2026/8/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「国立科学博物館」動物研究部の研究員で「クジラの先生」として知られる「田島木綿子(たじま・ゆうこ)」さんです。
現在上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」、夏休みということもあって、お子さんを連れたご家族もたくさん来場され、賑わっているようです。
今回の特別展は、NHKの自然番組「ダーウィンが来た!」との共同企画で、国立科学博物館が所蔵する標本や資料などに加え、「ダーウィンが来た!」の迫力ある映像が見られます。
また、公式ナビゲーターに相葉雅紀さんが起用され、館内で聴ける音声ガイドにも登場、話題になっています。
きょうは、そんな「いきもの超ワールド展」の見どころのほか、田島さんのご専門、イルカやクジラが座礁するストランディングについてもうかがいます。
☆写真協力:いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!

いきものの生存戦略
※今回の特別展のテーマが「いきものの生存戦略」ということなんですが、改めて、どんな展示になっているのか、教えていただけますか?
「生き物の生き残り戦略は、みなさんご存知の通りたくさんあります。ただそれを展示に落とし込むとなると、すべてを語ることはとても無理なので、そこからお客様とか我々研究者、スタッフ一同が面白おかしく展開できるテーマを設定するのに少し時間がかかりましたが、それを通して彼らが地球上でどうやって生き残ってきて、これからどうやって生き残っていくのだろうということが、わかっていただけるといいなという展示になっています」
●今回の特別展では、田島さんを含め5人の研究者の方々が監修として携わっています。展示のテーマや内容についてアイデアを出し合いながら、みんなで進めていったという感じなんですか?
「そうですね。企画会議は3年前ぐらいからスタートしていますので、そこからだんだんと絞り込んでいったということですかね」
●それぞれにみなさん専門がありますから、お互いの刺激になるような話も多かったんじゃないですか?
「そうですね。結局テーマを決めた段階では、そのテーマに合う標本なり、トピックだったり、研究成果なりということをそれぞれ出し合って、逆にそっちがあるんだったら、こっちもそれに関係して、うちのほうも出せるよとか、テーマが決まってしまうと研究者あるあるですけど、面白おかしくどんどん進んでいったというのはありますかね」
●「ダーウィンが来た!」のスタッフのみなさんも参加してのミーティングですか?
「もちろん、もちろん」
●会場で上映している映像については、国立科学博物館側からのリクエストというのもあったんですか?
「う~ん、どうでしょう・・・あまりうちが“こうしてください!”というのはなくて、その企画会議の中で自ずと、どんなテーマでどんな標本、どんな生き物が出るというのはわかってきますので、ダーウィンのかたたちに任せて、“ここではこういうのを出そうね”というのは普通にわかってくるので、ほとんどお任せでしたね」
(編集部注:今回の展示は生き物たちの生存戦略を、6つのチャプターに分けて解説。その6つとは、「いきもので異なる五感」、「いきもので異なるエネルギー補給」、「いきものの挑戦“サイズ”適応術」、「いきもので異なる移動のかたち」、「いきものに学ぶ集団の意義」、そして「いきものが紡ぐ命のバトン」となっていて、それぞれのコーナーで、貴重な標本や資料の展示に加え、迫力のある映像を体験できます。詳しい展示内容については、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください)
☆いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp

イルカやクジラの視覚、聴覚、嗅覚、味覚
※ここからは「クジラの先生」として知られる田島さんに、今回の特別展にちなんで、イルカやクジラの五感について、初歩的なことをうかがっていきます。イルカやクジラは、視力はどうなんでしょう? いいほうなんですか?
「“いいほう”という基準が難しいですが、海洋環境というのは全体のわずか2%しか太陽の光が届きません。視力というのはどうしても太陽の光がないと、ほとんどの生物は見るという行為ができません。
わずか2%にいる間は視力を使っていますが、光が届かないところだと使いたくても使えないとは思うので、難しいですが、まったく悪いわけではなくて、視力は哺乳類としては普通に使える機能や構造は持っています」
●いちばん発達している感覚とは何なのでしょうか?
「鯨類の場合は、大きく“ハクジラ”と“ヒゲクジラ”に分かれますけれども、ハクジラは特殊でいわゆる“エコロケーション”超音波を使って周囲を確認していますので、それは聴覚になるんですかね。エコロケーションだと聴覚になるので、彼らはほとんど聴覚という感覚ですかね。
ヒゲクジラの場合は難しいですけど、あまりどこがというのはなく、やはりその場その場の環境によって嗅覚だったり触覚だったり視覚、ただ鯨類の場合は嗅覚が発達していないと言われていて、ヒゲクジラの場合は逆に嗅覚はまだ使っているということなので、それぞれの分類群によって違います」
●匂いを感じる嗅覚はないということなんですか?
「ハクジラはないと言われていて、結局、解剖学的にその部位がないので使っていない、または進化の過程で退化してしまったのだろうと言われています」
●イルカやクジラは魚など、そしてシャチはほかのクジラなどを食べますよね? ということは肉食になるのかなと思いますけれども、舌で味を感じたりというのはあるんですか?
「う~ん、彼らはほとんど丸呑みなので・・・いわゆる味覚というのは人間社会だと味わったりグルメだったり、美味しい美味しくない、なんて言いますよね。生き残るための味覚ではなくて嗜好性に偏っていますが、クジラ含めた生き物にとっての味覚というのは、そういうふうに発達したわけではなくて、例えば毒成分なものを食べないようにとか、腐っているものを食べないように、またはうま味成分としては例えば糖質、グルタミン酸みたいなものを舌とかいろんな場所でかぎ分けてはいるそうですけど、いわゆる人間社会で言う、味わうという感覚ではないそうです」
●胃はひとつなんですか?
「胃はひとつですよ。ただそれが複数の部屋に分かれているという言い方をしますね」

プランクトン食のほうが大きくなれる!?
※続いて、イルカやクジラの体の大きさについてなんですが・・・世界最大の哺乳類は、シロナガスクジラですよね。
「地球上に生きている最大の動物という枕言葉がつくと、シロナガスクジラになります」
●どれくらいのサイズなんですか? 今まででいちばん大きかったのは?
「記録的には南半球に、シロナガスクジラが33メートルっていう記録があったんじゃなかったかな・・・」
●なんでそんなに大きくなるんですかね?
「ふふふ、知りません(笑)。それはシロナガスに聞かないと(笑)」
●大きいことのメリットとデメリットがあると思うんですけど・・・。
「まあ、そうですね。いろんなところでお話をしていますけれども、結局大きくなれるというのは条件次第なので、本人たちが大きくなりたいと思ってなれるわけではなくて、ある一定の条件が揃わないと・・・。
大きくなれる条件って、やはり水の中にいると浮力を獲得しますので、自分で自重を支えなくていいっていうのと、あとは消費エネルギーと獲得エネルギーをいつも天秤にかけていて、消費エネルギーより獲得エネルギーが多くないと、餌をとるたびに疲弊していたら、そのうち衰弱してしまいますよね。
なので、彼らはなるべく要領よく楽をして餌をとりたいわけですね。そうするとプランクトンみたいに小さなオキアミを食べている動物のほうが、実は大きくなれるわけですよ。
シャチとか、陸上で言うとチーターとか、あと恐竜で言うとティラノサウルスみたいな、いわゆるチェイシング、追いかけ型、スピード型の捕食者は、結局自分で走らなきゃいけない、自分で追いかけなきゃいけないと、それだけ消費エネルギーが莫大ですよね。
あと大きすぎるとドスドスドスドス、自分でその体を持て余してしまう。特に陸上だと重力っていう最大の問題がありますので、だから陸上動物のいわゆる捕食者、トッププレデターはそんなに大きくなれないわけですよ。なれたとしてもスピード型では食べられない。一方、水の中だと浮力を獲得しますので、陸上よりは大きくなれると・・・。
で、もうひとつ、オキアミを食べる、一回の口を開けてパクって取り込む消費エネルギーに対して、一個一個は小さいオキアミですけれども、それをひとつの大きな塊として考えた時には、獲得できるエネルギーがものすごくあるわけですね。
そうすると確実に消費エネルギーより獲得エネルギーが増えます。実はオキアミとか群生の小魚を食べる動物のほうが大きくなれるという条件になるので、陸上より海の中のほうに大きい動物が多いし、海の中でもプランクトン食のほうが大きくなれるという条件になります」
●「歌うクジラ」として知られているザトウクジラについてもうかがいたいんですけど、歌うのはオスだけなんですか?
「と、言われています。メスも歌えなくはないと思いますけど、コミュニケーションのためには音は出しています。
いわゆる求愛アピールとしての、みなさんがよくおっしゃるラヴ・ソングはオスからメスへの求愛行動なので、基本的にオスしか出さないっていうふうに言われています」
●ザトウクジラは、その時にクジラ・ミュージック界で流行っている歌を歌うっていうのを聞いたことがあるんですけど、本当なんですか?
「みたいですね。それも研究の成果みたいですけど、ある一頭がその年に今まで聴いたことがないソングを歌い出すと、みんなそれに同調するように同じように歌い出すっていうのが研究成果とか、いろんなところで情報が集められているので、今のところ、それがいいとザトウクジラ界では思われているのかな~と・・・」
イルカやクジラの座礁は人間社会の影響!?
※田島さんは、イルカやクジラが陸にあがってしまう「ストランディング」研究の専門家でいらっしゃいます。6年前にご出演いただいたときにも、そのお話はうかがったんですが・・・その後の調査・研究で、なぜストランディングしてしまうのか、以前は、病気のせいではないかとおっしゃっていましたが、新たにわかったことはありますか?
「あまり人間にとってよくない話かもしれませんけど、やっぱりどうしても人間社会の影響がものすごく深く入り込んでいる事例を多く経験します。
最近だとみなさんご存知の通り、海洋プラスチック問題というのは、私たちも避けて通れない問題になっています。その海洋プラスチックを食べたことで衰弱死してしまうものもいれば、そこに吸着しているいわゆる環境汚染物質というのも、新たな脅威として注目されているので、私たちも細く長く研究を続けています。
あと最近、日本でも起こってしまっているのは、大型タンカーと大型クジラの衝突事故というのが、前よりも結構な頻度で発見されています。
大阪湾にマッコウクジラが打ち上がって、その時“ヨドちゃん”という名前がついたりもしましたけど、いつもいないところに迷い込む個体も見えてくると、ああいう場合は本当にどうしてかな? と思うしかないんですけど・・それらを含めてもやはり人間社会がちょっと影響しちゃっているかな・・・温暖化もまさにそうだと思いますけど、相変わらず病気とかは見つけていますけど、う~ん」」
●そうなんですね。生きたままイルカがストランディングしてしまうというニュースもありますけど、集団で座礁してしまうというのは、リーダーが方向感覚を失うといったこともあるのですか?
「う~ん・・・と言われる論文とか、いろんな書籍もあるんですけど、リーダーというよりは(イルカは)社会性が強いので、なんとなくみんな同じ方向に向かって行って、気づいた時にはあら~という感じだったり、リーダーだけのせいとはちょっと思えないところもあったりしますかね。
あとは、冷たい海域にトラップされちゃったりとか・・・だいたい春先に暖かい海が好きな種が千葉とかで打ち上がることが多いので・・・。
あと別の理由だと、いわゆるこれも人間社会の影響ですが、軍事演習ソナーがクジラの耳を攻撃してしまうので、それで死んでしまうというのも世界中で知られていることですね。ちょっと怪しいなというのは、日本でもパラパラ見えますけど、それを因果関係として証明するのはすごく難しくて、もどかしい事例もありますけどね」
●日本でイルカとかクジラがストランディングするのは、年間何件ぐらいになるのですか?
「報告例という意味でいくと、年間300件前後は報告されています」
●千葉県は多いほうですか?
「千葉県はものすごく多いですよ。やはり房総半島という大きな半島がありますし、南からは黒潮が流れて、銚子の沖から岩手県あたりまで親潮が流れてきて、ちょうど暖水と冷水が交わるところなんですね。
だからとてもいい魚場だと言われている通り、そこに海に棲んでいる生き物たちが餌を探して向かうわけなので、本当に千葉県はそういう意味では通り道だったりするので(ストランディングは)非常に多いです」
(編集部注:全国の浜にイルカやクジラが上がったというストランディング情報は各地の大学や水族館、博物館などと連携しているのでケースバイケースではあるそうですが、田島さんのところに連絡が来るそうです。
千葉は県立中央博物館やNPO、マリン関係者のほか、以前この番組にご出演いただいた「銚子海洋研究所」の「宮内幸雄(みやうち・ゆきお)」さんもいらっしゃるので、千葉県はとても連携がとれているとおっしゃっていました。
研究者としての田島さんの仕事は、「科捜研の女」のクジラ・バージョン、ということで、解剖して死因を解明すること。また、骨はいろんなことを語ってくれるともおっしゃっていました。
もし、浜に打ち上がっているイルカやクジラを見つけたら、地元の警察や消防、市役所などの公的機関のほか、同じく地元の水族館や博物館、大学などの研究機関に一報を入れてくださいとのことでした。そうすると、田島さんに連絡が入る場合もあるそうです)
人間も「いきものワールド」の一員
※ストランディングしてしまった大きな個体を前にして、どんなことを思いますか?
「生き物なので必ず死にますし、命が尽きるのは当たり前のことなんですけど、最近(調査研究を)やっていて思うのは、やはり死ななくてもいい個体もいたな~とか思うんですね。
それがいわゆる大型船にひかれちゃうとか、海洋プラスチックがお腹の中にあるとか、それはある動物、いわゆる人間ですけど、ある動物がほかの動物にちょっと迷惑をかけているわけじゃないですか。
それをあまり一方的に迷惑ばっかりかけちゃっていると、全体の生態系はいいほうには進まないので、人間のせいにしたいわけじゃないんですけど、そういうことをちゃんとみなさんにメッセージとして伝えるためにも、一頭一頭、これはどういうふうに亡くなってしまったのか、その原因は何だったっていうのを整理して、やっぱり人間社会、ちょっとだけ遠慮しようよとか、そういうことを含めて根拠のあるコメントを言えるように、一頭一頭に向き合っていくということを常に感じますかね」
●クジラの骨格標本も展示されている、現在開催中の特別展『いきもの超ワールド展』、今夏休み中ですのでお子さんも多く来場されると思います。総合監修の田島さんから、ここは逃さず見て! というところがありましたら、ぜひ見どころを教えてください。

「見どころは、いろんな人に質問されて考えたんですけど、おそらく今回6つのテーマに分けたっていうことが最大の見どころで、会場に来てくれたかたたちは、“なんでこっちのテーマをピックアップしてくれなかったのか“とかいうかたもいると思うんですよ。
ただ今回は、私が総合監修をさせていただく時に、やはり昆虫から海の無脊椎動物、脊椎動物、大きなものから余すところなく生き物をたくさんご紹介したかったので、その動物たちに当てはまるテーマ決めっていうのがいちばん大変で、それで6つにしたんですけど・・・。
そうすると、その6つすべて実は人間も当てはまることがすごく多くて、人間は全然、別のところから彼らを見るのではなくて、まさに特別展の中の、生き物のワールドの一員として、特にお子さんたちは“自分たちは、どれが当てはまるかな”とか、“自分たちにはないけど、逆に自分たちにしかない“とか、そういう自分と付き合わせたり、比べたりしながら彼らのこと、そして自分たちのことを知るきっかけ作りにしていただけたら、すごく我々一同嬉しいですね」
INFORMATION

上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」にぜひお出かけください。いきものの生存戦略に改めて驚くと思いますよ。展示のひとつに、体全体を迫力のある映像に包まれる空間があって、自分がアフリカの大地や海の中にいるような錯覚を覚えますよ。ぜひ体験してみてください。公式ナビゲーター相葉雅紀さんの音声ガイドもお楽しみくださいね。

開催は10月12日まで。開館時間は朝9時から夕方の5時まで。入場は4時30分まで。入場料は一般・大学生 当日券2,300円。小・中・高校生 当日券600円。詳しくは、特別展のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp






