2026/10/23 UP!
今回は、文学ゆかりの地で長年受け継がれてきた古書店にスポットを当てていきます。
古書店といえば東京・神保町を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。今回ご紹介するのは、千葉県市川市にある「智新堂書店」です。

江戸川に面し、都心からのアクセスが良い市川市は、小説家の永井荷風や劇作家の井上ひさしなど、多くの文人墨客が暮らしたことから“文学のまち”として知られています。そんな市川にある古書店のひとつが、1935(昭和10)年創業の智新堂書店です。県内に現存する古書店の中では最古といわれ、天井まで届く本棚には、文学書や歴史書、郷土資料など、時代を超えて受け継がれてきた貴重な本がずらりと並びます。
まずは智新堂書店の歴史を、2代目店主の山野潤一郎さんに伺いました。

山野さん:現在もうなくなっちゃったんですけど。神田で八年間修業して、昭和十年に国鉄の市川駅前に開店して、昭和二十年まで十年間営業してたんです。そして、どぶ川の暗渠の上のお店だったので、駅前にロータリーができるっていうことになって強制疎開になって、そこを立ち退いて現在のところに来たんです。父がやっぱり修業してた時に、市川から来て買いに来てくれるっていうお客さんが多かったのともう文化人が多いっていうのは前から知ってたんですけど、相当これは商売になるんじゃないかなっていうんで、市川にお店出したって聞きました。やっぱ大店の社長類ですか。そういう人たちが割と多くて、買うものもそうですし、持ってるものもそうですし、いずれ古書として出る場合、いいものが出てくるんじゃないかなっていうふうに思ったわけです。現にうちが一軒始めた時、一軒だけだったんですけど、あの、やっぱり十軒ぐらい古本屋さんが来ましたよね、最盛期。現在もうなくなっちゃったんですけど。
市川は東京に近い立地から、作家や学者、新聞記者、編集者など、様々な分野で活躍する人たちが暮らしてきました。お店を現在の場所に移してからも客足は途絶えることがなく、その中には、1946年に市川へ移り住んだ文豪・永井荷風もいたそうです。戦中戦後の激動の時代を、どのように乗り越えてきたのでしょうか。

山野さん:やっぱりあの私は知らないんですけど、戦前はほら、みんな貧しくて物がなくて飢えてたんですよね。だから本当に飛ぶように売れたって言ってましたね。で、本を集めるのが大変だったって、そういう時代がありましたね。あと戦後、図書館とか博物館なんかができて、やっぱり基本図書がないとできないので一生懸命やっぱり納めたって言ってました。で、資料的なものっていうのは、もう新刊では売ってませんからね。新刊と古本両方やってたんです。だから余計忙しかったんです。やっぱりあの父親は本当の叩き上げの古本屋ですから、自分がやらないと気が済まない。それでやっぱりファンが多かったんですよね、お客さんの。私出る幕ないから外回りやったり、即売会、デパート店、あとは暇な時に市場行って勉強してこいって言われるんで、そうやって役割分担をしてやってました。
山野さんは外回りを担当したり市場で勉強したりしながら、初代店主のお父様と役割分担をしていたそうです。市場は、今でいう古本のオークション。そこで、値段の付け方や他の古書店との駆け引きなどを学んだそうですよ。

智新堂書店には、新刊書店では出会えない、貴重な資料の数々が並びます。古書店ならではの楽しみの一つが、様々な分野に興味を持つお客さんと店主との、ニッチでかなり深い会話なのだとか。山野さんにとっても、そんなやり取りは楽しみの一つで、今でも勉強になるとおっしゃっています。現在、智新堂書店で扱っているアイテムについても伺いました。
山野さん:結構いまだにいっぱいあります。作家の原稿とか、手紙、はがき、あと浮世絵とか、木版画、そういうのが今ほとんど。私、自分がもう学生の頃から好きで、作家の原稿なんか買ってたんです。当時はものすごく安くて、私でも買えたんですけど、今はもうゼロが二つも三つも違うようになってしまいましたね。やっぱり珍しい、日本にそれしかないんだから、やっぱりそういうのを扱ってて、自分で持っていても楽しい。それもまた、私の楽しみなんです。だから値段がいくらっていうんじゃないんですよね。ただ、自分で持ってて、所有欲っていうのかな。嬉しい。うん。売れないものも結構いまだにいっぱいあります。

当時は今よりもずっと手頃な値段で手に入れることができたといいますが、今では価値が高まり、貴重な資料になっているものも多いそうです。実際の本よりも安く手に入るものもあったようですよ。
近年は、全国的に書店の数が減少傾向にありますが、一方で、オンライン古書販売サイトやフリマアプリなど、インターネットを通じて古書に触れる機会が広がっています。智新堂書店では、いち早くネット販売に取り組んできたそうです。山野さんに伺いました。
山野さん:もう二十年ぐらい前ですかね。いずれネットが普及してくると、足を運んでくる人が少なくなるんじゃないかなと思って、メールと、まああの、商品を載せるっていうぐらいしか簡単なことしかできないんですけど、すごい反応がありましたね。滅多に見ないし、あちこちで見るようなものじゃなかったから、相当売れました。始めた当初はね。今は本っていうか、さっき言ったように、原稿とか版画、木版画、手紙、書簡、やっぱり海外のコレクターですか。あとはそういう集めている公共団体みたいなところですね。元気のいい時は中国がすごく多かったです。えー、こんなにすごい反響なんだって。で、近所の酒屋さんに昔ね、台車に段ボール五箱ぐらい積んで、それしょっちゅう行ってましたよ。で、本屋さんこんなに売れるんですかって驚かれちゃったことあって。

インターネットの活用については、テレビの「中高年のためのパソコン講座」で学んだということです。今ではヨーロッパやアメリカなど、海外への販売もこなしているそうですよ。
2代目・山野潤一郎さんへと受け継がれてきた「智新堂書店」。これまで大切に守られてきた本や資料は、これからも多くの人に、貴重な学びと出会いを届けていくことでしょう。

お店は、京成線・市川真間駅から徒歩およそ1分、JR市川駅から歩いておよそ6分の場所にあります。「日本の古本屋」という古書販売サイトを通じて、本や資料の販売も行っています。詳しくは、こちらをご覧ください。
https://www.kosho.or.jp/abouts/?id=17000420




