2026/8/30 UP!
◎菊池真以(気象予報士、防災士)
『「防災力は想像力」〜子供も大人も防災力を身につけよう』(2026.8.30)
◎ほりかわあきな(サイエンスライター)
『こんなに違う!? 野菜や果物、昔の姿と今の姿』(2026.8.23)
◎茂木みかほ(海あそびナビゲーター)
『磯や砂浜で生き物観察〜子供と「海あそび」のすすめ』(2026.8.16)
◎田島木綿子(「国立科学博物館」動物研究部の研究員)
『特別展「いきもの超ワールド展」をクローズアップ!〜総合監修を担当された国立科学博物館の田島木綿子さんに聞く』(2026.8.09)
◎清野 隼(筑波大学大学院の助教/管理栄養士/日本スポーツ協会公認のスポーツ栄養士)
『登山の安全対策「食事と栄養」〜日頃から栄養素の役割を意識』(2026.8.2)
2026/8/30 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、気象予報士そして防災士の「菊池真以(きくち まい)」さんです。
菊池さんは、茨城県竜ヶ崎市出身。慶應大学在学中に気象予報士の資格を取得し、気象予報士として活動。その後、NHKやTBSの気象キャスターとして活躍。現在は、お天気関連の記事の執筆や講演活動のほか、空の写真家として、空や雲の写真を発表されるなど、幅広く活動されています。
今回は9月1日の「防災の日」を前に、菊池さんの新しい本『自然災害・地震・異常気象からこどもを守る〜「もしも」のときの防災ずかん』をもとに、防災士の視点で子供を守るための対策やポイントなど、お話しいただきます。
☆写真協力:菊池真以、イラスト協力:オレンジページ

4つの危険を覚えておこう
※『自然災害・地震・異常気象からこどもを守る〜「もしも」のときの防災ずかん』は、自然災害が増えている昨今、子供の頃から身を守る術を知っていてほしい、という思いで小学生のお子さんひとりでも読めるように、難しい表現は避け、わかりやすくを心がけ、執筆されたそうです。
漢字にはふりがながふってあり、絵本のようなイラストを見るだけでも、内容を理解できるようになっています。

この本は「天気の現象編」「地震編」「自宅避難・避難所編」「猛暑編」「アウトドア編」と5つの章に分かれていて、ひとつの項目が見開き2ページで解説されています。その中から、いくつか具体的な対策について、うかがっていきたいと思います。
●まずは、第2章の「地震編」です。学校への行き帰りで、もし大きな地震が起きたとしたら、日頃、子供にはどんなことに注意しなさいと言っておけばいいですか?
「地震の時はとにかく命を守ること、ケガをしないといったことが最優先になってきます。
4つの危険を覚えておいてください。上から落ちてくるもの。ブロック塀など倒れてくるもの。窓ガラスやお皿など割れるもの。あと、車ですとか物を運ぶ荷台など動いてくるもの。こういった4つのものの危険から身を守ることが大切になってきます。
通学路を親子で一緒に歩きながら、こういったものが落ちてくるよねとか、割れそうだよねとか、一度、親子で確認してみるといいかなと思います」
●なるほど。一緒に歩いて事前に把握しておくのは大事ですね。あとは、これは大人もそうなんですけど、災害用伝言ダイヤル171のことは知っていても、実際どうすればいいのか、意外とわかっていないっていうかたも多いと思うんです。いかがでしょうか。
「大きな地震の時に(家族の)安全を確認する手段のひとつです。電話がつながりにくい時に声の伝言版として残せます。
171にかけまして、音声ガイダンスに沿って声を録音したり、または再生したりすることができるんですね。171のあと、ガイダンスに沿って1が録音、2が再生みたいな感じになっているんです。その後、電話番号を入れなきゃいけないので、家族でひとつ、この電話番号にしようねって決めておくことが必要になってきます。
で、毎月1日と15日など、練習できる日もあるので、実際にやってみるといいかもしれません」
●確かに。
「で、今の子って公衆電話から電話をかけたことがない子が多いと思うんですよ。うちの子は小学2年生なんですけども、公衆電話を見て”あれ、何?”って言ったんですよ。電話が外にあることや、固定電話を知らなかったりもして・・・(いまは)スマートフォンなどですよね。
なので、公衆電話ってこういうところにあって、こうやってかけるんだよということを、1回ぐらい練習してみたほうがいいかもしれませんね」
●そうですね。171にしても公衆電話にしても事前に試しておいたほうがいいですね。
そして第3章の「自宅避難・避難所編」を読んでいたら、ビニール袋がいろんなものに活用できると感じたんですけれども、いくつか使い方を教えていただけますか?
「まず、リュックサックで水を運ぶ時にも使うことができます。水を運ぶ時にポリタンクなどを想像すると思うんですけども、もしポリタンクがない時でも、ビニール袋の中に水を入れて、リュックサックの中に入れれば、持ち運ぶことができますよね」
●手で持つよりも楽に運べますよね。
「あと、洗濯にも使うことができます。ビニール袋の中に入れれば、少量の水でも洗うことができます。入れて、おし洗いとか、つけ洗いとかしていただければ、少しの水でも洗うことができたりします。
あと、ポリ袋クッキングなんていうのもありまして、ビニール袋を使うことで調理をすることもできます。温度に強い専用のポリ袋も売っていますので、お家に1セットあるといいと思います」

首、脇の下、足の付け根を冷やす
※続いて、第4章の「猛暑編」です。この夏も40度超え、熱中症警戒アラートがたびたび発表されたりと、夏の気温が益々危険な温度になっているな〜という実感がありますが、夏の猛暑は「自然災害」と言ってもいいですよね?
「毎年のように40度以上といったことを天気予報でも言うようになってきているなと思いますし、今年から40度以上の日を『酷暑日』と正式に制定されました。
ということで、酷暑日といった言葉を私も使っているんですけども、毎年この暑さでたくさんのかたが熱中症で亡くなっています。台風ですとか大雨と同じ、もしくはそれ以上の自然災害というように、私たち気象予報士も考えるようになってきました」
●子供は背も大人と比べて低いですし、地面に近いというのもあります。大人よりも体感温度は高くなりますよね?
「そうですね。やっぱり地面に近いほうが照り返しですとか、そういったものもありますので、やっぱり子供のほうが暑いですね。物理的にもそうですし、あと子供のほうが汗をかく機能がきちんと発達していないので、大人よりも汗で温度調節をしにくいってこともあります」
●子供だからこその熱中症対策としては、どんなことが挙げられますか?
「本当に我慢しないこと! これがいちばんです。大人もそうかもしれないんですけども、特にお子さんは熱中症の経験がまだないといった子も多いかなと思うんですね。
なので、なんだかいつもと違うなとか、気分が悪いなっていった時に熱中症ってわからないかもしれないじゃないですか。とにかくなんかちょっと違うなと感じたら、先生に言うとか、無理をしない我慢をしないようにしていただけたらと思います」
●確かに熱中症かもしれないって、気づくことは難しいかもしれませんね。
「そうなんですよ、特にお子さんはね」
●子供たちだけで遊んでいる時に、自分が熱中症かもしれないって気づいてくれたらいいんですけど、何かサインとかってありますか? こういった症状が出たら危険だよっていうのは・・・。
「足がつったですとか、ボール遊びをしていて、いつもはボールを取れるんだけど、そのボールが取れなかったりとか、なんかちょっと気持ち悪いなとか、頭がぼーっとするなとか、そういったことも熱中症の体からのサインですので、大丈夫だと思わず、無理をせずに、大人に助けを求めるようにしていただきたいと思います」
●熱中症の症状が実際に出てしまったら、どうしたらいいんですか?
「本当になるべく涼しいところに行く。これ鉄則なんですよね。できれば室内がよくて、学校の中ですとか、近くにコンビニエンス・ストアとかお店がありましたら、そういったところにまず行って、水分補給、できればイオン飲料水などを飲んでいただきたいと思います。
で、体を冷やす3つのポイントを覚えておいていただきたいと思います。首、脇の下、足の付け根、この3つなんですけども、ここには太い血管があるんですよね。太い血管があるので、そこを冷やすことで、冷やされた血液が全身を巡ってくれるので、体を効率よく冷やすことができると言われています」
●なるほど。
「涼しい場所で休みつつ、この3つのポイントを重点的に冷やすようにしてください」
暑熱順化は5月から
※この本に「熱中症対策は5月から始めよう」という項目があります。これについて、ご説明をお願いします。
「これは本格的な暑さが来る前に、体を暑さに慣らしておくことなんですよね。なので、できれば真夏の前、5月とか、それぐらいから暑さに体を慣らしておこうということなんです。
人は汗をかいて体を冷やしているんですよね。お風呂から上がった時に濡れたままにしておくと体が冷えていきますよね。それは水が体から熱を奪っているからなんです。それと同じように汗が蒸発する時に体の熱を奪ってくれるので、汗で人は温度調節ができるんですね。汗をかけるようにしておこうっていうのが『暑熱順化』です。
暑い時にしっかりと汗をかける体を作っておくということで、具体的には1日30分程度のウォーキングですとか、15分程度のジョギング、これを週5回が推奨されているんです。定期的な運動が難しいといったかたは、お風呂に入る時にシャワーだけじゃなくて、ちゃんと湯船に浸かる。これだけでも暑熱順化の効果あると言われているんですよ。
夏本番でも、一旦涼しくなってしまいますと、体がリセットされると言われているんですね。なので、一旦涼しくなった後は、熱中症にかかりやすくなってしまうので、その涼しい時期に暑熱順化、夏でもやっておくといいかと思います」

雷が鳴ったら、すぐ建物の中へ
※続いて第1章の「天気の現象編」からお聞きします。子供たちが外で遊んでいたら、急に暗くなって雷が発生、という時は、どう対処するのがいいですか?
「とにかく安全で頑丈な建物の中に逃げることが大切になってきます。これはよくやってしまいがちなんですけども、木の下に逃げてしまったりするんですよ。本当に恥ずかしいんですけども、私こんなことを言っていながら、一回だけ木の下に慌てて行っちゃったことがあるんですよ」
●とっさに行きがちっていうのもわかります。
「というのは、雷が鳴っている時って、だいたい雨がすごく激しく降っているじゃないですか。なので、ちょっとどこか雨で宿りしなきゃ! って逃げたら、意外と木の下だったということはあるんですよね。本当に恥ずかしい話なんですけども・・・。
木の下は雷が落ちやすい場所ですので、絶対にやめていただきたく、頑丈な建物の中に避難してください。軒の下も結構ダメで、ちょっと出ている軒下とかに隠れても、雷の電気がやってきてしまうことがあるので、建物の中に入ることが大切になってきます」
●雷が鳴った時って、どのタイミングで移動というか、“ゴロゴロゴロ”って鳴った時点で、子どもたちは避難したほうがいいんですか?
「(雷が)鳴った時点で、積乱雲の下にいると思っておいてください。雷を鳴らすような入道雲、積乱雲はとっても大きいんですよ。いつどこに雷が落ちてもおかしくないので、聞こえたらとにかく建物の中に逃げるようにしてください。
もし建物が近くにない時、『雷しゃがみ』っていうのがあるんですね。しゃがんで手を耳に当てて・・・これは雷がもし近くに落ちた時に、鼓膜が破れないようにするためなんですけれども・・・そしてちょっと、かかとを浮かせて、つま先立ちになる。これが雷しゃがみと呼ばれるものなんですけども、これは非常事態です!
建物が近くに何もない時に、そうすると、地面との接地面積、地面についている足の面積が狭くなるので・・・」
●つま先だけってことですよね。
「なるべく地面に触れる場所を狭くしたいので、つま先立ちってことになります」
●雷が鳴った時に家の中にいても、油断してはいけないとも書かれていました。これはどういうことなんでしょうか?
「雷が鳴った時に“パソコンのコンセントを抜いておきましょうね”なんていうふうによく言いますよね。コンセントなどを伝って雷の電気が入ってくることがあるので、なるべく電化製品から離れて、もちろん電化製品のコンセントなどは事前に抜いておく、そういったことも大切です」
(編集部注:お話に出てきた「雷しゃがみ」はあくまで最終手段。屋外にいて、近くに建物がない時に雷が直撃するリスクを下げるためなんですが、どんなポーズなのか、ぜひ菊池さんの本でお確かめください)
日頃の防災意識が重要
※気象庁が発表する「防災気象情報」が改正され、今年から運用が始まりました。一般のかたに向けて、ここに注目して、というポイントを教えてください。
「今回の大きなポイントというのが、大雨などの情報に警戒レベルがついたということ。例えば『警戒レベル4氾濫危険警報』ですとか『レベル3氾濫警報』ですとか、このレベルに数字がついたことがポイントです。
レベルは1から5まであるんですけれども、数字が大きくなるほど災害の危険のレベルが上がるというふうに考えておいてください。このレベルの数字を覚えておくだけ、それだけでも十分に役に立ってきます。
まずはレベルに数字があって、5段階あって、数字が大きければ大きいほど、危険のレベルが上がる、こういったことを覚えておいていただきたいです。
レベル5になってしまうと、災害が発生してしまっているパターンがあるんですね。なので、レベル4ですとかレベル3、この段階で避難を始めて完了しておくことが大事です」
●ここ数年、経験したことのない暑さですとか、大雨、大型台風の発生など極端な現象が起こるようになっているなと感じているリスナーさんも多いと思うんですけれども、気象予報士の目線でどのように感じてらっしゃいますか?
「私、気象予報士になって20年ぐらい経つんですけれども、始めたての頃よりも体感として多くなってきているなと感じています」
●そうですよね。やっぱり温暖化の影響っていうこともあるんですよね?
「そうですね。実際に例えば1時間に50ミリ以上の雨を“非常に激しい雨”って言ったりするんですけれども、そういった非常に激しい雨の起こる回数も数字として増えているんですね。
都市のコンクリートに覆われている道路などは、1時間に50ミリ以上の雨が降ってしまうと、排水機能が追いつかなくなって、浸水してしまったり、冠水してしまうと言われているんですね。そういった雨が短い時間でザっと降るパターンも増えています」
●極端な現象によって大きな自然災害が発生していますよね。日頃の防災意識ですとか、防災対策が益々重要になってきますよね?
「そうですね。私『防災力は想像力』だな~って思っています。“もしもこんなことがあったら、どうしようかな”といったことを、普段から考えておくと、いざという時に慌てないと思います」
未来を生き抜く防災力
※気象予報士で「空の写真家」でもある菊池さんとしては、子供たちが日々のお天気に興味を持ってくれたら、いいですよね?
「これは本当に嬉しいですね。空を見ることは、もちろん空の異変に気がつくことにもつながりますので、防災につながると思っています。実際に空ってすごく面白いし、びっくりするようなきれいな光景が見られたりするので、いいですね。
今の季節、よく積乱雲、入道雲が発達して、その積乱雲は大きくなると(雲の)頭の部分が平らになることって、ご存知ですか? それは(積乱雲が)大きくなってもうこれ以上、雲ができないっていうラインがあるんですよ、空に。

上に行けないと、どうしようってことになって、横に広がるんですね。それを頭が平な『かなとこ雲』って言うんですね。そこが雲ができる限界だなって、普段から思ったりできます。空って面白いこともたくさんあるので、ぜひたくさん見ていただけたらと思います」
●季節によって雲っていろいろ変化しますよね。
「そうですね」
●では最後に、この本を通して、特に伝えたいことはどんなことでしょうか?
「先ほどもお伝えしましたが『防災力は想像力』だと思っています。普段から“もしもこういった時はこうしよう! ああしよう!”って、例えば何パターンも考えておく。そのパターンが多ければ多いほど、防災力になっていくと思うんですよね。
危険から身を守るためのヒントをたくさん書いた本ですので、未来を生き抜く防災力を、お子さんはもちろん大人のかたにも身につけていただけたらと思います」
☆この他の菊池真以さんのトークもご覧ください。
INFORMATION
『自然災害・地震・異常気象からこどもを守る〜「もしも」のときの防災ずかん』
この本は「天気の現象編」「地震編」「自宅避難・避難所編」「猛暑編」そして「アウトドア編」と5つの章に分かれていて、ひとつの項目が見開き2ページで、わかりやすく解説されています。
絵本のようなイラストがたくさん載っているのでお子さんが興味を持ってくれると思いますし、漢字にはふりがながふってあるので、ぜひ親子で読んでください。読み聞かせにも、うってつけの一冊だと思います。オレンジページから絶賛発売中。
詳しくは出版社のサイトをご覧ください
◎オレンジページ:https://www.orangepage.net/books/2049
菊池さんのオフィシャルサイトやSNSもぜひ見てください。
◎https://www.maisorairo.com/
◎Instagram:https://www.instagram.com/mai_sorairo/
菊池さんが監修の新刊が、総合出版すばる舎から出ました。
詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2026/8/30 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. TO BE WITH YOU / MR.BIG
M2. HOLD ON / WILSON PHILLIPS
M3. STRANGE WEATHER / GLENN FREY
M4. THUNDER / IMAGINE DRAGONS
M5. SIGN OF THE TIMES / HARRY STYLES
M6. A SKY FULL OF STARS / COLDPLAY
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/8/23 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスライターの「ほりかわあきな」さんです。
ほりかわさんは新潟県生まれ。国立の長岡工業高等専門学校(長岡高専)から東京工業大学大学院を経て、農薬と、タネや苗を生産する種苗メーカーに就職。新入社員の研修時に、茨城県にある研究所の田畑で、一連の農作業を体験し、体力的にも厳しい農業の大変さを痛感。
その一方で、農薬に対して世間では、食の安全や環境への影響を危惧する声があることも知ったそうです。
農薬も科学技術の産物であることに変わりはないと思ったほりかわさんは、大学院まで科学や研究を通して、世の中の役に立ちたいと思っていたので、科学の架け橋になりたいと思い、会社を辞めてお台場にある日本科学未来館で科学コミュニケーターに。

その後、WEBメディアの記者や編集者を経て、現在はサイエンスライターとして、いろんなジャンルの研究者への取材を通して、科学の魅力をわかりやすく伝える活動を幅広くされています。
きょうは私たちが普段食べている野菜や果物の、びっくりするような昔の姿、そして意外に知らない品種改良のお話もうかがいます。
☆写真協力:『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』ほりかわあきな・著/農研機構・監修/講談社

サイエンスにワクワク!?
※サイエンスライターとして、大事にしていることって、なんですか?
「ちょうど独立して10年に今なるところなんですけど、みなさんからは、科学の難しいことをわかりやすく伝えてくれる人というふうにイメージを持っていただいています。それもひとつの役割だとは思うんですけれども、今これだけ人工知能AIが発達してきていると、わかりやすく要約するだけだったらAIでもいいんですよね。
なので、やっぱり自分というフィルターを通して、何か物事を伝えるんだったら単なる解説ではなくて、私もいろんな分野の研究者のかたに取材させていただくので、そのたびに大変ではあるんですけど、毎回新鮮な知的好奇心が刺激される面白さや喜びっていうのがあるんですね。
そのワクワク感とか、ちょっと今までと世界が違って見えるような感覚っていうのを、知識を伝えるだけでなく、そういったものもサイエンスの魅力として、またサイエンスに関わるかたたちの魅力として伝えられたらなと思っております」
品種のご先祖様!?
※ほりかわさんの新しい本が初の絵本『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』。リスナーのかたに向けて、どんな本なのか説明していただけますか?

「この本では14種類の野菜や果物の昔の姿と今の姿を比べています。すべて写真で紹介している写真絵本になります。昔の姿には実は2つのパターンがあるんですね。
ひとつは品種改良の出発点になった祖先種と呼ばれるもので、例えばこの本だと、ナシとかサツマイモやトウモロコシなどは、“ご先祖様”というふうに書いているんです。ご先祖様はこんな姿だったよという形で紹介しています。
もうひとつは日本を基準に考えた時に、近代化するより前の明治時代より前の日本で親しまれていたもので、例えばリンゴとかメロンなんかは西洋から入ってくる前は、こういうのが日本では主流でしたよという形で紹介しています」
●この本は食育絵本と言ってもいいんでしょうか?
「そうですね。普段食べているものの来歴を知るっていうのも、大事な食育だと思います。私もちょうど今、子育て中なんですけど、テキストを考えるときに子供と一緒に音読したりとか(笑)、“こういう言い回しって、どう?”とかって(子供に)相談に乗ってもらっていたんですけど、そうすると自然と、やっぱり子供も普段スーパーに買い物に行った時に興味を持つようになってくれたので、食育絵本というふうに言えるかなと思います」
●そもそもこの本を出そうと思われたのは、どうしてなんですか?
「きっかけになったのはSNSに作物のいろいろな品種の過程というか、並んだ画像が流れてきて、やっぱり写真で伝えると品種改良のすごさ、人類がこんなに変えてきたんだなっていう努力の賜物を見せつけられているというか、そのインパクトに驚いたっていうのもひとつなんです。
私自身の経験としてもやっぱり農業の実習をしている時に、美味しいとかたくさん採れるっていうのはもちろんなんですけど・・・。
例えば、段ボールに入るサイズ感、“大きければ大きいほど、いいわけじゃないんだよ”とか、流通させる時に潰れやすくないように“適度な硬さがある実がいいんだよ”とか、いろんなポイントがあるということを、普段、消費者からはなかなか見えにくいけれども、いろんなこだわりがあるというのを感じていたので、それも伝えたいなと思ってこの本を作ろうと思いました」

●野菜や果物の昔の姿と今の姿を写真で比較されていますけど、写真で見せられるとその変化に驚きますね。
「そうですね。写真はすべてひとつひとつ監修者の先生、作物ごとに監修してくださった専門家の先生がいらっしゃいまして、先生がたから画像を提供していただいたんですね。なので、ひとつひとつ画像をメールでいただいて見せてもらった時に、やっぱり私も初見の時は“えっ、これってあってます?(笑)”って・・・・。
例えば“これ、リンゴの写真? サクランボじゃないですよね? 間違っていませんよね?”って思うくらい小さかったりとか、サツマイモは“えっ? 根っこ? (笑)”、思わず二度見してしまうような昔の姿の写真もあって、本当に私自身も驚きながら(本を)作っていました」
トウモロコシは接着剤にもなる!?
●本の中から具体例として、いくつかピックアップしてうかがっていきます。やはりサツマイモですね。いちばんインパクトがあります。(写真を見ると)根っこですよね? 長くてひょろひょろした根っこですけど、これが昔の姿、サツマイモのご先祖様なんですか?
「そうなんですよ。“根菜”って言いますけど、ほんとうに“根っこの野菜”って書いて根菜だなって(笑)改めて思いました。
メキシコアサガオという植物が祖先種というふうに言われています。メキシコアサガオという名前からわかるように、サツマイモはヒルガオ科の植物なんですね。なので、条件が揃うとサツマイモでも花が咲くんです。朝顔のようなお花が咲くそうなんですね。
根っこにも実は二種類あって、水や肥料を吸い上げる『吸収根』と呼ばれる根っこと、あとは太くなってお芋になる部分の根っこ『不定根』と呼ばれる根っこがあるそうです。
実はこれも小学生の自由研究で調べているお子さんもいて、そういう探求のきっかけに驚いて、その先を知りたくなるっていうふうになればいいなと思いますね」
●根っこ!? これを食べていたんですか?
「そうなんですかね・・・? 私もこれをどうして食べてみようと思ったのかな~?と、私もその部分は不思議に思ったんですね。どうなんでしょうね? どうしてこれを・・・?
例えば、これは完全に私の仮説ですけど、動物が食べていたりすると美味しいのかなと思ったのかなとか・・・。でもやっぱり昔の人って必ずチャレンジャーがいますよね(笑)。いろんな作物とか動物もそうですけど、植物もやっぱりこれをよく食べてみようと思ったな~っていうのがありますよね」
●そうですよね。このひょろひょろとした根っこがどんどん太くなって甘くなって、今のサツマイモになったわけなんですよね。面白いですよね!
「驚きますよね」
●続いてトウモロコシは、いかがでしょうか?
「トウモロコシは『テオシント』っていうイネ科の植物が、ご先祖様とされているんですけれども、これも見た目だけだと、とてもトウモロコシとはリンクしないぐらいギャップがありますよね」

●草!っていう感じですよね(笑)。
「草ですよね(笑)。粒が本当に両手で数えられるぐらいの数、10数粒から、今のスイートコーンって平均で600粒くらいあるというふうに言われています。単純に量が増えただけじゃなくて、一粒一粒も大きくなってみっちり詰まっています。そしてやっぱり甘さもどんどん糖度も高くなっていってということです。
この本で紹介している中でも品種改良の始まりもかなり古くて、7000年以上前から品種改良されていたんじゃないかというふうに言われている作物ですね」
●この本には興味深いコラムが三編載っています。そのひとつに“接着剤にもなるトウモロコシ”ということで、トウモロコシは接着剤になるんですか?
「そうなんです。実は段ボールの接着剤とかに使われています。トウモロコシにも実は用途によっていろんな品種が使われていて、普段私たちがいちばん食べているのはスイートコーンなんですけど、今ご紹介いただいた接着剤として使われているのはワキシーコーンという品種。
ワキシーコーンは加熱すると、すごくもちもちになって、食べるとちょっと甘さ控えめなんですけど、もちもちで・・・コーンスターチって聞いたことありますか?
あのとろみはワキシーコーンの澱粉(でんぷん)から作られていて、おそらく段ボールの接着剤としてちょうどいいでしょうね。手でグッとやった時に剥がせる、でもついている間はしっかりくっついているっていう、ちょうどいい粘り気というか接着の具合を実現してくれているんだなと・・・」
●トウモロコシって奥深いんですね。
「やっぱり(トウモロコシは)食べて、私たちの食料として世界中で支えてくれているというのももちろん大きいですけれども、工業用途でもいろんなところで使われています。
あと家畜の餌としてももちろん使われていますし、あとお子さんたちもよく知っているポップコーンもそのままポップコーンなんですよね(笑)」
●確かにそうですね。
「いろんな品種がある作物ですね」
大人向けに「品種改良」の解説
※この絵本の巻末に、大人向けに「品種改良」の解説が載っています。この解説を載せようと思ったのは、どうしてなんですか?
「実はこの絵本のタイトルにも品種改良という言葉は登場していなくて、なるべく本文のテキストにも“品種”という言葉は多用しないように、使い過ぎないようにしていたんですね。それはやっぱりお勉強の本だと思ってほしくなかったっていうのもあるんですね。
でも一方で、品種や品種改良というものに、興味を持ってもらうきっかけにはしたかったので、ひと通り読んでいただいた最後のところで、大人のかた向け、あるいは大人のかたじゃなくても、興味を持ってくれたかたに向けて、“品種改良ってこういうものですよ”と・・・。
解説といっても技術的にひとつひとつの手法を、詳しく解説しているわけではなくて、長い人類の営みとして品種改良には、こういう側面がありますよということを、“おわりに”のところでメッセージとして書かせていただきました」
(編集部注:ほりかわさんによると、品種改良にかかる時間は、交配・かけあわせの場合、目指す品種ができるまでに7、8年。さらにその後、国に出願し、品種として登録されるまでに1年から3年くらいはかかるとのこと。
果物の品種改良はもっと時間がかかって、10年から15年くらいだそうです。実際に農家さんが生産して消費者のもとに届くまでには、もっと時間がかかりますね)
※農家さんの仕事は自然が相手ですから、特に繁忙期は休む暇もないと思います。農作業の手間を少しでも省くために改良された品種があるそうですね?
「最近そういった品種も登場しています。例えば、この本ではイチゴの『恋みのり』という品種を、今のイチゴの品種の代表として紹介しているんですね。これを敢えて選んだ理由は、美味しいとか甘いとかっていうのはもちろんなんですけど、作業の手間をすごく省ける品種なんです。
具体的には余分な花や実を摘む、剪定する作業が必要ないので、そのステップを省けるだけでも、大量に大規模に栽培する農家さんにとっては、とても省力化になるということで・・・。
あと、この本では紹介してないんですけど、最近、それも面白いな~と思ったのが、リンゴそのものの実の部分を改良したのではなくて、リンゴの木の形を改良した『ベニツルギ』っていう品種が新しく出たばかりです。
なんで木の形を変えたかって言うと、収穫しやすいようにするためなんですね。リンゴの木って普通、横に広がるんですけど、それをシュッと縦型にすると作業動線がすごく作りやすくなって、脚立を持って行くときにあちこち行かなくて、まっすぐ生産ラインが敷けるような・・・あとは機械で収穫する今後のスマート農業を見据えた品種が最近は登場してきています」
●すごいですね!

品種改良と伝統野菜
※品種改良も有益なことだと思いますが、その一方で、日本に古くからある伝統的な品種は、守っていく必要がありますよね?
「それもとても大事なポイントですよね。一度途絶えてしまったものは元に戻せないので、守っていくというのも重要ですし、財産として文化として守っていくというのも重要です。
昔からあるものですとか、特に野生種は、例えば暑さとか寒さとか乾燥とか、逆にすごく湿気が多かったりとか、そういう環境にタフなものや、病気に強いものが多いというふうに言われています。
なので、改良していくことも大事なんですけど、一方で昔からあるもの、自然にあるものも守っていく。どっちも両輪でやっていかなきゃいけないことで、この本のメッセージのところにも書かせていただきました」
●では最後に、初の絵本『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』を見る子どもたちが、どんなことを感じ取ってくれたらいいなと思いますか?
「はい、まずは純粋に驚いてほしいな! 楽しんでほしいな! というふうに思います。
もし周りに大人のかた、おじいちゃんやおばあちゃん、親御さんや先生とかいらっしゃれば、その世代のスタンダードもだんだん変わってきていると思うので、“昔のニンジンはこうだったよ”とか、“昔のトマトはこうだったよ”っていうふうに世代間で盛り上がってもらえたらなと思います。
読者のかたには普段、何千年前とか何百年前とかってスケールで考えることってなかなかないと思うんですけれども、そういった長いスパンで品種改良っていうものが、今まで脈々と続いてきているということを感じ取っていただいたうえで、ここから先の未来、どんなふうに私たちは食を守っていくんだろうとか、新しく作っていくんだろうとかを考えるきっかけになれば嬉しいと思います」
●親子で楽しめますね!
「そうですね。ちょっとダジャレっぽい(笑)小見出しも入れたりして、声に出して読んでも面白く楽しく読めるようにという気持ちを込めて作りました」
INFORMATION
ほりかわさんの思いがこもった写真絵本をぜひチェックしてください。お馴染みの野菜や果物、全部で14種の、昔の姿に驚くと思いますよ。お子さんと一緒に見てほしい食育絵本です。巻末には、大人向けに品種改良の解説が載っています。
講談社から絶賛発売中。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎講談社:https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000426983
この絵本の出版を記念して茨城県つくば市の農研機構「食と農の科学館」で、現在、企画展が開催されています。会期は来年1月30日まで。入館は無料です。詳しくは農研機構のサイトを見てください。
◎農研機構:https://www.naro.go.jp/tarh/information/event/176719.html
2026/8/23 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. ベジタブル / 大貫妙子
M2. SCIENCE OF SILENCE / RICHARD ASHCROFT
M3. EVERYTHING OLD IS NEW AGAIN / PETER ALLEN & RALPH BURNS
M4. SOWING THE SEEDS OF LOVE / TEARS FOR FEARS
M5. チェリー / スピッツ
M6. WAITING ON THE WORLD TO CHANGE / JOHN MAYER
M7. THE LIVING YEARS / MIKE+THE MECHANICS
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/8/16 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、海あそびナビゲーターの「茂木(もてき)みかほ」さんです。
子供たちからはキャンプネームの「モッキー」と呼ばれている茂木さんは、群馬県出身。小さい頃から山や川でいろんな生きものと遊び、小学校に入った頃からは、インコやカメレオン、リスやウサギなどを飼う生き物大好き少女だったそうです。
そんな茂木さんが新卒で入社したのは「アクアマリンふくしま」。水族館を選んだ理由は、海のない地域で育った茂木さんにとって、知らない生き物がたくさんいるという好奇心から。その後、ダイビング雑誌の仕事をはさんで「横浜・八景島シーパラダイス」で働き、6年前には「高知県立足摺海洋館SATOUMI」のリニューアルに参画。
そして20代後半に、磯や干潟が好きになって、通うようになったそうですが、そのきっかけのひとつが師匠である「海野義明(うんの・よしあき)」さんが立ち上げた「オーシャンファミリー」の、自然体験の指導者を養成するスクールに1年通ったこと。おかげで本格的に海に向き合うようになったそうです。
現在、茂木さんは逗子や葉山をメイン・フィールドに、子供たちと一緒に生き物観察や、海での遊びを楽しむ活動をされています。
そんな茂木さんが『子どもと海あそび』という本を出された、ということで番組にお迎えすることになりました。
きょうはおもに磯や砂浜での遊び、海あそびの注意事項、そして茂木さんが主宰されている「おかさなラボ」のお話などうかがいます。
☆写真協力:茂木みかほ


おさかなラボ、地元の海を知る
※茂木さんは現在「海あそびナビゲーター」として活動されています。その活動を始めたのは、どうしてなんですか?
「実はその“海あそびナビゲーター”という肩書きは、最近言い始めたんですけれども、もともと海の自然体験を子どもたちにしてもらいたいなっていうので、そういった活動を15年前くらいからコツコツ始めていました。それがやっと仕事として形になってきて、何か肩書きが必要だなと思った時にポンと(思いついて)こういった肩書きを使わせていただいているんですけれども・・・。
もともとは逗子にある『黒門とびうおクラブ』という放課後、自然活動を体験させるクラブみたいなのがあって、そこに私もコーチとして関わらせていただいていたんですね。その関係で子どもたちが放課後、学校を離れてのびのびと遊んでいる姿がすごくよくて、私もこういう活動していきたいなと思った時に、特にその中でも生き物好きな子たちがいて、そういった子に何かできないかなと思ったんですね。
今やっている『おさかなラボ』の原点なんですけれども、そういった生き物クラブみたいなものをやりたいと思って、ナビゲーターという肩書きを使いつつ、おさかなラボ以外の一般のかたたちにも、そういった活動をしているということです」
●茂木さんが主宰されている「おさかなラボ」、これは改めてどんなラボなのか、教えてください。
「活動としては1年を通じて、地元の海のことを知るといった目的で、海だけじゃなく、川も入ってくるんですけれども、子どもたちと一緒に、春でしたら磯遊びがメイン、夏でしたら素潜りで水中観察を行なったりですとか・・・・。
秋は釣りとか、岩壁採取って言って堤防から網で生き物を捕まえて観察することもやっていたりですとか、冬はビーチコーミングと、室内で活動する、例えば顕微鏡を使ってプランクトン観察をしたりですとか、あとは魚の解剖をしたりですとか、そういった活動を行なっております」
●観察と言っても、季節によっていろんな観察ができるんですね。
「そうなんですね。やっぱり見られるものも違いますし、それを子どもたち自身に肌で感じてもらいたいなと思って続けています」

●本に「おさかなラボ」に所属する子どもたちの観察記録が載っていました。スケッチだったり、メモがびっしり書いてあったりして、いいですね! すごいですよね!
「そうなんです。みんなすごく集中して書いてくれています。生き物を実際にフィールドで見ると、やっぱりすごく感動するんでしょうね。
そのテンションで、こちらが言わなくても自分たちで書き始めたりして、それがすごく”よくこんなところに気づくね!”みたいなところもあって、私も日々それに感化されて勉強させてもらっています」
(編集部注:茂木さんは、神奈川県三浦市三崎にある「日本さかな専門学校」の講師としても活躍されています。今年は、自然体験の指導者やネイチャーガイドなどを目指す3、4年生を対象に、一般のかたたちにどうやって自然や生き物のことを伝えるかなど、インタープリテーション的なことを学生と一緒に勉強しているとおっしゃっていました)
カニを釣る!?
※ここからは茂木さんの新しい本『子どもと海あそび』をもとにお話をうかがっていきます。背表紙の説明に「親子で楽しく知る海と生き物の本」と書いてあります。改めて、どんなコンセプトで書いた本なのか、教えてください。

「本書は磯遊びと砂浜遊びの2本立てがメインの内容となっています。ここ最近、海が近くても海に行かないとか、やっぱりちょっと海離れじゃないですけど、気持ちが海から離れてしまっているお子さんとか大人のかたの話も聞こえてきています。
そういったかたにやっぱり海を知ってほしいっていう気持ちもありまして、そのきっかけになる本として、本書がなってくれたらいいなという思いで書き始めました」
●本の初めのほうに「海に挨拶しよう」とありました。その心は・・・?
「私自身が自然と向き合うときは謙虚でありたいと思っています。海に入っていく前の段階で、自分自身の気持ちを海に向かわせる意味でも、ちょっと落ち着けてリラックスをして入っていくということで・・・。
海に入ってからも、もしかしたらちょっとした危険を退けられるかもしれないですし、あとは海にいる生き物たちに対しても、お邪魔しますみたいな気持ちで入っていくことで、海にもそこまで負担をかけないで、自分も楽しめるっていう思いで、挨拶をしてから入るといいよっていうので、冒頭に入れさせていただいています」
●「海あそび」と一口に言っても、磯だったり砂浜だったり、観察する対象も海の生き物から砂浜に打ち上げられた貝殻だったり、海辺にいる野鳥に植物に、いろいろありますよね。
「そうなんですよね」
●茂木さんのおすすめのフィールドとしては、やはり磯になりますか?
「そうですね。やっぱり磯がいちばん生き物が、多種多様な生き物が身近に見られるっていうところで、おすすめではあります」
●でも磯の中でも岩肌とか潮だまりとか、どこを見るかによって生き物も変わってきますよね?
「そうですね。例えば潮だまりですと、スズメダイとかギンポとかっていうお魚がいるんですけれども、そういったお魚が限られたスペースに閉じ込められている状態なので、網で捕りやすいんですね。

岩肌を見ると、その隙間に大好きなかたも多いと思うんですけど、ウミウシが隠れていたりですとか、ヒトデとかカニが隠れていたりとかっていうのがあったり、それぞれ棲む環境によって、そこにいる生き物も違ってはきます。
いちばん探しやすいポイントとしては、やっぱり石をひっくり返して裏を見るっていうのがいいのかなと、やりやすい方法かなと思います。ひっくり返したら、その石は必ずもとに戻してあげるっていうのを、マナーとしてやっていただくっていうのがいいと思います」
●本にカニを釣る方法が載っていましたよね。
「そうですね」
●たこ糸と石とスルメを使ってカニを釣るということで、改めてどんな釣り方になりますか?
「本当に簡単なんです。割り箸とか棒切れでいいんですけれども、釣りのミニチュア版みたいな道具を作って、それでカニを釣るという形なんです。棒はなくてもいいですよね。

紐の先に石の重りと、餌のサキイカとかそういったものをつけて、カニがいそうな堤防とかの隙間、そういうところに糸を垂らすとカニが貪欲に餌に食いついてくるんです。“チョキチョキ、チョキチョキ”って食べようとするのが見えるので、とても面白くて・・・。
タイミングがちょっと難しくて、挟んでチョキチョキ食べ始めて、がっつり挟んだ時に引き上げるみたいな・・・そうすると綺麗に釣れるんですね。網とか手だと、隙間に入ってしまって捕れなかったカニが、釣り道具をちょっと作ることによってスッと釣れるっていう・・・」
●そんな簡単に釣れちゃうんですね!
「結構簡単に釣れますよ。大人のかたもすごく楽しいと思います」
砂浜での楽しみ方

※磯に続いて、砂浜でのおすすめの「海あそび」を教えてください。
「砂浜ですと、生き物に関してはやっぱり砂に隠れるような生き物、例えばアサリの仲間のニマイガイとか、あとはツメタガイっていう大きい巻き貝がいるんですけれども、それは砂に潜って生活していたりとか・・・。
あとは砂に潜るカニもいるので、砂浜を見てみると、“あれ? なんでこんなところに穴が空いているんだろう?“みたいなことがあるんです。それはスナガニっていうカニの巣だったりっていう感じで、うまく砂に隠れている生き物がいるので、そういった生き物を波打ち際で探すっていう楽しみもあると思うんですよね」
●そうですよね。貝殻を拾ったりするビーチコーミングも楽しそうですよね?
「そうですね。本当にいろんな貝や貝以外のものも拾えるので、やってみるとハマるかたが多いですね」
●アート作品とかを作っているかたも多いですよね?
「そうですね。例えばフォトフレームに貝殻を付けてみたりですとか、あとビーチグラスをイヤリングにしてみたりですとか、いろんな発想があって面白いですよね」
●本には砂浜に転がっている石や貝殻を笛にする方法も載っていました。あれはどうやって音を出すんですか?
「(音を出すのが)結構難しいんですよ。石笛と貝笛を今回(本に)掲載しているんですけれども、師匠である海野さんは、両方ともすごく綺麗に音を奏でられるんですが、私は石笛に関してはまだ修行中です(笑)。
なかなか難しくて、貝笛に関しては指に貝を挟んで、巻き貝なんですけど、その穴にフューっと息を吹き込むと、角度によって “ピーー”っとすごく綺麗な音が出たりしますので、海辺で拾ってお子さんと一緒にやってみると、すごく楽しいかなと思いますね。子供たちは大人がやって見せるとこぞって、“自分もやる、自分もやる!”ってやりたがると思うので・・・」

●本を読んでいて、何でも遊び道具になっちゃうんだな~って思いました。
「そうですね。本当に子供たちは自然のものから道具を作り出す天才だと思っています。道具とはちょっと違うんですけど、この前、雨がザーザー降っていた日に(子どもが)大きな葉っぱを取って、それを傘代わりに、全然傘になってないんですけど(笑)、頭に傘みたいにさしてる子がいて、そういうのもすごくいいな~と思ったり、何でも道具として使う発想がわいてくるのは、子供ならではで、すごくいいと思います」
●そうですよね。砂浜でも陸に近いほうでは植物も観察できますよね?
「そうですね。植物も “海岸植物”と呼ばれている、体の構造が塩分とか風に強かったりとか、そういった特殊な構造を持っているような植物が結構見られるんですよね」
●葉山とか逗子ですと、どんな植物が見られますか?
「種類で言うとハマヒルガオとか、あとはハマダイコンっていう、実を食べると辛い大根の味がしたりですとか、“ハマ(浜)”ってつくものがやっぱり多いですね(笑)」
●なるほど。
「あとは綺麗な色だと、黄色い花を咲かせるミヤコグサとか、季節によって色とりどりいろんな植物を見られますね」
(編集部注:海辺で遊び時の服装は、茂木さんによると、特に夏は肌を露出させないこと。例えば、水着の上に長袖・長ズボンを着用。紫外線だけでなく、フジツボやカキガラ、クラゲなどから肌を守るためです。もちろん帽子や手袋、足元はマリンブーツか運動靴。そしてなにより、ライフジャケットをお忘れなく。
生き物を採取して観察するための道具としては、網やバケツのほかに、透明なプラケース、白くて平らな、バットと呼ばれる容器、そしてスケッチブックなどがあるといいそうです。服装や道具について詳しくは茂木さんの本『子どもと海あそび』をご覧ください)
海あそびの注意事項
※海辺で遊ぶ時の注意事項を教えてください。
「やっぱりこの時期だと熱中症と、あとは(磯で)滑って転んだりとかっていうのがあると思うので装備と、あとは今の時期でしたら塩分と水分をしっかり摂るみたいな意識を持ってもらうっていうことと・・・。
あと大事なのが事前に行く場所の情報を得ておく。例えばこの時期だったらライフセーバーがいる場所なのかどうかとか、シャワーがあるのかどうかとかも含めてなんですけれども、まったく情報なしで行くと、何かあったときの対処が遅れてしまうので、事前に現地の情報と、あとは天気と潮まわりも調べていくのが大事かなと思います」
●海あそびは夏のイメージがありますけれども、暑い夏を避けて春とか秋でもいいのかなって思ったりもするんです。いかがですか?

「そうですよね。春はすごくベストシーズンですね。磯遊びをやるのに暑すぎず、いちばんいいシーズンなんですが、秋はちょっと潮まわり的にだんだん夜に引くリズムになってくる時期なので・・・。
みなさん昼間に行きたいじゃないですか。だけど、そこの時間帯に潮が引かないっていう問題があるので、そういった関係であまり秋は磯観察としては、おすすめではないかなってなりますね」
(編集部注:海には危険な生きものもいます。茂木さんによると、夏から秋は特にアンドンクラゲやカツオノエボシなどに要注意。
クラゲに刺された時の対処法は、目に見えない触手が残っているかも知れないので、まずは海水でよく洗い流す。触手が取れない時はピンセットなどで取り除き、42度くらいのお湯で温めると痛みが和らぐとか。
その後、ミミズバレになったりと、炎症を起こしている場合は冷やすといいそうです。危険な生き物、そしてケガなどの対処法は茂木さんの本に載っていますので、ぜひ参考になさってください)
子供たちの発見が日々楽しくて
※茂木さんは「海あそびナビゲーター」として、子どもたちと過ごしている時間が長いと思いますが、子どもたちの遊ぶ姿や、何か見つけた時の反応などを見て、どんなことを思いますか?
「私が関わっている『おさかなラボ』の子供たちの話がメインになってしまうんですけれども、初めての経験を目の当たりにすることが多くて、例えばつい最近ですと、初めてウミウシを自分で見つけられた子の反応っていうのが面白くて・・・。

すごく控えめに“これ~、ウミウシってやつだと思うんだけど・・・“って自信なさそうにひとりで呟いていたので、”えっ、どれどれ?“って言って、“これ、立派なウミウシだよね!”って言ったら、“え~~~!”って漫画みたいに目を丸くしてキラキラさせて、“初めて自分で見つけられた!”とかって嬉しそうにしているのを見ると、私ももともと磯遊びで初めて見るものがたくさんいたな~と思って・・・。
子供たちとそうやって海辺で遊んでいると、私も初心に帰ったような気持ちにもなりますし、本当に子供たちの発見が日々楽しくて、一緒に遊んでいるっていうところもあります」
●本の巻末には茂木さんの師匠、海野さんとの対談も載っていました。そこに茂木さんの思いが込められているのかなって感じたんですが、いかがですか?
「そうですね。私のフィールドでの活動のベースになっているのが、やっぱり海野さんとの出会いというか、海野さんから学んだことが多くて・・・。
海だけではなくて自然全体、山・川・海って感じで、一連のつながりを本当に体験的に知っているかたなので、学ぶことが多くて、“あっ、この人みたいになりたいな”っていうところの憧れもあって、私自身もそういった自然体験活動を始めたところがありますので、伝わって嬉しい(笑)」

●では最後に、茂木さんが海から教えてもらったことを教えてください。
「そうですね・・・何かな~と思ったんですけど、ひとことで言うと“一生懸命生きること”。
海にいると、みんなそれぞれ生き物たちが必死に、食べたり隠れたりケンカしたりみたいに生きていて、私自身も海に行くとすごく力をもらえるんですね。そういった生き様みたいなものを見ていて、“あっ、私も生きよう!”って思ったりするので・・・。
日々、普通に生きていると、あまり死を間近に感じたりすることって少ないと思うんですけれども、生き物と対峙する中で、やっぱり“命ってなんだろうな”とか“生きるってなんだろうな”みたいなことを日々教えてもらっているので、そういったところで『生きる』っていうことですかね」

INFORMATION
磯や砂浜で生き物を探すコツや、よく見かける生き物、さらには海辺の植物や野鳥など、写真入りでわかりやすく解説。海あそびの服装や注意事項、そして海のルールや安全対策も載っています。
子供たちを海辺に連れて行く時に知っておきたい、大人の参考書にもなると思います。おすすめです。グラフィック社から絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎グラフィック社:https://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=63938
茂木さんが主宰する「おさかなラボ」、そして講師を務める「日本さかな専門学校」について詳しくは、SNSやオフィシャルサイトを見てください。
◎「おさかなラボ」Instagram:https://www.instagram.com/osakanalabo_zushi/
◎日本さかな専門学校:https://www.sakana-n.jp
2026/8/16 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. FREE / DONAVON FRANKENREITER feat. JACK JOHNSON
M2. BRIGHTER THAN THE SUN / COLBIE CAILLAT
M3. THE BOYS OF SUMMER / DON HENLEY
M4. KOKOMO / THE BEACH BOYS
M5. I’M YOURS / JASON MRAZ
M6. SOMEWHERE OVER THE RAINBOW / ISRAEL KAMAKAWIWO’OLE
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/8/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「国立科学博物館」動物研究部の研究員で「クジラの先生」として知られる「田島木綿子(たじま・ゆうこ)」さんです。
現在上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」、夏休みということもあって、お子さんを連れたご家族もたくさん来場され、賑わっているようです。
今回の特別展は、NHKの自然番組「ダーウィンが来た!」との共同企画で、国立科学博物館が所蔵する標本や資料などに加え、「ダーウィンが来た!」の迫力ある映像が見られます。
また、公式ナビゲーターに相葉雅紀さんが起用され、館内で聴ける音声ガイドにも登場、話題になっています。
きょうは、そんな「いきもの超ワールド展」の見どころのほか、田島さんのご専門、イルカやクジラが座礁するストランディングについてもうかがいます。
☆写真協力:いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!

いきものの生存戦略
※今回の特別展のテーマが「いきものの生存戦略」ということなんですが、改めて、どんな展示になっているのか、教えていただけますか?
「生き物の生き残り戦略は、みなさんご存知の通りたくさんあります。ただそれを展示に落とし込むとなると、すべてを語ることはとても無理なので、そこからお客様とか我々研究者、スタッフ一同が面白おかしく展開できるテーマを設定するのに少し時間がかかりましたが、それを通して彼らが地球上でどうやって生き残ってきて、これからどうやって生き残っていくのだろうということが、わかっていただけるといいなという展示になっています」
●今回の特別展では、田島さんを含め5人の研究者の方々が監修として携わっています。展示のテーマや内容についてアイデアを出し合いながら、みんなで進めていったという感じなんですか?
「そうですね。企画会議は3年前ぐらいからスタートしていますので、そこからだんだんと絞り込んでいったということですかね」
●それぞれにみなさん専門がありますから、お互いの刺激になるような話も多かったんじゃないですか?
「そうですね。結局テーマを決めた段階では、そのテーマに合う標本なり、トピックだったり、研究成果なりということをそれぞれ出し合って、逆にそっちがあるんだったら、こっちもそれに関係して、うちのほうも出せるよとか、テーマが決まってしまうと研究者あるあるですけど、面白おかしくどんどん進んでいったというのはありますかね」
●「ダーウィンが来た!」のスタッフのみなさんも参加してのミーティングですか?
「もちろん、もちろん」
●会場で上映している映像については、国立科学博物館側からのリクエストというのもあったんですか?
「う~ん、どうでしょう・・・あまりうちが“こうしてください!”というのはなくて、その企画会議の中で自ずと、どんなテーマでどんな標本、どんな生き物が出るというのはわかってきますので、ダーウィンのかたたちに任せて、“ここではこういうのを出そうね”というのは普通にわかってくるので、ほとんどお任せでしたね」
(編集部注:今回の展示は生き物たちの生存戦略を、6つのチャプターに分けて解説。その6つとは、「いきもので異なる五感」、「いきもので異なるエネルギー補給」、「いきものの挑戦“サイズ”適応術」、「いきもので異なる移動のかたち」、「いきものに学ぶ集団の意義」、そして「いきものが紡ぐ命のバトン」となっていて、それぞれのコーナーで、貴重な標本や資料の展示に加え、迫力のある映像を体験できます。詳しい展示内容については、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください)
☆いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp

イルカやクジラの視覚、聴覚、嗅覚、味覚
※ここからは「クジラの先生」として知られる田島さんに、今回の特別展にちなんで、イルカやクジラの五感について、初歩的なことをうかがっていきます。イルカやクジラは、視力はどうなんでしょう? いいほうなんですか?
「“いいほう”という基準が難しいですが、海洋環境というのは全体のわずか2%しか太陽の光が届きません。視力というのはどうしても太陽の光がないと、ほとんどの生物は見るという行為ができません。
わずか2%にいる間は視力を使っていますが、光が届かないところだと使いたくても使えないとは思うので、難しいですが、まったく悪いわけではなくて、視力は哺乳類としては普通に使える機能や構造は持っています」
●いちばん発達している感覚とは何なのでしょうか?
「鯨類の場合は、大きく“ハクジラ”と“ヒゲクジラ”に分かれますけれども、ハクジラは特殊でいわゆる“エコロケーション”超音波を使って周囲を確認していますので、それは聴覚になるんですかね。エコロケーションだと聴覚になるので、彼らはほとんど聴覚という感覚ですかね。
ヒゲクジラの場合は難しいですけど、あまりどこがというのはなく、やはりその場その場の環境によって嗅覚だったり触覚だったり視覚、ただ鯨類の場合は嗅覚が発達していないと言われていて、ヒゲクジラの場合は逆に嗅覚はまだ使っているということなので、それぞれの分類群によって違います」
●匂いを感じる嗅覚はないということなんですか?
「ハクジラはないと言われていて、結局、解剖学的にその部位がないので使っていない、または進化の過程で退化してしまったのだろうと言われています」
●イルカやクジラは魚など、そしてシャチはほかのクジラなどを食べますよね? ということは肉食になるのかなと思いますけれども、舌で味を感じたりというのはあるんですか?
「う~ん、彼らはほとんど丸呑みなので・・・いわゆる味覚というのは人間社会だと味わったりグルメだったり、美味しい美味しくない、なんて言いますよね。生き残るための味覚ではなくて嗜好性に偏っていますが、クジラ含めた生き物にとっての味覚というのは、そういうふうに発達したわけではなくて、例えば毒成分なものを食べないようにとか、腐っているものを食べないように、またはうま味成分としては例えば糖質、グルタミン酸みたいなものを舌とかいろんな場所でかぎ分けてはいるそうですけど、いわゆる人間社会で言う、味わうという感覚ではないそうです」
●胃はひとつなんですか?
「胃はひとつですよ。ただそれが複数の部屋に分かれているという言い方をしますね」

プランクトン食のほうが大きくなれる!?
※続いて、イルカやクジラの体の大きさについてなんですが・・・世界最大の哺乳類は、シロナガスクジラですよね。
「地球上に生きている最大の動物という枕言葉がつくと、シロナガスクジラになります」
●どれくらいのサイズなんですか? 今まででいちばん大きかったのは?
「記録的には南半球に、シロナガスクジラが33メートルっていう記録があったんじゃなかったかな・・・」
●なんでそんなに大きくなるんですかね?
「ふふふ、知りません(笑)。それはシロナガスに聞かないと(笑)」
●大きいことのメリットとデメリットがあると思うんですけど・・・。
「まあ、そうですね。いろんなところでお話をしていますけれども、結局大きくなれるというのは条件次第なので、本人たちが大きくなりたいと思ってなれるわけではなくて、ある一定の条件が揃わないと・・・。
大きくなれる条件って、やはり水の中にいると浮力を獲得しますので、自分で自重を支えなくていいっていうのと、あとは消費エネルギーと獲得エネルギーをいつも天秤にかけていて、消費エネルギーより獲得エネルギーが多くないと、餌をとるたびに疲弊していたら、そのうち衰弱してしまいますよね。
なので、彼らはなるべく要領よく楽をして餌をとりたいわけですね。そうするとプランクトンみたいに小さなオキアミを食べている動物のほうが、実は大きくなれるわけですよ。
シャチとか、陸上で言うとチーターとか、あと恐竜で言うとティラノサウルスみたいな、いわゆるチェイシング、追いかけ型、スピード型の捕食者は、結局自分で走らなきゃいけない、自分で追いかけなきゃいけないと、それだけ消費エネルギーが莫大ですよね。
あと大きすぎるとドスドスドスドス、自分でその体を持て余してしまう。特に陸上だと重力っていう最大の問題がありますので、だから陸上動物のいわゆる捕食者、トッププレデターはそんなに大きくなれないわけですよ。なれたとしてもスピード型では食べられない。一方、水の中だと浮力を獲得しますので、陸上よりは大きくなれると・・・。
で、もうひとつ、オキアミを食べる、一回の口を開けてパクって取り込む消費エネルギーに対して、一個一個は小さいオキアミですけれども、それをひとつの大きな塊として考えた時には、獲得できるエネルギーがものすごくあるわけですね。
そうすると確実に消費エネルギーより獲得エネルギーが増えます。実はオキアミとか群生の小魚を食べる動物のほうが大きくなれるという条件になるので、陸上より海の中のほうに大きい動物が多いし、海の中でもプランクトン食のほうが大きくなれるという条件になります」
●「歌うクジラ」として知られているザトウクジラについてもうかがいたいんですけど、歌うのはオスだけなんですか?
「と、言われています。メスも歌えなくはないと思いますけど、コミュニケーションのためには音は出しています。
いわゆる求愛アピールとしての、みなさんがよくおっしゃるラヴ・ソングはオスからメスへの求愛行動なので、基本的にオスしか出さないっていうふうに言われています」
●ザトウクジラは、その時にクジラ・ミュージック界で流行っている歌を歌うっていうのを聞いたことがあるんですけど、本当なんですか?
「みたいですね。それも研究の成果みたいですけど、ある一頭がその年に今まで聴いたことがないソングを歌い出すと、みんなそれに同調するように同じように歌い出すっていうのが研究成果とか、いろんなところで情報が集められているので、今のところ、それがいいとザトウクジラ界では思われているのかな~と・・・」
イルカやクジラの座礁は人間社会の影響!?
※田島さんは、イルカやクジラが陸にあがってしまう「ストランディング」研究の専門家でいらっしゃいます。6年前にご出演いただいたときにも、そのお話はうかがったんですが・・・その後の調査・研究で、なぜストランディングしてしまうのか、以前は、病気のせいではないかとおっしゃっていましたが、新たにわかったことはありますか?
「あまり人間にとってよくない話かもしれませんけど、やっぱりどうしても人間社会の影響がものすごく深く入り込んでいる事例を多く経験します。
最近だとみなさんご存知の通り、海洋プラスチック問題というのは、私たちも避けて通れない問題になっています。その海洋プラスチックを食べたことで衰弱死してしまうものもいれば、そこに吸着しているいわゆる環境汚染物質というのも、新たな脅威として注目されているので、私たちも細く長く研究を続けています。
あと最近、日本でも起こってしまっているのは、大型タンカーと大型クジラの衝突事故というのが、前よりも結構な頻度で発見されています。
大阪湾にマッコウクジラが打ち上がって、その時“ヨドちゃん”という名前がついたりもしましたけど、いつもいないところに迷い込む個体も見えてくると、ああいう場合は本当にどうしてかな? と思うしかないんですけど・・それらを含めてもやはり人間社会がちょっと影響しちゃっているかな・・・温暖化もまさにそうだと思いますけど、相変わらず病気とかは見つけていますけど、う~ん」」
●そうなんですね。生きたままイルカがストランディングしてしまうというニュースもありますけど、集団で座礁してしまうというのは、リーダーが方向感覚を失うといったこともあるのですか?
「う~ん・・・と言われる論文とか、いろんな書籍もあるんですけど、リーダーというよりは(イルカは)社会性が強いので、なんとなくみんな同じ方向に向かって行って、気づいた時にはあら~という感じだったり、リーダーだけのせいとはちょっと思えないところもあったりしますかね。
あとは、冷たい海域にトラップされちゃったりとか・・・だいたい春先に暖かい海が好きな種が千葉とかで打ち上がることが多いので・・・。
あと別の理由だと、いわゆるこれも人間社会の影響ですが、軍事演習ソナーがクジラの耳を攻撃してしまうので、それで死んでしまうというのも世界中で知られていることですね。ちょっと怪しいなというのは、日本でもパラパラ見えますけど、それを因果関係として証明するのはすごく難しくて、もどかしい事例もありますけどね」
●日本でイルカとかクジラがストランディングするのは、年間何件ぐらいになるのですか?
「報告例という意味でいくと、年間300件前後は報告されています」
●千葉県は多いほうですか?
「千葉県はものすごく多いですよ。やはり房総半島という大きな半島がありますし、南からは黒潮が流れて、銚子の沖から岩手県あたりまで親潮が流れてきて、ちょうど暖水と冷水が交わるところなんですね。
だからとてもいい魚場だと言われている通り、そこに海に棲んでいる生き物たちが餌を探して向かうわけなので、本当に千葉県はそういう意味では通り道だったりするので(ストランディングは)非常に多いです」
(編集部注:全国の浜にイルカやクジラが上がったというストランディング情報は各地の大学や水族館、博物館などと連携しているのでケースバイケースではあるそうですが、田島さんのところに連絡が来るそうです。
千葉は県立中央博物館やNPO、マリン関係者のほか、以前この番組にご出演いただいた「銚子海洋研究所」の「宮内幸雄(みやうち・ゆきお)」さんもいらっしゃるので、千葉県はとても連携がとれているとおっしゃっていました。
研究者としての田島さんの仕事は、「科捜研の女」のクジラ・バージョン、ということで、解剖して死因を解明すること。また、骨はいろんなことを語ってくれるともおっしゃっていました。
もし、浜に打ち上がっているイルカやクジラを見つけたら、地元の警察や消防、市役所などの公的機関のほか、同じく地元の水族館や博物館、大学などの研究機関に一報を入れてくださいとのことでした。そうすると、田島さんに連絡が入る場合もあるそうです)
人間も「いきものワールド」の一員
※ストランディングしてしまった大きな個体を前にして、どんなことを思いますか?
「生き物なので必ず死にますし、命が尽きるのは当たり前のことなんですけど、最近(調査研究を)やっていて思うのは、やはり死ななくてもいい個体もいたな~とか思うんですね。
それがいわゆる大型船にひかれちゃうとか、海洋プラスチックがお腹の中にあるとか、それはある動物、いわゆる人間ですけど、ある動物がほかの動物にちょっと迷惑をかけているわけじゃないですか。
それをあまり一方的に迷惑ばっかりかけちゃっていると、全体の生態系はいいほうには進まないので、人間のせいにしたいわけじゃないんですけど、そういうことをちゃんとみなさんにメッセージとして伝えるためにも、一頭一頭、これはどういうふうに亡くなってしまったのか、その原因は何だったっていうのを整理して、やっぱり人間社会、ちょっとだけ遠慮しようよとか、そういうことを含めて根拠のあるコメントを言えるように、一頭一頭に向き合っていくということを常に感じますかね」
●クジラの骨格標本も展示されている、現在開催中の特別展『いきもの超ワールド展』、今夏休み中ですのでお子さんも多く来場されると思います。総合監修の田島さんから、ここは逃さず見て! というところがありましたら、ぜひ見どころを教えてください。

「見どころは、いろんな人に質問されて考えたんですけど、おそらく今回6つのテーマに分けたっていうことが最大の見どころで、会場に来てくれたかたたちは、“なんでこっちのテーマをピックアップしてくれなかったのか“とかいうかたもいると思うんですよ。
ただ今回は、私が総合監修をさせていただく時に、やはり昆虫から海の無脊椎動物、脊椎動物、大きなものから余すところなく生き物をたくさんご紹介したかったので、その動物たちに当てはまるテーマ決めっていうのがいちばん大変で、それで6つにしたんですけど・・・。
そうすると、その6つすべて実は人間も当てはまることがすごく多くて、人間は全然、別のところから彼らを見るのではなくて、まさに特別展の中の、生き物のワールドの一員として、特にお子さんたちは“自分たちは、どれが当てはまるかな”とか、“自分たちにはないけど、逆に自分たちにしかない“とか、そういう自分と付き合わせたり、比べたりしながら彼らのこと、そして自分たちのことを知るきっかけ作りにしていただけたら、すごく我々一同嬉しいですね」
INFORMATION

上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」にぜひお出かけください。いきものの生存戦略に改めて驚くと思いますよ。展示のひとつに、体全体を迫力のある映像に包まれる空間があって、自分がアフリカの大地や海の中にいるような錯覚を覚えますよ。ぜひ体験してみてください。公式ナビゲーター相葉雅紀さんの音声ガイドもお楽しみくださいね。

開催は10月12日まで。開館時間は朝9時から夕方の5時まで。入場は4時30分まで。入場料は一般・大学生 当日券2,300円。小・中・高校生 当日券600円。詳しくは、特別展のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp
2026/8/9 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. ANIMAL / DEF LEPPARD
M2. I WILL SURVIVE / GLORIA GAYNOR
M3. WHALE / KIM SEJEONG
M4. SING A SONG / EARTH WIND & FIRE
M5. ORDINARY WORLD / DURAN DURAN
M6. WILL YOU BE THERE / MICHAEL JACKSON
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2026/8/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、筑波大学大学院の助教で、管理栄養士そして日本スポーツ協会公認のスポーツ栄養士でもいらっしゃる「清野 隼(せいの・じゅん)」さんです。
清野さんは山形県出身。スポーツ栄養士として、森永製菓のトレーニング・ラボで、トレーニングや商品開発に携わったあと、筑波大学でコーチング学の博士号を取得。その後、日本オリンピック委員会のハイパフォーマンス・ディレクターなどを歴任。
現在は、栄養を理論から実践に落とし込み、スポーツ選手から一般のかたまで幅広くコンディショニングを支援する活動をされています。
そんな清野さんが監修された新しい本が、登山を栄養学の視点で解説した『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』。
きょうは登山の安全対策とも言える「食事と栄養」というテーマのもと、行動食や予備食、冷えや食欲がない時の対処法、熱中症対策、そして下山後のリカバリーについてもうかがいます。
☆写真協力:清野 隼

スポーツウエルネス学とは
※清野さんは筑波大学大学院で「スポーツウエルネス学」を研究されているんですよね。この「スポーツウエルネス学」とは、どんな学問なんですか?
「ひとことで言うと、スポーツを競技力とかパフォーマンスだけではなくて、人がよりよく生きるということに、どうつなげていくかということを考える学問になります。
健康ですとか地域、街づくりですとか、マネジメントとか、幅広く扱っておりまして、私はその中でもスポーツ栄養学やコーチング学を専門にしております」
●スポーツ栄養士のお仕事は、スポーツ選手の栄養管理を専門にされているということなんですか?
「そうですね。広く言えば、もっと一般のかたや健康増進をされているかたもサポートしたりはしていますけれども、主にはそういったスポーツ選手、アスリートを対象としています」
●選手のパフォーマンスにも影響してくる食事ですけれども、試合前と後では食事のメニューももちろん変わってきますよね。
「はい、目的が変わってきますので・・・例えば、試合前ですと力を出しやすい状態を作るために、糖質を中心にエネルギーを取りましょうとか、消化しやすく食べ慣れたものを食べましょう、そういったことが考えられます。
一方で試合後については、いかに消費されたものをリカバリーできるかとか、または水分や電解質などをしっかり早く補給できるかとか、そういった目的に応じてタイミングや食べるものも変わってきます」
●例えば、具体的な食べ物を食材で言うと、どんな感じなんですか? 試合前と試合後では・・・。
「日本人ならではで言えば、試合前も試合後もお米、主食ですね。非常に大事な食べ物になります。両方ともエネルギー源になります。または麺類ですとかパンなども大事になります。
一方でタンパク質源になりますと、終わってからなどは例えば、乳製品ですとか、または食べやすい肉など火を通したものですとか、そういったもので筋肉や疲労の除去、そういったところにつなげられるものを選んだりしています」
●清野さんが栄養士、しかもスポーツ分野の栄養士を目指そうと思ったきっかけというのは、何かあったんですか?
「もともと私も野球をやっていました。実際、肘をけがしたことがあって、リハビリテーションしていたんですけども、母親が非常にスポーツ栄養のことを考えて、台所にいろいろまとめたものを張り出していたんですね。
それを見て、とても興味を持って、支える側にもこういったスポーツの栄養の大切さっていうのがあるんだということを初めて知って、自分も目指してみたいなと思いました」
「食」は登山の安全対策

※ここからは清野さんが監修された本『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』をもとにお話をうかがっていきます。
●改めてなんですが、この本のコンセプトを教えてください。
「登山の食を安全対策のひとつとして、準備できるようにするということが、いちばん大きなコンセプトです。
例えば、靴ですとかレインウェアなど、地図や天気予報もそうなんですが、よく準備して登山に臨まれていると思うんですけども、なかなか体の中のエネルギー量ですとか、栄養面といったところまでは見えてきていないのではないかなと思いました。
そういう意味では、空腹ですとか脱水ですとか、足を止めるだけではなくて、思考力を鈍らせるようなコンディション、そういったところもしっかり準備して臨めるように、登山で試せるようにまとめてみたものになります」
●登山の安全対策として、レインウエアとか、そういった装備の準備だったり、天気予報のチェックなどと同じぐらい食事も大事だよということなんですね。
「そうですね。なかなか体内のエネルギーですとか、水分というのは見えにくいもので、気づかないうちに減っているということがあります。そういう意味で行動しながら、計画的に使うという意味では、雨具や靴などとも一緒かなと思います」
●清野さんご自身も登山はされるんですか?
「私は何度か登山やトレイルなどは経験しています。子どもたちと100マイルを歩くような冒険旅を行なったりですとか、自分自身もトライアスロンをよくしたり、そういった野外でのスポーツなどは定期的に行なっています」
●トライアスロンもされるんですか?
「そうですね(笑)。年に1回から2回はレースに出ようと思って頑張っています」

●登山と、ほかのスポーツでは、運動という点でどんな違いがありますか?
「非常に難しいんですけども、やはり何時間も一定の力を出し続けて歩くという登山の特徴があるかなと思っています。
さらに環境面の変化というのは非常に大きいのが特徴かなと・・・。例えば、標高差ですとか気温の変化ですとか、もちろん荷物や足場や、上りと下りなど、かなり環境面に応じて変化する特徴があるかなと捉えています」
●登山も日頃の食事が大事だと思うんですけれども、山に行く前は、特にどんな食事を心がけたらいいんでしょうか?
「書籍の中でもかなり強く書いているんですけども、前日とか、なかなか直前に何か変えようとして、やってしまうというかたもいらっしゃると思うんですね。やはりそうではなくて、普段から三食を整えておくということは基本中の基本かと思っています。
その中で例えば、炭水化物という栄養素は歩くための主要なエネルギーになりますし、タンパク質という栄養素は筋肉や血液など体を作る材料にもなります。登山前というのは、そういった意味でご飯やパン、麺類などの炭水化物を中心に卵や魚や肉や乳製品など、タンパク質源も組み合わせるといいと思います」
(編集部注:先ほどお話に出てきた、子どもたちと100マイルを歩く冒険旅、というのは、実はこの番組にも出てくださった北極冒険家「荻田泰永(おぎた・やすなが)」さんが計画し、子どもたちと一緒に100マイル(160キロ)を踏破する冒険プロジェクトのこと。
2012年から毎年、国内で開催されているこの「100マイルズ・アドヴェンチャー」に、清野さんは2017年と2019年に参加し、栄養士の視点で、子どもたちや荻田さんのコンディションを見ていたそうですよ)

行動食と予備食
※山の専門誌などにも「行動食」、つまり歩きながら食べられる食材の話がよく載っています。やはり行動食って重要なんですか?
「はい、とても重要だと思っています。これも書籍でかなり強く触れているんですけども、行動食というのはおやつではなくて、歩き続けるための補給計画の一部になります。
空腹を感じてから食べると、やっぱりその時点で集中力や判断力も落ち始めていることがありますので、少量をこまめに、できれば時間を決めて摂るというのが基本になるかなと思います。
選ぶ条件なども実はいくつかポイントがあって、もちろん携帯しやすさとか劣化のしにくさとか、あとはエネルギー密度ですね。小さくてもエネルギーがしっかり摂れるような密度の高いもの、あとは本当に自分が食べられる、食べやすいようなもの、そういったものが行動食としては適しているかなと思います」
●夏だと、どんな行動食がおすすめですか?
「夏は非常に食材の劣化も進みますので、傷みにくくないようなそういったものが向いていると思います。暑くても口にしやすいような、例えばゼリー状の栄養食であったり、飴や羊羹やエネルギーバー、それからナッツ、溶けにくい焼きチョコなんかは適しているかなと思います。
一方でおにぎりやサンドイッチといった、いわゆる先ほど行動食のエネルギー源にもなるようなものというのは、非常に便利ではあるんですけれども、保管や消費期限といったところに少し難しいポイントかなというふうにも思います。お腹を壊さないようなものですとか、保管のしやすいようなもの、そういったことも心がけていただくといいかなと思います」
●本に行動食とは別に予備食を持っていくこともお勧めされていました。その理由と、どんな予備食がいいのか教えていただけますか。
「行動食は先ほどお話しした通り、計画的に普段から食べてほしいものではあるんです。予備食というものは予定通り行なわれなかったり、例えば、悪天候になってしまったり、想定外のことが起こった時に備えるものとして捉えていただければと思います。
私も登山をしているときに、けがをしてしまったりですとか、道に迷ってしまったり、そういったこともあって、どうしても行動時間が伸びる可能性があるかと思いますので、軽くて高エネルギーで劣化しにくいようなものを選んでいただければと思います。
例えば、すぐ食べられるようなバーですとか、それこそ羊羹やナッツ、そういった持ち運びしやすいものに加えて、お湯や調理環境などを使える行程であれば、フリーズドライの食品や味噌汁、棒ラーメンなんかも選択肢としてあるかなというふうに思います」
登山もリカバリーが大事
※ここ数年、スポーツ選手の試合後のコメントで、「リカバリー」という言葉がよく出てくるようになったと思います。登山も山小屋に到着したあととか、下山後のリカバリーは大事ですよね?
「はい、とても大切になります。本書では下山直後から段階的に回復させるような流れというのを示しております。まず5分から15分ほどで水分を補って、スポーツドリンクですとか、ゼリーですとか、バナナなどの糖質をまず補給するということをお伝えしています。
胃が落ち着いてきたら、例えば、おにぎりにヨーグルトや牛乳など、糖質とタンパク質を組み合わせて、その後に主食や主菜、汁物などの食事につなげていただくというリカバリーが大事になるかなと思います。
食事だけでなくて入浴して軽いストレッチで整えたり、寝る前に水分と少量のタンパク質をとったりして、山小屋に宿泊するのであれば、翌日の行動まで考えて補給していくっていうことが大事かなと思います」
●いきなり、おにぎりというよりも、徐々に段階を経てっていうほうがいいんですね?
「そうですね。段階的なリカバリーっていうのは、トップアスリートも実施していることです。ファースト・リカバリー、セカンド・リカバリー、サード・リカバリーっていう形で、少しずつ少しずつ、摂るもの飲むもの休むことっていう、そういったものを計画的にやっていくのがポイントかなと思います」
栄養や水分補給の予行演習
※清野さん監修の本の第2章「栄養学の実践的活用術」に山の標高による登山のポイントが載っています。
標高が1000メートル以下のから、3000メートルを超える山までそれぞれ必要な技術などが解説されているんですが、標高に合わせた、事前の、おすすめトレーニングも載っていますので、これから山に行こうと思っているかたは、参考にされてみてはいかがでしょうか。
●事前のトレーニングで、栄養や水分の補給を、どのタイミングで取るかなどの予行演習もやっておいたほうがいいですか?
「そうですね。非常にこれは歩く練習と同じくらい大切になると思います。本番で使う装備、靴やザックや食品、飲料とかそういったものを使って、補給と休憩と、それからペース歩行、そういったものをセットで試していくっていうのが大事かなと思います。
例えば、美味しくても動いた後になかなか食べにくいっていう物もありますし、普段は食べられるのに胃が重くなってしまって、受け付けないっていったものもあります。
できれば、何時にいつ何を食べて、どれくらい飲んだのかとか、そういったものを簡単に記録していくと、自分に合うパターンなんかを見つけられて、本番で初めて食べて、こんなものを食べられない、みたいなことを体験することはなくなるんじゃないかなと思います」
●夏でも標高が高くなれば、気温は下がります。冷えとか食欲がない時の対処法はどうしたらよいでしょうか?
「はい、これはまず、ウエアの重ね着は大事かなと思います。私も体験したことがあるんですけれども、外からの冷えを防ぐのが、まず前提ではあると思います。一方で食べ物や飲み物は、体の内側から温めてくれるものでもありますので、温かい飲み物や食べ物は非常に大切になります。
例えば、インスタントの味噌汁ですとかフリーズドライの食品ですとか、固形のスープや温かい麺などは軽くて使いやすいですので、そういったものをどのように食べることができるかというのを本書でも詳しく説明しています。
よくあるんですけれども、味噌に粉末出汁とかネギやワカメを合わせて、“味噌玉”を作って、それを持って行って、簡単に食べることもできたりしますので、参考にしてみていただけたらなと思います」
●この時期は熱中症にも注意しなければいけないですよね?
「これは難しいですね。気温が高くなったり低くなったりする、とても変化の起こりやすい気候になりますので、水を飲んでいれば安心だというふうに思われるかも知れませんけど、決してそうではなくて(登山の前に)朝食を食べてエネルギーと水分を身体の中に入れて出発することが、まず最低限のポイントになります。
暑い時間帯を避けて計画したり、無理のないペースで日陰で休憩したりですとか・・・。もちろん帽子やウエアや水分、電解質など大切なポイントっていうのは多々あるんですけども、その予防のひとつとして、動いた後に体重の減少をしっかり2パーセント以内に抑えましょうということを本書では訴求しています。
気づきにくい脱水が起こったりしていて、結果的に体重がどんどん落ちているということもあります。それも熱中症につながってしまいますから、こまめに水分をとりながら体重も動いた後、トレーニングした後に測っていくような習慣を作っていけるといいかなと思います。
熱中症予防の観点で体重減少2パーセント以内に抑えるってことですけれども、もちろん登山中に体重を計ることはできませんので、下山後にお風呂に入った後とか、または寝る前とかに体重をしっかり計って、普段の自分の体重との変化というのを比べてほしいなというふうに思います」
山に行く前に、日頃の食事と睡眠
※清野さん監修の新しい本では「栄養学の基礎知識」もわかりやすく解説されています。栄養にはどんなものがあって、どんなふうに体に吸収されるのか、とても参考になります。
●登山に限らず、普段の生活でも栄養の知識を身につけておくことって、大切ですよね?
「もちろん大切です。ただ、選手にもよく話をするんですけれども、毎食の栄養素を細かく計算することは難しいことです。炭水化物やタンパク質などの栄養素がどんな役割を持つかということを知ることが一歩目かなと思います。
そうすると、自分で選んだりとか、自分の状態と対話しながら食事内容を考えたりとか、そういったこともできると思いますので、選択肢を増やすための知識として捉えていただけたらいいのかなと思います」
●この夏、山に行こうと思っているかたに、食事と栄養の面からアドバイスをお願いします。
「山で何を食べるかということだけでなくて、日頃の食事と睡眠から考えてみていただきたいと思います。そして、朝食を食べることですとか、何時ごろ何を補給するのかとか、そういったことも計画して、予備食や下山後のリカバリーまで考えていただけるといいかなと思います。
そういう意味で山に登る時の“食”っていうのは、あくまでも自分の準備のひとつで、身体とそれから装備や環境と一緒にセットで考えていただくものだと思っていただければなと思います」
(編集部注:登山のあとに冷たいビールを飲みたくなるというかた、多いと思いますが、アルコールは利尿作用があるため、脱水症状を招く可能性があったり、睡眠にも影響が出たりするので山では控えたほうがいいということです。
下山後の飲酒もリカバリーを阻害したりと、マイナスの側面があるので、自分の体と対話し、体調を確認してからにしましょう)
INFORMATION
『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』
これから山に行こうと思っているかた、清野さん監修のこの本をぜひ参考になさってみてください。「山登りのための栄養学」に始まり、実践的活用術、基礎知識、そして「登山に適した食事メニューとトレーニング」と、4つの章に分けて写真やイラスト、図などでわかりやすく解説されています。
登山の食事と栄養を、安全対策のひとつとして、考えていただければと思います。メイツ出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。











