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Every Sun. 20:00~20:54

オンエア・ソング 10月15日(日)

2023/10/15 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. I’M LIKE A BIRD / NELLY FURTADO
M2. BIRD OF BEAUTY / ESTHER SATTERFIELD
M3. BIRD SET FREE / SIA
M4. BIRDS / PAUL WELLER
M5. ワタリドリ/ Alexandros
M6. THE WATER IS WIDE /JAMES TAYLOR
M7. FREE AS A BIRD / THE BEATLES

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

「人類学」入門〜ボルネオ島の狩猟民プナンから「人間」が見えてくる!?

2023/10/8 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、立教大学・異文化コミュニケーション学部の教授で、人類学者の「奥野克巳(おくの・かつみ)」さんです。

 奥野さんは1962年生まれ。高校生の頃の、将来の夢は日本脱出、ということで大学に進学後、メキシコ、インド、東南アジアなど、自由な旅に没頭。卒業後、商社に就職するも、20代後半で退職し、今度はインドネシアを放浪。その後、大学院で文化人類学を専攻、博士号を取得されています。

 現在は人類学者として多方面で活躍、数多くの本も出版。そんな奥野さんの新しい本が『はじめての人類学』です。

 入門書的な本を出された奥野さんに、人類学とはどんな学問なのか、初歩的なことをお聞きしつつ、奥野さんが研究のために長期間滞在し、寝食を共にしたボルネオ島の森に暮らす狩猟民の興味深いお話をうかがいます。

☆写真:奥野克巳

奥野克巳さん

人類学の礎を築いたマリノフスキ

※この本は、人類学のおよそ100年を、4人の最重要な人類学者を紹介しつつ、振り返り、今後の人類学を示唆するような内容になっています。まずは、人類学とはどんな学問なのか、教えてください。

「人間探究ですね。ティム・インゴルドっていう人が『Anthropology is philosophy with the people in.』っていうふうに言っているんですね。つまり人類学とは哲学だと。で、哲学って何かっていうと、人々と共にする哲学。その人々というのが、最後にinがついていて、人々がいるところに行って、人々と共にする哲学だというふうに言っているんです。

 まさに人類学というのは現地のフィールドワークを通じて、人々と共に行なう哲学ということになっています」

●フィールドワークに基づいた新しい人類学を切り開いたのが、重要人物のひとり、ポーランド出身のイギリス人、マリノフスキというふうに本に書かれていましたけれども、このマリノフスキというかたはどんなかたで、どこに行って、何をされたのか、かいつまんで教えていただけますでしょうか?

「出身はポーランドなんですけれども、イギリスで勉強していて、オーストラリアのトーテミズムの研究をしていたんですね。そのトーテミズムを文献の中で研究していたんですけれども、わからないので行ってみて、実際のところを知りたいと思ったんですね。

 最終的にオーストラリアの隣のニューギニアの島、トロブリアンド諸島というところに行って、それまでは現地語をマスターするということはなかったんですけれども、彼は現地語をマスターして、そこに長期滞在してフィールドワークを行なったんです。その成果を、エスノグラフィーって呼んでいるんですけれども、ある民族、文化が体系的にまとめて、それを出版したと、そういったことをした人です」

●当時ニューギニアってまだまだ未開の地と言ってもいいですよね。そんなニューギニアで長期滞在するって相当大変だったんじゃないですか。

「そうだと思いますね。それまでは椅子に座って本を読んで、文化の姿を空想していただけだったんですね。実際にマリノフスキが現地のフィールドワークを始めて、様々な困難もあったんですけれども、それ以降の現代の人類学の礎を築いたんです。
 現地に行ってフィールドワークを行なって、そこで見えてきた人々の生き方、こういったものを記述、それから分析することを始めたのが、マリノフスキということです」

(編集部注:奥野さんによると、人類学という学問は15世紀の大航海時代まで遡るそうです。当時ヨーロッパの人たちが異文化に出会い、興味関心を高めていくなか、キリスト教の宣教師が持ち帰った記録や旅行記、船乗りの航海日誌などが情報のリソースとなり、知見を広めていったということですが・・・

 ということは、大航海時代は文献だけで「人間」を探究していたわけですから、
フィールドワークという手法を取り入れ、礎を築いたマリノフスキの功績は大きいと言えますね)

『はじめての人類学』

人類の原初のあり方を探る

※奥野さんの調査・研究のメイン・フィールドはどこになるんですか?

「インドネシアを1年間放浪していました。その中でカリマンタン島、これはボルネオ島なんですけれども、そこの放浪を終えて、大学院に入ったんですね。フィールドワーク中はボルネオ島ですね。そこで最初、90年代の半ばに焼畑農耕民の『カリス』という民族の調査を行なって、そこから今度はマレーシア側のボルネオ島にシフトして、そこで狩猟民の研究を行なってきています。2006年からその狩猟民の研究をしています」

●その狩猟民が「プナン」ということですよね。ボルネオ島の狩猟民プナンを研究対象として選ばれたのは、どうしてなんですか?

「人類学ですから、その大きなテーマというのが人間とは何かなんですね。かつて私は農耕民の研究を2年間やっていたんですが、そこではシャーマニズムとか呪術というものをテーマにしていたんです。
どちらかというと農耕民ですから、我々日本人の古い姿というか、懐かしいあり方というのが見えてくるんですけれども、もうちょっと遡って、人類の原初のあり方、人間とは元々はどういう存在であったのかを探るために狩猟民の研究を始めたんですね。
 で、狩猟民がボルネオ島には、プナンという非常に魅惑的なというか魅力的なグループがいたんですね。そこに入って行って、調査研究を始めたという、そういった経緯です」

●どう魅力的なんですか?

「魅力的っていうのは、あまり狩猟民が残っていないんですね。地球上に残っていなくて、農耕が行なわれ始めたのが、今から1万年とか8000年ぐらい前のことなんです。それまでの人類は約25万年ぐらい前からずっと、1万年とか8000年くらい前までは、すべての人類が狩猟採集を行なっていたんです。

 そのあと農耕、牧畜に移行してきたわけですけれども、古い人間のあり方が残っていると言いますか、そこから想像することができるという意味で、人類の古い姿、もともとこういったことを考えていたんじゃないか、あるいはこういったことをやっていたんじゃないか、ということを探る手がかりとして、非常に魅力的だということですね」

(編集部注:奥野さんは、狩猟民プナンの人たちと、当初は、マレーシア語を介してコミュニケーションをとり、徐々にプナン語をマスターしていったそうです。プナン語はマレーシア語とよく似ているそうですよ)

狩猟民プナンの暮らし

※プナンの人たちは、どんな暮らしぶりなんですか?

「1980年代までは、だいたい森の中で流動生活をしていたんです。流動っていうのはノマディックな生活ですね。獲物、食べ物があるところに住んで、それがなくなると、別のところに移動するというライフスタイルだったんですね。

 政府が定住地を見つけて、そこに住みなさいということで、80年代以降は(定住地に)住むようになったんですが、でも狩猟という生業そのものをやめてしまうのではなくて、定住地から森の中に入って行って、狩猟キャンプを建てて生活するということ、これは半定住って言っていますけれども、半定住の暮らしが今日に至るまでの主流です。だから森の中に狩猟キャンプを作って、そこでいろんな動物を獲って食べて生きていく、そういった人たちですね」

写真:奥野克巳

●どんな動物たちを食べているんですか?

「森の中にいる動物たちです、すべて。例えば・・・いちばんの好物がヒゲイノシシなんですね。シカ、ホエジカ、あるいはサルをいっぱい食べるんです。リーフモンキーであるとか、カニクイザル、ブタオザル、テナガザルとかですね。あとはオオトカゲであるとか、あと魚も食べますので、森の中にいるもの、川の中にいるもの、こういったものをすべて食べます」

(編集部注:プナンの人たちの家族グループには、母親や父親が違う子供たちがたくさんいるそうですが、分け隔てなく、みんなで育てる、そんな文化があるそうですよ)

※奥野さん自身は、どんな暮らしをしていたのでしょうか?

「基本的には人類学者は誰でもそうですけれども、彼らと同じキャンプの中に住んで、一緒に労働もしながら、労働っていうのはこの場合狩猟ですね。狩猟をしながら一緒に食べ物を獲りに行って、彼らと同じような暮らしをすると、そういったことを原則として彼らと一緒に暮らしていました」

●今でこそアウトドアブームですけれども、奥野さんご自身はそういう経験はあったんですか?

「そうですね。(キャンプは)子供の頃からとても好きでしたし、ある時は中学校に1回キャンプから通ったこともありました」

●そうだったんですね〜。では現地での暮らしには最初から馴染めましたか?

「これはですね、なかなか馴染めない面があるんですよ。というのは、私が自分のために持ち込んだ食料を、例えば、米であるとかラーメンであるとかそういったものを、彼らが何も食べ物がない時に料理して食べるわけですね。段ボール箱で持っていったんですけれども、私がいない時に段ボール箱がなくなっていた、そういうことがちょくちょくあるんです。
 彼らは別に悪いというふうに思っていないんです。それはあとからわかったんですけども・・・。馴染めたかっていうことで言うならば、とんでもないところに来たなって思っていたというのがありますね。

 それは彼らの贈与交換の仕組みと言いますか、シェアリングなんですね。あるものをみんなで分けると。つまり個人所有がないんです。そういうことがあとからわかってきて、その生活に溶け込んでいくことができたわけですけれども、最初からは馴染めなかったですね」

写真:奥野克巳

寝転がって調査!?

※プナンの人たちの調査も17年ほどが過ぎ、最近は、人々が暮らしているど真ん中に、寝っ転がって調査していると、本のあとがきに書いてありました。これはどういうことなんでしょう?

「寝っ転がって調査を最近はしていると・・・つまり文化人類学者って基本的にはアンケート調査なんか行なわないんですよね。参与観察、言葉ができるようになってインタビューをしたりはしますけれども、その場で参与観察という、参加しながら観察をするというような調査をしているんです。

 最近、私はインタビューもせずに、狩猟キャンプで寝っ転がって調査をするというか、そこにいるということでわかってくることが、けっこうあるなって思っています。

 言葉もできるようになると、神話であるとか民話であるとか人々の話、これがなかなか面白いんですね。これ、寝転がって聞いていると非常によくわかるんです。言語以前に理解できると言いますか、これをノートにつけようとしたりすると、何を言っていたのかが、なかなか整理できないことに気付くんですね。

 なんて言うのかな〜、彼らが言っていることは、人々が言っていることは、ロジカルにまとめて理解しようとすると、なかなか理解できない、その部分が彼らの日常生活における、実際の生活の数値化できない部分なんですよね。データになかなかできない部分なんですけども、それが寝っ転がっていると、つかむことができると最近わかってきたということです」

●そういうプナンでの生活があって、日本に帰られた時に、逆に日本の生活にすんなり戻れなかったこともあったりしますか?

「1年間プナン(のキャンプ)に滞在していた時に、先ほど言ったように最初はなかなか馴染めなかったんです。これは例えばトイレがないとか、そういうことも含めて馴染めなかったんですが、帰る近くになると、もう彼らの暮らしが非常に心地よくて、逆に日本に帰ったら、またあの地獄が待っているのか! そういうふうに思うようになりました。逆転したっていうことですね、反転してしまったっていうことです」

●そうなんですね〜。

三者の視点で森を見る!?

※今はそうでもないかも知れませんが、欧米人のかたにとって「自然」は征服するもの。一方、日本人は自分も自然の一部、そんな考えかたがあるように思います。「先住民」のかたたちと、似たような価値観があるのではないかと思ったんですが・・・そのあたり、どうでしょう?

「日本もかつてはそうだったんでしょうけれども、たぶん日本は、”脱亜入欧(だつあにゅうおう)”という明治の時代、そのあとに自然と人間と言いますか、自然と文化というものを大きく分断させたっていう、けっこう複雑な歴史があるんだと思うんですね。

 人間も自然の一部だというのが、具体的にどういうことなのかを探るのが、実は私の調査と言いますか、フィールドワークの大きな目的なんですね。

 先ほどプナンの話をしましたけれども、ここでのその経験を少しお話したいと思います。それは何かと言いますと、彼らは狩猟ために森の中に入っていくんです。様々な動物がいるんですけれども、先ほど言ったようにサル、リーフモンキーっていうサルがいるんですね。これは葉っぱばっかりを食べているサルです。

 リーフモンキーとそれから鳥に、リーフモンキーの名前が付いている鳥がいるんです。リーフモンキー鳥っていうふうに一応言っておきます。リーフモンキー鳥と、ちょっとややこしいんですけど、リーフモンキーってサルがいるんですね。

 狩猟に行くと、リーフモンキー鳥が木の上で鳴いているんです。すると、そこにリーフモンキーがいると彼らは察知するんですね。そのリーフモンキーを獲りにプナンは行くわけですけれども、リーフモンキー鳥が鳴いて、リーフモンキーを獲りに駆けつけると、もうすでにリーフモンキーはそこから逃げていると、そういうふうに彼らはよく言っています。

 これはどういうことかというと、リーフモンキー鳥は木の上から見ていて、リーフモンキーに、つまりサルに人が近づいて来ているということを警告するんだって言うんですよ、プナンの人たちは・・・。

 つまりプナンは、その三者の視点から森を想像しているんです。つまりリーフモンキーというサルがいて、狩猟で(森に)入っていく人間がいて、そしてリーフモンキー鳥がその二者を、上から鳥瞰図的に見ている、これを想像しているんですね。

 何が言えるのかというと、リーフモンキー鳥に見られる人間を組み入れているわけですよ。これは何を示しているのか・・・必ずしも人間は自然に向かう主体ではない、場合によっては自然から見られる客体になる、こういうことをよく知った上で狩猟をしている、リーフモンキー鳥という名前が付けられているっていうふうに見ることができる。

 つまり、自然は征服するものではなくて、人間が主体的に征服するものではなくて、自然の側が人間を客体視しているということでもあるんだ、ということを分かった上で狩猟をしている、ということが言えるんじゃないかということです」

(編集部注:昨今では、未開の地に暮らす人たちもスマホを持つ時代ということで、プナンの人たちもスマホを持っているそうです。奥野さんは、スマホを介して連絡を取り合っているそうですが、彼らは文字が読めないので、おもにボイスメッセージでやりとりしているとおっしゃっていましたよ。人類学に新しい手法が加わるかも知れません)

※奥野さんのお話を聞いて、人類学に興味を持ったかたたちにひとことお願いします。

「人類学は、これはマリノフスキがそうだったんですけれども、いくら文献や本を読んでもわからないので、実際に現地や現場に行って、そこで本当のことを探ろうとする学問です。
 人間が生きるとはどういうことか、ということを知るために、この本ではこの学問が発展してきた歴史を、4人の人類学者を通じて明らかにしていますので、人類学に興味を持ったかたはこの本を読んでいただきたいと思います」


INFORMATION

『はじめての人類学』

『はじめての人類学』

 奥野さんの新しい本をぜひ読んでください。きょうご紹介したマリノフスキはじめ、人類学を学ぶうえでは欠かせない、最重要な4人の人類学者を中心に構成されています。個性的な4人の足跡や功績がとても興味深く、一気に読み進めてしまうと思いますよ。人類学の入門書の決定版、おすすめです。
講談社現代新書シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎講談社HP:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000380075

 奥野さんのオフィシャルサイトもぜひ見てください。

◎奥野克巳さんHP:https://www2.rikkyo.ac.jp/web/katsumiokuno/

オンエア・ソング 10月8日(日)

2023/10/8 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. WHAT’S GOING ON / MARVIN GAYE
M2. HUMAN / GABRIELLE APLIN
M3. SHOWER THE PEOPLE / BABYFACE
M4. THE TIMES THEY ARE A-CHANGIN’ / BOB DYLAN
M5. more than words / 羊文学
M6. BEAUTIFUL PEOPLE (FEAT. KHALID) / ED SHEERAN
M7. HUMAN NATURE / TRAINCHA

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

「雑草」を知れば知るほど、「人生」は豊かになる!?

2023/10/1 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンス・ジャーナリストでガーデナーの「森 昭彦(もり・あきひこ)」さんです。

 森さんは1969年生まれ。雑草との出会いは20代後半、生き方に悩んでいたときに、足もとに咲くオオイヌノフグリの小さな花の色に心を奪われ、それから図書館で植物の本を片っ端から読むようになったそうです。

 そして1999年、30歳の頃に自宅でガーデニングを始め、当初は西洋ハーブや野菜を栽培。その後、雑草や野草も育て、その数は1,000種以上になるとか。試験栽培などを通して、さらに植物に詳しくなった森さんに出版社から声がかかり、36 ,7歳の頃に初めて本を出すことになったそうです。

 ちなみに奥様は公園に勤めていたときのヘッドガーデナーで、森さん曰く、結婚というよりも、奥様に弟子入りしたようなものですと、笑いながらおっしゃっていました。

 そんな森さんの新しい本が『庭時間が愉しくなる雑草の事典』。ということで、きょうはガーデニングをやっている人には特に厄介者とされている「雑草」にフォーカス! 身近な植物「雑草」を知ることで人生が豊かになる、そのヒント満載でお送りします。

☆写真:森 昭彦

森 昭彦さん

「雑な草」とは?

※森さんは『庭時間が愉しくなる雑草の事典』のほかにも、これまでに雑草に関する本をたくさん出されています。雑草に着目されるようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?

「自分が大事に育てている植物のまわりに、植えた覚えも見たこともないものが、ばーって生えてきて、すごく邪魔するってことがよくわかって、俺の大事な植物に何してくれているんだ! と思いましたね。こいつは名前が何で、一体ここで何をしているんだろう?というのを不思議に思ったのがきっかけです。ひとつひとつ見ていくと結構な種類があるんですよね。

 それまでは、ただの草むらとか雑草でおしまいだったんですけれども、細かく見ていくと、いろんな顔のいろんな子たちがいて、それぞれがやっていることが違うな、これ!と思ったんですね。

 結局、育てたい植物を育てたいがために、雑草を調べ始めたら、どっちかっていうと雑草のことが気になり始めて、栽培植物は奥さん任せで(笑)、私はガーデニングの最中に生えてきた植物をピックアップして、どんな植物がいつ生えてくるんだろうっていうのを調べ始めてしまったということなんです」

●どんどん雑草に興味がわいてきたっていう感じなんですね?

「本末転倒も大概にしろという感じですけど、そんな感じです」

●種類が多いっておっしゃっていましたけど、日本にはどれぐらいの種類の雑草があるんですか?

「そうですね・・・雑草というと、どんな植物をイメージされたりしますか?」

●種類というか、それこそいろんなところに生えているっていうか・・・。

「こんな葉っぱのとか、こんな葉っぱのとか!(笑)」

●たくましいイメージはありますけど・・・。

「そうなんです。実は雑草って人によって、それを雑草とするかどうかって、全然違っているんですね。植物の世界では、雑草は何種類というふうには考えておらず、自然界に勝手に生えている植物の数としましては、学者によって違うんですけども、日本中でだいたい2600種から7000種と、幅があるんですよ」

●でも多いですね。そんなにあるんですか?

「世界でもこんな国はなかなかないと思います」

●「雑な草」って書くじゃないですか。雑草ってどうしてこういう呼び方になったんですか?

「もともと雑草っていうと私たちは、こんにゃろめ! こんにゃろめ!という踏み付けたくなる、いや〜なイメージがありますよね。『雑』ってそんな感じのイメージがあるんですけれども、実は正月に食べるお雑煮も『雑煮(ざつに)』と書きます」

●お〜〜、そうですね!

「おめでたい時に、雑煮とは?と思って調べてみますと、雑という字は『いろんなもの』とか『たくさんの様々なもの』という意味が本来あるようです。
 雑草のほうも、名前とか種類とかよくわからないけれども、いろんなものが生えているように見えるということで、名前はわからない草ということで、雑草と呼ばれるようになったんではないかとも言われています」

(編集部注:雑草に定義があるのか、森さんにお聞きしたら、学者さんの間でも認識が違い、確定していないとのことでした。
 また、関東圏で特に目立つ雑草として、クズをあげてくださいました。クズ粉になるつる性の植物ですが、3年経った株が1年に伸ばす茎の総距離は、なんと! 1.5キロにもなるとか。確かに鉄塔などに絡みついているのを見たことがありますよね。
 ほかにもアレチウリという外来種が日本全国で猛威をふるっていて、庭や畑に見つけたら、すぐに駆除してくださいとおっしゃっていました)

タチツボスミレは、変幻自在!?

タチツボスミレ
タチツボスミレ

※ここからは、森さんの新しい本『庭時間が愉しくなる雑草の事典』をもとにお話をうかがっていきます。庭で植物を育てているかたにとって、雑草は厄介者だと思うんですけど、この本の視点は違いますよね?

「そうですね。どうしても付き合わざるを得ない子たちなんですけれども、付き合い方の考え方を変えると、あんまり汗水たらして駆除する必要もないのかなと、長年の経験でちょっと思った次第でして・・・」

●雑草の寄せ植えですとか、ブーケとしての活用も提案されていて、素敵だなと思ったんですけれども、この本には130種類ほどの可憐な花を咲かせる雑草が掲載されていて、ひとつの種が見開き2ページで紹介されています。写真も豊富でとっても読みやすくて、そしてどれも見出しが素晴らしいですよね!

「ありがとうございます(笑)。そんな言っていただいて」

●その中からいくつか気になった見出しをご紹介しながら、その雑草の特徴などを教えていただきたいと思います。

 まずは「春の青空は変幻自在」という見出しありましたよね。これは「タチツボスミレ」ですけれども、ご説明いただけますか? 

「スミレの中でも結構、住宅地とかに勝手にやってくるタイプ、なかなか大胆不敵な子なんですね。ちょっと日陰に咲きまして、花心も普通のスミレ、いわゆるニホンスミレと呼ばれているスミレよりも大振りなんですけれども、空色のような、春の青空のような色をたたえた、非常に可愛らしいスミレの種類になっています」

●変幻自在というのは、どういうことなんでしょうか?

「この子も追っかけていくと、本当にカオスでして、住んでいる地域とか標高ですとかによりまして、花とか葉っぱの形を変えたり、色も変えたりするんです。旅先で見るタチツボスミレと、ご自宅の近くで見るタチツボスミレはかなり違っていたりするんですよ」

●地域ごとによって違うんですね。

「そうなんです」

●え~〜不思議!

「これがわかってくると、ほんと旅も面白くなりますし、こんな些細な違いでこんなに雰囲気が変わるんだね、お前の面持ち!ってぐらい変わってくるんで楽しいです」

●ヴァリエーションに富んでいますよね〜。

「はい!」

愛おしい!? ナズナ

ナズナ
ナズナ

※それでは続いて、気になった見出しから「なでたくなるほど愛おしい」。これはナズナですが、そうなんですか?

「これは本当に素晴らしい植物です」

●どう素晴らしいんでしょう?

「とにかく最初は見た感じ、なんかぱっとしない、骨組みだけの、やさぐれって感じの草だな〜みたいに見えるんですけれども、民間薬として長く親しまれてきたものなんですね。例えば、庭仕事なんかやっていますと、(手を)怪我したり転んじゃったり、傷がつきやすいんですけれども、その時に身近にナズナがあったら、葉っぱを揉んで傷口につけるといいんだよ〜なんて、昔は言われてきたんですね。食べても美味しいです」

●春の七草のひとつっていう印象はありましたけれども、そんなに重宝されている重要なものなんですね。「野草世界の野菜です」というふうに本にも書かれていました。やはりそれだけ重宝されているんですね。

「そうなんですよ。ビタミンとミネラルも豊富で、しかも味わい深いのが好きな人はこの根っこが美味しくて、鍋物に入れると出汁が出るぐらい美味しいです」

(編集部注:春の七草のひとつ「ナズナ」はアブラナ科の植物で、別名ぺんぺん草。1月7日に七草粥として食される風習があることは知られるところです。尚、特定できない植物は口にしないでください)

カタバミは可愛いけど、頭にくる!?

カタバミ
カタバミ

●では続いて「小さな時間泥棒」という見出しで「カタバミ」。これはレモンイエローで可愛らしい小ちゃな花ですね。

「はいはい。あっ、ご存知ですか? カタバミ」

●いえ、本で知りました! 可愛い花ですね〜。

「可愛いんですよ〜、ほんとうに(笑)。ハート型の葉っぱを3枚ワンセットにして、小さくこんもり茂るので、本当に頭にくるんですけれども、本当に可愛いんです」

●頭にくるんですか?

「ものすごく頭にきます(苦笑)」

●どうしてですか? 

「そこに生えてもらうとすごく薄汚く見える、でも違うところに生えてくれるとすごく綺麗に見えるところで、いちばん嫌なところに(カタバミが)生えてくるんですよ!

 だから抜き始めると、あそこにも! あそこにも! 気づいたら、あっちこっちにあるので、いつまでたってもカタバミって終わんないと、多分ガーデニングをやられているかたは、みなさん思われていると思います」

●だから時間が奪われてしまうんですね!

「そうです! 普通、冬になったら、みなさん冬ごもりで、おとなしくされるかたもいらっしゃるんですけれども、雑草の中でもこの子たちは、冬も元気よく芽を出してきて、なんかここにいるとムズムズするって言って取り始めると、1日が暮れてしまう・・・」

●え~〜っ、可愛い花なのに〜。

「可愛いんです(笑)。ほんと可愛いです!」

●あと「果てしない地下の攻防」ということで、「ヨモギ」ですね。

「ヨモギは、最近女性の間ですごく人気なんです。美容ですとか薬用とかで・・・。実際ガーデナー的に見ると、もう地獄ですね!」

●地獄ですか(笑)。どのあたりが・・・?

「カタバミは表に出てくる部分がイライラしてむしって地獄なんですけれども、ヨモギは本領が地下にありまして、根っこを追いかけ回していると1日が暮れてしまうというぐらい四方八方に広がっているので、抜ききれないんですよ」

●果てしないんですね。

「果てしないです。しかも途中でぷつって切れるところを用意しているので、やられた〜って(苦笑)」

●厄介なんですね〜。

「厄介です!」

雑草はタネから育てる

※実際に雑草を自宅の庭や鉢植えで育ててみようと思ったら、どうすればいいですか?

「そうですね。大概みなさん根っこから掘り上げて、鉢植えにされるんですけれども、ほとんどのケースは長持ちせず消えていくことが多いです。私もかなりの雑草を鉢植えにしましたけれども、例のごとく、やっぱり不思議なことに枯れていくんですよ、バタバタ・・・。ですが、タネを撒くとかなりの率で発芽して定着します。

 ですので、直植えでパラパラっと(タネを)撒くと、あとで大変なことになりますので、プランターとか鉢植えにちょっとパラパラっと撒いていただいて、ほかの草花と寄せていただくのがいちばんいいかもしれないですね」

●そのタネは、どうやって採取したらいいんですか?

「はい、この時分になってきますと、だいたい植物の茎が枯れて、上のほうに小ちゃいタネがついてきます。それが茶色く変色したものを、小ちゃいポリ袋とかにちょっと入れて、家に帰ってからそのままパラパラ撒いていただければなと思います」

●この時期、どんな種類のタネが採れますか?

スベリヒユ
スベリヒユ

「例えば、美味しいものに興味があるかたには、本に載っているやつなんですけれども、『スベリヒユ』というものが今ちょうどタネが採れる時期になります。これもプランターかなんかに撒いていただくと、たいして水やりをせずとも、むくむくと育っていきます。

 あともうひとつ、愛らしいのでは、私は個人的に好きなんですけれども『ザクロソウ』。これは小さな植物なのでプランターとかで寄せ植えに使っていただいたりですとか、しばらくここは管理しないから、ほかの雑草が生えてもらうと困るなってとこにタネを撒いていただくと、そこを美しく飾ってくれるんで、この2種はちょっとおすすめしたいです」

ザクロソウ
ザクロソウ

足もとに広がる雑草の世界

※長年、雑草を見続けてきて、どんな思いがありますか?

「一歩外出るともうワクワクしかないんですよ。そこら辺の道端の用水路で、あっ!お前、きょうも元気で花咲いたなっていう感じで、いつまで咲くのかな、お前は!とか、びっくりすることは本当に日常茶飯事です。

 普通に暮らしていると、うわー! 面白い!ってことってあんまり多分ないと思うんですけど、結構私の場合は日がな一日、うわー! すごい!で、暮らしていけるので実にありがたいです」

●ワクワクしますね! いいですね~。厄介者と言われている雑草でもその植物をちゃんと知ると見方が変わって、世界が広がる感じがしますよね?

「そうなんです。だいたい植物に対する印象は、本でもそうですし、一般的にもそうなんですけれども、よくできた生き物、光合成とかすごいことできる。その光合成ひとつとっても、あいつら、調べるとほんと苦労しているんだなとかがわかって・・・見るからに見すぼらしいなっているやつも、いろいろ苦労しているんだな〜っていうのがわかってくると、面白くてしょうがないです(笑)」

●特に森さんが今気に入っている雑草はありますか?

「時々聞かれるんですけれども、結構満遍なく好きで・・・でもあえて言うなら今は、本当にみなさんの足もとに必ずいるやつなんですけれども、「スズメノカタビラ」という小さなイネ科の植物なんです。これが可愛いなって最近思うようにはなりました」

●どう可愛いんですか?

「畑とかお庭に必ずといっていいほど生えてきて、プランターにも生えてくる、小ちゃいイネ科の雑草なんですね。こんもりしてくるとなんともいじらしい、あの美しい姿で広がってくれるので、それがちょっと微笑ましいというか、華やかな花に飽きると、そういうのにいくのかなとちょっと思ったりもします」

●では最後に、森さんにとって雑草とは?

「雑草とは私にとっての、やはり人生を変えた導き、今もどこに向かっているのかさっぱりわかりませんけれども(笑)、このまま草に導いてもらって、人生を歩んでいけたらなと思っています」


INFORMATION

『庭時間が愉しくなる雑草の事典
~身近にあるとうれしい花、残しておくとヤバイ野草』

『庭時間が愉しくなる雑草の事典~身近にあるとうれしい花、残しておくとヤバイ野草』

 この本には、可憐な花を咲かせる130種ほどの雑草が掲載されています。ひとつの種が見開き2ページで紹介されていて、写真も豊富。何より見出しが素敵なんです。ぜひ読んでください。きっと雑草が好きになりますよ。ご自宅にお庭がなくても、一歩外に出て、あなただけの雑草の庭を探してみてください。
 SBクリエイティブから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎SBクリエイティブ :https://www.sbcr.jp/product/4815611644/

 森さんの近況については、facebookをご覧ください。

◎森 昭彦さんfacebook:https://www.facebook.com/akihiko.mori.750/?locale=ja_JP

オンエア・ソング 10月1日(日)

2023/10/1 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. GREEN GRASS / GARY LEWIS&THE PLAYBOYS
M2. WILDFLOWER / BON JOVI
M3. WILDFLOWERS / RELISH
M4. YOU’RE BEAUTIFUL / JAMES BLUNT
M5. Wildflower / Superfly
M6. SOWING THE SEEDS OF LOVE / TEARS FOR FEARS
M7. WAITING IN THE WEEDS / THE EAGLES

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

2023年9月のゲスト一覧

2023/9/24 UP!

◎稲垣史生(国立研究開発法人「海洋研究開発機構JAMSTEC」の上席研究員)
海底下の微生物の謎、そして人類史上初の壮大なプロジェクトに迫る!』(2023.09.24)

◎塚田 健(平塚市博物館の天文担当学芸員)
今年後半の天文現象、おすすめは「中秋の名月」「ダイヤモンド富士」「ふたご座流星群」!』(2023.09.17)

◎田井基文(動物園・水族館コンサルタント)
世界を股にかける動物園・水族館コンサルタント〜夢は家畜専門の動物園』(2023.09.10)

◎YUKA(moumoon)
moumoon YUKA「私はできるだけ自然の中にいたいなって」』(2023.09.03)

海底下の微生物の謎、そして人類史上初の壮大なプロジェクトに迫る!

2023/9/24 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、国立研究開発法人「海洋研究開発機構JAMSTEC」の上席研究員「稲垣史生(いながき・ふみお)」さんです。

 JAMSTECは、海洋・地球・生命に関する研究や調査を行なう国立の研究機関で、
科学調査船「ちきゅう」や有人潜水調査船「しんかい6500」、その母船となる「よこすか」などを保有しています。

 この番組ではこれまでにも、横須賀にあるJAMSTECの施設を取材したり、研究員のかたにお越しいただいて、深海に生息する生き物のお話をうかがったりしてきました。

 そして、今回お話をうかがう稲垣さんは、深い海のその下、海底下の岩盤に生きる微生物を研究されているスペシャリストで、国内外の科学に関する数々の賞を受賞、世界から注目されている研究者でいらっしゃいます。

稲垣史生さん

 稲垣さんは1972年、福島県郡山市生まれ。九州大学大学院の博士課程修了。専門は「地球微生物学」。この学問は稲垣さん曰く、地質学や地球科学と、微生物学を融合したもので、1980年代頃からアメリカを中心に広まっていったそうです。

 稲垣さんが、海底下の微生物を研究するようになったのは1994年、大学院生だった頃、図書館で手にした科学雑誌「nature」に掲載されていた論文に出会ったことがきっかけなんです。

 その論文には、それまで生き物はいないとされていた、深海の海底下、500メートルを超える地層に膨大な微生物が存在すると書かれていて、大きな衝撃を受けたそうです。この論文との偶然の出会いこそが、稲垣さんの壮大な研究の始まりだったといえます。

 当時は、そんな海底下の地層に本当に微生物がいるのかと、世界中で議論になったといいます。その後、いくつかの国際的なプロジェクトが組まれ、ようやく少しずつ海底下の生き物の正体が明らかになってきたそうです。そんな海底下の微生物の調査・研究をリードする存在が、今回お話をうかがう稲垣さんなんです。

きょうは稲垣さんが先頃出された本『DEEP LIFE 海底下生命圏』をもとに海底下の岩盤に生きる微生物や、人類史上初の科学プロジェクトのお話などをうかがいます。

☆写真協力:海洋研究開発機構(JAMSTEC)

写真協力:海洋研究開発機構(JAMSTEC)

科学調査船『ちきゅう』は、洋上の研究所!?

※海底下の調査で活躍するのが、日本が世界に誇る船『ちきゅう』だと思うんですけど、稲垣さんの新しい本に掲載されている写真を見ると、豪華客船並みですよね。どんな船なのか、教えてください。

「そうですね。科学調査船としては世界最大かつオンリーワンの船と言っても過言じゃないと思いますね。
 全長は210メートルもあります。幅は38メートルで、総トン数が56000トンということですので、確かに豪華客船並みですよね。港で『ちきゅう』の写真を撮ろうとすると、近くからでは大きすぎて、全体が撮れないぐらい大きいんですよ。 なので、少し引き気味で遠くから撮らないと『ちきゅう』のいい写真は、なかなか撮れないですね」

●写真を見ると、船の上にやぐらのような大きな塔が立っていますけれども、これは何に使うものなんでしょうか?

「掘削をするとなると、パイプをひとつひとつ繋げて降ろしていく必要があるんですね。降ろす時にパイプを縦に引き上げて、それを海底に降ろしていく、そのための設備として、やぐらが必要なんです。

 このやぐら、非常に特徴的で高さは70メートル、水面からだと110メートルぐらいあります。パイプの吊り上げとか、連結のために必要なやぐらの下、船体の真ん中にムーンプールと呼ばれる穴が開いていまして、そこからパイプを降ろしていくというような仕組みになっています」

掘削で使うドリル・ビット
掘削で使うドリル・ビット

●どれぐらい深いところの岩盤まで掘ることができるんですか?

「『ちきゅう』は、現在のスペックですと、水深2500メートルの海底から約7500メートル掘削することができます。 これはライザー掘削という特殊な、石油業界で開発されてきた技術なんですけども、それを使うと2500メートルの海底から大体7000メートルから7500メートル掘れるということなんですね。パイプの長さが1万メートルぐらいと富士山の高さの大体3倍ぐらい、そのパイプを『ちきゅう』の船上に乗せるのに、あれだけ大きな船体が必要ということなんです。

 そういった石油業界のシステムを使わない掘削のやり方というのもあって、そうすると水深が2500メートルではなくて、もっと深い、例えば日本海溝のような数千メートルの深さから掘削をすることもできると、そういうすごい能力を持っています。

 『ちきゅう』の最も大きな特色は、やはり世界トップレベルの分析施設が船の上にあるということだと思うんですね。例えば、医療用のXCTスキャンとか電子顕微鏡まで船の上にあります。掘削によって採取してきた『コア』と呼ばれる棒状の地層のサンプル、これをXCTスキャンで分析をして、どんな地層なのかを瞬時に調べることができます。本当に船上に研究室がある“洋上の研究所”みたいな感じの施設になっています」

『ちきゅう』で作業中の稲垣さん
『ちきゅう』で作業中の稲垣さん

海底下は、キッツキツでアッツアツ!?

※稲垣さんの研究には欠かせないオンリーワンの船『ちきゅう』は、正式には地球の深い部分を探査するための船ということで、「地球深部探査船(ちきゅうしんぶたんさせん)」と呼ぶそうです。
 そんな『ちきゅう』は2005年7月に就航。その後、青森県八戸沖や、高知県室戸沖の海底下の掘削を行ない、地層のサンプルを回収しています。

 そのサンプルからどんなことがわかったんでしょうか。

「いろいろなことが分かりましたよ。私たちの本当に想像を超える膨大な数の微生物細胞がいることが、まず確かめられたということですね。 そして地層のサンプルから直接DNAを抽出して、その配列を読む。例えば、PCRっていう言葉は非常に一般的になりましたよね。あのPCRの原理を使って、微量なDNAを増やして、一体そこにどんな微生物がいるのか、というのを調べたということなんです。

 そうすると、地下にいる微生物は例えば、私たちの腸内細菌であるとか、もしくは発酵食品にいる納豆菌とか乳酸菌、そういう地上のありふれた微生物とは全く違う微生物たちで、その海底下の過酷な環境で独自の進化を遂げた、海底下にしかいない固有の微生物たちだったということが分かりました。そしてそれらが非常にゆっくりと活動することで地球規模の元素循環に重要な働きをしているということが分かってきました」

写真協力:海洋研究開発機構(JAMSTEC)

●稲垣さんは深い海の底の、その下の環境を”キッツキツでアッツアツの世界”と表現されていました。そんな過酷な環境にいる微生物は、どんな生き方をしているんですか?

「過酷なんですよね〜。海底下の世界って深くなればなるほど、古い地層だし、温度や圧力もどんどん高くなっていきます。そういった中で海底下の微生物はどうやって生きているんだろうと・・・極めてゆっくりひっそりと暮らしているようなイメージかと思います。ただただそこにじっとしていて、何百万年もの間、生き長らえていると言ってもいいかもしれません。

 そもそも岩石、もしくは堆積物の世界なので、その現場に水とか栄養が地表のようにバンバン供給されているような場所ではないわけです。食べるものが少ないので、超エコなサバイバル生活をしていると、そういうような世界だと思っています」

●何かしらのエネルギー必要ですけど、どうやってエネルギーを得ているんですか?

「すごくいい質問です! 基本的には我々が住んでいる地表の世界だと、太陽光がバンバンと降り注いでいて、活発にそのエネルギー使っていますね。しかし海底下深部、深海底のさらにその下となると、太陽の光は届きませんよね。そもそもエネルギーはどこから得ているんだろうと思いますよね。

 基本的には、地下に埋没した有機物が餌なんですけれども、非常に使いやすい有機物は地表で食べ尽くされちゃっているので、なかなかそれもご飯としては食べにくい・・・そうすると、何を食べているんだろう? どうやって生きているんだろう? っていうのが大きな謎なんですね。

 最近の学説ですと、岩石と水が相互作用することによって、実は微量な水素とか電子とか、そういったものがゆっくり出てくるということがわかっています。 実は地下の微生物は、そういう岩石と水との反応に生かされているっていうか、地球に生かされているような感じで、地質学的な時間スケールで、それこそ何百万年、何千万年も生きているんじゃないかと、そういう学説もあるくらいです」

回収された地層のサンプル
回収された地層のサンプル

究極のエコシステム!?

※私たち人類は、いま温暖化など地球規模の環境問題や、エネルギー問題に直面していて、SDGsもそうですが「持続可能」という考え方が求められていると思います。海底下の微生物を研究されていて、どんなことを思いますか?

「エネルギーが豊富にある世界に我々は住んでいるわけですけれども、海底下はエネルギーが枯渇した世界と言っても過言じゃない。そうすると、その差について考えさせられますよね。

 地表の世界は、太陽光の恩恵を受けた非常にエネルギーに満ちた世界なんですけれども、そこでは我々人間を含めて熾烈な競争とか自然淘汰のような進化が起きていますよね。
 ですが、海底下の世界だと太陽光が届きませんから暗黒で、本当にわずかなエネルギーしか利用できないということになります。逆にそのような環境では微生物たちはエネルギーを使い果たしてしまうと絶滅してしまうので、それを避けようとしているように見えます。

 つまり争いをやめて、究極のサバイバルモードに入っていると・・・。その差、もしくはその仕組みから、じゃあ人間社会がどういうふうに地球環境に寄り添って今後発展していくのか、持続可能性を創出していくのか、お手本になるといいますか、感覚的に学ぶ点が非常に多いなというふうに感じています」

●確かに微生物の生き方には、いろいろヒントがありそうですね。

「そうなんですよね。究極のエコシステムと言ってもいいんじゃないかと思います。 そこから持続可能性について何がわかるのか・・・。例えば、海底下の微生物生態系はおそらくですけれども、プレートテクトニクスとか、地震や火山活動とか、そういった地球本来のシステムに寄り添った形で進化して成り立っていると思うんですよね。

 また、エネルギーを無駄にする余裕は全くありませんから、自分の体のメンテナンス、例えば、DNAとかタンパク質等々が老化とともに損傷を受けますよね。そういったものを直していくためだけの、最小限のエネルギーしか使わずに、可能な限りのリサイクルをし、長いこと生きていると、そういう世界なんだなというのが分かります」

『DEEP LIFE 海底下生命圏~生命存在の限界はどこにあるのか』

壮大なプロジェクト、マントル・アタック!?

※稲垣さんの本に、海底下の岩盤のその先にある、マントルを目指す構想があると書いてありました。どんな構想なのか、教えていただけますか。

「地球という惑星の体積の83%が『マントル』という物質でできているんですね。私たちが暮らすいわゆる地表の世界、海水とか陸の土壌とか、そういった地表の世界は、マントルの上に存在するシャボン玉の幕のような場所だとイメージしていただければいいと思います。

 で、マントルの色って何? ってよく(みなさんに)聞くと、赤いドロドロしたやつじゃないの? っていう人が多いんですけれども、実はそうじゃなくて、マントルは『ペリドット』っていう緑の宝石の成分を多く含む岩石なんですよね。ドロドロしているわけではありません。ペリドットっていう宝石や、もしくはガーネット、ダイヤモンドも含まれていると言われています。なので、宝石の世界と言ってもいいんじゃないですかね。

 そういったマントルに含まれるエネルギーが、実は地球のシステムを駆動していると言いますか、動かしている。例えば、どうして海洋が循環するのか? どうしてプレートが沈み込んで地震が起きるのか? そういったさまざまな地球の事象は、実はマントルの動きにそのヒントがあると考えられています。

 なので、地球に生命がいるという状態を、マントルが作り出していると言っても過言じゃない。だけど人類は、まだマントルに到達したことがないんですね。そのマントルそのものの実態はまだ不明の点が多いということで、マントルを目指すという構想があります」

●すでに候補の海域とかってあるんですか?

「マントルに到達するにはもちろん深く掘削をしていく、そして調査をするということが必要なんですが、マントルの上に存在する地殻の厚さが重要なんです。地殻は岩石です。もちろんマントルも岩石なんですが、地殻の岩石の厚さが重要で、陸の近くは分厚すぎて、マントルに到達するのはおそらく難しい。でも海洋であれば、地殻の厚さが比較的浅い場所がいくつかあって、マントルに到達することができるんじゃないかと考えられています。

 現在はハワイ沖、コスタリカの沖合、そしてバハカリフォルニアというカルフォルニア半島の沖合、その3地点が比較的マントルに到達するまでの距離が短いので、掘削調査の候補地点として挙げられています」

※マントルへの到達を目指す、人類史上初の国際的なプロジェクトには、日本が世界に誇る科学調査船『ちきゅう』が大活躍することになると思うんですけど、プロジェクトが進行し、実現するのはいつ頃になりそうですか?

「なかなか答えるのが難しいんですが、国際的な科学者コミュニティーが最近、白書と言いますか、意見を取りまとめた文章を公開しておりまして、そこには、2050年までに実現すべき科学目標のひとつとして、マントル掘削というのが位置付けられていると・・・。

 ですから、先ほども申したように、まずその掘削候補となっている場所の地質を調べて、そしてマントルに至る途中の岩石を掘ってみて、どういう技術的な課題を克服しなければいけないのか、そういったものを見定めた上で最終的には“マントル・アタック”をやるというように、一歩一歩前進していくことが大事だと思います」

●ワクワクしますね!

「そうですよね。そもそもハワイ沖ですと日本に近いわけですが、水深4200メートルの海底から大体6000メートルぐらい掘削するとマントルに到達すると・・・、もしくは地殻とマントルの境界を貫いて、マントル、いわゆる宝石の世界に人類が初めて届くということになるんじゃないかと、そういうふうに考えられています」

生命の起源と地球の謎に迫る!

※果たして、アッツアツのマントルに微生物はいるのでしょうか?

「マントルに生命がいるのか? って言われると、いや、いないでしょうというふうに答えるかと思うんですけども、ハワイ沖であれば、上部マントルの温度はだいたい150度ぐらいと考えられているんですね。この間、室戸沖で掘った120度の地層にも微生物はいましたから・・・いや、どうなんでしょうかね・・・その生命が存在するかとか、もしくは生命の起源の鍵となるような化学反応が起きているかどうか等々、生命に関する多くの疑問がマントル掘削によって明らかになるんじゃないでしょうか。

 もちろん地球の構造はどうなっているんだろう? とか、そもそも地球はどんな星なんだ? っていうことが明らかになるわけですから、さまざまなことが発見されると思うんですけど、生命にとっても非常に重要な科学的な問いが、マントル掘削によって満たされるんじゃないかと思います。その鍵になるのは”水”だと思っています」

●水!?

「はい、つまり生命が存在する、もしくは生命の起源となる化学反応が起きる、つまりそれは、岩石と水との反応がないと、なかなか難しいと思うんです。
 岩石の中、地球の中にどれぐらい水があるのか? というのも、実は第一級の科学的な問いになっていて、その水が供給される何らかのメカニズムがあると、低温のマントルを含めて、そこに生命が存在する可能性というのは否定はできない、それを検証したいと思いますよね」


INFORMATION

『DEEP LIFE 海底下生命圏~生命存在の限界はどこにあるのか』

『DEEP LIFE 海底下生命圏~生命存在の限界はどこにあるのか』

 稲垣さんの新しい本をぜひ読んでください。海底下の岩盤に生息する微生物研究の歴史や動向、そして最前線を知ることができますよ。なにより稲垣さんの、研究にかける熱い思いを感じます。
 講談社のブルーバックス・シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎講談社 :https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000377075

 JAMSTECのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。科学調査船「ちきゅう」の説明や写真も載っていますよ。

◎JAMSTEC :https://www.jamstec.go.jp/j/

オンエア・ソング 9月24日(日)

2023/9/24 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. EARTH / LIL DICKY
M2. SEVEN SEAS OF RHYE / QUEEN
M3. I WILL SURVIVE / CHANTAY SAVAGE
M4. THAT’S THE WAY OF THE WORLD / EARTH WIND & FIRE
M5. GAIA / VALENSIA
M6. 瑠璃色の地球 / 松田聖子

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

今年後半の天文現象、おすすめは「中秋の名月」「ダイヤモンド富士」「ふたご座流星群」!

2023/9/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、平塚市博物館の天文担当学芸員「塚田 健(つかだ・けん)」さんです。

 幼少の頃から星や宇宙に興味を持っていた塚田さんは、東京学芸大学大学院の修士論文も天文学で書くほどの天文好き。専門は太陽系小天体と太陽系外惑星など。現在は学芸員のほか、東京学芸大学の非常勤講師や、月刊『天文ガイド』に寄稿する天文ライターとしても活躍、天文や宇宙に関する本も出していらっしゃいます。

 そんな塚田さんが先頃出された本『天文現象のきほん』は、初心者でもわかりやすい内容で、日常的に起きている日の出・日の入りや、月の満ち欠けを身近な天文現象と捉え、解説してあるのも特徴なんです。

 きょうは、今年後半の注目の天文現象から、おもに「ダイヤモンド富士」や「中秋の名月」そして「ふたご座流星群」のポイントや見所などうかがいます。

☆写真協力:平塚市博物館/塚田 健

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

ダイヤモンド富士、10月23日、午後4時47分!

※太陽の現象でいうと「ダイヤモンド富士」が知られています。改めてどんな現象なのか、教えてください。

「ダイヤモンド富士というのは、富士山の頂上に太陽が沈んでいく、もしくは頂上から太陽が昇ってくるように見える、そういう現象です。富士山は頂上が平らじゃありません。火山なので凸凹している、その隙間から太陽の光が出てくる、それがすごく美しいのでダイヤモンド富士と呼ばれていますね」

●ベイエフエムのある海浜幕張からは、数日にわたって観察できるそうですね?

「ある一箇所からだと、だいたい年に2回見られることが多くて、おそらくベイエフエムさんのビルだと10月23日だと思います」

●次回のダイヤモンド富士が、そんなにすぐ見られるんですね!

「そうですね」

●ダイヤモンド富士を海浜幕張から見ようと思ったら、何時くらいから注目していればよろしいですか?

「これは計算できまして、太陽の中心が富士山の頂上に接するのが、およそ午後4時47分なんですね。その時は、富士山の上に半分ぐらい太陽が出ている状態になります。その2〜3分ぐらい前、午後4時45分ぐらいから見始めて、完全に隠れるのが48分過ぎっていう感じになりますので、午後4時45分から5分間ぐらい見ればいいのかなと思います」

●観察するときの注目ポイントはありますか?

「まずしっかりと時刻を把握しておかないと気がついたら、もう沈んでいるなんてことがあると悲しいですので・・・もちろん、30分〜40分前から待っていてもいいんですけれども、その瞬間を見逃さないためには時刻をしっかりと把握しておいてほしいかなと思うのと、やっぱり自分なりのビュースポットをあらかじめ探しておく、前の日の昼間とかでもいいので、探しておくっていうのがいいですね」

●どういう場所がいいんです?

「そうですね・・・やはり富士山が裾野まできれいに見えるところがいいのかなと思います。千葉県だと館山のほうで東京湾越しの富士山が見られます。海と富士山ってすごく綺麗なんですけれども、そういう自分が好きな風景と一緒に富士山が見える場所を探せるといいんじゃないかなと思いますね」

塚田 健さん

満月と富士山の共演! パール富士

※富士山の山頂から満月が昇ったり、沈んだりする「パール富士」という現象があることを塚田さんの本で知りました。この現象についても教えてください。

「月は白っぽく見えると思うんですけども、パール富士、パールって真珠ですよね。なので満月、ちょっとぐらい欠けてもいいんですけど、満月が富士山の頂上に沈んでいく、もしくは昇ってくる現象をパール富士と言います。これはダイヤモンド富士と違って結構珍しいですね」

●ダイヤモンド富士は1年に2回とおっしゃっていましたけれども、このパール富士はどれぐらいの頻度で見られるんですか?

「必ず年に何回とかそういう決まりが残念ながらないので、下手をすると年に1回も見えないこともありますし、運がよければ、年に2〜3回っていうこともあり得ます。月が富士山のほうに沈む時に、ちょうど満月になっていないといけないので・・・。

 そもそも満月は年に12回しかないですから、太陽はいつでも丸いまま毎日沈んでいきますけど、月はそうはいかないので、そういった意味ではパール富士は、場所を問わなくても、年に12〜13回しかチャンスがないんですよね」

●塚田さんの本に千葉の館山市で撮影されたパール富士の写真が載っていましたけれども、すごく神秘的ですね。

「そうなんです。太陽もすごくキラッとして眩しいくらいで綺麗なんですけれども、満月はすごく静かな感じがして、特に関東地方で見られるパール富士は必ず明け方ですから、月が沈む時に西の富士山に見えますので、周りも静かなんですよね、夕方と違って・・・。なので、そういった静かな、静のイベントっていう感じがします」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

9月29日は「中秋の名月」

※満月といえば、今年(2023)は9月29日(金)が「中秋の名月」となっています。今年の見所はどんなところですか?

「まず中秋の名月は、必ずしも満月とはならないんですけれども、今年は満月なので、丸い月がきれいに見えると思いますし、9月の下旬ということで比較的空がいい感じに晴れるかなと思うんですよね。9月下旬から10月の中旬ぐらいが、空は非常に安定しますので、晴れれば、綺麗な月が見られると思います」

●「中秋の名月」は満月じゃない時もあるんですね。

「あるんですね。中秋の名月は十五夜とも言います。これは昔の、いわゆる旧暦で15日目ってことになるんですけれども、月が地球の周りを回っている軌道、道筋が円じゃなくて楕円なので、地球に近い時は早く回って、遠ざかると遅く回っていきます。

 同じ速さで回っているわけではないので、どこで満月になるかで早い時は、ちょっと日付が早まりますし、もうちょっとずれることも、遅くなることもあって、13日から17日ぐらいまで 結構幅があるんですね」

●満月の中でも、この時期の満月を「名月」と呼ぶのはどうしてなんですか?

「まず、高さがちょうどいいんだと思います。太陽もそうですけれども、季節によって満月の高さって変わるんですね。冬の満月はすごく高いんです。空高くて、空高いと地球の空気の影響をあまり受けないので、月が真っ白く、凍てつくようなと言いますか、すごく刺さるような明るさを持つんですよね。

 それはそれで神秘的だと思うんですけれども、ちょっときついかなというか、そういうイメージがあるのと、夏は逆に満月はすごく低いんですよ。そうするとなんか霞んで色もちょっと赤っぽくなってしまいますし、ぼやけた感じになってしまいますね。

 で、高さ的には春と秋がいいんですけれども、春は春で花粉であったり黄砂であったり、空がかすんでしまいがちで、朧月夜(おぼろづきよ)って言いますよね。そうなってしまうので、定期的にもよく晴れて、月がきれいに見えるのが秋なのかなと思います」

●だから名月なんですね。満月の模様は日本では、ウサギがお餅をついているように見えると言われていますけれども、それは海外でも言われているんですか?

「海外だと別の動物ですね」

●ウサギじゃないんですか?

「ウサギじゃないんです。カニだったりカエルだったり、あとは本を読んでいる人とかですね。ひとつ変わった例が、ウサギにしてもカニにしてもカエルにしても、土の中に見える黒っぽいところをその形に見るんですけど、ヨーロッパの一部では逆に白っぽいほうを女の人の横顔と言うとか、本当に文化によって様々です」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

12月のふたご座流星群、好条件!

※今年(2023)10月以降の天文現象でおすすめはありますか?

「まず、なんといっても、 12月のふたご座流星群かなと思います」

●見どころはどんなところでしょう?

「まず、流れ星がたくさん流れるんですけれども、今年は月の条件がいいですね。流れ星がたくさん流れる時間帯に、月が残っていると明るくて、どうしても暗い流れ星が見えなくなっちゃうんですけれども、今年はその心配がないですね。

 あと、ふたご座流星群が全体的にそうなんですけれども、夜更かしをしなくても見られるんですね。ペルセウス座流星群って8月によく見える流星群であるんですけれども、ペルセウス座流星群は午前2時とか3時じゃないとたくさん流れてくれないんです。ふたご座流星群は夜の8時、9時でもまあまあ見えるので見やすいかなと・・・まあ寒いっていうのはあるんですけどね」

●1時間にどれぐらい出現しそうですか?

「空が暗いところであれば、50個60個は見えます」

●いいですね! 今年のふたご座流星群は観察しやすそうですね。

「そうですね。今年はおすすめです」

●同じ流れ星でも、光ながらも燃え尽きずに再び宇宙へ飛び出していく流れ星があると、塚田さんの本で知ったんですけれども、改めてそれはどんな流れ星なんでしょうか?

「流れ星は、そもそもの話をすると、小さな砂粒が地球に落ちてきて、地球の空気とぶつかって熱くなって光るんですね。地球は丸いですから、すれすれに(砂粒が)来ると、水切りと同じ要領で一回、地球の空気に入るんですけれども、そのまますっ〜と落ちずに飛んでいくっていうのがあるんです。地球の空気に入っている間だけ光ってそのまま去っていくので、見ていると入ってきて、また上がっていくっていうような不思議な感じがするんですね」

●それは実際に見ることはできるんですか?

「見ることはできるんですけれども、いつどこでっていうのは全く予想がつかないので、もう運次第です!  『アースグレイジング』と言って、流星群の時に見えることもあれば、そうではなく普段の日に何の前触れもなく見られることもあるんです」

●ものすごくレアなんですね!

「そうですね。なかなか機会はないですね」

(編集部注:お話にあった「アースグレージング流星」、「アース」は地球、「グレージング」には、かする、という意味があるそうです。塚田さんの本には2022年5月に観測された「アースグレージング流星」の写真が載っていますよ。ぜひご覧ください)

『天文現象のきほん』

星の色の違いは表面温度!?

※これから秋も深まり、冬になると空気が澄んできて、星空観察にはいい時期なりますよね。「冬の大三角形」や「冬のダイヤモンド」、そして「オリオン座」などが見頃だと思いますが、星空を見ていると、白だけじゃなくて、青い星だったり、赤く見える星もありますよね。星の色が違うのは、どうしてなんですか?

「星の色は、その星の表面の温度で変わるんです。イメージとちょっと反対かもしれませんけれども、青っぽい星のほうが温度が高く、赤い星のほうが温度が低くて、太陽はどちらかというとその真ん中へんの、遠くから見ると黄色っぽく見える星なんですけれども、大体6000度くらいですね。

 青白い星、冬の星で言いますと、オリオン座の『リゲル』っていう星がだいたい10000度とか20000度とかそれぐらいありますね。一方で3つ星を挟んでオリオン座の反対側にある 『ベテルギウス』っていう明るい赤い星があるんですけど、こちらは3000度くらいです。温度で色が決まっているんですね」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

(編集部注:今年、秋から冬にかけての天文現象として、土星の輪っか「リング」のお話もありました。塚田さんによると、土星のリングは、地球から見ると毎年傾きが変わるので、来年以降は見えなくなるそうです。
 次に見えるのは2027年だそうで、土星のリングを見たいかたは今年がチャンスだとおっしゃっていましたよ。望遠鏡を持っているかた、ぜひ観察してみてください)

見あげてごらん、星空を

※塚田さんは、小惑星探査機「はやぶさ2」の記事も書かれたことがあるそうですが、いま注目している宇宙開発や宇宙探査はなんですか?

「打ち上げが来年度で、詳しい日付は決まってないんですけれども、『MMX』っていう探査機を日本が打ち上げることになっています。MMXのMは『Mars(マーズ)』、つまり火星なんですね。

 火星の衛星、火星の周りを回っているお月様に行って、『はやぶさ』の時のようにそこの砂を採ってきて、地球に帰ってくるっていうミッションなんですね。まだ火星の衛星から砂を持って帰ってくるっていうのは、どの国もやったことがないことなので、新しいチャレンジになりますので、ぜひ成功してほしいなと思いますね」

●塚田さんのお話を聞いて、星や宇宙に興味を抱いたかたに何をいちばんお伝えしたいですか?

「星や宇宙っていうと遠いというか、自分たちのいる世界とは、かけ離れた世界と思ってしまいがちなんですけれども・・・でも地球は宇宙の中にありますし、当然私たちは太陽の光を浴びて昼は暮らしていますし、夜には月や星が見えます。

 宇宙は、実はそんなに遠いものではなくて、距離は確かに遠いかもしれないですけれども、身近なものですし、何より私たち生き物は宇宙から生まれてきた、宇宙の星とかそういったものから生まれてきたので、本当に無関係どころか密接な関係があるんです。

 なかなかそれを見て感じるっていうのは難しいんですけれども、晴れれば誰でも見られるんですよね、星って。もちろん街中では明るい星しか見えないってこともありますけれども・・・でも誰にでも、頭の上に等しく星空は広がっているので、ぜひ日頃から空を見上げてほしいなと思います」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

INFORMATION

『天文現象のきほん』

『天文現象のきほん』

 塚田さんの新しい本をぜひ読んでください。副題は「今夜はどの星をみる? 空を見上げたくなる天文ショーと観察方法の話」。天文と星空に関する説明が、太陽、月、惑星、太陽系の小天体ほか、全部で6つのチャプターに分かれ、62の項目がそれぞれ見開き2ページで完結、チェックポイントと楽しみ方が写真や図でわかりやすく解説されています。特に初心者におすすめですよ。
 誠文堂新光社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎誠文堂新光社:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/astronomy/81383/

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

 塚田さんが解説されているプラネタリウムの投影プログラムについては、平塚市博物館のサイトをご覧ください。

◎平塚市博物館:https://hirahaku.jp/

オンエア・ソング 9月17日(日)

2023/9/17 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. STARLIGHT / TAYLOR SWIFT
M2. SUNSET BORDERLINE / SANDI THOM
M3. TALKING TO THE MOON / BRUNO MARS
M4. DANCING IN THE MOONLIGHT / TOPLOADER
M5. 夜空ノムコウ / SMAP
M6. ベテルギウス / 優里
M7. STARDUST / NAT KING COLE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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