2026/8/23 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスライターの「ほりかわあきな」さんです。
ほりかわさんは新潟県生まれ。国立の長岡工業高等専門学校(長岡高専)から東京工業大学大学院を経て、農薬と、タネや苗を生産する種苗メーカーに就職。新入社員の研修時に、茨城県にある研究所の田畑で、一連の農作業を体験し、体力的にも厳しい農業の大変さを痛感。
その一方で、農薬に対して世間では、食の安全や環境への影響を危惧する声があることも知ったそうです。
農薬も科学技術の産物であることに変わりはないと思ったほりかわさんは、大学院まで科学や研究を通して、世の中の役に立ちたいと思っていたので、科学の架け橋になりたいと思い、会社を辞めてお台場にある日本科学未来館で科学コミュニケーターに。

その後、WEBメディアの記者や編集者を経て、現在はサイエンスライターとして、いろんなジャンルの研究者への取材を通して、科学の魅力をわかりやすく伝える活動を幅広くされています。
きょうは私たちが普段食べている野菜や果物の、びっくりするような昔の姿、そして意外に知らない品種改良のお話もうかがいます。
☆写真協力:『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』ほりかわあきな・著/農研機構・監修/講談社

サイエンスにワクワク!?
※サイエンスライターとして、大事にしていることって、なんですか?
「ちょうど独立して10年に今なるところなんですけど、みなさんからは、科学の難しいことをわかりやすく伝えてくれる人というふうにイメージを持っていただいています。それもひとつの役割だとは思うんですけれども、今これだけ人工知能AIが発達してきていると、わかりやすく要約するだけだったらAIでもいいんですよね。
なので、やっぱり自分というフィルターを通して、何か物事を伝えるんだったら単なる解説ではなくて、私もいろんな分野の研究者のかたに取材させていただくので、そのたびに大変ではあるんですけど、毎回新鮮な知的好奇心が刺激される面白さや喜びっていうのがあるんですね。
そのワクワク感とか、ちょっと今までと世界が違って見えるような感覚っていうのを、知識を伝えるだけでなく、そういったものもサイエンスの魅力として、またサイエンスに関わるかたたちの魅力として伝えられたらなと思っております」
品種のご先祖様!?
※ほりかわさんの新しい本が初の絵本『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』。リスナーのかたに向けて、どんな本なのか説明していただけますか?

「この本では14種類の野菜や果物の昔の姿と今の姿を比べています。すべて写真で紹介している写真絵本になります。昔の姿には実は2つのパターンがあるんですね。
ひとつは品種改良の出発点になった祖先種と呼ばれるもので、例えばこの本だと、ナシとかサツマイモやトウモロコシなどは、“ご先祖様”というふうに書いているんです。ご先祖様はこんな姿だったよという形で紹介しています。
もうひとつは日本を基準に考えた時に、近代化するより前の明治時代より前の日本で親しまれていたもので、例えばリンゴとかメロンなんかは西洋から入ってくる前は、こういうのが日本では主流でしたよという形で紹介しています」
●この本は食育絵本と言ってもいいんでしょうか?
「そうですね。普段食べているものの来歴を知るっていうのも、大事な食育だと思います。私もちょうど今、子育て中なんですけど、テキストを考えるときに子供と一緒に音読したりとか(笑)、“こういう言い回しって、どう?”とかって(子供に)相談に乗ってもらっていたんですけど、そうすると自然と、やっぱり子供も普段スーパーに買い物に行った時に興味を持つようになってくれたので、食育絵本というふうに言えるかなと思います」
●そもそもこの本を出そうと思われたのは、どうしてなんですか?
「きっかけになったのはSNSに作物のいろいろな品種の過程というか、並んだ画像が流れてきて、やっぱり写真で伝えると品種改良のすごさ、人類がこんなに変えてきたんだなっていう努力の賜物を見せつけられているというか、そのインパクトに驚いたっていうのもひとつなんです。
私自身の経験としてもやっぱり農業の実習をしている時に、美味しいとかたくさん採れるっていうのはもちろんなんですけど・・・。
例えば、段ボールに入るサイズ感、“大きければ大きいほど、いいわけじゃないんだよ”とか、流通させる時に潰れやすくないように“適度な硬さがある実がいいんだよ”とか、いろんなポイントがあるということを、普段、消費者からはなかなか見えにくいけれども、いろんなこだわりがあるというのを感じていたので、それも伝えたいなと思ってこの本を作ろうと思いました」

●野菜や果物の昔の姿と今の姿を写真で比較されていますけど、写真で見せられるとその変化に驚きますね。
「そうですね。写真はすべてひとつひとつ監修者の先生、作物ごとに監修してくださった専門家の先生がいらっしゃいまして、先生がたから画像を提供していただいたんですね。なので、ひとつひとつ画像をメールでいただいて見せてもらった時に、やっぱり私も初見の時は“えっ、これってあってます?(笑)”って・・・・。
例えば“これ、リンゴの写真? サクランボじゃないですよね? 間違っていませんよね?”って思うくらい小さかったりとか、サツマイモは“えっ? 根っこ? (笑)”、思わず二度見してしまうような昔の姿の写真もあって、本当に私自身も驚きながら(本を)作っていました」
トウモロコシは接着剤にもなる!?
●本の中から具体例として、いくつかピックアップしてうかがっていきます。やはりサツマイモですね。いちばんインパクトがあります。(写真を見ると)根っこですよね? 長くてひょろひょろした根っこですけど、これが昔の姿、サツマイモのご先祖様なんですか?
「そうなんですよ。“根菜”って言いますけど、ほんとうに“根っこの野菜”って書いて根菜だなって(笑)改めて思いました。
メキシコアサガオという植物が祖先種というふうに言われています。メキシコアサガオという名前からわかるように、サツマイモはヒルガオ科の植物なんですね。なので、条件が揃うとサツマイモでも花が咲くんです。朝顔のようなお花が咲くそうなんですね。
根っこにも実は二種類あって、水や肥料を吸い上げる『吸収根』と呼ばれる根っこと、あとは太くなってお芋になる部分の根っこ『不定根』と呼ばれる根っこがあるそうです。
実はこれも小学生の自由研究で調べているお子さんもいて、そういう探求のきっかけに驚いて、その先を知りたくなるっていうふうになればいいなと思いますね」
●根っこ!? これを食べていたんですか?
「そうなんですかね・・・? 私もこれをどうして食べてみようと思ったのかな~?と、私もその部分は不思議に思ったんですね。どうなんでしょうね? どうしてこれを・・・?
例えば、これは完全に私の仮説ですけど、動物が食べていたりすると美味しいのかなと思ったのかなとか・・・。でもやっぱり昔の人って必ずチャレンジャーがいますよね(笑)。いろんな作物とか動物もそうですけど、植物もやっぱりこれをよく食べてみようと思ったな~っていうのがありますよね」
●そうですよね。このひょろひょろとした根っこがどんどん太くなって甘くなって、今のサツマイモになったわけなんですよね。面白いですよね!
「驚きますよね」
●続いてトウモロコシは、いかがでしょうか?
「トウモロコシは『テオシント』っていうイネ科の植物が、ご先祖様とされているんですけれども、これも見た目だけだと、とてもトウモロコシとはリンクしないぐらいギャップがありますよね」

●草!っていう感じですよね(笑)。
「草ですよね(笑)。粒が本当に両手で数えられるぐらいの数、10数粒から、今のスイートコーンって平均で600粒くらいあるというふうに言われています。単純に量が増えただけじゃなくて、一粒一粒も大きくなってみっちり詰まっています。そしてやっぱり甘さもどんどん糖度も高くなっていってということです。
この本で紹介している中でも品種改良の始まりもかなり古くて、7000年以上前から品種改良されていたんじゃないかというふうに言われている作物ですね」
●この本には興味深いコラムが三編載っています。そのひとつに“接着剤にもなるトウモロコシ”ということで、トウモロコシは接着剤になるんですか?
「そうなんです。実は段ボールの接着剤とかに使われています。トウモロコシにも実は用途によっていろんな品種が使われていて、普段私たちがいちばん食べているのはスイートコーンなんですけど、今ご紹介いただいた接着剤として使われているのはワキシーコーンという品種。
ワキシーコーンは加熱すると、すごくもちもちになって、食べるとちょっと甘さ控えめなんですけど、もちもちで・・・コーンスターチって聞いたことありますか?
あのとろみはワキシーコーンの澱粉(でんぷん)から作られていて、おそらく段ボールの接着剤としてちょうどいいでしょうね。手でグッとやった時に剥がせる、でもついている間はしっかりくっついているっていう、ちょうどいい粘り気というか接着の具合を実現してくれているんだなと・・・」
●トウモロコシって奥深いんですね。
「やっぱり(トウモロコシは)食べて、私たちの食料として世界中で支えてくれているというのももちろん大きいですけれども、工業用途でもいろんなところで使われています。
あと家畜の餌としてももちろん使われていますし、あとお子さんたちもよく知っているポップコーンもそのままポップコーンなんですよね(笑)」
●確かにそうですね。
「いろんな品種がある作物ですね」
大人向けに「品種改良」の解説
※この絵本の巻末に、大人向けに「品種改良」の解説が載っています。この解説を載せようと思ったのは、どうしてなんですか?
「実はこの絵本のタイトルにも品種改良という言葉は登場していなくて、なるべく本文のテキストにも“品種”という言葉は多用しないように、使い過ぎないようにしていたんですね。それはやっぱりお勉強の本だと思ってほしくなかったっていうのもあるんですね。
でも一方で、品種や品種改良というものに、興味を持ってもらうきっかけにはしたかったので、ひと通り読んでいただいた最後のところで、大人のかた向け、あるいは大人のかたじゃなくても、興味を持ってくれたかたに向けて、“品種改良ってこういうものですよ”と・・・。
解説といっても技術的にひとつひとつの手法を、詳しく解説しているわけではなくて、長い人類の営みとして品種改良には、こういう側面がありますよということを、“おわりに”のところでメッセージとして書かせていただきました」
(編集部注:ほりかわさんによると、品種改良にかかる時間は、交配・かけあわせの場合、目指す品種ができるまでに7、8年。さらにその後、国に出願し、品種として登録されるまでに1年から3年くらいはかかるとのこと。
果物の品種改良はもっと時間がかかって、10年から15年くらいだそうです。実際に農家さんが生産して消費者のもとに届くまでには、もっと時間がかかりますね)
※農家さんの仕事は自然が相手ですから、特に繁忙期は休む暇もないと思います。農作業の手間を少しでも省くために改良された品種があるそうですね?
「最近そういった品種も登場しています。例えば、この本ではイチゴの『恋みのり』という品種を、今のイチゴの品種の代表として紹介しているんですね。これを敢えて選んだ理由は、美味しいとか甘いとかっていうのはもちろんなんですけど、作業の手間をすごく省ける品種なんです。
具体的には余分な花や実を摘む、剪定する作業が必要ないので、そのステップを省けるだけでも、大量に大規模に栽培する農家さんにとっては、とても省力化になるということで・・・。
あと、この本では紹介してないんですけど、最近、それも面白いな~と思ったのが、リンゴそのものの実の部分を改良したのではなくて、リンゴの木の形を改良した『ベニツルギ』っていう品種が新しく出たばかりです。
なんで木の形を変えたかって言うと、収穫しやすいようにするためなんですね。リンゴの木って普通、横に広がるんですけど、それをシュッと縦型にすると作業動線がすごく作りやすくなって、脚立を持って行くときにあちこち行かなくて、まっすぐ生産ラインが敷けるような・・・あとは機械で収穫する今後のスマート農業を見据えた品種が最近は登場してきています」
●すごいですね!

品種改良と伝統野菜
※品種改良も有益なことだと思いますが、その一方で、日本に古くからある伝統的な品種は、守っていく必要がありますよね?
「それもとても大事なポイントですよね。一度途絶えてしまったものは元に戻せないので、守っていくというのも重要ですし、財産として文化として守っていくというのも重要です。
昔からあるものですとか、特に野生種は、例えば暑さとか寒さとか乾燥とか、逆にすごく湿気が多かったりとか、そういう環境にタフなものや、病気に強いものが多いというふうに言われています。
なので、改良していくことも大事なんですけど、一方で昔からあるもの、自然にあるものも守っていく。どっちも両輪でやっていかなきゃいけないことで、この本のメッセージのところにも書かせていただきました」
●では最後に、初の絵本『こんなにかわった! やさいくだもの むかし・いま』を見る子どもたちが、どんなことを感じ取ってくれたらいいなと思いますか?
「はい、まずは純粋に驚いてほしいな! 楽しんでほしいな! というふうに思います。
もし周りに大人のかた、おじいちゃんやおばあちゃん、親御さんや先生とかいらっしゃれば、その世代のスタンダードもだんだん変わってきていると思うので、“昔のニンジンはこうだったよ”とか、“昔のトマトはこうだったよ”っていうふうに世代間で盛り上がってもらえたらなと思います。
読者のかたには普段、何千年前とか何百年前とかってスケールで考えることってなかなかないと思うんですけれども、そういった長いスパンで品種改良っていうものが、今まで脈々と続いてきているということを感じ取っていただいたうえで、ここから先の未来、どんなふうに私たちは食を守っていくんだろうとか、新しく作っていくんだろうとかを考えるきっかけになれば嬉しいと思います」
●親子で楽しめますね!
「そうですね。ちょっとダジャレっぽい(笑)小見出しも入れたりして、声に出して読んでも面白く楽しく読めるようにという気持ちを込めて作りました」
INFORMATION
ほりかわさんの思いがこもった写真絵本をぜひチェックしてください。お馴染みの野菜や果物、全部で14種の、昔の姿に驚くと思いますよ。お子さんと一緒に見てほしい食育絵本です。巻末には、大人向けに品種改良の解説が載っています。
講談社から絶賛発売中。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎講談社:https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000426983
この絵本の出版を記念して茨城県つくば市の農研機構「食と農の科学館」で、現在、企画展が開催されています。会期は来年1月30日まで。入館は無料です。詳しくは農研機構のサイトを見てください。
◎農研機構:https://www.naro.go.jp/tarh/information/event/176719.html







