注文しました」
●ええ!?
「そう、家に帰ったらもう届いていて、そのテントを持ってもう1回キャンプに行きました(笑)」

僕らは“ソログル”キャンプ
※ところで、キャンプのノウハウは、誰かに教わったんですか?
「ノウハウは、僕もそうですけど、一緒に行く仲間に特に教えもしないし、教わりもしないし、なんならネットで調べたりする人が多いんですかね。僕の場合はもうやってみて、あかんかったらまた次、違うやり方してみたいな。で、なんとなく学んでくるというか、別に正しいやり方を知らなくても、僕、何百回もキャンプをやっていますけど、未だになんかロープの、ロープワークって言うんですけど、結び方とか1個も覚え切らなくて、ずっと我流ですよ。それでもなんとかやれているんで、別にそれでもいいかなと思っていますよ」
●初めてヒロシさんたちに連れていってもらって、何がそんなに楽しくてハマったんですか?
「もともとそのふたりとも仲良かったので、その仲の良い友人と、真っ暗闇の中で焚き火をぼーっと見ながら、特に大はしゃぎするわけでもなく、淡々とお酒を飲むっていう、この贅沢な雰囲気と空間というか、こんないい時間があるんやっていう風なハマり方ですよね」
●YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」にキャンプの動画もたくさんアップされていますけれども、芸人仲間の皆さんと行く時も、それぞれソロキャンプしているっていう感じなんですね。
「そうですね。だから本当にそのやり方も良くて、僕らの仕事って時間もバラバラじゃないですか。だから入る時間も帰らないといけない時間もバラバラなので、それぞれがソロキャンプっていうこのスタイルが良かったんですよね」
●好きな時に好きなものを食べるとか、本当に食事もバラバラですし・・・。
「バラバラですね。たまにちょっとお裾分けはしますけど、眠くなったら先輩後輩、関係なく寝ますし。だからそれこそ朝起きたら誰もいない時とかありますから」
●本当ですか?(笑)
「あります、あります! 朝起きたら誰もいない時もあるし、4〜5人残ってんのに自分ひとりだけ、朝4時に起きて撤収して帰らないといけない時とかもありましたね」
●基本的にはソロ・キャンプをされているってことですね?
「そうですね。だからその焚火会のメンバーで一緒に行って、誰かと何かを共同でやったことは1回もないですかね。なんとなくそれぞれやっていて、なんとなく誰かの焚き火の周りになんとなく集まってきて、なんとなく帰っていくみたいな、そういう集団というか、やり方というか・・・」
●みんなで同じテントにとかではなくて、やっぱりソロっていうことに意味があるということですか?
「そもそも、みんなまあまあおっさんなんで、おっさん同士みんなで同じテント(に寝るのは)イヤでしょ? だからソロで良かったなってすごく思いますね」
●ソロ・キャンプの良さって何なんですかね? やっぱり自分の空間があるとか!?
「そうですね。やっぱり自分のペースでやっているけど、でもその空間は友人と共有しているっていう、僕ら”ソログル”とかいう言葉で言っているんですよ。ソロ・グループ・キャンプみたいな。ひとりのペース、自分のペースは乱されないけれども、場所を共有している楽しさもあるみたいな。だからいいとこ取りっていうか、もちろんその分それぞれお金はかかるでしょうけど」
●程よい距離感で楽しめるんですね。
<焚火会、TAKIVILLAGE>
お話に出てきた、ソロキャンプ好きな芸人さんのグループ「焚火会」、メンバーはヒロシさん、バイキングの西村さん、うしろシティの阿諏訪さん、とろサーモンの村田さん、ベアーズの島田キャンプさん、ウエストランドの河本さん、スパローズの大和さん、インスタントジョンソンのスギ。さんで、現在は9人だそうです。
キャンプによく行くエリアは、都内から車で行ける場所ということで山梨、神奈川、群馬、千葉あたりが多いそうですが、千葉でおすすめのキャンプ場として、いすみ市のTAKIVILLAGE(タキビレッジ)をあげてくれました。ネットで調べたら、高台の開けた場所にあって周りは雑木林という絶好のロケーション、フリーサイトでかなり良さげな感じでしたよ。
◎TAKIVILLAGE HP:https://takivillage-camp.site/
山林を賃貸!? プライベート・キャンプ場
●奥様と一緒にキャンプに行かれた時も、ハンモックを張るのにかなり手間取っていた様子をYouTubeで見たんですけど(笑)
「僕、ハンモック苦手でね(笑)。だから諦めたんですけど、今までハンモックを張って、朝起きたら大体、下の地面に付いてることが多くて」
●下調べとかもせずに臨まれていた様子がYouTubeに載っていて、奥様からもかなりつっこまれていましたけど。
「うちの嫁が、僕のいじり方がすごい上手いみたいで、YouTubeの“ちゃんねるダビッドソン”にあげているんですよ。なんか一定数、うちの嫁ファンがいて、顔は出させていなくて、声だけなんですけど、最近“嫁ットソン”出ないんですね、とかコメントが来たりするんですよ。結構つっこまれましたね、あの時は(笑)」
●いや面白かったです! やっぱり我流っていうのがモットーなんですか?
「モットーってわけではないんですけど、めんどくさいから調べていないだけというか、あと、できると思っているんで。テントとかも初めて買ったテントを1回も開けずに現地に持っていって、それこそ軍が使っているテントを海外から個人輸入して。現地で開けたいんですよ、下調べとかせずに」
●なるほど!
「現地で開けたら、やっぱり海外からの中古品なんでね、ポールが入っていなくて、布しか入っていなくてっていうこともありましたね。だから現地でポールの代わりになりそうな枝を拾って(テントを)建てたんですけど。下調べして完璧にやっていくよりも、テンションでいきたいので、自ずとミスは増えてしまうのかなっていう自己分析はありますけど」
●それこそがもうへたキャンなんですね!(笑)
「まあそろそろ達人って呼ばれたいですけどね」
●最近キャンプするための山林を買われたそうですね?
「買ったんじゃなくて賃貸なんですよ」
●賃貸!? そういう手もあるんですか? どういう仕組みなんですか?
「そこの持ち主が、別に売るつもりも貸すつもりもなく大事にしていた山林で、たまたま僕が探しているって話を聞いて、僕のことを見ていてくれて、じゅんいちさんやったら賃貸とかでいいですよってやってくれたんで、変な話、特別扱いしてもらったんですけど。それで面白いですよ、本当に契約書を交わしてね。間に入ってもらって、アパートとかと一緒、2年契約の自動更新です(笑)」
●へ〜! そうなんですね! 山を!
「礼金とかないですけど、敷金もゼロでしたよ、そういえばね」
●言える範囲でいいんですけど、どの辺りに?
「県で言うと長野県です。都内から僕が行ける範囲で借りたかったんで、長野県ですね」
●YouTube(の動画)でもかなり広いなっていう印象がありました。
「広いですね結構。割となだらかで、傾斜地がそんなにないような林間ですね。だから山というよりは森というイメージですね」
●そこをマイ・キャンプ場として使っていくんですね?
「そう。おそらくこの放送が始まる頃にはもう終わっているんですけど、プライベート・キャンプ場としてオンラインサロン(※)のメンバーは使うことができるので、そのためにトイレを設置して、許可を取って林道に今、砂利を敷いてるんです。
で、砂利敷きが終わってトイレが使えるようになったらサロンのメンバーは、めちゃめちゃ安い料金で、500円ぐらいとかで使えるみたいなキャンプ場としてオープンするんですけど、今まだその作業が完璧に終わっていないんで、まだオープンはしていないっていう状態です」
●どんなキャンプ・サイトにしようって考えるのも楽しそうですね!
「そうですね。でもそこは最初、いろいろ、例えば井戸を掘って、小屋を作ってとか考えていたんですけど、森自体がすごく綺麗なんで、ここはあんまり人工的なことはせんとこって話になってね。もうトイレだけしか付けんでいいんじゃないか。あとは綺麗にしてくれているから、そのままの状態をなるべく残すようにしようみたいなことで、そこに関しては落ち着きました。実は明日、関西に土地を見に行くんですよね」
●関西ですか?
「関西にまた第2弾でキャンプ場を作ろうと」
●え〜!? すごいですね!
「関西にも結構メンバーがいるんで、長野県に来れないじゃないですか。だから各地にちょっと作りたいなと思って、何個か(キャンプ場を)」
●すごいじゃないですか!
「そういうのを今やっていますね」
(※)じゅんいちさんのプライベートキャンプ場は、会員制オンラインサロン「じゅんいちダビッドソンのキャンプ村」のメンバーになれば、利用できるとのことです。メンバーの募集は不定期なんですが、次回は9月3日(金)の午後6時から申し込み開始となっています。会員になりたい方はじゅんいちさんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎じゅんいちダビッドソンのキャンプ村:http://jd-campmura.com/lp/onlinesalon-t/

嫁「なんでドラム缶!?」
※じゅんいちダビッドソンさんはキャンプ用の道具もいろいろ試されているようですが、アウトドアでお風呂に入ろうと、ドラム缶まで買っちゃったんですよね?
「そうですね。キャンプ場でも備え付けで置いているところはもちろんあるんですけど、どこでもできないじゃないですか。もちろん直火って言って地面の上で直接、焚き火を許してくれているところじゃないとできないんで、今ほとんど(直火が許されているキャンプ場は)ないんですけど、それでもやっぱり自由に持ち運びができるので、最初買ってやった時はやっぱり面白かったですね」
●どんな感覚なんですか?
「最初は”お、ほんまに入れるんや!”って感覚でしたね。焚くとね(お湯が)沸くのに結構時間はかかるんですよ、1時間ぐらいとか、下から火を焚いて。1回、番組ですけど、そのドラム缶風呂に満天の星空の下で入ったことがあって、それはもうめちゃめちゃ最高でしたね」
●いいですね〜。奥様の反応とかっていかがだったんですか?
「嫁はそのドラム缶風呂よりも、ドラム缶を買った時に、僕、嫁に言ってなかったんですよ。で、いわゆるインターネットで買ったんで、急にあれ(ドラム缶)が家に届いて、その時、嫁が受け取ったんですけど、何か分かってなくて、”なんかでかいの届いてんけど、何!?”って連絡がきて、”あ、ごめん言うの忘れてた! ドラム缶!” ”なんでドラム缶!?”みたいな、そっちのびっくりをしていました」
●ドラム缶、売っているんですねっていう感じですよ。すごいですよね(笑)
「ホームセンターに売っているんですけどね。今は家に届けてもらえるところで買えるんでね」
●キャンプするのにいちばん好きな季節ってありますか?
「4月から5月か、11月から冬にかけて、夏以外かな」
●あ、そうなんですね。冬でも?
「冬は冬で雪の中とかでやったことあるんですけど、なんかそれはそれで素敵なんですよね。あんまり味わえない空気というか、雪の中で焚き火して、クソ寒い中、焚き火して、暖かいキムチ鍋とか作って、熱燗を入れて飲んで、みたいなね」
●いいですね〜。それぞれの季節での良さがあるんですね。
「あります、あります。5月くらいが(キャンプを)やる人多いじゃないですか、やっぱり。あれはすごく気持ちいい季節だと思いますけどね」
●今まででいちばん印象に残っているキャンプってありますか?
「やっぱりみんなで、さっきの焚火会のメンバー6人ぐらいで行った、無人島でキャンプやったんですよ。いろいろ食料とか水とか買い込んで、無人島に3泊4日いたんですよ。あの時は何をするわけでもないし、何もしてないし、やることもなくなるのに、ずっとめっちゃ楽しかったですね。気の合う仲間と一緒やったっていうのはもちろんあるんですけど、あれがやっぱり今のところベスト・キャンプですかね、印象に残っているキャンプとして」
●その無人島でもソロ・キャンプの形態でやっていたんですか?
「そうです。無人島の海岸にテントが6つ並ぶ、等間隔で」
●なんかシュールですね(笑)
「シュールですね、今考えると(笑)。思い出に残っているキャンプはそれですかね」
部屋でドラム缶風呂、嫁激怒!?
※今はなかなか、キャンプにも行けない状況が続いていますが、日頃からキャンプ気分を味わうヒントがあれば、教えてください。
「LEDランタンとかね、部屋の中で暗くしてね。僕がよくやっていたのが家の中で小っちゃいテントを建てて、テレビのモニターに自分で撮ってきた焚き火の映像を映してね。
ランタンも僕はオイル・ランタンをつけてやっていたけど、危ないから、LEDランタンかなんか掛けて、ちょっと酒でも飲んだら、つまみもよくあるスキレットとかで作ったりすればね、ちょっとは味わえるけど、ただ正直2〜3回で飽きますけどね。
僕も実際やりましたから、2〜3回で飽きたから、最終的にだんだんハードルが自分の中で上がっていくじゃないですか。2〜3回でもう家キャンプに飽きて、最終的に家の中でドラム缶風呂やりましたから」
●それ、すごいですよね(笑)
「あの時もあがる時に結構お湯が溢れて、また嫁に怒られてね。大変だったけれどもYouTubeに(動画を)あげたんですよ。やっぱりテレビの人って結構見ているじゃないですか。あれうちの番組でやってくれません? っていうのが2回ぐらいあって、結局、俺トータル4回ぐらい家でドラム缶風呂やったんですよ」
●もう奥様が大変!
「そうそう(笑)」
●この新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』を、どんな方に読んでもらいたいっていうのはありますか?
「これ実は、入門する人に一個注意があって、この本をすべて鵜呑みにしてやったらミスるから、ここは取り入れる、ここは取り入れない、自分の判断力の問題があるんで、この本は実はキャンプの入門ではなくて、判断力を養うための本やと思っているんですね。
判断力を養いたい人に読んでもらいたいのと、逆にキャンプのベテランの人に読んでもらいたい! そしたらバラエティ本と捉えて読むんじゃないかなと、キャンプのベテランですごく詳しい人が読んだら、逆に面白い本だと思います。だからその2種類ですね。判断力を養いたい人とベテランのキャンパーさんに読んでいただきたいですね」
●これからキャンプを始めようっていう方はどうしたらいいですか?(笑)
「ヒロシさんの本を読めばいい!(笑)」
●ヒロシさんの本で勉強!?(笑)。では、改めてじゅんいちダビッドソンさんにとってキャンプとは?
「キャンプとは・・・でもまあ遊びですよね。キャンプとは人生ですとまではいかないですよね。人生の色んな要素のうちのひとつで、やっぱり遊びなんですよね。僕のいちばん好きな遊びですかね」
INFORMATION
『こまかいことを気にしない へたキャン入門』
本の前書きに「この本は入門という名のバラエティーブックです」と書かれている通り、見ているだけで楽しい本です。でも、ちゃんとどんな道具が必要なのかの準備編から、キャンプ場についたら何をしなくちゃいけないかなど、基本的なことはおさえてありますよ。愛用している道具や使い方の説明が、たくさん写真とともに解説してあるのでわかりやすく、失敗談も参考になりますよ。おすすめです! 主婦の友社から絶賛発売中!
◎主婦の友社HP:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b581522.html
YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」もぜひ見てください。普段、どんなキャンプをやっているのか、よくわかりますよ。焚火会のメンバーも出てきたりと見所満載! 中でもおすすめは奥様が登場する回、絶妙なツッコミに笑いますよ。
◎じゅんいちダビッドソンさんHP:https://junichi-davidson.co.jp/
2021/8/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「中村みつを」さんです。
中村さんは1953年、東京生まれ。16歳から山登りを始め、その後、国内のみならず、ヒマラヤやヨーロッパアルプス、南米パタゴニアなどにも遠征。現在はフリーのイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛けていらっしゃいます。また、2年前には「山の日アンバサダー」に就任されました。
そんな中村さんの新刊が『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』。3年前に出された本のリニューアル版になります。
「超低山」と呼び始めたのは中村さんで、その定義は本の副題にあるように、登山口から山頂までの高さが50メートル以下となっています。実は東京には、それも、23区内にはたくさん山があるんです。きょうは都内にある、とっても低い山「超低山」の話題をお届けします。
☆写真協力:中村みつを

自分の懐に収まる山
※では早速、中村さんにお話をうかがっていきましょう。都内の超低山に注目するようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?
「都内で打ち合わせの帰り道に、まっすぐ帰るのも面白くないなーと思って、散歩がてら新橋の辺りを歩いていたんですね。そうしたら、こんもりとしたものが目の前に現れたんです。気が付いてみたら、そこは前から知っていたんですけど、その時に何故か山に見えたんですよ。それが虎ノ門にある標高26メートルの愛宕山(あたごやま)という、東京タワーの近くにあるんですね。多くの人が結構行かれるところなので、ご存知だと思うんですけど、出世の石段という急な階段があるんです。それが有名ですけど、そこを見た時に今までも来ていたはずなのになんで山に思えたのかな? って自分でちょっと向き合ってみたんですよね。
そうして、ちょっとぐるっと周りを歩いてみたんです。超低山のいいところは小さいんですよね。超低山って言うくらいで、あっという間に周れちゃうんです。これがなんとも小気味よくって、自分の懐にスッと収まる、山ってなかなかそんなこと、本来はできないですよね。富士山をくるっと周ろうなんてことももちろんできないし、それがあっという間にできちゃうミニチュアの面白さみたいな、そういう感覚がありました。
それで歩いてたらトンネルが現れたんですよね。車がそこを通っているんです。都心の真ん中に山があって、トンネルがあってっていうのはちょっと想像つきにくいっていうか、改めて見た時の発見と驚きみたいなのをその時に感じたんですよね。だから今までいかに僕たちは普段、生活の中で見ているようで見ていないんだなっていうことを改めて思ったんですよ。
それで改めて石段をトコトコ登って頂上に行って、今はもうビルに囲まれたりして江戸時代のように展望がいいわけではないんですけど、僕にはとてもそれは雄大な景色に見えたんです。かつてフェリーチェ・ベアトっていう明治時代に来た(イギリス人)写真家が当時の写真を残しているんですけど、それを見た時に、まさしく山だったんだなっていうのが、またさらに気付いていくことに面白さが出てきて、そこからスタートしたような感じですね。よくよく見れば、山ってちゃんと付いていますよね? 愛宕山・・・」
●あ〜、確かにそうですね!
「それは都内にもたくさんあるわけですよね。飛鳥山とか代官山とか、それこそ拾っていくとたくさんあるんですよ。何とか山とか、何とかヶ丘とか、丸っていうのもそうですよね、何とか台、そういうのは全部山なんですよね。だからそういう地形を表したことにだんだん興味が向いてくると、東京というのは山岳都市なんじゃないかって思えてきて、山があれば当然、谷もあるんで、渋谷は谷なんだとか、そういうことが見えてくるんですよね」

江戸時代、大名が山を造る!?
※ひとくちに超低山といっても、いくつかタイプがあるんですよね?
「はい、分かりやすく説明すると、人工の山、人の手で造った山っていうのは築山(つきやま)って言うんですけど、例えば築地ってありますよね、あの築と同じです。あれは造った土地なので築地って言うんですけど、それと同じで造った山を築山って言うんですよ。だから日本語っていうのはすごく分かりやすくできているんですね。その文字を紐解いていくとね。そういうのがひとつひとつまた面白いんですよ。
その人工の山っていうのは多くは大名庭園に造られていることが多いんですよね。大名庭園っていうのは江戸時代に造られるんですけど、徳川が幕府を開いて日本中の大名がそこに屋敷を持つわけですよね。時代は安定してきているので、それぞれが庭に凝るわけですよね。藩の力の大きさっていうのももちろんあるんですけど、徳川御三家なんかは広大なお屋敷を持っているんで当然お庭も広いんです。
そうするとまず池を掘って、池を掘った時に土をどうするかっていうと、それを山にするんですよね。掘った土を盛って山を造るんです。そういう手法をどこの庭園もやるわけですよね。松を植えたりとか、楓を植えたりとか、園路を造ったりとか、東屋を作ったりとか、色んな工夫をして、六義園とか、小石川後楽園とか、清澄庭園とか、浜離宮とかたくさんありますけど、みんなそれぞれ持ち味が違うんですよね。それは考え方の違いで、それぞれなんですけど、そういうところに築山を造るですよね。
その築山もほとんど、自分が生まれ育った場所を思い起こすようなものを造ったりとかって意外とあるんですよね。あとは富士山を模したものももちろん造られました。大体高さにすると5メートルぐらいなんですよね。元気な人は30秒ぐらいで登頂できちゃうんですけど、それを人工の山、築山っていう大名庭園にたくさん造られたっていうのがまずひとつですね」
●超低山を登ることは歴史を体感することにも繋がりそうですね。
「そうですね。だからさっきの大名屋敷の山、例えば浜離宮でもいいですけど、山に登ると時の将軍もそこに立ったんだなっていうことが分かるんですよね。だから今はもう、もちろん将軍さんはいないですけど、同じものがそこにあるんですよね。だから同じことを体験できるっていうか、それがなかなか面白いんですよ」
<超低山の種類>
超低山のタイプは、先ほど中村さんのご説明にあった、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山」のほかに、江戸時代の「富士信仰」の影響で街中にたくさん造られた「富士塚」、これは今も都内に50くらいは残っているそうですよ。
そしてもうひとつのタイプが「天然の山」。都内には、中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」のほか、王子の「飛鳥山」、そして浅草の「待乳山(まつちやま)」があります。
まとめると超低山のタイプは「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つなんですが、その3つに収まらない山として、いわゆる、崖のような場所を「見立ての山」と中村さんは呼んでいます。実はこのタイプが都内にはいちばん多く、代官山や五反田、品川などにもあるそうですよ。探しに行くのも楽しそうですね。
おすすめの超低山
※お勧めの超低山を教えてください。
「これがね、いっぱいあって困っちゃうんですけど(笑)。季節に分けてもいいし、色々考え方はあるんですけど、まず理解しやすいところで言うと、さっきの3つ挙げた天然の山っていうのが分かりやすい山だと思うんですよね。行けばそこにそそり立っているんで。
今そそり立っているって言い方をしましたけど、これは大げさに表現することが大事なんですよ。だから登るところは登山口って言うようにしているんですよね。小さくてもそこは雄大な山として取り上げるような気持ちで登ってほしいと思うんです。じゃないとあっという間に終わっちゃうんで(笑)。僕はゆっくり愛でながら登ろうということで、さっきの飛鳥山、愛宕山、待乳山、これらは登っといた方がいいと思います。
あと可愛い山をひとつ紹介しておきたいんですけど、東京の小金井市に野川という清流が流れているんですね。野川公園っていうのが近くにあるんですけど、そこに”くじら山”という名の標高53メートルの山があるんですね。これは何がいいかって言うと、大名屋敷でもなんでもないんですけど、築山なんですね。雑木林が周りにあって公園の一角なんです。近くの小学校を改築する時に土が余って、それをそこに盛ったわけなんですよ。子供たちが遊んでいるうちにくじらの形になって山が残ったんですよね。
で、気が利いている大人たちがいたんですね。それをちゃんと大事にそのまま残したわけですよ。そこにシロツメクサとか全山を覆うように咲き誇るわけです。それがもう本当に可愛らしい山で、そこから見る西側の風景は雄大で、夕焼けを見るには本当にいいところです。本当にそこは、お殿様も誰もいない子供たちのパラダイスなんですけど、大人が行っても楽しいです」

浦安で富士巡り!?
※千葉にもお勧めの超低山はありますか?
「千葉だと例えば、浦安に3つの富士塚があるんですね。富士巡りができるんですけど、堀江富士っていうのがあるんですね。これは清瀧(せいりゅう)神社っていうところにあるんですけど、もうひとつは猫実(ねこざね)富士っていうのがあって、これは豊受(とようけ)神社っていうところにあるんですね。もうひとつが当代島富士っていうのがあって、これは当代島稲荷神社っていうところにあるんですけど、この3つは大体3〜7メートルほどのミニチュアの富士山があります。駅からも近いんでこれは楽しめると思います。
あとおすすめなのが、流山にある流山富士っていうのがあって、これ江戸川に沿ったところにあるんですけど、そこに浅間神社があって、浅間神社っていうのは富士信仰ですね、富士を祀ったところですけど、そこに高さ6メートルの立派な富士塚があります。ここも街歩きをしながら尋ねると楽しいと思います。
(超低山は)思い立ったときにふっと寄れるよさがあるので、そんなに大げさな格好はいらないんですけど、できたら手に(物を)持たない、要するにデイパックを背負うとか、手はブラブラさせておいたほうがいいと思います。というのは富士塚の中には岩登りに近いような感じで、結構手を使って登るところもあるんですよね。そういうところもあるんで、手が空いた方がいい。あとはこの時期だと暑いんで水分補給は欠かせないっていうこともありますよね。
いちばん重要なのは想像力ですね。その超低山を前にした時に、そこに行くまでのことを色々想像しながら気持ちを膨らませていく、そういうものがいちばん肝心かもしれないですね。山頂に立った時に見える風景を想像してみるのもすごく楽しいと思います」
気の向くまま、あえて迷ってみる!?
※去年から続くコロナ禍で遠出することが難しくなっていますよね。そんななか、近場に日帰りで行くような「マイクロツーリズム」という旅のスタイルが注目されています。超低山はマイクロツーリズムそのものですよね?
「そうですね。このマイクロツーリズムというのはこのコロナ禍で生まれてきたって言ってもいいと思うんですけど、それまであまり言われませんでしたよね? 遠くに行くのがひとつのステータスだったり、夢だったりというのがあったと思うんです。(以前は)今さらそんな家の近所を歩いてどうすんの!? みたいなことだったと思うんですよね。
でもこのコロナ禍でマイクロツーリズムがだいぶ言われるようになって、僕が書いたこの本もそういう意味では非常に喜んでもらえる本にはなったんですね。
自分の住んでいる街でもいいし、あと勤めている会社との距離でもいいし、その間に結構あるんですよね、今まで見落としていたこととか。そういうのをちょっと調べてみると山があったりするんで、そういうところに足を運んでみるといいかと思います」
●朝起きて、その日の天気を見て、ちょっと行ってみようかっていうその手軽さ、気軽さっていうのも超低山の魅力ですね?
「そうですね。寝坊しても行ける良さがあるんで非常にいいです(笑)。で、どこかでお昼を、江戸時代からやっているお蕎麦屋さんで食べようかとか、ここの団子屋さんに帰りは寄っていこうとかね、そういう気持ちを緩やかにする良さがある。緊張することのない山登りかもしれないです。
で、よく言われるんですけど、迷ったらどうするんですか? っていう人がいるんですよね。本当の山だったら大変ですよね。迷ったりすると帰って来られなかったりするわけですけど、この都内での山歩きですから、僕は迷うことはお勧めしているんですよね、どんどんと迷ってと。
丁寧なコースガイドがあったらいいのにっていう風に、今の人は捉えがちなんですよね。右に曲がったらこれがあって、左に曲がったらこれがあるっていう、もう道順のように行くのに慣れちゃっている部分もあると思うんですけど、そんなものはもうやめて、気の向くままに歩く。最終的に例えば、愛宕山だったら愛宕山にたどり着くまでを楽しんだ方がいいと思いますよね」
●中村さんのお話を聞いて超低山に行ってみようって思った方、たくさんいらっしゃると思うんですけれども、そんな方に何かアドバイスがあるとしたら。
「とにかく頭を柔らかくして、想像力を豊かに楽しむっていうことだと思います。疲れたら休めばいいし、雨が降ったらどこかに雨宿りすればいいし、そのぐらいの気持ちで行くといいと思います。あとは何とか山っていうのを、地図を広げた時に見つけたら、なんだろう? ってそういう不思議さを思うことも大事だと思います」
INFORMATION
『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』
都内にこんなにも「山」があるのかと驚きますよ。普段意識していないので「山」と認識していないだけ。思い立ったらすぐ行ける山や、山をめぐるコースも紹介。付録には「東京の超低山 百名山リスト」も掲載。ぜひ読んでください。ぺりかん社から絶賛発売中です。
詳しくは、ぺりかん社のサイトをご覧ください。
◎ぺりかん社HP:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001871

中村さんは今年12月に恵比寿の「ギャラリーまぁる」で個展を開催予定。山の世界を描いた作品を中心に展示するそうですよ。
◎ギャラリーまぁるHP:https://galeriemalle.jp
2021/8/1 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ガーデニング研究家の「はた あきひろ」さんです。
はたさんは1967年生まれ、兵庫県西宮市出身。大手住宅メーカーに勤務後、2014年に独立。現在は奈良市で、農地を借りて、家族5人分のお米と野菜を作りながら、ガーデニング研究家、そして樹木医として活躍されています。また、テレビ番組「ぐるっと関西おひるまえ」の講師として出演されていて、家庭菜園での野菜作りを分かりやすく親しみやすい語り口で解説されていて人気なんです。
そんなはたさんの新刊が『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』。
きょうはペットボトルや段ボールなど、家庭にあるものを使って始める水耕栽培やプランター菜園、そして農地を借りて取り組んでいる自給自足の生活についてもお話しいただきます。
☆写真協力:はたあきひろ

水耕栽培のすすめ
※家庭にあるもので野菜を育ててみよう、ということで、まずは水耕栽培についてうかがいます。はたさん、最初に何を用意すればいいですか?
「用意するものはですね、色々なやり方があるんですけども、いちばん手軽なやり方でいうと、スポンジ、食器とか洗う時にスポンジを使うじゃないですか、新しいスポンジでもいいんですけど、古いスポンジでも構わないので用意してください。
そのスポンジにカッターで深さ大体1センチぐらいの溝を作って、その溝の切れ込みの中に野菜のタネを入れて、そのスポンジを、豆腐が入ってるような(プラスチックの)ケースに水を入れて浸しておくとスポンジが水を吸いますよね。その水を吸ったスポンジからタネに水が移って、それで発芽します。タネぐらいは買わないといけないですけど、それ以外はそれで十分です。スプラウト(*)もできますし、ちょっと育てればベビーリーフもできますよ」
(*スプラウトとは、発芽直後の新芽のことで、発芽野菜とか新芽野菜といわれています)
●へぇ〜! 広いスペースが必要ってわけでもないですよね。
「そうなんですよ。ただ、ちょっと窓辺の、日の当たるところの方が成長が当然いいので、できるだけ窓辺に置いてもらって」
●水耕栽培の良さってどんなところですか?
「水耕栽培はですね、まず野菜を作るとなると、嫌がられるのが虫なんですよね。水耕栽培の場合は室内でできるっていうのと、土を使わないから、土の中に虫の幼虫がいたり卵があったりして、それが野菜に付く場合もあるんですよね。
水耕栽培は限りなく虫と出会う機会が少ないです。水は水道の水を使いますし、スポンジに虫がいるはずがないですし、タネそのものにも虫は付いていないですよね。”野菜作りはしたいんだけど、虫はね〜”って方にはぴったりだし、手軽に誰でもできるところがいいところだと思いますね。
あと栽培期間も短いですから。普通、例えば小松菜とかチンゲンサイを、売ってるような形に育てるのには大体2〜3ヶ月かかるんですよね。でもスプラウトとかベビーリーフだと、2〜3週間で採れちゃうので、非常に勝負が早いんです」
●お水は毎日変えればいいんですよね?
「そうです。水耕栽培の場合のポイントはやっぱり水。水耕と言われるぐらいだから水を清潔にしておくことが大切です。できるだけ水は毎日変えてあげることが重要です」
(補足:ペットボトルでも水耕栽培ができます。やり方は、はたさんの本にわかりやすく載っているのでご覧ください)

野菜を育てる秘訣
※水耕栽培の秘訣があったら、教えてください。
「秘訣はですね、僕いつも野菜を育てる時に言ってるのは、ノウハウより思いやりなんです」
●思いやり!?
「僕が、私が、育ててやろう! という風に思うんじゃなくて、この子が気持ちよく育つ環境を作ってあげようと。そうすると、水って毎日変えた方が気持ちいいですよね。
で、発芽する時って肥料いらないんですよ。何故かっていうとタネの中に発芽するエネルギーがあるから。でも発芽した時に”そろそろ、はたさん、肥料を頂戴〜!”っていう風な顔つきになってきた時に、液体肥料をあげると、”ありがとうね!”という感じになるんですけど、最初から肥料入りの水を入れると、”まだいらないのにな〜”っていう感じですよね。
ですので、あんまり自分が育てているっていうよりは、相手が気持ちよく育つことを(考える)。そしたら今何をしないといけないのかなっていうのが、水耕栽培でも、土を使うものでも、畑でする場合でも共通なんですよ」
●思いやり大切ですね! 部屋の中で育てるので日々成長を観察できるっていうのもいいですね。
「いいですね。最近だと写真を撮ってSNSにあげたりするのも、日々成長していくのがわかるし、あと外じゃないので、雨の影響とか天気の影響を受けないですよね。写真も定期的に撮りやすいし、寒い日でも室内が暖かければ育ちます」
●本当に初心者にはぴったりの水耕栽培ですね!
「そうなんです!」

100円ショップで園芸!?
※ここまでは水耕栽培についてうかがってきましたが、続いては、はたさんお勧めのプランター菜園について。家にあるもの、たとえば、台所にあるプラスチックの、ざるやボウルでもプランターの代用になるってことなんですよね?
「そうなんです。僕が100円ショップとかホームセンターに行くと、園芸コーナーだけじゃなくて色々なコーナーに行って、これって園芸に使えそうやな、っていうのを見つけるのがちょっと趣味なんです。ざるだけではちょっとしんどいんですけど、ざるとボウルがセットになって100円のものがあるんですよね。もう少し大きなものだと、ホームセンターに高いのもあるんですけど、それで十分育つんです。
特にプランターを選ぶ時の注意点なんですけど、鉢底がざる状になっているのがすごくよくて、プランターでも穴が少ないものは、あまり僕はお勧めできないんですよ。何故かというと、植物の根っこって、野菜も花もハーブもそうなんだけど、空気が大好きなんですよね。空気があると成長がものすごく促進されてよくなります。ですので、底がざるのようなプランターが最近はありますから、ないしは下の鉢底の穴が多いものを選んでもらったらいいですね。ざるでも当然いいですよ」
●でも、ざるとボウルに土を入れてってことですよね? それでちゃんと育つんですよね?すごいですね。
「ちゃんと育ちます」
●あと、卵パックで野菜作りとも(本には)書いてありましたけれども。
「卵パックってね、園芸的にいうと、ちょっと専門用語なんですけど、セルトレイっていうのがあって、小さな苗を作るキットみたいなのがありましてね。そのセルトレイに卵パックって似ているんですよ。小部屋がたくさんあって、その小部屋に土を入れて、タネをひとつずつ撒いて、(芽が出たら)取り出して植え付けるってやり方なんですけど、まさに卵パックってそんな感じで使えるのでちょうどいいんです」
●土はどんなものを選んで買えばいいですか?
「土はですね、ずばり25リッター入りで600円以上です!」
●25リッターっていうとどういうサイズですか?
「25リッターだとですね、ホームセンターとか園芸店で売っているいちばん大きいサイズの袋ですね。ちょっと女性ではしんどいかな、男性が両手で抱えて持てるぐらいの大きさなんです。これで600円以上がいいと僕は言っているんです。
僕は全国でセミナーをする時に現地で土は調達するんですけど、僕の経験上、25リッターで600円以上の土を使うとまず失敗したことがないです」
●この季節、プランター菜園でお勧めの野菜ってありますか?
「この季節は皆さんが分かるもので馴染みのあるものだと・・・バジルはいいな! あとクウシンサイって分かりますか? 中国料理で炒めもので出てくる空芯菜もいいですね。それからモロヘイヤ、ツルムラサキ。暑さに強い植物を今言ったんですけど、その4つがお勧めです!」

僕の野菜は自動運転!?
※はたさんは奈良市で自給自足の生活をされていますが、そのきっかけは、西宮の実家で阪神淡路大震災を経験したこと。ライフラインが止まる中、未来に命をつなぐ食べ物の大切さに改めて気づき、サラリーマン生活をしながら、自給自足を模索していったそうです。
ところで、現在はどれくらいを自給しているんですか?
「家族5人分のお米と野菜をほぼ自分で作っています」
●畑を借りてるんですか?
「そうです。農家さんから畑を400坪借りて。先ほど田んぼから帰ってきたんですけど、お米を作る面積が300坪で、野菜を作る面積が100坪です!」
●へぇ〜! 今はどんな野菜を育てているんですか?
「今はですね、夏野菜のキュウリ、トマト、ナス、オクラ、シソ、カボチャ、スイカ、サツマイモ・・・言い出したらきりがないですけど、いわゆる夏野菜と言われるものがざっと100坪の中にあります」
●え、何種類くらいになるんですか?
「品種も入れると毎回30〜40種類やと思います(笑)」
●すごい! 苗を植えて水や肥料を与えてとか、日々忙しいですよね?
「そう思われがちなんですけどね。当然、タネとか苗は植えないといけないんですけど、こうやって今ラジオでお話している間も、僕のサツマイモとかトマトは勝手に育っているでしょ。だからある種、自動運転なんですよね。400坪の中で今多分、自動で運転しているんですよ。僕が例えば、お米とか野菜を収穫するまでに、その野菜たちお米たちと関わる時間って全時間にしたらわずかなんですよね。当然(僕が)寝ている間も動いてるわけですよね。
そう考えると、そんなに皆さんが考えるほどでもないんですよ。僕も園芸研究家として働きながら自給自足しているわけで、仕事があるわけですよね。以前はサラリーマンをしながら自給自足をしていましたから。そんなに皆さんが考えているほど大変じゃないし、高いスキルではないですよね。そういった自給的なところって、何万年と人間がやってきたことだから、すごくベーシックなスキルだと思うんですよね」

ありのままに受け入れる
※はたさんは自給自足の生活を続けてきて、いま改めてこんなことを感じているそうです。
「これは僕が自給自足する時にあんまり思わなかったんだけど、食の自立をしたと同時に精神的な自立がなされていってるのかなという感じですね。だからものすごく僕、話し方がスローやと思うんですけど、気持ち的にもすごくスローな感じで、全てを受け入れる。
だから対人関係に関しても、自給自足する前より人の好き嫌いってほとんどなくなったんですよね。あらゆる現象をありのままに受け入れることを、畑は教えてくれるという風に思います」
●この番組を聴いて、自宅で野菜作りをしたいなって思った方にアドバイスをするとしたら。
「僕の本の中に色々アイデアがあって、それで、”えっ! こんな幼稚なことからやるの?”って言われるかも分からないんだけど、その小さなところでも芽が出て、双葉になって、本葉が出てっていう現象は、僕が大きくやっている畑でも同じなんだよね。
だからあんまりスケール感で、ものを判断するんじゃなくて、自分の身の丈に合ったものを、僕の本なり、違う人の本でもいいですよ、ないしはテレビ番組を見て、これいいなと思った、自分の身の丈に合ったものを選んで、まずスタートする。
スタートして失敗しても、それはすべてが失敗なんじゃなくて、自然現象として何か自分の思いとは違ったから失敗してるのであって、それをよく観察すれば、何か収穫できることがある。だから、やめて他の趣味にいっても構わないから、何かひとつ自分に合うものを見つけてやっていただいたらいいかなと思います」
INFORMATION
『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』
特にこれから野菜を自分で作ってみようと思っているかたにお勧めの本。イラストや写真を豊富に使って説明してあるからとても分かりやすいです。初心者にも手軽に作れる野菜も紹介しているので、ぜひこの機会にはたさんの本を参考に野菜作りにチャレンジしてみませんか。お子さんと一緒に夏休みの自由研究のテーマにもいかがでしょうか。内外出版社から絶賛発売中です。
◎内外出版社HP:https://www.naigai-p.co.jp/corporate/
YouTube「はたさんの野菜作りチャンネル」
はたさんはYouTubeで野菜作りの動画を公開中。1分ほどの動画でプランターや鉢などを使って行なう野菜作りを紹介しています。これもわかりやすくてお勧めですよ。